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特許7134542無機物内包セルロース粒子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】無機物内包セルロース粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/16 20060101AFI20220905BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220905BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
C08J3/16 CEP
C08K3/00
C08L1/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022522176
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2021018034
(87)【国際公開番号】W WO2021230284
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2020083983
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390028048
【氏名又は名称】根上工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】西田 恵子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慶
(72)【発明者】
【氏名】辰田 咲奈
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-153995(JP,A)
【文献】特開2007-211131(JP,A)
【文献】特開2007-056086(JP,A)
【文献】特開2005-139127(JP,A)
【文献】特開2001-098110(JP,A)
【文献】特開平06-254373(JP,A)
【文献】特開昭63-083114(JP,A)
【文献】特開昭63-095238(JP,A)
【文献】特開2001-310901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08B 1/00-37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースを含むセルロース粒子に無機物が内包された無機物内包セルロース粒子であって、
前記無機物と前記セルロースとの質量比(無機物/セルロース)が2/8~8/2であり、
平均粒子径が1~300μmであり、
前記無機物が脂肪酸で表面処理されている 、無機物内包セルロース粒子。
【請求項2】
吸湿率が3%以下である、請求項1に記載の無機物内包セルロース粒子。
【請求項3】
前記無機物の屈折率が1.43~2.00である、請求項1又は2に記載の無機物内包セルロース粒子。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の無機物内包セルロース粒子の製造方法であって、
酢酸セルロースが有機溶媒に溶解した酢酸セルロース溶液と前記無機物とを、前記無機物と前記セルロースとの質量比(無機物/セルロース)が2/8~8/2となるように混合した樹脂混合液を水中に懸濁させ、前記無機物を内包した酢酸セルロース粒子が水中に分散した懸濁液を調製し、
前記懸濁液から前記有機溶媒を除去し、
前記酢酸セルロース粒子を鹸化して、前記セルロース粒子に前記無機物が内包された無機物内包セルロース粒子とする、無機物内包セルロース粒子の製造方法。
【請求項5】
懸濁安定剤及び界面活性剤の存在下で前記樹脂混合液を水中に懸濁させる、請求項に記載の無機物内包セルロース粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機物内包セルロース粒子及びその製造方法に関する。
本願は、2020年5月12日に、日本に出願された特願2020-083983号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリルビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリウレタンビーズ等の粒子が、塗料、プラスチック、粘着剤、化粧品等の種々の製品に使用されている。
近年、海洋環境におけるマイクロプラスチックの問題が大きく取り上げられているため、天然物を原料とするマイクロメートルスケールのセルロース粒子のニーズが高まっている。
【0003】
セルロース粒子の製造方法としては、例えば特許文献1に記載の方法が知られている。特許文献1には下記の(1)、(2)の方法が記載されている。
(1):セルロースエステルの有機溶媒中の溶液を原液として、乾式紡糸法により製造したセルロースエステルのフィラメントを切断してチップとなし、チップを媒体中で加熱溶融することによりセルロースエステルの球状粒子を形成し、次いでこれを鹸化する方法。(2):セルロースエステルの有機溶媒中の溶液を原液として、原液をその有機溶媒に溶解しないか又はわずかしか溶解しない媒体中に懸濁させ、懸濁粒子を含有する媒体を加熱して有機溶媒を蒸発させることにより、セルロースエステルの球状粒子を形成し、次いでこれを鹸化する方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭55-40618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のセルロース粒子にあっては、吸湿しやすいという特性を有するため、吸湿による経時安定性に問題がある。また、セルロース粒子を塗料、プラスチック、粘着剤、化粧品等の製品に適用した際に、製品に含まれる水分により不具合が生じる場合がある。
本発明は、低吸湿性に優れる無機物内包セルロース粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] セルロースを含むセルロース粒子に無機物が内包された無機物内包セルロース粒子であって、前記無機物と前記セルロースとの質量比(無機物/セルロース)が2/8~8/2であり、平均粒子径が1~300μmである、無機物内包セルロース粒子。
[2] 吸湿率が3%以下である、前記[1]の無機物内包セルロース粒子。
[3] 前記無機物の屈折率が1.43~2.00である、前記[1]又は[2]の無機物内包セルロース粒子。
[4] 前記無機物が脂肪酸及びシラン化合物の少なくとも一方で表面処理されている、前記[1]~[3]のいずれかの無機物内包セルロース粒子。
[5] 前記質量比(無機物/セルロース)が、好ましくは4/6~8/2であり、より好ましくは6/4~8/2である、前記[1]~[4]のいずれかの無機物内包セルロース粒子。
[6]平均粒子径が好ましくは1~150μmが好ましく、より好ましくは1~100μmである、前記[1]~[5]のいずれかの無機物内包セルロース粒子。
[7]前記無機物が、好ましくは炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、カオリン、シリカ、及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、より好ましくは炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、シリカ、及びタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、さらに好ましくは炭酸カルシウム、及びステアリン酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、前記[1]~[6]のいずれかの無機物内包セルロース粒子。
[8] 前記[1]~[7]のいずれかの無機物内包セルロース粒子の製造方法であって、酢酸セルロースが有機溶媒に溶解した酢酸セルロース溶液と前記無機物とを、前記無機物と前記セルロースとの質量比(無機物/セルロース)が2/8~8/2となるように混合した樹脂混合液を水中に懸濁させ、前記無機物を内包した酢酸セルロース粒子が水中に分散した懸濁液を調製し、前記懸濁液から前記有機溶媒を除去し、前記酢酸セルロース粒子を鹸化して、前記セルロース粒子に前記無機物が内包された無機物内包セルロース粒子とする、無機物内包セルロース粒子の製造方法。
[9] 懸濁安定剤及び界面活性剤の存在下で前記樹脂混合液を水中に懸濁させる、前記[8]の無機物内包セルロース粒子の製造方法。
[10] 前記質量比(無機物/セルロース)が、好ましくは4/6~8/2であり、より好ましくは6/4~8/2である、前記[8]又は[9]の無機物内包セルロース粒子の製造方法。
[11] 酢酸セルロース100質量部に対して、無機物の割合が好ましくは15~240質量部、より好ましくは40~240質量部、さらに好ましくは90~240質量部となるように酢酸セルロース溶液と無機物とを混合する、前記[8]~[10]のいずれかの無機物内包セルロース粒子の製造方法。
[12] 前記酢酸セルロースが、モノアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びトリアセチルセルロースからなる群より選ばれる、前記[8]~[11]のいずれかの無機物内包セルロース粒子の製造方法。
[13] 前記有機溶媒が、1013hPaにおける水との共沸点が100℃以下である溶媒である、前記[8]~[12]のいずれかの無機物内包セルロース粒子の製造方法。
[14] 前記有機溶媒が、好ましくはトルエン、ベンゼン等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;及びn-ヘプタン、n-ヘキサン、n-オクタン等の飽和脂肪族炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒である、前記[8]~[13]のいずれかの無機物内包セルロース粒子の製造方法。
[15] 水と、懸濁安定剤と、界面活性剤とを含む分散媒水溶液に、前記樹脂混合液を懸濁させることにより、前記樹脂混合液を水中に懸濁させる、前記[8]~[14]のいずれかの無機物内包セルロース粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低吸湿性に優れる無機物内包セルロース粒子及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[無機物内包セルロース粒子]
本発明の無機物内包セルロース粒子は、セルロースを含むセルロース粒子に無機物が内包されたものである。すなわち、無機物内包セルロース粒子は、セルロースと無機物とを含む。無機物内包セルロース粒子は、本発明の効果を損なわない範囲内で、セルロース及び無機物以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては、例えば微量の酢酸セルロース、懸濁安定剤、界面活性剤、水分、有機フィラー、顔料(ただし、無機物を除く。)、薬材などが挙げられるが、他の成分はこれらの例示に限定されない。
なお、本発明において、「無機物が内包された」とは、無機物がセルロース粒子の内部に包含されることを意味する。無機物は、その全体がセルロース粒子に包含されていてもよいし、無機物の一部がセルロース粒子の表面に露出していてもよい。
「無機物が内包された」状態であることは、粒子断面または粒子表面について、光学顕微鏡により目視で観察する方法や走査電子顕微鏡による画像を分析する方法などによって確認することができる。
また、「無機物内包セルロース粒子」は、複数の無機物粒子が一つのセルロース粒子に内包されている形態の粒子であっても、一つの無機物粒子がセルロースで被覆されているような形態の粒子であっても構わない。また、これ等の形態の粒子の混合物であっても構わない。
なお、無機物が内包されたセルロース粒子と、少量の無機物が内包されていないセルロース粒子とが混在しているような場合も、粒子の集合体全体として本発明の要件を満たし、本発明の効果が得られる限り、本発明の範囲から排除されるものではない。このような場合、無機物が内包されていないセルロース粒子の量は、好ましくは8%以下であり、より好ましくは5%以下である。
【0009】
無機物の屈折率は1.43~2.00が好ましく、1.43~1.80がより好ましく、1.45~1.75がさらに好ましく、1.45~1.70が特に好ましい。無機物の屈折率が上記範囲内であれば、無機物内包セルロース粒子の透明性が維持される。
無機物の屈折率は、アッベ屈折率計を用い、25℃雰囲気下、ナトリウムD線を無機物に照射して測定される値である。
【0010】
屈折率が上記範囲内である無機物としては、例えば炭酸カルシウム(屈折率:1.50~1.69)、ステアリン酸カルシウム(屈折率:1.47)、硫酸バリウム(屈折率:1.64)、タルク(屈折率:1.54~1.59)、マイカ(屈折率:1.53)、カオリン(屈折率:1.64)、シリカ(屈折率:1.44~1.50)、アルミナ(屈折率:1.76)などが挙げられる。これらの中でも、無機物内包セルロース粒子の透明性を維持しやすい観点から炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、シリカ、タルクが好ましく、炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムがより好ましい。
無機物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機物の粒子径については、無機物内包セルロース粒子の平均粒子径が後述する範囲内となる限り特に制限はない。
【0011】
無機物は、脂肪酸及びシラン化合物の少なくとも一方(以下、脂肪酸及びシラン化合物を総称して「表面処理剤」ともいう。)で表面処理されていることが好ましい。無機物が表面処理剤で表面処理されていれば、無機物の表面の疎水性が高まり、後述の酢酸セルロース粒子への内包が容易となる。
なお、本発明において、「表面処理されている」とは、表面処理剤によって無機物の表面が被覆されていることを意味する。
【0012】
表面処理剤としては脂肪酸、シラン化合物が挙げられ、無機物が酢酸セルロース粒子へ内包されやすくなる観点から脂肪酸が好ましい。
表面処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
表面処理剤の量は、仕込み量で、無機物100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは1~3質量部である。
【0013】
脂肪酸としては、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪酸又はその塩;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸又はその塩などが挙げられる。飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩や、アンモニウム塩が挙げられる。
これらの中でも、無機物が酢酸セルロース粒子へより内包されやすくなる観点から飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。
脂肪酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
シラン化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
シラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
無機物とセルロースとの質量比(無機物/セルロース)が2/8~8/2であり、4/6~8/2が好ましく、6/4~8/2がより好ましい。質量比が上記下限値以上であれば、無機物内包セルロース粒子の低吸湿性が高まる。質量比が上記下限値以上であれば、セルロース粒子の性能(ただし、吸湿性を除く。)を好適に維持し易い。
【0016】
無機物内包セルロース粒子は、通常、球状である。
無機物内包セルロース粒子の平均粒子径は1~300μmであり、1~150μmが好ましく、1~100μmがより好ましい。無機物内包セルロース粒子の平均粒子径が上記範囲内であれば、球状の無機物内包セルロース粒子の製造が容易となる傾向にある。
無機物内包セルロース粒子の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布計を用いて測定される体積基準の平均粒子径(体積平均粒子径)である。また、この平均粒子径は、メジアン径(d50)である。
【0017】
本発明の無機物内包セルロース粒子は低吸湿性に優れることから、吸湿率は3%以下が好ましく、2.5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1.5%以下が特に好ましい。吸湿率は低いほど好ましく、0%であってもよい。
無機物内包セルロース粒子の吸湿率は以下のようにして求めることができる。
予め無機物内包セルロース粒子(例えば、1g以上)を110℃で15時間乾燥させた後、湿度100%、温度85℃の雰囲気下に放置し、無機物内包セルロース粒子に吸湿させる。放置開始から2時間経過した時点で無機物内包セルロース粒子を採取し、吸湿後の無機物内包セルロース粒子の質量(W11)を測定する。質量を測定した後の無機物内包セルロース粒子を110℃で2時間乾燥させ、乾燥後の無機物内包セルロース粒子の質量(W12)を測定し、下記式(i)より2時間吸湿後の不揮発分(N)を求める。同様に、放置開始から168時間経過した時点で無機物内包セルロース粒子を採取し、吸湿後の無機物内包セルロース粒子の質量(W21)を測定する。質量を測定した後の無機物内包セルロース粒子を110℃で2時間乾燥させ、乾燥後の無機物内包セルロース粒子の質量(W22)を測定し、下記式(ii)より168時間吸湿後の不揮発分(N)を求める。下記式(iii)より無機物内包セルロース粒子の吸湿率を求める。
(質量%)=W12/W11×100 ・・・(i)
(質量%)=W22/W21×100 ・・・(ii)
吸湿率(%)=(N-N)/N×100 ・・・(iii)
【0018】
<無機物内包セルロース粒子の製造方法>
以下、本発明の無機物内包セルロース粒子の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の無機物内包セルロース粒子の製造方法では、酢酸セルロースが有機溶媒に溶解した酢酸セルロース溶液と無機物とを、無機物とセルロースとの質量比(無機物/セルロース)が2/8~8/2となるように混合した樹脂混合液を水中に懸濁させ、無機物を内包した酢酸セルロース粒子が水中に分散した懸濁液を調製し、懸濁液から有機溶媒を除去し、酢酸セルロース粒子を鹸化して、セルロース粒子に無機物が内包された無機物内包セルロース粒子とする。酢酸セルロース粒子を鹸化して無機物内包セルロース粒子とした後さらに、固液分離により水を除去し、無機物内包セルロース粒子を乾燥させてもよい。
【0019】
本実施形態の無機物内包セルロース粒子の製造方法は、下記の工程(a)~工程(d)を有するとも言え、工程(a)~工程(d)に加えて下記の工程(e)をさらに有してもよいとも言える。
工程(a):酢酸セルロースが有機溶媒に溶解した酢酸セルロース溶液と無機物とを混合して、樹脂混合液を調製する工程。
工程(b):前記樹脂混合液を水中に懸濁させ、無機物を内包した酢酸セルロース粒子が水中に分散した懸濁液を調製する工程。
工程(c):前記懸濁液から前記有機溶媒を除去する工程。
工程(d):前記酢酸セルロース粒子を鹸化して、セルロース粒子に無機物が内包された無機物内包セルロース粒子とする工程。
工程(e):工程(d)で得られた鹸化後の水性分散液から水を除去し、無機物内包セルロース粒子を乾燥させる工程。
【0020】
工程(a)では、無機物とセルロースとの質量比(無機物/セルロース)が2/8~8/2となるように、好ましくは質量比が4/6~8/2となるように、より好ましくは質量比が6/4~8/2となるように、酢酸セルロース溶液と無機物とを混合する。
また、酢酸セルロース100質量部に対して、無機物の割合が15~240質量部となるように酢酸セルロース溶液と無機物とを混合することが好ましい。無機物の割合は、酢酸セルロース100質量部に対して40~240質量部がより好ましく、90~240質量部がさらに好ましい。
【0021】
工程(b)では、工程(a)で得られた樹脂混合液を水中に懸濁させ、無機物を内包した酢酸セルロース粒子が水中に分散した懸濁液を調製する。樹脂混合液において、酢酸セルロースは有機溶媒に溶解しているため、樹脂混合液を水中に懸濁させると、樹脂混合液が油分となり、水中に分散して、油滴を形成し、無機物を内包した酢酸セルロース粒子が水中に分散した懸濁液が得られる。
【0022】
酢酸セルロースにおいて、アセチル基の置換度、酢化率等は特に制限されない。
酢酸セルロースとしては、例えばモノアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等が挙げられる。
酢酸セルロース溶液の粘度については、特に制限されないが、500~300000mPa・sであることが好ましく、2000~100000mPa・sであることがより好ましい。ここで、粘度はBL型回転粘度計(たとえば、東機産業株式会社製「RB-85L」)を用いて、温度25℃の条件下で測定される値である。
酢酸セルロースは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
工程(a)で用いる有機溶媒としては、酢酸セルロースを溶解し得る化合物であれば特に制限されない。ただし、有機溶媒としては、水への溶解度が低いものが好ましい。また、有機溶媒としては、1013hPaにおける水との共沸点が100℃以下であるものが好ましい。
1013hPaにおける水との共沸点が100℃以下である有機溶媒としては、例えばトルエン、ベンゼン等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-オクタン等の飽和脂肪族炭化水素などが挙げられる。
有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記酢酸セルロース溶液の濃度については特に制限はないが、4~40質量%であることが好ましく、8~16質量%であることがより好ましい。
【0024】
本実施形態の無機物内包セルロース粒子の製造方法では、懸濁安定剤の存在下で樹脂混合液を水中に懸濁させることが好ましい。懸濁安定剤は、例えば、分散媒となる水に予め添加してもよい。分散媒となる水が懸濁安定剤をさらに含むと、懸濁状態が安定化する傾向があり、無機物内包セルロース粒子をさらに簡便に製造できる。
懸濁安定剤としては、例えばセルロース系水溶性樹脂(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、第3リン酸塩類などが挙げられる。尚、懸濁安定剤としてセルロース系水溶性樹脂を用いた場合、これは工程(e)において水と共に除去されるため、最終的に得られる無機物内包セルロース粒子の無機物/セルロース比には影響を与えない。
懸濁安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本実施形態の無機物内包セルロース粒子の製造方法では、界面活性剤の存在下で樹脂混合液を水中に懸濁させることが好ましい。界面活性剤は、例えば、分散媒となる水に予め添加してもよい。分散媒となる水が界面活性剤をさらに含むと、懸濁状態が安定化する傾向があり、無機物内包セルロース粒子をさらに簡便に製造できる。
界面活性剤としては特に制限されず、公知のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。
界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
工程(b)では、分散媒水溶液を予め調製し、樹脂混合液を分散媒水溶液に懸濁させ、無機物を内包した酢酸セルロース粒子が水中に分散した懸濁液を得ることが好ましい。分散媒水溶液と樹脂混合液との混合の際には、例えば、撹拌機を使用して撹拌するとよい。
【0027】
分散媒水溶液としては、水と上述の懸濁安定剤と上述の界面活性剤とを含むものが好ましい。
分散媒水溶液中の懸濁安定剤の含有量は、水100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.2~8質量部がより好ましく、0.3~7質量部がさらに好ましく、0.4~5質量部が特に好ましい。懸濁安定剤の含有量が上記下限値以上であれば、製造工程における酢酸セルロース粒子及び無機物の懸濁状態が安定しやすく、無機物内包セルロース粒子をさらに簡便に製造できる。懸濁安定剤の含有量が上記上限値以下であれば、懸濁液の粘度が高くなり過ぎず、懸濁液が製造機械のシャフトに絡みつく等の問題が起きにくくなり、粒子化が容易である。
分散媒水溶液中の界面活性剤の含有量は、水100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.01~3質量部がより好ましく、0.02~1.5質量部がさらに好ましく、0.03~0.5質量部が特に好ましい。分散媒水溶液中の界面活性剤の含有量が上記下限値以上であれば、製造工程における酢酸セルロース粒子の懸濁状態が安定しやすく、無機物内包セルロース粒子をさらに簡便に製造できる。分散媒水溶液中の界面活性剤の含有量が上記上限値以下であれば、撹拌による懸濁液の泡立ちが起きにくく、無機物内包セルロース粒子の製造がさらに容易となる。
【0028】
工程(c)では、懸濁液から有機溶媒を除去する。懸濁液においては無機物を内包した酢酸セルロース粒子及び有機溶媒が油分として水中に分散していると考えられる。そのため、工程(c)で有機溶媒を懸濁液から除去することで、無機物を内包した酢酸セルロース粒子が水中に分散した水性分散液が得られる。
工程(c)では、無機物を内包した酢酸セルロース粒子が分散した懸濁液を、前記有機溶媒の水との共沸点以上に加熱することで、有機溶媒を除去することが好ましい。工程(c)で前記有機溶媒の水との共沸点以上に加熱することで、有機溶媒を充分に除去でき、セルロース粒子に残存する有機溶媒の量をきわめて低水準に低減できる。加熱温度は、1013hPaで100℃以下が好ましい。ここで、無機物を内包した酢酸セルロース粒子は水に分散したスラリー状となっている。酢酸セルロース粒子の加熱温度を100℃超とすると、有機溶媒と共に水も揮発して除去されるため、酢酸セルロース粒子同士が融着するおそれがある。
【0029】
工程(d)では、無機物を内包した酢酸セルロース粒子を鹸化して、セルロース粒子に無機物が内包された無機物内包セルロース粒子とする。鹸化反応は、例えば、無機物を内包した酢酸セルロース粒子が水中に分散した水性分散液と塩基性化合物とを混合し、必要に応じて加熱することで行うことができる。
鹸化に使用する塩基性化合物としては特に制限されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエチルアミンなどが挙げられる。
塩基性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
鹸化反応の反応時間は、1.5~4時間が好ましく、2~3時間がより好ましい。鹸化反応の反応時間が上記下限値以上であれば、脱アセチル化が充分に進行しやすく、無機物内包セルロース粒子の酢酸臭を低減しやすい。鹸化反応の反応時間が上記上限値以下であれば、一回の製造工程に要する時間を短縮でき、製造効率が高くなる。
【0031】
鹸化反応の反応温度は、90~100℃が好ましく、93~98℃がより好ましい。鹸化反応の反応温度が上記下限値以上であれば、脱アセチル化が充分に進行しやすく、無機物内包セルロース粒子の酢酸臭を低減しやすい。鹸化反応の反応温度が上記上限値以下であれば、必要以上に反応液(無機物を内包した酢酸セルロース粒子の水性分散液)を加温しなくて済む傾向があり、さらに低コストで無機物内包セルロース粒子をさらに簡便に製造できる。
【0032】
塩基性化合物が水酸基を有する場合、塩基性化合物中の水酸基の物質量は、酢酸セルロースのアセチル基のモル数100モル%に対して、90~100モル%が好ましく、95~100モル%がより好ましく、98~100モル%がさらに好ましい。塩基性化合物中の水酸基の物質量が上記下限値以上であれば、脱アセチル化が充分に進行しやすく、無機物内包セルロース粒子の酢酸臭を低減しやすい。塩基性化合物中の水酸基の物質量が上記上限値以下であれば、必要量以上の塩基性化合物を使用せずに済む傾向があり、さらに低コストで無機物内包セルロース粒子をさらに簡便に製造できる。
【0033】
工程(e)では、工程(d)で得られた鹸化後の水性分散液から水を除去し、無機物内包セルロース粒子を乾燥させる。鹸化後の水性分散液から水を除去する方法としては特に制限されないが、例えば固液分離により水を除去する方法が好ましい。固液分離の時間、温度は、無機物内包セルロース粒子の用途に応じて適宜設定できる。
本実施形態の無機物内包セルロース粒子の製造方法によって得られる無機物内包セルロース粒子の詳細および好ましい態様は、上述の「無機物内包セルロース粒子」の項で説明した内容と同内容とすることができる。
【0034】
<作用効果>
以上説明した本発明の無機物内包セルロース粒子は、無機物がセルロース粒子に内包されており、低吸湿性に優れる。
また、本発明の無機物内包セルロース粒子の製造方法によれば、低吸湿性に優れる無機物内包セルロース粒子を簡便に製造できる。
【0035】
<用途>
本発明に係る無機物内包セルロース粒子は、塗料、プラスチック、粘着剤、化粧品、紙塗工材、繊維加工材、筆記具、マーカー等のフィラー等に使用されるマイクロビーズとして利用できる。
【実施例
【0036】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0037】
[測定方法]
<屈折率の測定>
無機物の屈折率は、アッベ屈折率計(株式会社アタゴ製、「形式1T」)を用い、25℃雰囲気下、ナトリウムD線を無機物に照射して測定した。
【0038】
<体積平均粒子径の測定>
無機物内包セルロース粒子の体積平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布計(株式会社島津製作所製、「SALD2100」)を用いて測定した。
【0039】
<吸湿率の測定>
無機物内包セルロース粒子の吸湿率は以下のようにして求めた。
予め無機物内包セルロース粒子を110℃で15時間乾燥させた後、湿度100%、温度85℃の雰囲気下に放置し、無機物内包セルロース粒子に吸湿させた。放置開始から2時間経過した時点で無機物内包セルロース粒子を採取し、吸湿後の無機物内包セルロース粒子の質量(W11)を測定した。質量を測定した後の無機物内包セルロース粒子を110℃で2時間乾燥させ、乾燥後の無機物内包セルロース粒子の質量(W12)を測定し、下記式(i)より2時間吸湿後の不揮発分(N)を求めた。同様に、放置開始から168時間経過した時点で無機物内包セルロース粒子を採取し、吸湿後の無機物内包セルロース粒子の質量(W21)を測定した。質量を測定した後の無機物内包セルロース粒子を110℃で2時間乾燥させ、乾燥後の無機物内包セルロース粒子の質量(W22)を測定し、下記式(ii)より168時間吸湿後の不揮発分(N)を求めた。下記式(iii)より無機物内包セルロース粒子の吸湿率を求めた。
(質量%)=W12/W11×100 ・・・(i)
(質量%)=W22/W21×100 ・・・(ii)
吸湿率(%)=(N-N)/N×100 ・・・(iii)
【0040】
[実施例1]
2L撹拌機付きセパラブルフラスコに水500gを仕込み、この中にヒドロキシプロピルメチルセルロース12g(水100質量部に対して2.4質量部に相当)とラウリル硫酸ナトリウム0.5g(水100質量部に対して0.1質量部に相当)を溶解して分散媒水溶液を調製した。
これとは別に、2L撹拌機付きセパラブルフラスコに酢酸エチル600gを仕込み、この中に酢酸セルロース(酢化度55%)90gを溶解して酢酸セルロース溶液を調製した。得られた酢酸セルロース溶液690gと、無機物としてステアリン酸で表面処理を施された炭酸カルシウム(株式会社ファイマテック製、「AFF-STF」、屈折率:約1.7)200g(酢酸セルロース100質量部に対して222.2質量部に相当)とを混合して、樹脂混合液を調製した。
前記分散媒水溶液に前記樹脂混合液を添加して、懸濁液を調製した。次いで、撹拌機の回転数300rpmで撹拌しながら懸濁液を90℃に昇温し、90℃で2時間加熱し、懸濁液から酢酸エチルを揮発させた。次いで、95℃に昇温し、水酸化ナトリウムを35g添加して、1.5時間保持し、酢酸セルロース粒子からアセチル基を脱離させ、セルロース粒子に無機物が内包された無機物内包セルロース粒子を得た。これにより、水中に無機物内包セルロース粒子が分散したスラリーを得た。
次いで、前記スラリーを室温まで冷却した後、ろ過により固液分離し、回収した固形物を水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、球状の無機物内包セルロース粒子を得た。
得られた無機物内包セルロース粒子の体積平均粒子径及び吸湿率を測定した。結果を表1に示す。また、無機物内包セルロース粒子における無機物とセルロースとの質量比(無機物/セルロース)を表1に示す。
【0041】
[実施例2]
実施例1と同様にして分散媒水溶液を調製した。
これとは別に、2L撹拌機付きセパラブルフラスコに酢酸エチル700gを仕込み、この中に酢酸セルロース(酢化度55%)90gを溶解して酢酸セルロース溶液を調製した。得られた酢酸セルロース溶液790gと、無機物としてステアリン酸で表面処理を施された炭酸カルシウム(株式会社ファイマテック製、「AFF-STF」、屈折率:約1.7)90g(酢酸セルロース100質量部に対して100質量部に相当)とを混合して、樹脂混合液を調製した。
得られた分散媒水溶液及び樹脂混合液を用いた以外は実施例1と同様にして、球状の無機物内包セルロース粒子を得た。
得られた無機物内包セルロース粒子の体積平均粒子径及び吸湿率を測定した。結果を表1に示す。また、無機物内包セルロース粒子における無機物とセルロースとの質量比(無機物/セルロース)を表1に示す。
【0042】
[実施例3]
実施例1と同様にして分散媒水溶液を調製した。
これとは別に、2L撹拌機付きセパラブルフラスコに酢酸エチル750gを仕込み、この中に酢酸セルロース(酢化度55%)90gを溶解して酢酸セルロース溶液を調製した。得られた酢酸セルロース溶液840gと、無機物としてステアリン酸で表面処理を施された炭酸カルシウム(株式会社ファイマテック製、「AFF-STF」、屈折率:約1.7)40g(酢酸セルロース100質量部に対して44.4質量部に相当)とを混合して、樹脂混合液を調製した。
得られた分散媒水溶液及び樹脂混合液を用いた以外は実施例1と同様にして、球状の無機物内包セルロース粒子を得た。
得られた無機物内包セルロース粒子の体積平均粒子径及び吸湿率を測定した。結果を表1に示す。また、無機物内包セルロース粒子における無機物とセルロースとの質量比(無機物/セルロース)を表1に示す。
【0043】
[実施例4]
2L撹拌機付きセパラブルフラスコに水500gを仕込み、この中にポリビニルアルコール6g(水100質量部に対して1.2質量部に相当)とラウリル硫酸ナトリウム0.5g(水100質量部に対して0.1質量部に相当)を溶解して分散媒水溶液を調製した。
これとは別に、実施例1と同様にして樹脂混合液を調製した。
得られた分散媒水溶液及び樹脂混合液を用いた以外は実施例1と同様にして、球状の無機物内包セルロース粒子を得た。
得られた無機物内包セルロース粒子の体積平均粒子径及び吸湿率を測定した。結果を表1に示す。また、無機物内包セルロース粒子における無機物とセルロースとの質量比(無機物/セルロース)を表1に示す。
【0044】
[実施例5]
2L撹拌機付きセパラブルフラスコに水500gを仕込み、この中にヒドロキシプロピルメチルセルロース3g(水100質量部に対して0.6質量部に相当)とラウリル硫酸ナトリウム0.2g(水100質量部に対して0.04質量部に相当)を溶解して分散媒水溶液を調製した。
これとは別に、実施例1と同様にして樹脂混合液を調製した。
得られた分散媒水溶液及び樹脂混合液を用いた以外は実施例1と同様にして、球状の無機物内包セルロース粒子を得た。
得られた無機物内包セルロース粒子の体積平均粒子径及び吸湿率を測定した。結果を表1に示す。また、無機物内包セルロース粒子における無機物とセルロースとの質量比(無機物/セルロース)を表1に示す。
【0045】
[実施例6]
実施例1と同様にして分散媒水溶液を調製した。
これとは別に、2L撹拌機付きセパラブルフラスコに酢酸エチル750gを仕込み、この中に酢酸セルロース(酢化度55%)90gを溶解して酢酸セルロース溶液を調製した。得られた酢酸セルロース溶液840gと、無機物としてステアリン酸で表面処理を施されたステアリン酸カルシウム(淡南化学工業株式会社製、「カルシウムステアレート」、屈折率:約1.5)30g(酢酸セルロース100質量部に対して33.3質量部に相当)とを混合して、樹脂混合液を調製した。
得られた分散媒水溶液及び樹脂混合液を用いた以外は実施例1と同様にして、球状の無機物内包セルロース粒子を得た。
得られた無機物内包セルロース粒子の体積平均粒子径及び吸湿率を測定した。結果を表1に示す。また、無機物内包セルロース粒子における無機物とセルロースとの質量比(無機物/セルロース)を表1に示す。
【0046】
[比較例1]
2L撹拌機付きセパラブルフラスコに水500gを仕込み、この中にヒドロキシプロピルメチルセルロース10g(水100質量部に対して2質量部に相当)とラウリル硫酸ナトリウム2g(水100質量部に対して0.4質量部に相当)を溶解して分散媒水溶液を調製した。
これとは別に、2L撹拌機付きセパラブルフラスコに酢酸エチル1000gを仕込み、この中に酢酸セルロース(酢化度55%)250gを溶解して酢酸セルロース溶液を調製した。得られた酢酸セルロース溶液を比較例1では樹脂混合液とも言う。
前記酢酸セルロース溶液に前記分散媒水溶液を添加して、懸濁液を調製した。次いで、撹拌機の回転数300rpmで撹拌しながら懸濁液を90℃に昇温し、90℃で2時間加熱し、懸濁液から酢酸エチルを揮発させた。次いで、95℃に昇温し、水酸化ナトリウムを95g添加して、1.5時間保持し、酢酸セルロース粒子からアセチル基を脱離させ、セルロース粒子を得た。これにより、水中にセルロース粒子が分散したスラリーを得た。
次いで、前記スラリーを室温まで冷却した後、ろ過により固液分離し、回収した固形物を水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、球状のセルロース粒子を得た。
得られたセルロース粒子の体積平均粒子径及び吸湿率を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1中の略号は以下の通りである。
・HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース。
・PVA:ポリビニルアルコール。
【0049】
表1から明らかなように、各実施例で得られた無機物内包セルロース粒子は、吸湿率が低く、低吸湿性に優れていた。
一方、無機物を内包しないセルロース粒子は、吸湿率が高く、各実施例で得られた無機物内包セルロース粒子に比べて低吸湿性に劣るものであった。