(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】取り外し可能な電流スイッチング要素および電気スイッチギヤ
(51)【国際特許分類】
H01H 50/54 20060101AFI20220905BHJP
H02B 1/04 20060101ALI20220905BHJP
H02B 1/30 20060101ALI20220905BHJP
H02B 1/32 20060101ALI20220905BHJP
H01H 33/53 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
H01H50/54 R
H02B1/04 A
H02B1/30 D
H02B1/32 C
H01H33/53 J
H01H50/54 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018094739
(22)【出願日】2018-05-16
【審査請求日】2021-01-19
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594083128
【氏名又は名称】シュネーデル、エレクトリック、インダストリーズ、エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】SCHNEIDER ELECTRIC INDUSTRIES SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】パトリック、ラルシェ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック、コントワ
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-506600(JP,A)
【文献】特開2011-150972(JP,A)
【文献】特開平10-188742(JP,A)
【文献】特表2016-506599(JP,A)
【文献】特開2007-305468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/53
H02B 1/04
H02B 1/30 - 1/34
H01H 50/54 - 50/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り外し可能な電流スイッチング要素(6)であって、
互いに反対側の第1の底板(24)と第2の底板(50)が設けられたハウジングと、
前記第1の底板(24)に固く接続された固定電気接点(34)と、
前記固定電気接点(34)に対して移動可能な電気的可動接点(36)であって、前記第2の底板(50)に対して並進移動可能な可動接点ホルダ(54)によって支持された
電気的可動接点(36)と、を備え、
前記ハウジングは、前記電気的可動接点(36)の周囲において前記第2の底板(50)から前記第2の底板(50)に直交する方向(X、X’)に沿って延在した絶縁壁(80)を備え、
前記ハウジングは、前記絶縁壁(80)の内面を少なくとも部分的に覆う保護壁(84)であって、前記第2の底板(50)と共に単一部品として形成された保護壁(84)を更に含む、ことを特徴とする取り外し可能な電流スイッチング要素(6)。
【請求項2】
前記保護壁(84)は、前記第2の底板(50)に直交する前記方向(X、X’)に沿って前記絶縁壁(80)の末端を囲む折り重ねエッジ(86)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の取り外し可能な
電流スイッチング要素(6)。
【請求項3】
前記ハウジングは、互いに区別される第1の部分(20)と第2の部分(22)とを含み、前記第1
の部分(20)は前記第1の底板(24)を含み、前記第2
の部分は前記第2の底板(50)を含み、かつ前記可動
接点ホルダ(54)を収納し、前記第1
の部分(20)および前記第2
の部分(22)は互いに分離可能である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の取り外し可能な
電流スイッチング要素(6)。
【請求項4】
前記第1
の部分(20)および前記第2
の部分(22)は分離可能であり、かつアタッチメント部材(44、62)を含み、前記アタッチメント部材(44、62)は前記第1
の部分(20)および前記第2
の部分(22)を互いに固く接続するために相補的である、ことを特徴とする請求項3に記載の取り外し可能な
電流スイッチング要素(6)。
【請求項5】
前記第2
の部分(22)は、前記可動接点ホルダ(54)が並進移動することを可能にする案内部(64)を含み、前記案内部(64)は、この目的のために、前記第
2の部分の側壁(66)に作製された直線で囲まれた窓(68)と、前記可動
接点ホルダ(54)に支持された少なくとも1つのフック(72)とを含み、当該フック(72)は、前記窓(68)に挿入される、ことを特徴とする請求項3または4に記載の取り外し可能な
電流スイッチング要素(6)。
【請求項6】
前記保護壁(84)は、ガス発生材料で作製されている、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の取り外し可能な
電流スイッチング要素(6)。
【請求項7】
前記第2の底板(50)は、遮断ガスを取り除くための少なくとも1つのチャネル(74)であって、前記ハウジング内の前記絶縁壁(80)によって画定された容積と連通した入口開口を、前記ハウジングの外部と連通した出口開口に流体的に接続するチャネル(74)を包含する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の取り外し可能な
電流スイッチング要素(6)。
【請求項8】
前記保護壁(84)は、前記第2の底板(50)に直交する前記方向(X、X’)に沿って、前記絶縁壁(80)の全高さに渡って延在する、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の取り外し可能な
電流スイッチング要素(6)。
【請求項9】
前記絶縁壁(80)は、前記第2の底板(50)に取り付けられたブロー部品(82)によって少なくとも部分的に形成されている、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の取り外し可能な
電流スイッチング要素(6)。
【請求項10】
電流をスイッチングするための電気スイッチギヤ(2)であって、
1つ以上のハウジング(8、8’、8’’)を含むベースプレート(4)と、
前記ベースプレートの前記ハウジング(8、8’、8’’)の1つに収納されるようになっている取り外し可能な電流スイッチング要素(6)であって、前記取り外し可能な
電流スイッチング要素(6)の前記固定電気接点(34)が前記
電気スイッチギヤの接続ランドに電気的に接続される、取り外し可能な電流スイッチング要素(6)と、を備え、
前記取り外し可能な
電流スイッチング要素(6)は、請求項1~9のいずれか一項に記載されている、ことを特徴とする電気スイッチギヤ(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気スイッチギヤのための取り外し可能な電気スイッチング要素に関する。また本発明は、当該取り外し可能なスイッチング要素を備えた電流をスイッチングするための電気スイッチングギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
接触器のような電流をスイッチングするための電気装置が知られており、これらの装置は、装置のベースプレート内のハウジングに挿入される1つ以上の取り外し可能なスイッチング要素を含む。これらの取り外し可能な要素は、時にスイッチングバルブとして知られている。このような取り外し可能な要素は、例えば、文献FR2,999,790に記載されている。
【0003】
一般に、各取り外し可能な要素は、電気装置の接続ランドに接続され、これらのランド間の電流の流れを選択的に遮断するために動作する。こうするため、各取り外し可能な要素は、分離可能な電気導体を含む。電気導体の移動は、専用のアクチュエータによって制御される。アクチュエータは、電流の流れを遮断または許可するために固定電気接点に対する開位置と閉位置との間で電気導体を移動させる。
【0004】
このような取り外し可能な要素の1つの利点は、これらは交換可能であり、それゆえメンテナンス作業の間や故障の場合に取り替えることが容易なことである。
【0005】
しかしながら、これらの知られた取り外し可能な要素は、完全に満足のいくものではない。特に、電流が流れている間に電気接点が分離されたとき、これらの接点間で電気アークが現れる。電気アークは、周囲空気をイオン化し、遮断ガスを発生させる。遮断ガスは、冷却されて、この目的のために特別に作製された除去チャネルを介して、スイッチング要素から除去されなければならない。ある知られた取り外し可能な要素は、この点において不十分な気密性を呈している。それは、冷却が不十分な遮断ガスの漏れを引き起こし、接続ランド間で望ましくない再アーク化を促進する。そのとき、スイッチング装置の安全性は減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特にこれらの欠点を、電気スイッチギヤのための取り外し可能な電流スイッチング要素であって、遮断ガスに対する改善された気密性を呈する取り外し可能な要素を提供することによって、克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明は、
‐互いに反対側の第1の底板と第2の底板が設けられたハウジングと、
‐前記第1の底板に固く接続された固定電気接点と、
‐前記固定電気接点に対して移動可能な電気的可動接点であって、前記第2の底板に対して並進移動可能な可動接点ホルダによって支持された可動接点と、を備え、
前記ハウジングは、前記電気的可動接点の周囲において前記第2の底板から前記第2の底板に直交する方向に沿って延在した絶縁壁を備える、
取り外し可能な電流スイッチング要素に関する。
【0008】
本発明によれば、前記ハウジングは、前記絶縁壁の内面を少なくとも部分的に覆う保護壁であって、前記第2の底板と共に単一部品として形成された保護壁を更に含む。
【0009】
本発明によれば、保護壁を第2の底板と共に単一部品として形成することによって、絶縁壁の気密性と同様に、これらの壁の気密性が改善される。それゆえ、遮断ガスの漏れは制限される。この良い水準の気密性によれば、遮断ガスは、除去チャネルを介して優先的に取り除かれ、こうして取り外し可能な要素の外部への電流のループバック(loopback)のおそれが制限される。
【0010】
本発明のいくつかの有利ではあるが必須ではない態様によれば、このような取り外し可能な要素は、以下の特徴を、単独でもまたは技術的に許容される組合せでも、1つ以上組み込んでもよい。
【0011】
‐前記保護壁は、前記第2の底板に直交する前記方向に沿って前記絶縁壁の末端を囲む折り重ねエッジを含む。
【0012】
‐前記ハウジングは、互いに区別される第1の部分と第2の部分とを含み、前記第1のハウジング部分は前記第1の底板を含み、前記第2のハウジング部分は前記第2の底板を含み、かつ前記可動ブリッジを収納し、前記第1のハウジング部分および前記第2のハウジング部分は互いに分離可能である。
【0013】
‐前記第1のハウジング部分および前記第2のハウジング部分は分離可能であり、かつアタッチメント部材を含み、前記アタッチメント部材は前記第1のハウジング部分および前記第2のハウジング部分を互いに固く接続するために相補的である。
【0014】
‐前記第2のハウジング部分は、前記可動接点ホルダが並進移動することを可能にする案内部を含み、前記案内部は、この目的のために、前記第1のハウジング部分の側壁に作製された直線で囲まれた窓と、前記可動ブリッジに支持された少なくとも1つのフックとを含み、当該フックは、前記窓に挿入される。
【0015】
‐前記保護壁は、ガス発生材料(gasogenic material)で作製されている。
【0016】
‐前記第2の底板は、遮断ガスを取り除くための少なくとも1つのチャネルであって、前記ハウジング内の前記絶縁壁によって画定された容積と連通した入口開口を、前記ハウジングの外部と連通した出口開口に流体的に接続するチャネルを包含する。
【0017】
‐前記保護壁は、前記第2の底板に直交する前記方向に沿って、前記絶縁壁の全高さに渡って延在する。
【0018】
‐前記絶縁壁は、前記第2の底板に取り付けられたブロー部品(blow piece)によって少なくとも部分的に形成されている。
【0019】
他の態様によれば、本発明は、1つ以上のハウジングを含むベースプレートと、前記ベースプレートの前記ハウジングの1つに収納されるようになっている取り外し可能な電流スイッチング要素であって、前記取り外し可能なスイッチング要素の前記固定電気接点が前記スイッチギヤの接続ランドに電気的に接続される、取り外し可能な電流スイッチング要素と、を備え、前記電流スイッチング要素は上述したようなものである、電流をスイッチングするための電気スイッチギヤに関する。
【0020】
添付図面を参照しながら単に例として提供される取り外し可能なスイッチング要素の一実施形態の以下の説明を踏まえると、本発明はより良く理解され、本発明の他の利点はより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明による取り外し可能なスイッチング要素を含む電気スイッチギヤの概略斜視図である。
【
図2】
図2は、互いに分離した
図1の取り外し可能なスイッチング要素の第1の部分および第2の部分の概略縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図1から
図3の取り外し可能なスイッチング要素の第2の部分の概略分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の取り外し可能なスイッチング要素の第2のハウジング部分の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、産業用接触器のような電流をスイッチングするための電気スイッチギヤ2を示す。電気装置2は、例えば、電気モータに電力を供給するための電力供給ラインに接続されるようになっている。
【0023】
電気装置2の機能は、例えば多相AC電流のような、1つ以上の電流導体を介して流れる電流を選択的に遮断することである。
【0024】
ここで電気装置2は、例えば電気スイッチボードに備え付けられるようになっている、ベースプレート4と、ここでは“スイッチングバルブ”と称される、1つ以上の取り外し可能な電流スイッチング要素6とを含む。各取り外し可能な要素6は、電流、例えば多相電流の一の電気位相、を遮断することに適している。
【0025】
また電気装置2は、取り外し可能な要素6を制御するためにベースプレート4の前面に収納されるようになっている制御アクチュエータ(不図示)を含む。
【0026】
図示の本実施例では、電気装置2は、3つの電気位相を含む三相交流を遮断することに適している。それゆえ電気装置2は、3つの取り外し可能な要素6を収納することに適しており、各取り外し可能な要素6が、これらの電気位相の1つと関連付けられている。
【0027】
ここでベースプレート4は、3つの符号が付けられた、互いに同一のハウジング8、8’、8’’を含む。各ハウジング8、8’、8’’は、取り外し可能な要素6を収納することに適している。それゆえ、ハウジング8、8’、8’’は、取り外し可能な要素6に対して相補的な形状になっている。
【0028】
ここでハウジング8、8’、8’’は、好ましくは、樹脂材料のような電気絶縁材料で作製された分離壁10によって対になるように分離されている。ここで分離壁10は、取り外し可能な要素6の挿入を案内するための溝12を含む。
【0029】
変形例として、取り外し可能な要素6の数は異なっていてもよい。そのときベースプレート4は、それに応じて適応される。
【0030】
図1を簡略化するため、取り外し可能な要素6の1つの例のみが図示されている。本実施例では、取り外し可能な要素6は、互いに同一である。取り外し可能な要素6は、ハウジング8内に収納されて図示されている。
【0031】
図2および
図3に図示されるように、取り外し可能な要素6は、第1の部分20と第2の部分22とによって形成されるハウジングを含む。後に詳細に説明されるように、これらの第1の部分20と第2の部分22は、ここでは区別されており、互いに分離可能である。
【0032】
前側部分とも称される第1の部分20は、第1の底板24を含む。第1の底板24は、取り外し可能な要素6の実質的に平坦な前面26を形成する。前面26には、貫通窓28が設けられている。
【0033】
前側部分20は、接続端子30を更に含む。接続端子30は、底板24に取り付けられており、取り外し可能な要素6を電気回路に接続するように、装置2の電気接続ランドに接続されるようになっている。ここで、これらの端子30は2つを数え、互いに電気的に絶縁されている。
【0034】
例えば、端子30は、前側部分20の内部からその外部まで延在し、留めねじ32によって接続ランドに固定保持されている。これらの端子30は、固定電気接点34を含む。固定電気接点34は、取り外し可能な要素6の電気的可動接点36と協働するようになっている。ここで、これらの固定接点34は、前側部分20内に収納されている。
【0035】
本実施例では、前側部分20は、長軸Zに沿って延びた長方形(oblong)の形状をしている。ここでZ軸は、取り外し可能な要素6がベースプレート4内に収納されたときの垂直方向に対応する。例えば、2つの端子30は、このZ軸に平行に延在する。
【0036】
“X”は、前面26と前側部分20の長軸Zとに直交する軸を示している。“Y”は前側部分20の横軸を示しており、この横軸YはX軸とZ軸とに直交する。
【0037】
ここで前側部分20は、Y軸に直交した、前側部分20の長手中央平面のいずれかの側に平行に延在する側壁38を含む。ここで側壁38には、側部空間46が設けられている。
【0038】
更に、前側部分20は、上部壁40と下部壁42とを含んでおり、上部壁40と下部壁42は、X軸とY軸とに平行な横中央平面に平行に延在する。これらの壁40および壁42は、アタッチメント部材44を支持しており、アタッチメント部材44の役割は、後に詳細に記載される。
【0039】
前側部分20の壁38、壁40、および壁42によって確定される内部容積は、“48”に示される。
【0040】
図2から
図5に図示されるように、ハウジングの後側部分22は、第2の底板50を含む。第2の底板50は、ここでは取り外し可能な要素6の実質的に平坦な背面52を形成する。
【0041】
取り外し可能な要素6の組立形態において、後側部分22は、前側部分20の容積48内に収納されている。そのとき底板24と底板50は、反対側で互いに対向している。
【0042】
本実施形態では、前側部分20と後側部分22は、好ましくは取り外し可能な要素6がベースプレート4の外側に配置されているときに、互いに可逆的に分離可能である。これにより、特に、例えば予防的なメンテナンス作業の間に、作業者が電気接点34、36の摩耗を評価するために電気接点34、36を検査することが可能になる。
【0043】
しかしながら、変形例として、部分20と部分22が互いに恒久的に溶着されていてもよい。
【0044】
後側部分22は、縦軸Z’に沿って延びた長方形の形状をしている。
図3では、“X’”は、“Z’”軸と背面52とに直交する軸を示している。更に、“Y’”は、X’軸とZ’軸とに直交して延在する縦軸を示している。
【0045】
取り外し可能な要素6の組立形態において、Z軸とZ’軸は、互いに統合される。X軸とX’軸、Y軸とY’軸についても同様である。
【0046】
後側部分22は、可動接点36を含む。ここで、これらの可動接点36は2つを数え、互いに電気的に接続されている。
【0047】
取り外し可能な要素6の組立形態において、可動接点36は、対応する固定接点34に対向して位置している。可動接点36は、互いに区別される開位置と閉位置との間で、固定接点34に対して選択的かつ可逆的に移動可能である。ここで、この移動は、X’軸に平行な移動の方向に沿って並進して行われる。
【0048】
開位置において、電気接点34と電気接点36は、互いに離間しており、それゆえ周囲空気によって互いに電気的に絶縁されている。閉位置において、接点34の各々は対応する可動接点36と接触し、電流が2つの端子30の間を流れることを許可する。
【0049】
この移動を可能にするため、本実施例では、後側部分22は、底板50に対してX’軸に沿って並進移動可能な可動接点ホルダ54を含む。この可動接点ホルダ54は、把持部材56と電気的導体要素58とを含み、これらは合わせて可動ブリッジと称され、ここでは平板の形状をしており、可動接点36を互いに接続する。
【0050】
把持部材56は、開位置と閉位置との間で可動接点36の移動を駆動するために、スイッチギヤ2のアクチュエータに機械的に結合するようになっている。取り外し可能な要素6の組立形態において、窓28は、把持部材56の通過を可能にしている。
【0051】
例えば、可動接点ホルダ54は、要素58に固く接続されて把持部材56が取り付けられた電気絶縁材料で作製された胴体を含む。ここで把持部材56は、ねじ頭である。
【0052】
また可動接点ホルダ54は、螺旋ばねのような弾性復帰部材60を含む。弾性復帰部材60は、装置2のアクチュエータによって力が与えられていないときに可動接点36を開位置に復帰するように、移動の方向X’に沿って、可動ブリッジ58に復帰力を与えるために配置されている。
【0053】
図示の本実施例によれば、ここでは可動接点36は、Z’軸に沿って可動ブリッジ58のいずれかの側に位置しており、この可動ブリッジ58は、後側部分22内の中央位置を占めている。
【0054】
本実施形態では、また後側部分22は、アタッチメント部材62を含む。アタッチメント部材62は、前側部分20に支持されたアタッチメント部材44と協働するようになっている。これらのアタッチメント部材44、62は、部分20と部分22が互いに可逆的に固く接続されることを可能にしている。
【0055】
それゆえ、部分20と部分22は、例えば取り外し可能な要素6の内部を視覚的に検査するために、作業者によって容易に互いに分離することができ、そして、それらは同じように容易に共に組み立て直すことができる。これは取り外し可能な要素6と電気装置2のメンテナンスを容易にする。
【0056】
例えば、部材44と部材62は、スナップ留めによって取り付け可能である。ここで部材44は、開口のような雌部材である。一方、部材62は、ここでは底板50に単一部品として形成された、変形可能なフックのような雄部材である。変形例として、部材44と部材62は、それぞれ雄部材と雌部材であってもよい。
【0057】
本実施例では、また後側部分22は、案内部64を含む。案内部64は、可動ブリッジ54が移動の方向X’に沿って並進移動することを可能にする。
【0058】
ここで案内部64は、後側部分22の側壁66と同じ高さで形成されている。ここで側壁66は、X’軸とZ’軸とに平行な方向に沿って可動接点ホルダ54のいずれかの側に延在している。
【0059】
組立形態において、側壁66は、側部空間46に収納されている。それゆえ、側壁66と側部空間46の形状は相補的になるように選択されていると理解される。
【0060】
ここで側面壁66は、平坦な形状であり、X’軸に沿って延在しガイドレールを形成する長方形開口68、または窓68を含む。開口68は、所定の行程でX’軸に沿った可動接点ホルダ54の移動を制限する停止端を形成するエッジ70によって画定される。
【0061】
相補的に、可動接点ホルダ54は、開口68内に収納されたフック72を含む。これらのフック72は、例えば開口68へのそれらの挿入を容易にするようになっている傾斜エッジ73を含む。
【0062】
また底板50は、遮断ガスを取り除くためのチャネル74を含む。チャネル74の機能は、遮断ガスが冷却されることを可能にするとともに、それらが取り外し可能な要素6の外へ搬送されることを可能にすることである。
【0063】
知られた態様では、電気接点34と電気接点36が電流の存在下で分離されたとき、周囲空気をイオン化する電気アークが現れ、遮断ガスを発生させる。遮断ガスの温度は高く、好ましくは、アセンブリ6から吐き出される前に冷却されるべきである。具体的には、この遮断ガスは熱いときに導電性がある。十分に冷却されずに取り外し可能な要素6から吐き出されると、装置2の接続ランド間で電流のループバック、すなわち短絡のおそれがある。それは危険であり明らかに望ましくない。
【0064】
それゆえ、第2の底板50は、有利には、遮断ガスを取り除くための少なくとも1つのチャネル74を含む。チャネル74は、前側部分20の内部した入口開口を、ハウジングの外部と連通した出口開口に流体的に接続する。ここで前側部分20の内部は、背面52に背を向けた底板50の表面に対応する。すなわち、それらは、アセンブリ6が組立形態のときに前側部分20に対向している。
【0065】
この除去チャネル74は、その冷却を促進するように遮断ガスの経路を延長するようになっているバフリング(baffling、不図示)を含んでいてもよい。
【0066】
例えば、チャネル74は、底板50の外面と連通している。底板50は、後に説明されるように、このチャネル74の1つ以上の入口開口を含む。
【0067】
また後側部分22は、絶縁壁80を含む。これらの壁80は、ここでは方向X’に、底板50から延在する。これらの絶縁壁80は、電気接点36を少なくとも部分的に囲む。本実施例では、絶縁壁80は2つを数え、各々が可動接点36のうちの1つを囲んでいる。ここで絶縁壁80は、可動ブリッジ54のいずれかの側に位置している。本実施例では、壁80は同一であり、可動ブリッジ54に対して対称的に位置している。
【0068】
各絶縁壁80は、対応する可動接点36の周囲に消弧室を形成する容積を画定する。好ましくは、X’軸に平行に測定される絶縁壁80の高さは、X’軸に沿った可動ブリッジ54の行程以上である。
【0069】
ここで除去チャネル74は、これらの消弧室の各々における入口開口を含む。変形例として、また底板50は、各々が消弧室の1つのみと関連付けられた1つの入口開口を有する複数のチャネル74を含んでいてもよい。
【0070】
図4および
図5に図示されるように、ここでは各絶縁壁80は、底板50に取り付けられた“ブロー部品”と称される、部品82によって少なくとも部分的に形成されている。本実施例では、これらの絶縁壁80を参照して記述されたものが部品82にも適用されるように、底壁80は部品82によって完全に形成されている。
【0071】
ブロー部品82は、例えば強磁性材料のような磁性材料で作製されており、その機能は、対応する可動接点36と同じ高さを形成する電気アークのブロー、すなわち消滅を促進することである。部品82は、消弧室の特定の領域に向けて電気アークを案内する磁場を発生する。
【0072】
ここで各ブロー部品82は、U字の形状をしている。より具体的には、ここではこの部品82のベースがU字の形状をしており、部品82は、X’軸に平行にこのベースから並進して延在している。部品82は、対応する可動接点36のいずれかの側に位置付けられた2つの両側の同一の側面隔壁を含む。側面隔壁は、Y’軸に直交しかつX’軸とZ’軸とに平行に、それゆえ底板50に直交して延在する。これらの側面隔壁は、X’軸に平行に立ち上り、部品82のU字形状の底83を形成する湾曲した隔壁によって互いに接続されている。また側面隔壁は、末端エッジを含んでおり、末端エッジは、湾曲した隔壁とは反対側に配置され、X’軸に平行に延在する。後では、部品82の側面隔壁の“末端エッジ”は、対応する遮断壁80の末端エッジに対応する。
【0073】
また取り外し可能な要素6のハウジングは、保護壁84を含む。保護壁84は、ここでは両側の側面隔壁と同じ高さにある、絶縁壁80の内面を少なくとも部分的に覆う。“内面”という用語は、対応する可動接点36に対向した絶縁壁80の面を称している。ここではこれらの内面は、部品82の側面隔壁の内面に対応する。
【0074】
好ましくは、これらの壁84は、壁80の高さ全体に渡って延在する。ここで、この高さは、X’軸に沿って規定される。
【0075】
これらの保護壁は、特に絶縁壁を、それゆえ部品82を、電気アークによって引き起こされる損傷から保護することに役立つ。
【0076】
保護壁84は、底板50と共に単一部品として形成されている。例えば、それらは、モールディングによって作製された全く同一の部品である。
【0077】
図示による本実施例では、保護壁84は、部品82の各側面隔壁に沿って延在する。それゆえ、ここでは部分22は、4つの壁84を含んでいる。
【0078】
好ましくは、保護壁84は、ガス発生材料で作製されている。“ガス発生材料”という用語は、この材料が例えば800℃以上の高い温度まで上昇したときに、水素のような冷却ガスを発生させる材料を称している。ガス発生材料によって発生した冷却ガスは、電気アークの消滅を促進する。ここではガス発生材料は、ポリアミド、例えばポリアミドPA6.6、のような、好ましくはガラス繊維の豊富な、合成材料である。
【0079】
有利には、保護壁84は、高さ全体に渡って絶縁壁80の末端エッジを覆い囲む折り重ねエッジ86を含む。より具体的には、各エッジ86は、対応する壁84と共に単一部品として形成され、この絶縁壁80の外面の一部を覆うように、側面隔壁に対して折り返された延長部分として、側面隔壁の内面を越えて延在する。本実施例では、末端エッジはX’軸に平行に延在しているので、このとき折り重ねエッジ86は、X’軸に平行な方向の周りでこれらのエッジを囲んでいる。
【0080】
折り重ねエッジ86は、保護壁84の有効性を改善する。特に、それらは遮断ガスに対する気密性を更に改善する。
【0081】
保護壁84を底板50と共に単一部品として形成することによって、これらの保護壁84の気密性が、絶縁壁80の気密性と同様、特に取付部品82と底板50との間の接合と同じ水準に改善される。このようにして、冷却されていない遮断ガスが消弧室から漏れ出て装置2中に広がるおそれが制限される。逆に、この改善された気密性のおかげで、遮断ガスは除去チャネル74を介して取り除かれ、それゆえより冷却される。これは、取り外し可能な要素6の外部への電流のループバックのおそれを制限する。装置2の安全性と信頼性は、それゆえ改善される。
【0082】
この設計は、ハウジング部分20、22が互いに分離可能であるときに特に有利である。具体的には、このような分離性は取り外し可能な要素6に構造的な制約を加え、それによってハウジングの気密性を低下させる。それゆえ、このような保護壁84の利用が、取り外し可能な要素6が、遮断ガスが漏れ出すおそれを増大させるように開かれる可能性がなく、可逆的に開かれることを可能にする。
【0083】
保護壁84は底板50と共に単一部品として形成されるので、それらは底板50と同時に、例えば全く同一のモールディング作業において作製される。それゆえ、後側部分22は、それらの保護壁84が底板50に追加部品を取り付けることによって生産されるよりも、より簡単に作製される。それゆえ、取り外し可能な要素6は、産業規模でより簡単に製造される。
【0084】
上記で検討された実施形態と変形例は、新しい実施形態を創作するように互いに組み合わされてもよい。