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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/04 20060101AFI20220905BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20220905BHJP
   F16H 61/28 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
F16H63/04
B60K17/04 H
B60K17/04 J
F16H61/28
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021505497
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2019044223
(87)【国際公開番号】W WO2020183787
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2019043243
(32)【優先日】2019-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】上原 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】藤川 真澄
(72)【発明者】
【氏名】忍足 俊一
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205371521(CN,U)
【文献】特開平5-330352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/04
B60K 17/04
F16H 61/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータシャフトを有するモータと、
前記モータの下流に接続された変速機構と、
前記変速機構の下流に配置された減速ギアと、
前記モータと前記変速機構と前記減速ギアとを収容するケース部材と、を有し、
前記変速機構は、バンドブレーキと、前記バンドブレーキを駆動するアクチュエータと、を有し、
前記ケース部材は、前記モータシャフトの回転軸と直交する径方向外周を囲う外周壁と、前記外周壁と連結し且つ前記外周壁から前記モータシャフトの回転軸と直交する径方向外側に向かって延びる側壁と、を有し、
前記アクチュエータは、前記外周壁と隣接し且つ前記側壁と隣接して設けられており、
前記アクチュエータは、前記モータシャフトの回転軸と直交する径方向において、前記バンドブレーキにオーバーラップしている、動力伝達装置。
【請求項2】
モータシャフトを有するモータと、
前記モータの下流に接続された変速機構と、
前記変速機構の下流に配置された減速ギアと、
前記モータと前記変速機構と前記減速ギアとを収容するケース部材と、を有し、
前記変速機構は、バンドブレーキと、前記バンドブレーキを駆動するアクチュエータと、を有し、
前記ケース部材は、前記モータシャフトの回転軸と直交する径方向外周を囲う外周壁と、前記外周壁と連結し且つ前記外周壁から前記モータシャフトの回転軸と直交する径方向外側に向かって延びる側壁と、を有し、
前記アクチュエータは、前記外周壁と隣接し且つ前記側壁と隣接して設けられており、
前記モータシャフトの回転軸と平行な軸方向において、前記側壁は前記アクチュエータと前記減速ギアとの間に挟まれて配置されている、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1において、
軸方向において、前記側壁は前記アクチュエータと前記モータとの間に挟まれて配置されている、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記バンドブレーキ及び前記アクチュエータは、前記外周壁を挟んで、前記外周壁に隣接配置されている、動力伝達装置。
【請求項5】
モータシャフトを有するモータと、
前記モータの下流に接続された変速機構と、
前記変速機構の下流に配置された減速ギアと、
前記モータと前記変速機構と前記減速ギアとを収容するケース部材と、を有し、
前記変速機構は、バンドブレーキと、前記バンドブレーキを駆動するアクチュエータと、を有し、
前記ケース部材は、前記モータシャフトの回転軸と直交する径方向外周を囲う外周壁と、前記外周壁と連結し且つ前記外周壁から前記モータシャフトの回転軸と直交する径方向外側に向かって延びる側壁と、を有し、
前記アクチュエータは、前記外周壁と隣接し且つ前記側壁と隣接して設けられており、
前記バンドブレーキ及び前記アクチュエータは、前記側壁を挟んで、前記側壁に隣接配置されている、動力伝達装置。
【請求項6】
モータシャフトを有するモータと、
前記モータの下流に接続された変速機構と、
前記変速機構の下流に配置された減速ギアと、
前記モータと前記変速機構と前記減速ギアとを収容するケース部材と、を有し、
前記変速機構は、クラッチと、遊星歯車組と、バンドブレーキと、前記バンドブレーキを駆動するアクチュエータと、を有し、
前記ケース部材は、前記モータシャフトの回転軸と直交する径方向外周を囲う外周壁と、前記外周壁と連結し且つ前記外周壁から前記モータシャフトの回転軸と直交する径方向外側に向かって延びる側壁と、を有し、
前記アクチュエータは、前記外周壁と隣接し且つ前記側壁と隣接して設けられており、
前記アクチュエータは、前記モータシャフトの回転軸と直交する径方向において、前記バンドブレーキと前記クラッチと前記遊星歯車組とにオーバーラップしている、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6において、
前記モータシャフトの回転軸と平行な軸方向において、前記側壁は前記アクチュエータと前記減速ギアとの間に挟まれて配置されている、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項5又は請求項6において、
前記モータシャフトの回転軸と平行な軸方向において、前記側壁は前記アクチュエータと前記モータとの間に挟まれて配置されている、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低速段と高速段との切替を、噛み合い式係合装置で切り替える有段変速機構が開示されている。
【0003】
噛み合い式係合装置に代えてバンドブレーキを用いることが考えられる。
この際に、バンドブレーキを有する有段変速機構を備える動力伝達装置の大型化を抑制することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-118616号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は、
モータと、
前記モータの下流に接続された変速機構と、
前記変速機構の下流に配置された減速ギアと、
前記モータと前記変速機構と前記減速ギアとを収容するケース部材と、を有し、
前記変速機構は、バンドブレーキと、前記バンドブレーキを駆動するアクチュエータと、を有し、
前記ケース部材は、径方向外周を囲う外周壁と、前記外周壁と連結し且つ前記外周壁から径方向外側に向かって延びる側壁と、を有し、
前記アクチュエータは、前記外周壁と隣接し且つ前記側壁と隣接して設けられている構成の動力伝達装置とした。
【0006】
本発明によれば、バンドブレーキを有する有段変速機構を備える動力伝達装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態にかかる動力伝達装置を説明する図である。
図2】動力伝達装置のモータからカウンタギアまでの範囲の拡大図である。
図3】動力伝達装置の変速機構を説明する図である。
図4】動力伝達装置の差動装置周りの拡大図である。
図5】第2実施形態にかかる動力伝達装置を説明する図である。
図6】第2実施形態にかかる動力伝達装置の変速機構を説明する図である。
図7】第2実施形態にかかる動力伝達装置を説明する図である。
図8】第3実施形態にかかる動力伝達装置を説明する図である。
図9】第3実施形態にかかる動力伝達装置の変速機構回りの拡大図である。
図10】アクチュエータの側壁と外周壁との位置関係を説明する図である。
図11】変速機構と変形例にかかる変速機構の構成を模式的に示したスケルトン図である。
図12】変形例にかかる変速機構の構成を模式的に示したスケルトン図である。
図13】変形例にかかる変速機構の構成を模式的に示したスケルトン図である。
図14】変形例にかかる変速機構の構成を模式的に示したスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態にかかる動力伝達装置1を説明する図である。
図2の(a)は、動力伝達装置1のカウンタギア5周りの拡大図である。図2の(b)は、アクチュエータACTが配置される領域Rxを説明する図であって、図2の(a)におけるA-A断面を拡大して示す図である。なお、図2の(b)では、クラッチドラム48の内径側に位置する部材の図示を省略している。
【0009】
図1に示すように動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、変速機構3と、カウンタギア5と、差動装置6と、ドライブシャフト8(8A、8B)と、が設けられている。
モータ2の出力回転は、変速機構3で変速されたのち、カウンタギア5で減速されて差動装置6に伝達される。差動装置6では、伝達された回転が、ドライブシャフト8(8A、8B)を介して、動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪(図示せず)に伝達される。図1では、ドライブシャフト8Aが、動力伝達装置1を搭載した車両の左輪に回転伝達可能に接続されていると共に、ドライブシャフト8Bが、右輪に回転伝達可能に接続されている。
【0010】
ここで、変速機構3は、モータ2の下流に接続されており、カウンタギア5は、変速機構3の下流に接続されており、差動装置6は、カウンタギア5の下流に接続されており、ドライブシャフト8(8A、8B)は、差動装置6の下流に接続されている。
【0011】
本実施形態では、モータハウジング10と、外側カバー11と、内側カバー12と、外側ケース13と、内側ケース14で、動力伝達装置1の本体ケース9を構成している。
そして、モータハウジング10と、外側カバー11と、内側カバー12で、モータ2のケース(第1ケース部材)を構成している。
外側ケース13と内側ケース14で、変速機構3とカウンタギア5と差動装置6を収容するケース(第2ケース部材)を構成している。
【0012】
ここで、モータハウジング10の内径側で、外側カバー11と内側カバー12との間に形成される空間Saは、モータ2を収容するモータ室となっている。
【0013】
図2に示すように、外側ケース13と内側ケース14の間に形成される空間は、内側ケース14に設けた仕切壁142により、カウンタギア5と差動装置6を収容する空間Sbと、変速機構3を収容する空間Scとに区画されている。
よって、空間Sbは、カウンタギア5と差動装置6を収容する第1ギア室となっており、空間Scは、変速機構3を収容する第2ギア室となっている。
【0014】
図1に示すように、モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を所定間隔で囲むステータコア25とを、有している。
【0015】
モータシャフト20は、ドライブシャフト8Bの挿通孔200を有する筒状部材であり、モータシャフト20は、ドライブシャフト8Bに外挿されている。
モータシャフト20の挿通孔200は、長手方向の一端20a側の連結部201と、他端20b側の被支持部202が、回転軸X方向における連結部201と被支持部202との間の中間領域203よりも大きい内径で形成されている。
【0016】
連結部201の内周および被支持部202の内周は、ドライブシャフト8Bに外挿されたニードルベアリングNB、NBで支持されている。
この状態において、モータシャフト20は、ドライブシャフト8Bに対して相対回転可能に設けられている。
【0017】
モータシャフト20では、一端20a側の連結部201の外周と、他端20b側の被支持部202の外周に、ベアリングB1、B1が外挿されて固定されている。
モータシャフト20の一端20a側は、ベアリングB1を介して、内側カバー12の内径側に位置するモータ支持部121で支持されている。
モータシャフト20の他端20b側は、ベアリングB1を介して、外側カバー11の内径側に位置するモータ支持部111で支持されている。
【0018】
ロータコア21の外周を所定間隔で囲むモータハウジング10は、円筒状の周壁部101を有している。モータハウジング10では、回転軸X方向の一端10aと他端10bに、シールリングSL、SLが設けられている。モータハウジング10の一端10aは、当該一端10aに設けたシールリングSLにより、内側カバー12の環状の接合部120に隙間なく接合されている。
モータハウジング10の他端10bは、当該他端10bに設けたシールリングSLにより、外側カバー11の環状の接合部110に隙間なく接合されている。
【0019】
この状態において、内側カバー12側のモータ支持部121は、後記するコイルエンド253aの内径側で、ロータコア21の一端部21aに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置される。
そして、外側カバー11側のモータ支持部111は、後記するコイルエンド253bの内径側で、ロータコア21の他端部21bに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置される。
【0020】
モータハウジング10の内側では、外側カバー11側のモータ支持部111と、内側カバー12側のモータ支持部121との間に、ロータコア21が配置されている。
【0021】
ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものであり、珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20に外挿されている。
モータシャフト20の回転軸X方向から見て、珪素鋼板はリング状を成しており、珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0022】
回転軸X方向におけるロータコア21の一端部21aは、モータシャフト20の大径部204で位置決めされている。ロータコア21の他端部21bは、モータシャフト20に圧入されたストッパ23で位置決めされている。
【0023】
ステータコア25は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものであり、電磁鋼板の各々は、モータハウジング10の内周に固定されたリング状のヨーク部251と、ヨーク部251の内周からロータコア21側に突出するティース部252を、有している。
本実施形態では、巻線253を、複数のティース部252に跨がって分布巻きした構成のステータコア25を採用しており、ステータコア25は、回転軸X方向に突出するコイルエンド253a、253bの分だけ、ロータコア21よりも回転軸X方向の長さが長くなっている。
【0024】
なお、ロータコア21側に突出する複数のティース部252の各々に、巻線を集中巻きした構成のステータコアを採用しても良い。
【0025】
図2に示すように、モータシャフト20の一端20aは、内側カバー12のモータ支持部121を、変速機構3側(図中、右側)に貫通して空間Sc内に位置している。
【0026】
モータ支持部121の内周には、リップシールRSが設置されている。
リップシールRSは、モータ支持部121の内周と、モータシャフト20の外周との隙間を封止している。
リップシールRSは、モータハウジング10の内径側の空間Saと、内側ケース14の内径側の空間Scとを区画して、空間Sc側から空間Sa内へのオイルOLの進入を阻止するために設けられている。
【0027】
図3は、変速機構3を説明する図である。
空間Sc内には、変速機構3が配置されている。
変速機構3は、遊星歯車組4と、クラッチ47と、バンドブレーキ49と、を有している。
遊星歯車組4は、サンギア41と、リングギア42と、ピニオンギア43と、ピニオン軸44と、キャリア45と、を有している。
遊星歯車組4の構成要素(サンギア41、リングギア42、ピニオンギア43、ピニオン軸44、キャリア45)は、クラッチドラム48の外壁部481の内径側に設けられている。
クラッチ47は、リングギア42の外周にスプライン嵌合したドライブプレート471(内径側摩擦板)と、クラッチドラム48の外壁部481の内周にスプライン嵌合したドリブンプレート472(外径側摩擦板)と、回転軸方向に移動可能に設けられたピストン475と、を有している。
【0028】
クラッチドラム48は、外壁部481と、円板部480と、内壁部482と、連結部483と、を有している。
外壁部481は、回転軸Xを所定間隔で囲む筒状を成している。円板部480は、外壁部481の差動装置6側(図中、右側)の端部から内径側に延びている。円板部480の内径側の領域は、遊星歯車組4から離れる方向に窪んだ凹部480aとなっている。
【0029】
内壁部482は、回転軸Xを所定間隔で囲む筒状に形成されている。内壁部482は、円板部480の内径側の端部から遊星歯車組4側(図中、左側)に延びており、内壁部482の先端は、サンギア41とピニオンギア43との噛み合い部分に、回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0030】
連結部483は、回転軸Xを所定間隔で囲む円筒状を成している。連結部483は、長手方向の基端部483aが、内壁部482の先端側の内周に連結されている。
連結部483は、前記したモータシャフト20の連結部201の延長上を、モータ2に近づく方向(図中、左方向)に直線状に延びている。連結部483の先端483bは、外壁部481よりもモータ2側に位置している。
【0031】
外壁部481と、円板部480と、内壁部482と、連結部483と、から構成されるクラッチドラム48は、開口をモータ2側に向けて設けられており、内径側に位置する連結部483の外周に、遊星歯車組4のサンギア41がスプライン嵌合している。
【0032】
遊星歯車組4では、サンギア41の外径側にリングギア42が位置している。リングギア42は、サンギア41の外周を所定間隔で囲む周壁部421と、周壁部421のモータ2側の端部から内径側に延びる円板部422と、円板部422の内径側の端部からモータ2側に延びる連結部423と、を有している。
連結部423は、回転軸Xを所定間隔で囲むリング状を成しており、連結部423の内周には、モータシャフト20の一端20a側の連結部201がスプライン嵌合している。
【0033】
連結部423よりも外径側に位置する周壁部421は、サンギア41の外径側に位置する領域の内周に、ピニオンギア43の外周が噛合している。
ピニオンギア43は、リングギア42の周壁部421の内周と、サンギア41の外周に噛合している。
【0034】
ピニオンギア43を支持するピニオン軸44は、回転軸Xに平行な軸線X3に沿う向きで設けられている。ピニオン軸44の一端と他端は、キャリア45を構成する一対の側板部451、452で支持されている。
側板部451、452は、軸線X3方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。
【0035】
モータ2側に位置する一方の側板部452は、他方の側板部451よりも回転軸X側まで延びている。側板部452の内径側の端部452aには、回転軸Xを所定間隔で囲む筒状の連結部453が一体に形成されている。
連結部453は、モータシャフト20の連結部201よりも回転軸X側(内径側)を、回転軸Xに沿ってモータ2から離れる方向に延びている。
【0036】
連結部453は、サンギア41の内径側をモータ2側から差動装置6側に横切って設けられており、連結部453は、クラッチドラム48の内壁部482の内径側で、中空軸50の連結部501の内周にスプライン嵌合している。
【0037】
クラッチドラム48の外壁部481の内周には、クラッチ47のドリブンプレート472がスプライン嵌合している。クラッチ47のドライブプレート471は、リングギア42の周壁部421の外周にスプライン嵌合している。
リングギア42の周壁部421と、クラッチドラム48の外壁部481との間では、ドライブプレート471とドリブンプレート472とが交互に設けられている。
【0038】
ドライブプレート471とドリブンプレート472とが交互に設けられた領域のモータ2側には、スナップリング474で位置決めされたリテーニングプレート473が位置しており、差動装置6側には、ピストン475の押圧部475aが位置している。
【0039】
ピストン475の内径側の基部475bは、外径側の押圧部475aよりも遊星歯車組4から離れた位置に設けられている。ピストン475の内径側の基部475bは、回転軸X方向で隣接する円板部480の内径側の凹部480aに内挿されている。
【0040】
基部475bのモータ2側(図中、左側)の面には、スプリングリテーナ476で支持されたスプリングSpが、回転軸X方向から圧接している。
ピストン475は、スプリングSpから作用する付勢力で差動装置6側に付勢されている。
【0041】
クラッチドラム48では、凹部480aと内壁部482との境界部に、差動装置6側に突出する突出部484が設けられている。突出部484は、ベアリングB3の第1支持部141の内周に挿入されている。第1支持部141の内周にはオイルOLの供給路141aが開口している。
突出部484の内部には、第1支持部141側から供給されるオイルOLを、クラッチドラム48の凹部480a内に導くための油路484aが設けられている。
【0042】
油路484aを介して供給されるオイルOLは、ピストン475の基部475bと凹部480aとの間の油室に供給されて、ピストン475をモータ2側に変位させる。
ピストン475がモータ2側に変位すると、クラッチ47のドライブプレート471とドリブンプレート472とが、ピストン475の押圧部475aとリテーニングプレート473との間で把持される。
これにより、ドライブプレート471がスプライン嵌合したリングギア42と、ドリブンプレート472がスプライン嵌合したクラッチドラム48との相対回転が、供給されるオイルOLの圧力に応じて規制されて、最終的に相対回転が規制される。
【0043】
さらに、クラッチドラム48の外壁部481外周には、バンドブレーキ49が巻き掛けられている。アクチュエータACT(図2参照)によりバンドブレーキ49の巻き掛け半径が狭められると、クラッチドラム48の回転軸X回りの回転が規制される。
【0044】
図2に示すように、変速機構3を収容する内側ケース14は、変速機構3の外周を所定間隔で囲む外周壁147と、外周壁147と仕切壁142との接続部から、外径側に延びる側壁143と、周壁部144と、を有している。
側壁143は、仕切壁142の延長上を回転軸Xの径方向外側に延びており、側壁143の外径側の端部は、カウンタギア5の外周を所定間隔で囲む周壁部144に連絡している。
【0045】
外周壁147では、内側カバー12側(図中、左側)の先端部に内側カバー12との接合部140が設けられており、接合部140は、回転軸X方向から内側カバー12に接合されている。
【0046】
バンドブレーキ49のアクチュエータACTは、外周壁147の外径側の領域Rxであって、側壁143と回転軸X方向にオーバラップする領域に設けられている。
回転軸X方向から見て、アクチュエータACTが設けられた領域は、側壁143と重なる位置関係となっている。
【0047】
図2の(b)に示すように、アクチュエータACTは、駆動モータ(図示せず)の回転駆動力で回転する軸部495を有している。
軸部495の先端側は、バンドブレーキ49の周方向の一端に設けた接続片491と、他端に設けた接続片492と、内側ケース14に設けた固定片16とを貫通している。
【0048】
アクチュエータACTの駆動により、軸部495が軸線Y2回りの一方に回転すると、一方の接続片491が、固定片16に固定された他方の接続片492に近づく方向に変位する。
そうすると、クラッチドラム48の外壁部481に巻き掛けられたバンドブレーキ49の巻き掛け半径が狭められて、クラッチドラム48の回転軸X回りの回転が規制される。
よって、バンドブレーキ49の作動時には、アクチュエータACTにより軸部495を回転させて、クラッチドラム48の回転を規制する。
【0049】
変速機構3では、バンドブレーキ49の内径側に、遊星歯車組4と、クラッチ47が位置している。アクチュエータACTと、バンドブレーキ49と、遊星歯車組4と、クラッチ47は、回転軸Xの径方向でオーバラップしており、回転軸Xの径方向外側から見ると、アクチュエータACTと、バンドブレーキ49と、遊星歯車組4と、クラッチ47とが、重なる位置関係で設けられている。
【0050】
本実施形態の変速機構3では、遊星歯車組4のリングギア42がモータ2の出力回転の入力部、キャリア45が、入力された回転の出力部となっている。
【0051】
変速機構3では、低速段と高速段との間での切替を、クラッチ47の締結/解放、バンドブレーキ49の作動の組み合わせの変更により行う仕様となっている。
変速機構3は、低速段と高速段の間での切り替えが可能である。
【0052】
変速機構3では、以下の条件(a)で低速段が実現し、条件(b)で高速段が実現する。
(a)バンドブレーキ49:作動、クラッチ47:解放
(b)バンドブレーキ49:非作動、クラッチ47:締結
ここで、変速機構3は、二段変速機構であり、低速段、高速段は同一回転方向(前進段又は後進段)である。モータ2の正逆転により前後進の切替えが可能である。
【0053】
モータ2の出力回転は、変速機構3で変速された後、キャリア45の連結部453が連結された中空軸50に出力される。
【0054】
図2に示すように、変速機構3で変速された回転が入力される中空軸50は、長手方向の一端50aが、デフケース60の支持部601を支持するベアリングB5に、回転軸X方向の隙間を空けて設けられている。中空軸50の他端50bが、遊星歯車組4との連結部501となっている。
連結部501の外周は、クラッチドラム48の内壁部482との間に介在するニードルベアリングNBで支持されている。
【0055】
中空軸50の一端50a側の外周には、ギア部502が一体に形成されている。ギア部502の両側には、ベアリングB3、B3が外挿されている。
一端50a側のベアリングB3は、内側ケース14側の支持部151で支持されており、他端50b側のベアリングB3は、内側ケース14の第1支持部141で支持されている。
【0056】
ギア部502の外周には、カウンタギア5の大径歯車52が、回転伝達可能に噛合している。カウンタギア5において大径歯車52は、円筒状の中空軸部51の外周にスプライン嵌合している。
【0057】
中空軸部51の長手方向の一端部51aと他端部51bには、ベアリングB4が外挿されている。中空軸部51の一端部51aに外挿されたベアリングB4は、外側ケース13の円筒状の第2支持部135に挿入されている。中空軸部51の一端部51aは、ベアリングB4を介して、外側ケース13の第2支持部135で回転可能に支持されている。
【0058】
中空軸部51の他端部51bに外挿されたベアリングB4は、内側ケース14の円筒状の第2支持部145に挿入されている。中空軸部51の他端部51bは、ベアリングB4を介して、内側ケース14の第2支持部145で回転可能に支持されている。
【0059】
この状態において、カウンタギア5の中空軸部51は、回転軸Xに平行な軸線X1に沿って設けられている。
中空軸部51では、大径歯車52から見て一端部51a側(図中、左側)に隣接して、パークギア53が設けられている。
【0060】
中空軸部51では、パークギア53から見て一端部51a側(図中、右側)に離れた位置に、小径歯車部511が設けられている。小径歯車部511は、中空軸部51と一体に形成されていると共に、大径歯車52の外径R1よりも小さい外径R2で形成されている(図4参照:R1>R2)。
【0061】
小径歯車部511は、差動装置6のデフケース60に固定されたファイナルギアFGに回転伝達可能に噛合している。
【0062】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転が、変速機構3を介して中空軸50に入力される。中空軸50に入力された回転は、中空軸50のギア部502に噛合した大径歯車52を介して、カウンタギア5に入力される。
【0063】
カウンタギア5では、大径歯車52とパークギア53が中空軸部51の外周にスプライン嵌合していると共に、小径歯車部511が中空軸部51と一体に形成されている。
そのため、モータ2の出力回転がカウンタギア5に入力されると、パークギア53と小径歯車部511とが、大径歯車52と共に軸線X1回りに回転する。
【0064】
そうすると、小径歯車部511に回転伝達可能に噛合するファイナルギアFGが、デフケース60に固定されているので、カウンタギア5の軸線X1回りの回転に連動して、デフケース60が回転軸X回りに回転する。
【0065】
ここで、カウンタギア5では、小径歯車部511の外径R2が大径歯車52の外径R1よりも小さくなっている(図4参照)。
そして、カウンタギア5では、大径歯車52が、モータ2側から伝達される回転の入力部となっており、小径歯車部511が、伝達された回転の出力部となっている。
そうすると、カウンタギア5に入力された回転は、大きく減速されたのちに、デフケース60に出力される。
【0066】
図4は、動力伝達装置1の差動装置6周りの拡大図である。
図4に示すように、デフケース60は、シャフト61と、かさ歯車62A、62Bと、サイドギア63A、63Bとを、内部に収納する中空状に形成されている。
デフケース60では、回転軸X方向(図中、左右方向)の両側部に、筒状の支持部601、602が設けられている。支持部601、602は、シャフト61から離れる方向に、回転軸Xに沿って延出している。
【0067】
デフケース60の支持部602には、ベアリングB5が外挿されている。支持部602に外挿されたベアリングB5は、外側ケース13のリング状の第1支持部131で保持されている。
【0068】
支持部602には、外側ケース13の開口部130を貫通したドライブシャフト8Aが、回転軸X方向から挿入されており、ドライブシャフト8Aは、支持部602で回転可能に支持されている。
開口部130の内周には、リップシールRSが固定されており、リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフト8Aの外周に弾発的に接触することで、ドライブシャフト8Aの外周と開口部130の内周との隙間が封止されている。
【0069】
デフケース60の支持部601には、ベアリングB5が外挿されている。
図1に示すように、デフケース60の支持部601は、ベアリングB5を介して、内側ケース14に固定された支持部材15の支持部151で回転可能に支持されている。
支持部601に外挿されたベアリングB5は、支持部材15のリング状の支持部151で保持されている。
【0070】
図1に示すように、支持部材15は、支持部151の外周から、モータ2側(図中、左側)に延びる筒状部152と、筒状部152の先端側の開口を全周に亘って囲むフランジ部153とを有している。支持部材15のフランジ部153は、当該フランジ部153を貫通したボルトBにより、内側ケース14の第1支持部141に固定されている。
【0071】
デフケース60の支持部601は、ベアリングB5を介して、支持部材15で回転可能に支持されている。本実施形態では、支持部材15が内側ケース14に固定されている。そのため、デフケース60の支持部601は、ベアリングB5と支持部材15を介して、固定側部材である内側ケース14で支持されている。
【0072】
デフケース60の支持部601には、外側カバー11の開口部114を貫通したドライブシャフト8Bが、回転軸X方向から挿入されている。
ドライブシャフト8Bは、モータ2のモータシャフト20と、遊星歯車組4と、中空軸50の内径側を、回転軸X方向に横切って設けられており、ドライブシャフト8Bの先端側が、支持部601で回転可能に支持されている。
【0073】
外側カバー11の開口部114の内周には、リップシールRSが固定されており、リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフト8Bの外周に弾発的に接触することで、ドライブシャフト8Bの外周と開口部114の内周との隙間が封止されている。
【0074】
図4に示すように、デフケース60の内部では、ドライブシャフト8(8A、8B)の先端部の外周に、サイドギア63A、63Bがスプライン嵌合しており、サイドギア63A、63Bとドライブシャフト8(8A、8B)とが、回転軸X周りに一体回転可能に連結されている。
【0075】
デフケース60には、回転軸Xに直交する方向に貫通した軸孔60a、60bが、回転軸Xを挟んで対称となる位置に設けられている。
軸孔60a、60bは、回転軸Xに直交する軸線Y上に位置しており、軸孔60a、60bには、シャフト61が挿入されている。
【0076】
シャフト61は、ピンPでデフケース60に固定されており、シャフト61は、軸線Y周りの自転が禁止されている。
【0077】
シャフト61は、デフケース60内において、サイドギア63A、63Bの間に位置しており、軸線Yに沿って配置されている。
【0078】
デフケース60内においてシャフト61には、かさ歯車62A、62Bが外挿して回転可能に支持されている。
かさ歯車62A、62Bは、シャフト61の長手方向(軸線Y方向)で間隔を空けて2つ設けられており、かさ歯車62A、62Bは、互いの歯部を対向させた状態で配置されている。
シャフト61においてかさ歯車62A、62Bは、当該かさ歯車62A、62Bの軸心を、シャフト61の軸心と一致させて設けられている。
デフケース60内において、回転軸X方向におけるかさ歯車62A、62Bの両側には、サイドギア63A、63Bが位置している。
サイドギア63A、63Bは、互いの歯部を対向させた状態で、回転軸X方向に間隔を空けて2つ設けられており、かさ歯車62A、62Bとサイドギア63A、63Bとは、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0079】
かかる構成の動力伝達装置1の作用を説明する。
図1に示すように、動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、変速機構3と、カウンタギア5と、差動装置6と、ドライブシャフト8(8A、8B)と、が設けられている。
【0080】
図2に示すようにモータ2の駆動により、ロータコア21が回転軸X回りに回転すると、ロータコア21と一体に回転するモータシャフト20を介して、変速機構3に回転が入力される。
変速機構3では、遊星歯車組4のリングギア42が回転の入力部、キャリア45が入力された回転の出力部となっている。
【0081】
そして、変速機構3では、バンドブレーキ49が作動している状態で低速段、クラッチ47が作動している状態で高速段が実現する。
【0082】
そのため、変速機構3に入力された回転は、変速された後にキャリア45の連結部453から中空軸50に出力される。そして、中空軸50に入力された回転は、中空軸50のギア部502に噛合した大径歯車52を介して、カウンタギア5に入力される。
【0083】
カウンタギア5では、中空軸50のギア部502に噛合する大径歯車52が、モータ2の出力回転の入力部となっており、デフケース60のファイナルギアFGに噛合する小径歯車部511が、入力された回転の出力部となっている。
【0084】
ここで、カウンタギア5では、小径歯車部511の外径R2が大径歯車52の外径R1よりも小さくなっている(図4参照)。
そのため、カウンタギア5に入力された回転は、大きく減速されたのちに、小径歯車部511が噛合するファイナルギアFGを介して、デフケース60(差動装置6)に出力される。
【0085】
そして、デフケース60が入力された回転で回転軸X回りに回転することにより、ドライブシャフト8(8A、8B)が回転軸X回りに回転する。これにより、モータ2の出力回転が、動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪(図示せず)に伝達される。
【0086】
ここで、動力伝達装置1では、バンドブレーキ49のアクチュエータACTが、変速機構3の外周を所定間隔で囲む外周壁147の外径側の領域Rxであって、側壁143と回転軸X方向にオーバラップする領域に設けられている(図2参照)。
内側ケース14では、カウンタギア5を収容する側壁143の領域が、回転軸Xの径方向外側に向けて張り出している。そのため、外周壁147の外径側では、回転軸X方向から見て側壁143と重なる領域Rxに空間的な余裕がある。
【0087】
本実施形態にかかる動力伝達装置1では、この領域Rxを利用して、バンドブレーキ49のアクチュエータACTを設けることで、動力伝達装置1の本体ケース9を大型化させずに済むようになっている。
【0088】
そして、動力伝達装置1では、ロータコア21のモータシャフト20と、カウンタギア5と、ドライブシャフト8(8A、8B)とが、モータ2の出力回転の伝達経路上で、直列に配置されている。
そして、ドライブシャフト8Bが、モータシャフト20の内径側を回転軸X方向に貫通して設けられており、ドライブシャフト8Bとモータシャフト20とが、共通の回転軸X上で相対回転可能に設けられている。
そのため、モータシャフトと、カウンタギアと、ドライブシャフトと、が互いに平行な異なる回転軸上に設けられた動力伝達装置、すなわち、いわゆる3軸タイプの動力伝達装置に比べて、回転軸の径方向の大きさを抑えることができるようになっている。
【0089】
以上の通り、第1実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(1)動力伝達装置1は、
モータ2と、
モータ2の下流に接続された変速機構3と、
変速機構3の下流に配置されたカウンタギア5(減速ギア)と、
モータ2と変速機構3とカウンタギア5とを収容する本体ケース9(ケース部材)と、
を有する。
変速機構3は、バンドブレーキ49と、バンドブレーキ49を駆動するアクチュエータACTと、を有する。
本体ケース9(ケース部材)は、
変速機構3の径方向外周を囲う外周壁147と、
外周壁147と連結し且つ外周壁147から径方向外側に向かって延びる側壁143と、を有する。
アクチュエータACTは、外周壁147と隣接し且つ側壁143と隣接している。
【0090】
本体ケース9の内側ケース14では、外周壁147の外径側であって、回転軸X方向から見て側壁143と重なる領域Rxに空間的な余裕がある。
この領域Rxは、内側ケース14における外周壁147と側壁143とが断面略L字形状に連なった領域の外側に位置しており、本体ケース9において領域Rxは、外周壁147および側壁143と、内側カバー12との間の活用可能なスペースである。
動力伝達装置1では、本体ケース9外部の活用可能なスペースにアクチュエータACTを配置しているので、動力伝達装置1においてアクチュエータACTを、動力伝達装置1を回転軸X方向および径方向に拡大することなく、アクチュエータACTを設けることができる。
【0091】
第1実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(2)モータ2の回転軸X方向において、側壁143は、アクチュエータACTとカウンタギア5(減速ギア)との間に挟まれて配置されている。
側壁143とアクチュエータACTとカウンタギア5は、モータ2の回転軸X方向でオーバラップしており、回転軸X方向から見ると、側壁143とアクチュエータACTとカウンタギア5とが重なる位置関係で設けられている。
【0092】
図2に示すように、カウンタギア5の回転軸(軸線X1)が、モータ2の回転軸Xの径方向外側で、回転軸Xに対して平行に配置されている場合には、軸線X1方向でカウンタギア5に隣接する領域Rxに空間的な余裕がある。
そのため、領域RxにアクチュエータACTを設置すると、内側ケース14の側壁143が、アクチュエータACTとカウンタギア5との間に位置することになる。
この領域RxにアクチュエータACTを配置することで、動力伝達装置1が回転軸X方向と、径方向に大型化することを好適に防止できる。
【0093】
(3)第1実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
バンドブレーキ49およびアクチュエータACTは、モータ2の回転軸Xの径方向で、外周壁147を間に挟んで、外周壁147に隣接配置されている。
バンドブレーキ49とアクチュエータACTと外周壁147は、回転軸Xの径方向でオーバラップしており、回転軸Xの径方向から見ると、バンドブレーキ49とアクチュエータACTと外周壁147とが重なる位置関係で設けられている。
【0094】
図2に示すように、カウンタギア5の回転軸(軸線X1)が、モータ2の回転軸Xの径方向外側で、回転軸Xに対して平行に配置されている場合には、外周壁147の径方向外側でカウンタギア5に隣接する領域Rxに空間的な余裕がある。
この領域RxにアクチュエータACTを配置することで、バンドブレーキ49の近くにアクチュエータACTが位置するので、バンドブレーキ49とアクチュエータACTとの距離を短くすることができ、アクチュエータACTの体格を小さくできる。
【0095】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
以下の説明においては、前記した第1実施形態と共通する部分については、同一の符号を付して示すと共に、可能な限り説明を省略する。
【0096】
図5は、第2実施形態にかかる動力伝達装置1Aを説明する図である。
図6は、動力伝達装置1Aの変速機構3A周りの拡大図である。
図7は、動力伝達装置1AにおけるアクチュエータACTが配置される領域Rxを説明する図である。
【0097】
図5に示すように動力伝達装置1Aは、モータ2と、変速機構3Aと、変速機構3Aの出力回転を差動装置6に伝達するカウンタギア5と、伝達された回転をドライブシャフト8(8A、8B)に伝達する差動装置6と、を有している。
【0098】
動力伝達装置1Aでは、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、変速機構3Aと、カウンタギア5と、差動装置6と、ドライブシャフト8(8A、8B)と、が設けられている。
モータ2の出力回転は、変速機構3Aで変速されたのち、カウンタギア5で減速されて差動装置6に伝達される。差動装置6では、伝達された回転が、ドライブシャフト8(8A、8B)を介して、動力伝達装置1Aが搭載された車両の左右の駆動輪(図示せず)に伝達される。
【0099】
ここで、変速機構3Aは、モータ2の下流に接続されており、カウンタギア5は、変速機構3Aの下流に接続されており、差動装置6は、カウンタギア5の下流に接続されており、ドライブシャフト8(8A、8B)は、差動装置6の下流に接続されている。
【0100】
動力伝達装置1Aでは、モータ2と変速機構3Aとが、共通の回転軸Xa上で同軸に配置されている。回転軸Xaの径方向外側では、カウンタギア5の回転軸Xbと、差動装置6およびドライブシャフト8(8A、8B)の回転軸Xcが、回転軸Xaに対して平行に設けられている。
動力伝達装置1Aは、回転の伝達に関与する回転軸Xa、Xb、Xcが、互い平行となるように配置された、いわゆる3軸タイプの動力伝達装置である。
【0101】
第2実施形態にかかる動力伝達装置1Aにおいても、モータハウジング10と、外側カバー11と、内側カバー12と、外側ケース13と、内側ケース14で、動力伝達装置1Aの本体ケース9を構成している。
そして、モータハウジング10と、外側カバー11と、内側カバー12で、モータ2のケース(第1ケース部材)を構成している。
外側ケース13と内側ケース14で、変速機構3Aと、カウンタギア5と、差動装置6と、を収容するケース(第2ケース部材)を構成している。
【0102】
モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を所定間隔で囲むステータコア25とを、有している。
【0103】
モータシャフト20では、ロータコア21の両側にベアリングB1、B1が外挿されている。モータシャフト20は、外側カバー11のモータ支持部111と、内側カバー12のモータ支持部121に、ベアリングB1、B1を介して回転可能に支持されている。
【0104】
図6に示すように、モータシャフト20の一端20a側には、他端20b側の大径部208よりも外径が小さい連結部201が設けられている。
モータシャフト20の連結部201は、内側ケース14のリング状の第3支持部148内で、変速機構3A側の連結部423の内周にスプライン嵌合している。
【0105】
変速機構3Aは、遊星歯車組4と、クラッチ47と、バンドブレーキ49と、を有している。
遊星歯車組4は、サンギア41と、リングギア42と、ピニオンギア43と、ピニオン軸44と、キャリア45と、を有している。
遊星歯車組4の構成要素(サンギア41、リングギア42、ピニオンギア43、ピニオン軸44、キャリア45)は、クラッチドラム48の外壁部481の内径側に設けられている。
クラッチ47は、リングギア42の外周にスプライン嵌合したドライブプレート471(内径側摩擦板)と、クラッチドラム48の外壁部481の内周にスプライン嵌合したドリブンプレート472(外径側摩擦板)と、回転軸Xa方向に移動可能に設けられたピストン475と、を有している。
【0106】
クラッチドラム48は、外壁部481と、円板部480と、内壁部482と、連結部483と、を有している。
外壁部481は、回転軸Xaを所定間隔で囲む筒状を成している。円板部480は、外壁部481のモータ2とは反対側(図中、左側)の端部から内径側に延びている。円板部480の内径側の端部には、内壁部482が設けられている。
【0107】
内壁部482は、回転軸Xaを所定間隔で囲む筒状に形成されている。内壁部482は、円板部480の内径側の端部から遊星歯車組4側(図中、右側)に延びており、内壁部482の先端は、バンドブレーキ49の内径側に位置している。
【0108】
連結部483は、回転軸Xaを所定間隔で囲む円筒状を成している。連結部483は、長手方向の基端部483aが、内壁部482の先端側の内周に連結されている。
連結部483は、モータ2に近づく方向(図中、右方向)に直線状に延びている。
【0109】
外壁部481と、円板部480と、内壁部482と、連結部483と、から構成されるクラッチドラム48は、開口をモータ2側に向けて設けられている。
【0110】
内壁部482の内周は、ニードルベアリングNBを介して、支持軸30の外周で支持されている。
図5に示すように、支持軸30は、小径部301と大径部302とが、回転軸Xa方向に並んで一体に形成された軸状部材であり、回転軸Xaに沿う向きで配置されている。
【0111】
支持軸30は、モータシャフト20と同軸に配置されている。図6に示すように、支持軸30においてモータ2側(図中、右側)に位置する大径部302では、モータシャフト20との対向部に、モータシャフト20を受け入れ可能な収容穴302aが開口している。
【0112】
収容穴302aには、モータシャフト20の先端に設けた軸部424が挿入されている。収容穴302aの内周には、軸部424に外挿されたニードルベアリングNBが接しており、支持軸30とモータシャフト20は、収容穴302aの部分で相対回転可能に係合している。
【0113】
大径部302のモータ2側の端部には、円板状のフランジ部303が一体に形成されている。フランジ部303は、回転軸Xaに直交する向きで設けられており、フランジ部303の外周は、クラッチドラム48の連結部483の側方まで及んでいる。
【0114】
連結部483の外周には、遊星歯車組4のサンギア41がスプライン嵌合している。
遊星歯車組4では、サンギア41の外径側にリングギア42が位置している。リングギア42は、サンギア41の外周を所定間隔で囲む周壁部421と、周壁部421のモータ2側の端部から内径側に延びる円板部422と、円板部422の内径側からモータ2側に延びる連結部423と、円板部422の内径側の端部からモータ2とは反対側に延びる軸部424と、を有している。
【0115】
軸部424よりも外径側に位置する周壁部421では、サンギア41の外径側に位置する領域の内周に、ピニオンギア43の外周が噛合している。
ピニオンギア43は、リングギア42側の周壁部421の内周と、サンギア41の外周に噛合している。
【0116】
ピニオンギア43を支持するピニオン軸44は、モータ2の回転軸Xaに平行な軸線X3に沿う向きで設けられている。ピニオン軸44の一端と他端は、キャリア45を構成する一対の側板部451、452で支持されている。
側板部451、452は、軸線X3方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。
【0117】
モータ2側に位置する一方の側板部452は、他方の側板部451よりも回転軸Xa側まで延びている。側板部452の内径側の端部452aは、支持軸30側のフランジ部303の外周に連結されている。
【0118】
リングギア42の周壁部421は、回転軸Xaを所定間隔で囲むリング状を成しており、周壁部421の外周には、クラッチ47のドライブプレート471がスプライン嵌合している。クラッチ47のドリブンプレート472は、クラッチドラム48の外壁部481の内周にスプライン嵌合している。
リングギア42の周壁部421と、クラッチドラム48の外壁部481との間では、ドライブプレート471とドリブンプレート472とが交互に設けられている。
【0119】
ドライブプレート471とドリブンプレート472とが交互に設けられた領域のモータ2側には、スナップリング474で位置決めされたリテーニングプレート473が位置しており、モータ2とは反対側には、ピストン475の押圧部475aが位置している。
【0120】
ピストン475は、回転軸Xaに直交する向きで設けられた基部475bを有している。回転軸Xaの径方向における基部475bの略中央部には、遊星歯車組4側(図中、右側)に延びる筒壁部475cが設けられている。
【0121】
ピストン475の基部475bでは、筒壁部475cが設けられた領域に、クラッチドラム48の円板部480から離れる方向(図中、右方向)に窪んだスリット475dが設けられている。
スリット475dには、クラッチドラム48の円板部480からモータ2側に延びるガイド片480bが挿入されている。
【0122】
基部475bにおける筒壁部475cよりも内径側の領域では、基部475bのモータ2側の面に、スプリングリテーナ476で支持されたスプリングSpが、回転軸X方向から圧接している。
ピストン475は、スプリングSpから作用する付勢力でクラッチドラム48の円板部480側(図中、左側)に付勢されている。
【0123】
クラッチドラム48では、円板部480と内壁部482との境界部に、モータ2とは反対側に突出する突出部484が設けられている。突出部484は、ベアリングB2の支持部151の内周に挿入されている。支持部151の内周にはオイルOLの供給路151aが開口している。
突出部484の内部には、支持部151側から供給されるオイルOLを、クラッチドラム48の円板部480とピストン475の基部475bとの間の油室に導くための油路484aが設けられている。
【0124】
油路484aを介して油室に供給されるオイルOLは、ピストン475をモータ2側(図中、右側)に変位させる。この際に、円板部480に設けたガイド片480bと、ガイド片480bが挿入されたピストン475側のスリット475dにより、ピストン475の回転軸Xa方向の変位がガイドされる。
【0125】
ピストン475がモータ2側に変位すると、クラッチ47のドライブプレート471とドリブンプレート472とが、ピストン475の押圧部475aとリテーニングプレート473との間で把持される。
これにより、ドライブプレート471がスプライン嵌合したリングギア42と、ドリブンプレート472がスプライン嵌合したクラッチドラム48との相対回転が、供給されるオイルOLの圧力に応じて規制されて、最終的に相対回転が規制される。
【0126】
さらに、クラッチドラム48の外壁部481外周には、バンドブレーキ49が巻き掛けられている。図示しないアクチュエータによりバンドブレーキ49の巻き掛け半径が狭められると、クラッチドラム48の回転軸Xa回りの回転が規制される。
【0127】
図7に示すように、モータ2を収容するモータハウジング10は、円筒状の周壁部101を有している。
回転軸Xa方向から見て周壁部101は、変速機構3Aのクラッチ47と重なる位置に設けられており、周壁部101とクラッチ47は、回転軸Xa方向でオーバラップする位置関係で設けられている。
【0128】
モータハウジング10の開口を塞ぐ内側カバー12は、回転軸Xa側(図中、上側)の領域が、内側ケース14の第3支持部148に回転軸Xa方向から接合されている。
【0129】
変速機構3Aとモータ2(内側カバー12)との間には、内側ケース14の側壁143が位置している。側壁143は、回転軸Xaに直交する向きで設けられており、内側カバー12と回転軸Xa方向の隙間をあけて設けられている。
【0130】
側壁143では、変速機構3Aの回転軸Xaを基準とした外径側の領域の内周に、円筒状の第2支持部145が設けられている。
第2支持部145は、側壁143における外側ケース13との対向面(図中、左側の面)から、外側ケース13側に延出している。
【0131】
内側ケース14の側壁143は、変速機構3Aの側方に位置する領域から、第2支持部145が設けられた領域までの範囲が、回転軸Xaおよび回転軸Xbに直交する向きで設けられている。
【0132】
バンドブレーキ49のアクチュエータACTは、モータハウジング10の周壁部101の外径側の領域Rxであって、側壁143と回転軸Xa、Xb方向にオーバラップする領域に設けられている。
回転軸Xa、Xb方向から見て、アクチュエータACTが設けられた領域は、側壁143と重なる位置関係となっている。
【0133】
図6に示すように変速機構3Aでは、バンドブレーキ49の内径側に、遊星歯車組4と、クラッチ47が位置している。バンドブレーキ49と、遊星歯車組4と、クラッチ47は、回転軸Xの径方向でオーバラップしており、回転軸Xの径方向外側から見ると、バンドブレーキ49と、遊星歯車組4と、クラッチ47とが、重なる位置関係で設けられている。
【0134】
本実施形態の変速機構3Aでは、遊星歯車組4のリングギア42がモータ2の出力回転の入力部、キャリア45が、入力された回転の出力部となっている。
【0135】
変速機構3Aでは、以下の条件(a)で低速段が実現し、条件(b)で高速段が実現する。
(a)バンドブレーキ49:作動、クラッチ47:解放
(b)バンドブレーキ49:非作動、クラッチ47:締結
ここで、変速機構3Aは、二段変速機構であり、低速段、高速段は同一回転方向(前進段又は後進段)である。モータ2の正逆転により前後進の切替えが可能である。
【0136】
すなわち、変速機構3Aでは、バンドブレーキ49の作動によりクラッチドラム48の回転が規制されると、低速段が実現する。クラッチ47が締結されて、リングギア42とクラッチドラム48とが相対回転不能に連結されると、高速段が実現する。
【0137】
モータ2の出力回転は、変速機構3Aで変速された後、キャリア45の側板部452から、支持軸30に出力される。
【0138】
図5および図7に示すように、支持軸30は、回転軸Xaに沿ってモータ2から離れる方向に延びている。支持軸30では、小径部301の外周に中空軸31がスプライン嵌合している。
中空軸31では、回転軸Xa方向の両側に、ベアリングB2、B2が外挿されている。
中空軸31は、ベアリングB2、B2を介して、外側ケース13側の第3支持部138と、支持部材15の支持部151で支持されている。そのため、支持軸30は、中空軸31を介して、外側ケース13側の第3支持部138と、内側ケース14側の第3支持部148で支持されている。
【0139】
中空軸31では、ベアリングB2、B2の間の領域の外周に、ギア部311が一体に形成されている。
【0140】
ギア部311の外周には、カウンタギア5の大径歯車52が、回転伝達可能に噛合している。カウンタギア5において大径歯車52は、円筒状の中空軸部51の外周にスプライン嵌合している。
【0141】
中空軸部51の長手方向の一端部51aと他端部51bには、ベアリングB3、B3が外挿されている。
中空軸部51の一端部51aは、ベアリングB3を介して、外側ケース13の第2支持部135で回転可能に支持されている。
中空軸部51の他端部51bは、ベアリングB3を介して、内側ケース14の第2支持部145で回転可能に支持されている。
【0142】
この状態において、カウンタギア5の中空軸部51は、回転軸Xaに平行な回転軸Xbに沿って設けられている。
中空軸部51では、大径歯車52から見て他端部51b側(図中、右側)に隣接して、小径歯車部511が設けられている。小径歯車部511は、中空軸部51と一体に形成されていると共に、大径歯車52の外径R1よりも小さい外径R2で形成されている(図5参照:R1>R2)。
【0143】
図5に示すように、小径歯車部511は、差動装置6のデフケース60に固定されたファイナルギアFGに回転伝達可能に噛合している。
デフケース60では、回転軸Xc方向(図中、左右方向)の両側部に、筒状の支持部601、602が設けられている。支持部601、602は、回転軸Xaに平行な回転軸Xcに沿って延出している。
デフケース60の支持部601、602には、ベアリングB4、B4が外挿されている。
支持部602は、ベアリングB4を介して、外側ケース13のリング状の第1支持部131で保持されている。
支持部602は、ベアリングB4を介して、内側ケース14のリング状の第1支持部141で保持されている。
【0144】
デフケース60の支持部601には、内側ケース14の開口部146を貫通したドライブシャフト8Bが、回転軸Xc方向から挿入されている。
デフケース60の支持部602には、外側ケース13の開口部130を貫通したドライブシャフト8Aが、回転軸Xc方向から挿入されている。
【0145】
デフケース60の内部では、ドライブシャフト8(8A、8B)の先端部の外周に、サイドギア63A、63Bがスプライン嵌合している。
デフケース60の内部では、円柱状のシャフト61が、回転軸Xcに直交する軸線Yに沿って設けられており、サイドギア63A、63Bは、シャフト61を間に挟んで、回転軸Xc方向で対向している。
【0146】
シャフト61には、かさ歯車62A、62Bが外挿して回転可能に支持されている。
かさ歯車62A、62Bは、シャフト61の長手方向(軸線Yの軸方向)で間隔を空けて2つ設けられており、かさ歯車62A、62Bは、互いの歯部を対向させた状態で配置されている。
【0147】
デフケース60内では、回転軸X方向におけるかさ歯車62A、62Bの両側にサイドギア63A、63Bが位置しており、かさ歯車62A、62Bとサイドギア63A、63Bとは、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0148】
かかる構成の動力伝達装置1Aの作用を説明する。
図5に示すように、動力伝達装置1Aでは、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、変速機構3Aと、カウンタギア5と、差動装置6と、ドライブシャフト8(8A、8B)と、が設けられている。
【0149】
モータ2の駆動により、ロータコア21が回転軸Xa回りに回転すると、ロータコア21と一体に回転するモータシャフト20を介して、変速機構3Aに回転が入力される。
変速機構3Aでは、遊星歯車組4のリングギア42が回転の入力部、キャリア45が入力された回転の出力部となっている(図6参照)。
【0150】
変速機構3Aでは、バンドブレーキ49が作動している状態で低速段、クラッチ47が作動している状態(締結されている状態)で高速段が実現する。
そのため、変速機構3Aに入力された回転は、変速された後にキャリア45の連結部453から中空軸50に出力される。そして、中空軸50に入力された回転は、中空軸50のギア部311に噛合した大径歯車52を介して、カウンタギア5に入力される。
【0151】
カウンタギア5では、小径歯車部511の外径R2が大径歯車52の外径R1よりも小さくなっている(図5参照)。
そのため、カウンタギア5に入力された回転は、大きく減速されたのちに、小径歯車部511が噛合するファイナルギアFGを介して、デフケース60(差動装置6)に出力される。
【0152】
そして、デフケース60が入力された回転で回転軸Xc回りに回転することにより、ドライブシャフト8(8A、8B)が回転軸Xc回りに回転する。これにより、モータ2の出力回転が、動力伝達装置1Aが搭載された車両の左右の駆動輪(図示せず)に伝達される。
【0153】
動力伝達装置1Aは、回転の伝達に関与する回転軸Xa、Xb、Xcが、互い平行となるように配置された、いわゆる3軸タイプの動力伝達装置である。
図7に示すように、変速機構3AのアクチュエータACTが、モータハウジング10の周壁部101の外径側の領域Rxであって、モータ2の回転軸Xa方向から見て、内側ケース14の側壁143と重なる領域に設けられている。
3軸タイプの動力伝達装置1Aの本体ケース9では、モータ2を収容する第1ケース部材(モータハウジング10、外側カバー11、内側カバー12)の部分が、変速機構3A、カウンタギア5、差動装置6を収容する第2ケース部材(外側ケース13、内側ケース14)から、モータ2の回転軸Xa方向外側に向けて張り出している。そのため、モータハウジング10の周壁部101の外径側では、回転軸Xa方向から見て内側ケース14の側壁143と重なる領域Rxに空間的な余裕がある。
【0154】
本実施形態にかかる動力伝達装置1Aでは、この領域Rxを利用して、バンドブレーキ49のアクチュエータACTを設けることで、動力伝達装置1Aを回転軸Xa方向に大型化させずに済むようになっている。
【0155】
以上の通り、第2実施形態にかかる動力伝達装置1Aは、以下の構成を有している。
(4)動力伝達装置1Aは、
モータ2と、
モータ2の下流に接続された変速機構3Aと、
変速機構3Aの下流に配置されたカウンタギア5(減速ギア)と、
モータ2と変速機構3Aとカウンタギア5とを収容するケース部材と、
を有する。
変速機構3Aは、バンドブレーキ49と、バンドブレーキ49を駆動するアクチュエータACTと、を有する。
動力伝達装置1Aの本体ケース9(ケース部材)は、
モータ2の径方向外周を囲う周壁部101(外周壁)と、
周壁部101と内側カバー12と連結し、且つ周壁部101から見て回転軸Xa径方向外側に向かって延びる側壁143と、を有する。
アクチュエータACTは、周壁部101と隣接し且つ側壁143と隣接している。
【0156】
本体ケース9の内側ケース14では、周壁部101の外径側であって、回転軸Xa方向から見て側壁143と重なる領域Rxに空間的な余裕がある。
この領域Rxは、内側ケース14における側壁143と周壁部101とが断面略L字形状に連なるように配置される領域の外側に位置しており、本体ケース9において領域Rxは、周壁部101および側壁143との間の活用可能なスペースである。
動力伝達装置1Aでは、本体ケース9外部の活用可能なスペースにアクチュエータACTを配置しているので、動力伝達装置1Aを回転軸Xa方向に拡大することなく、アクチュエータACTを設けることができる。
【0157】
第2実施形態にかかる動力伝達装置1Aは、以下の構成を有している。
(5)動力伝達装置1Aでは、バンドブレーキ49とアクチュエータACTは、モータ2の回転軸Xa方向(軸方向)において、側壁143を間に挟んで、側壁143に隣接配置されている。
バンドブレーキ49とアクチュエータACTと側壁143とは、モータの回転軸Xa、方向でオーバラップしており、回転軸Xa方向から見て、バンドブレーキ49とアクチュエータACTと側壁143とが重なる位置関係で設けられている。
【0158】
図7に示すように、カウンタギア5の回転軸Xbが、モータ2の回転軸Xaの径方向外側で、回転軸Xa対して平行に配置されている場合には、モータ2の外周を囲む周壁部101(外周壁)の径方向外側の領域Rxであって、カウンタギア5に隣接する領域Rxに空間的な余裕がある。
そのため、領域RxにアクチュエータACTを設置すると、側壁143がアクチュエータACTとモータ2との間に位置することになる。
この領域RxにアクチュエータACTを配置することで、動力伝達装置1Aが回転軸X方向と、径方向に大型化することを好適に防止できる。
【0159】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
以下の説明においては、前記した第1実施形態および第2実施形態と共通する部分については、同一の符号を付して示すと共に、可能な限り説明を省略する。
【0160】
図8は、第3実施形態にかかる動力伝達装置1Bを説明する図である。
図9は、動力伝達装置1Bの変速機構3B周りの拡大図である。
【0161】
図8に示すように動力伝達装置1Bでは、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア7と、変速機構3Bと、差動装置6と、ドライブシャフト8(8A、8B)と、が設けられている。
モータ2の出力回転は、遊星減速ギア7で減速されたのち、変速機構3Bに入力される。変速機構3Bは、入力した回転を変速して差動装置6に伝達する。差動装置6では、伝達された回転が、ドライブシャフト8(8A、8B)を介して、動力伝達装置1Bが搭載された車両の左右の駆動輪(図示せず)に伝達される。
【0162】
ここで、遊星減速ギア7は、モータ2の下流に接続されており、変速機構3Bは、遊星減速ギア7の下流に接続されており、差動装置6は、変速機構3Bの下流に接続されており、ドライブシャフト8(8A、8B)は、差動装置6の下流に接続されている。
【0163】
動力伝達装置1Bは、モータ2と、遊星減速ギア7と、変速機構3Bと、差動装置6と、ドライブシャフト8(8A、8B)が、共通の回転軸X上で同軸に配置された、いわゆる1軸タイプの動力伝達装置である。
【0164】
第3実施形態にかかる動力伝達装置1Bにおいても、モータハウジング10と、外側カバー11と、内側カバー12と、外側ケース13と、内側ケース14で、動力伝達装置1Bの本体ケース9を構成している。
そして、モータハウジング10と、外側カバー11と、内側カバー12で、モータ2のケース(第1ケース部材)を構成している。
外側ケース13と内側ケース14で、遊星減速ギア7と、変速機構3Bと、差動装置6と、を収容するケース(第2ケース部材)を構成している。
【0165】
図8に示すように、モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を所定間隔で囲むステータコア25とを、有している。
【0166】
モータシャフト20では、ロータコア21の両側にベアリングB1、B1が外挿されている。モータシャフト20は、外側カバー11のモータ支持部111と、内側カバー12のモータ支持部121に、ベアリングB1、B1を介して回転可能に支持されている。
【0167】
図9に示すように、モータシャフト20の一端20a側の連結部201は、遊星減速ギア7側の連結部711の外周にスプライン嵌合している。
遊星減速ギア7は、サンギア71と、リングギア72と、ピニオンギア73と、ピニオン軸74と、キャリア75と、を有している。
【0168】
サンギア71は、側面71aの内径側から回転軸X方向に延びる連結部711を有している。連結部711は、サンギア71と一体に形成されおり、サンギア71の内径側と連結部711の内径側とに跨がって、貫通孔710が形成されている。
サンギア71は、貫通孔710を貫通したドライブシャフト8Bの外周で回転可能に支持されている。
【0169】
回転軸Xの径方向におけるサンギア71の外径側には、内側カバー12のリング状の接合部120の内周に固定されたリングギア72が位置している。回転軸Xの径方向において、サンギア71とリングギア72の間では、ピニオン軸74で回転可能に支持されたピニオンギア73が、サンギア71の外周と、リングギア72の内周に噛合している。
【0170】
ピニオン軸74の長手方向の一端と他端は、キャリア75の一対の側板部751、752で支持されている。
【0171】
側板部751、752は、回転軸X方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。
側板部751、752の間では、複数のピニオンギア73が回転軸X周りの周方向に所定間隔で複数(例えば、4つ)設けられている。
【0172】
遊星減速ギア7は、サンギア71がモータ2の出力回転の入力部、キャリア75が、入力された回転の出力部となっている。
回転の出力部であるキャリア75では、側板部751の外周に、変速機構3B側のリングギア42が連結されている。
【0173】
変速機構3Bは、遊星歯車組4と、クラッチ47と、バンドブレーキ49と、を有している。
遊星歯車組4は、サンギア41と、リングギア42と、ピニオンギア43と、ピニオン軸44と、キャリア45と、を有している。
遊星歯車組4の構成要素(サンギア41、リングギア42、ピニオンギア43、ピニオン軸44、キャリア45)は、クラッチドラム48の外壁部481の内径側に設けられている。
クラッチ47は、リングギア42の外周にスプライン嵌合したドライブプレート471(内径側摩擦板)と、クラッチドラム48の外壁部481の内周にスプライン嵌合したドリブンプレート472(外径側摩擦板)と、回転軸X方向に移動可能に設けられたピストン475と、を有している。
【0174】
クラッチドラム48は、外壁部481と、円板部480と、内壁部482と、連結部483と、を有している。
外壁部481は、回転軸Xを所定間隔で囲む筒状を成している。円板部480は、外壁部481のモータ2とは反対側(図中、左側)の端部から内径側に延びている。円板部480の内径側の領域は、遊星歯車組4から離れる方向に窪んだ凹部480aとなっている。
【0175】
内壁部482は、回転軸Xを所定間隔で囲む筒状に形成されている。内壁部482は、円板部480の内径側の端部から遊星歯車組4側(図中、左側)に延びており、内壁部482の先端は、サンギア41とピニオンギア43との噛み合い部分に、回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0176】
連結部483は、回転軸Xを所定間隔で囲む円筒状を成している。連結部483は、長手方向の基端部483aが、内壁部482の先端側の内周に連結されている。
連結部483は、モータ2に近づく方向(図中、左方向)に直線状に延びている。連結部483の先端483bは、外壁部481よりもモータ2側に位置している。
【0177】
外壁部481と、円板部480と、内壁部482と、連結部483と、から構成されるクラッチドラム48は、開口をモータ2側に向けて設けられており、内径側に位置する連結部483の外周に、遊星歯車組4のサンギア41がスプライン嵌合している。
【0178】
遊星歯車組4では、サンギア41の外径側にリングギア42が位置している。リングギア42は、サンギア41の外周を所定間隔で囲む周壁部421を有しており、周壁部421のモータ2側の端部421aが、遊星減速ギア7のキャリア75の側板部751に連結されている。
【0179】
周壁部421では、サンギア41の外径側に位置する領域の内周に、ピニオンギア43の外周が噛合している。
ピニオンギア43は、リングギア42の周壁部421の内周と、サンギア41の外周に噛合している。
【0180】
ピニオンギア43を支持するピニオン軸44は、回転軸Xに平行な軸線X3に沿う向きで設けられている。ピニオン軸44の一端と他端は、キャリア45を構成する一対の側板部451、452で支持されている。
側板部451、452は、軸線X3方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。
【0181】
モータ2側に位置する一方の側板部452は、他方の側板部451よりも回転軸X側まで延びている。側板部452の内径側の端部452aには、回転軸Xを所定間隔で囲む筒状の連結部453が一体に形成されている。
連結部453は、クラッチドラム48の連結部483よりも回転軸X側(内径側)を、回転軸Xに沿ってモータ2から離れる方向(図中、左方向)に延びている。
【0182】
連結部453は、サンギア41の内径側をモータ2側から差動装置6側に横切って設けられており、連結部453は、クラッチドラム48の内壁部482の内径側で、回転伝達部材46の連結部461の内周にスプライン嵌合している。
【0183】
クラッチドラム48の外壁部481の内周には、クラッチ47のドリブンプレート472がスプライン嵌合している。クラッチ47のドライブプレート471は、リングギア42の周壁部421の外周にスプライン嵌合している。
リングギア42の周壁部421と、クラッチドラム48の外壁部481との間では、ドライブプレート471とドリブンプレート472とが交互に設けられている。
【0184】
ドライブプレート471とドリブンプレート472とが交互に設けられた領域のモータ2側には、スナップリング474で位置決めされたリテーニングプレート473が位置しており、差動装置6側には、ピストン475の押圧部475aが位置している。
【0185】
ピストン475の内径側の基部475bは、外径側の押圧部475aよりも遊星歯車組4から離れた位置(図中、左側の位置)に設けられている。ピストン475の内径側の基部475bは、回転軸X方向で隣接する円板部480の内径側の凹部480aに内挿されている。
【0186】
基部475bのモータ2側(図中、左側)の面には、スプリングリテーナ476で支持されたスプリングSpが、回転軸X方向から圧接している。
ピストン475は、スプリングSpから作用する付勢力で差動装置6側に付勢されている。
【0187】
クラッチドラム48では、凹部480aと内壁部482との境界部に、差動装置6側に突出する突出部484が設けられている。
突出部484は、内側ケース14に設けた支持壁149の内周に挿入されている。第1支持部141の内周にはオイルOLの供給路149aが開口している。
【0188】
突出部484では、供給路149aに対向する領域の外周に、油路484aが開口している。油路484aは、供給路149aから供給されるオイルOLを、クラッチドラム48内の油圧室Rmに導くために設けられている。
【0189】
油圧室Rmは、クラッチドラム48の凹部480aと、ピストン475の基部475bとの間に形成されている。
油圧室RmにオイルOLが供給されると、ピストン475が、油圧室Rm内の油圧により押されてモータ2側(図中、右側)に変位する。
ピストン475がモータ2側に変位すると、クラッチ47のドライブプレート471とドリブンプレート472とが、ピストン475の押圧部475aとリテーニングプレート473との間で把持される。
これにより、ドライブプレート471がスプライン嵌合したリングギア42と、ドリブンプレート472がクラッチドラム48との相対回転が、供給されるオイルOLの圧力に応じて規制されて、最終的に相対回転が規制される。
【0190】
さらに、クラッチドラム48の外壁部481外周には、バンドブレーキ49が巻き掛けられている。図示しないアクチュエータACTによりバンドブレーキ49の巻き掛け半径が狭められると、クラッチドラム48の回転軸X回りの回転が規制される。
【0191】
変速機構3Bを収容する内側ケース14は、変速機構3Bの外周を所定間隔で囲む外周壁147を有している。内側ケース14は、内側カバー12側の接合部140を、回転軸X方向から、内側カバー12の接合部120に接合させて設けられている。
【0192】
内側カバー12では、接合部120の外周から回転軸Xの径方向外側に延びる側壁123を有している。
バンドブレーキ49のアクチュエータACTは、外周壁147の外径側の領域Rxであって、側壁123と回転軸X方向にオーバラップする領域に設けられている。
回転軸X方向から見て、アクチュエータACTが設けられた領域Rxは、側壁123と重なる位置関係となっている。
【0193】
変速機構3Bでは、バンドブレーキ49の内径側に、遊星歯車組4と、クラッチ47が位置している。バンドブレーキ49と、遊星歯車組4と、クラッチ47は、回転軸Xの径方向でオーバラップしており、回転軸Xの径方向外側から見ると、バンドブレーキ49と、遊星歯車組4と、クラッチ47とが、重なる位置関係で設けられている。
【0194】
本実施形態の変速機構3Bでは、遊星歯車組4のリングギア42がモータ2の出力回転の入力部、キャリア45が、入力された回転の出力部となっている。
【0195】
変速機構3Bでは、低速段と高速段との間での切替を、クラッチ47の締結/解放、バンドブレーキ49の作動の組み合わせの変更により行う仕様となっている。
変速機構3Bは、低速段と高速段の間での切り替えが可能である。
【0196】
変速機構3Bでは、以下の条件(a)で低速段が実現し、条件(b)で高速段が実現する。
(a)バンドブレーキ49:作動、クラッチ47:解放
(b)バンドブレーキ49:非作動、クラッチ47:締結
ここで、変速機構3Bは、二段変速機構であり、低速段、高速段は同一回転方向(前進段又は後進段)である。モータ2の正逆転により前後進の切替えが可能である。
【0197】
変速機構3Bに入力された回転は、変速機構3Bで変速された後、キャリア45の連結部453が連結された回転伝達部材46に出力される。
【0198】
回転伝達部材46は、キャリア45の連結部453の外周にスプライン嵌合する連結部461と、連結部461の差動装置6側の端部から外径側に延びる円板部462と、円板部462の外周側から差動装置6側に延びる筒状部463とを有している。
筒状部463は、デフケース60と一体に形成された連結片605に、回転軸X方向から当接しており、筒状部463は、連結片605を貫通したボルトBによりデフケース60に連結されている。
【0199】
図8に示すように、デフケース60は、シャフト61と、かさ歯車62A、62Bと、サイドギア63A、63Bとを、内部に収納する中空状に形成されている。
デフケース60では、回転軸X方向(図中、左右方向)の両側部に、筒状の支持部601、602が設けられている。支持部601、602は、シャフト61から離れる方向に、回転軸Xに沿って延出している。
【0200】
デフケース60の支持部602は、ベアリングB2を介して、外側ケース13のリング状の第1支持部131で回転可能に支持されている。
支持部602には、外側ケース13の開口部130を貫通したドライブシャフト8Aが、回転軸X方向から挿入されており、ドライブシャフト8Aは、支持部602で回転可能に支持されている。
開口部130の内周には、リップシールRSが固定されており、リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフト8Aの外周に弾発的に接触することで、ドライブシャフト8Aの外周と開口部130の内周との隙間が封止されている。
【0201】
支持部601には、外側カバー11の開口部114を貫通したドライブシャフト8Bが、回転軸方向から挿入されている。
ドライブシャフト8Bは、モータ2のモータシャフト20と、遊星減速ギア7のサンギア71と、変速機構3Bの内径側を回転軸X方向に横切って設けられており、ドライブシャフト8Bの先端側が、支持部601で回転可能に支持されている。
【0202】
外側カバー11の開口部114の内周には、リップシールRSが固定されており、リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフト8Bの外周に弾発的に接触することで、ドライブシャフト8Bの外周と開口部114の内周との隙間が封止されている。
【0203】
デフケース60の内部では、ドライブシャフト8A、8Bの先端部の外周に、サイドギア63A、63Bがスプライン嵌合しており、サイドギア63A、63Bの各々は、かさ歯車62A、62Bに回転伝達可能に噛合している。
かさ歯車62A、62Bは、回転軸Xに直交する軸線Yに沿う向きで設けられたシャフト61に外挿されている。
【0204】
かかる構成の動力伝達装置1Bの作用を説明する。
動力伝達装置1Bでは、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア7と、変速機構3Bと、差動装置6と、ドライブシャフト8(8A、8B)と、が設けられている。
【0205】
モータ2の出力回転は、遊星減速ギア7で減速されて、変速機構3Bのリングギア42に入力される。
【0206】
変速機構3Bでは、遊星歯車組4のリングギア42が回転の入力部、ピニオンギア43を支持するキャリア45が、入力された回転の出力部となっている。
変速機構3Bでは、バンドブレーキ49が作動している状態で低速段、クラッチ47が作動している状態で高速段が実現する。
そのため、変速機構3Bに入力された回転は、変速された後にキャリア45の連結部453に連結された回転伝達部材46を介して、差動装置6のデフケース60に入力される。
【0207】
そして、デフケース60が入力された回転で回転軸X回りに回転することにより、ドライブシャフト8(8A、8B)が回転軸X回りに回転する。これにより、モータ2の出力回転が、動力伝達装置1Bが搭載された車両の左右の駆動輪(図示せず)に伝達される。
【0208】
ここで、動力伝達装置1Bでは、バンドブレーキ49のアクチュエータACTが、変速機構3Bの外周を所定間隔で囲む外周壁147の外径側の領域Rxであって、側壁123と回転軸X方向にオーバラップする領域に設けられている。
内側カバー12では、モータ2を収容する側壁123の領域が、回転軸Xの径方向外側に向けて張り出している。そのため、外周壁147の外径側では、回転軸X方向から見て側壁123と重なる領域Rxに空間的な余裕がある。
【0209】
本実施形態にかかる動力伝達装置1Bでは、この領域Rxを利用して、バンドブレーキ49のアクチュエータACTを設けることで、動力伝達装置1Bの本体ケース9を大型化させずに済むようになっている。
【0210】
そして、動力伝達装置1Bでは、ロータコア21のモータシャフト20と、遊星減速ギア7と、変速機構3Bと、ドライブシャフト8(8A、8B)とが、モータ2の出力回転の伝達経路上で、同心に配置されている。
そして、ドライブシャフト8Bが、モータシャフト20の内径側を回転軸X方向に貫通して設けられており、ドライブシャフト8Bとモータシャフト20とが、共通の回転軸X上で相対回転可能に設けられている。
そのため、モータシャフトと、カウンタギアと、ドライブシャフトと、が互いに平行な異なる回転軸上に設けられた動力伝達装置、すなわち、いわゆる3軸タイプの動力伝達装置に比べて、回転軸の径方向の大きさを抑えることができるようになっている。
【0211】
以上の通り、第3実施形態にかかる動力伝達装置1Bは、以下の構成を有している。
(6)動力伝達装置1Bは、
モータ2と、
モータ2の下流に接続された変速機構3Bと、
モータ2と変速機構3Bを収容する本体ケース9(ケース部材)と、
を有する。
変速機構3Bは、バンドブレーキ49と、バンドブレーキ49を駆動するアクチュエータACTと、を有する。
本体ケース9(ケース部材)は、
変速機構3Bの径方向外周を囲う外周壁147と、
外周壁147と連結し且つ外周壁147から径方向外側に向かって延びる側壁123と、を有する。
アクチュエータACTは、外周壁147と隣接し且つ側壁123と隣接している。
【0212】
本体ケース9の内側ケース14では、外周壁147の外径側であって、回転軸X方向から見て側壁123と重なる領域Rxに空間的な余裕がある。
この領域Rxは、内側ケース14における外周壁147と、内側カバー12における側壁123とが断面略L字形状に連なった領域の側に位置しており、本体ケース9において領域Rxは、外周壁147および側壁123と、外側ケース13との間の活用可能なスペースである。
動力伝達装置1Bでは、本体ケース9外部の活用可能なスペースにアクチュエータACTを配置しているので、動力伝達装置1BにおいてアクチュエータACTを、動力伝達装置1Bを回転軸X方向および径方向に拡大することなく、アクチュエータACTを設けることができる。
【0213】
第3実施形態にかかる動力伝達装置1Bは、以下の構成を有している。
(7)モータ2の回転軸X方向において、側壁123は、アクチュエータACTとモータ2との間に挟まれて配置されている。
側壁123とアクチュエータACTとモータ2は、モータ2の回転軸X方向でオーバラップしており、回転軸X方向から見ると、側壁123とアクチュエータACTとモータ2とが重なる位置関係で設けられている。
【0214】
図9に示すように、モータ2の外径が、変速機構3Bの外径よりも大きい場合、変速機構3Bの外周を囲む外周壁147の径方向外側の領域Rxであって、回転軸X方向でモータ2(ステータコア25)に隣接する領域Rxに空間的な余裕がある。
そのため、領域RxにアクチュエータACTを設置すると、内側カバー12の側壁123が、アクチュエータACTとカウンタギア5との間に位置することになる。
この領域RxにアクチュエータACTを配置することで、動力伝達装置1Bが回転軸X方向と、径方向に大型化することを好適に防止できる。
【0215】
第3実施形態にかかる動力伝達装置1Bは、以下の構成を有している。
(8)バンドブレーキ49およびアクチュエータACTは、モータ2の回転軸Xの径方向で、外周壁147を間に挟んで、外周壁147に隣接配置されている。
バンドブレーキ49とアクチュエータACTと外周壁147は、回転軸Xの径方向でオーバラップしており、回転軸Xの径方向から見ると、バンドブレーキ49とアクチュエータACTと外周壁147とが重なる位置関係で設けられている。
【0216】
図9に示すように、モータ2と変速機構3Bとが同軸に設けられている場合であって、モータ2の外径が、変速機構3Bの外径よりも大きい場合には、外周壁147の径方向外側でモータ2(ステータコア25)に隣接する領域Rxに空間的な余裕がある。
この領域RxにアクチュエータACTを配置することで、バンドブレーキ49の近くにアクチュエータACTを位置するので、バンドブレーキ49とアクチュエータACTとの距離を短くすることができ、アクチュエータACTの体格を小さくできる。
【0217】
図10は、バンドブレーキ49のアクチュエータACTの配置を説明する図であって、側壁と外周壁との位置関係を説明する図である。
【0218】
前記した第1実施形態の動力伝達装置1を回転軸X方向から見ると、図10のように模式的に示すことができる。
図10に示すように、バンドブレーキ49のアクチュエータACTは、変速機構3の径方向外周を囲む外周壁147の外側で、外周壁147と連結し且つ外周壁147から径方向外側に向かって延びる側壁143に隣接する位置に配置されている。
【0219】
アクチュエータACTは、回転軸X(軸方向)で側壁143とオーバラップしており、回転軸X方向から見て、側壁143と重なる位置関係で設けられている。
【0220】
アクチュエータACTは、回転軸X(軸方向)から見て外周壁147の幅方向の中心を通る鉛直線VLからオフセットした位置に設けられており、鉛直線VLとオーバラップしていない。
例えば、図10に示すように、外周壁と、側壁の4隅の角部の何れかひとつとの間にアクチュエータが配置される。図10の場合には、回転軸X方向から見て側壁143の対角線DLとオーバラップする位置にアクチュエータACTが配置されている。
例えば、アクチュエータを外周壁の真上に置いたような場合はアクチュエータの頂上部が側壁からはみ出して装置全体が大型化するおそれがある。このように配置することにより、広いスペースである4隅近辺にアクチュエータを配することになるので、動力伝達装置1全体の大型化を抑制することができる。
【0221】
なお、第2実施形態の動力伝達装置1A(図5図7参照)の場合には、モータ2の径方向外周を囲う周壁部101が、図10における外周壁に相当し、モータ2の回転軸Xaが、図10における回転軸Xに相当し、内側ケース14の側壁143が、図10における側壁に相当する。
第3実施形態にかかる動力伝達装置1B(図8参照)の場合には、変速機構3Bの径方向外周を囲う外周壁147が、図10における外周壁に相当し、モータ2の回転軸Xが、図10における回転軸Xに相当し、内側カバー12の側壁123が、図10における側壁に相当する。
【0222】
図11は、変速機構3、3A、3Bの構成を模式的に示したスケルトン図である。
図11の(b)から図14は、変速機構の変形例を説明するスケルトン図である。
なお、以下の説明では、符号「S」が、遊星歯車組4のサンギア41を意味し、符号「R」が、リングギア42を意味し、符号「C」が、キャリア45を意味している。
また、符号「BB」が、バンドブレーキ49を意味し、符号「CL」が、クラッチ47を意味し、符号「P」が、ピストン475を意味し、符号「DR」が、クラッチドラム48を意味し、符号「HB」が、ハブを意味している。
【0223】
前記した変速機構3、3A、3Bは、図11の(a)のように示すことができる。
前記した変速機構3、3A、3Bでは、遊星歯車組4が、ひとつのピニオンギア43を有するシングルピニオンである場合を例示した。
この変速機構3、3A、3Bでは、遊星歯車組4のリングギア42(R)が、回転の入力部、キャリア45が出力部である。そして、クラッチ47(C)が、リングギア42(R)とサンギア(S)とを相対回転不能に締結し、バンドブレーキ49(BB)が、クラッチドラム48(DR)に連結されたサンギア41(S)を固定する。
【0224】
本件発明にかかる動力伝達装置に適用可能な変速機構は、この態様にのみ限定されない。
以下に、適用可能な変速機構の態様を、図11の(b)から図14を用いて列挙する。
【0225】
例えば、シングルピニオンで、サンギアSの回転をバンドブレーキBBで固定する場合、図11の(b)、(c)に示す態様でも良い。
図11の(b)の態様では、遊星歯車組のリングギアRが回転の入力部であり、キャリアCが出力部であり、バンドブレーキBBが、クラッチドラムDRに連結されたサンギアSを固定する。クラッチCLが、クラッチドラムDRに連結されたサンギアSと、ハブHBに連結されたキャリアCとを相対回転不能に締結する。
【0226】
図11の(c)の態様では、遊星歯車組のリングギアRが回転の入力部であり、キャリアCが出力部であり、バンドブレーキBBが、ハブHBに連結されたサンギアSを固定する。クラッチCLが、リングギアRと、クラッチドラムDRに連結されたキャリアCとを相対回転不能に締結する。
【0227】
また、シングルピニオンで、キャリアCの回転をバンドブレーキBBで固定する場合、図12の(a)、(b)、(c)に示す態様でも良い。
図12の(a)の態様では、遊星歯車組のサンギアSが回転の入力部であり、リングギアRが出力部であり、バンドブレーキBBが、ハブHBに連結されたキャリアCを固定する。クラッチCLが、サンギアSと、クラッチドラムDRに連結されたリングギアRとを相対回転不能に締結する。
【0228】
図12の(b)の態様では、遊星歯車組のサンギアSが回転の入力部であり、リングギアRが出力部であり、バンドブレーキBBが、ハブHBに連結されたキャリアCを固定する。クラッチCLが、クラッチドラムDRに連結されたサンギアSと、ハブHBに連結されたキャリアCとを相対回転不能に締結する。
図12の(c)の態様では、遊星歯車組のサンギアSが回転の入力部であり、リングギアRが出力部であり、バンドブレーキBBが、クラッチドラムDRに連結されたキャリアCを固定する。クラッチCLが、クラッチドラムDRに連結されたキャリアCと、リングギアRとを相対回転不能に締結する。
【0229】
また、シングルピニオンで、リングギアRの回転をバンドブレーキBBで固定する場合、図12の(d)、(e)、(f)に示す態様でも良い。
図12の(d)の態様では、遊星歯車組のサンギアSが回転の入力部であり、キャリアCが出力部であり、バンドブレーキBBが、リングギアRを固定する。クラッチCLが、サンギアSと、クラッチドラムDRに連結されたリングギアRとを相対回転不能に締結する。
【0230】
図12の(e)の態様では、遊星歯車組のサンギアSが回転の入力部であり、キャリアCが出力部であり、バンドブレーキBBが、リングギアRを固定する。クラッチCLが、サンギアSと、クラッチドラムDRに連結されたキャリアCとを相対回転不能に締結する。
図12の(f)の態様では、遊星歯車組のサンギアSが回転の入力部であり、キャリアCが出力部であり、バンドブレーキBBが、リングギアRを固定する。クラッチCLが、クラッチドラムDRに連結されたリングギアRと、ハブHBに連結されたキャリアCとを相対回転不能に締結する。
【0231】
また、ダブルピニオンで、サンギアSの回転をバンドブレーキBBで固定する場合には、図13の(a)、(b)、(c)に示す態様でも良い。
図13の(a)の態様では、遊星歯車組のキャリアCが回転の入力部であり、リングギアRが出力部であり、バンドブレーキBBが、クラッチドラムDRに連結されたサンギアSを固定する。クラッチCLが、リングギアRと、クラッチドラムDRに連結されたサンギアSとを相対回転不能に締結する。
【0232】
図13の(b)の態様では、遊星歯車組のキャリアCが回転の入力部であり、リングギアRが出力部であり、バンドブレーキBBが、クラッチドラムDRに連結されたサンギアSを固定する。クラッチCLが、クラッチドラムDRに連結されたサンギアSと、ハブHBに連結されたキャリアCとを相対回転不能に締結する。
図13の(c)の態様では、遊星歯車組のキャリアCが回転の入力部であり、リングギアRが出力部であり、バンドブレーキBBが、ハブHBに連結されたサンギアSを固定する。クラッチCLが、クラッチドラムDRに連結されたキャリアCと、リングギアRとを相対回転不能に締結する。
【0233】
また、ダブルピニオンで、キャリアCの回転をバンドブレーキBBで固定する場合、図13の(d)、(e)、(f)に示す態様でも良い。
図13の(d)の態様では、遊星歯車組のサンギアSが回転の入力部であり、リングギアRが出力部であり、バンドブレーキBBが、ハブHBに連結されたキャリアCを固定する。クラッチCLが、サンギアSと、クラッチドラムDRに連結されたリングギアRとを相対回転不能に締結する。
【0234】
図13の(e)の態様では、遊星歯車組のサンギアSが回転の入力部であり、リングギアRが出力部であり、バンドブレーキBBが、ハブHBに連結されたキャリアCを固定する。クラッチCLが、クラッチドラムDRに連結されたサンギアSと、ハブHBに連結されたキャリアCとを相対回転不能に締結する。
図13の(f)の態様では、遊星歯車組のサンギアSが回転の入力部であり、リングギアRが出力部であり、バンドブレーキBBが、クラッチドラムDRに連結されたキャリアCを固定する。クラッチCLが、クラッチドラムDRに連結されたキャリアCと、リングギアRとを相対回転不能に締結する。
【0235】
また、ダブルピニオンで、リングギアRの回転をバンドブレーキBBで固定する場合、図14の(a)、(b)、(c)に示す態様でも良い。
図14の(a)の態様では、遊星歯車組のサンギアSが回転の入力部であり、キャリアCが出力部であり、バンドブレーキBBが、リングギアRを固定する。クラッチCLが、サンギアSと、クラッチドラムDRに連結されたリングギアRとを相対回転不能に締結する。
【0236】
図14の(b)の態様では、遊星歯車組のサンギアSが回転の入力部であり、キャリアCが出力部であり、バンドブレーキBBが、リングギアRを固定する。クラッチCLが、クラッチドラムDRに連結されたキャリアCと、サンギアSとを相対回転不能に締結する。
図14の(c)の態様では、遊星歯車組のサンギアSが回転の入力部であり、キャリアCが出力部であり、バンドブレーキBBが、リングギアRを固定する。クラッチCLが、ハブHBに連結されたキャリアCと、クラッチドラムDRに連結されたリングギアRとを相対回転不能に締結する。
【0237】
以上、図11から図14に、変速機構の取り得る態様を全18パターン例示した。
これら全18パターンのうち、図11に示す態様、図12の(e)に示す態様、図13の(a)に示す態様、図13の(f)に示す態様では、モータ2の出力回転を正回転方向に維持したままで、低速段と高速段との切り替えが可能である。
そして、図11に示す態様、図13の(a)、(b)、(c)の態様は、クラッチドラムDRの外径が最も大きくなるので、クラッチCLを、余裕を持って締結状態にできる。
【0238】
また、遊星歯車組の構成要素(サンギアS、リングギアR、キャリアC)のうちの2つの要素を締結するクラッチCLは、変速機構においてどこに設けても良い。
例えば、図11の(a)、図13の(a)に示す態様のように、バンドブレーキBBとリングギアRの間に、クラッチCLを設けても良い。
【0239】
さらに、例えば図12の(a)に示す態様のように、サンギアSの内径側にクラッチを設けても良い。
このように、クラッチCLは、リングギアRの外径側と、サンギアSの内径側の何れに設けても良い。
【0240】
なお、ピニオンギアを2つ有するダブルピニオンにおいても同様である。
図13の(a)、(b)、(c)、(f)に示すように、リングギアRの外径側にクラッチCLを設けても良い。
図13の(d)、(e)、図14の(a)、(b)、(c)に示すように、サンギアSの内径側にクラッチCLを設けても良い。
なお、図14の(c)に示す態様と、図14の(b)に示す態様では、低速段と高速段の切り替えにあたり、モータ2の出力回転の方向を逆転させる必要がある。
【0241】
ここで、本明細書における用語「下流に接続」とは、上流に配置された部品から下流に配置された部品へと動力が伝達される接続関係にあることを意味する。
例えば、モータ2の下流に接続された変速機構3という場合は、モータ2から変速機構3へと動力が伝達されることを意味する。
また、本明細書における用語「直接接続」とは、他の減速機構、増速機構、変速機構などの減速比が変換される部材を介さずに部材同士が動力伝達可能に接続されていることを意味する。
【0242】
本件発明は、以下の3タイプの変速機構付きの動力伝達装置に好適に適用可能である。
変速機構3Bとモータ2の回転軸が同心に配置されていると共に、モータ2の回転軸と、カウンタギア5の回転軸と、ドライブシャフト8(8A、8B)の回転軸が並列に並んだ、いわゆる3軸タイプの動力伝達装置1B(図5参照)。
モータ2と変速機構3とドライブシャフト8(8A、8B)の回転軸が同心に配置されていると共に、モータ2の回転軸と、カウンタギア5の回転軸が並列に並んだ、いわゆる2軸タイプの動力伝達装置1(図1参照)。
モータ2と変速機構3Bとドライブシャフト8(8A、8B)の回転軸が同心に配置された、いわゆる1軸タイプの動力伝達装置1B(図8参照)。
これら3タイプの動力伝達装置のうち、カウンタギア5の外径が大きい(径方向の面積が大きい)2軸タイプの動力伝達装置1は、最もスペースが空く(領域Rxを広く取ることができる)ので好ましい。
【0243】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
図1
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