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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】滑り軸受ブッシュを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/14 20060101AFI20220905BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20220905BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20220905BHJP
   F16C 35/02 20060101ALI20220905BHJP
   F03D 15/00 20160101ALI20220905BHJP
【FI】
F16C33/14 Z
F16C17/02 Z
F16C33/10 Z
F16C35/02 Z
F03D15/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018085056
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2018185045
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】A 50341/2017
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】315015564
【氏名又は名称】ミバ・グライトラーガー・オーストリア・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス セバスティアン ヘルツェル
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-297817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0108380(US,A1)
【文献】米国特許第02377681(US,A)
【文献】特開平05-212466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00-17/26
F16C 33/00-33/28
F16C 35/02
F03D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑り軸受ブッシュ(4)を形成する方法であって、
平坦な支持金属層(8)を準備し、
該支持金属層(8)の上に、平坦な複合材料を形成するために滑り層(9)を配置し、
その後、平坦な複合材料を前記滑り軸受ブッシュ(4)にロール状に巻く、方法において、
前記平坦な複合材料を、前記滑り軸受ブッシュ(4)内で前記支持金属層(8)が径方向に滑り層(9)の下方に配置されるように巻き、
巻いた後、前記滑り軸受ブッシュ(4)は、軸方向において延びている2つの開放した端部を有し、
前記2つの開放した端部は、軸方向において溶接継目(16)が形成されるように互いに対して溶接されており、
前記軸方向に延びているオイル溝(17)が前記滑り軸受ブッシュ(4)に形成されており、前記オイル溝(17)が前記溶接継目(16)に対して間隔をもって配置されており、前記間隔は、前記滑り層(9)の走行面の外周の0.5%~10%の間にあり、潤滑剤供給導管からの潤滑剤が、前記支持金属層(8)と前記滑り層(9)を通して形成された孔(19)を介して前記オイル溝(17)に供給される、ことを特徴とする滑り軸受ブッシュを形成する方法。
【請求項2】
支持金属層(8)と滑り層(9)とを有する複合材料からなるロール状に巻かれた滑り軸受ブッシュ(4)において、
前記支持金属層(8)が径方向において前記滑り層(9)の下方に配置されており、
前記滑り軸受ブッシュ(4)は、軸方向における溶接継目(16)と、前記軸方向に延びているオイル溝(17)とを有し、
前記オイル溝(17)が前記溶接継目(16)に対して間隔をもって配置されており、前記間隔は、前記滑り層(9)の走行面の外周の0.5%~10%の間にあり、孔(19)が前記支持金属層(8)と前記滑り層(9)を通して形成されており、前記孔(19)は、潤滑剤を潤滑剤供給導管から前記オイル溝(17)に供給するように構成されている、ことを特徴とするロール状に巻かれた滑り軸受ブッシュ。
【請求項3】
滑り軸受ブッシュ(4)を有する、軸(5)であって、特に風力設備伝動機構用のプラネットホィールピンである軸において、
前記滑り軸受ブッシュ(4)が請求項に従って形成されている、ことを特徴とする軸(5)。
【請求項4】
前記滑り軸受ブッシュ(4)が軸(5)上に焼き嵌めされている、ことを特徴とする請求項に記載の軸(5)。
【請求項5】
前記軸(5)内に潤滑剤供給導管が形成されており、
前記滑り軸受ブッシュ(4)の前記支持金属層(8)内に前記孔(19)が形成されており、該孔(19)が前記滑り層(9)内で前記軸方向に延びる前記オイル溝(17)内へ連通している、ことを特徴とする請求項又はに記載の軸(5)。
【請求項6】
少なくとも1つの歯車(2)を有する風力設備伝動機構(1)であって、
前記歯車が軸(5)上に軸承されており、前記歯車(2)と前記軸(5)の間に、前記滑り軸受ブッシュ(4)を有する軸受箇所が配置されている、風力設備伝動機構(1)において、
前記軸(5)が請求項の何れか一項に従って形成されている、ことを特徴とする風力設備伝動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り軸受ブッシュを形成する方法に関するものであって、その方法によれば平坦な支持金属層が準備され、この支持金属層上に平坦な複合材料を形成するために滑り層が配置され、かつその後に平坦な複合材料が滑り軸受ブッシュの形状になるように巻かれる。
【0002】
本発明は、さらに、支持金属層と滑り層とを有する複合材料を巻いて形成した滑り軸受ブッシュに関する。
【0003】
本発明は、滑り軸受ブッシュを有する軸、特に、風力設備伝動機構のためのプラネットホィールピンにも関する。
【0004】
さらに、本発明は、少なくとも1つの歯車を有する風力設備伝動機構に関するものであって、その歯車が軸上に軸承されており、その場合に歯車と軸の間に、滑り軸受ブッシュを備えた軸受箇所が配置されている。
【背景技術】
【0005】
滑り軸受ブッシュは、一般に、軸受材料がブッシュ内側に設けられるように形成されている。それによって、ブッシュは軸上に焼き嵌めされることはなく、軸受収容部内に圧入されることが定められている。
【0006】
しかし、風力エネルギー部門では、特許文献1から、滑り軸受ブッシュが軸と相対回動不能に結合されていることも、知られている。この特許文献1においては、少なくとも1つの太陽歯車、リングギア及び遊星歯車支持体を有し、その遊星歯車支持体内に複数の遊星歯車が軸承されている、風力設備用の遊星歯車伝動機構が記載されている。遊星歯車を軸承するために複数のラジアル滑り軸受が設けられており、それらはそれぞれ滑り軸受材料からなるスリーブを有しており、そのスリーブがインナーリングとして遊星歯車軸上に固定されており、その場合に付属の軸受アウターリングが遊星歯車の孔によって形成されている。滑り軸受材料として、銅-亜鉛合金、銅-錫合金及びアルミニウム-錫合金が記載されている。さらに、滑り軸受材料がそれぞれ鋼支持ボディ上にロールクラッディングされていると、コスト的に好ましい滑り軸受の実現化をもたらすことが記載されている。しかし、この特許文献1は、どのような径方向順序で個々の層が配置されているか、について何ら指摘を有していない。特に、当業者にとって図面からは、滑り軸受ブッシュの多層の構造が明らかにされず、一層材料のみである。したがって、当業者にとって明らかなのは、前もって略述されている一般的な専門知識を考慮して、滑り軸受材料の滑り軸受ブッシュは、種々の実施変形例で、径方向内側の層を多層に形成することである。
【0007】
特許文献2からは、軸上に軸承されている少なくとも1つの歯車を有する風力設備伝動機構が知られており、その場合に歯車と軸の間には滑り軸受を有する軸受箇所が配置されている。滑り軸受は、特に滑り軸受ブッシュとして形成されており、かつ軸又は歯車と相対回動不能に結合することができる。さらに、滑り軸受ブッシュは、多層滑り軸受として形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第2383480(A1)号明細書
【文献】オーストリア特許出願公開第513743(A4)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、軸上に相対回動不能に配置されている滑り軸受ブッシュにおけるクリープ現象を、特に風力機械伝動機構内で使用する場合に、減少させ、もしくは回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、冒頭で挙げた滑り軸受ブッシュによって解決され、それにおいて支持金属層は径方向において滑り層の下方に配置されている。
【0011】
さらに、本発明の課題は、冒頭で挙げた軸によって解決され、それにおいて滑り軸受ブッシュは、本発明に従って形成されている。
【0012】
本発明の課題は、冒頭で挙げた風力設備伝動機構によっても解決され、それにおいて軸が本発明に従って形成されている。
【0013】
さらに、本発明の課題は、冒頭で挙げた方法によって解決され、それによれば平坦な複合材料が、滑り軸受ブッシュ内で支持金属材料が滑り層の径方向下方に配置されるように、巻かれる。
【0014】
その場合に、好ましくは、平坦な複合材料を滑り軸受ブッシュになるように逆に巻くことによって、軸上にコスト的に比較的好ましく、鋼-硬い裏面金属層、特に鋼という材料の組み合わせが得られる。したがって滑り軸受ブッシュを軸と相対回動不能に結合する領域内のクリープ現象もしくは緩和現象を簡単に阻止し、もしくは減少させることができる。それによってさらに、複合材料のもっとも硬い材料を介して平坦な複合材料を巻くことが行われ、それによって滑り軸受ブッシュの後加工を減少させることができる、という利点が得られる。したがって風力設備伝動機構内の滑り軸受ブッシュにおける修理作業もより簡単に実施することができる。というのは、伝動機構の軸はより簡単に接近できるからである(伝動機構の歯車の構造に比較して)。それによって、滑り軸受ブッシュの1つ又は複数のより柔らかい層内に場合によっては発生するクリープをより簡単に補正し、もしくは対処することが可能である。
【0015】
滑り軸受ブッシュは、軸方向に溶接継目を有することができる。ロール状に巻かれた複合材料の両方の開放した端部を材料結合で結合することによって、滑り軸受ブッシュの形状安定性を改良することができる。かみ合わせる形態に比較して、材料による結合によって、滑り軸受ブッシュのより均質な滑り面を提供することができる。
【0016】
それに対する実施変形例によれば、滑り軸受ブッシュは溶接継目と並んで、軸方向に延びるオイル溝を有することができる。オイル溝を少なくとも部分的に溶接継目内に形成することは、それによって、滑り層の表面に溶接によってもたらされる材料変化が除去され、かつ溶接継目の後加工それ自体が1つの作業工程内で対処できるので、それ自体容易に想到されることではあるが、オイル溝を溶接継目と並べて配置することは、次のような利点、すなわち溶接継目を形成するために、滑り層全体と場合によっては、溶接が行われる溝を形成するための支持金属層の一部をより簡単に除去することができる、という利点を、提供する。その場合にオイル溝自体は、「閉成された溝」として形成することができ、すなわちオイル溝は滑り軸受ブッシュの軸方向の幅全体にわたって延びておらず、したがって側方の端面まで延びていない。したがって側方の出口によるオイル損失は、より良好に回避することができる。
【0017】
上述した理由から、滑り軸受ブッシュは軸と相対回動不能に結合されており、特に軸上に焼き嵌めされている。
【0018】
さらに、軸内に潤滑剤供給導管を形成することができ、かつ滑り軸受ブッシュの支持金属層内に孔を形成することができ、その孔が滑り層内の軸方向に延びるオイル溝内へ連通している。軸を介して潤滑剤供給することによって、軸受箇所のための潤滑剤供給システムを簡略化することができ、それによって風力設備伝動機構をよりコンパクトに構成することができる。
【0019】
本発明をさらによく理解するために、以下の図を用いて本発明を詳細に説明する。
図は、それぞれ著しく簡略化された図式的な表示である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】風力設備伝動機構の一部を示す横断面図である。
図2】軸を示す斜視図である。
図3】滑り軸受ブッシュを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
最初に記録しておくが、異なるように記載される実施形態において、同一の部分には同一の参照符号ないし同一の構成部分名称が設けられており、その場合に説明全体に含まれる開示は、同一の参照符号ないし同一の構成部分名称を有する同一の部分へ意味に従って移し替えることができる。また、説明内で選択される、たとえば上、下、側方などのような位置記載は、直接説明され、かつ示される図に関するものであって、この位置記載は位置が変化した場合には意味に従って新しい位置へ移し替えられる。
【0022】
図1は、風力設備伝動機構1の一部を横断面で示している。風力設備伝動機構1は、特に(シングルの)遊星歯車伝動機構の形式で形成されている。
【0023】
既知のように、風力設備はタワーを有しており、その上方の端部にゴンドラが配置されており、その中にロータブレードを有するロータが軸承されている。このロータは、伝動機構を介して、同様にゴンドラ内にあるジェネレータと作用結合されており、その場合に伝動機構を介してロータの低い回転数がジェネレータロータの高い回転数に変換される。風力設備のこのような形態は、従来技術に属するので、ここではそれについての周知の文献を参照するよう指示する。
【0024】
風力設備伝動機構1は、少なくとも1つの歯車2を有している。この歯車2は、風力設備伝動機構1内で第2と第3の歯車(両方とも図示せず)の間に歯合するように配置されている。そのために、少なくとも1つの歯車2は、外歯車3を有している。
【0025】
遊星歯車伝動機構としての、特に風力設備の主伝動機構としての、風力設備伝導機構1の実施形態において、第2の歯車は外歯車を有する太陽歯車として形成されており、その太陽歯車が、ジェネレータロータへ通じる軸と相対回動不能に結合されている。太陽歯車は、通常、複数の歯車2、遊星歯車、たとえば2つ、好ましくは3つ又は4つの、遊星歯車によって包囲されている。
【0026】
第3の歯車は、リングギアとして形成されており、そのリングギアは少なくとも1つの歯車2もしくは複数の歯車2を径方向に包囲し、かつ内側の表面に同様に、少なくとも部分的に歯車を有しており、その歯車が1つの歯車2もしくは複数の歯車2の外歯車3と歯合する。リングギアは、風力設備のロータのロータ軸と相対回動不能に、あるいは風力設備伝動機構1のハウジングと相対回動不能に結合されている。
【0027】
風力設備伝動機構1内の歯車は、直線の歯筋を有する平歯車又は螺旋の歯筋を有するはすば歯車として形成することができる。
【0028】
少なくとも1つの歯車2(以下においては1つの歯車2についてのみ記述し、その場合にこの説明は、すべての歯車2もしくは複数の歯車にも移し替えることができる)は、複数の滑り軸受ブッシュ4を介して軸5上に、したがって、たとえば遊星ボルト(いわゆる遊星軸)上に軸承されている。図2においてさらによくわかる、この軸5は、歯車支持体6の孔内に保持することができる。
【0029】
指摘しておくが、本発明の枠内でこの種の風力設備伝動機構1の1段階の形態のみでなく、多段階、たとえば2段又は3段の形態も可能であり、そのために少なくとも1つの歯車2、特に遊星歯車内に、他の平歯車段を組み込むことができる。さらに、本発明の枠内で、パラレル伝動機構も示すことができ、それはこの範囲において、具体的な説明に属する。したがって風力設備伝導機構1は、シングルの遊星歯車伝動機構とパラレルの2段又は多段の遊星歯車伝動機構あるいは一般的に複数の遊星歯車伝動機構を有することができる。
【0030】
さらに記録しておくが、本発明は、風力設備の遊星歯車伝動機構内での適用が、好ましいことではあるが、それのみではなく、一般に風力設備のための伝動機構内で、特に風力設備のロータの低速の回転数をより高い回転数に変換するために、使用することができる。以下で詳細に説明する滑り軸受ブッシュ4の他の適用も、本発明の枠内で可能である。
【0031】
滑り軸受ブッシュ4は、間隙7を形成しながら、軸方向に互いに離隔して配置されている。
【0032】
滑り軸受ブッシュ4は、軸5と相対回動不能に結合されている。相対回動不能に結合するために、滑り軸受ブッシュ4は、特に軸5上に焼き嵌めされている(プレス嵌め)。しかし相対回動不能の結合を形成するための、他の方法も可能である。たとえば滑り軸受ブッシュ4は、軸5と溶接し、あるいはピンを介して結合することができる。したがって滑り軸受ブッシュ4は、形状結合及び/又は力結合及び/又は材料結合で軸5と結合することができる。
【0033】
滑り軸受ブッシュ4は、特に図3からも明らかなように、多層滑り軸受として形成されている。
【0034】
滑り軸受ブッシュ4は、支持金属層8と、支持層8上に設けられた滑り層9とからなる。その場合に滑り層9は、歯車2もしくは軸承すべき構成部品のための走行面を形成する。従来の滑り軸受ブッシュにおけるのとは異なり、支持金属層8は径方向において滑り層9の下方にあるので、その支持金属層は、自らが添接し、もしくはそれと相対回動不能に結合される軸5の表面と直接接触する。したがって滑り層9は、径方向もっとも外側の層である。
【0035】
滑り軸受ブッシュ4のこの2層の仕様の他に、図3に破線で示唆されるように、滑り層9と支持金属層8の間に中間層、たとえば、軸受金属層10、が配置される可能性もある。さらに、支持金属層8と滑り層9の間及び/又は軸受金属層10と滑り層9の間及び/又は支持金属層8と軸受金属層10の間に、少なくとも1つの結合層及び/又は少なくとも1つの拡散層を配置することができる。さらに、滑り層9上に摩耗層又は進入層を配置する可能性があり、この場合においてその層が径方向もっとも外側の層を形成する。
【0036】
それぞれの層は、互いに直接結合することができるので、したがってたとえば支持金属層8が直接滑り層9又は軸受金属層10又は結合層又は拡散層と結合されている。上で挙げた滑り軸受ブッシュ4の層の枠内で、層順序が異なる場合においても、同じことが当てはまる。
【0037】
支持金属層2は、特にスチールバックからなる。しかし支持金属層は、滑り軸受ブッシュ4に必要な形状安定性を与える、他の材料からなることもできる。
【0038】
場合によっては、設けられる軸受金属層10は、たとえば(鉛を含まない)銅合金又はアルミニウム合金あるいは錫合金からなることができる。その例は、AlSn6CuNi、AlSn20Cu、AlSi4Cd、AlCd3CuNi、AlSi11Cu、AlSn6Cu、AlSn40、AlSn25CuMn、AlSi11CuMgNi、CuSn10、CuAl10Fe5Ni5、CuZn31Si1、CuPb24Sn2、CuSn8Bi10、SnSb8Cu4、SnSb12Cu6Pbである。
【0039】
滑り層9は、たとえば銅-鉛合金、たとえばCuPb22Sn2.5あるいは銅-錫合金、たとえばCuSn5Znあるいはアルミニウムベース合金、たとえばAlSn20Cu、AlSn25Cu1.5Mn0.6からなり、あるいは、たとえばMoSを有するポリアミドイミドベースの滑り樹脂、及び/又はグラファイトからなることができる。
【0040】
摩耗層5は、たとえば錫、鉛、ビスマス又はビスマス合金あるいは、たとえばMoSを有するポリアミドイミドベースの滑り樹脂及び/又はグラファイトからなることができる。
【0041】
拡散層及び/又は結合層は、たとえばAl、Mn、Ni、Fe、Cr、Co、Cu、Ag、Mo、Pd及びNiSn合金又はCuSn合金からなることができる。
【0042】
念のために記録しておくが、個々の層は少なくとも量的に、特に質的にも、様々な組成を有している。
【0043】
軸方向の推移において、それぞれ滑り軸受ブッシュ4と並んで、それぞれ滑り軸受ブッシュ4もしくは歯車2と歯車支持体6との間に始動ディスク11を設けることができる。
【0044】
図1からは、さらに、滑り軸受ブッシュ4の走行面の潤滑剤供給の好ましい実施変形例が明らかである。そのために軸5の孔12もしくは通路状の切り欠きを介して、図示されない潤滑剤リザーバと接続されている潤滑剤入口13から潤滑剤、特に潤滑油が、滑り軸受ブッシュ4の走行面の領域14内へ供給される、そこから潤滑剤はその後少なくともほぼ走行面全体にわたって分配される。孔13もしくは切り欠きは、好ましくは複数の部分を有しており、それらは径方向外側を向くか、あるいは軸方向の推移を有している。
【0045】
図1から明らかなように、孔12もしくは切り欠きは、すべての軸受箇所へ潤滑剤を分配するために、少なくとも1つの分岐を有しているので、したがって2つの滑り軸受ブッシュ4の各々は、少なくとも1つの専用の潤滑剤供給を有している。場合によっては、滑り軸受ブッシュ4の周面にわたって分配して、軸受箇所への複数の、たとえば2つ又は3つ又は4つなどの、潤滑剤出口を配置することができる。
【0046】
潤滑剤供給は、軸5を介してのみ行うことができる。
【0047】
少なくともほぼ走行面全体にわたって潤滑剤をより良好に分配するために、中間室7は好ましくは少なくとも1つの接続導管15を介して周囲外気と接続されている。好ましくは、図1に示すように、接続導管15は軸5内に延びている。
【0048】
軸受領域から潤滑剤を排出するために、専用の排出導管(図示せず)を設けることができる。しかし、潤滑剤の少なくとも一部は、軸5内の接続導管15を介して排出することもできる。
【0049】
なお、特に滑り軸受ブッシュ4の風力設備への様々な使用に関して、2つの滑り軸受ブッシュ4の代わりに、1つだけ、又は2つより多い軸受ブッシュ4を使用することもできる。
【0050】
滑り軸受ブッシュ4を形成するために、平坦な(すなわちフラットな)支持金属層8もしくはそれに応じた平坦な支持金属ブランクが準備される。この平坦な支持金属層8上に、平坦な複合材料を形成するために、滑り層9が配置され、かつ、中間層が配置されない限りにおいて、支持金属層8と結合される。中間層が使用される場合には、正しい順序に従って平坦な支持金属層8上に中間層が次々と配置される。
【0051】
1つ(複数)の層、特に滑り層9と軸受金属層8との結合は、特に圧延によって行うことができ、そのために他の1つ(複数)の層のための材料からなる適切な細片が使用される。しかし又、他のセパレーション方法、たとえばガルバニックセパレーション又はPVD方法あるいはCVD方法によるセパレーションも可能である。
【0052】
平坦な複合材料の形成後に、この複合材料は圧延機内で次のように、すなわち滑り軸受ブッシュ内で支持金属材料8が滑り層9の径方向下方に配置され、かつ滑り層9が走行面を形成するための径方向外側の層を形成するように、滑り軸受ブッシュ4の形状に巻かれる。
【0053】
他の実施変形例によれば、滑り軸受ブッシュ4は溶接継目16を有することができる。巻いた後に、滑り軸受ブッシュ4は軸方向端面の領域内でまだ開放して形成されている。この2つの端面を互いに結合するために、これらは好ましくは互いに、あるいは付加材料なしで互いに、溶接される。その場合に好ましくは溶接の前に、滑り層9が厚さ全体にわたって径方向に、そして場合によっては支持金属層8の一部が、溝を形成するために除去される。その後この溝内で、結合溶接が行われ、この場合において支持金属層8のみが溶接される。
【0054】
しかしまた、他の結合方法も可能であって、たとえば2つの軸方向の端面を互いにかみ合わせることができる。
【0055】
他の実施変形例によれば、溶接継目16の他に、軸方向に延びる少なくとも1つのオイル溝が形成されており、もしくは形成される。好ましくはオイル溝17は、溶接継目16に対して間隔をもって配置されており、その間隔は、滑り層9の走行面の外周の0.5%と10%から20%の領域内の間(軸方向に見て)である。
【0056】
さらに、オイル溝17が滑り軸受ブッシュ4の軸方向の端面18の前で、かつそれに対して距離をおいて終了しており、従ってこのオイル溝が軸方向において走行面全体にわたってつながって延びていないと、効果的である。軸方向の端面18からのオイル溝の間隔は、滑り軸受ブッシュ4の軸方向の全長の2%と20%の領域から選択することができる。
【0057】
少なくとも1つのオイル溝17を形成する場合に、潤滑剤供給導管、従ってその径方向の部分が、このオイル溝17内に連通し、そのために支持金属層8内と、場合によっては滑り層9内にしかるべき孔19が形成されており、それを通して塵滑剤が供給される。
【0058】
実施例は、可能な実施変形例を示し、もしくは記述するものであって、その場合にここに記録しておくが、個々の実施変形例の互いに対する様々な組み合わせも可能である。
【0059】
最後に形式的に指摘しておくが、滑り軸受ブッシュ4もしくは風力設備伝動機構1の構造をよりよく理解するために、これらは必ずしも縮尺通りには示されていない。
また、本発明は以下の発明も含む。
本発明の第1の態様は、
滑り軸受ブッシュ(4)を形成する方法であって、
平坦な支持金属層(8)を準備し、
該支持金属層(8)の上に、平坦な複合材料を形成するために滑り層(9)を配置し、
その後、平坦な複合材料を前記滑り軸受ブッシュ(4)にロール状に巻く、方法において、
前記平坦な複合材料を、前記滑り軸受ブッシュ(4)内で前記支持金属層(8)が径方向に滑り層(9)の下方に配置されるように巻く、ことを特徴とする滑り軸受ブッシュを形成する方法である。
本発明の第2の態様は、
支持金属層(8)と滑り層(9)とを有する複合材料からなるロール状に巻かれた滑り軸受ブッシュ(4)において、
前記支持金属層(8)が径方向において前記滑り層(9)の下方に配置されている、ことを特徴とするロール状に巻かれた滑り軸受ブッシュである。
本発明の第3の態様は、
軸方向に溶接継目(16)を有している、ことを特徴とする第2の態様における滑り軸受ブッシュ(4)である。
本発明の第4の態様は、
前記溶接継目(16)と並んで、軸方向に延びるオイル溝(17)が形成されている、ことを特徴とする第3の態様における滑り軸受ブッシュ(4)である。
本発明の第5の態様は、
滑り軸受ブッシュ(4)を有する、軸(5)であって、特に風力設備伝動機構用のプラネットホィールピンである軸において、
前記滑り軸受ブッシュ(4)が第2~第4の態様のいずれかに従って形成されている、ことを特徴とする軸(5)である。
本発明の第6の態様は、
前記滑り軸受ブッシュ(4)が軸(5)上に焼き嵌めされている、ことを特徴とする第5の態様における軸(5)である。
本発明の第7の態様は、
前記軸(5)内に潤滑剤供給導管が形成されており、
前記滑り軸受ブッシュ(4)の前記支持金属層(8)内に孔(19)が形成されており、該孔(19)が前記滑り層(9)内で軸方向に延びるオイル溝(17)内へ連通している、ことを特徴とする第5又は第6の態様における軸(5)である。
本発明の第8の態様は、
少なくとも1つの歯車(2)を有する風力設備伝動機構(1)であって、
前記歯車が軸(5)上に軸承されており、歯車(2)と軸(5)の間に、滑り軸受ブッシュ(4)を有する軸受箇所が配置されている、風力設備伝動機構(1)において、
前記軸(5)が第5~第7の態様の何れかに従って形成されている、ことを特徴とする風力設備伝動機構である。
【符号の説明】
【0060】
1 風力設備伝動機構
2 歯車
3 外歯車
4 滑り軸受ブッシュ
5 軸
6 歯車支持体
7 中間室
8 支持金属層
9 滑り層
10 軸受金属層
11 始動ディスク
12 孔
13 潤滑剤入口
14 領域
15 接続導管
16 溶接継目
17 オイル溝
18 端面
19 孔
図1
図2
図3