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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】ドア高さ調整治具
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/00 20060101AFI20220905BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
E06B3/00 E
E04G21/18 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018065556
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019173497
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】藤本 春美
(72)【発明者】
【氏名】田中 秋水
(72)【発明者】
【氏名】野村 勇樹
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-062112(JP,U)
【文献】実開昭60-191636(JP,U)
【文献】特開2003-253954(JP,A)
【文献】登録実用新案第3023815(JP,U)
【文献】実開平04-104977(JP,U)
【文献】実開平06-076522(JP,U)
【文献】特開平11-241413(JP,A)
【文献】特開2005-180471(JP,A)
【文献】実開昭53-157524(JP,U)
【文献】特開平06-036496(JP,A)
【文献】米国特許第05566414(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/00
E04G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア高さ調整治具であって、
ドアが載置される載置面と、前記載置面に乗せられた前記ドアと当接する立ち上り部を有する載置部材と、
該載置部材の高さを調整する調整部材と、を備え、
前記載置部材は、前記載置面と反対側の面である第1底面を有し、
該第1底面の一部には、前記載置面に向かう方向に凹む凹部が設けられて傾斜部が形成されており、
該傾斜部に前記調整部材が挿入されることで前記載置面が上昇し、
前記第1底面は、該傾斜部に前記調整部材が挿入されることで前記載置面が上昇する以前において、床面に接する面であることを特徴とするドア高さ調整治具。
【請求項2】
前記調整部材は、前記傾斜部と当接する当接面と、
該当接面と反対側の面である第2底面と、を有し、
前記傾斜部に前記当接面が当接しつつ前記調整部材が挿入されることで前記載置面が上昇することを特徴とする請求項1に記載のドア高さ調整治具。
【請求項3】
前記載置部材において前記第1底面と前記傾斜部がなす角度である第1傾斜角度が、
前記調整部材において前記第2底面と前記当接面がなす角度である第2傾斜角度と略同一であることを特徴とする請求項2に記載のドア高さ調整治具。
【請求項4】
前記調整部材を牽引可能に取り付けられた牽引部材を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のドア高さ調整治具。
【請求項5】
前記傾斜部及び前記当接面の少なくとも一方には、すべり止めが設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のドア高さ調整治具。
【請求項6】
前記第1底面及び前記第2底面の少なくとも一方には、すべり止めが設けられていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載のドア高さ調整治具。
【請求項7】
前記載置部材には、前記調整部材を挿入する方向を示す目印が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のドア高さ調整治具。
【請求項8】
前記載置部材は、前記載置面に前記ドアが載置された場合に前記ドアを跨いで配置される前面と後面を備え、
前記傾斜部が、前記前面から前記後面に向かう方向に対して傾いて設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のドア高さ調整治具。
【請求項9】
前記第1底面には、前記傾斜部が複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のドア高さ調整治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア高さ調整治具に係り、特に、ドアの施工に際し、ドアの吊り込み時にドアの高さを調整するために用いられるドア高さ調整治具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドア(ドアパネル)の取り付けは、作業者がドアを持ち上げて支持した状態で、ドアをドア枠に吊り込むことによって行われる。手作業でドアの吊り込みを行う場合、作業が煩雑であった。そこで、吊り込み時におけるドアの高さ調整を目的としたドア高さ調整治具が報告されている。
【0003】
特許文献1には、支持部に揺動自在に軸支した本体の一端にペダル部を設け、支持部を挟んだ他端にドアの支承部を水平方向、かつ上下方向に所定範囲回動可能に装着したドア吊り込み治具が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ドア受け部材の両端部に、ドア受け部材の高さを調整可能に支持する高さ調整部材を設けたドア取付け治具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平7-23718号公報
【文献】実開平4-104977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、高さ寸法が大きいドアや、隠し丁番仕様のドアなどが採用されることがあるが、高さ寸法が大きいドアや隠し丁番使用のドアは、従来のドアと比較して吊り込み時の位置合わせ等が困難である。従来のドア高さ調整治具は、その構造上、隠し丁番仕様のドアの施工時など、限られたスペースにおいて使用することが困難であった。
【0007】
このように、限られたスペースにおける吊り込み時におけるドアの高さ調整の実施が課題となっている。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、隠し丁番仕様のドアの吊り込み時など、限られたスペースにおいてもドアの位置合わせ等の作業がしやすいドア高さ調整治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明のドア高さ調整治具によれば、ドア高さ調整治具であって、ドアが載置される載置面と、前記載置面に乗せられた前記ドアと当接する立ち上り部を有する載置部材と、該載置部材の高さを調整する調整部材と、を備え、前記載置部材は、前記載置面と反対側の面である第1底面を有し、該第1底面の一部には、前記載置面に向かう方向に凹む凹部が設けられて傾斜部が形成されており、該傾斜部に前記調整部材が挿入されることで前記載置面が上昇し、前記第1底面は、該傾斜部に前記調整部材が挿入されることで前記載置面が上昇する以前において、床面に接する面であることにより解決される。
【0010】
上記のように構成された本発明のドア高さ調整治具によれば、調整部材の傾斜部に対する挿入具合を調整することで、ドアの吊り込み時にドアの高さを微調整することができると共に、ドア枠側に設けられた丁番取付部に対してドアを滑らせるようにして取り付けることができるため、隠し丁番仕様のドアの吊り込み時など、限られたスペースにおいてもドアの位置合わせ等の作業を容易に行うことが可能となる。
また、立ち上り部がドアと当接することで、載置面からのドアの脱落を防止することができる。
【0011】
また、上記の構成において、前記調整部材は、前記傾斜部と当接する当接面と、該当接面と反対側の面である第2底面と、を有し、前記傾斜部に前記当接面が当接しつつ前記調整部材が挿入されることで前記載置面が上昇するとよい。
上記の構成では、調整部材の当接面と、載置部材の傾斜部が当接しつつ調整部材の挿入が行われるため、載置部材を徐々に上昇させることができるとともに、上昇させた載置部材の位置が安定したものとなる。
【0012】
また、上記の構成において、記載置部材において前記第1底面と前記傾斜部がなす角度である第1傾斜角度が、前記調整部材において前記第2底面と前記当接面がなす角度である第2傾斜角度と略同一であるとよい。
上記の構成では、載置部材に対する調整部材の挿入を適切に行うことが可能となるとともに、載置部材と調整部材の係合状態が安定したものとなる。
【0013】
また、上記の構成において、前記調整部材を牽引可能に取り付けられた牽引部材を備えるとよい。
上記の構成では、ドアの取り付け作業が終了した後に、牽引部材を牽引して、載置部材から調整部材を分離することが可能となる
【0014】
また、上記の構成において、前記傾斜部及び前記当接面の少なくとも一方には、すべり止めが設けられているとよい。
上記の構成では、載置部材の傾斜部に調整部材を挿入した際に、傾斜部と当接面の間にすべり止めが設けられていることで、調整部材が載置部材に対して挿入方向と逆側にずれることを防止することが可能となる。
【0015】
また、上記の構成において、前記第1底面及び前記第2底面の少なくとも一方には、すべり止めが設けられているとよい。
上記の構成では、載置部材や調整部材が、床面に対して滑ってしまうことを防止することができる。
【0016】
また、上記の構成において、前記載置部材には、前記調整部材を挿入する方向を示す目印が設けられているとよい。
上記の構成では、載置部材に対して、調整部材を挿入する方向が把握できる。
【0017】
また、上記の構成において、前記載置部材は、前記載置面に前記ドアが載置された場合に前記ドアを跨いで配置される前面と後面を備え、前記傾斜部が、前記前面から前記後面に向かう方向に対して傾いて設けられているとよい。
上記の構成では、傾斜部が底面において傾いて形成されていることで、載置部材の傾斜部に挿入された調整部材が、傾斜部に対して挿入方向と逆側にずれることが好適に防止される。
【0018】
また、上記の構成において、前記第1底面には、前記傾斜部が複数設けられているとよい。
上記の構成では、載置部材に複数の傾斜部が設けられているため、ドアにおいて丁番が取り付けられる位置が左右どちらの端部にある場合であっても、適切な傾斜部を選択して調整部材を挿入することで対応することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るドア高さ調整治具によれば、隠し丁番仕様のドアの吊り込み時など、限られたスペースにおいてもドアの位置合わせ等の作業を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】本発明の一実施形態に係るドア高さ調整治具を構成する載置部材の外観図である。
図1B】本発明の一実施形態に係るドア高さ調整治具を構成する載置部材を底面から見た場合の外観図である。
図2】本発明の一実施形態に係るドア高さ調整治具を構成する調整部材の外観図である。
図3A】本発明の一実施形態に係るドア高さ調整治具の使用手順を示す図であり、載置部材に調整部材を挿入する前の状態を示す図である。
図3B】本発明の一実施形態に係るドア高さ調整治具の使用手順を示す図であり、載置部材に調整部材を挿入した状態を示す図である。
図3C】本発明の一実施形態に係るドア高さ調整治具の使用手順を示す図であり、載置部材に調整部材を挿入して載置面を上昇させた状態を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るドア高さ調整治具を用いてドアを吊り込む際の様子を示す図である。
図5】本発明の第1の変形例に係る載置部材の底面図である。
図6A】本発明の第2の変形例に係る載置部材の外観図である。
図6B】本発明の第2の変形例に係る載置部材を底面から見た場合の外観図である。
図7A】本発明の第3の変形例に係る載置部材の外観図である。
図7B】本発明の第3の変形例に係る載置部材を底面から見た場合の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係るドア高さ調整治具の構成について図1乃至4を参照しながら説明する。図1A及び図1Bは、本実施形態に係るドア高さ調整治具1を構成する載置部材の外観図である。なお、図1には、矢印にて載置部材の前後方向、高さ方向、幅方向を図示している。図2は、本実施形態に係るドア高さ調整治具1を構成する調整部材の外観図である。なお、図2には、矢印にて調整部材の前後方向、高さ方向、幅方向を図示している。図3A乃至3Cは、ドア高さ調整治具の使用手順を示す図であり、図3A及び図3Bの順に状態が遷移する。図3Aは、載置部材に調整部材を挿入する前の状態を示す図であり、図3Bは、載置部材に調整部材を挿入した状態を示す図であり、図3Cは、載置部材に調整部材を挿入して載置面を上昇させた状態を示す図である。なお、図3A乃至図3Cには、矢印にてドア高さ調整治具の前後方向、高さ方向、幅方向及び調整部材の挿入方向を図示している。図4は、本実施形態に係るドア高さ調整治具を用いてドアを吊り込む際の様子を示す図である。図5は、本発明の第1の変形例に係る載置部材の底面図である。なお、図5には、矢印にて調整部材の前後方向、幅方向を図示している。図6Aは、本発明の第2の変形例に係る載置部材の外観図であり、図6Bは、本発明の第2の変形例に係る載置部材を底面から見た場合の外観図である。図7Aは、本発明の第3の変形例に係る載置部材の外観図であり、図7Bは、本発明の第3の変形例に係る載置部材を底面から見た場合の外観図である。なお、図6A乃至7Bには、矢印にて載置部材の前後方向、高さ方向、幅方向を図示している。
【0022】
<ドア高さ調整治具1>
先ず、本実施形態に係るドア高さ調整治具1の用途、材質及び形状等について説明する。
本実施形態に係るドア高さ調整治具1(以下、単にドア高さ調整治具1)は、ドアの施工に際し、ドア(ドアパネル)をドア枠に吊り込む際に用いられるものである。ドア高さ調整治具1は、ドアが載置される載置部材10(図1A及び図1B)と、載置部材10の高さを調整する調整部材20(図2)を主構成要素として備えている。
【0023】
(載置部材10)
載置部材10は、樹脂、弾性を有するエラストマー材料、木材、金属などの材料で形成されており、図1A及び図1Bに示すように、底面11と、底面11と反対側の面であり、ドアが載置される載置面12とを有している。また、載置部材10は、後述する調整部材20が挿入される方向(前後方向)に前面13及び後面14を有し、調整部材20が挿入される方向と直交する方向(幅方向)に側面15a,15bを有している。載置面12にドアが載置された場合に前面13と後面14は、ドアを跨いで配置されることになる。
【0024】
底面(第1底面)11は、ドア高さ調整治具1の使用時に床面と接する面である。底面11には、載置面12に向かう方向に傾斜した傾斜部11aが設けられている。換言すると、底面11には、載置面12に向かう方向に凹む凹部が設けられて傾斜部11a(つまり、傾斜凹部)が形成されている。より詳細には、傾斜部11aは、底面11において、前面13に近い側、詳細には、底面11と前面13との境界を起点として、後面14に向かうにつれて傾斜部11aの高さが高くなるように傾斜している。ここで、図1Bに示すように、底面11と傾斜部11aがなす角度を第1傾斜角度α1とする。
【0025】
傾斜部11aは、底面11において前面13との境界から後面14との境界に渡って設けられているため(換言すると、傾斜部11aが底面11において、載置部材10の前後方向の前端から後端に渡って設けられているため)、載置部材10の鉛直方向への上昇を適切に行うことができる。
【0026】
載置面12は、ドア高さ調整治具1の使用時にドア(ドアパネル)が載置される面である。載置面12には、ドアと当接して、ドアの脱落を防止するための立ち上り部12a(前側の立ち上り部12a)及び立ち上り部12b(後側の立ち上り部12b)が、調整部材20が挿入される方向(前後方向)に1つずつ、載置面12から上方に垂直に延出するように設けられている。
【0027】
載置面12の表面には、例えば、発泡体などの材料で形成されたクッション部材16が設けられており、載置面12にドアを載置した際に生じる衝撃を緩衝する役割、及び、載置面12に載置されたドアの一部を保護する役割を果たしている。
【0028】
また、傾斜部11aには、摩擦力が高められたすべり止め17が設けられており、傾斜部11aに挿入された調整部材20が移動してずれることを防止される。
【0029】
さらに、図1Aに示すように、後面14側の立ち上り部12bの上面には、前面13に向かう方向(換言すると、ドア高さ調整治具1の前方)を指し示す目印19が形成されている。目印19が形成されていることにより、調整部材20を挿入する方向が把握できるようになっている。目印19が、後面14側の立ち上り部12bに形成されていることで、作業者が載置部材10を上方から見た際に、傾斜部11aが見えにくい場合であっても、調整部材20を挿入する方向を把握可能である。
【0030】
(調整部材20)
調整部材20は、樹脂、木材、金属などの材料で形成されており、図2に示すように、底面21(第2底面)と、底面21の反対側の面であり底面21に対して傾斜して設けられた当接面22を有している。また、調整部材20は、載置部材10への挿入方向と直交する方向(幅方向)に側面23a,23bを有している。さらに、調整部材20は、その長手方向(前後方向)において、底面21と当接面22の起点となる先端部24を有し、先端部24とは反対側の後端に被押圧面25を有している。
【0031】
底面21(第2底面)は、ドア高さ調整治具1の使用時に床面と接する面である。底面21には、すべり止め21aが設けられており、調整部材20が床面に対して滑ってしまうことが防止されるようになっている。すべり止め21aは、例えば、テフロンテープを底面21に貼付するなどして形成されている。
【0032】
当接面22は、図2に示すように、底面21と第2傾斜角度α2をなして形成された面であり、ドア高さ調整治具1の使用時に載置部材10の傾斜部11aと当接する面である。ここで、第2傾斜角度α2は、第1傾斜角度α1と略同一、例えば、第2傾斜角度α2と第1傾斜角度α1の差が±5°以下となるように設定されていると好適である。第1傾斜角度α1と第2傾斜角度α2が大きく異なる場合と比較して、載置部材10に対する調整部材20の挿入を適切に行うことが可能となるとともに、載置部材10と調整部材20を組み合わせた際の係合状態が安定したものとなる。
【0033】
当接面22には、摩擦力が高められたすべり止め26が設けられており、傾斜部11aに調整部材20を挿入した際に、傾斜部11aに設けられたすべり止め17と当接することで、調整部材20が挿入方向と逆側(ドア高さ調整治具1の後方)にずれることが防止される。
【0034】
側面23a,23bにおいて、先端部24よりも被押圧面25に近い側には、貫通孔が形成され、紐状部材である牽引部材27が挿通されている。牽引部材27を先端部24から被押圧面25に向かう方向(つまり、調整部材20の挿入方向と逆方向)に牽引することで、載置部材10の傾斜部11aに挿入された調整部材20を引き抜くことが可能となっている。
【0035】
<ドア高さ調整治具1を用いたドアの吊り込み方法>
次に、ドア高さ調整治具1を用いたドアの吊り込み方法について、図3A乃至3C及び図4を参照して説明する。
まず、図3Aに示す状態で載置部材10の載置面12にドアを載置する。このとき、載置部材10の立ち上り部12aと立ち上り部12bとの間にドアを挟み込むようにしてドアを載置する(図4)。図4に示すように、載置部材10の傾斜部11aが作業者から視認可能となるように、後面14が作業者側に位置するように配置する。換言すると、目印19が設けられた立ち上り部12bが作業者側に位置するように配置する。
【0036】
次に、図3Bに示すように、調整部材20の被押圧面25を、ハンマー等の器具を用いて少しずつ叩くなどして、押圧することで、載置部材10の傾斜部11aに対して、調整部材20の先端部24を挿入し、傾斜部11aと当接面22を当接させる。そして、載置部材10の傾斜部11aに、調整部材20の当接面22を当接させつつ、調整部材20を挿入する。
【0037】
そして、図3Cに示すように、調整部材20の被押圧面25を押圧して、傾斜部11aと当接面22が当接した状態で、調整部材20を載置部材に挿入することで、載置部材10の載置面12が上方へと上昇する。したがって、載置部材10の載置面12に載置されたドアが上方へと上昇することになる。
【0038】
ドア高さ調整治具1は、隠し丁番仕様のドアの吊り込み時など、限られたスペースにおいてもドアの位置合わせ等の作業を容易に行うことが可能である。例えば、図4に示すように、ドア100には、隠し丁番仕様の丁番101が取り付けられており、ドア枠200の丁番取付部201に丁番101が係合するようにドアの吊り込みが行われる。このとき、ドア100が載置された載置部材10の傾斜部11aに対して、作業者が調整部材20の被押圧面25を押圧して、調整部材20を徐々に挿入することで、載置面12の高さ、つまりドア100の高さを徐々に高くすることが可能となる。適切な高さにドア100が配置された後に、ドア高さ調整治具1及びドア100を滑らせるようにして移動させ、丁番101を丁番取付部201に対して係合・固定して、ドア100をドア枠200に取り付ける。
【0039】
このとき、図4におけるドア100の裏面には、載置部材10の前側の立ち上り部12a及び調整部材20の先端部24に近い部分が位置し、ドア100の表面(作業者側、つまり、調整部材20の被押圧面25が位置する側)には、載置部材10の後側の立ち上り部12b及び調整部材20の被押圧面25に近い部分が位置するのみである。したがって、ドア高さ調整治具1によれば、複雑な機構や、大きな動作を伴う部材を用いる必要がないため、限られたスペースにおいてもドアの位置合わせ等の作業を容易に行うことが可能である。
【0040】
ドア100の取り付け作業が終了した後、牽引部材27を調整部材20の先端部24から被押圧面25に向かう方向(つまり、挿入方向と逆方向)に牽引して、載置部材10から調整部材20を分離する。そして、載置部材10をドア100の幅方向にスライドさせてドア100から分離して、作業が終了する。
【0041】
<ドア高さ調整治具1の作用>
以上説明したドア高さ調整治具1によれば、調整部材20の傾斜部11aに対する挿入具合を調整することで、ドア100(ドアパネル100)の吊り込み時にドア100の高さを微調整することができると共に、ドア枠200側に設けられた丁番取付部201に対してドア100を滑らせるようにして取り付けることができるため、隠し丁番仕様のドア100の吊り込み時など、限られたスペースにおいてもドア100の位置合わせ等の作業を容易に行うことが可能となる。また、ドア高さ調整治具1を用いることで、ドア100のドア枠200に配置する位置決め精度を向上させることができる。
【0042】
ドア高さ調整治具1によれば、調整部材20が、傾斜部11aと当接する当接面22と、当接面22と反対側の面である底面21と、を有し、傾斜部11aに当接面22が当接しつつ調整部材20が挿入されるため、載置部材10を徐々に上昇させることができるとともに、上昇させた載置部材10の位置が安定したものとなる。
【0043】
ドア高さ調整治具1によれば、載置部材10において底面11と傾斜部11aがなす角度である第1傾斜角度α1が、調整部材20において底面21と当接面22がなす角度である第2傾斜角度α2と略同一であるため、載置部材10に対する調整部材20の挿入を適切に行うことが可能となるとともに、載置部材10と調整部材20の係合状態が安定したものとなる。
【0044】
ドア高さ調整治具1によれば、載置部材10の底面11において前面13との境界から後面14との境界に渡って設けられているため(換言すると、傾斜部11aが底面11において、載置部材10の前後方向の前端から後端に渡って設けられているため)、載置部材10の鉛直方向への上昇を適切に行うことができる。
【0045】
ドア高さ調整治具1によれば、載置部材10の載置面12に、載置面12に乗せられたドア100と当接する立ち上り部12a,12bが設けられているため、立ち上り部12a,12bがドアと当接することで、載置面12からのドア100の脱落を防止することができる。
【0046】
ドア高さ調整治具1によれば、調整部材20が、調整部材20を牽引可能に取り付けられた牽引部材27を備えるため、ドア100の取り付け作業が終了した後に、牽引部材27を牽引して、載置部材10から調整部材20を分離することが可能となる。
【0047】
ドア高さ調整治具1によれば、傾斜部11a及び当接面22の少なくとも一方に、すべり止めが設けられているため、載置部材10の傾斜部11aに調整部材20を挿入した際に、調整部材20が載置部材10に対して挿入方向と逆側(換言すると、前面13から後面14に向かう方向)にずれることを防止することが可能となる。
【0048】
ドア高さ調整治具1によれば、載置部材10の底面11及び調整部材20の底面21の少なくとも一方には、すべり止めが設けられているため、載置部材10や調整部材20が、床面に対して滑ってしまうことを防止することができる。
【0049】
ドア高さ調整治具1によれば、載置部材の10の載置面12には、クッション部材16が設けられているため、載置面12にドア100を載置した際に生じる衝撃を緩衝したり、載置面12に載置されたドア100の一部を保護したりすることが可能となる。
【0050】
ドア高さ調整治具1によれば、載置部材10には、調整部材20を挿入する方向を示す目印19が設けられているため、載置部材10に対して、調整部材20を挿入する方向が把握できる。
【0051】
<変形例>
以上までに、本発明の一実施形態に係るドア高さ調整治具1の構成について説明してきたが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0052】
特に、ドア高さ調整治具1の構造、材質、形状及び寸法等については、上記の実施形態の中で説明した内容に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて任意に設計することが可能である。
【0053】
本実施形態の第1の変形例に係るドア高さ調整治具の載置部材10Xを、図5を参照して説明する。載置部材10Xは、図5に示すように、傾斜部11xが、後面14と前面13の間において、側面15aから側面15b近付く方向へと傾いて形成されている。このとき、傾斜部11xの傾斜角度が、調整部材20の底面21と当接面22とがなす角(上述の第2傾斜角度α2)と略同一となるように形成されている。このように、傾斜部11xが底面11において傾いて形成されていることで、載置部材10Xの傾斜部11xに挿入された調整部材20が、傾斜部11xに対して挿入方向と逆側にずれることが好適に防止される。
【0054】
また、調整部材20に加え、追加の調整部材を組み合わせるように構成することも可能である。例えば、図2に示す調整部材20の底面に追加の傾斜部を設け、該追加の傾斜部に挿入可能な形状の追加の調整部材を用意することも可能である。
【0055】
また、図1A及び図1Bに示す載置部材10では、1つの傾斜部11aのみを設けた例を示したが、載置部材に複数の傾斜部、例えば2つの傾斜部を設けることも可能である。以下に、2つの傾斜部を備える載置部材について、図6A乃至図7Bを参照して説明をする。
【0056】
本実施形態の第2の変形例に係るドア高さ調整治具の載置部材10Yを、図6A及び図6Bを参照して説明する。図6A及び図6Bに示すように、載置部材10Yの底面11Yには、載置面12に向かう方向に傾斜した2つの傾斜部が設けられている。具体的に説明すると、底面11Yには、載置面12に向かう方向に凹む凹部が2つ設けられており、第1傾斜部11Yaと第2傾斜部11Ybが形成されている。このとき、第1傾斜部11Yaの傾斜角度及び第2傾斜部11Ybの傾斜角度が、調整部材20の底面21と当接面22とがなす角(上述の第2傾斜角度α2)とそれぞれ略同一となるように形成されている。
【0057】
第1傾斜部11Yaは、側面15a及び後面14にまたがる位置に設けられ、載置部材10Yの底面11Yにおいて前後方向(前面13と後面14に直交する方向)に延在する開始線SY(換言すると、載置面12Yに載置されるドアの表面と裏面に対して直交する方向に延在する開始線SY)から後面14に向かうにつれて第1傾斜部11Yaの高さが高くなるように傾斜している。また、図6Bに示すように、第1傾斜部11Yaは、後面14Yから前面13に向かうのに従って、側面15aから側面15bへと近付く方向へと傾いて形成されている。
【0058】
また、第2傾斜部11Ybは、側面15b及び後面14にまたがる位置に設けられ、第1傾斜部11Yaと共通の開始線SYから後面14に向かうにつれて第2傾斜部11Ybの高さが高くなるように傾斜している。図6Bに示すように、第2傾斜部11Ybは、後面14と前面13に向かうのに従って、側面15bから側面15aへと近付く方向へと傾いて形成されている。
【0059】
本実施形態の第3の変形例に係るドア高さ調整治具の載置部材10Zを、図7A及び図7Bを参照して説明する。図7A及び図7Bに示すように、載置部材10Zの底面(第1底面)11Zには、載置面12に向かう方向に傾斜した2つの傾斜部が設けられている。具体的に説明すると、底面11Zには、第1傾斜部11Za及び第2傾斜部11Zbが互いに交差するようにして設けられている。換言すると、底面11Zには、載置面12Zに向かう方向に凹む凹部が交差するように設けられて第1傾斜部11Za及び第2傾斜部11Zbが形成されている。このとき、第1傾斜部11Zaの傾斜角度及び第2傾斜部11Zbの傾斜角度が、調整部材20の底面21と当接面22とがなす角(上述の第2傾斜角度α2)と略同一となるように形成されている。
【0060】
第1傾斜部11Zaは、後面14において側面15aに近い位置に設けられ、載置部材10Zの底面11Zにおいて側面15b及び前面13に近い開始線SZaから後面14に向かうにつれて第1傾斜部11Zaの高さが高くなるように傾斜している。また、図7Bに示すように、第1傾斜部11Zaは、後面14から前面13に向かうのに従って、側面15aから側面15bへと近付く方向へと傾いて形成されている。
【0061】
また、第2傾斜部11Zbは、後面14において側面15bに近い位置に設けられ、載置部材10Zの底面11Zにおいて側面15a及び前面13に近い開始線SZbから後面14に向かうにつれて第2傾斜部11Zbの高さが高くなるように傾斜している。図7Bに示すように、第2傾斜部11Zbは、後面14から前面13に向かうのに従って、側面15bから側面15aへと近付く方向へと傾いて形成されている。
【0062】
第2及び第3の変形例に係るドア高さ調整治具の載置部材10Y,10Zによれば、2つの傾斜部が設けられているため、ドア100において丁番101が取り付けられる位置が左右どちらの端部にある場合であっても、適切な傾斜部を選択して(換言すると、適切な調整部材20の挿入方向を選択して)、調整部材20を挿入することで対応することが可能である。
【0063】
また、第1傾斜部11Ya,11Zaや第2傾斜部11Yb,11Zbが底面11Y,11Zにおいて傾いて形成されていることで、載置部材10Y,10Zの傾斜部に挿入された調整部材20が、傾斜部に対して挿入方向と逆側にずれることが好適に防止される。
【符号の説明】
【0064】
1 ドア高さ調整治具
10,10X,10Y,10Z 載置部材
11,11Y,11Z 底面(第1底面)
11a,11x 傾斜部
11Ya,11Za 第1傾斜部(傾斜部)
11Yb,11Zb 第2傾斜部(傾斜部)
SY,Sa,Sb 開始線
α1 第1傾斜角度
12 載置面
12a,12b 立ち上り部
13 前面
14 後面
15a,15b 側面
16 クッション部材
17 すべり止め
19 目印
20 調整部材
21 底面(第2底面)
21a すべり止め
22 当接面
α2 第2傾斜角度
23a,23b 側面
24 先端部
25 被押圧面
26 すべり止め
27 牽引部材
100 ドア(ドアパネル)
101 丁番
200 ドア枠
201 丁番取付部
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B