(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】傾いた灌注孔を備えたカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20220905BHJP
【FI】
A61B18/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017200129
(22)【出願日】2017-10-16
【審査請求日】2020-10-12
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・トーマス・キース
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0272669(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0125016(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02913017(EP,A1)
【文献】特表2012-532737(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0257649(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 - 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の体内に挿入するための遠位区間と、長手方向対称軸と、を有するプローブと、
前記プローブの前記遠位区間に配置され、前記体内の組織にエネルギーを印加するためにエネルギー源に連結された少なくとも1つの電極であって、外側表面と、管腔と、複数の開口部が内部を貫通して形成された壁と、を有する、電極と、
前記遠位区間内の流体方向付けアセンブリであって、軸方向通路であって、該軸方向通路に対して直角に配置され、前記アセンブリの外部に延びる少なくとも1本の軸横断方向通路と流体連通した軸方向通路と、前記少なくとも1本の軸横断方向通路の前方に配置された、灌注流体が軸方向に前方へと流れることを防止する遮断終端部と、を有する、流体方向付けアセンブリと、
を含
み、
前記少なくとも1本の軸横断方向通路が前記管腔と連通しており、前記管腔が前記複数の開口部の全てと連通している、医療装置。
【請求項2】
前記開口部のいくつかが、前記対称軸に対して後方角に方向付けられていることにより、前記アセンブリから流出する前記流体を、前記遠位区間の斜め後方かつ外向きに送達する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アセンブリが、2~12本の軸横断方向通路を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記アセンブリが、1本のみの軸横断方向通路を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
被験者の体内に挿入するための遠位区間と、長手方向対称軸と、を有するプローブと、
前記プローブの前記遠位区間に配置され、前記体内の組織にエネルギーを印加するためにエネルギー源に連結された少なくとも1つの電極であって、外側表面と、管腔と、複数の開口部が内部を貫通して形成された壁と、を有する、電極と、
前記遠位区間内の流体方向付けアセンブリであって、軸方向通路であって、該軸方向通路に対して直角に配置され、前記アセンブリの外部に延びる軸横断方向通路と流体連通した軸方向通路と、前記軸横断方向通路の前方に配置された、灌注流体が軸方向に前方へと流れることを防止する遮断終端部と、を有する、流体方向付けアセンブリと、を含み、
前
記軸横断方向通路が、前記対称軸を中心として360°に延びる、
医療装置。
【請求項6】
前記開口部が、0.05~0.2mmの範囲の直径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記遠位区間が、2.5mmの直径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記開口部のいくつかが、前記対称軸に対して前方角に方向付けられていることにより、前記流体を、前記遠位区間の斜め前方かつ外向きに送達する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記アセンブリが更に、前記電極の前記管腔内にセンサを支持するように適合された少なくとも1つの切欠き部を有する、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
著作権情報
本特許文献の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれる。著作権者は、特許文献又は特許情報開示のうちの任意のものによる複製に対して、それが特許商標庁特許出願又は記録において明らかであるとき、異議を唱えないが、そうでなければ、たとえ何であってもすべての著作権を保有する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、体内に媒体を導入する装置に関する。より詳細には、本発明は流体を通過させるための側孔を有するアブレーションカテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
特定の医療処置では、高用量のエネルギーが身体組織に局所的に付与されるが、それにともなう組織損傷を低減するためにその治療領域を冷却することが望ましい。
【0004】
心臓組織のアブレーションに高周波エネルギーを用いる際の既知の難点は、組織の局所加熱を制御することである。異常な組織の病巣を効果的に焼灼するか、又は異常な伝導パターンを遮断するために十分に大きな損傷部を形成したいという要望と、過剰な局所加熱の望ましくない影響との間に、トレードオフが存在する。高周波装置が生成する損傷部が小さすぎる場合、医療手技はあまり効果的にならないことがあり、あるいは過度に時間を要することがある。他方で、組織が過度に加熱された場合、過熱を原因とする局所的な炭化効果、血塊、及び/又は水蒸気の破裂が起こり得る。そのような過熱区域では、インピーダンスが上昇し得るため、熱の通過に対する機能的障壁が生ずる可能性がある。より緩慢な加熱を用いることにより、アブレーションの制御はより良好となるが、手技は過度に長引くことになる。
【0005】
アブレーション部位の領域を冷却することにより、組織の炭化及び血栓の形成が低下することが判明している。この目的のため、統合型アブレーションシステムの一部として、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar、California)からThermoCool(登録商標)灌注先端カテーテルが販売されている。組織を焼灼するためにRF電流により通電されるこの金属カテーテル先端には、治療部位への灌注のために先端の周囲に分布させた多数の周辺孔が存在する。カテーテルに連結させたポンプは、食塩水をカテーテル先端に運搬し、処置中にカテーテル先端及び組織を冷却するために孔から溶液を流す。
【0006】
例えば、米国特許第8,517,999号(Papponeら)は、流体送達管腔の直径を変えることにより、長手方向に離間した溶出孔に均一な冷却及び/又は均一な流体分布を備えた灌注カテーテルについて記述している。カテーテル本体の先端部分に数多くの溶出孔が設けられており、これらの溶出孔はダクトを通る管腔と流体連通している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
アブレーション処置中に、血塊が形成され得る懸念がある。灌注により、血液凝固の可能性が低減される。しかしながら、現在のカテーテル遠位端には、末端周囲、特に末端の「後ろ側」に1つ以上の「盲点領域」がある。これらの領域では灌注がほとんど又は全くない。
【0008】
本発明の実施形態によれば、被験者の身体に挿入するためのプローブと、プローブの遠位区間に配置され、体内の組織にエネルギーを印加するためにエネルギー源に連結された少なくとも1つの電極とを含む、医療装置が提供される。電極には複数の開口部が形成されている。軸方向通路を有する流体方向付けアセンブリがプローブの遠位区間に配置され、この軸方向通路は、軸方向通路に対して直角に配置され、アセンブリの外部に延びる少なくとも1本の軸横断方向通路と流体連通している。遮断終端部が、この少なくとも1本の軸横断方向通路の前方に配置され、これは、灌注流体が軸方向に前方へ流れることを阻止する。
【0009】
本器具の一態様により、いくつかの開口部は、対称軸に対して後方角に方向付けられていることにより、アセンブリから流出する流体を、遠位区間の斜め後方かつ外向きに送達する。
【0010】
本器具の別の一態様により、このアセンブリは、2~12本の軸横断方向通路を含む。
【0011】
本器具の更に別の一態様により、このアセンブリは、1本のみの軸横断方向通路を含む。
【0012】
本器具の一態様により、この開口部は、0.05~0.2mmの範囲の直径を有する。
【0013】
本器具の更なる一態様により、このプローブの遠位区間は、直径2.5mmを有する。
【0014】
本器具の更に別の一態様により、いくつかの開口部は、対称軸に対して前方角に方向付けられていることによりおり、流体を、遠位区間の斜め前方かつ外向きに送達する。
【0015】
本器具の一態様により、このアセンブリは更に、電極の管腔内にセンサを支持するよう適合された少なくとも1つの切欠き部を含む。
【0016】
本発明の実施形態に従って、被験者の心臓内にプローブを導入することによって実行される心臓アブレーションの方法が、更に提供される。プローブは、遠位区間に配置された少なくとも1個の中空電極を有し、この電極は、心臓内の組織にエネルギーを印加するために、エネルギー源に連結されている。電極には、電極の壁を貫通して形成された複数の開口部がある。この方法は更に、心臓内の標的の近くにプローブの遠位区間を配置し、次いで電極を介して、アブレーションエネルギーを心臓内に伝導させることにより、心臓内の異常な電気伝導に影響を及ぼす。アブレーションエネルギーを伝導させながら、遠位区間の流体方向付けアセンブリの軸方向通路内に灌注流体を運び、軸方向通路から、軸方向通路に対して直角に配置され、アセンブリの外部に延びる複数の軸横断方向通路を通じて灌注流体を方向付ける一方で、灌注流体が軸横断方向通路を超えて軸方向に前方へと流れることを遮断する。
【0017】
本方法の一態様は、アセンブリ内のサポート上にプローブを介してセンサを通過させ、心臓からの生体電気情報をこのセンサで検出することにより実行される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明をより深く理解するため、本発明の詳細な説明を実例として参照するが、この説明は以下の図面と併せて読むべきものである。図中、同様の要素には同様の参照数字を付してある。
【
図1】本発明の一実施形態による、心臓アブレーション処置を実行するシステムの描図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、カテーテルの遠位端部の側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、
図2に示される遠位端部の長手方向断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、流体方向付けアセンブリを示すアブレーションカテーテルの遠位セグメントの切り欠き断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、
図4に示される流体方向付けアセンブリの斜め立面図である。
【
図6】従来技術によるカテーテルの灌注流のパターンを示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による、カテーテルの灌注流のパターンを示す図である。
【
図8】本発明の別の一実施形態によるカテーテルの遠位端の斜め立面図である。
【
図9】本発明の別の一実施形態による、
図4に示される流体方向付けアセンブリの斜め立面図である。
【
図10】本発明の一実施形態による、流体方向付けアセンブリを示すアブレーションカテーテルの遠位セグメントの切り欠き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明では、本発明の様々な原理が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これらの詳細のすべてが本発明を実施するうえで必ずしも必要であるとは限らない点は当業者には明らかであろう。この場合、一般的な概念を無用に分かりにくくすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及びプロセスに対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0020】
参照により本明細書に援用される文書は本出願の一体部分と見なされるべきであり、いずれかの用語が、それらの援用された文書内で、本明細書で明示的又は暗示的に行われる定義と相反するように定義される場合を除き、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【0021】
システムの概要
次に図面に移り、
図1を最初に参照すると、同図は、本発明の開示される実施形態に従って構成され、かつ動作可能である、電気的活動を評価して生きている対象の心臓12にアブレーション処置を実施するためのシステム10の図である。このシステムは、患者の脈管系を通って心臓12の腔又は脈管構造内に操作者16によって経皮挿入されるカテーテル14を備えている。通常は医師である操作者16は、カテーテルの遠位先端18を、心臓壁、例えば、アブレーション標的部位と接触させる。その開示が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号に開示される方法に従って、電気的活動マップが作成され得る。システム10の要素を具現化する1つの市販の製品は、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)より入手可能な、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。このシステムは、本明細書に説明される本発明の原理を具現化するように、当業者によって変更されてもよい。
【0022】
例えば電気的活動マップの評価によって異常と判定された区域は、熱エネルギーの印加によって、例えば、心筋に高周波エネルギーを印加する、遠位先端18での1つ又は2つ以上の電極に、高周波電流をカテーテル内のワイヤを介して流すことによって、焼灼することができる。エネルギーは組織に吸収され、組織を電気的興奮性が永久に失われる点(一般的には約50℃)まで加熱する。成功裏に行われた場合、この処置によって心臓組織に非伝導性の損傷部が形成され、この損傷部が、不整脈を引き起こす異常な電気経路を遮断する。本発明の原理は、異なる心室に適用されて、多数の異なる心不整脈を診断及び治療することができる。
【0023】
カテーテル14は、通常、アブレーションを行うために、操作者16がカテーテルの遠位端の操舵、位置決め、及び方向付けを所望のとおりに行うことを可能にする、好適な制御部を有するハンドル20を備えている。操作者16を補助するために、カテーテル14の遠位区間には、コンソール24内に配置された、プロセッサ22に信号を供給する位置センサ(図示せず)が収容されている。プロセッサ22は、後述のようないくつかの処理機能を果たすことができる。
【0024】
アブレーションエネルギー及び電気信号を、遠位先端部18にあるいはその遠位先端部の付近に配置される1つ又は2つ以上のアブレーション電極32を通して、コンソール24に至るケーブル34を介し、心臓12との間で搬送することができる。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24から、ケーブル34及び電極32を介して、心臓12へと伝達され得る。また、コンソール24に接続されている検知電極33は、アブレーション電極32の間に配設されて、ケーブル34への接続部を有する。
【0025】
ワイヤ接続部35は、コンソール24を、体表面電極30、並びにカテーテル14の位置座標及び方向座標を測定するための位置決めサブシステムの他の構成要素と連結する。プロセッサ22又は別のプロセッサ(図示せず)は、位置決めサブシステムの要素であってよい。参照により本明細書に援用される、Govariらに付与された米国特許第7,536,218号において教示されているように、電極32及び体表面電極30を使用して、アブレーション部位における組織インピーダンスを測定してもよい。生体電気情報用のセンサ(例えば温度センサ(図示せず)、典型的には、熱電対又はサーミスタ)を、電極32のそれぞれの上に、又は電極32のそれぞれの付近に、載置することができる。
【0026】
コンソール24には通常、1つ又は2つ以上のアブレーション電力発生装置25が収容されている。カテーテル14は、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギー等の任意の既知のアブレーション技術を使用して、心臓にアブレーションエネルギーを伝導するように適合され得る。そのような方法は、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0027】
一実施形態では、位置決めサブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、所定の作業体積内に磁場を生成し、カテーテルにおけるこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び方向を判定する磁気位置追跡配置を備える。位置決めサブシステムは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,756,576号、及び上記の同第7,536,218号に記載されている。
【0028】
上述のように、カテーテル14は、コンソール24に連結されており、これにより操作者16は、カテーテル14を観察し、その機能を調節することができる。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは、適切な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニタ29を駆動するように連結される。信号処理回路は、典型的には、例えば、カテーテル14内の遠位に配置された電気、温度、及び接触力センサ等のセンサ、並びに複数の位置検知電極(図示せず)によって生成される信号を含む、カテーテル14からの信号を受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化する。デジタル化された信号は、コンソール24及び位置決めシステムによって受信され、カテーテル14の位置及び向きを計算し、電極からの電気信号を解析するために使用される。
【0029】
電気解剖学的マップを生成するために、プロセッサ22は、典型的に、電気解剖学的マップ生成器と、画像位置合わせプログラムと、画像又はデータ解析プログラムと、モニタ29上にグラフィカル情報を提示するように構成されたグラフィカルユーザインタフェースと、を備える。
【0030】
簡略化のために図示されないが、通常、システム10は、他の要素を含む。例えば、システム10は、心電図(ECG)モニタを含んでもよく、このECGモニタは、ECG同期信号をコンソール24に供給するために、1つ又は2つ以上の体表面電極から信号を受信するように連結される。また、上に述べたように、システム10は通常、基準位置センサをも含むが、基準位置センサは、患者の身体の外側に取り付けられた、体位外貼付式基準パッチ上、又は心臓12に挿入され、心臓12に対して固定位置に維持された、体内配置式カテーテル上のいずれかに配置される。アブレーション部位を冷却するための液体をカテーテル14を通して循環させるための従来のポンプ及びラインが設けられている。システム10は、MRIユニット等のような外部の画像診断法からの画像データを受信することができ、プロセッサ22によって取リ込み又は呼び出し、画像を生成及び表示することができる画像プロセッサを含む。
【0031】
第1の実施形態
次に
図2を参照すると、同図は、本発明の一実施形態による、心臓アブレーション用に適合されたカテーテル39の遠位端部分37の側面図である。遠位端部分37は概ね中空の円筒形であり、典型的に直径2.5mmである。先端41は導電性であってよく、RF電流発生器に接続されたアブレーション電極として機能し得る。典型的に、アブレーション中に、組織の抵抗加熱により熱が発生する。この熱は、アブレーション電極を含む周辺領域に伝わる。熱を放散させ、かつ周辺の血液を希釈するため、灌注開口部43又は孔が遠位端部分37に形成されている。開口部43は典型的に、約0.05~0.2mmの範囲の直径を有する。本実施形態では0.075mmの開口部が使用されている。灌注流体は、カテーテル39の管腔を通って延在する内部導管(図示せず)を通って供給される。灌注流体の流速は、灌注モジュールによって制御され、典型的に毎分2~30ccで変化するが、この範囲より高くても低くてもよい。高流量要件には、毎分15ccの流速が好適である。本願と同一譲受人に譲渡された同時係属の出願番号第14/860,021号、米国特許出願公開第2015/0272667号、及び同第2012/0157890号(これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)の教示に従い、灌注流体の流量と温度のいずれか又は両方を変化させることで、遠位端部分37周辺の温度が制御され得る。
【0032】
ここで
図3を参照し、この図は、本発明の一実施形態による、カテーテル45の遠位端部分37の、長手方向の部分切欠き図である。遠位端部分37は管腔49を有する中空の電極47を含む(
図4で最もよくわかる)。管腔49は一部、流体送達アセンブリ51で占められている。遠位端部分37は長手方向対称軸53を有する。開口部57、59及び他の開口部43(
図2)は、電極47の側壁55に形成されている。これらの開口部は、電極47の外部を通路(例えば通路61)を介して管腔49と流体連通させる。通路61は外向きかつ後方に向いている。本開示の目的において、用語「後方」とは、遠位先端63から、遠位端部分37の近位端65方向に概ね向いている方向を指す。用語「外向き」は、対称軸53から概ね離れる方向を指す。開口部57、59の長手方向軸67、69は、それぞれ、対称軸53と入射角θ
1及びθ
2で交差する。この外向きかつ後ろ向きの開口部の、対称軸53に対する入射角は、5~75°で変化してよく、最適には約45°である。
【0033】
灌注流体は、外部源からの圧力によりカテーテルを通ってアセンブリ51へと送達される。灌注流体はアセンブリ51を出て電極47の管腔49内に入る。次に灌注流体は、軸67、69の矢印で示される方向に、開口部57、59を通って、管腔49から出る。このように導かれた灌注流体は、下記に
図7の記述で詳しく述べるように、遠位端部分37の斜め後ろ及び外側の領域を冷却する。
【0034】
同様に、外向きかつ前向きの開口部71、73は、対称軸53に対して、それぞれの通路75の角度(例えば、開口部73の場合は入射角θ3)により特定される方向に、灌注流体を導き、遠位端部分37の斜め前方及び外向きに流体を送達する。
【0035】
加えて、遠位端部分37は従来型の側方を向いた開口部(例えば、開口部77、79)を含み、これらは、遠位端部分37から外向きかつ側方向に灌注流体を導く。
【0036】
ここで
図4を参照し、この図は、本発明の一実施形態による、カテーテル45の遠位端部分37の切り欠き断面図である。アセンブリ51は、カテーテル45のセグメント81及び電極47と嵌合する。アセンブリ51は軸方向管腔83を含み、これは遮断終端部85に向かって遠位方向に灌注流体を運ぶ。この遮断終端部は、灌注流体が前方向に引き続き進むのを阻止する。灌注流体の流れは矢印87で示されている。終端部85で、複数の通路89が軸方向管腔83に対して90°の角度で軸横断的に外向きに枝分かれし、矢印91で示されているように、外向きの流れへと変える。灌注流体は、カテーテル45の軸を横断する管腔49に入り、概ね、電極47内の側方向通路(例えば通路61)に向かう。
【0037】
灌注の経路が、対称軸53(
図3)に揃った管腔83から出る場合、通路61を通る灌注流は、望ましくないことになる。すなわち、この流れは向きを反転させることが必要になり、近位側に傾いた通路(例えば通路61)に入るには90°を超える方向転換が必要になるからである。
図4の配置の利点は、流れがアセンブリ51から前方向に出る場合に比べて、灌注流が電極47のすべての孔に、より均一に分配されることである。
【0038】
ここで
図5を参照し、この図は、本発明の一実施形態によるアセンブリ51(
図4)の斜め立面図であり、通路89が図示されている。この実施形態では、3本の通路89があり、これらは面93上に位置し、カテーテルの軸に対して120°の角度で配置される。管腔83(
図4)からアセンブリ51を出る流れの方向は、破線95で示されている。他の実施形態は異なる数の通路を有してよく、典型的に通路89の数は2~12本の範囲で変化し得る。
【0039】
ここで
図6を参照し、この図は、従来技術によるカテーテルからの灌注流のパターンを示す図である。遠位端部分97は、従来型の側方を向いた開口部を含む。灌注流体の描く羽根形状99は、遠位端部分97の長手方向軸に対して主に外向き90°の向きである。小さな羽根形状101は、遠位端部分97の前方に向かっている。
【0040】
ここで
図7を参照し、この図は、本発明の一実施形態によるカテーテルからの灌注流のパターンを示す図である。羽根形状103は遠位端部分37から斜め後ろ向きに向かっており、この特徴は、
図6には見られない。加えて、遠位端部分37から側方に向かう羽根形状105、斜め前方に向かう羽根形状107(
図6にはない)、及び前方に向かう羽根形状109がある。
【0041】
第2の実施形態
ここで
図8を参照し、この図は、本発明の別の一実施形態による、カテーテル111の遠位端部の斜め立面図である。アセンブリ113は電極47内に配置されている。上述の流体方向転換機能に加え、アセンブリ113は、スロット117内にセンサ115を支持する第2の機能を有する。センサ115は、身体から電気生理学的データを取得するのに好適な任意のセンサであってよく、例えば、組織アブレーションを監視するための温度センサであってよい。スロット117は、電極47の壁空洞内に、アセンブリ113を通るセンサの通路を提供する。使用中は、カテーテルが心臓内にあるときに、様々なセンサをスロット117を通してカテーテル内に挿入することができ、医療手技の必要に応じて引き戻すことができる。
【0042】
第3の実施形態
ここで
図9を参照し、この図は、本発明の別の一実施形態による、アセンブリ119の斜め立面図である。
図9は
図5と同様であるが、異なるのは、スロットを形成する単一の軸横断方向通路121があり、このスロットは、
図9に示すように、360度であり得る管腔83の円周の周りの部分を中心に延在する。
図9には1本のスロットのみが示されている。代替的に、アセンブリの円周の周りに複数のスロットを配置することができる。
【0043】
第4の実施形態
この実施形態では、単一の隙間が、360°全体に拡散する、対称軸に対して横断方向の流れを提供する。ここで
図10を参照し、この図は、本発明の一実施形態によるカテーテル125の遠位端部分123の切り欠き断面図である。アセンブリ127は、カテーテル125のセグメント81及び電極47と嵌合する。
図4の実施形態とは異なり、アセンブリ127は通路89及び遮断終端部85を有さない。代わりに、流れはアセンブリ127の遠位端から出て、管腔49内を引き続き遠位方向に進み、バッフル129に当たる。このバッフルは、アセンブリ127から隙間133の距離、離間している。バッフル129は灌注流体の流れを、矢印131に示すように、対称軸に対して横方向に逸らし、360度の角度の広がりで電極47の壁に向かわせる。この後、
図4の説明で述べたように、灌注流体は通路61及び電極47の壁を貫通する他の通路に流入する。
【0044】
当業者であれば、本発明が上記で具体的に図示及び記載されたものに限定されない点を理解するであろう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組合せ及び部分的組合せ、並びに上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、先行技術にはない上述の特徴の変形例及び改変例をも含むものである。
【0045】
〔実施の態様〕
(1) 被験者の体内に挿入するための遠位区間と、長手方向対称軸と、を有するプローブと、
前記プローブの前記遠位区間に配置され、前記体内の組織にエネルギーを印加するためにエネルギー源に連結された少なくとも1つの電極であって、外側表面と、管腔と、複数の開口部が内部を貫通して形成された壁と、を有する、電極と、
前記遠位区間内の流体方向付けアセンブリであって、軸方向通路であって、該軸方向通路に対して直角に配置され、前記アセンブリの外部に延びる少なくとも1本の軸横断方向通路と流体連通した軸方向通路と、前記少なくとも1本の軸横断方向通路の前方に配置された、灌注流体が軸方向に前方へと流れることを防止する遮断終端部と、を有する、流体方向付けアセンブリと、
を含む、医療装置。
(2) 前記開口部のいくつかが、前記対称軸に対して後方角に方向付けられていることにより、前記アセンブリから流出する前記流体を、前記遠位区間の斜め後方かつ外向きに送達する、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記アセンブリが、2~12本の軸横断方向通路を有する、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記アセンブリが、1本のみの軸横断方向通路を有する、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記1本のみの軸横断方向通路が、前記対称軸を中心として360°に延びる、実施態様4に記載の装置。
【0046】
(6) 前記開口部が、0.05~0.2mmの範囲の直径を有する、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記遠位区間が、2.5mmの直径を有する、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記開口部のいくつかが、前記対称軸に対して前方角に方向付けられていることにより、前記流体を、前記遠位区間の斜め前方かつ外向きに送達する、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記アセンブリが更に、前記電極の前記管腔内にセンサを支持するように適合された少なくとも1つの切欠き部を有する、実施態様1に記載の装置。
(10) 心臓アブレーションのための方法であって、
プローブを被験者の心臓内に導入する工程であって、前記プローブが、遠位区間と、長手方向対称軸と、前記プローブの前記遠位区間に配置され、かつ前記心臓内の組織にエネルギーを印加するためにエネルギー源に連結された少なくとも1つの電極と、を有し、前記電極が、外側表面と、複数の開口部が内部を貫通して形成された壁と、を有する、工程と、
前記プローブの前記遠位区間を前記心臓内の標的に近接して配置する工程と、
その後、前記電極を介してアブレーションエネルギーを前記心臓内に伝導させることにより、前記心臓内の異常な電気伝導に影響を及ぼす工程と、
アブレーションエネルギーを伝導させながら、灌注流体を、前記遠位区間内の流体方向付けアセンブリの軸方向通路内に運ぶ工程と、
前記軸方向通路から、前記軸方向通路に対して直角に配置され、前記アセンブリの外部に延びる複数の軸横断方向通路を通じて前記灌注流体を方向付ける一方で、前記灌注流体が前記軸横断方向通路を超えて軸方向に前方へと流れることを遮断する、工程と、
を含む、方法。
【0047】
(11) 前記開口部の一部が、前記対称軸に対して後方角に方向付けられており、更に、
アブレーションエネルギーを伝導させながら、前記開口部の前記一部を通じて前記灌注流体を流すことにより、前記遠位区間の斜め後方かつ外向きの容積を冷却する工程を含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記開口部が、0.05~0.2mmの範囲の直径を有する、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記遠位区間が、2.5mmの直径を有する、実施態様10に記載の方法。
(14) 前記灌注流体を方向付ける工程が、毎分2~30ccの範囲で行われる、実施態様10に記載の方法。
(15) 前記灌注流体を方向付ける工程が、毎分2~15ccの範囲で行われる、実施態様10に記載の方法。
【0048】
(16) 前記アセンブリ内のサポート上に前記プローブを介してセンサを通過させる工程と、
前記心臓からの生体電気情報を前記センサで検出する工程と、
を更に含む、実施態様10に記載の方法。