(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】衣類
(51)【国際特許分類】
A43B 17/08 20060101AFI20220905BHJP
A43B 23/02 20060101ALI20220905BHJP
A43B 5/00 20220101ALI20220905BHJP
【FI】
A43B17/08
A43B23/02 101A
A43B5/00
(21)【出願番号】P 2021520407
(86)(22)【出願日】2018-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2018077968
(87)【国際公開番号】W WO2020074109
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】511264353
【氏名又は名称】プーマ エス イー
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
【住所又は居所原語表記】Puma Way 1,91074 Herzogenaurach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、チャールズ
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3016879(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第02253658(EP,A1)
【文献】特表2010-508425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00-23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用中に着用者と接触している領域(2)を含み、前記領域(2)はポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリウレタンを含む少なくとも1つの材料層(3)を含む、
衣類(1)であって、
前記領域(2)は、前記材料層(3)の内側に配置され、かつ微生物(5)が置かれている複数の単室によって形成される複数の受入空間(4)を有し、前記複数の受入空間(4)は前記材料層(3)の延長上に配置され、前記単室は壁構造(7)によって互いに分離され、前記壁構造(7)は、使用中に前記着用者と接触しているカバー(8)によって閉鎖され、前記微生物(5)に加えて、ゼラチン媒体が前記受入空間(4)に配置され、前記微生物(5)は、前記衣類(1)の使用中に前記着用者によって熱および/または汗が加えられる時、前記材料層(3)の少なくとも一部分を腐食させるように選択されることを特徴とする、衣類。
【請求項2】
前記複数の受入空間(4)は、前記材料層(3)の表面に沿って実質的に均一なパターンとして形成されることを特徴とする、請求項1に記載の衣類。
【請求項3】
前記壁構造(7)は、前記材料層(3)の表面に垂直に見る時、矩形、円形、または蜂の巣状であることを特徴とする、請求項1または2に記載の衣類。
【請求項4】
前記微生物(5)は、
イデオネラ・サカイエンシスという種類の細菌であり、前記材料層(3)は、ポリエチレンテレフタレートを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の衣類。
【請求項5】
前記微生物(5)は、アクチノバクテリアという種類の細菌であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の衣類。
【請求項6】
前記微生物(5)は、プロテオバクテリアという種類の細菌であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の衣類。
【請求項7】
前記微生物(5)は、バクテロイデス門という種類の細菌であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の衣類。
【請求項8】
前記微生物(5)は、シュードモナス・プチダという種類の細菌であり、前記材料層(3)はポリウレタンを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の衣類。
【請求項9】
前記ゼラチン媒体はゼラチンゲルであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の衣類。
【請求項10】
運動靴であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の衣類。
【請求項11】
スポーツウェア、スポーツジャケット、スポーツズボン、スポーツシャツ、または、使用中に前記着用者の体に接触している装備品であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用中に着用者と接触している領域を含み、該領域はポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリウレタンを含む少なくとも1つの材料層を含む、衣類、特にスポーツ衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
使用中、衣料品の、例えば靴の適切な換気または通気は、具体的には、スポーツ活動が実行される時重要である。使用中、空気が衣料品を通って流れることができるように対応する開口部または孔を有する衣料品を提供することは既知である。
【0003】
時には、開口部または孔をどこに位置付けるべきかを決定することが問題になるが、これは、着用者による衣料品の使用中に個々の状況に依存する時があるからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Dominik Dansoらによる「New insights into the function and global distribution of polyethylene(PET) degrading bacteria and enzymes in marine and terrestrial metagenomes」、Department of Microbiology and Biotechnology、University of Hamburg
【文献】Spektrum der Wissenschaftにおける「Plastik fressende Bakterien」、2016年5月、Science 351、1196~1199頁、2016
【文献】Technology ReviewにおけるSusanne Donnerによる「Die Plastikfresser kommen」、2016年8月17日
【文献】Anna Winstonによる「Puma and MIT Design Lab envision a future of self-adapting,performance-enhancing sportswear」、2018年5月24日(URL:https://www.dezeen.com/2018/05/24/mit-media-lab-puma-future-sportswear-design/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明の目的は、実際に必要とされる場所での換気の改善を可能にする衣料品(すなわち、靴または衣料)、特にスポーツ衣類を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるこの目的の解決策は、上記領域が、材料層の内側に配置され、かつ微生物が置かれている複数の単室によって形成される複数の受入空間を有し、複数の受入空間が材料層の延長上に配置され、単室が壁構造によって互いに分離され、壁構造が、使用中に着用者と接触しているカバーによって閉鎖され、微生物に加えて、ゼラチン媒体が受入空間に配置され、微生物が、衣類の使用中に着用者によって熱および/または汗が加えられる時、材料層の少なくとも一部分を腐食させるように選択されることを特徴とする。
【0007】
上記のある特定の条件は、衣料品の使用中に領域に、ひいては微生物に、着用者によって局所的に熱および/または汗が加えられることである。
【0008】
複数の受入空間は、材料層の延長上に、すなわち、材料層の表面に沿って配置される。上記の受入空間は、微生物が位置する密閉した空洞を形成することができる。好ましくは、複数の受入空間は、材料層の表面に沿って実質的に均一なパターンとして形成される。そのパターンは、例えば、矩形、円形、または蜂の巣状とすることができる。
【0009】
具体的には、イデオネラ・サカイエンシス、特に、イデオネラ・サカイエンシス201-F6という種類の細菌である微生物であるのが好ましい。他の好ましい微生物は、アクチノバクテリア、プロテオバクテリア、バクテロイデス門、およびシュードモナス・プチダという種類の細菌である。
【0010】
これらの種類の細菌はそれ自体既知である。以下の出版物:非特許文献1、非特許文献2、および非特許文献3を明確に参照する。
【0011】
イデオネラ・サカイエンシスは、イデオネラ属およびコマモナス科からの細菌であり、具体的にはポリエチレンテレフタレートを生物分解することが可能である。
【0012】
好ましくは、ゼラチン媒体はゼラチンゲルである。
【0013】
材料層に対して、上記細菌による効率的な腐食を可能にするための好ましい材料が提案される。よって、材料層は、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリウレタンから成るまたはこれらを含む。
【0014】
衣類は具体的には、運動靴、スポーツウェア、スポーツジャケット、スポーツズボン、またはスポーツシャツが好ましい。他の好ましい応用には、使用中に着用者の体に接触している装備品があり、ここで、具体的には、対応して装着され、かつ使用中に着用者または使用者の体に接触しているバックパックが考慮に入れられる。
【0015】
よって、衣類、特に靴は、生物分解可能材料の少なくとも一部分から作られる。該衣類は、好ましくは、微生物がパターン形成される。
【0016】
衣料品の上記領域は、空洞パターンで製作(成型)可能である。空洞はさらにまた、細菌およびゼラチン媒体、例えば、ゼラチンゲルが充填される。
【0017】
上記の空洞における微生物は、靴の使用中に着用者の体によって、具体的には着用者の足によって生成される熱に反応し、かつ空洞における媒体を消滅させることによって増殖する。
【0018】
衣類、特に靴は、無色で製作可能である。ゼラチン媒体を微生物によって消滅させると、靴の、より具体的には材料層の表面は、腐食し始め、かつより多くの空気が流れることを可能にする換気点をもたらす。よって、衣類の換気は選択的に改善される。
【0019】
経時的に、衣類、特に靴は、着用者の活動プロファイルに基づいて外観を変え始める。
【0020】
具体的に好ましい組み合わせは、ポリエチレンテレフタレート、およびイデオネラ・サカイエンシス、特に、イデオネラ・サカイエンシス201-F6という種類の細菌の使用である。
【0021】
別の具体的に好ましい組み合わせは、ポリウレタン、およびシュードモナス・プチダという種類の細菌の使用である。
【0022】
本出願に対するさらなる背景は、非特許文献4で見出され得る。
【0023】
図面には、本発明の一実施形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】靴がまだ使用されていない状態の
図1による断面
図A-Bである。
【
図3】靴がここではある特定の時間で既に使用されている状態の
図1による断面
図A-Bである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1には、運動靴1である衣料品が示されている。運動靴1は、アッパー9、およびアッパー9と連結されるソール10を有する。アッパー9およびさらにはソール10全体とすることができるある特定の領域2は、具体的には、一定時間使用後の靴1の通気または換気の改善を可能にするために設けられる。
【0026】
その領域2の断面図が
図2および
図3に示されている。
【0027】
図2では、靴がまだ使用されていない時のアッパーの外側材料層3を見ることができる。
【0028】
材料層3の内側に、すなわち、着用者の足に面した側に、受入空間4が配置される。この受入空間4は、材料層3の表面に垂直に見る時、矩形、円形、または蜂の巣状(六角形)とすることができる壁構造7によって互いに分離される複数の単室から成る。
【0029】
壁構造7は薄いカバー8によって閉鎖される。よって、受入空間4は、微生物5が配置されるいくつかの室から成る。さらに、ゼラチン媒体、すなわち、微生物およびゼラチン媒体の混合物は、上記の室に配置される。
【0030】
熱(または汗)が靴1の使用中に加えられる時、
図3に具体的に示されるように、ゼラチン媒体における微生物5は、熱(または汗)が加えられる際の強度に応じてある程度活性化する。それに応じて、層3の材料は、ある程度の強度で腐食するまたは生物分解される。
【0031】
図3に示されるように、熱および/または汗が集中的に加えられる部分は、孔6がもたらされるように材料層3を腐食させる。孔6によって、靴の換気は局所的に高められる。
【0032】
よって、微生物、特に上記細菌は、材料層を部分的に腐食させるため、(場合によりかなり小さい)孔6が時間と共にもたらされる。これらの孔6によって、衣類、すなわち、まさに、大部分が着用中の利便性を改善するために必要とされるような場所での換気の改善が可能になる。
【0033】
衣料品の使用者の熱および汗が個々にもたらされることに応じて、孔の固有の配置がもたらされるため、これによって、個々の使用者に対する最適な衣料品をもたらすことが可能になる。
【符号の説明】
【0034】
1 衣類(靴、衣料)
2 領域
3 材料層
4 受入空間
5 微生物
6 孔
7 壁構造
8 カバー
9 アッパー
10 ソール
H 熱