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特許7134623酸素濃縮装置及びその制御方法、酸素濃縮装置用の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】酸素濃縮装置及びその制御方法、酸素濃縮装置用の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20220905BHJP
【FI】
A61M16/00 305C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017240137
(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2019107042
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-12-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】服田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】須田 正憲
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-092038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の呼吸における吸気圧が、酸素の供給開始条件となる閾値に到達したか否かを判定する閾値判定手段と、前記閾値判定手段によって吸気圧が前記閾値に到達したと判定された場合に、使用者の呼吸に同期させて前記酸素を供給する制御を行う供給制御手段とを備える酸素濃縮装置であって、
使用者の吸気状態を示す吸気パラメータである吸気圧を過去の複数回の呼吸について検知する吸気パラメータ検知手段と、
前記吸気パラメータ検知手段によって検知された複数回分の前記吸気圧に基づいて、次回以降の呼吸において前記酸素の供給開始条件となる前記閾値を設定する閾値設定手段と
を備え
前記閾値設定手段は、過去の複数回分の呼吸における吸気圧のピーク値に基づいて平均値を導出し、その導出した前記平均値に基づいて前記閾値を設定する
ことを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
前記閾値設定手段は、前記平均値に対して定数を乗じることによって得られる値を前記閾値として設定することを特徴とする請求項に記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
前記吸気パラメータ検知手段は、1回の呼吸ごとに前記吸気圧を検知し、前記閾値設定手段は、1回の呼吸ごとに前記閾値を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の酸素濃縮装置。
【請求項4】
前記酸素を供給する酸素供給管を開状態または閉状態に切り替える酸素供給弁を備え、
前記供給制御手段は、前記閾値判定手段によって吸気圧が前記閾値に到達したと判定された場合に、前記酸素供給管を所定時間のあいだ前記開状態に切り替えることにより、前記酸素を供給する制御を行う
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の酸素濃縮装置。
【請求項5】
前記酸素濃縮装置は、携帯形の酸素濃縮装置であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の酸素濃縮装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の酸素濃縮装置を制御する方法であって、
使用者の吸気状態を示す吸気パラメータである吸気圧を過去の複数回の呼吸について検知する第1のステップと、
検知された複数回分の前記吸気圧に基づいて、次回以降の呼吸において酸素の供給開始条件となる吸気圧の閾値を設定する第2のステップと、
吸気圧が前記閾値に到達したか否かを判定する第3のステップと、
吸気圧が前記閾値に到達したと判定された場合に、使用者の呼吸に同期させて前記酸素を供給する制御を行う第4のステップと
を含み、
前記第2のステップでは、過去の複数回分の呼吸における吸気圧のピーク値に基づいて平均値を導出し、その導出した前記平均値に基づいて前記閾値を設定する
ことを特徴とする酸素濃縮装置の制御方法。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の酸素濃縮装置を制御するコンピュータに、
使用者の吸気状態を示す吸気パラメータである吸気圧を過去の複数回の呼吸について検知する第1のステップと、
検知された複数回分の前記吸気圧に基づいて、次回以降の呼吸において酸素の供給開始条件となる吸気圧の閾値を設定する第2のステップと、
吸気圧が前記閾値に到達したか否かを判定する第3のステップと、
吸気圧が前記閾値に到達したと判定された場合に、使用者の呼吸に同期させて前記酸素を供給する制御を行う第4のステップと
を実行させるための制御プログラムであって、
前記第2のステップでは、過去の複数回分の呼吸における吸気圧のピーク値に基づいて平均値を導出し、その導出した前記平均値に基づいて前記閾値を設定する
ことを特徴とする酸素濃縮装置用の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者に対して高濃度の酸素を供給する医療用途に好適な酸素濃縮装置及びその制御方法、酸素濃縮装置用の制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用途で用いられる酸素濃縮装置として、使用者(患者)の呼吸における吸気圧が酸素の供給開始条件となる閾値に到達したことを契機として、患者の呼吸に同期させて酸素の供給を行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種の酸素濃縮装置は、例えば、酸素供給源(酸素タンク等)、酸素供給管、酸素供給弁等を備えている。酸素供給管は、酸素供給源から送り出された酸素を患者側に供給するためのものである。酸素供給弁は、酸素供給管において酸素供給源の下流側に配置されており、酸素供給管を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。そして、吸気圧が閾値に到達したことを契機として酸素供給管を開状態に切り替えれば、患者に酸素が供給されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-105230号公報([0035],[0036]、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、呼吸における吸気圧は、患者の症状や肺活量等により、患者ごとに大きなバラツキを有するものと考えられる。また、同一の患者であっても、酸素濃縮装置の使用時(運転時)の体調、ストレス等の心理的要因、患者の年齢や癖などにより、呼吸が浅くなったり深くなったりするため、吸気圧が変動する可能性が高い。しかしながら、上述した吸気圧の閾値は、酸素濃縮装置の製造時にメーカーが設定したり、患者が酸素濃縮装置を使用する前の段階で医師やプロバイダが設定したりするものである。このため、酸素濃縮装置の使用時において、患者の日々の体調や心理的要因による吸気圧の変動を考慮しながら、閾値を随時変更することは不可能である。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸素濃縮装置の使用時において、酸素の供給開始条件となる吸気圧の閾値を適切な値に随時設定することが可能な酸素濃縮装置及びその制御方法、酸素濃縮装置用の制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段(手段1)としては、使用者の呼吸における吸気圧が、酸素の供給開始条件となる閾値に到達したか否かを判定する閾値判定手段と、前記閾値判定手段によって吸気圧が前記閾値に到達したと判定された場合に、使用者の呼吸に同期させて前記酸素を供給する制御を行う供給制御手段とを備える酸素濃縮装置であって、使用者の吸気状態を示す吸気パラメータである吸気圧を過去の複数回の呼吸について検知する吸気パラメータ検知手段と、前記吸気パラメータ検知手段によって検知された複数回分の前記吸気圧に基づいて、次回以降の呼吸において前記酸素の供給開始条件となる前記閾値を設定する閾値設定手段とを備え、前記閾値設定手段は、過去の複数回分の呼吸における吸気圧のピーク値に基づいて平均値を導出し、その導出した前記平均値に基づいて前記閾値を設定することを特徴とする酸素濃縮装置がある。
【0007】
従って、上記手段1に記載の発明では、吸気パラメータ検知手段が、使用者の吸気状態を示す吸気パラメータである吸気圧を過去の複数回の呼吸について検知し、閾値設定手段が、次回以降の呼吸において酸素の供給開始条件となる閾値を、検知された複数回分の吸気圧に基づいて設定している。即ち、上記手段1では、酸素濃縮装置の使用時において、使用者の日々の体調や心理的要因などによる吸気状態の変動を考慮しながら、吸気圧の閾値を適切な値に設定することができる。ゆえに、酸素濃縮装置のメーカーや、医師及びプロバイダが、使用者の吸気状態に合わせて吸気圧の閾値を事前に設定しなくても済む。
【0008】
ここで、上記酸素濃縮装置としては、定置形の酸素濃縮装置や携帯形の酸素濃縮装置を用いることができる。なお、上記手段1の酸素濃縮装置では、使用者の呼吸における吸気圧が閾値に到達したときにはじめて酸素を供給しているため、酸素の供給量が少なくなる。その結果、酸素濃縮装置が備える空気供給機構(コンプレッサ等)は小型なもので済むようになるため、携帯形の酸素濃縮装置であれば、使用者にとって持ち運びが容易な酸素濃縮装置となる。
【0009】
上記酸素濃縮装置は、使用者の呼吸における吸気圧が、酸素の供給開始条件となる閾値に到達したか否かを判定する閾値判定手段と、閾値判定手段によって吸気圧が閾値に到達したと判定された場合に、使用者の呼吸に同期させて酸素を供給する制御を行う供給制御手段とを備える。ここで、酸素を供給する酸素供給管を開状態または閉状態に切り替える酸素供給弁を備える場合、供給制御手段は、閾値判定手段によって吸気圧が閾値に到達したと判定された場合に、酸素供給管を所定時間のあいだ開状態に切り替えることにより、酸素を供給する制御を行うことが好ましい。このようにすれば、吸気圧が閾値に到達したことを契機として酸素供給弁を作動させることにより、酸素を確実に供給することができる。
【0010】
さらに、上記酸素濃縮装置は、使用者の吸気状態を示す吸気パラメータである吸気圧を過去の複数回の呼吸について検知する吸気パラメータ検知手段を備える。ここで、吸気パラメータ検知手段による吸気圧の検知態様は特に限定されないが、例えば、連続した過去の複数回の呼吸について吸気圧を検知することや、連続した過去の複数回の呼吸の中から間欠的(具体的にはn回おき)に選択した呼吸について吸気圧を検知することや、連続した過去の複数回の呼吸の中からランダムに選択した呼吸について吸気圧を検知することなどが挙げられる。
【0011】
また、吸気パラメータ検知手段によって吸気圧を検知する呼吸の回数は特に限定される訳ではないが、例えば、3回以上10回以下であることが好ましい。仮に、吸気圧を検知する呼吸の回数が3回未満になると、検知された複数の吸気圧の値の中に1つでも突出したものがある場合に、閾値設定手段によって設定される閾値が、使用者の吸気状態からかけ離れたものになる虞がある。一方、吸気圧を検知する呼吸の回数が10回よりも大きくなると、閾値設定手段によって設定される閾値が、現在の呼吸よりもかなり前の呼吸も反映したものとなるため、現在の使用者の吸気状態に合った閾値を設定できない可能性がある。
【0013】
また、上記酸素濃縮装置は、吸気パラメータ検知手段によって検知された複数回分の吸気圧に基づいて、次回以降の呼吸において酸素の供給開始条件となる閾値を設定する閾値設定手段を備える。ここで、閾値を設定するための具体的な手法として、閾値設定手段は、過去の複数回分の呼吸における吸気圧の平均値に基づいて、閾値を設定する。このようにすれば、閾値の設定に用いられる吸気圧の値が過去の複数回分の呼吸の傾向を示す値となるため、使用者の吸気状態により適合した閾値を得ることができる。さらに、閾値設定手段は、過去の複数回分の呼吸における吸気圧のピーク値に基づいて、平均値を算出する。このようにすれば、平均値の算出に用いられる吸気圧(吸気パラメータ)の値を吸気パラメータ検知手段によって検知しやすくなる。
【0014】
また、閾値設定手段は、平均値に対して定数を乗じることによって得られる値を閾値として設定することが好ましい。このようにすれば、閾値を、吸気圧のピーク値に対して比較的低く設定できるため、使用者の呼吸における吸気圧を閾値に素早く到達させることができ、ひいては、酸素供給を素早く開始させることができる。
【0015】
そして、吸気パラメータ検知手段は、1回の呼吸ごとに吸気圧を検知し、閾値設定手段は、1回の呼吸ごとに閾値を設定することが好ましい。このようにすれば、1回の呼吸ごとに閾値を更新することができるため、使用者の吸気状態が変動したとしても、設定される閾値が実際の吸気状態から乖離しにくくなる。
【0016】
上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、上記手段1に記載の酸素濃縮装置を制御する方法であって、使用者の吸気状態を示す吸気パラメータである吸気圧を過去の複数回の呼吸について検知する第1のステップと、検知された複数回分の前記吸気圧に基づいて、次回以降の呼吸において酸素の供給開始条件となる吸気圧の閾値を設定する第2のステップと、吸気圧が前記閾値に到達したか否かを判定する第3のステップと、吸気圧が前記閾値に到達したと判定された場合に、使用者の呼吸に同期させて前記酸素を供給する制御を行う第4のステップとを含み、前記第2のステップでは、過去の複数回分の呼吸における吸気圧のピーク値に基づいて平均値を導出し、その導出した前記平均値に基づいて前記閾値を設定することを特徴とする酸素濃縮装置の制御方法がある。
【0017】
従って、上記手段2に記載の発明では、第1のステップにおいて、使用者の吸気状態を示す吸気パラメータである吸気圧を過去の複数回の呼吸について検知し、第2のステップにおいて、次回以降の呼吸において酸素の供給開始条件となる閾値を、検知された複数回分の吸気圧に基づいて設定している。即ち、上記手段2では、酸素濃縮装置の使用時において、使用者の日々の体調や心理的要因などによる吸気状態の変動を考慮しながら、吸気圧の閾値を適切な値に設定することができる。ゆえに、酸素濃縮装置のメーカーや、医師及びプロバイダが、使用者の吸気状態に合わせて吸気圧の閾値を事前に設定しなくても済む。
【0018】
さらに、上記課題を解決するための別の手段(手段3)としては、上記手段1に記載の酸素濃縮装置を制御するコンピュータに、使用者の吸気状態を示す吸気パラメータである吸気圧を過去の複数回の呼吸について検知する第1のステップと、検知された複数回分の前記吸気圧に基づいて、次回以降の呼吸において酸素の供給開始条件となる吸気圧の閾値を設定する第2のステップと、吸気圧が前記閾値に到達したか否かを判定する第3のステップと、吸気圧が前記閾値に到達したと判定された場合に、使用者の呼吸に同期させて前記酸素を供給する制御を行う第4のステップとを実行させるための制御プログラムであって、前記第2のステップでは、過去の複数回分の呼吸における吸気圧のピーク値に基づいて平均値を導出し、その導出した前記平均値に基づいて前記閾値を設定することを特徴とする酸素濃縮装置用の制御プログラムがある。
【0019】
従って、上記手段3に記載の発明では、第1のステップにおいて、使用者の吸気状態を示す吸気パラメータである吸気圧を過去の複数回の呼吸について検知し、第2のステップにおいて、次回以降の呼吸において酸素の供給開始条件となる閾値を、検知された複数回分の吸気圧に基づいて設定している。即ち、上記手段3では、酸素濃縮装置の使用時において、酸素濃縮装置用の制御プログラムをコンピュータに実行させることにより、使用者の日々の体調や心理的要因などによる吸気状態の変動を考慮しながら、吸気圧の閾値を適切な値に設定することができる。ゆえに、酸素濃縮装置のメーカーや、医師及びプロバイダが、使用者の吸気状態に合わせて吸気圧の閾値を事前に設定しなくても済む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態の酸素濃縮装置の基本構成を示す説明図。
図2】酸素濃縮装置の電気的構成を示すブロック図。
図3】使用者の体内を示す説明図。
図4】使用者の呼吸パターンを示す線図。
図5】1回の呼吸における呼吸パターン及び酸素濃縮空気の供給パターンを示す線図。
図6】閾値が高すぎる場合の問題点を示す線図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の酸素濃縮装置を具体化した一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、窒素吸着剤(以下「吸着剤」という)を用いて空気中から窒素を吸着除去することにより酸素を濃縮し、得られた酸素を使用者に供給する圧力変動吸着型の医療用酸素濃縮装置を例示する。
【0022】
図1に示される酸素濃縮装置11は、使用者10(図3参照)による持ち運びが可能な携帯形の酸素濃縮装置である。酸素濃縮装置11は、箱状をなす本体ケース12を備えている。本体ケース12の前面側には、カニューラを接続可能なカニューラ接続部13が設けられている。一方、本体ケース12の背面側には空気取込口(図示略)が設けられ、空気取込口の下方位置には電源スイッチ14(図2参照)が設けられている。
【0023】
また、本体ケース12内には、空気を供給するための空気供給管21が形成されている。空気供給管21の始端は空気取込口に接続されている。また、空気供給管21上には、フィルタ22及びコンプレッサ23等が設置されている。フィルタ22は、図示しないが、例えば繊維をまとめて積層することでマット状に構成されており、空気(21体積%の酸素を含有)に含まれる塵埃を除去する機能と吸入音を低減させる機能とを有している。コンプレッサ23は、フィルタ22の下流側に配置されており、フィルタ22を介して取り込んだ空気を圧縮して下流側に供給するようになっている。また、コンプレッサ23には冷却ファン24が取り付けられている。冷却ファン24は、稼働により高温になったコンプレッサ23を冷却するためのものである。
【0024】
図1に示されるように、空気供給管21は、コンプレッサ23の下流側において第1管31と第2管32とに分岐している。第1管31上には、第1切換弁33、第1吸着筒34及び第1逆止弁35が設置されている。同様に、第2管32上には、第2切換弁36、第2吸着筒37及び第2逆止弁38が設置されている。第1切換弁33は、第1吸着筒34の上流側に配置されており、第1管31の上流部分を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。第1切換弁33は、開状態に切り替えられた際に、コンプレッサ23から送り出された空気を第1吸着筒34内に供給するようになっている。同様に、第2切換弁36は、第2吸着筒37の上流側に配置されており、第2管32の上流部分を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。第2切換弁36は、開状態に切り替えられた際に、コンプレッサ23から送り出された空気を第2吸着筒37内に供給するようになっている。
【0025】
図1に示される吸着筒34,37は、コンプレッサ23によって圧縮された空気が強制通過する際に窒素を吸着することにより、空気を窒素と酸素とに分離するようになっている。詳述すると、吸着筒34,37内には、空気中の窒素を優先的に吸着して酸素を分離するゼオライト系の吸着剤(例えば、Li-X型ゼオライト)が充填されている。そして、空気の通過に伴って第1吸着筒34(または第2吸着筒37)内が加圧されると、吸着剤に窒素が吸着される。このとき、酸素は、吸着剤に殆ど吸着することなく第1吸着筒34(または第2吸着筒37)内を通過する。その後、空気が通過しなくなって第1吸着筒34(または第2吸着筒37)内が減圧されると、吸着剤に吸着している窒素が離脱する。
【0026】
さらに、第1切換弁33には窒素ガス排出管39の第1端部が接続され、第2切換弁36には窒素ガス排出管39の第2端部が接続されている。即ち、本実施形態の切換弁33,36は、図示しないソレノイドにより作動する3方向電磁弁である。窒素ガス排出管39は、第1端部、第2端部及び第3端部に分岐しており、第3端部の終端は外部に窒素を排出する排出口となっている。また、第1切換弁33は、窒素ガス排出管39の第1端部を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。第1切換弁33は、開状態に切り替えられた際に、第1吸着筒34内の吸着剤に吸着している窒素を窒素ガス排出管39の第3端部から排出するようになっている。同様に、第2切換弁36は、窒素ガス排出管39の第2端部を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。第2切換弁36は、開状態に切り替えられた際に、第2吸着筒37内の吸着剤に吸着している窒素を窒素ガス排出管39の第3端部から排出するようになっている。また、窒素ガス排出管39の第3端部上には、窒素の排出音を低減させる消音器40が設置されている。
【0027】
図1に示されるように、一対の吸着筒34,37の下流側には、両吸着筒34,37間を連通する連通管41が設けられている。連通管41上には、両吸着筒34,37間の圧力を調節するための均圧弁42(二方弁)が設けられている。また、連通管41上には、一対のオリフィス43が設けられている。
【0028】
また、第1逆止弁35は、第1管31において第1吸着筒34の下流側に配置されている。第1逆止弁35は、第1吸着筒34及び第1逆止弁35を順番に通過した酸素の逆流を防止するためのものである。同様に、第2逆止弁38は、第2管32において第2吸着筒37の下流側に配置されている。第2逆止弁38は、第2吸着筒37及び第2逆止弁38を順番に通過した酸素の逆流を防止するためのものである。なお、両逆止弁35,38の下流側において、第1管31及び第2管32は合流し、酸素を供給する酸素供給管50となる。酸素供給管50の終端は、上述したカニューラ接続部13に接続されている。
【0029】
そして、図1に示されるように、酸素供給管50上には、酸素タンク51、酸素供給弁52、バクテリアフィルタ53、酸素センサ54及び呼吸圧センサ55が設置されている。酸素タンク51は、逆止弁35,38を通過した酸素、具体的には、85体積%以上(本実施形態では90体積%)の酸素を含有する酸素濃縮空気を貯留するようになっている。そして、酸素タンク51は、内部の圧力によって酸素濃縮空気を下流側に供給するようになっている。また、酸素タンク51にはタンク圧センサ56(図2参照)が設置されている。タンク圧センサ56は、酸素タンク51内の圧力(タンク圧)を測定して、タンク圧測定信号を出力するようになっている。なお、タンク圧は、酸素タンク51内の酸素濃縮空気の貯留量が増加するのに伴って大きくなり、貯留量が減少するのに伴って小さくなる。
【0030】
また、酸素供給弁52は、酸素タンク51の下流側に配置されており、酸素供給管50を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。酸素供給弁52は、開状態に切り替えられた際に、下流側に酸素濃縮空気を供給可能とするようになっている。なお、本実施形態の酸素供給弁52は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。また、バクテリアフィルタ53は、酸素供給弁52の下流側に配置されており、酸素濃縮空気に含まれるバクテリアを除去する機能を有している。酸素センサ54は、バクテリアフィルタ53の下流側に配置されており、酸素供給管50内を流れる酸素濃縮空気の酸素濃度を測定して、酸素濃度測定信号を出力するようになっている。
【0031】
そして、図1に示される呼吸圧センサ55は、酸素センサ54と上述したカニューラ接続部13との間に配置されている。呼吸圧センサ55は、使用者10がカニューラを介して酸素濃縮空気を吸うことにより、酸素供給管50内が負圧になった際に、酸素供給管50内の圧力(吸気圧)を検知して、吸気圧検知信号を出力するようになっている。
【0032】
次に、酸素濃縮装置11の電気的構成について説明する。
【0033】
図2に示されるように、酸素濃縮装置11は、装置全体を統括的に制御するためのコンピュータ61を備えている。コンピュータ61は、CPU62、メモリ63及び入出力ポート64等により構成されている。入出力ポート64には、電源スイッチ14、酸素センサ54、呼吸圧センサ55、タンク圧センサ56及び大気圧センサ57が電気的に接続されている。従って、電源スイッチ14からのオンオフ信号や各センサ54~57からの信号が、入出力ポート64を介してCPU62に入力されるようになる。また、入出力ポート64には、コンプレッサ23、冷却ファン24、第1切換弁33、第2切換弁36、均圧弁42及び酸素供給弁52が電気的に接続されている。従って、CPU62からの駆動信号が、入出力ポート64を介して上記の各機器(コンプレッサ23、冷却ファン24、切換弁33,36、均圧弁42及び酸素供給弁52)に出力され、それら駆動信号によって各機器が制御されるようになる。さらに、メモリ63には、酸素濃縮装置11用の制御プログラムが記憶されている。CPU62は、制御プログラムをメモリ63から読み出して順次実行するようになっている。
【0034】
次に、酸素濃縮装置11による酸素の濃縮方法を説明する。
【0035】
本実施形態の酸素濃縮装置11では、第1吸着筒34及び第2吸着筒37において加圧及び減圧を交互に繰り返すことにより、酸素の濃縮及び吸着剤の再生を行う。まず、第1切換弁33を駆動して第1管31の上流部分を開状態に切り替える。ここで、コンプレッサ23を作動させると、酸素濃縮装置11の外部にある空気が、フィルタ22を介して空気供給管21内に取り込まれ、第1切換弁33を介して第1吸着筒34内に供給される。このとき、第1吸着筒34内は加圧された状態となる。そして、第1吸着筒34内に供給された空気は、第1吸着筒34を通過する際に窒素と酸素とに分離され、窒素が第1吸着筒34内の吸着剤に吸着するのに伴って酸素が濃縮される。その後、濃縮された酸素(酸素濃縮空気)は、第1逆止弁35を介して酸素タンク51に供給される。
【0036】
そして、所定時間の経過後、第1切換弁33を駆動して窒素ガス排出管39の第1端部を開状態に切り替えるとともに、第2切換弁36を駆動して第2管32の上流部分を開状態に切り替える。その結果、コンプレッサ23によって空気供給管21内に取り込まれた空気が、第2切換弁36を介して第2吸着筒37内に供給される。このとき、第2吸着筒37内は加圧された状態となる。そして、第2吸着筒37内に供給された空気は、第2吸着筒37を通過する際に窒素と酸素とに分離され、窒素が第2吸着筒37内の吸着剤に吸着するのに伴って酸素が濃縮される。その後、濃縮された酸素(酸素濃縮空気)は、第2逆止弁38を介して酸素タンク51に供給される。一方、第1吸着筒34内は減圧された状態となるため、第1吸着筒34内の吸着剤に吸着している窒素は、離脱した後、第1切換弁33を介して窒素ガス排出管39に流れ込み、排出口から酸素濃縮装置11の外部に排出される。
【0037】
その後、各切換弁33,36を切り替えて、第1吸着筒34内での窒素の吸着(及び第2吸着筒37内での窒素の離脱)と、第2吸着筒37内での窒素の吸着(及び第1吸着筒34内での窒素の離脱)とを交互に繰り返す。その結果、90体積%の酸素濃縮空気が連続的に得られるようになる。そして、第1吸着筒34及び第2吸着筒37を通過した酸素は、酸素タンク51に貯留され、使用者10に供給される。なお、図3に示されるように、使用者10の呼吸器系は、鼻腔71内の領域であるエリアA1と、上気道72において鼻腔71を除く領域であるエリアA2と、下気道73内の領域であるエリアA3と、気管支の末梢から肺74の奥の領域であって肺胞を有する領域であるエリアA4とからなっている。
【0038】
なお、吸着(加圧)と離脱(減圧)とを切り替える際には、僅かな期間だけ均圧弁42を開状態に切り替えて、加圧されていた第1吸着筒34(または第2吸着筒37)から減圧されていた第2吸着筒37(または第1吸着筒34)に対して酸素を供給する。この酸素により、第2吸着筒37(または第1吸着筒34)内の吸着剤に吸着された窒素や水分が洗い流され、第2切換弁36(または第1切換弁33)及び窒素ガス排出管39を介して酸素濃縮装置11の外部に排出される。
【0039】
次に、酸素濃縮装置11による酸素濃縮空気の供給方法を説明する。
【0040】
まず、第1のステップにおいて、CPU62は、使用者10の吸気状態を示す吸気パラメータとして、使用者10の呼吸における吸気圧を検知する。また、図4に示されるように、CPU62は、連続した過去の5回の呼吸、具体的に言うと、P1(現在から5回前の呼吸)~P5(現在から1回前の呼吸)について、吸気圧を検知する。即ち、CPU62は、『吸気パラメータ検知手段』としての機能を有している。具体的に言うと、CPU62は、呼吸圧センサ55の出力をモニタする。詳述すると、呼吸圧センサ55は、使用者10が酸素濃縮空気を吸う吸気期間T1(図5参照)のみにおいて吸気圧検知信号を出力するため、CPU62には、1回の呼吸ごとに吸気圧検知信号が入力される。そして、CPU62は、吸気圧検知信号が入力される度に、吸気圧検知信号が示す吸気圧のピーク値、本実施形態では、過去の5回分の呼吸における吸気圧のピーク値(図4に示すP1max~P5maxを参照)をメモリ63に記憶する。その結果、1回の呼吸ごとに吸気圧が検知されるようになる。
【0041】
続く第2のステップにおいて、CPU62は、検知された5回分の吸気圧に基づいて、次回の呼吸において酸素の供給開始条件となる吸気圧の閾値を設定する(図4参照)。即ち、CPU62は、『閾値設定手段』としての機能を有している。具体的に言うと、CPU62は、メモリ63に記憶されている過去の5回分の呼吸における吸気圧のピーク値(P1max~P5max)に基づいて、平均値を導出する。そして、CPU62は、導出した平均値に対して定数を乗じることによって得られる値を、閾値として設定(メモリ63に記憶)する。なお、定数は、例えば0.1以上0.2以下(本実施形態では0.2)に設定される。
【0042】
また、CPU62は、呼吸が1回終了する度に、連続した過去の5回の呼吸(具体的には、「その呼吸が終了した時点から5回前の呼吸」~「その呼吸が終了した時点から1回前の呼吸」)について、吸気圧を検知する。そして、CPU62は、検知した過去の5回分の呼吸における吸気圧のピーク値に基づいて平均値を導出し、導出した平均値に対して定数を乗じることによって得られる値を閾値として設定する。
【0043】
続く第3のステップにおいて、CPU62は、次回の呼吸(図4参照)において、使用者10の呼吸における吸気圧が閾値に到達したか否かを判定する。即ち、CPU62は、『閾値判定手段』としての機能を有している。具体的に言うと、CPU62は、入力された吸気圧検知信号が示す吸気圧がメモリ63に記憶されている閾値に達したか否かを判定する。
【0044】
続く第4のステップにおいて、CPU62は、吸気圧が閾値に到達したと判定された場合に、使用者10の呼吸に同期させて酸素濃縮空気を供給する制御を行う。即ち、CPU62は、『供給制御手段』としての機能を有している。
【0045】
ところで、図5に示されるように、使用者10の1回の呼吸における呼吸期間T0は、吸気期間T1と呼気期間T2とからなる。呼吸期間T0の長さは、吸気期間T1の長さと呼気期間T2の長さとの和と等しくなっている。また、吸気期間T1は呼吸期間T0の3分の1を占めており、呼気期間T2は呼吸期間T0の3分の2を占めている。よって、呼気期間T2の長さは吸気期間T1の長さの2倍の大きさとなる。なお、本実施形態では、呼吸期間T0が3s(秒)、吸気期間T1が1s、呼気期間T2が2sとなっている。
【0046】
さらに、吸気期間T1は、前半期間t1と後半期間t2とからなる。吸気期間T1の長さは、前半期間t1の長さと後半期間t2の長さとの和と等しくなっている。また、前半期間t1は、吸気期間T1の60%(呼吸期間T0の20%)を占めており、後半期間t2は、吸気期間T1の40%(呼吸期間T0の約13%)を占めている。よって、本実施形態では、前半期間t1が0.6s(=600ms)、後半期間t2が0.4s(=400ms)となる。なお、前半期間t1は、吸入した酸素濃縮空気が肺胞を有するエリアA4(図3参照)に到達するために、酸素吸入の有効度が相対的に高い有効期間(図5参照)である。一方、後半期間t2は、吸入した酸素濃縮空気がエリアA4には到達しないために、酸素吸入の有効度が相対的に低い無効期間(図5参照)である。また、呼気期間T2は、酸素濃縮空気の吸入自体が行われないために無効期間となる。
【0047】
なお、図4図5に示される線図上には、使用者10の呼吸パターンを示す圧力曲線81が予め設定されている。圧力曲線81では、前半期間t1に吸気圧の最高点P0(即ち、ピーク値(P1max~P5max)となる点)が位置している。
【0048】
以上のことから、第4のステップでは、吸気圧が閾値に到達したと判定された場合に、有効期間である前半期間t1中において、使用者10に酸素濃縮空気を供給する制御を行う。具体的に言うと、CPU62は、酸素供給弁52に対して駆動信号を出力し、酸素供給管50を所定時間のあいだ開状態に切り替える制御を行う。その結果、酸素タンク51内の酸素濃縮空気が使用者10に供給される。なお、本実施形態では、酸素濃縮空気が、所定時間と同じ長さである酸素供給期間c(本実施形態では0.5s程度(=500ms程度))において、常に同じ圧力(本実施形態では75kPa)で供給される。
【0049】
なお、図5に示されるように、酸素濃縮空気は、未到達期間a(本実施形態では0.07s(=70ms))とディレイ期間b(本実施形態では0.03s(=30ms))とが経過した後、酸素供給期間cにおいて供給される。未到達期間aは、吸気圧が閾値に到達するまでの期間である。ディレイ期間bは、ソフトウェアや機械的要因によるディレイの期間であって、吸気圧が閾値に到達してから酸素供給管50の開状態への切り替えが完了するまでの期間である。本実施形態では、未到達期間a、ディレイ期間b及び酸素供給期間cの時間の総和が、有効期間である前半期間t1の長さ(600ms)以下となっているため、有効な酸素吸入が行われていると言うことができる。
【0050】
また、吸気期間T1における圧力曲線81は、下記の近似式で示すことができる。
近似式 Y=Asinπt
(式中、Y:吸気圧。A:吸気圧のピーク値。t:時間。)
上述したように、吸気圧が閾値に到達するまでの期間である未到達期間aの長さは0.07sであるため、閾値に到達するときの吸気圧は、Asin0.07π≒0.218Aとなる。即ち、閾値に到達するときの吸気圧は、ピーク値の約0.218倍となるため、本実施形態では、閾値の算出時においてピーク値の平均値に乗じる定数を、0.218以下(具体的には0.2)に設定している。
【0051】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0052】
(1)本実施形態の酸素濃縮装置11では、CPU62が、使用者10の呼吸における吸気圧を過去の5回の呼吸について検知し、検知された5回分の吸気圧に基づいて、次回の呼吸において酸素の供給開始条件となる閾値を設定している。即ち、本実施形態では、酸素濃縮装置11の使用時において、使用者10の日々の体調や心理的要因などによる吸気圧の変動を考慮しながら、吸気圧の閾値を適切な値に設定することができる。ゆえに、酸素濃縮装置11のメーカーや、医師及びプロバイダが、使用者の吸気状態に合わせて吸気圧の閾値を事前に設定しなくても済む。
【0053】
(2)本実施形態では、酸素濃縮空気を、吸気期間T1のみ、特には前半期間t1のみに供給しているため、酸素濃縮空気の供給量が少なくなる。しかも、本実施形態では、使用者10の呼吸における吸気圧が閾値に到達したときにはじめて酸素濃縮空気を供給するため、酸素濃縮空気の供給量はよりいっそう少なくなる。その結果、酸素濃縮装置11が備える空気供給機構(コンプレッサ23等)は小型なもので済むようになるため、軽量であって使用者10にとって持ち運びが容易な酸素濃縮装置11とすることができる。また、小型のコンプレッサ23を用いることにより、コンプレッサ23の消費電力が少なくなるため、電源に限りがある携帯形の酸素濃縮装置11であっても、酸素濃縮装置11を長時間使用することができる。
【0054】
(3)例えば、図6に示されるように、吸気圧の閾値が吸気圧のピーク値(最高点P0での値)に対して比較的高く設定されると、未到達期間aが長くなってしまう。その結果、未到達期間a(例えば100ms)、ディレイ期間b(30ms)及び酸素供給期間c(500ms程度)の時間の総和が前半期間t1の長さ(600ms)を上回るため、酸素供給期間c内に、酸素供給が無効となる無効酸素供給期間dが生じてしまう。そこで、本実施形態では、5回分の呼吸における吸気圧のピーク値の平均値に対して定数(具体的には0.2)を乗じることによって得られる値を、閾値として設定している。その結果、閾値が、吸気圧のピーク値に対して比較的低く設定されるため、酸素供給を素早く開始させて前半期間t1内に終了させることができ、酸素濃縮空気の無駄をなくすことができる。
【0055】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0056】
・上記実施形態のCPU62は、吸気圧を過去の5回の呼吸について検知していた。しかし、CPU62は、吸気圧を過去の複数回の呼吸について検知するのであれば、過去の6回以上の呼吸について検知してもよいし、過去の4回以下の呼吸について検知してもよい。
【0057】
・上記実施形態のCPU62は、連続した過去の複数回(5回)の呼吸、具体的に言うと、P1~P5の呼吸(図4参照)について、吸気圧を検知していた。しかし、CPU62は、連続した過去の複数回の呼吸の中から間欠的に選択した呼吸、例えば、P1,P3,P5の呼吸(図4参照)について、吸気圧を検知してもよい。また、CPU62は、連続した過去の複数回の呼吸の中からランダムに選択した呼吸、例えば、P1,P2,P5の呼吸(図4参照)について、吸気圧を検知してもよい。
【0058】
・上記実施形態では、CPU62が、使用者10の呼吸における吸気圧を、閾値の設定に用いられる吸気パラメータとして検知していた。しかし、CPU62は、使用者10の呼吸における吸気量を吸気パラメータとして検知してもよいし、使用者10の呼吸における吸気速度を吸気パラメータとして検知してもよい。また、CPU62は、吸気圧及び吸気量の両方を吸気パラメータとして検知してもよいし、吸気量及び吸気速度の両方を吸気パラメータとして検知してもよいし、吸気速度及び吸気圧の両方を吸気パラメータとして検知してもよい。さらに、CPU62は、吸気圧、吸気量及び吸気速度の全てを吸気パラメータとして検知してもよい。なお、吸気量は、吸気期間T1において圧力曲線81と線図(図5参照)の時間軸L1(横軸)とによって囲まれる領域の面積に対し、係数を乗じることにより、得ることができる。また、吸気速度は、前半期間t1における圧力曲線81(右上がりの線)の傾きを算出することにより、得ることができる。
【0059】
・上記実施形態では、CPU62が、吸気圧センサ55から出力される吸気圧検知信号をモニタし、吸気圧検知信号が示す吸気圧のピーク値を検出してメモリ63に記憶するようになっていた。しかし、CPU62とは別にデジタルフィルタを設け、吸気圧検知信号をデジタルフィルタで処理することにより、吸気圧検知信号が示す吸気圧のピーク値を抽出するようにしてもよい。
【0060】
・上記実施形態のCPU62は、次回のみの呼吸において酸素の供給開始条件となる吸気圧の閾値を設定していたが、次回以降の呼吸において酸素の供給開始条件となる吸気圧の閾値を設定してもよい。具体的に言うと、CPU62は、次回の呼吸から所定回の呼吸までの間に用いられる閾値を設定してもよいし、次回以降の全ての呼吸に用いられる閾値を設定してもよい。
【0061】
・上記実施形態のCPU62は、過去の複数回分(5回分)の呼吸における吸気パラメータ(吸気圧)の平均値に基づいて、閾値を設定していた。しかし、CPU62は、過去の複数回分の呼吸における吸気パラメータの最大値や最小値に基づいて、閾値を設定してもよい。さらに、最大値や最小値に基づいて閾値を設定する場合、CPU62は、複数の吸気パラメータの中から突出したものを省く処理(例えば、吸気パラメータの値が所定値以上または所定値以下になるものを無視する処理など)を行ってもよい。
【0062】
・上記実施形態のCPU62は、過去の複数回分(5回分)の呼吸における呼吸圧のピーク値に基づいて平均値を導出していたが、ピーク値とは別の値に基づいて平均値を導出してもよい。例えば、吸気期間T1が開始されてから所定時間が経過した時点での吸気圧の値に基づいて、平均値を導出してもよい。
【0063】
・上記実施形態の酸素濃縮装置11は、使用者10による持ち運びが可能な携帯形の酸素濃縮装置であったが、室内等に設置される定置形の酸素濃縮装置に適用してもよい。
【0064】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0065】
(1)上記手段1において、前記閾値設定手段は、過去の複数回分の呼吸における前記吸気パラメータの平均値に対して定数を乗じることによって得られる値を、前記閾値として設定するものであり、前記定数は0.1以上0.2以下であることを特徴とする酸素濃縮装置。
【0066】
(2)上記手段1において、1回の呼吸における吸気期間は、酸素吸入の有効度が相対的に高い前半期間と、酸素吸入の有効度が相対的に低い後半期間とからなり、前記供給制御手段は、前記前半期間中において前記酸素を供給する制御を行うことを特徴とする酸素濃縮装置。
【0067】
(3)技術的思想(2)において、前記前半期間は、前記吸気期間の60%を占めることを特徴とする酸素濃縮装置。
【0068】
(4)技術的思想(2)または(3)において、前記前半期間は、1回の呼吸における呼吸期間の20%を占めることを特徴とする酸素濃縮装置。
【符号の説明】
【0069】
10…使用者
11…酸素濃縮装置
50…酸素供給管
52…酸素供給弁
61…コンピュータ
62…閾値判定手段、供給制御手段、吸気パラメータ検知手段及び閾値設定手段としてのCPU
図1
図2
図3
図4
図5
図6