IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-汚泥処理システムおよび汚泥処理方法 図1
  • 特許-汚泥処理システムおよび汚泥処理方法 図2
  • 特許-汚泥処理システムおよび汚泥処理方法 図3
  • 特許-汚泥処理システムおよび汚泥処理方法 図4
  • 特許-汚泥処理システムおよび汚泥処理方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】汚泥処理システムおよび汚泥処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20220905BHJP
   C02F 11/12 20190101ALI20220905BHJP
   C02F 1/20 20060101ALI20220905BHJP
   C02F 1/66 20060101ALI20220905BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20220905BHJP
   C02F 11/06 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
C02F11/04 Z ZAB
C02F11/12
C02F1/20 B
C02F1/66 510R
C02F1/66 522B
C02F1/66 530P
C02F11/00 Z
C02F11/06 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017054476
(22)【出願日】2017-03-21
(65)【公開番号】P2018153780
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 卓巳
(72)【発明者】
【氏名】永森 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】毛受 卓
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】木内 智明
(72)【発明者】
【氏名】大月 伸浩
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0206028(US,A1)
【文献】特開平06-343994(JP,A)
【文献】特開2002-273489(JP,A)
【文献】特開2004-008843(JP,A)
【文献】特開2005-238103(JP,A)
【文献】特開2013-215681(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015203484(DE,A1)
【文献】特開2001-113265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
C02F1/20
C02F3/00-3/34
C02F9/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を消化処理して消化汚泥を得る消化槽と、
前記消化汚泥の脱水処理液のアルカリ処理物をアンモニアストリッピング処理するアンモニアストリッピング槽と、
アンモニアストリッピング処理されたアンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素を散気して中和処理する二酸化炭素散気槽と、
前記二酸化炭素散気槽において中和処理された中和処理物を前記消化槽に送る返送手段と、
前記消化槽と前記アンモニアストリッピング槽との間に、前記消化汚泥を脱水する脱水装置と、
前記脱水装置と前記アンモニアストリッピング槽との間に、前記消化汚泥の脱水処理液にアルカリ剤を添加して撹拌混合するアルカリ処理槽と、
前記二酸化炭素散気槽において中和処理された中和処理物を、排水処理施設に送る送水手段と、
前記消化槽における消化処理において生じた二酸化炭素を前記二酸化炭素散気槽に送気する送気手段と、
を備える汚泥処理システム。
【請求項2】
有機性廃棄物を消化処理して消化汚泥を得る消化槽と、
前記消化汚泥の可溶化処理物をアンモニアストリッピング処理するアンモニアストリッピング槽と、
アンモニアストリッピング処理されたアンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素を散気して中和処理する二酸化炭素散気槽と、
前記二酸化炭素散気槽において中和処理された中和処理物を前記消化槽に送る返送手段と、
前記消化槽と前記アンモニアストリッピング槽との間に、前記消化汚泥にアルカリ剤を添加して撹拌混合するアルカリ処理槽と、
前記アルカリ処理槽と前記アンモニアストリッピング槽との間に、前記消化汚泥のアルカリ処理物を可溶化処理する可溶化処理槽と、
前記二酸化炭素散気槽において中和処理された中和処理物を、排水処理施設に送る送水手段と、
前記消化槽における消化処理において生じた二酸化炭素を前記二酸化炭素散気槽に送気する送気手段と、
を備える汚泥処理システム。
【請求項3】
有機性廃棄物を消化処理して消化汚泥を得る消化処理工程と、
前記消化汚泥のアルカリ処理物の可溶化処理物または前記消化汚泥の脱水処理液のアルカリ処理物アンモニアストリッピング処理するアンモニアストリッピング工程と、
アンモニアストリッピング処理したアンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素を散気して中和処理する中和処理工程と、
前記中和処理工程で得られた中和処理物を、前記消化処理工程に返送する返送工程と、
前記消化処理工程と前記アンモニアストリッピング工程との間に、前記消化汚泥または前記消化汚泥の脱水処理液にアルカリ剤を添加してpHを9.0以上に調整するアルカリ処理工程と、
前記アルカリ処理工程と前記アンモニアストリッピング工程との間に、前記消化汚泥のアルカリ処理物可溶化処理する可溶化処理工程と、
中和処理された中和処理物を、排水処理施設に送る工程と、を備え、
前記中和処理工程が、アンモニアストリッピング処理したアンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素を散気してpHを7.0~8.0にし、且つ前記消化処理において生じた二酸化炭素を散気する工程である汚泥処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、汚泥処理システムおよび汚泥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥処理施設では、排水処理施設で発生した有機性汚泥、家畜糞尿、生ごみや有機物を高濃度で含む有機排水を処理する。汚泥処理施設に送られた、これらの有機性廃棄物は、汚泥処理施設にて処理されて、有機物が除去される。
【0003】
汚泥処理施設に送られた有機性廃棄物は、消化槽にて消化処理(メタン発酵処理)されて、バイオガスと消化汚泥とに分解される。また、有機性廃棄物が消化処理される際、バイオガスと消化汚泥に加えて、高濃度のアンモニアが生成される。このとき生成したアンモニアは、消化汚泥に含まれる水分に溶存する。消化処理された消化汚泥は、脱水装置にて脱水されて、脱水汚泥と脱離液とに固液分離される。この脱離液は排水処理施設に送られて処理される。脱離液には消化処理時に生成したアンモニアが多量に溶存している。そのため、脱離液を何ら処理せずに排水処理施設に送ると、排水処理施設における窒素除去の負担が増大する場合があった。
【0004】
そこで、脱離液を排水処理施設に送る前に、脱離液中のアンモニアを除去することを目的として、脱離液中のアンモニアを気相中に拡散するアンモニアストリッピング処理が行われている。アンモニアストリッピング処理において、被処理液(脱離液)のpHが高いほどアンモニアの除去効率が向上することが知られている。
【0005】
しかし、アンモニアストリッピング処理後の脱離液は、アルカリ性を示すため、そのまま排水処理施設に送ると、排水処理施設の生物処理に悪影響を及ぼす。そこで、排水処理施設に送る前に、アンモニアストリッピング処理後の脱離液を、塩酸や硫酸等を添加して中性にする必要がある。これにより、薬液コストが増大する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭56-124822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、汚泥処理施設から排水処理施設に返送する液中の窒素濃度を、薬剤を使わずに低減できる汚泥処理システムおよび汚泥処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の汚泥処理システムは、消化槽と、アンモニアストリッピング槽と、二酸化炭素散気槽と、を持つ。
消化槽は、有機性廃棄物を消化処理して消化汚泥を得る。
アンモニアストリッピング槽は、前記消化汚泥、前記消化汚泥の脱水処理液、前記消化汚泥の可溶化処理物または前記消化汚泥もしくは前記消化汚泥の脱水処理液のアルカリ処理物をアンモニアストリッピング処理する。
二酸化炭素散気槽は、アンモニアストリッピング処理されたアンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素を散気して中和処理する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態における汚泥処理システムの概要図。
図2】各温度における、pHと遊離NHの存在比率との関係を示す図。
図3】第2の実施形態における汚泥処理システムの概要図。
図4】第3の実施形態における汚泥処理システムの概要図。
図5】第4の実施形態における汚泥処理システムの概要図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の汚泥処理システムおよび汚泥処理方法を、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態である汚泥処理システムを示す図である。
本実施形態の汚泥処理システム100は、消化槽2と、アンモニアストリッピング槽4と、二酸化炭素散気槽5と、を備える。
二酸化炭素散気槽5には、pH計6が設置されている。
汚泥処理システム100は、図1に示すように、汚泥濃縮槽1と、脱水装置3と、返送手段20と、を備えていてもよい。なお、返送手段20は、中和処理汚泥送泥ラインL8と、ポンプP1と、を備える。
なお、以下の説明では、汚泥処理する有機性廃棄物の一例として、下水汚泥を対象とした場合について説明する。
【0012】
汚泥濃縮槽1は、排水処理施設から下水汚泥送泥ラインL1を介して送られる、下水汚泥を濃縮して、下水汚泥(固形分)の体積を減少させる槽である。汚泥濃縮槽1は、下水汚泥送泥ラインL2を介して消化槽2と接続されている。
【0013】
消化槽2は、汚泥濃縮槽1から送られた下水汚泥を嫌気性微生物によって、二酸化炭素およびメタンガスを含むバイオガスと、消化汚泥とに分解する、消化処理を行う槽である。
消化槽2は、バイオガス送気ラインL9を介して、消化槽2外へバイオガスを排出できるようになっている。消化槽2は、消化汚泥送泥ラインL3を介して脱水装置3と接続されている。また、消化槽2は、消化汚泥送泥ラインL6を介してアンモニアストリッピング槽4と接続されている。さらに、消化槽2は、返送手段20の中和処理汚泥送泥ラインL8を介して、二酸化炭素散気槽5と接続されている。
【0014】
脱水装置3は、消化槽2から送られた消化汚泥を脱水して、消化汚泥に含まれる水分である脱離液(脱水処理液)と脱水汚泥とに分離させる装置である。なお、脱水装置3としては、例えば、ベルトプレス脱水機、フィルタープレス脱水機、ロータリープレス脱水機、スクリュープレス脱水機、遠心分離脱水機、多重円板脱水機等を用いることができる。
脱水装置3は、脱水汚泥送泥ラインL4を介して図示略の乾燥装置と接続されている。また、脱水装置3は、脱離液送液ラインL5を介して図示略の排水処理施設と接続されている。
【0015】
アンモニアストリッピング槽4は、消化槽2から送られた消化汚泥をアンモニアストリッピング処理して、アンモニアストリッピング処理物とする槽である。なお、本実施形態においてアンモニアストリッピング処理物とは、アンモニアストリッピング処理されて、アンモニア態窒素が除去された後の汚泥をいう。
【0016】
消化汚泥は、一般に、アンモニアおよびアンモニウムイオンの形態で窒素を含んでいる。ここでいうアンモニアストリッピング処理とは、そのような消化汚泥に蒸気または空気を吹き込んで、消化汚泥に含まれるアンモニア態窒素(NH )と水酸化物イオン(OH)とを反応させ、遊離アンモニア(NH)および水(HO)に反応させ、遊離アンモニアを消化汚泥から放散させる処理である。これにより、消化汚泥に含まれる窒素(アンモニア態窒素)が除去される。
【0017】
アンモニアストリッピング槽4は、アルカリ剤供給ラインL10を介して図示略のアルカリ剤供給部と接続されている。また、アンモニアストリッピング槽4は、アンモニアストリッピング処理物送泥ラインL7を介して二酸化炭素散気槽5と接続されている。さらに、アンモニアストリッピング槽4は、アンモニアガス送気ラインL11を介して、アンモニアガスをアンモニアストリッピング槽4外に排出できるようになっている。
【0018】
二酸化炭素散気槽5は、アンモニアストリッピング槽4から送られたアンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素を散気し、中和処理して中和処理汚泥(中和処理物)を得る槽である。なお、本実施形態において中和処理汚泥とは、二酸化炭素が散気されて、アンモニアストリッピング処理物に含まれる水分が中和処理された後の汚泥をいう。
【0019】
二酸化炭素散気槽5には、pH計6が設置されている。二酸化炭素散気槽5は、二酸化炭素送気ラインL12を介して図示略の二酸化炭素供給部と接続されている。また、二酸化炭素散気槽5は、返送手段20の中和処理汚泥送泥ラインL8を介して消化槽2と接続されている。
【0020】
返送手段20は、中和処理汚泥送泥ラインL8と、ポンプP1と、を備える。ポンプP1は、二酸化炭素散気槽5と消化槽2とを接続する、中和処理汚泥送泥ラインL8の途中に備えられている。ポンプP1が作動すると、二酸化炭素散気槽5内の中和処理汚泥が、中和処理汚泥送泥ラインL8を介して消化槽2に送られる。
【0021】
pH計6は、二酸化炭素散気槽5内のアンモニアストリッピング処理物のpHを計測する計測器である。
【0022】
次に、本実施形態の汚泥処理システム100のそれぞれの構成要素の作用を説明すると共に、当該汚泥処理システム100を用いた汚泥処理方法について説明する。
【0023】
本実施形態の汚泥処理方法は、下水汚泥を消化処理して消化汚泥を得る工程と、消化汚泥をアンモニアストリッピング処理する工程と、アンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素を散気して中和処理する工程と、を有する。
より詳細には、下水汚泥を消化槽2にて消化処理して、メタンガスおよび二酸化炭素を含むバイオガスならびに消化汚泥を得る工程(消化処理工程)と、消化汚泥をアンモニアストリッピング槽4にてアンモニアストリッピング処理して、アンモニアストリッピング処理物(アンモニアストリッピング処理物)を得る工程(アンモニアストリッピング工程)と、アンモニアストリッピング処理物を二酸化炭素散気槽5にて、二酸化炭素を散気し、中和処理して中和処理汚泥(中和処理物)を得る工程(中和処理工程)と、を有する。
【0024】
また、本実施形態の汚泥処理方法は、排水処理施設から送られた下水汚泥を濃縮する工程(濃縮工程)と、消化汚泥を脱水装置3にて脱水して、脱離液(脱水処理液)と脱水汚泥とに分離する工程(脱水工程)と、中和処理した中和処理汚泥を二酸化炭素散気槽5に返送する工程(返送工程)と、を有していてもよい。
【0025】
濃縮工程は、排水処理施設から下水汚泥送泥ラインL1を介して汚泥濃縮槽1に送られた下水汚泥を、汚泥濃縮槽1にて濃縮する工程である。なお、汚泥濃縮槽1における汚泥濃縮方法としては、重力式濃縮や機械式濃縮を用いることができる。
【0026】
下水汚泥は、通常、水分を99質量%程度含んでいる。下水汚泥が濃縮されることによって、下水汚泥の含水率は97質量%程度となる。下水汚泥が濃縮されると、下水汚泥から脱離した上澄み液が得られる。汚泥濃縮槽1にて得られた上澄み液は図示略の配管を介して排水処理施設に送られる。一方、濃縮された下水汚泥は下水汚泥送泥ラインL2を介して消化槽2に送られる。
【0027】
消化処理工程は、汚泥濃縮槽1から消化槽2に送られた下水汚泥を、消化槽2内に保持された嫌気性微生物によって消化処理(メタン発酵処理)して、二酸化炭素およびメタンガスを含むバイオガスと、消化汚泥とを得る工程である。この消化汚泥は、95%以上の水分を含む。消化汚泥における水分以外の成分は、嫌気性微生物が分解しきれなかった下水汚泥(有機物)の残渣および嫌気性微生物である。
【0028】
消化槽2で得られた消化汚泥は、一部が消化汚泥送泥ラインL3を介して脱水装置3に送られ、それ以外が消化汚泥送泥ラインL6を介してアンモニアストリッピング槽4に送られる。一方、消化槽2にて得られたバイオガスは、バイオガス送気ラインL9を介して消化槽2外へ排出される。
【0029】
アンモニアストリッピング工程は、消化槽2から送られた消化汚泥を、アンモニアストリッピング槽4にて、アンモニアストリッピング処理する工程である。
アンモニアストリッピング槽4に送られた消化汚泥は、アルカリ剤供給ラインL10を介して、図示略のアルカリ剤供給部からアルカリ剤が供給される。なお、アルカリ剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。また、アンモニアストリッピング槽4内の消化汚泥は、アンモニアストリッピング槽4内の図示略の散気装置によって、蒸気または空気が散気される。
【0030】
アルカリ剤が添加された消化汚泥はpHが上昇する。消化汚泥のpHは、通常、7.5~8.5である。本実施形態のアルカリ処理工程では、アンモニアストリッピング槽4内の消化汚泥のpHを、消化槽2から送られた消化汚泥のpHよりも上昇させることを目的として、消化汚泥にアルカリ剤を添加する。そのため、アンモニアストリッピング槽4内の消化汚泥のpHが、消化槽2から送られた消化汚泥のpHよりも上昇するように、アルカリ剤の量を適宜調整するとよい。
【0031】
ここで、図2に、各温度におけるpHと遊離アンモニアの存在比率との関係を示す。図2に示す通り、被処理液のpHが高いほど、また、処理温度が高いほど、遊離アンモニアの存在比率が高くなる。そのため、アルカリ剤が添加された消化汚泥は、遊離アンモニアの存在比率が高くなる。アルカリ剤が添加された消化汚泥に、散気装置から散気された蒸気または空気を接触させることにより、消化汚泥中のアンモニアが放散する。消化汚泥からアンモニアが放散することにより、消化汚泥中の窒素が除去される。
【0032】
消化汚泥から放散したアンモニアは、アンモニアガス送気ラインL11を介してアンモニアストリッピング槽4外へ排出される。一方、アンモニアストリッピング処理されたアンモニアストリッピング処理物は、アンモニアストリッピング処理物送泥ラインL7を介して二酸化炭素散気槽5に送られる。
【0033】
中和処理工程は、二酸化炭素散気槽5にて、アンモニアストリッピング槽4から送られたアンモニアストリッピング処理物を、中和処理して中和処理汚泥(中和処理物)を得る工程である。アンモニアストリッピング槽4に送られたアンモニアストリッピング処理物は、二酸化炭素散気槽の底部に設置された図示略の二酸化炭素供給部によって、二酸化炭素が散気される。なお、二酸化炭素供給部の二酸化炭素源としては、市販の二酸化炭素ボンベ、バイオガス中のメタンガスを燃焼して発生した二酸化炭素、後述するバイオガスから分離回収した二酸化炭素等を用いることができる。アンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素が散気されると、アンモニアストリッピング処理物が中和処理される。
【0034】
アンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素が散気されると、二酸化炭素(CO)は水(HO)と結合して炭酸(HCO)を形成する。この炭酸(HCO)が、水素イオン(H)と炭酸イオン(HCO )とに分離することによって、アンモニアストリッピング処理物中の水素イオン濃度が高くなり、アンモニアストリッピング処理物のpHが低下する。これにより、アンモニアストリッピング処理物が略中性になる。
【0035】
なお、二酸化炭素散気槽5における二酸化炭素の散気量は、アンモニアストリッピング処理物のpHが7.0~8.0となるように散気することが好ましい。中和処理汚泥のpHが7.0~8.0であれば、中和処理汚泥を消化槽2に送って汚泥処理する場合に、消化槽2の負荷が増大することがない。二酸化炭素散気槽5内の中和処理汚泥のpHは、pH計6によって計測する。
【0036】
返送工程は、上記中和処理工程で得られた中和処理汚泥を、返送手段20のポンプP1によって、中和処理汚泥送泥ラインL8を介して消化槽2に返送する工程である。中和処理汚泥が消化槽2に返送されると、消化槽2では、二酸化炭素散気槽5から送られた中和処理汚泥と、汚泥濃縮槽1から送られた下水汚泥とが混ざる。窒素濃度が低い中和処理汚泥と窒素濃度が高い下水汚泥とが混ざることにより、消化槽2内の混合汚泥(下水汚泥および中和処理汚泥)の窒素濃度が低減する。窒素濃度が低減した混合汚泥は、消化槽2にて消化処理されて、バイオガスおよび消化汚泥となる。この消化汚泥は、下水汚泥を消化処理して生成した消化汚泥に比べて、窒素濃度が低くなる。
【0037】
消化槽2で得られた消化汚泥の一部に対しては、脱水工程が行われる。脱水工程は、消化槽2から脱水装置3に送られた消化汚泥を脱水して、消化汚泥に含まれる水分である脱離液(脱水処理液)と脱水汚泥とに分離する工程である。消化汚泥が脱水されて得られた脱水汚泥は、脱水汚泥送泥ラインL4を介して図示略の乾燥装置に送られる。乾燥装置に送られた脱水汚泥は、乾燥されて、水分量が減少される。乾燥された乾燥汚泥は、乾燥汚泥送泥ラインを介して焼却炉に送られて、焼却処理される。一方、脱水装置3にて得られた脱離液は、脱離液送液ラインL5を介して排水処理施設に送られる。
【0038】
以上の構成によれば、アンモニアストリッピング処理後のpHが高いアンモニアストリッピング処理物に、二酸化炭素を散気することによって消化汚泥を中和処理するため、塩酸等の添加が不要となる。そのため、アンモニアストリッピング処理後のアンモニアストリッピング処理物の中和処理に要する薬剤の使用量を削減することができる。
また、消化汚泥にアルカリ剤を添加してアンモニアストリッピング処理することで、消化汚泥中のアンモニアを効率的に除去することができる。その結果、消化汚泥の窒素濃度を低減できる。そのため、この消化汚泥を脱水して得られた脱離液を排水処理施設に送って排水処理する場合に、排水処理施設の窒素負荷を低減することができる。排水処理施設の窒素負荷が低減すると、排水処理施設における窒素除去にかかる運転コストを削減することができる。
【0039】
また、消化槽2内の消化汚泥中のアンモニア態窒素量を低減できるため、消化汚泥中のリン酸イオンと、アンモニウムイオンと、マグネシウムイオンとが結合して生成する、リン酸アンモニウムマグネシウム(MAP)の生成を抑制することができる。そのため、消化汚泥送泥ラインL3や消化汚泥送泥ラインL6等のMAPによる目詰まりを防止することができる。
【0040】
また、中和処理後の中和処理汚泥を消化槽2に返送することによって、消化槽2内の窒素濃度が低減することにより、消化槽2内のアンモニア阻害を抑制することができる。そのため、消化槽2における消化処理効率を向上することができる。さらに、pHの高いアンモニアストリッピング処理物の中和処理工程において、塩酸を使用していないため、中和処理汚泥中の塩素によって嫌気性微生物が死滅することを防ぐことができる。これにより、消化槽2における消化処理効率を、良好な状態に維持することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
本実施形態の汚泥処理システムを、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、図1に示した汚泥処理システム100と同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する。
【0042】
本実施形態の汚泥処理システム200は、図3に示すように、消化槽2と、アンモニアストリッピング槽4と、二酸化炭素散気槽5と、を備える。また、汚泥処理システム200は、脱水装置3を備えている。
二酸化炭素散気槽5には、pH計6が設置されている。
汚泥処理システム200は、図3に示すように、汚泥濃縮槽1を備えていてもよい。
【0043】
汚泥処理システム200の消化槽2は、バイオガス送気ラインL9を介して、消化槽2外へバイオガスを排出できるようになっている。消化槽2は、消化汚泥送泥ラインL3を介して脱水装置3と接続されている。
【0044】
脱水装置3は、脱離液送液ラインL13を介してアンモニアストリッピング槽4と接続されている。また、脱水装置3は、脱水汚泥送泥ラインL4を介して図示略の乾燥装置と接続されている。
【0045】
アンモニアストリッピング槽4は、脱水装置3から送られた脱離液をアンモニアストリッピング処理して、アンモニアストリッピング処理物とする槽である。なお、本実施形態においてアンモニアストリッピング処理物とは、アンモニアストリッピング処理されて、アンモニア態窒素が除去された液のことをいう。
アンモニアストリッピング槽4は、アンモニアストリッピング処理物送液ラインL14を介して、二酸化炭素散気槽5と接続されている。
【0046】
二酸化炭素散気槽5は、アンモニアストリッピング槽4から送られたアンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素を散気し、中和処理して中和処理液(中和処理物)とする槽である。なお、本実施形態において中和処理液とは、二酸化炭素が散気されて、中和処理された後の液のことをいう。
二酸化炭素散気槽5は、中和処理液送液ラインL15を介して、中和処理液を図示略の排水処理施設に送液できるようになっている。
【0047】
pH計6は、二酸化炭素散気槽5内の脱離液のpHを計測する計測器である。
【0048】
次に、本実施形態の汚泥処理システム200のそれぞれの構成要素の作用を説明すると共に、当該汚泥処理システムを用いた汚泥処理方法について説明する。
【0049】
本実施形態の汚泥処理方法は、下水汚泥を消化処理して消化汚泥を得る工程と、消化汚泥を脱水する工程と、消化汚泥の脱水処理液をアンモニアストリッピング処理する工程と、アンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素を散気して中和処理する工程と、を有する。
より詳細には、下水汚泥を消化槽2にて消化処理して、メタンガスおよび二酸化炭素を含むバイオガスならびに消化汚泥を得る工程(消化処理工程)と、消化槽2から送られた消化汚泥を脱水装置3にて脱水して、脱離液(脱水処理液)と脱水汚泥とに分離する工程(脱水工程)と、脱水装置3からアンモニアストリッピング槽4に送られた脱離液をアンモニアストリッピング処理して、アンモニアストリッピング処理物(アンモニアストリッピング処理物)を得る工程(アンモニアストリッピング工程)と、アンモニアストリッピング槽4から二酸化炭素散気槽5に送られたアンモニアストリッピング処理物に、二酸化炭素を散気し、中和処理して中和処理液(中和処理物)を得る工程(中和処理工程)と、を備える。
【0050】
また、本実施形態の汚泥処理方法は、排水処理施設から送られた下水汚泥を濃縮する工程(濃縮工程)を有していてもよい。
以下、それぞれの工程のうち、第1の実施形態と同じものについては、省略または簡略する。
【0051】
消化処理工程は、汚泥濃縮槽1から下水汚泥送泥ラインL1を介して消化槽2に送られた下水汚泥を消化処理する工程である。消化処理工程では、下水汚泥が消化処理されることによって、二酸化炭素およびメタンガスを含むバイオガスならびに消化汚泥が得られる。消化槽2にて得られたバイオガスは、バイオガス送気ラインL9を介して、消化槽2外へ排出される。一方、消化槽2にて得られた消化汚泥は、消化汚泥送泥ラインL3を介して脱水装置3に送られる。
【0052】
脱水工程は、消化槽2から消化汚泥送泥ラインL3を介して脱水装置3に送られた消化汚泥を脱水して、固液分である脱水汚泥と水分である脱離液とに分離させる工程である。脱水装置3にて得られた脱水汚泥は、脱水汚泥送泥ラインL4を介して、図示略の乾燥装置に送られる。一方、脱水装置3にて得られた脱離液は、脱離液送液ラインL13を介して、アンモニアストリッピング槽4に送られる。
【0053】
アンモニアストリッピング工程は、脱水装置3からアンモニアストリッピング槽4に送られた脱離液を、アンモニアストリッピング処理する工程である。
脱水装置3からアンモニアストリッピング槽4に送られた脱離液は、図示略のアルカリ剤供給部からアルカリ剤供給ラインL10を介してアルカリ剤が供給される。アンモニアストリッピング槽4内の脱離液は、アンモニアストリッピング槽4内の図示略の散気装置によって、蒸気または空気が散気される。
【0054】
アルカリ剤を添加された脱離液はpHが上昇する。脱離液のpHは、通常、7.5~8.5である。本実施形態では、アンモニアストリッピング槽4内の脱離液のpHを、脱水装置3から送られた脱離液のpHよりも上昇させることを目的として、脱離液にアルカリ剤を添加する。そのため、アンモニアストリッピング槽4内の脱離液のpHが、脱水装置3から送られた脱離液のpHよりも上昇するように、アルカリ剤の量を適宜調整するとよい。
【0055】
アルカリ剤が添加された脱離液は、脱離液中の遊離アンモニアの存在比率が高くなる。アルカリ剤が添加された脱離液に、散気装置から散気された蒸気または空気を接触させることにより、脱離液中のアンモニアが放散する。脱離液からアンモニアが放散することにより、脱離液中のアンモニア態窒素が除去され、アンモニアストリッピング処理物となる。
【0056】
脱離液から放散したアンモニアは、アンモニアガス送気ラインL11を介してアンモニアストリッピング槽4外へ排出される。一方、アンモニアストリッピング処理物は、アンモニアストリッピング処理物送液ラインL14を介して、二酸化炭素散気槽5に送られる。
【0057】
中和処理工程は、アンモニアストリッピング槽4から二酸化炭素散気槽5に送られたアンモニアストリッピング処理物に、二酸化炭素を散気して中和処理して中和処理液(中和処理物)を得る工程である。中和処理工程では、二酸化炭素散気槽5にて、アンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素が散気されることによって、アンモニアストリッピング処理物中の水素イオン濃度が高くなる。これにより、アンモニアストリッピング処理物のpHが低下する。これにより、アンモニアストリッピング処理物が略中性になる。
【0058】
なお、二酸化炭素散気槽5における二酸化炭素の散気量は、アンモニアストリッピング処理物を中和処理して得た中和処理液のpHが、7.0~8.0となるように散気することが好ましい。中和処理汚液のpHが7.0~8.0であれば、中和処理液を排水処理施設に送って排水処理する場合に、排水処理施設の負荷が増大することがない。二酸化炭素散気槽5内の中和処理液のpHは、pH計6によって計測する。
中和処理液は、中和処理液送液ラインL15を介して、図示略の排水処理施設に送られる。
【0059】
なお、本実施形態の汚泥処理システム200では、二酸化炭素散気槽5と図示略の排水処理施設とを接続し、且つ、中和処理した後の中和処理液(中和処理液)の一部または全部を、排水処理施設に送る送水手段を備えていてもよい。この送水手段は、排水処理施設の最初沈殿池または生物反応槽に接続されることが好ましい。
この場合、アンモニアを除去した後に窒素濃度の低い中和処理液を排水処理施設に送ることで、アンモニア濃度が高いまま汚泥処理システム200からの脱離液を排水処理施設に返送する従来処理に比べて、排水処理施設における窒素濃度が低減し、排水処理施設の窒素負荷を低減できる。これにより、排水処理施設における窒素除去に要する曝気等の運転コストを削減できる。
【0060】
また、本実施形態の汚泥処理システム200では、中和処理した後の中和処理液(中和処理液)の一部または全部を、消化槽2に返送する返送手段を備えていてもよい。この場合、アンモニアを除去した中和処理液の一部を消化槽2に返送することで、消化槽2内のアンモニア濃度が低減し、嫌気性微生物による消化処理効率的を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態の汚泥処理システム200では、脱水装置3から送られた脱離液をアルカリ処理するアルカリ処理槽を備えていてもよい。アルカリ処理槽は、脱離液送液ラインL13を介して脱水装置3と接続されていてもよい。また、アルカリ処理槽は、アルカリ処理液送液ラインを介してアンモニアストリッピング槽と接続されていてもよい。この場合、アルカリ処理槽では、脱離液をアルカリ処理して得たアルカリ処理液(アルカリ処理物)のpHを9.0以上に調整することが好ましく、10.0以上に調整することがより好ましい。アルカリ処理槽にて、脱離液のpHを調整してアルカリ処理液とすることで、脱離液中の遊離アンモニアの存在比率をより向上させることができる。このアルカリ処理液をアンモニアストリッピング処理することによって、アンモニア態窒素の除去効率をより向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態の汚泥処理システム200では、消化槽2にて生成したバイオガスを二酸化炭素とメタンガスとに分離するとともに、分離した二酸化炭素を、二酸化炭素散気槽5に設置された散気装置に送気するバイオガス分離装置を備えていてもよい。バイオガス分離装置は、消化槽2と、バイオガス送気ラインを介して接続されていてもよい。また、バイオガス分離装置は、二酸化炭素送気ラインを介して二酸化炭素散気槽5と接続されていてもよい。この場合は、二酸化炭素散気槽5における二酸化炭素源が不要となる。また、単に消化槽2から排出していたバイオガスに含まれる二酸化炭素を、二酸化炭素散気槽5の二酸化炭素源として有効利用することができる。
【0063】
以上の構成によれば、アンモニアストリッピング処理後のpHが高いアンモニアストリッピング処理物に、二酸化炭素を散気することによって中和処理するため、塩酸等の添加が不要となる。そのため、アンモニアストリッピング処理後のアンモニアストリッピング処理物の中和処理に要する薬剤の使用量を削減することができる。
また、消化汚泥を脱水して得た脱離液にアルカリ剤を添加してアンモニアストリッピング処理することで、脱離液中のアンモニアを効率的に除去することができる。その結果、脱離液に含まれる窒素濃度を低減できる。その結果、脱離液を排水処理施設に送って排水処理する場合に、排水処理施設の窒素負荷を低減できる。排水処理施設の窒素負荷が低減すると、排水処理施設における窒素除去にかかる運転コストを削減することができる。
【0064】
また、脱離液にアルカリ剤を添加して、脱離液のpHを上昇させているため、アンモニアの除去効率を向上させることができる。液中のアンモニアの除去効率を向上させる方法としては、液のpHを上昇する方法と、液を加温して、液の温度を上昇する方法とがある。上述の通り、本実施形態では、脱離液のpHを上昇させているため、脱離液を加温することなく、アンモニアの除去効率を向上させることができる。そのため、脱離液を加温する加温装置、加温した脱離液の水温を下げるための冷却装置等が不要となる。
【0065】
(第3の実施形態)
図4の汚泥処理システム300は、汚泥処理システム100と同様に、消化槽2と、アンモニアストリッピング槽4と、二酸化炭素散気槽5と、を備える。また、汚泥処理システム300は、可溶化処理槽8を備える。
二酸化炭素散気槽5には、pH計6が設置されている。
汚泥処理システム300は、図4に示すように、汚泥濃縮槽1と、脱水装置3と、返送手段20と、送気手段30と、を備えていてもよい。なお、返送手段20は、中和処理汚泥送泥ラインL8と、ポンプP1と、を備える。また、送気手段30は、バイオガス送気ラインL18と、バイオガス分離装置7と、二酸化炭素送気ラインL19と、を備える。
【0066】
送気手段30のバイオガス分離装置7は、消化槽2からバイオガス送気ラインL18を介して送気されたバイオガスを二酸化炭素とメタンガスとに分離する装置である。
バイオガス分離装置7は、バイオガス送気ラインL18を介して、消化槽2と接続されている。また、バイオガス分離装置7は、二酸化炭素送気ラインL19を介して、二酸化炭素散気槽5内に設置された、図示略の二酸化炭素供給部と接続されている。
バイオガス分離装置7は、メタンガス送気ラインL20を介して、メタンガスをバイオガス分離装置7外に排出できるようになっている。
【0067】
可溶化処理槽8は、消化槽2から消化汚泥送泥ラインL16を介して送泥された消化汚泥を可溶化処理して、可溶化処理汚泥(可溶化処理物)とする槽である。なお、本実施形態において可溶化処理汚泥とは、可溶化処理した後の汚泥をいう。
可溶化処理槽8は、消化汚泥送泥ラインL16を介して消化槽2と接続されている。また、可溶化処理槽8は、可溶化処理汚泥送泥ラインL17を介してアンモニアストリッピング槽4と接続されている。
【0068】
次に、本実施形態の汚泥処理システム300のそれぞれの構成要素の作用を説明すると共に、当該汚泥処理システムを用いた汚泥処理方法について説明する。
【0069】
本実施形態の汚泥処理方法は、下水汚泥を消化処理して消化汚泥を得る工程と、消化汚泥を可溶化処理する工程と、可溶化処理物をアンモニアストリッピング処理する工程と、アンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素を散気して中和処理する工程と、を有する。
より詳細には、下水汚泥を消化槽2にて消化処理して、メタンガスおよび二酸化炭素を含むバイオガスならびに消化汚泥を得る工程(消化処理工程)と、消化槽2から可溶化処理槽8に送られた消化汚泥を、可溶化処理して、可溶化処理汚泥(可溶化処理物)を得る工程(可溶化処理工程)と、可溶化処理汚泥をアンモニアストリッピング槽4にて、アンモニアストリッピング処理してアンモニアストリッピング処理物(アンモニアストリッピング処理物)を得る工程(アンモニアストリッピング工程)と、アンモニアストリッピング槽4から送られたアンモニアストリッピング処理物に、二酸化炭素散気槽5にて二酸化炭素を散気し、中和処理して中和処理汚泥(中和処理物)を得る工程(中和処理工程)と、を有する。
【0070】
また、本実施形態の汚泥処理方法は、排水処理施設から送られた下水汚泥を濃縮する工程(濃縮工程)と、消化槽2からバイオガス分離装置に送られたバイオガスを、二酸化炭素およびメタンガスとに分離する工程(バイオガス分離工程)と、消化槽2から送られた消化汚泥を脱水装置3にて脱水して、脱離液(脱水処理液)と脱水汚泥とに分離する工程(脱水工程)と、中和処理した中和処理汚泥を二酸化炭素散気槽5に返送する工程(返送工程)と、を有していてもよい。また、中和処理工程において、送気手段30によって、二酸化炭素散気槽5内のアンモニアストリッピング処理物を散気してもよい。
以下、それぞれの工程のうち、第1の実施形態と同じものについては、省略または簡略する。
【0071】
本実施形態の消化処理工程では、下水汚泥が消化処理されて生成したバイオガスが、送気手段30のバイオガス送気ラインL18を介してバイオガス分離装置7に送気される。また、消化槽2内の一部の消化汚泥の一部が、消化汚泥送泥ラインL3を介して脱水装置3に送られる。さらに、消化槽2内の消化汚泥残部が、消化汚泥送泥ラインL16を介して可溶化処理槽8に送られる。
【0072】
バイオガス分離工程は、バイオガス分離装置7に送気されたバイオガスを、二酸化炭素とメタンガスとに分離する工程である。バイオガスを分離する方法としては、例えば、化学吸着法、物理吸着法、膜分離法等を用いることができる。
【0073】
バイオガスから分離された二酸化炭素は、二酸化炭素送気ラインL19を介して、二酸化炭素散気槽5内に設置された図示略の二酸化炭素供給部に送気される。
一方、バイオガスから分離されたメタンガスは、メタンガス送気ラインL20を介してバイオガス分離装置7外に排出される。バイオガス分離装置7から排出されるメタンガスは、必要に応じて精製して、メタンガスを燃料とする発電機や天然ガス自動車等に使用してもよい。
【0074】
可溶化処理工程は、消化槽2から可溶化処理槽8に送られた消化汚泥を、可溶化処理して可溶化処理汚泥(可溶化処理物)とする工程である。消化汚泥が可溶化処理されると、消化汚泥中の難分解性有機物が低分子化されて易分解性有機物となる。また、難溶解性有機物に含まれていたアンモニアが、消化汚泥に含まれる水分中に溶解する。すると、消化汚泥に含まれる水分中のアンモニア濃度が上昇する。
【0075】
可溶化処理によって生成された易分解性有機物は、消化槽2内に保持されている嫌気性微生物が、処理(分解)しやすい性質を持っている。また、易分解性有機物は、加水分解されやすいため、消化汚泥に含まれる水分に溶解する。すると、消化汚泥中の固形分であった難分解性有機物が易分解性有機物となり、消化汚泥中の水分に溶解することによって、消化汚泥中の固形分が減少する。
消化汚泥を可溶化処理して得た可溶化処理汚泥は、可溶化処理汚泥送泥ラインL17を介してアンモニアストリッピング槽4に送られる。
【0076】
なお、可溶化処理の方法としては、オゾンや薬剤を利用する化学的方法、熱処理やマイクロ波加熱を利用する物理化学的方法、超音波やビーズミルを用いて破砕処理する力学的方法、電気分解による電気化学的方法、酵素を利用した酵素反応方法等を用いることができる。
【0077】
アンモニアストリッピング工程は、アンモニアストリッピング槽4にて、可溶化処理槽8から送られた消化汚泥をアンモニアストリッピング処理する工程である。アンモニアストリッピング処理されて、アンモニアが除去されたアンモニアストリッピング処理物は、アンモニアストリッピング処理物送泥ラインL7を介して二酸化炭素散気槽5に送られる。
【0078】
中和処理工程は、二酸化炭素散気槽5にて、アンモニアストリッピング槽4から送られたアンモニアストリッピング処理物に、二酸化炭素を散気して中和処理して中和処理汚泥(中和処理物)を得る工程である。ここで、本実施形態の二酸化炭素散気槽5における二酸化炭素源は、バイオガス分離装置7から二酸化炭素送気ラインL19を介して送気された二酸化炭素である。アンモニアストリッピング処理物が中和処理されて得られた中和処理汚泥は、返送手段20の中和処理汚泥送泥ラインL8を介して消化槽2に送られる。
【0079】
なお、本実施形態の送気手段30のバイオガス分離装置7は、バイオガスに含まれる硫化水素を除去する機能を備えていてもよい。
【0080】
以上の構成によれば、アンモニアストリッピング処理後のpHが高いアンモニアストリッピング処理物に、二酸化炭素を散気することによって消化汚泥を中和処理するため、塩酸や硫酸等の添加が不要となる。そのため、アンモニアストリッピング処理後のアンモニアストリッピング処理物の中和処理に要する薬剤の使用量を削減することができる。
また、消化汚泥を脱水して得た脱離液にアルカリ剤を添加してアンモニアストリッピング処理することで、脱離液中のアンモニアを効率的に除去することができる。その結果、脱離液に含まれる窒素濃度を低減できる。その結果、脱離液を排水処理施設に送って排水処理する場合に、排水処理施設の窒素負荷を低減できる。排水処理施設の窒素負荷が低減すると、排水処理施設における窒素除去にかかる運転コストを削減することができる。
【0081】
また、二酸化炭素散気槽5において、送気手段30のバイオガス分離装置7から二酸化炭素送気ラインL19を介して送気された二酸化炭素を散気しているため、二酸化炭素散気槽5における二酸化炭素源が不要となる。また、単に消化槽2から排出していたバイオガスに含まれる二酸化炭素を、二酸化炭素散気槽5の二酸化炭素源として有効利用することができる。さらに、送気手段30のバイオガス分離装置7から排出されるメタンガスを用いて、ガスを燃料とする発電機によって発電した場合、不燃性の二酸化炭素とメタンガスとを含むバイオガスを用いて発電した場合に比べて発電効率が高くなる。また、バイオガス分離装置7から排出されるメタンガスは、必要に応じて精製して、天然ガス自動車や都市ガスの代替として利用することもできる。
【0082】
また、可溶化処理槽8にて、消化汚泥を可溶化処理して、難分解性有機物を低分子化して易分解性有機物とすることによって、難分解性有機物に含まれていたアンモニアを可溶化処理汚泥中に溶解させることができる。これにより、可溶化処理汚泥に溶解したアンモニア濃度が上昇し、アンモニアストリッピング槽4におけるアンモニアの除去効率を向上させることができる。
【0083】
(第4の実施形態)
図5の汚泥処理システム400は、汚泥処理システム100と同様に、消化槽2と、アンモニアストリッピング槽4と、二酸化炭素散気槽5と、を備える。また、汚泥処理システム400は、可溶化処理槽8と、アルカリ処理槽9と、を備える。
二酸化炭素散気槽5には、pH計6が設置されている。
汚泥処理システム400は、図5に示すように、汚泥濃縮槽1と、脱水装置3と、返送手段20と、送気手段30と、を備えていてもよい。なお、返送手段20は、中和処理汚泥送泥ラインL8と、ポンプP1と、を備える。また、送気手段30は、バイオガス送気ラインL18と、バイオガス分離装置7と、二酸化炭素送気ラインL19と、を備える。
【0084】
アルカリ処理槽9は、消化槽2から消化汚泥送泥ラインL21を介して送泥された消化汚泥にアルカリ剤を添加し、アルカリ剤と消化汚泥とを撹拌混合して、アルカリ処理汚泥(アルカリ処理物)を得る槽である。なお、本実施形態においてアルカリ処理汚泥とは、アルカリ剤を添加されてpHが減少した汚泥をいう。
【0085】
アルカリ処理槽9は、アルカリ剤供給ラインL23を介して、図示略のアルカリ剤供給部が接続されている。また、アルカリ処理槽9は、アルカリ処理槽9内の消化汚泥等を撹拌することができる、図示略の撹拌装置が設置されている。アルカリ処理槽9は、アルカリ処理汚泥送泥ラインL22を介して可溶化処理槽8と接続されている。
【0086】
次に、本実施形態の汚泥処理システム400のそれぞれの構成要素の作用を説明すると共に、当該汚泥処理システムを用いた汚泥処理方法について説明する。
【0087】
本実施形態の汚泥処理方法は、下水汚泥を消化処理して消化汚泥を得る工程と、消化汚泥をアルカリ処理する工程と、アルカリ処理物を可溶化処理する工程と、可溶化処理物をアンモニアストリッピング処理する工程と、アンモニアストリッピング処理物に二酸化炭素を散気して、中和処理する工程と、消化処理された消化汚泥を脱水して脱離液と脱水汚泥とに固液分離する工程と、を有する。
より詳細には、下水汚泥を消化槽2にて消化処理して、メタンガスおよび二酸化炭素を含むバイオガスならびに消化汚泥を得る工程(消化処理工程)と、消化槽2からアルカリ処理槽9に送られた消化汚泥を、アルカリ処理してアルカリ処理汚泥(アルカリ処理物)を得る工程(アルカリ処理工程)と、アルカリ処理槽9から可溶化処理槽8に送られたアルカリ処理汚泥を、可溶化処理して、可溶化処理汚泥(可溶化処理物)を得る工程(可溶化処理工程)と、可溶化処理汚泥をアンモニアストリッピング槽4にて、アンモニアストリッピング処理してアンモニアストリッピング処理物(アンモニアストリッピング処理物)を得る工程(アンモニアストリッピング工程)と、アンモニアストリッピング槽4から送られたアンモニアストリッピング処理物に、二酸化炭素散気槽5にて二酸化炭素を散気し、中和処理して中和処理汚泥(中和処理物)を得る工程(中和処理工程)と、消化槽2から送られた消化汚泥を脱水装置3にて脱水して、脱離液と脱水汚泥とに分離する工程(脱水工程)と、を有する。
【0088】
また、本実施形態の汚泥処理方法は、排水処理施設から送られた下水汚泥を濃縮する工程(濃縮工程)と、消化槽2からバイオガス分離装置に送られたバイオガスを、二酸化炭素およびメタンガスとに分離する工程(バイオガス分離工程)と、消化槽2から送られた消化汚泥を脱水装置3にて脱水して、脱離液(脱水処理液)と脱水汚泥とに分離する工程(脱水工程)と、中和処理した中和処理汚泥を二酸化炭素散気槽5に返送する工程(返送工程)と、を有していてもよい。また、中和処理工程が、送気手段30によって、二酸化炭素散気槽5内のアンモニアストリッピング処理物を散気する工程であってもよい。
以下、それぞれの工程のうち、第1の実施形態と同じものについては、省略または簡略する。
【0089】
アルカリ処理工程は、消化槽2から消化汚泥送泥ラインL21を介して送られた消化汚泥にアルカリ剤を添加して、消化汚泥のpHを上昇させて、アルカリ処理汚泥(アルカリ処理物)を得る工程である。
【0090】
アルカリ剤は、アルカリ剤供給ラインL23を介して図示略のアルカリ剤供給部から供給される。なお、アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。
また、アルカリ処理槽9内の撹拌は、アルカリ処理槽9内に設置された図示略の撹拌装置によって行われる。
【0091】
アルカリ処理工程では、アルカリ処理汚泥のpHを確認しながらアルカリ剤を添加して、アルカリ処理汚泥のpHを調整する。消化汚泥のpHは、9.0以上に調整することが好ましく、10.0以上に調整することがより好ましい。
アルカリ処理汚泥のpHが、9.0以上であると、アルカリ処理汚泥の遊離アンモニアの存在比率が上昇する。アルカリ処理汚泥のpHが、10.0以上であると、アルカリ処理汚泥の遊離アンモニアの存在比率がより向上する。
アルカリ処理された消化汚泥は、アルカリ処理汚泥送泥ラインL22を介して可溶化処理槽8に送られる。
【0092】
なお、本実施形態では、可溶化処理槽8を有していなくてもよい。この場合は、アルカリ処理槽9は、アルカリ処理汚泥送泥ラインL22を介してアンモニアストリッピング槽4と接続されるとよい。
【0093】
以上の構成によれば、アンモニアストリッピング処理後のpHが高いアンモニアストリッピング処理物に、二酸化炭素を散気することによって消化汚泥を中和処理するため、塩酸や硫酸等の添加が不要となる。そのため、アンモニアストリッピング処理後のアンモニアストリッピング処理物の中和処理に要する薬剤の使用量を削減することができる。
また、消化汚泥を脱水して得た脱離液にアルカリ剤を添加してアンモニアストリッピング処理することで、脱離液中のアンモニアを効率的に除去することができる。その結果、脱離液に含まれる窒素濃度を低減できる。その結果、脱離液を排水処理施設に送って排水処理する場合に、排水処理施設の窒素負荷を低減できる。排水処理施設の窒素負荷が低減すると、排水処理施設における窒素除去にかかる運転コストを削減することができる。
【0094】
また、アルカリ処理槽9にて、消化汚泥にアルカリ剤を添加し、消化汚泥のpHを調整することで、消化汚泥中の遊離アンモニアの存在比率を上昇させることができる。これにより、アンモニアストリッピング槽4において、消化汚泥中のアンモニアの除去効率を向上させることができる。そのため、消化汚泥中のアンモニア態窒素を低減できる。
【0095】
また、可溶化処理槽8にて、オゾンによる可溶化処理を行う場合には、アルカリ処理槽9との組み合わせにより、好ましい効果が得られる。
オゾンによる可溶化処理は、水分とオゾンとが反応して生成したOHラジカルが有機物を酸化させることによって行われる。このOHラジカルは、水分のpHが高いほど多く生成される。アルカリ処理された消化汚泥(アルカリ処理汚泥)に、オゾンによる可溶化処理を適用すると、消化汚泥中に多量のOHラジカルが生成される。消化汚泥中のOHラジカルの量が多いと、オゾンによる可溶化処理がより効率的に行われる。そのため、アルカリ処理とオゾンによる可溶化処理とを組み合わせることにより、消化汚泥の可溶化処理効率を向上させることができる。
【0096】
また、可溶化処理槽8にて、熱処理による可溶化処理を行う場合は、アンモニアストリッピング槽4との組み合わせにより、好ましい効果が得られる。
熱処理によって加温された消化汚泥は温度が高く、遊離アンモニアの存在比率が高くなる。そのため、加温した消化汚泥をアンモニアストリッピング処理することによって、消化汚泥を加温しない場合と比べて、より多くのアンモニアを放散させることができる。これにより、より多くの消化汚泥中のアンモニア態窒素を除去することができる。
【0097】
以上に述べた少なくとも一つの実施形態によれば、アンモニアストリッピング処理後のpHが高いアンモニアストリッピング処理物に、二酸化炭素を散気することによって消化汚泥を中和処理するため、塩酸や硫酸等の添加が不要となる。そのため、アンモニアストリッピング処理物の中和処理に要する薬剤の使用量を削減することができる。
また、消化汚泥を脱水して得た脱離液にアルカリ剤を添加してアンモニアストリッピング処理することで、脱離液中のアンモニアを効率的に除去することができる。その結果、脱離液に含まれる窒素濃度を低減できる。その結果、脱離液を排水処理施設に送って排水処理する場合に、排水処理施設の窒素負荷を低減できる。排水処理施設の窒素負荷が低減すると、排水処理施設における窒素除去にかかる運転コストを削減することができる。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0099】
100,200,300,400…汚泥処理システム、1…汚泥濃縮槽、2…消化槽、3…脱水装置、4…アンモニアストリッピング槽、5…二酸化炭素散気槽、8…可溶化処理槽、9…アルカリ処理槽、20…返送手段、30…送気手段。
図1
図2
図3
図4
図5