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  • 特許-加熱調理器用感熱装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】加熱調理器用感熱装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20220905BHJP
   F24C 3/12 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
A47J27/00 105Z
A47J27/00 103M
F24C3/12 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018102011
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019205596
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】畑岡 完
【審査官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-192003(JP,A)
【文献】特開2001-245784(JP,A)
【文献】特開昭55-070223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00 - 27/13
A47J 27/20 - 29/06
A47J 33/00 - 37/07
F24C 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器を加熱する熱源を有する加熱調理器に設けられる加熱調理器用感熱装置であって、上端が蓋板で閉塞され、この蓋板が調理容器の底部下面に当接するように配置される筒状のケースと、ケース内に上下動自在に収納される可動体と、可動体に垂設された、ケースの下方にのびる検知ロッドとを備え、調理容器の底部下面の温度が所定温度以上になったときに検知ロッドが下動するようにし、調理容器は加熱調理器から取外し可能であるものにおいて、
可動体に、蓋板に対向するように固定された永久磁石を備えるとともに、調理容器の底部下面には、ケースの蓋板に対する当接部に強磁性材料から成る感熱体を備え、調理容器の底部下面の温度が感熱体の温度をキュリー温度以上とする所定温度以上に上昇するまでは、永久磁石が蓋板を挟んだ状態で感熱体に吸着して、検知ロッドが上動端位置に保持され、調理容器の底部下面の温度が所定温度以上に上昇したときは、感熱体が強磁性から常磁性に変化することで感熱体に対する永久磁石の吸着が解除されて、検知ロッドが上動端位置から下動することを特徴とする加熱調理器用感熱装置。
【請求項2】
前記調理容器の前記当接部の下面に、前記感熱体の設置部を覆う封止部材が取付けられることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器用感熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理容器を加熱する熱源を有する炊飯器等の加熱調理器に設けられる加熱調理器用感熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の感熱装置として、上端が蓋板で閉塞され、この蓋板が調理容器の底部下面に当接するように配置される筒状のケースと、ケース内に上下動自在に収納される可動体と、可動体に垂設された、ケースの下方にのびる検知ロッドとを備え、蓋板の下面に強磁性材料から成る感熱体を固定すると共に、可動体の上面に永久磁石を固定したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、調理容器の底部下面の温度が低いと、感熱体が強磁性であることから、永久磁石が感熱体に吸着して、検知ロッドが上動端位置に保持されるが、調理容器の底部下面の温度が所定温度以上に上昇すると、感熱体が調理容器からの伝熱によるキュリー温度以上への温度上昇で強磁性から常磁性に変化し、感熱体に対する永久磁石の吸着が解除されて、検知ロッドが上動端位置から下動する。そして、特許文献1に記載のものでは、検知ロッドの下動により、調理容器を加熱する熱源の作動が停止される。
【0003】
上記従来例のものでは、感熱体が調理後も熱源の蓄熱の影響を受け、調理中に一旦高温になった感熱体の温度がキュリー温度以下に低下するまでにはかなりの時間がかかってしまう。そのため、業務用等で調理終了後すぐに次の調理を開始しようとしても、感熱体が常磁性のままとなって、検知ロッドを上動端位置に保持できず、次の調理を開始できなくなったり、感熱体がある程度の温度低下で強磁性になって次の調理を開始できても、調理開始から短時間で感熱体が常磁性になって、検知ロッドが下動し、熱源の早過ぎる作動停止、所謂早切れを生ずる。従って、次の調理を正常に行うためには、前の調理終了から次の調理開始までかなりの時間待つことが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-245784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、前の調理終了から次の調理開始までの待ち時間を可及的に短縮できるようにした加熱調理器用感熱装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、調理容器を加熱する熱源を有する加熱調理器に設けられる加熱調理器用感熱装置であって、上端が蓋板で閉塞され、この蓋板が調理容器の底部下面に当接するように配置される筒状のケースと、ケース内に上下動自在に収納される可動体と、可動体に垂設された、ケースの下方にのびる検知ロッドとを備え、調理容器の底部下面の温度が所定温度以上になったときに検知ロッドが下動するようにし、調理容器は加熱調理器から取外し可能であるものにおいて、可動体に蓋板に対向するように固定された永久磁石を備えるとともに、調理容器の底部下面には、ケースの蓋板に対する当接部に強磁性材料から成る感熱体を備え、調理容器の底部下面の温度が感熱体の温度をキュリー温度以上とする所定温度以上に上昇するまでは、永久磁石が蓋板を挟んだ状態で感熱体に吸着して、検知ロッドが上動端位置に保持され、調理容器の底部下面の温度が所定温度以上に上昇したときは、感熱体が強磁性から常磁性に変化することで感熱体に対する永久磁石の吸着が解除されて、検知ロッドが上動端位置から下動することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、感熱体が調理容器の底部下面の当接部に設けられるため、調理終了後、加熱調理器から調理容器を取外して洗浄する際に、当接部を冷却することで、感熱体を次の調理を正常に行うことができる温度まで早期に冷却することができる。従って、前の調理終了から次の調理開始までの待ち時間を可及的に短縮できる。尚、底部下面の当接部に感熱体を設けた調理容器を少なくとも2個用意して、これら調理容器を交互に使用すれば、感熱体の冷却を持つことなく次の調理を開始することができる。
【0008】
また、本発明においては、調理容器の当接部の下面に、感熱体の設置部を覆う封止部材が取付けられることが望ましい。これによれば、感熱体の設置部への煮こぼれ等の浸入を封止部材により阻止し、煮こぼれに起因する腐食で感熱体が脱落することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の感熱装置を具備する加熱調理器の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態の感熱装置1を具備する炊飯器から成る加熱調理器の要部を示している。この加熱調理器は、器体2内に配置した、炊飯器の内釜から成る調理容器3を加熱する熱源たる環状のバーナ4を備えている。このバーナ4は、器体2の外面に露出する図外の炊飯摘みの押し下げ操作で点火される。
【0011】
感熱装置1は、バーナ4で囲われる中央空間に配置した、上端が蓋板11aで閉塞される筒状のケース11を備えている。このケース11の下面には、器体2内の支持台21に形成した透孔に挿通される複数のガイド片11bが垂設されている。そして、ケース11が、支持台21に対しガイド片11bを介して上下動自在に支持されるようにしている。
【0012】
感熱装置1は、更に、ケース11内に上下動自在に収納された可動体12と、可動体12に垂設された、ケース11の下方にのびる検知ロッド13と、可動体12に、蓋板11aに対向するように固定された永久磁石14と、調理容器3の底部下面に突設した、蓋板11aに対する当接部31に設けられた強磁性材料から成る感熱体15とを備えている。尚、感熱体15を形成する強磁性材料としては、キュリー温度が125℃程度のフェライトが好適である。また、永久磁石14は、可動体12の上面に固定したヨーク16に固定されている。
【0013】
また、当接部31の下面には、上方に凹入する凹部31aが形成されて、この凹部31aに感熱体15が埋設されている。そして、当接部31の下面に、感熱体15の設置部たる凹部31aを覆う非磁性材料製の封止部材31bを取付けている。これによれば、感熱体15の設置部への煮こぼれ等の浸入を封止部材31bにより阻止し、煮こぼれに起因する腐食で感熱体15が脱落することを防止できる。
【0014】
検知ロッド13の下端部には、下方に抜け止めされたワッシャ13aが装着されると共に、ワッシャ13aより上方位置で下バネ受け13bが上下動自在に装着され、更に、下バネ受け13bより上方位置で上バネ受け13cが固定され、下バネ受け13bと上バネ受け13cとの間にクッションバネ13dが介設されている。また、炊飯摘みの押し下げ操作で上方に揺動する連動レバー17を設けて、連動レバー17の先端の二股状の係合部17aをワッシャ13aと下バネ受け13bとの間で検知ロッド13に係合させている。
【0015】
ここで、常時は、ケース11が支持台21に着座する下降位置に存する。この状態から炊飯摘みの押し下げ操作で連動レバー17が上方に揺動すると、係合部17aから下バネ受け13bとクッションバネ13dと上バネ受け13cとを介して伝達される力で検知ロッド13が押し上げられて、可動体12が上動する。そして、永久磁石14が蓋板11aに当接したところでケース11が下降位置から押し上げられ、図1に示す如く、検知ロッド13は、蓋板11aが調理容器3の当接部31に当接する上動端位置まで押し上げられる。この際、調理容器3の温度が低いため、感熱体15は強磁性であって、永久磁石14が蓋板11aを挟んだ状態で感熱体15に吸着し、炊飯摘みの押し下げ操作を解除しても検知ロッド13は上動端位置に保持される。
【0016】
その後、バーナ4の燃焼による調理容器3の加熱で、調理容器3の底部下面の温度が所定温度以上に上昇すると、感熱体15が調理容器3からの伝熱によるキュリー温度以上への温度上昇で常磁性に変化し、感熱体15に対する永久磁石14の吸着が解除されて、検知ロッド13が上動端位置から下動する。そして、検知ロッド13の下動による連動レバー17の下方への揺動でバーナ4が消火される。
【0017】
ところで、調理終了後に、感熱体15の温度が十分に低下する前に次の調理を開始すると、感熱体15が常磁性のままとなって、検知ロッド13を上動端位置に保持できず、次の調理を開始できなくなったり、感熱体15がある程度の温度低下で強磁性になって次の調理を開始できても、調理開始から短時間で感熱体15が常磁性になって、検知ロッド13が下動し、バーナ3の早過ぎる消火、所謂早切れを生ずる。
【0018】
ここで、本実施形態の如く感熱体15を調理容器3の底部下面の当接部31に設ければ、調理終了後、加熱調理器から調理容器3を取外して洗浄する際に、当接部31を冷却することで、感熱体15を次の調理を正常に行うことができる温度まで早期に冷却することができる。従って、前の調理終了から次の調理開始までの待ち時間を可及的に短縮できる。尚、底部下面の当接部31に感熱体15を設けた調理容器3を少なくとも2個用意して、これら調理容器3を交互に使用すれば、感熱体15の冷却を持つことなく次の調理を開始することができる。
【0019】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、調理容器3の当接部31の下面に形成した凹部31aに感熱体15を埋設しているが、当接部31の下面に凹部31aを形成せずに感熱体15を固設し、この感熱体15の設置部を覆うようにして当接部31の下面に封止部材31bを取付けてもよい。また、上記実施形態では、検知ロッド13の押し上げに伴う可動体12の上動でケース11が下降位置から押し上げられるようにしているが、ケース11を上方に付勢支持し、調理容器3のセット時に調理容器3の当接部31が蓋板11aに当接して、ケース11が定位置に押し下げられるようにすることも可能である。また、上記実施形態は炊飯器から成る加熱調理器に設けられる感熱装置に本発明を適用したものであるが、炊飯器以外の加熱調理器に設けられる感熱装置にも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0020】
1…感熱装置、11…ケース、11a…蓋板、12…可動体、13…検知ロッド、14…永久磁石、15…感熱体、3…調理容器、31…当接部、31b…封止部材、4…バーナ(熱源)。
図1