(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】低密度土壌
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20220905BHJP
C05F 3/00 20060101ALI20220905BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20220905BHJP
【FI】
A01G7/00 605Z
C05F3/00
B09B3/00
(21)【出願番号】P 2022006407
(22)【出願日】2022-01-19
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2022005234
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508015276
【氏名又は名称】北ノ坊 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(74)【代理人】
【識別番号】100076576
【氏名又は名称】佐藤 公博
(72)【発明者】
【氏名】北ノ坊 純一
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108373380(CN,A)
【文献】国際公開第2019/181748(WO,A1)
【文献】特許第6026826(JP,B2)
【文献】特開昭59-092985(JP,A)
【文献】特開2004-107160(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109169162(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109197503(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109429986(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110818509(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/60
A01G 7/00
C05F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
休眠状態の発酵微生物菌群を
土壌1g中に12億~20億菌体含有し、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌。
【請求項2】
前記土壌が、家畜舎の床に敷かれる敷料用土壌である請求項1に記載の低密度熟成土壌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜用畜舎の床に敷かれる敷料用に好適な低密度熟成土壌、参考発明としてその製造方法並びに家畜用畜舎で使用されて糞で汚れ及び/または尿などで湿ってきた汚物含有の前記低密度熟成土壌を元のような低密度熟成土壌に再生する方法(参考発明)、当該再生用の再生装置(参考発明)、家畜の居住環境として快適なものとし得、また、汚物含有の前記低密度熟成土壌を元のような低密度熟成土壌に再生する場合の汚物含有低密度熟成土壌の水分含有率を低めに保ちやすく、従って、元のような低密度熟成土壌に再生するのに有利な汚物含有低密度熟成土壌に保つことが容易な家畜舎用床の構成(参考発明)、並びに前記低密度熟成土壌の利用方法(参考発明)に関する。
【背景技術】
【0002】
現行の家畜舎の床に敷かれる敷料は、例えば、藁、もみ殻、おが粉、干し草など家畜の糞や尿の水分を吸収する有機材料が使用されているが、汚れた敷料と糞尿は、日本においては家畜排せつ物法により、建造物である堆肥舎に搬入し堆積(野積みは禁止されている)され、その中に、自然界の有機物分解微生物(好気性菌、嫌気性菌、等々)を取り込んで、攪拌移動しながら発酵させて堆肥にすることが義務づけられている。
【0003】
前記堆積物の中心部では嫌気性菌によりゆっくり分解が進むが、好気性菌を取り込むために攪拌移動する作業が必要になる。この攪拌移動作業は重労働であり、およそ20時間おきに堆肥完成までに120日ほど作業しなければならないし、製造した堆肥は、肥料として使用してもらわないと堆肥がたまることになるが、堆肥が売れないでたまるという問題もある。しかもかかる堆肥化のために長期間悪臭環境下での作業が必要になり、人手不足の主因にもなっている。このような糞尿で汚れた敷料は日本では、家畜排せつ物発生量として年間8千万トンと推計されている。かかる問題で畜産業は困難な問題に直面している。
【0004】
これらの問題に対処するため下記特許文献1には、農業用の熟成土壌の製造方法が提案されているが、この熟成土壌をそのまま家畜舎の床に敷かれる敷料として使用しても、使用後に糞尿で汚れたものの処理が同様に必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる畜産ゴミの大量の蓄積と長期間にわたる悪臭環境が改善され、しかも、使用により糞尿で汚れた敷料を元のような敷料に再生し、何度もリサイクルして使用し得る家畜舎用低密度熟成土壌(本発明)とその製法(参考発明)並びに糞尿で汚れた敷料の家畜舎用低密度熟成土壌を元のような家畜舎用低密度熟成土壌に短時間で再生する再生方法(参考発明)、当該家畜舎用低密度熟成土壌の再生装置(参考発明)、また、前記低密度熟成土壌の透水性を利用して家畜舎の敷料として利用し、家畜の居住環境に好適な低密度熟成土壌の利用方法(参考発明)、並びに、家畜の居住環境として快適なものとし得、汚物含有の前記低密度熟成土壌を元のような低密度熟成土壌に再生する場合の汚物含有低密度熟成土壌の水分含有率を低めに保ちやすく、従って、元のような低密度熟成土壌に再生するのに有利な汚物含有低密度熟成土壌に保つことが容易な家畜舎用床(参考発明)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前記課題を解決するため、本発明の低密度熟成土壌は、休眠状態の発酵微生物菌群を土壌1g中に12億~20億菌体含有し、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌である。
(1´)また、上記(1)項に記載の本発明の低密度熟成土壌は、家畜舎の床に敷かれる敷料用土壌であることが好ましい。
【0008】
(2)また、参考発明としての見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の製造方法は、密閉可能な発酵槽内に家畜廃棄物を装入し、この発酵槽を密閉し、外気と遮断して空気を発酵槽下部から当該空気がほぼ均一に前記家畜廃棄物の層を通過するように循環させて、該前記家畜廃棄物を発酵させ、該発酵に伴って該家畜廃棄物層の上部に発生した発酵蒸気を空気と液体とに分離して液体を除去し、該分離された空気を前記発酵槽内に戻し、前記家畜廃棄物層を通して前記密閉発酵槽内を循環させるようにして得られる熟成土壌に、紅色非硫黄型光合成細菌群か、又は、前記家畜廃棄物と紅色非硫黄型光合成細菌群を、混合して、粉砕する製造第一工程、
製造第一工程で得られた混合物を、密閉可能な発酵槽内に装入し、この発酵槽を密閉し、外気と遮断して空気を発酵槽下部から当該空気がほぼ均一に前記混合物の層を通過するように循環させて、前記混合物を発酵させ、該発酵に伴って該混合物層の上部に発生した発酵蒸気を空気と液体とに分離して液体を除去し、該分離された空気を前記発酵槽内に戻し、前記混合物層を通して前記密閉発酵槽内を循環させるようにして、前記混合物を発酵熟成させたのち、前記循環空気を冷却して循環させ、発酵を止める製造第二工程、
とを含む、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の製造方法である。
【0009】
(3)また、参考発明としての見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の再生方法は、見かけ比重が0.40~0.43であった低密度熟成土壌が糞で汚れ及び/または尿などで湿ってきた汚物含有低密度熟成土壌を密閉可能な発酵槽に装入するか、又は、前記汚物含有低密度熟成土壌に紅色非硫黄型光合成細菌群を散布して前記発酵槽に装入する再生第一工程、
前記再生第一工程で装入された汚物含有低密度熟成土壌の入った発酵槽を密閉し、外気と遮断して空気を発酵槽下部から当該空気がほぼ均一に前記汚物含有低密度熟成土壌の層を通過するように循環させて、前記汚物含有低密度熟成土壌を発酵させ、該発酵に伴って前記汚物含有低密度熟成土壌層の上部に発生した発酵蒸気を空気と液体とに分離して液体を除去し、該分離された空気を前記発酵槽内に戻し、前記汚物含有低密度熟成土壌層を通して前記密閉発酵槽内を循環させるようにして、前記汚物含有低密度熟成土壌を発酵熟成させたのち、前記循環空気を冷却して循環させ、発酵を止め、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を再生する再生第二工程、
とを含む見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の再生方法である。
【0010】
(4)前記(3)項に記載の参考発明としての見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の再生方法においては、前記汚物含有低密度熟成土壌の含水率が48~58質量%であることが好ましい。
【0011】
(5)前記(4)項に記載の参考発明としての見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の再生方法においては、前記再生第一工程の開始から140~150時間経過し発酵槽内部の温度が75~70℃に低下してきた段階で、前記循環空気を冷却して冷却空気を12~18時間で循環させ発酵を止めることが好ましい。
【0012】
(6)また、好適に用いられる発酵処理装置(参考発明)は、見かけ比重が0.40~0.43であった低密度熟成土壌が汚物で汚れた汚物含有低密度熟成土壌を、再度、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生するための装置であって、
汚物含有低密度熟成土壌、又はそれに更に紅色非硫黄型光合成細菌群が散布された土壌を収容するための密閉し得る発酵槽と、外気と遮断して空気を発酵槽下部から通して、空気を循環するための空気循環装置と、前記発酵処理槽を通して循環される空気に含まれる発酵蒸気を空気と液体に分離して分離水を回収する装置と、前記発酵処理槽を通して循環される空気を冷却するための冷却装置とを備えたことを特徴とする。
【0013】
(7)また、参考発明としての低密度熟成土壌の利用方法は、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を家畜舎の敷料として用いることを特徴とする。
【0014】
(8)また、参考発明として、好適に用いられる家畜舎の床は、地盤上に施した止水層の上に、透水性アスファルト舗装層、更にその上に透水性レジンモルタル加工層を施した床材構成であって、前記止水層が、透水性レジンモルタル加工層と透水性アスファルト舗装層を透過してきた水分が集められるよう、傾斜勾配が付され、排水孔を設けて浄化槽に連絡する構造を有する家畜舎の床である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、家畜舎の敷料として使用した場合に、水分の透過性が優れ、家畜の居住環境を好適にし得る見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌及び参考発明としてその製造方法を提供でき、また、この比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌は、家畜舎の敷料として使用して糞尿で汚れた場合に、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生でき、何度もリサイクルして使用可能な家畜舎用敷料に有用な低密度熟成土壌であり、また参考発明としてその製造方法が提供でき、並びに糞尿で汚れた敷料を見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生する方法は、従来の堆肥化するための畜産ゴミの排出と長期間にわたる悪臭環境が改善され、また、比較的短期間で家畜舎用低密度熟成土壌に再生する方法(参考発明)、その再生処理装置(参考発明)や、糞尿で汚れた家畜舎用低密度熟成土壌を、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の再生に好適な状態の汚物含有低密度熟成土壌に保ち、且つ、家畜の居住環境にも好適な家畜舎の床(参考発明)、家畜の居住環境にも好適な敷料としての利用方法(参考発明)を提供できる。
【0016】
すなわち、前記課題を解決するための手段(1)項に記載の本発明の低密度熟成土壌は、見かけ比重が0.40~0.43のソフトな低密度熟成土壌であり、微生物相が安定した休眠中のおよそ12億~20億菌体群、平均的に16億個の菌体が土壌1g中に存在するほぼ発酵が終了した土であり、家畜舎の敷料として使用した場合に、糞や尿の水分の透水性も見かけ比重が大きい発酵土に比べて優れており、家畜の居住環境として快適なものとし得る。しかも、糞尿で汚れた場合に、見かけ比重が0.40~0.43のソフトな低密度熟成土壌に再生が可能な土壌である。
【0017】
また、前記課題を解決するための手段(2)項に記載の見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の製造方法(参考発明)は、糞で汚れ尿で湿った汚れた敷料などの家畜廃棄物より、本発明で有用な見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を製造できる。
【0018】
また、前記課題を解決するための手段(3)項に記載の参考発明である見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の再生方法により、見かけ比重が0.40~0.43であった低密度熟成土壌が糞で汚れ及び/または尿などで湿ってきた汚物含有低密度熟成土壌を見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生できるので、再生した低密度熟成土壌を家畜舎の床上に敷く敷料として使えるので、堆肥にすることにより大量の堆肥がたまってくることが避けられ、繰り返し敷料として使用できる。したがって、堆肥にするためのように、120日ほどの長期間を必要とせず、例えば1週間ほどの短期間で、糞尿で汚れた低密度熟成土壌を、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生し、敷料として交換でき、糞尿で汚れた低密度熟成土壌の処理に困窮することがない。従来のような堆肥舎での堆肥づくりにおける長期間の悪臭や、重労働が大幅に軽減できる。
また、再生された発酵土は、見かけ比重が0.40~0.43のソフトな低密度熟成土壌であり、糞や尿の水分の透水性も見かけ比重が大きい熟成土壌に比べて優れており、家畜の居住環境として快適なものとなし得る。
【0019】
また、前記課題を解決するための手段(4)項に記載の見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の再生方法(参考発明)においては、再生処理の対象となる前記汚物含有低密度熟成土壌の含水率が48~58質量%のものを使用することにより、含水率がこの程度だと再生処理の時間が比較的短時間で済み、しかも、含水率がこの範囲に達するまでは、敷料として使用しても、ひどくべちゃべちゃにならず取り替えまでの期間をあまりに短期間で取り替えなくてすむ。
【0020】
また、前記課題を解決するための手段(5)項に記載の低密度熟成土壌の再生方法(参考発明)においては、堆肥にするためのように、120日ほどの長期間を必要とせず、1週間ほどの短期間で、糞尿で汚れた低密度熟成土壌を、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生できるので、敷料として使用する場合に、その交換の要求に短期間で対応でき、糞尿で汚れた低密度熟成土壌の処理に困窮することがない。従来のような堆肥舎での堆肥づくりにおける長期間の悪臭や、重労働が大幅に軽減できる。
【0021】
また、前記課題を解決するための手段(6)項に記載の本発明に好適に用いられる発酵処理装置
(参考発明)は、比較的簡単な装置で、汚物含有低密度熟成土壌を、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生することができる。
また、この装置は、前記課題を解決するための手段(2)項の製造第二工程の発酵熟成と循環空気による冷却をなしうる装置としても使用できる。また、この装置は、前記課題を解決するための手段(2)項の製造第一工程の発酵で用いる装置としても、後述する
図1を用いて説明する装置を、循環される空気を冷却するための冷却装置を作動させないで使用することができる。
【0022】
また、前記課題を解決するための手段(7)項に記載の参考発明としての低密度熟成土壌の利用方法は、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を家畜舎の敷料として用いるので、この敷料は、透水性が良いので、尿及び/又は糞からの水分がたまりにくく、家畜の居住環境として快適なものとし得る。また、この敷料は前記課題を解決するための手段(3)項に記載のようにこの敷料が、糞尿で汚れても見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生できるので、堆肥にする必要がなく、堆肥づくりにおける長期間の悪臭や、重労働が大幅に軽減できる。
【0023】
また、前記課題を解決するための手段(8)項に記載の参考発明として好適に用いられる家畜舎の床は、地盤上に施した止水層の上に、透水性アスファルト舗装層、更にその上に透水性レジンモルタル加工層を施した床材構成であって、前記止水層が、透水性レジンモルタル加工層と透水性アスファルト舗装層を透過してきた水分が集められるよう、傾斜勾配が付され、排水孔を設けて浄化槽に連絡する構造を有しているのでかかる家畜舎の床とすることにより糞尿などで汚れた低密度熟成土壌を、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生するには、家畜舎の床材が透水性層を有さない場合のように糞や尿の水分がほとんど残った低密度熟成土壌では、再生リサイクルするための発酵処理が阻害されたり長期間かかることを防止でき、この床材構成では、水分透過性があるので糞尿で汚れた低密度熟成土壌を比較的短期間での再生リサイクルができるに好都合な床材構成である。また、透水性の層を有する床とすることにより、透水性の良い見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を家畜舎の敷料として用いた場合には、当該熟成土壌の特徴を生かし、糞と尿を分離して敷料が湿るのを遅らせることができ、家畜の居住環境として快適なものとし得る。
また、尿及び/又は糞からの水分が、床下にたまり、床表面上に染み出ることを防止することができ、浄化槽に入った尿及び/又は糞からの水分は、浄化槽内にいる多くの種類の微生物が、汚水に含まれている有機物を食べて分解することにより、悪臭がなくなり、浄化処理された尿及び/又は糞からの水分を、肥料としても使用できる。
なお、透水性アスファルト舗装層には、比較的表面に凹凸があるので、透水性レジンモルタル加工は、通常、その凹凸を埋めて、平坦な床面にするために透水性アスファルト舗装層の表面側の凹部に透水性レジンモルタル加工層を形成するのが通常の透水性レジンモルタル加工であり、かかる透水性レジンモルタル加工により、床面が比較的平坦になり、床面に凹凸があると、手持ち使い用のシャベルや、家畜用ホイールローダー等で、床上に敷かれていた糞尿で汚れた使用済みの低密度熟成土壌を再生するために回収する際に、ホイールローダーのバケットやシャベルが床の凸部に突っかかったり、それにより床面が破損するのを、透水性レジンモルタル加工層で凹凸面を平坦化することにより、防止できるとともに、居住させる家畜の怪我を防止でき好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明で用いる発酵槽とそれに空気循環装置を連結した状態の発酵処理装置を示す概念簡略図。
【
図2】
図1の発酵槽を上面の屋根部分を除いて上面から見た空気供給管の配置状況を示すための概念図。
【
図3】本発明の一実施態様における低密度熟成土壌再生処理時の発酵時間の経過における菌体活動と発酵温度状況を示す線グラフ。
【
図4】本発明の家畜舎の床の概要を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、前記した課題を解決するための手段の欄、並びに発明の効果の欄でかなり詳細に説明した部分があるので、重複する部分の説明は、一部省略するが、ここに記載のない部分は、課題を解決するための手段の欄、並びに発明の効果の欄を参照いただきたい。
【0026】
本発明は、まず、休眠状態の発酵微生物菌群を12億~20億菌体含有し、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を製造するが、その方法は、前記課題を解決するための手段の(2)項に記載した通りである。
【0027】
その理解を容易にするため、その製造に使用できる製造装置が、後述する
図1や
図2の低密度熟成土壌の再生用の装置と共通する部分があるので、それを引用しながら前記見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を製造する方法を説明する。前述したように、この
図1や
図2の装置は、前記課題を解決するための手段(2)項の製造第一工程の発酵で用いる装置としても、後述する
図1で示した装置を、循環される空気を冷却するための冷却装置を作動させないで使用することができる。
【0028】
そのため引用する符号のうち、符号5の内容が変わる部分があるが、置き換えて参照いただきたい。尚ここで
図1は本発明で用いる発酵槽とそれに空気循環装置を連結した状態の発酵処理装置を示す概念簡略図であり、
図2は、
図1の発酵槽を上面の屋根部分を除いて上面から見た空気供給管の配置状況を示すための概念図である。
【0029】
前記課題を解決するための手段の(2)項に記載の製造第一工程は、いずれかの壁面などが開閉可能であるが、密閉可能な発酵槽1に、ワラやオガコなどの有機物由来の敷料に糞尿が混入した堆肥原料である家畜廃棄物5を装入し、この発酵槽1を密閉し、外気と遮断して空気を空気ブロア7から空気送給ライン9を通り、
図2の発酵槽下部に設けられた空気分配管31より複数の空気導入管11に空気が導入され、空気導入管11の側部に設けられた多数の空気噴出口13から当該空気がほぼ均一に発酵槽下部から前記家畜廃棄物5の層を通過するように循環させて、前記家畜廃棄物5を発酵させ、発酵により前記家畜廃棄物5の温度が上昇する。該発酵に伴って該家畜廃棄物5の層の上部に発生した発酵蒸気が発酵槽屋根近傍3や空気戻しライン15を通り凝集されて液体となり、空気とともに分離水回収容器17にたまり空気と液体とに分離して液体19を発酵終了時に除去する。空気と液体とに分離して液体を除去し、液体と分離された空気は、冷却用熱交換器29に冷却媒体を流すことなく再度空気循環ライン21を通って、空気ブロア7より再度前記発酵槽1内に戻し、前記家畜廃棄物5の層を通して前記密閉発酵槽1内を循環させるようにして、前記家畜廃棄物5を発酵熟成させる。特に限定するものではないが、当所導入した常温の空気で、発酵により家畜廃棄物5の層はおよそ80℃近辺にまで上昇する。それに伴い循環する空気の温度も上昇していく。発酵反応が低下して発酵槽1内の前記家畜廃棄物5の温度が、例えば70℃などに低下してきた段階で、空気循環を止めて家畜廃棄物5を密閉発酵槽1から取り出し、常温になるまでおいて養生させて熟成土壌を得る。特に限定するものではないが、通常、常温になるまでおいて養生させるには、三方が壁で囲まれ、雨を避けるため屋根を設けたストックヤードに入れて常温になるまで養生することなどにより熟成土壌を得る。
【0030】
かくして得られた熟成土壌に、紅色非硫黄型光合成細菌群か、又は、前記家畜廃棄物と紅色非硫黄型光合成細菌群を、混合して、粉砕し、それを前記製造第二工程に記載の方法で発酵処理して、前記課題を解決するための手段の(1)項に記載の見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を得ることができる。
【0031】
製造第一工程でえられた熟成土壌を粉砕するのは、通常この熟成土壌は成人人間のこぶし大程度に固まっているものが存在するので、これを成人人間の手の親指大程度以下に粉砕することが好ましい。紅色非硫黄型光合成細菌群は、緑色を呈したもの、黒ずんだもの、薄いピンク状の物その他種々の物が作られたり、販売されているが、本発明ではワインレッド色を呈したもので、少しどぶの臭いがあるものを用い、それを得られた熟成土壌10m3当たり500~1000ミリリットル程度混合して用いることが好ましい。かかる紅色非硫黄型光合成細菌群は市販されており、例えば、三河環境微生物さとう研究所とか、たまごや商店などから容易に入手できる。
【0032】
紅色非硫黄型光合成細菌群を混合するのは、これを添加することにより、例えば発酵活動が停止して休眠状態を作るに当たり、再び活性化させる時に働きやすくする微生物相を形成して、発酵に関与する微生物の菌体数やその種類などを増やしたりする作用を発揮させるためである。
【0033】
また、前記熟成土壌に、紅色非硫黄型光合成細菌群のみでなく、家畜廃棄物も混合して用いる場合は、家畜廃棄物が前記製造第二工程の発酵の際の微生物のエサになり微生物の活動を促進するので、前記熟成土壌に有機物が少ない場合に混合して用いるのが好ましい。家畜廃棄物も混合して用いる場合の家畜廃棄物の混合割合は、特に限定するものではないが、前記熟成土壌の体積に対し、35体積%~10体積%程度で使用することが好ましい。家畜廃棄物とはワラやオガコなどの有機物由来の敷料に家畜の糞尿が混入した堆肥原料である。家畜廃棄物としては含水率が50質量%以下のものが好ましい。
【0034】
製造第二工程は、製造第一工程で得られた混合物を、密閉可能な発酵槽内に装入し、この発酵槽を密閉し、外気と遮断して空気を発酵槽下部から当該空気がほぼ均一に前記混合物の層を通過するように循環させて、前記混合物を発酵させ、該発酵に伴って該混合物層の上部に発生した発酵蒸気を空気と液体とに分離して液体を除去し、該分離された空気を前記発酵槽内に戻し、前記混合物層を通して前記密閉発酵槽内を循環させるようにして、前記混合物を発酵熟成させたのち、前記循環空気を冷却して循環させ、発酵を止めることにより見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を製造できる。
【0035】
上記発酵処理の方法は、製造第一工程と発酵処理に供する原料が異なることと最後に前記循環空気を冷却して循環させ、発酵を止める点を除いて、製造第一工程と同様の方法であり、その製造装置も前記循環空気を冷却して循環させることを作動させる循環空気冷却装置を使用する点を除いて、共通であり、後述する、再生第一工程で用いる発酵槽や再生第二工程で用いる装置とも共通の装置である。そのため
図1や
図2を引用しながら製造第二工程を説明するが、引用する符号のうち、符号5の内容が変わる部分があるが、置き換えて参照いただきたい。
【0036】
すなわち製造第二工程は、いずれかの壁面などが開閉可能であるが、密閉可能な発酵槽1に、前記第一製造工程で得られた熟成土壌に、紅色非硫黄型光合成細菌群か、又は、前記家畜廃棄物と紅色非硫黄型光合成細菌群を、混合して、粉砕した混合物5を装入し、この発酵槽1を密閉し、外気と遮断して空気を空気ブロア7から空気送給ライン9を通り、
図2の発酵槽下部に設けられた空気分配管31より複数の空気導入管11に空気が導入され、空気導入管11の側部に設けられた多数の空気噴出口13から当該空気がほぼ均一に発酵槽下部から前記混合物5の層を通過するように循環させて、前記混合物5を発酵させ、発酵により前記家畜廃棄物5の温度が上昇する。
該発酵に伴って該家畜廃棄物5の層の上部に発生した発酵蒸気が発酵槽屋根近傍3や空気戻しライン15を通り凝集されて液体となり、空気とともに分離水回収容器17にたまり空気と液体とに分離して液体19を発酵終了時に除去する。空気と液体とに分離して液体を除去し、液体と分離された空気は、冷却用熱交換器29に冷却媒体を流すことなく再度空気循環ライン21を通って、空気ブロア7より再度前記発酵槽1内に戻し、前記混合物5の層を通して前記密閉発酵槽1内を循環させるようにして、前記混合物5を発酵熟成させる。当所導入した常温の空気で、好気性菌から始まる菌の増殖熱などにより、温度が上昇し、発酵により前記混合物5の層はおよそ80℃近辺にまで上昇する。それに伴い循環する空気の温度も上昇していく。発酵反応が低下して発酵槽1内の前記混合物5の温度が、例えば70℃などに低下してきた段階で、冷却水を冷却ユニット23から冷水供給ライン25を通して冷却用熱交換器29に送り、前記循環空気を冷却して循環させて前記混合物を常温に戻し、発酵を止めて、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を製造することができる。
【0037】
この土壌は課題を解決するための手段(1)項に記載の休眠状態の発酵微生物菌を12億~20億菌体含有し、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌である。休眠状態は、微生物が増殖も死滅もしておらず発酵機能が極めて低下している状態である。また、得られた低密度熟成土壌中には、発酵温度の上昇により病原菌は死滅していて、実質上存在しない見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌である。
【0038】
微生物菌体数は、測定対象となる熟成土壌1g中の微生物菌体数である(以下同様)。ちなみに微生物菌体数は、例えば京都微生物研究所、株式会社日吉、株式会社テクノサイエンスやその他大学研究機関や微生物研究所、その他微生物菌体を扱う企業に依頼して測定できる。
【0039】
また、見かけ比重について言及すると、表面や内部に空隙を持つ物質のその空隙を含めた単位容積の質量を見掛け密度や嵩(かさ)密度といい、単位は通常g/cm3である。一方、これを水の密度との比で表したものが見掛け比重(単位なし)であり、嵩(かさ)比重ともいう。
【0040】
かくして得られた見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌は、家畜舎の敷料として、糞や尿の水分の透水性もよく、きわめて有効に使用でき、しかも、家畜舎の敷料として使用することにより、糞尿で汚れてしまった前記低密度熟成土壌を、当初のような見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生可能であるという利点を有する。
【0041】
なお、発酵槽を密閉し、外気と遮断して外気を注入せずに、空気を発酵処理槽下部から繰り返し循環させるのは、発酵工程前半部は、ほぼ酸素がある空気で好気性発酵菌から始まる菌の増殖熱で温度が上昇し、前記発酵処理の対象物の発酵熟成が進み、発酵工程後半部は、酸素が好気性発酵菌により消費されて酸素が少なくなった空気が循環されることにより、ほぼ嫌気性発酵菌により前記発酵処理の対象物を発酵熟成させることができるので、外気と遮断して空気を繰り返し循環させて発酵させる意味がある。他の工程でも同様に、発酵槽を密閉し、外気と遮断して外気を注入せずに、空気を発酵処理槽下部から繰り返し循環させる工程を採用する意味は、上記と同様である。
【0042】
かくして得られた見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を好ましくは、前記課題を解決するための手段の(8)項に記載したような畜舎の床、すなわち地盤上に施した止水層の上に、透水性アスファルト舗装層、更にその上に透水性レジンモルタル加工層を施した床材構成の床の上に敷料として使用すると、透水性の良い見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の透水性と畜舎の床の透水性とで、糞と尿の水分を分離して敷料が湿るのを遅らせることができ、家畜の居住環境として快適なものとし得るとともに、この床材構成では、水分透過性があるので糞尿で汚れた低密度熟成土壌の水分を少なく保つことができ、それ故、糞尿で汚れた低密度熟成土壌を、元のような見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生するのに、家畜舎の床材が透水性層を有さない場合のように糞や尿の水分がほとんど残った低密度熟成土壌では、再生リサイクルするための発酵処理が阻害され本発明のような短期間での再生リサイクルができない恐れがある。
【0043】
しかして、糞尿で汚れた前記低密度熟成土壌を、元のような見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生する方法は、前記課題を解決するための手段の(3)項に記載した方法である。
【0044】
即ち、見かけ比重が0.40~0.43であった低密度熟成土壌が糞で汚れ及び/または尿などで湿ってきた汚物含有低密度熟成土壌を密閉可能な発酵槽に装入するか、又は、前記汚物含有低密度熟成土壌に紅色非硫黄型光合成細菌群を散布して前記発酵槽に装入する再生第一工程、
前記再生第一工程で装入された汚物含有低密度熟成土壌の入った発酵槽を密閉し、外気と遮断して空気を発酵槽下部から当該空気がほぼ均一に前記汚物含有低密度熟成土壌の層を通過するように循環させて、前記汚物含有低密度熟成土壌を発酵させ、該発酵に伴って前記汚物含有低密度熟成土壌層の上部に発生した発酵蒸気を空気と液体とに分離して液体を除去し、該分離された空気を前記発酵槽内に戻し、前記汚物含有低密度熟成土壌層を通して前記密閉発酵槽内を循環させるようにして、前記汚物含有低密度熟成土壌を発酵熟成させたのち、前記循環空気を冷却して循環させ、発酵を止め、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を再生する再生第二工程
とを含む工程で、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を再生することができる。
【0045】
なお、糞尿などで汚れた汚物含有低密度熟成土壌を発酵槽に装入して発酵させる場合に必要に応じ紅色非硫黄型光合成細菌群を散布して発酵させるが、これを添加することにより、発酵に関与する微生物の活動を向上させたり、菌体数やその種類などを増やしたりする作用により、糞尿で汚れた低密度熟成土壌を何度も繰り返して、元のような見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生する際に、発酵に関与する微生物菌が少なくなってきた場合、活動が低下してきた場合などに紅色非硫黄型光合成細菌群を散布して発酵させるのが有効である。発酵には、発酵に関与する微生物菌数が1g当たり12億個~20億個、平均的に16億個前後存在することが好ましいので、微生物菌数が少ない場合に光合成細菌類の紅色非硫黄型光合成細菌群を散布して発酵に関与する微生物菌数を増やすことが好ましい。紅色非硫黄型光合成細菌群を散布する量は、特に限定するものではないが、目安として糞尿で汚れた低密度熟成土壌10m3当たり500~1000ミリリットル程度混合して用いることが好ましい。
【0046】
見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を再生する方法を、より理解を容易にするためにそれに使用する課題を解決するための手段(6)項に記載した装置の説明と合わせて、以下、
図1、
図2を引用しながら説明する。
【0047】
図1において、1はいずれかの壁面などが開閉可能であるが、密閉可能な発酵槽であり、5は発酵槽に装入された糞で汚れ及び/または尿などで湿ってきた汚物含有低密度熟成土壌、つまり、もともと見かけ比重が0.40~~0.43の低密度熟成土壌が家畜舎の敷料として使用された結果、糞や尿で汚れた発酵処理の対象となる汚物含有低密度熟成土壌である。前記糞尿で汚れた低密度熟成土壌を再生するには、糞尿で汚れた低密度熟成土壌の含水率が48~58質量%程度になった段階で再生処理することが好ましい。
含水率がこの程度だと短時間で再生がしやすいし、しかも、あまりに含水率が少ない段階で再生処理すると、敷料として使用する期間が短すぎて頻繁に再生処理しなくてはならないが、家畜の居住環境としても汚染がひどい状況でない状態での含水率であるので、上記程度の含水率の汚物含有低密度熟成土壌を再生処理することが好ましい。
【0048】
前述したように必要に応じこの汚物含有低密度熟成土壌に紅色非硫黄型光合成細菌群を散布した汚物含有低密度熟成土壌を発酵槽に装入してもよい。これらの汚物含有低密度熟成土壌の入った発酵槽1を密閉し、外気と遮断して空気を空気ブロア7から空気送給ライン9を通り、
図2の空気分配管31より複数の空気導入管11に空気が導入され、空気導入管11の側部には多数の空気噴出口13が設けられており(本来、空気導入管11は管状であり、空気噴出口13はその管壁に開けられた小穴であるが、本図では簡略化してこれをまとめて鎖線で示している)、空気噴出口13より出た空気はほぼ均一に前記汚物含有低密度熟成土壌5の層を通過して、汚物含有低密度熟成土壌の層を上昇し、発酵により温度が上昇する。特に限定するものではないが、例えば、一実施態様例を取り上げて説明すると、装入された汚物含有低密度熟成土壌の発酵槽中の高さが0.8~1.2m近傍の場合(全容量は関係ないが例えば7~8m
3程度)、発酵中の汚物含有低密度熟成土壌は、最高80℃近辺まで上昇する。この場合の温度変化は、
図3の102の発酵槽内の低密度熟成土壌の温度のグラフで示した。これにより発酵に伴って該汚物含有低密度熟成土壌層の上部に発生した発酵蒸気が発酵槽屋根近傍3や空気戻しライン15を通り凝集されて液体となり、空気とともに分離水回収容器17にたまり空気と液体とに分離して液体19を発酵終了時に除去する。この液体は肥料として使用できる。液体の量はこの実施の形態例では1分間で約1cc前後で少ないので、大量の外気が入らないようにして、随時、液体を除去する構造としてもよい。液体と分離された空気は、冷却用熱交換器29に冷却媒体を流すことなく再度空気循環ライン21を通って、空気ブロア7より再度前記発酵槽1内に戻し、前記汚物含有低密度熟成土壌層5を通して前記密閉発酵槽1内を循環させるようにして、前記前記汚物含有低密度熟成土壌5を発酵熟成させる。発酵反応が低下してきた段階、前記再生第一工程の開始から140~150時間経過し発酵槽内部の温度が75~70℃に低下してきた段階、例えば一実施の形態例の
図3の発酵時間と汚物含有低密度熟成土壌の温度の関係の線グラフのグラフ102で発酵物の温度がやや低下してきた段階(
図3に示した例では発酵処理開始から約140時間後)で、冷却用熱交換器29に冷却媒体を流して、前記循環空気を冷却して循環させて発酵槽中の再生処理対象物を常温に戻し、発酵を止めて、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を再生する。なお、
図3の符号100で示した線グラフは、上記発酵処理中の低密度熟成土壌1g中の微生物菌体数の変化を示すグラフである。
図3において、左端に記載した「汚物SFS 」とは、処理対象となる汚物含有低密度熟成土壌を意味し、右端に記載した「再生SFS 」とは、発酵処理で再生された見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を意味している。
【0049】
なお、すでに説明した発酵温度や発酵時間等は、処理対象となる汚物含有低密度熟成土壌の発酵槽内の積み上げられた高さ、汚物含有低密度熟成土壌中の汚物含有量や水分量、内蔵されている休眠状態にあった微生物の量などによって多少異なってくる。
【0050】
前述した冷却は7~3℃程度、例えば5℃前後の冷却水を
図1の冷却ユニット23から冷水送給ライン25を通して冷却用熱交換器29に送り、冷水の温度が熱くならないよう冷水戻しライン27で冷却ユニット23に戻して循環させて冷水の温度を保ち、熱交換器29中の空気循環ライン21に空気を通して、それにより温度の低下した空気を、12~18時間程度、例えば15時間ほど送って循環し、糞などが微生物により分解され、元のような見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を再生できる。
【0051】
かくして再生した低密度熟成土壌を、家畜舎用の敷料として、好ましくは前述した止水コンクリート層や止水モルタル層などの止水層の上に透水性アスファルト舗装層、更にその上に透水性レジンモルタル加工層を施した床材を有する家畜舎の床などの上におよそ2~4cmの厚さで敷いて敷料として使用することができる。上述したこのような再生の循環作業により、糞で汚れ及び/または尿などで湿ってきた汚物含有低密度熟成土壌を堆肥などにすることなく再利用でき、堆肥舎などが満杯になって困ることがない。
【0052】
なお、発酵槽を密閉し、外気と遮断して外気を注入せずに、空気を発酵処理槽下部から繰り返し循環させるのは、前述したように、発酵工程前半部は、ほぼ酸素がある空気で好気性発酵菌から始まる菌の増殖熱で温度が上昇し、前記糞尿で汚れた低密度熟成土壌の発酵熟成が進み、発酵工程後半部は、酸素が好気性発酵菌により消費されて酸素が少なくなった空気が循環されることにより、ほぼ嫌気性発酵菌により前記敷料を発酵熟成させることができるので、外気と遮断して空気を繰り返し循環させて発酵させる意味がある。
【0053】
なお、発酵槽は、土地に固定した建造物にせず、例えばトラックなどで運べるコンテナ式の移動可能な発酵槽にしておくことが好ましい。
【0054】
移動可能な発酵槽にすることにより、家畜舎と発酵処理場が離れていたり、家畜舎で畜産業を営む者と、糞尿で汚れた低密度熟成土壌を、回収して発酵処理し、元のような見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生する業者とが異なる場合など、
図1の空気送給ライン9と空気戻しライン15を発酵槽1から外して、発酵槽1を空気ブロア7や分離水回収容器17や冷却ユニット23と切り離し、例えば空の発酵槽1を糞尿で汚れた低密度熟成土壌を再生したい家畜舎に運んで、糞尿で汚れた低密度熟成土壌を発酵槽1に収納し、それを発酵処理場に運搬し、
図2の空気送給ライン9と空気戻しライン15と接続し、発酵処理をし、発酵処理が終了し、再生された低密度熟成土壌の入った発酵槽1を空気送給ライン9と空気戻しライン15から外して、家畜舎に運んで、家畜舎の床に敷くという作業をするのに便利である。
【0055】
このような移動可能な発酵槽とすることにより、複数個の移動可能な発酵槽を使い、それぞれ糞で汚れ及び/又は尿などで湿ってきた汚物含有低密度熟成土壌を回収して入れるか、又は、前記回収した汚物含有低密度熟成土壌に更に紅色非硫黄型光合成細菌群を散布した土壌を入れるための空の発酵槽(H1ステージ発酵槽)、
糞で汚れ及び/又は尿などで湿ってきた汚物含有低密度熟成土壌、又はそれに紅色非硫黄型光合成細菌群を散布した土壌を入れて前記再生第二工程前半の発酵熟成をさせている発酵槽(H2ステージ発酵槽)、
前記再生第二工程後半の、発酵を止め、再生された見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌が入っている発酵槽(H3ステージ発酵槽)
を順次
空の発酵槽であった発酵槽(H1ステージ発酵槽)に、糞で汚れ及び/又は尿などで湿ってきた汚物含有低密度熟成土壌、又はそれに紅色非硫黄型光合成細菌群を散布した土壌を入れて前記再生第二工程前半の発酵熟成をさせる発酵槽(H2ステージ発酵槽)として使用し、
前記糞で汚れ及び/又は尿などで湿ってきた汚物含有低密度熟成土壌、又はそれに紅色非硫黄型光合成細菌群を散布した土壌を入れて前記再生第二工程前半の発酵熟成をさせていた発酵槽(H2ステージ発酵槽)を前記再生第二工程後半の、発酵を止め、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌が入っている発酵槽(H3ステージ発酵槽)として使用し、
前記再生第二工程後半の、発酵を止め、再生した見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌が入っている発酵槽(H3ステージ発酵槽)から再生した見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を取り出して家畜舎の床上に前記再生した低密度熟成土壌を敷き、この発酵槽を空にして前記再生第一工程で糞で汚れ尿などで湿ってきた汚物含有低密度熟成土壌を回収して入れるか、又は、前記回収した汚物含有低密度熟成土壌に紅色非硫黄型光合成細菌群を散布した土壌を入れるための空の発酵槽(H1ステージ発酵槽)として使用するようにして、
各発酵槽を順次前記(H1ステージ発酵槽)→(H2ステージ発酵槽)→(H3ステージ発酵槽)と繰り返し循環ローテーションさせて使用することにより、再生した見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を供給できる期間を短縮することができ好ましい。
【0056】
この場合、再生した見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の供給量を多くしたり供給期間を短縮するために各ステージの発酵槽を複数個用いてもよい。
【0057】
かかる繰り返し循環ローテーションシステムにより、敷料の交換が必要な時に、糞尿などで汚れたままの敷料で我慢することなく、直ちに、再生した見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を供給でき好ましい。
【0058】
また、本発明に好適に用いられる家畜舎の床は、課題を解決するための手段(8)項に記載したように、地盤上に施した止水層の上に、透水性アスファルト舗装層、更にその上に透水性レジンモルタル加工層を施した床材構成であって、前記止水層が、透水性レジンモルタル加工層と透水性アスファルト舗装層を透過してきた水分が集められるよう、傾斜勾配が付され、排水孔を設けて浄化槽に連絡する構造を有する家畜舎の床である。
【0059】
かかる構造の家畜舎の床の概要を示す部分断面図を
図4に示した。
図4において、50が止水層、52が透水性アスファルト舗装層、54が透水性レジンモルタル加工層である。
【0060】
止水層としては、止水コンクリート層や止水モルタル層(セメントと砂からなる層)が用いられ、地盤が軟弱であったり、すでに上記本発明の家畜舎の床の構成とせずに長年使用し続けた結果、糞尿などの水分などで地盤が軟弱になっている場合に、当該地盤に硬化剤を注入して改良した地盤にした上で、その上に止水モルタル層などの止水層を施すのが好ましい。
【0061】
透水性アスファルト舗装層としては特に限定するものではないが、砕石やクラッシャランを骨材として、それをアスファルトに使われるコールタールなどで結合させ例えば空隙率15~20体積%としたポーラスアスファルト舗装の層などであり、透水性レジンモルタル加工層も特に限定するものではないが、骨材として樹脂骨材やセラミックスなどを例えばエポキシ樹脂やポリウレタン樹脂、その他の合成樹脂などで結合させ空隙率をほぼ15~20体積%としたポーラスな層などである。
【0062】
なお、透水性アスファルト舗装層には、比較的表面に凹凸があるので、透水性レジンモルタル加工は、一般的にその凹凸を埋めて、平坦な床面にするために透水性アスファルト舗装層の表面側の凹部に透水性レジンモルタル加工層を施すのが通常の透水性レジンモルタル加工であり、かかる透水性レジンモルタル加工により、床面が比較的平坦になり、床面に凹凸があると、手持ち使い用のシャベルや、家畜用ホイールローダー等で、床上に敷かれていた糞尿で汚れた使用済みの低密度熟成土壌を再生するために回収する際に、ホイールローダーのバケットやシャベルが床の凸部に突っかかったり、それにより床面が破損するのを、透水性レジンモルタル加工層で凹凸面を平坦化することにより、防止できるとともに、居住させる家畜の怪我を防止でき好ましい。
【0063】
家畜舎の床材が透水性層を有さない場合には、糞や尿の水分がほとんど残った低密度熟成土壌では、再生リサイクルするための発酵処理が阻害され本発明のような短期間での再生リサイクルができない恐れがある。また、透水性の層を有する床とすることにより、透水性の良い見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の特徴を生かし、糞と尿を分離して敷料が湿るのを遅らせることができ、家畜の居住環境として快適なものとし得る。
【0064】
更には、前記止水コンクリート層又は止水モルタル層は、透水性レジンモルタル加工層と透水性アスファルト舗装層を透過してきた尿及び/又は糞からの水分が集められるよう、傾斜勾配が付され、排水孔を設けて浄化槽に連絡する構成であることが好ましい。
【0065】
この構成とすることにより、尿及び/又は糞からの水分が、床下にたまり、床表面上に染み出ることを防止することができ好ましい。また、浄化槽に導かれた尿及び/又は糞からの水分は、浄化槽内にいる多くの種類の微生物が、汚水に含まれている有機物を食べて分解することにより、悪臭がなくなり、浄化処理された尿及び/又は糞からの水分を、肥料として使用できる。
【0066】
このような透水性レジンモルタル加工(PRMS工法)は、透水性レジンモルタルシステム工法協議会(PRMS協議会)に加盟している企業などが提供している周知の工法である。例えば、オサダ技研株式会社、中外商工株式会社、大林道路株式会社、鹿島道路株式会社、日本道路株式会社等々が例示される。
【0067】
また、本発明の低密度熟成土壌の利用方法は、課題を解決するための手段(7)項に記載した通り、見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を家畜舎の敷料として用いることを特徴とする低密度熟成土壌の利用方法である。
【0068】
見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を家畜舎の敷料として用いるので、この敷料は、透水性が良いので、尿及び/又は糞からの水分がたまりにくく、家畜の居住環境として快適なものとし得る。また、この敷料は前記課題を解決するための手段(3)項に記載のようにこの敷料が、糞尿で汚れても見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌に再生できるので、堆肥にする必要がなく、堆肥づくりにおける長期間の悪臭や、重労働が大幅に軽減できる。
【0069】
特に課題を解決するための手段(8)項に記載の透水性を有する家畜舎の床の上に、敷料として用いると、透水性の良い見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌の特徴を生かし、糞と尿を分離して敷料が湿るのを遅らせることができ、家畜の居住環境として快適なものとし得るので一層好ましい。また、家畜舎の床材が透水性層を有さない場合のように糞や尿の水分がほとんど残った低密度熟成土壌では、再生リサイクルするための発酵処理が阻害されたり長期間かかることがあるが、透水性層を有する家畜舎の床の上に、敷料として用いると、発酵処理が阻害されたり長期間かかるのを防止できより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、畜産業に有効に使用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 発酵槽
3 発酵槽屋根近傍
5 汚物含有低密度熟成土壌層
7 空気ブロア
9 空気送給ライン
11 空気導入管
13 空気噴出口
15 空気戻しライン
17 分離水回収容器
19 発酵蒸気の凝集された液体
21 空気循環ライン
23 冷却ユニット
25 冷水送給ライン
27 冷水戻しライン
29 冷却用熱交換器
31 空気分配管
50 止水層
52 透水性アスファルト舗装層
54 透水性レジンモルタル加工層
100 発酵処理中の低密度熟成土壌1g中の微生物菌体数の変化を示すグラフ
102 発酵槽内の低密度熟成土壌の温度の変化を示すグラフ
【要約】 (修正有)
【課題】畜産ゴミの排出と悪臭環境を改善し、糞尿で汚れた敷料を元の敷料に短時間で再生し得る熟成土壌、その利用方法、その製法、再生方法、再生装置、家畜舎用床を提供する。
【解決手段】密閉可能な発酵槽内に家畜廃棄物を装入し、外気と遮断して空気を発酵槽1に循環させて得た熟成土壌に紅色非硫黄型光合成細菌群か、又はそれと紅色非硫黄型光合成細菌群を、混合して、粉砕し、当該粉砕物を密閉可能な発酵槽内に装入し、外気と遮断して空気を発酵槽に循環させて得た見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を提供する、及び当該見かけ比重が0.40~0.43であった低密度熟成土壌が糞尿などで汚れた汚物含有低密度熟成土壌を密閉し得る発酵槽に装入し、外気と遮断して空気を発酵槽に循環させて前記汚物含有低密度熟成土壌を発酵させ、元のような見かけ比重が0.40~0.43の低密度熟成土壌を再生する。
【選択図】
図1