(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】顕微鏡対物レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 21/02 20060101AFI20220905BHJP
【FI】
G02B21/02 A
(21)【出願番号】P 2018080950
(22)【出願日】2018-04-19
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山之内 一彦
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-085335(JP,A)
【文献】特開2017-016066(JP,A)
【文献】特開2010-271693(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0279847(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.35以上1.5以下の開口数を有する液浸系の顕微鏡対物レンズであって、物体側から順に、
物体側に平面を向けた平凸レンズと物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとからなる第1の接合レンズを含む、正の屈折力を有する第1レンズ群と、
第1の3枚接合レンズ
からなる第2レンズ群と、
第2の3枚接合レンズ
からなる第3レンズ群と、
像側に凹面を向けたメニスカス形状を有する第2の接合レンズからなる第4レンズ群と、
物体側に凹面を向けたレンズを含む第5レンズ群
であって、前記第5レンズ群の最も物体側に前記物体側に凹面を向けた前記レンズを含む、という前記第5レンズ群と、からなり、
前記第1の3枚接合レンズと前記第2の3枚接合レンズの各々は、物体側から順に、正レンズ、負レンズ、正レンズからな
り、
以下の条件式を満たすことを特徴とする顕微鏡対物レンズ。
0.6 ≦ f/f1 ≦ 1.0 (2)
-0.2 ≦ f/f4 ≦ 0.2 (3)
但し、fは前記顕微鏡対物レンズのe線に対する焦点距離である。f1は前記第1レンズ群のe線に対する焦点距離である。f4は前記第4レンズ群のe線に対する焦点距離である。
【請求項2】
請求項1に記載の顕微鏡対物レンズにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする顕微鏡対物レンズ。
0.3 ≦ n2-n1 ≦ 1.0 (1)
但し、n1は前記第1の接合レンズに含まれる前記平凸レンズのe線に対する屈折率である。n2は前記第1の接合レンズに含まれる前記メニスカスレンズのe線に対する屈折率である。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の顕微鏡対物レンズにおいて、
以下の条件式を満たすことを特徴とする顕微鏡対物レンズ。
-0.8 ≦ Fb/D ≦ -0.4 (4)
但し、Fbは前記顕微鏡対物レンズのバックフォーカスである。Dは前記顕微鏡対物レンズの最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離である。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の顕微鏡対物レンズにおいて、
前記第1の3枚接合レンズは、正の屈折力を有し、
前記第2の3枚接合レンズは、正の屈折力を有する
ことを特徴とする顕微鏡対物レンズ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
4のいずれか1項に記載の顕微鏡対物レンズにおいて、
前記第1レンズ群は、さらに、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズである単レンズを含み、
以下の条件式を満たすことを特徴とする顕微鏡対物レンズ。
0.5 ≦ R5/L2 ≦ 0.8 (5)
但し、R5は前記単レンズの凸面の曲率半径である。L2は前記顕微鏡対物レンズの最も物体側のレンズ面から前記単レンズの前記凸面までの光軸上の距離である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、顕微鏡対物レンズに関し、特に、液浸系の顕微鏡対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像素子の高画素化が著しく、生物顕微鏡分野においても、像面平坦性と高分解能とを両立した観察及び画像取得が可能な顕微鏡装置への期待が高まっている。これに伴い、そのような顕微鏡装置の実現のため、40倍程度の倍率に対応する視野において、良好な像面平坦性と高い解像度を有する対物レンズが求められている。さらに、生物顕微鏡では、短波長の励起光を用いる蛍光観察にも対応していることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、40倍程度の倍率を有する、像面平坦性のよいアポクロマート級の顕微鏡対物レンズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の対物レンズなどの従来の対物レンズでは、開口数は1.0程度であり、更に高い分解能が求められている。
【0006】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、倍率が40倍程度であり、高い像面平坦性と高い分解能とを両立した液浸系の顕微鏡対物レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る顕微鏡対物レンズは、1.35以上1.5以下の開口数を有する液浸系の顕微鏡対物レンズである。前記顕微鏡対物レンズは、物体側から順に、物体側に平面を向けた平凸レンズと物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとからなる第1の接合レンズを含む、正の屈折力を有する第1レンズ群と、第1の3枚接合レンズからなる第2レンズ群と、第2の3枚接合レンズからなる第3レンズ群と、像側に凹面を向けたメニスカス形状を有する第2の接合レンズからなる第4レンズ群と、物体側に凹面を向けたレンズを含む第5レンズ群であって、前記第5レンズ群の最も物体側に前記物体側に凹面を向けた前記レンズを含む、という前記第5レンズ群と、からなる。前記第1の3枚接合レンズと前記第2の3枚接合レンズの各々は、物体側から順に、正レンズ、負レンズ、正レンズからなる。前記顕微鏡対物レンズは、以下の条件式を満たす。
0.6 ≦ f/f1 ≦ 1.0 (2)
-0.2 ≦ f/f4 ≦ 0.2 (3)
但し、fは前記顕微鏡対物レンズのe線に対する焦点距離である。f1は前記第1レンズ群のe線に対する焦点距離である。f4は前記第4レンズ群のe線に対する焦点距離である。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様によれば、倍率が40倍程度であり、高い像面平坦性と高い分解能とを両立した液浸系の顕微鏡対物レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1に係る対物レンズ1の断面図である。
【
図3】
図1に示す対物レンズ1と
図2に示す結像レンズ10からなる光学系の収差図である。
【
図4】本発明の実施例2に係る対物レンズ2の断面図である。
【
図5】
図4に示す対物レンズ2と
図2に示す結像レンズ10からなる光学系の収差図である。
【
図6】本発明の実施例3に係る対物レンズ3の断面図である。
【
図7】
図6に示す対物レンズ3と
図2に示す結像レンズ10からなる光学系の収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の一実施形態に係る対物レンズ(以降、単に対物レンズと記す。)について説明する。対物レンズは、結像レンズと組み合わせて使用される無限遠補正型の顕微鏡対物レンズである。また、対物レンズは、標本Sと対物レンズの間に浸液を介在させた状態で標本Sを観察するときに用いられる、いわゆる液浸系対物レンズである。さらに、対物レンズは、高い開口数、より具体的には、1.35以上1.5以下の開口数を有している。
【0011】
対物レンズは、5群構成を有する。対物レンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、第2レンズ群と、第3レンズ群と、第4レンズ群と、第5レンズ群と、からなる。
【0012】
第1レンズ群は、最も物体側に、物体側に平面を向けた接合レンズを含んでいる。以降、この接合レンズを第1の接合レンズと記す。第1の接合レンズは、物体側から順に、物体側に平面を向けた平凸レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズと、からなる。
【0013】
第1レンズ群は、主に、高い開口数において、球面収差の発生を抑えながらペッツバール和を良好に補正する役割を担っている。マージナル光線の高さが低い物体付近の領域に、メニスカスレンズを含む第1接合レンズが配置されることによって、ペッツバール和を効果的に補正することが可能となる。また、最も物体側のレンズ面を平面とすることによって、浸液と対物レンズとの間に気泡を溜まりにくくすることができる。
【0014】
第2レンズ群は、3枚接合レンズを含んでいる。以降、この3枚接合レンズを第1の3枚接合レンズと記す。第1の3枚接合レンズは、物体側から順に、正レンズ、負レンズ、正レンズと、からなる。なお、第2レンズ群は、最も物体側に第1の3枚接合レンズを含んでも良い。第1レンズ群と第2レンズ群の境界は、この特徴により特定され得る。
【0015】
第2レンズ群は、主に、色収差を低減する役割を担っている。正負正からなる第1の3枚接合レンズを含むことによって、対物レンズ内のスペースを効率的に使用しながら効果的に色収差補正を行うことが可能となる。特に、マージナル光線の高さが高い第2レンズ群に第1の3枚接合レンズが含まれることによって、より効果的な色収差補正が可能になる。また、マージナル光線の高さが高いことにより必然的に大きな有効径を有することとなる領域において、レンズ成分が3枚接合の形態を取ることによって、そのレンズ成分の剛性を強く保つことができる。
【0016】
なお、本明細書において、レンズ成分とは、単レンズ、接合レンズを問わず、物点からの光線が通るレンズ面のうち物体側の面と像側の面の2つの面のみが空気(又は浸液)と接する一塊のレンズブロックのことである。
【0017】
第3レンズ群は、3枚接合レンズを含んでいる。以降、この3枚接合レンズを第2の3枚接合レンズと記す。第2の3枚接合レンズは、物体側から順に、正レンズ、負レンズ、正レンズと、からなる。なお、第3レンズ群は、最も物体側に第2の3枚接合レンズを含んでも良い。第2レンズ群と第3レンズ群の境界は、この特徴により特定され得る。
【0018】
第3レンズ群も、第2レンズ群と同様に、主に、色収差を低減する役割を担っている。正負正からなる第2の3枚接合レンズを含むことによって、対物レンズ内のスペースを効率的に使用しながら効果的に色収差補正を行うことが可能となる。特に、マージナル光線の高さが高い第3レンズ群に第2の3枚接合レンズが含まれることによって、より効果的な色収差補正が可能になる。また、マージナル光線の高さが高いことにより必然的に大きな有効径を有することとなる領域において、レンズ成分が3枚接合の形態を取ることによって、そのレンズ成分の剛性を強く保つことができる。
【0019】
第4レンズ群は、接合レンズからなる。以降、この接合レンズを第2の接合レンズと記す。第2の接合レンズは、像側に凹面を向けたメニスカス形状を有している。第5レンズ群は、物体側に凹面を向けたレンズを含んでいる。
【0020】
第4レンズ群は、主に、コマ収差を良好に補正する役割を担っている。また、第5レンズ群は、主に、非点収差とコマ収差を良好に補正する役割を担っている。
【0021】
以上の構成により、倍率が40倍程度であり、高い像面平坦性と高い分解能とを両立した液浸系の顕微鏡対物レンズを実現することができる。なお、40倍程度とは、少なくとも30倍から50倍を含むものとする。
【0022】
以下、対物レンズの望ましい構成について説明する。
対物レンズは、以下の条件式のうちの少なくとも1つを満たすことが望ましい。
0.3 ≦ n2-n1 ≦ 1.0 (1)
0.6 ≦ f/f1 ≦ 1.0 (2)
-0.2 ≦ f/f4 ≦ 0.2 (3)
-0.8 ≦ Fb/D ≦ -0.4 (4)
【0023】
但し、n1は第1の接合レンズに含まれる平凸レンズのe線に対する屈折率である。n2は第1の接合レンズに含まれるメニスカスレンズのe線に対する屈折率である。fは対物レンズのe線に対する焦点距離である。f1は第1レンズ群のe線に対する焦点距離である。f4は第4レンズ群のe線に対する焦点距離である。Fbは対物レンズのバックフォーカスである。なお、バックフォーカスは、対物レンズの最も像側のレンズ面から後側焦点までの距離であり、物体側から像側へ向かう方向の距離が正の距離として定義される。Dは対物レンズの最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離である。
【0024】
条件式(1)は、第1の接合レンズを構成する平凸レンズとメニスカスレンズの屈折率差を規定したものである。条件式(1)を満たすことで、対物レンズは、高い開口数において、ペッツバール和を小さくすることができる。
【0025】
n2-n1が条件式(1)の上限値を上回る場合、メニスカスレンズに非常に高い屈折率を有する硝材を用いることになるため、透過率が低下してしまう。一方で、n2-n1が条件式(1)の下限値を下回る場合、接合面においてペッツバール和を良好に補正するのに十分な負の屈折力を得るためには、第1の接合レンズの接合面の曲率半径が小さくなりすぎてしまう。このため、球面収差、及び、コマ収差が悪化してしまう。
【0026】
なお、条件式(1)の代わりに条件式(1-1)、条件式(1-2)を満たすよう構成されていてもよい。
0.45 ≦ n2-n1 ≦ 0.9 (1-1)
0.46 ≦ n2-n1 ≦ 0.8 (1-2)
【0027】
条件式(2)は、第1レンズ群の屈折力を規定したものである。条件式(2)を満たすことで、対物レンズは、主に、球面収差を効果的に補正することができる。
【0028】
f/f1が条件式(2)の上限値を上回る場合、第1レンズ群の屈折力が強くなりすぎるため、第4レンズ群及び第5レンズ群に設けられた凹面に強い屈折力が要求されてしまう。このため、球面収差とコマ収差の良好なバランスを取ることが困難になる。一方で、f/f1が条件式(2)の下限値を下回る場合、第2レンズ群以降での光線高が高くなりすぎてしまう。このため、球面収差を良好に補正することが難しくなる。
【0029】
なお、条件式(2)の代わりに条件式(2-1)、条件式(2-2)を満たすよう構成されていてもよい。
0.62 ≦ f/f1 ≦ 0.79 (2-1)
0.625 ≦ f/f1 ≦ 0.785 (2-2)
【0030】
条件式(3)は、第4レンズ群の屈折力を規定したものである。条件式(3)を満たすことで、対物レンズは、コマ収差を良好に補正することができる。
【0031】
f/f4が条件式(3)の上限値を上回る場合、第4レンズ群の正の屈折力が強くなりすぎるため、第4レンズ群で大きなコマ収差が発生してしまう。一方で、f/f4が条件式(3)の下限値を下回る場合、第4レンズ群の負の屈折力が強くなりすぎるため、第4レンズ群で大きなコマ収差が発生してしまう。
【0032】
なお、条件式(3)の代わりに条件式(3-1)、条件式(3-2)を満たすよう構成されていてもよい。
-0.11 ≦ f/f4 ≦ 0.11 (3-1)
-0.10 ≦ f/f4 ≦ 0.10 (3-2)
【0033】
条件式(4)は、バックフォーカスの適切な範囲を規定したものである。条件式(4)を満たすことで、対物レンズは、球面収差、非点収差、及び、コマ収差を良好に補正することができる。
【0034】
Fb/Dが条件式(4)の上限値を上回る場合、第2レンズ群及び第3レンズ群での光線高が高くなりすぎてしまう。このため、球面収差を良好に補正することが難しくなる。一方で、Fb/Dが条件式(4)の下限値を下回る場合、対物レンズの内部に位置する後側焦点が物体に近づきすぎる。このため、非点収差及びコマ収差の補正が困難になってしまう。
【0035】
なお、条件式(4)の代わりに条件式(4-1)、条件式(4-2)を満たすよう構成されていてもよい。
-0.75 ≦ Fb/D ≦ -0.53 (4-1)
-0.70 ≦ Fb/D ≦ -0.54 (4-2)
【0036】
また、対物レンズに含まれる第1の3枚接合レンズと第2の3枚接合レンズは、それぞれ、正の屈折力を有することが望ましい。これにより、第1レンズ群から出射した発散光を、第2レンズ群と第3レンズ群で徐々に屈折させることで、第4レンズ群に収斂光を入射させることができる。
【0037】
また、第1の3枚接合レンズと第2の3枚接合レンズは、隣り合って配置されることが望ましい。これにより、第1の3枚接合レンズと第2の3枚接合レンズの両方を光線高の高い領域に配置することが可能であり、その結果、色収差を良好に補正することが容易になる。
【0038】
さらに、第1レンズ群は、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズである単レンズ(以降、単メニスカスレンズと記す。)を含むことが望ましく、その場合、対物レンズは、さらに、以下の条件式を満たすことが望ましい。
0.5 ≦ R5/L2 ≦ 0.8 (5)
【0039】
但し、R5は単レンズの凸面の曲率半径である。L2は顕微鏡対物レンズの最も物体側のレンズ面から第1レンズ群に含まれている単メニスカスレンズの凸面までの光軸上の距離である。
【0040】
条件式(5)は、単メニスカスレンズの凸面について規定したものである。条件式(5)を満たすことで、対物レンズは、高い開口数において、ペッツバール和と球面収差を小さく抑えることができる。
【0041】
R5/L2が条件式(5)の上限値を上回る場合、凸面の屈折力が弱くなりすぎるため、ペッツバール和と球面収差を小さく抑えることが難しくなる。一方で、R5/L2が条件式(5)の下限値を下回る場合、凸面の曲率半径が小さくなりすぎる。このため、レンズの加工性が著しく劣化することになり、その結果、製造コストが上昇してしまう。
【0042】
なお、条件式(5)の代わりに条件式(5-1)、条件式(5-2)を満たすよう構成されていてもよい。
0.505 ≦ R5/L2 ≦ 0.775 (5-1)
0.51 ≦ R5/L2 ≦ 0.77 (5-2)
【0043】
また、対物レンズは、いずれかの条件式を単独で用いても、自由に組み合わせて用いてもよく、どのような組み合わせであっても十分な効果を奏する。また、上述した条件式の上限値、下限値をそれぞれ単独に変更して新たな条件式を作成してもよく、その場合であっても、同様の効果を奏する。
【0044】
以下、上述した対物レンズの実施例について具体的に説明する。
【0045】
[実施例1]
図1は、本実施例に係る対物レンズ1の断面図である。対物レンズ1は、液浸系の顕微鏡対物レンズであり、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、3枚接合レンズCL2を含む第2レンズ群G2と、3枚接合レンズCL3を含む第3レンズ群と、接合レンズCL4からなる第4レンズ群と、第5レンズ群と、からなる。
【0046】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、接合レンズCL1と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL3と、物体側に平面を向けた平凸レンズであるレンズL4と、を含んでいる。接合レンズCL1は、物体側から順に、物体側に平面を向けた平凸レンズであるレンズL1と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL2と、からなる。
【0047】
第2レンズ群G2は、3枚接合レンズCL2からなる。3枚接合レンズCL2は、物体側から順に、両凸レンズL5と、両凹レンズL6と、両凸レンズL7とからなる。
【0048】
第3レンズ群G3は、3枚接合レンズCL3からなる。3枚接合レンズCL3は、物体側から順に、両凸レンズL8と、両凹レンズL9と、両凸レンズL10とからなる。
【0049】
第4レンズ群G4は、接合レンズCL4からなる。接合レンズCL4は、像側に凹面を向けたメニスカス形状を有し、物体側から順に、両凸レンズL11と、両凹レンズL12とからなる。
【0050】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL13と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL14と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL15と、からなる。
【0051】
対物レンズ1の各種データは、以下のとおりである。但し、NAは対物レンズ1の物体側の開口数である。βは後述する結像レンズ10と組み合わせときの対物レンズ1の倍率である。Im.Hは像高である。WDは対物レンズ1の作動距離である。
f=4.4999mm, NA=1.4, β=-39.99, Im.H=13.25mm, WD=0.1349mm, n1=1.51825, n2=1.88815, f1= 6.0144mm, f4=-52.2153mm, Fb=-29.5216mm, D=49.2771mm, R5=4.8951mm, L2=6.322mm
【0052】
対物レンズ1のレンズデータは、以下のとおりである。なお、レンズデータ中のINFは無限大(∞)を示している。
対物レンズ1
s r d ne νd
1 INF 0.17 1.52626 54.41
2 INF 0.1349 1.51793 41
3 INF 0.6 1.51825 64.14
4 -1.02 2.5917 1.88815 40.76
5 -3.8939 0.125
6 -5.6526 3.0053 1.88815 40.76
7 -4.8951 0.125
8 INF 3.7417 1.57098 71.3
9 -12.5464 0.125
10 21.9126 6.488 1.43986 94.66
11 -11.4164 0.55 1.67717 38.26
12 30.2053 5.0748 1.57098 71.3
13 -15.1549 0.2
14 18.3595 3.9396 1.43986 94.66
15 -19.1693 0.55 1.64132 42.41
16 8.7006 4.1 1.43986 94.66
17 -55.4175 0.1
18 7.3026 5.279 1.57098 71.3
19 -20.2873 1.1537 1.64132 42.41
20 4.6287 4.9408
21 -4.3629 2.3279 1.88815 40.76
22 -11.7911 0.5799
23 -11.6567 1.6421 1.68082 55.34
24 -8.4408 0.1517
25 -13.3247 1.8859 1.8629 24.8
26 -9.2174
【0053】
ここで、sは面番号を、rは曲率半径(mm)を、dは面間隔(mm)を、neはe線に対する屈折率を、νdはアッベ数を示す。これらの記号は、以降の実施例でも同様である。なお、面番号s1,s2が示す面は、それぞれ物体面(カバーガラスCGの物体側の面)、カバーガラスCGの像側の面である。面番号s3,s26が示す面は、それぞれ対物レンズ1の最も物体側のレンズ面、最も像側のレンズ面である。面番号s2の面と面番号s3の面の間は、浸液で満たされている。
【0054】
対物レンズ1は、以下で示されるように、条件式(1)から条件式(5)を満たしている。
n2-n1=0.37 (1)
f/f1=0.75 (2)
f/f4=-0.09 (3)
Fb/D=-0.60 (4)
R5/L2=0.77 (5)
【0055】
図2は、対物レンズ1と組み合わせて使用される結像レンズ10の断面図である。結像レンズ10は、無限遠補正型の対物レンズと組み合わせて物体の拡大像を形成する顕微鏡結像レンズである。結像レンズ10は、物体側から順に配置された、接合レンズCTL1と接合レンズCTL2からなる。接合レンズCTL1は、両凸レンズであるレンズTL1と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズTL2と、からなる。接合レンズCTL2は、両凸レンズであるレンズTL3と、両凹レンズであるレンズTL4と、からなる。対物レンズ1の最も像側のレンズ面(面番号s26の面)から結像レンズ10の最も物体側のレンズ面(面番号s1の面)までの光軸上の距離は120mmである。なお、結像レンズ10の焦点距離は180mmである。
【0056】
結像レンズ10
s r d ne νd
1 68.7541 7.7321 1.48915 70.23
2 -37.5679 3.4742 1.81078 40.92
3 -102.8477 0.6973
4 84.3099 6.0238 1.83932 37.16
5 -50.7100 3.0298 1.64824 40.82
6 40.6619
【0057】
図3は、対物レンズ1と結像レンズ10からなる光学系の収差図であり、対物レンズ1と結像レンズ10が形成する像面における収差を示している。
図3(a)は球面収差図であり、
図3(b)は正弦条件違反量を示した図であり、
図3(c)は非点収差図であり、
図3(d)は像高比0.5におけるコマ収差図である。なお、図中の“M”はメリディオナル成分、“S”はサジタル成分を示している。
【0058】
[実施例2]
図4は、本実施例に係る対物レンズ2の断面図である。対物レンズ2は、液浸系の顕微鏡対物レンズであり、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、3枚接合レンズCL2を含む第2レンズ群G2と、3枚接合レンズCL3を含む第3レンズ群と、接合レンズCL4からなる第4レンズ群と、第5レンズ群と、からなる。
【0059】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、接合レンズCL1と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL3と、両凸レンズであるレンズL4と、を含んでいる。接合レンズCL1は、物体側から順に、物体側に平面を向けた平凸レンズであるレンズL1と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL2と、からなる。
【0060】
第2レンズ群G2は、3枚接合レンズCL2からなる。3枚接合レンズCL2は、物体側から順に、両凸レンズL5と、両凹レンズL6と、両凸レンズL7とからなる。
【0061】
第3レンズ群G3は、3枚接合レンズCL3からなる。3枚接合レンズCL3は、物体側から順に、両凸レンズL8と、両凹レンズL9と、両凸レンズL10とからなる。
【0062】
第4レンズ群G4は、接合レンズCL4からなる。接合レンズCL4は、像側に凹面を向けたメニスカス形状を有し、物体側から順に、両凸レンズL11と、両凹レンズL12とからなる。
【0063】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL13と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL14と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL15と、からなる。
【0064】
対物レンズ2の各種データは、以下のとおりである。
f=4.4999mm, NA=1.4, β=-39.99, Im.H=13.25mm, WD=0.1582mm, n1=1.52458, n2=2.01169, f1=5.7070mm, f4=-50.5361mm, Fb=-29.5221mm, D=49.2544mm, R5=5.1311mm, L2=7.0505mm
【0065】
対物レンズ2のレンズデータは、以下のとおりである。
対物レンズ2
s r d ne νd
1 INF 0.17 1.52626 54.41
2 INF 0.1582 1.51793 41
3 INF 0.4 1.52458 59.84
4 -1.5569 3.4899 2.01169 28.27
5 -4.4542 0.125
6 -5.3154 3.0356 1.83945 42.74
7 -5.1311 0.125
8 148.2292 3.3954 1.57098 71.3
9 -14.0215 0.1291
10 28.3662 5.8926 1.43986 94.66
11 -10.6868 0.55 1.67717 38.26
12 36.3121 4.8864 1.57098 71.3
13 -14.5521 0.2
14 20.849 3.3108 1.43986 94.66
15 -25.747 0.5499 1.64132 42.41
16 8.7011 5.1722 1.43986 94.66
17 -26.8537 0.1
18 7.07 4.834 1.57098 71.3
19 -63.0583 0.9597 1.64132 42.41
20 4.5329 4.4902
21 -4.7006 1.6889 1.92336 31.6
22 -14.9856 1.428
23 -11.8178 2.4163 2.01169 28.27
24 -9.4625 0.1543
25 -12.4297 1.9211 1.8629 24.8
26 -9.7165
【0066】
対物レンズ2は、以下で示されるように、条件式(1)から条件式(5)を満たしている。
n2-n1=0.49 (1)
f/f1=0.79 (2)
f/f4=-0.09 (3)
Fb/D=-0.60 (4)
R5/L2=0.73 (5)
【0067】
図5は、対物レンズ2と結像レンズ10からなる光学系の収差図であり、対物レンズ2と結像レンズ10が形成する像面における収差を示している。
図5(a)は球面収差図であり、
図5(b)は正弦条件違反量を示した図であり、
図5(c)は非点収差図であり、
図5(d)は像高比0.5におけるコマ収差図である。
【0068】
[実施例3]
図6は、本実施例に係る対物レンズ3の断面図である。対物レンズ3は、液浸系の顕微鏡対物レンズであり、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、3枚接合レンズCL2を含む第2レンズ群G2と、3枚接合レンズCL3を含む第3レンズ群と、接合レンズCL4からなる第4レンズ群と、第5レンズ群と、からなる。
【0069】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、接合レンズCL1と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL3と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL4と、を含んでいる。接合レンズCL1は、物体側から順に、物体側に平面を向けた平凸レンズであるレンズL1と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであるレンズL2と、からなる。
【0070】
第2レンズ群G2は、3枚接合レンズCL2からなる。3枚接合レンズCL2は、物体側から順に、両凸レンズL5と、両凹レンズL6と、両凸レンズL7とからなる。
【0071】
第3レンズ群G3は、3枚接合レンズCL3からなる。3枚接合レンズCL3は、物体側から順に、両凸レンズL8と、両凹レンズL9と、両凸レンズL10とからなる。
【0072】
第4レンズ群G4は、接合レンズCL4からなる。接合レンズCL4は、像側に凹面を向けたメニスカス形状を有し、物体側から順に、両凸レンズL11と、両凹レンズL12とからなる。
【0073】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、接合レンズCL5と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL15と、からなる。接合レンズCL5は、物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL13と、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL14と、からなる。
【0074】
対物レンズ3の各種データは、以下のとおりである。
f=4.5000mm, NA=1.4, β=-39.99, Im.H=13.25mm, WD=0.1829mm, n1=1.52458, n2=2.15859, f1=7.1657mm, f4=-87.7808mm, Fb=-29.49966mm, D=52.5296mm, R5=5.1937mm, L2=6.7698mm
【0075】
対物レンズ3のレンズデータは、以下のとおりである。
対物レンズ3
s r d ne νd
1 INF 0.17 1.52626 54.41
2 INF 0.1829 1.51793 41
3 INF 0.45 1.52458 59.84
4 -1.4658 2.7768 2.15859 17.8
5 -4.2803 0.2119
6 -6.1045 3.3311 1.82017 46.62
7 -5.1937 0.125
8 -16.567 3.0976 1.57098 71.3
9 -9.268 0.125
10 16.6134 6.4782 1.43986 94.66
11 -14.1539 0.55 1.64132 42.41
12 15.4508 6.185 1.57098 71.3
13 -19.3251 0.2
14 19.2828 3.1086 1.57098 71.3
15 -48.8922 0.55 1.64132 42.41
16 7.7734 6.0862 1.43986 94.66
17 -387.156 0.2365
18 7.8039 4.5347 1.59732 67.74
19 -135.9473 2.1485 1.61669 44.27
20 4.783 4.5371
21 -4.8061 1.0802 1.82017 46.62
22 -42.8204 3.1904 1.53947 74.7
23 -9.122 1.5268
24 -14.6738 2 1.8629 24.8
25 -9.5466
【0076】
対物レンズ3は、以下で示されるように、条件式(1)から条件式(5)を満たしている。
n2-n1=0.63 (1)
f/f1=0.63 (2)
f/f4=-0.05 (3)
Fb/D=-0.56 (4)
R5/L2=0.77 (5)
【0077】
図7は、対物レンズ3と結像レンズ10からなる光学系の収差図であり、対物レンズ3と結像レンズ10が形成する像面における収差を示している。
図7(a)は球面収差図であり、
図7(b)は正弦条件違反量を示した図であり、
図7(c)は非点収差図であり、
図7(d)は像高比0.5におけるコマ収差図である。
【符号の説明】
【0078】
1、2、3 対物レンズ
10 結像レンズ
CL1、CL4、CL5、CTL1、CTL2 接合レンズ
CL2、CL3 3枚接合レンズ
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
G5 第5レンズ群
G2 第2レンズ群
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10、
L11、L12、L13、L14、L15、
TL1、TL2、TL3、TL4 レンズ