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特許7134667リポ蛋白コレステロールの定量方法、定量試薬及び定量キット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】リポ蛋白コレステロールの定量方法、定量試薬及び定量キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/92 20060101AFI20220905BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALN20220905BHJP
   C12Q 1/44 20060101ALN20220905BHJP
【FI】
G01N33/92 A
C12Q1/26
C12Q1/44
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018062143
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019174257
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 謙亨
(72)【発明者】
【氏名】伊海田 誠
(72)【発明者】
【氏名】平尾 裕子
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/105486(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/066760(WO,A1)
【文献】特開2010-156681(JP,A)
【文献】特開2005-257308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/26
C12Q 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポ蛋白を含む被検試料中のリポ蛋白コレステロールを、定量試薬を用いて定量するリポ蛋白コレステロールの定量方法であって、
前記定量試薬が、定量対象となるリポ蛋白以外のリポ蛋白中のコレステロールを消去する工程を行うための第一試薬と、定量対象となるリポ蛋白中のコレステロールを測定する工程を行うための第二試薬を含み、
前記被検試料中又は前記第一試薬中にリン脂質を添加することを含み、
前記リン脂質がリン脂質様界面活性剤(但し、陰イオン界面活性剤を除く)である、定量方法。
【請求項2】
前記リン脂質様界面活性剤がホスホリルコリン基を有する界面活性剤である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記リン脂質様界面活性剤がグリセロリン脂質である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記リン脂質様界面活性剤がホスファチジルコリン(PC)又はリゾホスファチジルコリン(LPC)である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記リン脂質様界面活性剤がスフィンゴリン脂質である請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記リポ蛋白がトリグリセリドリッチリポ蛋白(TRL)である請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記リポ蛋白がsmall, dense LDLである請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法に用いられるリポ蛋白中のコレステロールの定量試薬であって、前記第一試薬がリン脂質を含有し、前記リン脂質がリン脂質様界面活性剤(但し、陰イオン界面活性剤を除く)である定量試薬。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法に用いられるリポ蛋白コレステロールの定量キットであって、前記第一試薬及び前記第二試薬を含み、前記第一試薬がリン脂質を含み、前記リン脂質がリン脂質様界面活性剤(但し、陰イオン界面活性剤を除く)である定量キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポ蛋白中のコレステロールの定量方法、定量試薬及び定量キットに関する。
【背景技術】
【0002】
血液中に含まれるリポ蛋白は、超遠心分離による密度の違いから、カイロミクロン、超低密度リポ蛋白(以下、VLDLと呼ぶことがある)、中間密度リポ蛋白(以下、IDLと呼ぶことがある)、低密度リポ蛋白(以下、LDLと呼ぶことがある)、高密度リポ蛋白(以下、HDLと呼ぶことがある)に分けられる。近年はこれらのリポ蛋白は比重や大きさによってさらに細分化されており、例えば、LDLの中で小型で高密度のものとして、小粒子低密度リポ蛋白(以下、small, dense LDL又はsdLDLと呼ぶことがある)などがある。これらのリポ蛋白は、トリグリセリドやコレステロールなどの脂質や蛋白等の含有量が違っており、それぞれ生体内で異なった作用を示すことが知られている。
【0003】
現在までに知られているリポ蛋白中のコレステロールの測定法として、超遠心法、NMR法などが存在する。超遠心は遠心によりリポ蛋白の密度の差を利用して画分する方法であり、作業に熟練が必要なこと、日数がかかること、また費用も高額となる欠点がある。NMR法は磁気共鳴によりリポ蛋白の粒子数を計測する方法であるが、特殊な機械が必要であり、一般的ではない。
【0004】
近年、これらの煩雑な操作が不要で、自動分析装置において使用可能なダイレクト法が急速に普及してきた。HDLを測定する方法としては、例えば、特許文献1には、凝集剤として硫酸化シクロデキストリンを用いて、HDL以外のリポ蛋白を十分に反応させた後、ポリエチレングリコールで修飾した酵素を作用させて、HDL中のコレステロールを特異的に測定する方法が開示されている。特許文献2には、HDL以外のリポ蛋白に対して反応阻害性の界面活性剤と、HDLを特異的に溶解する界面活性剤を使用する方法が開示されている。特許文献3には、第一工程でHDL以外のリポ蛋白をカタラーゼで消去し、第二工程でHDLに特異的に作用する界面活性剤を用いてHDLを測定する方法が開示されている。更に特許文献4には、初めにHDL以外のリポ蛋白に対する抗体を作用させ、次いでHDLの溶解を行い、コレステロールを検出する方法が開示されている。small, dense LDLを測定する方法としては、例えば、特許文献5には、第一工程でsmall, dense LDL以外のリポ蛋白のコレステロールをsmall, dense LDL以外に作用する界面活性剤を用いて消去し、次いで残存したsmall, dense LDL中のコレステロールを定量する方法が開示されている。特許文献6には、第一工程でスフィンゴミエリナーゼを用いてsmall, dense LDL以外のLDLのリポ蛋白のコレステロールを消去し、次いで残存したsmall, dense LDL中のコレステロールを定量する方法が開示されている。また、カイロミクロン(カイロミクロンレムナントを含む)、VLDL(VLDLレムナントを含む)及びIDLを合わせた密度1.019g/cm3未満のトリグリセリドリッチリポ蛋白(TRL)の測定方法としては、特許文献7には、TRL以外のリポ蛋白のコレステロールをTRL以外に作用する界面活性剤を用いて消去し、次いで残存したTRL中のコレステロールを定量する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-131197号公報
【文献】特開平11-56395号公報
【文献】WO98/26090号公報
【文献】特開平9-96637号公報
【文献】特開2013-148589号公報
【文献】WO09/048143号公報
【文献】特開2017-209035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、被検試料中のリポ蛋白コレステロールをより正確に定量できる方法、この方法に用いられる定量試薬及び定量キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、被検試料中又は定量試薬中にリン脂質を添加することで、測定値の直線性(被検試料の希釈レベルとコレステロールの反応吸光度との相関の直線性)が向上することを見出した。この知見を利用することにより、より正確にリポ蛋白中のコレステロールを測定できることに想到し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]リポ蛋白を含む被検試料中のリポ蛋白コレステロールを、定量試薬を用いて定量するリポ蛋白コレステロールの定量方法であって、前記定量試薬が、定量対象となるリポ蛋白以外のリポ蛋白中のコレステロールを消去する工程を行うための第一試薬と、定量対象となるリポ蛋白中のコレステロールを測定する工程を行うための第二試薬を含み、前記被検試料中又は前記第一試薬中にリン脂質を添加することを含み、前記リン脂質がリン脂質様界面活性剤(但し、陰イオン界面活性剤を除く)である、定量方法。
[2]前記リン脂質様界面活性剤がホスホリルコリン基を有する界面活性剤である[1]に記載の方法。
[3]前記リン脂質様界面活性剤がグリセロリン脂質である[1]に記載の方法。
[4]前記リン脂質様界面活性剤がホスファチジルコリン(PC)又はリゾホスファチジルコリン(LPC)である[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記リン脂質様界面活性剤がスフィンゴリン脂質である[1]に記載の方法。
[6]前記リポ蛋白がトリグリセリドリッチリポ蛋白(TRL)である[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記リポ蛋白がsmall, dense LDLである[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の方法に用いられるリポ蛋白中のコレステロールの定量試薬であって、前記第一試薬がリン脂質を含有し、前記リン脂質がリン脂質様界面活性剤(但し、陰イオン界面活性剤を除く)である定量試薬。
[9][1]~[7]のいずれかに記載の方法に用いられるリポ蛋白コレステロールの定量キットであって、前記第一試薬及び前記第二試薬を含み、前記第一試薬がリン脂質を含み、前記リン脂質がリン脂質様界面活性剤(但し、陰イオン界面活性剤を除く)である定量キット。

【発明の効果】
【0009】
本発明により、被検試料中のリポ蛋白コレステロールをより正確に定量することができる新規な方法、この方法に用いられる定量試薬及び定量キットが提供された。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1-1】実施例1において、希釈系列1(ヒト血清を生理食塩水で希釈)の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図1-2】実施例1において、希釈系列2(ヒト血清をHDLを含む希釈液Aで希釈)の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図1-3】実施例1において、希釈系列3(ヒト血清をHDLを含む希釈液Bで希釈)の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図2-1】実施例2において、希釈系列4(ヒト血清を生理食塩水で希釈)の希釈レベルに対し、sdLDL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図2-2】実施例2において、希釈系列5(ヒト血清をHDLを含む希釈液Bで希釈)の希釈レベルに対し、sdLDL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図3-1】実施例1のTRL-C試薬1-1(HDL-C: 0mg/dL)を用いた場合に、希釈系列1(ヒト血清を生理食塩水で希釈)の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図3-2】実施例3のTRL-C試薬1-2(HDL-C: 2mg/dL)を用いた場合に、希釈系列1の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図3-3】実施例4のTRL-C試薬1-3(HDL-C: 3mg/dL)を用いた場合に、希釈系列1の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図4-1】実施例1のTRL-C試薬1-1(リン脂質: 0mg/dL)を用いた場合に、希釈系列1(ヒト血清を生理食塩水で希釈)の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図4-2】実施例5のTRL-C試薬1-4(リン脂質PC: 400mg/dL)を用いた場合に、希釈系列1の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図4-3】実施例6のTRL-C試薬1-5(リン脂質PC: 800mg/dL)を用いた場合に、希釈系列1の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図4-4】実施例7のTRL-C試薬1-6(リン脂質PC: 1600mg/dL)を用いた場合に、希釈系列1の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図4-5】実施例8のTRL-C試薬1-7(リン脂質LPC: 400mg/dL)を用いた場合に、希釈系列1の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図4-6】実施例9のTRL-C試薬1-8(リン脂質LPC: 800mg/dL)を用いた場合に、希釈系列1の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図4-7】実施例10のTRL-C試薬1-9(リン脂質LPC: 1600mg/dL)を用いた場合に、希釈系列1の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図5-1】実施例1のTRL-C試薬1-1(LIPIDURE 非添加)を用いた場合に、希釈系列1(ヒト血清を生理食塩水で希釈)の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図5-2】実施例11のTRL-C試薬1-10(LIPIDURE BL206)を用いた場合に、希釈系列1(ヒト血清を生理食塩水で希釈)の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図5-3】実施例12のTRL-C試薬1-11(LIPIDURE BL1002)を用いた場合に、希釈系列1の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図5-4】実施例13のTRL-C試薬1-12(LIPIDURE SF08)を用いた場合に、希釈系列1の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
図5-5】実施例14のTRL-C試薬1-13(LIPIDURE SF16)を用いた場合に、希釈系列1の希釈レベルに対し、TRL-Cの反応吸光度をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、被検試料中のリポ蛋白に含まれるコレステロールを、所望により定量試薬を用いて定量するにあたり、被検試料中又は定量試薬中にリン脂質を添加することを特徴とする。
【0012】
リポ蛋白中に含まれるコレステロールとしては、エステル型コレステロール(コレステ
ロールエステル)及び遊離型コレステロールがある。本発明において単に「コレステロー
ル」という場合にはこれらの両者を包含する。
【0013】
本発明の方法で定量しようとするリポ蛋白中のコレステロールとは、トリアシルグリセロール(トリグリセリド、中性脂肪)および、細胞の生命維持に不可欠なコレステロールを多く含む球状粒子に含まれるコレステロールである。
【0014】
コレステロールを含むリポ蛋白は、電気泳動法又は超遠心にて分類され、カイロミクロン、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中間密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、small, dense LDL、高密度リポタンパク質(HDL)等が挙げられる。また、リポ蛋白としては、カイロミクロン(カイロミクロンレムナントを含む)、VLDL(VLDLレムナントを含む)及びIDLを合わせた密度1.019g/cm3未満のトリグリセリドリッチリポ蛋白(TRL)を挙げることもできる。
【0015】
本発明の方法に供される被検試料(検体)としては、リポ蛋白を含み、リポ蛋白中のコレステロールを定量しようとするものであれば特に限定されないが、通常、血液(全血、血清及び血漿を包含する)等の体液やその希釈物である。
【0016】
本発明のリポ蛋白コレステロールの定量方法は、この分野において周知のいずれの方法をも採用することができる。例えば、定量試薬を用い、コレステロールにコレステロールオキシダーゼおよびコレステロールエステラーゼを作用させ、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼと水素供与体および水素受容体によりキノン色素に変え、該色素を吸光度測定して定量する方法が挙げられる。これらは広く用いられている周知の酵素的な定量方法であり、WO98/47005やWO98/26090にも記載されている。なお、本発明においては、被検試料中にリン脂質を添加することができれば、コレステロールをいかなる方法でも測定することができる。
【0017】
本発明において、所望により使用するコレステロールの定量試薬としては、後述するリン脂質の他に、例えば、コレステロールオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼ、ペルオキシダーゼ、水素供与体および水素受容体を含有する試薬を用いることができる。
【0018】
本発明の方法で供されるリン脂質は、部分構造としてリン酸エステルを持つ脂質であり、生体中で主に細胞膜の主要構成成分として存在している。本発明におけるリン脂質としては、グリセロールを骨格とするグリセロリン脂質やスフィンゴシンを骨格とするスフィンゴリン脂質が挙げられる。グリセロリン脂質としては、ホスファチジルコリン(PC)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルグリセロールなどが挙げられる。スフィンゴリン脂質としては、スフィンゴミエリン及びスフィンゴエタノールアミンなどが挙げられる。
【0019】
また、本発明におけるリン脂質には、リン脂質様界面活性剤、及びリン脂質を部分構造として含む物質も包含される。リン脂質様界面活性剤とは、部分構造としてリン酸エステルを持つ界面活性剤であり、リン脂質様界面活性剤としては、ホスホリルコリン基(PC基)を有する構造のものが好ましく、具体的には、LIPIDURE BL206(日油社)、LIPIDURE BL1002(日油社)、LIPIDURE SF08(日油社)、LIPIDURE SF16(日油社)などが挙げられる。リン脂質を部分構造として含む物質としては、リポ蛋白、リポソーム、細胞膜などの生体膜などが挙げられ、リポ蛋白としては、例えば、カイロミクロン、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中間密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、small, dense LDL、高密度リポタンパク質(HDL)等が挙げられる。
【0020】
本発明におけるリン脂質としてリポ蛋白を使用する場合には、本発明の方法で定量しようとするコレステロールを含むリポ蛋白とは異なるリポ蛋白を用いる。例えば、トリグリセリドリッチリポ蛋白(TRL)中のコレステロールを定量する場合には、TRLとは異なるリポ蛋白、例えば、高密度リポタンパク質(HDL)を用いることができる。
【0021】
本発明におけるリン脂質は、単独で用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明においては、反応液中に一定量以上のリン脂質が存在していれば良く、被検試料中又は定量試薬中にリン脂質を添加する。リン脂質は被検試料(検体)を希釈する際等に使用する希釈液に添加することにより、被検試料中に添加しても良く、また、リン脂質を定量試薬中に予め添加しておき、測定時に添加されるように構成しても良い。
【0023】
リン脂質の添加量は、リン脂質を被検試料中に添加する場合には、被検試料を希釈するための希釈液中のリン脂質の濃度が、通常1~1000 mg/dL、好ましくは10~500 mg/dL、更に好ましくは50~300 mg/dLの範囲となるように添加するのがよい。
【0024】
リン脂質を定量試薬中に添加する場合のリン脂質の添加量は、リン脂質の種類により異なる。例えば、リン脂質がグリセロリン脂質又はスフィンゴリン脂質に場合には、定量試薬中のリン脂質が、通常50~5000 mg/dL、好ましくは200~3000 mg/dL、更に好ましくは500~2000 mg/dLの範囲となるように添加するのがよい。また、リン脂質がリポ蛋白質の場合には、定量試薬中のリポ蛋白コレステロールが、通常0.05~100 mg/dL、好ましくは0.1~50 mg/dL、更に好ましくは0.5~10 mg/dLの範囲となるように添加するのがよい。
【0025】
本発明の方法は、リポ蛋白を含む被検試料に上記定量試薬をそのまま反応させてコレステロールを定量することも可能であるが、被検試料中の定量対象となるリポ蛋白以外のリポ蛋白中のコレステロールを選択的に消去する第1工程(工程(1))と、反応系内に残存する定量対象となるリポ蛋白中のコレステロールを定量する第2工程(工程(2))により本発明の方法を行うと、定量対象となるリポ蛋白中のコレステロールをより正確に定量することができる。
【0026】
本発明中においてリポ蛋白に対して「反応する」という言葉を用いる場合は、界面活性剤や酵素によってリポ蛋白の構造が変化し、内部のコレステロールに対して酵素が作用しやすくなることを意味する。
【0027】
本発明における工程(1)では、定量対象となるリポ蛋白以外のリポ蛋白中のコレステロールを選択的に消去する。ここで「消去」とはコレステロールを分解し、かつ、その分解物が次の工程(2)で検出されないようにすることを意味する。定量対象となるリポ蛋白以外のリポ蛋白に含まれるコレステロールを選択的に消去する方法としては、例えば被検試料に、コレステロールオキシダーゼおよびコレステロールエステラーゼを作用させ、生じた過酸化水素を除去する方法が挙げられる。過酸化水素を除去する方法としては、カタラーゼを作用させて水と酸素に分解する方法、又はペルオキシダーゼの作用により例えば過酸化水素と反応して無色キノンを生じる水素供与体化合物を無色キノンに転化する方法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
なお、第1工程において特定のリポ蛋白中のコレステロールを選択的に消去する方法は、LDLコレステロールの定量方法(例えばWO98/47005等)やHDLコレステロールの定量方法(例えばWO98/26090等)等に広く採用され、周知となっているものである。本発明の工程(1)も、これらの周知の方法により実施することが可能である。
【0029】
本発明におけるリン脂質は、上記工程(1)において添加すると、測定値の直線性(被検試料の希釈レベルとコレステロールの反応吸光度との相関の直線性)が更に向上するという点で好ましい。
【0030】
続く工程(2)では、前述した周知の方法により、前記工程(1)で消去されずに残存する定量対象となるリポ蛋白中のコレステロールを酵素的に定量する。前記工程(1)でコレステロールオキシダーゼおよびコレステロールエステラーゼを用いる場合には、工程(2)では、工程(1)で用いたコレステロールオキシダーゼおよびコレステロールエステラーゼをそのまま用いることができ、新たに添加する必要はない。
【0031】
なお、工程(1)において生じた過酸化水素をカタラーゼで分解し、工程(2)でこのカタラーゼを阻害する必要がある場合は、工程(2)において例えばアジ化ナトリウムのようなカタラーゼ阻害剤を用いてカタラーゼを阻害する。
【0032】
本発明の工程(1)および工程(2)においては、少なくとも1種の界面活性剤を用いることができる。好適な界面活性剤を用いれば、それぞれの工程における酵素反応を促進することができる。
【0033】
本発明で使用することができるコレステロールオキシダーゼとしては、コレステロールを酸化して過酸化水素を生成する能力を有する酵素であれば特に限定されず、例えば動物又は微生物由来のコレステロールオキシダーゼがあげられる。これらは、遺伝子操作により作られたものでもよく、化学修飾の有無も問わない。また、本発明で使用することができるコレステロールエステラーゼとしては、エステル型コレステロールに作用するものであれば、特に制限されるものではない。
【0034】
本発明で使用する、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼの各酵素の使用量は、特に制限されるものではなく、適宜設定できるが、通常、0.001U~2000U/mLで、好ましくは0.1~1000U/mLで使用される。
【0035】
本発明で使用する水素供与体としてはアニリン誘導体が好ましく、アニリン誘導体としてはN-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン(TOOS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン(MAOS)、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン(TOPS)、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン(HDAOS)、N-(3-スルホプロピル)アニリン(HALPS)、N-(3-スルホプロピル)-3-メトキシ-5-アニリン(HMMPS)等があげられる。
【0036】
水素受容体としては4-アミノアンチピリンやメチルベンゾチアゾロンヒドラゾン等を用いることができる。
【0037】
反応液には通常の生化学反応に用いられる各種の緩衝液を使用することができ、緩衝液のpHは5~8の間であるのが好ましい。溶液としては、グッド、トリス、リン酸、グリシンの緩衝溶液が好ましく、グッド緩衝液であるビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシエチル)メタン(Bis-Tris)、ピペラジン-1、4-ビス(2-エタンスルフォン酸)(PIPES)、ピペラジン-1、4-ビス(2-エタンスルフォン酸)、1.5ナトリウム塩、一水和物(PIPES1.5Na)、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、N、N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルフォン酸(BES)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルフォン酸(HEPES)およびピペラジン-1、4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルフォン酸)(POPSO)が好ましい。
【0038】
本発明における各工程は、pH5~pH10で行うことが好ましく、pH6~pH8で行うことがさらに好ましい。
【0039】
反応温度は各工程とも20℃~45℃で行うことが好ましく、25℃~40℃で行うことがさらに好ましい。反応時間は各工程とも1~10分間で行うことが好ましく、3~7分で行うことがさらに好ましい。
【0040】
本発明の定量方法を実施するに当たり、用いる試薬を複数の試薬組成物に分けてもよい。本発明においては、試薬としては例えば定量対象となるリポ蛋白以外のリポ蛋白中のコレステロールを消去する工程(すなわち工程(1))を行うための試薬組成物(第一試薬)と、定量対象となるリポ蛋白中のコレステロールを測定する工程(すなわち工程(2))を行うための試薬組成物(第二試薬)の2種類の試薬組成物を調製し、これら2種類の試薬組成物を組み合わせたものをリポ蛋白コレステロールの定量キットとすることができる。
【0041】
工程(1)を行うための試薬組成物には、上述したような定量対象となるリポ蛋白以外のリポ蛋白中のコレステロールを消去するのに適した界面活性剤が含まれる。該試薬組成物にはさらに、コレステロールオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼ、アニリン誘導体等の水素供与体、過酸化水素を消去するカタラーゼ等を含ませればよい。
【0042】
工程(2)を行うための試薬組成物には、少なくとも、上記したようなすべてのリポ蛋白に対して反応する界面活性剤が含まれる。該試薬組成物にはさらに、4-アミノアンチピリン等の水素受容体、ペルオキシダーゼ等を含ませることができる。
【0043】
本発明におけるリン脂質は、工程(1)を行うための試薬組成物(第一試薬)中に含有させると、測定値の直線性(被検試料の希釈レベルとコレステロールの反応吸光度との相関の直線性)が更に向上するという点で好ましい。
【0044】
試薬組成物中のリン脂質の含有量はリン脂質の種類により異なるが、リン脂質がグリセロリン脂質又はスフィンゴリン脂質に場合には、試薬組成物中のリン脂質の濃度は、通常50~5000 mg/dL、好ましくは200~3000 mg/dL、更に好ましくは500~2000 mg/dLの範囲である。また、リン脂質がリポ蛋白質の場合には、試薬組成物中のリポ蛋白コレステロールの濃度は、通常0.05~100 mg/dL、好ましくは0.1~50 mg/dL、更に好ましくは0.5~10 mg/dLの範囲である。
【0045】
工程(1)を行うための試薬組成物及び工程(2)を行うための試薬組成物には、必要に応じて、1価の陽イオン(例えば一価の金属イオン)、2価の陽イオン(例えば二価の金属イオン)もしくはそれらの塩、ポリアニオン(例えばヘパリン、デキストラン硫酸塩、リンタングステン酸塩)、血清アルブミンを添加してもよい。また、各試薬組成物のpHは、中性付近、例えばpH5~pH9、好ましくはpH6~8であり、緩衝液を添加してpHを調整すればよい。
【0046】
本発明の方法によりを定量対象となるリポ蛋白中のコレステロールを定量するには、被検試料に工程(1)を行うための試薬組成物を添加し反応させ、次いで工程(2)を行うための試薬組成物を添加し反応させ、吸光度を測定することにより行えばよい。
【0047】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0048】
実施例1
市販のHDL濃縮液(BRT社)を、HDL-C濃度が約50mg/dLになるように生理食塩水で希釈した希釈液A、およびHDL-C濃度が約100mg/dLになるように生理食塩水で希釈した希釈液Bを調製した。
【0049】
ヒト血清1を、生理食塩水を用いて下記表1の通りに5段階希釈した希釈系列1、希釈液Aを用いて下記表2の通りに5段階希釈した希釈系列2、希釈液Bを用いて下記表3の通りに5段階希釈した希釈系列3を調製した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-1)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0054】
第一試薬(TRL-C試薬1-1)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
【0055】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0056】
TRL-C測定用試薬を用いて、希釈系列1、希釈系列2、希釈系列3を検体としたときの反応吸光度を、日立7180型自動分析装置により、以下の方法で測定した。
検体3μLに第一試薬を150μL加え、37℃で5分間反応させ、次いで、第二試薬を50μL加えて5分間反応させた後に、反応吸光度を主波長600nm、副波長700nmで測定した。
【0057】
希釈系列1、希釈系列2、希釈系列3の各希釈レベルをx軸に、TRL-Cの反応吸光度をy軸にしたときの結果を図1-1~図1-3に示す。
図1に示したように、生理食塩水を用いて調製された希釈系列1に比べ、HDLを含む希釈液A又は希釈液Bを用いて調製された希釈系列2および希釈系列3の方が良好な希釈直線性を示した。
【0058】
実施例2
ヒト血清2を、生理食塩水を用いて下記表4の通りに5段階希釈した希釈系列4、実施例1に記載の希釈液Bを用いて下記表5の通りに5段階希釈した希釈系列5を調製した。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
デンカ生研社製のsdLDL-C測定用試薬を用いて、希釈系列4、希釈系列5を検体としたときの反応吸光度を、日立7180型自動分析装置により、以下の方法で測定した。
検体3μLに第一試薬を150μL加え、37℃で5分間反応させ、次いで、第二試薬を50μL加えて5分間反応させた後に、反応吸光度を主波長600nm、副波長700nmで測定した。
【0062】
希釈系列4、希釈系列5の各希釈レベルをx軸に、sdLDL-Cの反応吸光度をy軸にしたときの結果を図2-1及び図2-2に示す。
図2に示したように、生理食塩水を用いて調製された希釈系列4に比べ、HDLを含む希釈液Bを用いて調製された希釈系列5の方が良好な希釈直線性を示した。
【0063】
実施例3
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-2)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0064】
第一試薬(TRL-C試薬1-2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
HDL濃縮液 2mg/dL(HDL-C)
【0065】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0066】
実施例4
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-3)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0067】
第一試薬(TRL-C試薬1-3)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
HDL濃縮液 3mg/dL(HDL-C)
【0068】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0069】
実施例1、実施例3~4に記載のTRL-C測定用試薬を用いて、実施例1に記載の希釈系列1を検体としたときのTRL-Cの反応吸光度を、実施例1と同様の方法でそれぞれ測定した。希釈系列の希釈レベルをx軸に、TRL-Cの反応吸光度をy軸にしたときの結果を図3-1~図3-3に示す。
図3-1~図3-3に示したように、HDLを含まないTRL-C試薬を使用して測定した場合に比べ、HDLを含むTRL-C試薬を使用して測定した場合の方が良好な希釈直線性を示した。
【0070】
実施例5
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-4)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0071】
第一試薬(TRL-C試薬1-4)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
リン脂質(ホスファチジルコリン(PC)) 400mg/dL
【0072】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0073】
実施例6
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-5)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0074】
第一試薬(TRL-C試薬1-5)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
リン脂質(ホスファチジルコリン(PC)) 800mg/dL
【0075】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0076】
実施例7
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-6)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0077】
第一試薬(TRL-C試薬1-6)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
リン脂質(ホスファチジルコリン(PC)) 1600mg/dL
【0078】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0079】
実施例8
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-7)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0080】
第一試薬(TRL-C試薬1-7)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
リン脂質(リゾホスファチジルコリン(LPC)) 400mg/dL
【0081】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0082】
実施例9
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-8)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0083】
第一試薬(TRL-C試薬1-8)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
リン脂質(リゾホスファチジルコリン(LPC)) 800mg/dL
【0084】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0085】
実施例10
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-9)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0086】
第一試薬(TRL-C試薬1-9)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
リン脂質(リゾホスファチジルコリン(LPC)) 1600mg/dL
【0087】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0088】
実施例1、実施例5~10に記載のTRL-C測定用試薬を用いて、実施例1に記載の希釈系列1を検体としたときのTRL-Cの反応吸光度を、実施例1と同様の方法でそれぞれ測定した。希釈系列の希釈レベルをx軸に、TRL-Cの反応吸光度をy軸にしたときの結果を図4-1~図4-7に示す。
図4-1~図4-7に示したように、リン脂質を含まないTRL-C試薬を使用して測定した場合に比べ、リン脂質を含むTRL-C試薬を使用して測定した場合の方が良好な希釈直線性を示した。
【0089】
実施例11
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-10)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0090】
第一試薬(TRL-C試薬1-10)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
リン脂質様界面活性剤(LIPIDURE BL206(日油社)) 0.25%(w/v)
【0091】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0092】
実施例12
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-11)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0093】
第一試薬(TRL-C試薬1-11)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
リン脂質様界面活性剤(LIPIDURE BL1002(日油社)) 0.25%(w/v)
【0094】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0095】
実施例13
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-12)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0096】
第一試薬(TRL-C試薬1-12)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
リン脂質様界面活性剤(LIPIDURE SF08(日油社)) 0.25%(w/v)
【0097】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0098】
実施例14
以下の第一試薬(TRL-C試薬1-13)、第二試薬(TRL-C試薬2)からなるTRL-C測定用試薬を調製した。
【0099】
第一試薬(TRL-C試薬1-13)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
コレステロールエステラーゼ 2U/mL
コレステロールオキシダーゼ 2U/mL
カタラーゼ 1200U/mL
TOOS 2.0mmol/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[HLB:12.8] 0.25%(w/v)
リン脂質様界面活性剤(LIPIDURE SF16(日油社)) 0.25%(w/v)
【0100】
第二試薬(TRL-C試薬2)
PIPES,pH6.8 50mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 20単位/mL
アジ化ナトリウム 0.05%(w/v)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5%(w/v)
【0101】
実施例1、実施例11~14に記載のTRL-C測定用試薬を用いて、実施例1に記載の希釈系列1を検体としたときのTRL-Cの反応吸光度を、実施例1と同様の方法でそれぞれ測定した。希釈系列の希釈レベルをx軸に、TRL-Cの反応吸光度をy軸にしたときの結果を図5-1~図5-5に示す。
図5-1~図5-5に示したように、リン脂質様界面活性剤を含まないTRL-C試薬を使用して測定した場合に比べ、リン脂質様界面活性剤を含むTRL-C試薬を使用して測定した場合の方が良好な希釈直線性を示した。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図4-7】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】