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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7008 20060101AFI20220905BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 31/4172 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
A61K31/7008
A61K9/20
A61K31/198
A61K31/4172
A61P3/02
A61P19/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017157985
(22)【出願日】2017-08-18
(65)【公開番号】P2018035143
(43)【公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2016164620
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】藤原 将平
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】渕野 留香
【審判官】藤原 浩子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-281277(JP,A)
【文献】特開2015-193582(JP,A)
【文献】特開2006-36644(JP,A)
【文献】特開2015-7027(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098881(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/132668(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/070726(WO,A1)
【文献】特開2007-238486(JP,A)
【文献】オリヒロ 高純度 グルコサミン コンドロイチン 低分子ヒアルロン酸 270粒,Amazon[オンライン],2014年09月16日,[令和3年12月23日検索] 、インターネット<URL:https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%AD-%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%82%B5%E3%83%9F%E3%83%B3-%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%81%E3%83%B3-%E4%BD%8E%E5%88%86%E5%AD%90%E3%83%92%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%AD%E3%83%B3%E9%85%B8-270%E7%B2%92/dp/B00NM4N2NS>
【文献】食品中の健康機能性成分の分析法マニュアル[オンライン],2010年,pp.1-7,[令和3年12月23日検索] 、インターネット<URL:https://unit.aist.go.jp/shikoku/food_forum/manual/213T.pdf>
【文献】『グルコサミン&コンドロイチン』,仁丹[オンライン],2010年06月23日,[令和3年12月23日検索]、インターネット<URL:https://www.jintan.co.jp/pdf/gurukocondo_20100623_file_1.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚類由来のアンセリンを配合することで、グルコサミン、及びグルコサミンの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のグルコサミン類、並びにロイシンを含有する錠剤(但し、サメ軟骨抽出物を含まない)の強度を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコサミン類及びアミノ酸を配合した錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコサミンはグルコースの2位の水酸基がアミノ基に置換した2-アミノグルコースであり、自然界に幅広く分布する天然アミノ糖である。工業的にはカニ、エビなどの甲殻類に含まれるキチンを酸又は酵素により加水分解し、分離、精製することによって得られる。近年、グルコサミンの摂取による様々な有効性が確認され、変形性膝関節症の治療・予防を目的としたサプリメントとして市場に供給されている。
グルコサミン含有サプリメントの製品形態としては様々なものがあるが、その一つである錠剤は、携帯が容易であり、また摂取時に量を計測せずとも一定量を服用することが出来るので、最もよく用いられている形態の一つである。
【0003】
また、分岐鎖アミノ酸として知られるバリン、ロイシン、イソロイシンは、加齢によって衰える筋肉の維持や歩行能力の改善を目的としたサプリメントとして、市場に供給されている。上述した目的の通り、グルコサミン類とアミノ酸はしばしば併用が望まれるが、一方で、いずれも結晶性粉末であるため、これらを含む錠剤とした場合に錠剤としての強度を得にくい物性を有している。そのため、これらを含む錠剤は生産性の低下を招き、形状安定性が損なわれることとなるため、錠剤として一定以上の強度が必要である。
【0004】
このような課題に対して、特許文献1では糖類を含有した溶液を噴霧しながら造粒加工することでグルコサミンの有する物理的特性の改善方法が開示されている。また、特許文献2においては水溶性セルロース誘導体を添加しながら造粒加工することでグルコサミンの有する物理的特性の改善方法が開示されている。しかしながら、特許文献1のグルコサミン含有錠剤は、グルコサミンに多量の糖類溶液を噴霧する必要があり、特許文献2の方法は湿式造粒を必須とするため、製造時間を要するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-36644号公報
【文献】特開2010-285381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、良好な形状安定性を有するグルコサミン類及びアミノ酸含有錠剤を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、グルコサミン類、アミノ酸、及びアンセリンを配合した錠剤は、良好な形状安定性を有する錠剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)グルコサミン、グルコサミンの塩、及びNアセチルグルコサミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のグルコサミン類、アミノ酸、及びアンセリンを配合したことを特徴とする錠剤、
(2)アミノ酸が、分岐鎖アミノ酸、アラニン、グリシン、チロシン、シトルリン、アルギニン、ヒスチジン、及びオルニチン塩酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、(1)に記載の錠剤、
(3)分岐鎖アミノ酸が、バリン、ロイシン、イソロイシンから選ばれる1種以上である、(2)に記載の錠剤、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、良好な形状安定性を有するグルコサミン類及びアミノ酸含有錠剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のグルコサミン類は、結晶又は非結晶の何れを用いても良い。本発明によれば、結晶グルコサミンを用いても良好な形状安定性を有する錠剤が得られる。
本発明のグルコサミン類としては、グルコサミンそのもののほか、グルコサミンの塩又はNアセチルグルコサミンを用いることができる。これらのうち、好ましいのは熱に安定で褐変し難いグルコサミンの塩である。また、グルコサミンの塩としては、例えば塩酸グルコサミン、硫酸グルコサミン、発酵グルコサミンが挙げられるが、塩酸グルコサミンが好ましい。また、本発明の錠剤中におけるグルコサミンの含有量は、好ましくは10~85質量%であり、より好ましくは30~85%、更に好ましくは45~80%である。
【0011】
本発明のアミノ酸としては、中性アミノ酸、塩基性アミノ酸、又はその塩や誘導体等が挙げられる。このうち、好ましくは中性アミノ酸である分岐鎖アミノ酸、アラニン、グリシン、チロシン、シトルリン、塩基性アミノ酸であるアルギニン、ヒスチジン、オルニチン塩酸塩等である。分岐鎖アミノ酸(BCAA)は必須アミノ酸であるバリン、ロイシン及びイソロイシン等である。本発明においてアミノ酸は1種類のみ配合してもよいし、2種以上配合しても良い。また、分岐鎖アミノ酸としてバリン、ロイシン及びイソロイシンの3種を用いる場合、その配合比はとりわけ限定されるものではないが、バリン1質量部に対してロイシンが0.5~5質量部、イソロイシンが0.5~5質量部の範囲が好ましい。本発明におけるアミノ酸は必要に応じて分級、粉砕、表面処理等の工程を付与してもよい。本発明の錠剤中におけるアミノ酸の含有量は、0.1~60質量%が好ましく、より好ましくは0.1~35質量%が好ましい。本発明の分岐鎖アミノ酸としては、全てが1種の製剤中に含有された製品を使用してもよい。
【0012】
本発明のアンセリンの由来・製法等については特に制限はないが、魚類由来が好ましい。本発明のアンセリンは、特開2002-173442号公報等に記載の方法等により得ることができる。また、前記公報に記載の方法により得られるものの他に、市販品を利用することができる。市販品としては、例えば、SA-30(IK)SD(商品名:東海物産株式会社製)、アンセリン含有サケエキス(商品名:マルハニチロ株式会社製)、マリンアクティブ10(商品名:焼津水産化学工業株式会社製)を利用することができる。本発明の錠剤中におけるアンセリンの含有量は、0.1~50質量%が好ましい。
【0013】
本発明の錠剤は、食品、医薬部外品、医薬品の分野に利用可能である。本発明のグルコサミン類及びアミノ酸含有錠剤には、本発明の効果に支障のない限り、必要に応じて食品や医薬部外品、医薬品の内服用の錠剤の製造に汎用される公知の添加剤等を含んでも良い。また、他の医薬品成分或いは食品素材等を含むこともできる。
【0014】
本発明の錠剤は、素錠、糖衣錠、口腔内速崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ドロップ剤、フィルムコーティング錠などを含む。製造に当たっては、特に制約なく従来から行われている製造方法を使用することができる。例えば以下の方法が挙げられる。
グルコサミン、分岐鎖アミノ酸、アンセリン及び必要に応じて他の成分及び添加剤を混合して粉末を調製し、直接打錠法または必要によっては常法により造粒して造粒物を得た後、打錠することにより得ることができる。造粒する場合は、造粒方法は特に制限されず、湿式造粒法及び乾式造粒法のどちらで製造しても良いが、造粒過程のない直接打錠法もしくは乾式造粒法が好ましい。
【実施例
【0015】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例のアンセリン含有抽出物は、市販のアンセリンを含む魚肉由来抽出物粉末を使用した。
【0016】
(実施例及び比較例)
表1~11の各比較例及び実施例はそれぞれアンセリン含有抽出物の配合の有無のみ異なり、他の配合した成分や製法は同じである。以下に処方の内訳及び製法を示す。
表1~11記載の成分を秤量し、ステアリン酸カルシウムを除く成分を混合・篩過した。その後、ステアリン酸カルシウムを合わせ、再度篩過し、打錠用粉体を得た。得られた打錠用粉体を単発式打錠機にて製錠し、錠剤を得た。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
【表4】
【0021】
【表5】
【0022】
【表6】
【0023】
【表7】
【0024】
【表8】
【0025】
【表9】
【0026】
【表10】
【0027】
【表11】
【0028】
試験例
マイクロメータ及び硬度計を用いて、比較例1~11及び実施例1~12の錠剤各3錠の厚み及び錠剤が破壊された際の加重を測定した。得られた結果より下記式を用いて錠剤強度の指標となる引張破断強度を算出し,平均値を求めた。結果を表12~22に示す。
【0029】
【数1】
【0030】
【表12】
【0031】
【表13】
【0032】
【表14】
【0033】
【表15】
【0034】
【表16】
【0035】
【表17】
【0036】
【表18】
【0037】
【表19】
【0038】
【表20】
【0039】
【表21】
【0040】
【表22】
【0041】
比較例1~11に比べて、アンセリンを含む実施例1~12では、引張破断強度の改善が認められた。錠剤強度の低さは、製造、包装、流通の過程等において錠剤の破損等が起こりやすいことを示し、錠剤としての形状安定性の低さを示す。本結果より、アンセリンには錠剤強度を改善し、形状安定性を向上させる効果があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、良好な形状安定性を有するグルコサミン類及びアミノ酸含有錠剤の提供が可能となった。