IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンスター株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20220905BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20220905BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/60
A61Q11/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018124636
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020002093
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 修平
(72)【発明者】
【氏名】井手上 拓
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-332238(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005422(WO,A1)
【文献】特開2005-232020(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103655297(CN,A)
【文献】特開2008-195665(JP,A)
【文献】Producciones Infovision, Ultra Hydrating Whitening Cream, 2008年4月, Mintel GNPD [online],[検索日2022.02.25], インターネット<URL:https://portal.mintel.com>, ID#:894957
【文献】Mandom, Hair Treatment Wax, 2006年12月, Mintel GNPD [online],[検索日2022.02.25], インターネット<URL:https://portal.mintel.com>, ID#:623203
【文献】Florena Cosmetic, Creme Skincare, 2003年1月, Mintel GNPD [online],[検索日2022.02.25], インターネット<URL:https://portal.mintel.com>, ID#:183544
【文献】Dax Cosmetics, Ziolowy Koktajil do Ciala Vein Reducing Body Mask, 2005年3月, Mintel GNPD [online] ,[検索日2022.02.25], インターネット<URL:https://portal.mintel.com>, ID#:347839
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭化水素油、
(B)ソルビトール、並びに
(C)ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル及び/又はアルキルグリコシド
を含有する乳化組成物であって、
(A)を40~80質量%、(B)を10.5~38.5質量%、(C)を1~5質量%、水を20質量%以下含有する、口腔用乳化組成物
【請求項2】
炭化水素油がパラフィンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルが、炭素数8~24の脂肪酸とポリグリセリンとのモノエステルである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルが、ポリグリセリンモノカプリン酸エステル、ポリグリセリンモノラウリン酸エステル、ポリグリセリンモノミリスチン酸エステル、ポリグリセリンモノステアリン酸エステル、ポリグリセリンモノパルミチン酸エステル、及びポリグリセリンモノオレイン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルのポリグリセリンが平均4~12のグリセリン単位を含む、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
さらにグリセリン及び/又はプロピレングリコールを含み、非水系である、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
ゲル状又はクリーム状である、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳化組成物等に関し、より詳細には口腔用乳化組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
水分含有量が比較的少なく炭化水素油を比較的多く含む組成物は、通常経時安定性が悪く、乳化剤を用いて乳化したとしても、長期間保存すると炭化水素油が分離してしまうことがしばしばである。このため各用途(例えば口腔用組成物)に用いることが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-189550号公報
【文献】特開2009-95253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、炭化水素油を含みながらも経時安定性が良好である乳化組成物を調製することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、炭化水素油、ソルビトール、並びにポリグリセリンモノ脂肪酸エステル及び/又はアルキルグリコシドを含有する乳化組成物は、炭化水素油を含みながらも経時安定性が良好である可能性を見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(A)炭化水素油、
(B)ソルビトール、並びに
(C)ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル及び/又はアルキルグリコシド
を含有する乳化組成物。
項2.
口腔用である、項1に記載の組成物。
項3.
炭化水素油がパラフィンである、項1又は2に記載の組成物。
項4.
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルが、炭素数8~24の脂肪酸とポリグリセリンとのモノエステルである、項1~3のいずれかに記載の組成物。
項5.
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルが、ポリグリセリンモノカプリン酸エステル、ポリグリセリンモノラウリン酸エステル、ポリグリセリンモノミリスチン酸エステル、ポリグリセリンモノステアリン酸エステル、ポリグリセリンモノパルミチン酸エステル、及びポリグリセリンモノオレイン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種である、項1~3のいずれかに記載の組成物。
項6.
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルのポリグリセリンが平均4~12のグリセリン単位を含む、項1~5のいずれかに記載の組成物。
項7.
水の含有量が20質量%以下である、項1~6のいずれかに記載の組成物。
項8.
さらにグリセリン及び/又はプロピレングリコールを含み、非水系である、項1~7のいずれかに記載の組成物。
項9.
ゲル状又はクリーム状である、項1~8のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
炭化水素油を含みながらも経時安定性に優れた乳化組成物が提供される。当該乳化組成物は好ましく各種用途に用いることができる。例えば、口腔用に用いることができる。この場合、炭化水素油を含みながらも経時安定性に優れた口腔用乳化組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本発明は、乳化組成物、当該乳化組成物の用途(特に口腔用)、当該組成物の製造方法等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本発明は本明細書に開示される全てを包含する。
【0009】
本発明に包含される乳化組成物は、(A)炭化水素油、(B)ソルビトール、並びに(C)ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル及び/又はアルキルグリコシドを含有する。以下、当該乳化組成物を「本発明の乳化組成物」と表記することがある。また、当該乳化組成物を口腔用に用いた組成物を「本発明の口腔用乳化組成物」と表記することがある。またさらに、前記(A)~(C)の各成分を「(A)成分」、「(B)成分」、「(C)成分」などと表記することがある。
【0010】
炭化水素油としては、スクワラン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、セレシン、リモネン、テレビン油等が例示でき、特に口腔用組成物に用いられる公知の炭化水素油が好ましく、中でもスクワラン及びパラフィンが好ましく、特にパラフィンが好ましい。スクワランとしては動物性スクワラン及び植物性スクワランのどちらも用いることができ、例えばサメスクワラン、オリーブスクワラン等を好ましく用いることができる。また、パラフィンとしては、流動パラフィンが好ましく、特に軽質流動パラフィンがより好ましい。炭化水素油は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数が8~24(8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24)の飽和又は不飽和脂肪酸とポリグリセリンとのモノエステルが好ましい。
【0012】
当該脂肪酸の炭素数は、より好ましくは8~22であり、さらに好ましくは10~20であり、よりさらに好ましくは12~18である。また、当該脂肪酸は飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸の場合は炭素間二重結合数が1、2、3、又は4であることが好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。当該脂肪酸としては、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸等が好ましく例示され、中でもカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸が好ましい。また、これらの脂肪酸を含む、ヤシ油脂肪酸及びパーム油脂肪酸といった天然の脂肪酸を用いてもよい。すなわち、当該天然脂肪酸には前記特定の脂肪酸が含まれていることから、当該天然脂肪酸を用いた乳化組成物は、前記特定の脂肪酸を用いた乳化組成物に包含される。
【0013】
また、当該ポリグリセリンは、平均4~12(4、5、6、7、8、9、10、11、又は12)のグリセリン単位(-OCHCH(OH)CH-)を含むことが好ましく、平均5~10のグリセリン単位を含むことがより好ましい。
【0014】
好ましいポリグリセリンモノ脂肪酸エステルとして、具体的には、例えば、ポリグリセリンモノカプリン酸エステル、ポリグリセリンモノラウリン酸エステル、ポリグリセリンモノミリスチン酸エステル、ポリグリセリンモノステアリン酸エステル、ポリグリセリンモノパルミチン酸エステル、及びポリグリセリンモノオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0015】
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
アルキルグリコシドは、高級アルコールと糖とがグリコシド結合した構造を有する化合物である。
【0017】
当該高級アルコールとしては、例えば炭素数6~18(6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18)のアルキルアルコールが好ましく、炭素数8~16のアルキルアルコールがより好ましい。当該アルキルアルコールは、直鎖若しくは分岐鎖状であってよく、直鎖状であることが好ましい。また、当該アルキルアルコールが有するOH基数は1であることが好ましい。
【0018】
当該糖(高級アルコールとグリコシド結合する糖)としては、単糖又は多糖であってよく、多糖である場合には例えば2~6(2、3、4、5、又は6)糖が好ましく、中でも2又は3糖が好ましい。単糖としては、例えばグルコース、マルトース等が好ましく、グルコースが中でも好ましい。また、多糖としては、例えばグルコース及びマルトースからなる群より選択される少なくとも1種が複数グリコシド結合で結合したものが好ましく、特にグルコースがグリコシド結合したものが好ましい。グリコシド結合はα又はβグリコシド結合であり得る。
【0019】
なお、本発明の効果が奏される限り特に制限されるわけではないが、用いる(C)成分のHLBは、例えば10~18程度が好ましい。当該範囲の上限若しくは下限は、例えば10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、又は17.5であってもよい。
【0020】
本発明の乳化組成物における(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の含有量は、乳化組成物が調製でき、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、特に制限されない。
【0021】
例えば、(A)成分60質量部に対して、(B)成分5~60質量部程度が好ましい。当該質量部比範囲の上限若しくは下限は、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19,20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、又は59質量部であってもよい。特に制限されないが、例えば、5~50又は5~40質量部程度がより好ましく、10~35又は10~30質量部程度がよりさらに好ましい。
【0022】
また例えば、(A)成分60質量部に対して、(C)成分0.5~10質量部程度が好ましい。当該質量部比範囲の上限若しくは下限は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9質量部であってもよい。特に制限されないが、例えば、1~9又は2~9質量部がより好ましく、3~8質量部がさらに好ましい。
【0023】
また、本発明の効果が損なわれない限り、特に制限はされないが、例えば、本発明の乳化組成物において、(A)成分は40~80質量%程度含まれること好ましく、45~75質量%程度含まれることがより好ましく、50~70質量%程度含まれることがさらに好ましく、55~65質量%程度含まれることがよりさらに好ましい。また、(B)成分は、5~59質量%程度含まれることが好ましく、5~45質量%程度含まれることがより好ましく、10~40質量%程度又は15~35質量部程度含まれることがさらに好ましく、20~30質量部程度含まれることがよりさらに好ましい。また、(C)成分は、0.5~10質量%程度含まれることが好ましく、1~9質量%程度又は2~9質量%程度含まれることがより好ましく、3~8質量%程度含まれることがさらに好ましい。
【0024】
本発明の乳化組成物は、水を含んでいてもよい。但し、比較的少量の水を含むことが好ましい。具体的には、例えば水の含有量は20質量%以下であることが好ましく、19、18、17、16、又は15質量%以下であることがより好ましい。また、当該水の含有量範囲の上限は、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0.5質量%であってもよい。
【0025】
本発明の乳化組成物は、水を含まない組成物(すなわち、非水系組成物)であってもよい。ただし、不可避的不純物として除去困難な量の水が当該組成物に含まれる場合については、ここでの「非水系組成物」に包含される。
【0026】
本発明の乳化組成物が非水系組成物である場合には、当該乳化組成物は、さらに(D)グリセリン及び/又はプロピレングリコールを含むことが好ましい。なお、以下、これらの成分を「(D)成分」と表記することがある。
【0027】
当該非水系組成物における、グリセリン及び/又はプロピレングリコール(D成分)の含有量は、含有される(B)成分と(D)成分との合計量を100質量部としたとき、30質量部以上100質量部未満であることが好ましい。当該質量部比の下限又は上限は、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99であってもよい。例えば、当該質量部比の下限は、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、又は70質量部であってもよい。
【0028】
本発明の乳化組成物は、乳化状態が安定に保たれる。例えば、調製後室温(25℃)で1週間静置したときに、炭化水素油が分離しない(相分離を起こさない)ものが好ましい。
【0029】
また、本発明の乳化組成物は、乳化されていればその形態は特に限定はされないが、例えばゲル状又はクリーム状であることが好ましい。
【0030】
本発明の乳化組成物の調製方法としては、例えば、(B)成分と(C)成分とをまず撹拌し混合した後、撹拌を続けながら、当該混合物に(A)成分を徐々に加えて混合する方法が挙げられる。混合は公知の攪拌機(例えばディスパーミキサー等)により行うことができる。一度に大量に(A)成分を加えると均一に混ざらない場合があるため、少しずつ加えることが好ましい。
【0031】
なお、本発明の口腔用乳化組成物の調製時には、(B)成分は、水又は多価アルコールに溶解させた状態のもの(すなわち、ソルビトール水溶液、又はソルビトール多価アルコール溶液)を用いることが好ましい。ここでの多価アルコールとしては、(D)成分が好ましい。なお、特に非水系組成物を調製する場合には、当該ソルビトール多価アルコール溶液を用いることが好ましい。
【0032】
当該調製に用いるソルビトール水溶液としては、75質量%以下のソルビトール水溶液が好ましく、70質量%以下のソルビトール水溶液がより好ましい。また、当該調製に用いるソルビトール多価アルコール溶液としては、70質量%以下のソルビトール多価アルコール溶液が好ましく、60、50、40、又は30質量%以下のソルビトール多価アルコール溶液がより好ましい。
【0033】
本発明の乳化組成物は、各種用途に用いることができる。比較的炭化水素油を多く含む組成物(特に炭化水素油及び界面活性剤を含む組成物)は、炭化水素油が分離することで著しく使用感を損なうおそれが高いため、口腔用組成物として用いることは一般的ではないが、本発明の乳化組成物は安定性が高いことから、口腔用組成物として好ましく用いることができる。
【0034】
本発明の口腔用乳化組成物は、特に限定するものではないが、常法に従って例えば練歯磨剤、液体歯磨剤、洗口剤(マウスウォッシュ)、ジェル剤、軟膏状製剤、パスタ剤、ガム剤等の通常の剤形にすることができる。
【0035】
本発明の効果を損なわない範囲において、本発明の口腔用乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に含有させることができる公知の成分を含ませてもよい。このような成分を加えた本発明の口腔用乳化組成物は、例えば、(B)成分と(C)成分とをまず撹拌し混合する際、一緒に当該成分を加えて混合する方法により調製することができる。
【0036】
このような公知の成分としては、例えば、研磨剤、湿潤剤、香料、活性剤、甘味剤、防腐剤、着色剤、pH調整剤、安定化剤、矯味剤、収れん剤、増粘剤、他の薬効剤等が挙げられる。なお、このような公知の成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
研磨剤としては、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水和物、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、無水ケイ酸、シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂、生体活性ガラス等を用いることができる。
【0038】
湿潤剤としては、例えばアルコール(一価アルコール又は多価アルコール)が挙げられ、より具体的には例えばエタノールが上げられる。また多価アルコールとしては、2価又は3価のアルコールが好ましく例示される。2価のアルコール及び3価のアルコールとしては、特に制限はされないが、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等が好ましく挙げられる。プロパンジオールとしては、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)及び1,3-プロパンジオールのいずれも好ましく用いることができる。中でも、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、グリセリンが好ましく、特にプロピレングリコール、グリセリンが好ましい。湿潤剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
香料としては、例えば、メントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、ウインターグリーン、サリチル酸メチル、シオネール、チモール、丁字油、ユーカリ油、ローズマリー油、セージ油、レモン油、オレンジ油、オシメン油、シトロネロール、メチルオイゲノール等が挙げられる。
【0040】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、α-メトキシシンナミックアルデヒド、キシリット、スクラロース、パラチノース、ステビアフィン、エリスリトール等が挙げられる。
【0041】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0042】
着色剤としては、例えば、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等が挙げられる。
【0043】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、フィチン酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0044】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0045】
矯味剤としては、例えば、チャエキス、チャ乾留液、プロポリスエキス、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
収れん剤としては、例えば、重曹、乳酸アルミニウム、亜鉛化合物等が挙げられる。
【0047】
増粘剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース等のセルロース誘導体、キサンタンガム、ローカストビンガム、カラギーナン、トラガカントガム、カラヤガム、アラビアガム、ジェランガム等のガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン等の合成粘結剤、増粘性シリカ、アルミニウムシリカゲル、ビーガム等の無機粘結剤、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、寒天、ゼラチン、大豆多糖類、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0048】
他の薬効剤としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ素化合物;硝酸カリウム、塩化カリウム等のカリウム塩、塩化ストロンチウム等のストロンチウム塩、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素;トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、グリセロリン酸、クロロフィル、グルコン酸銅、塩化ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物、ピロリドンカルボン酸、クロルヘキシジン塩類、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;酢酸-dl-α-トコフェロール、酢酸ピリドキシン、アスコルビン酸またはその塩等のビタミン類;アルギニン、リジン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ヒスチジン、ジアミノブタン酸、ジアミノプロピオン酸またはその塩等の塩基性アミノ酸;フラボノイド、フェノール酸等のポリフェノール類;アロエ、イチョウ葉、アガリクス、ウーロン茶、カミツレ、カリン、ギムネマ、クマザサ、甜茶、杜仲茶、ドクダミ、ハトムギ、メグスリノキ、ヨモギ、緑茶、ルイボス、レモンバーム、ローズマリー、クラブミン、ラカンカ、シソ、クランベリー、ノコギリソウ、エルダー、リコリス、ハッカ、ユーカリ、ガラナ、カンゾウ、ボダイジュ、ホップ、カカオ、クワ葉、タイム、オウゴン等の植物抽出物、乳酸菌、過酸化水素等が挙げられる。
【0049】
なお、これら公知の成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の口腔用組成物に配合されている程度の量を参考に適宜調整することができる。
【0050】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本発明は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0051】
また、上述した本発明の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本発明に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本発明には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例
【0052】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、以下、特に断らない限り、「%」は「質量%」を示す。また、各表に記載される各成分の配合量値も特に断らない限り「質量%」を示す。用いたソルビトールは、全てD-ソルビトールである。また、各表に記載の原料のうち、脂肪酸の結合数(例えば、ジ、トリなど)を表す文言が記載されていないものは、「モノ」を表す。(例えば、ラウリン酸ポリグリセリル-10はモノラウリン酸ポリグリセリル-10を意味する。)POEはポリオキシエチレンを、PEGはポリエチレングリコールを、それぞれ表す。
【0053】
検討1
表1及び表2に示す組成に従い、70%ソルビトール液(70%ソルビトール水溶液)35%及び軽質流動パラフィン60%に加えて、各種界面活性剤を5%ずつ混合し、乳化組成物を調製した。混合は、より詳細には次のようにして行った。容器(ビーカー)にグリセリン又は70%ソルビトール液と各種界面活性剤を加え、ガラス棒を用いた手動攪拌、あるいはディスパーミキサーにより撹拌してこれらを混合した。この際、必要に応じて加温を行った。撹拌を続けながら、さらに軽質流動パラフィンを少量ずつ加えた。
【0054】
調製直後、得られた各組成物を目視観察して、相分離の有無を確認した。相分離が起こらずゲル状(乳化状態)を保つものを○と評価し、油相が分離してしまったものを×と評価した(調製可否の評価)。さらに、得られた組成物をガラス容器に充填し、1週間室温(25℃)で静置した後に再度目視観察して、同様に評価した(1週間安定性の評価)。結果を表1及び表2にあわせて示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
なお、表1で用いたアルキルグリコシドは、Plantacare1200UP(BASF社)であり、より詳細には炭素数12~16のアルキルアルコールのポリグリコシドの水溶液である。水の含有量は約47~50%である。
【0058】
検討2
軽質流動パラフィン量や、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル量を変化させたときに、得られる組成物の安定性がどうなるかを検討するため、表3及び表4に示す組成に従い、上記と同様にして組成物調製及び安定性評価を行った。評価結果を表3及び表4にあわせて示す。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
なお、表3において、軽質流動パラフィン量が多いほど、得られる乳化組成物の粘度は上昇した。また、表4において、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル量(具体的にはラウリン酸ポリグリセリル-10量)が少ないほど、得られる乳化組成物の粘度は低下した。
【0062】
検討3
水分含有量をより減らした組成物を調製することを検討した。
【0063】
上記検討1及び検討2で用いた原料のうち、70%ソルビトール液は70%ソルビトール水溶液であるため、調製される組成物に水が含有される。そこで、ソルビトール(粉末)を用いて、ソルビトールの含有割合を高めたソルビトール水溶液(80~90%ソルビトール液)を調製し、これを組成物の調製に用いることを試みた。80~90%ソルビトール液は、加温しながらソルビトール(粉末)を水に溶解させることにより調製できたが、これを室温に戻すとソルビトールが析出してしまった。また、80~90%ソルビトール液を用いて組成物を調製するにあたり、温度が下がると、やはりソルビトールが析出してしまい、乳化組成物(ゲル状)は得られなかった。
【0064】
そこで、次に、ソルビトール(粉末)を溶解可能な多価アルコールを探索した。表5に示す組成に従い、ソルビトール(粉末)を各種多価アルコールに溶解させて、70%、50%、又は30%ソルビトール多価アルコール溶液を調製することを試みた。結果を表5にあわせて示す。
【0065】
【表5】
【0066】
得られたソルビトール多価アルコール溶液を用いて、表6に示す組成に従い、上記と同様にして組成物調製及び安定性評価を行った。評価結果を表6にあわせて示す。なお、表6に示す各例のうち、比較例6-1の調製のみソルビトール多価アルコール溶液ではなくソルビトール粉末を用いたが、加温してもソルビトール粉末は溶解しなかった。
【0067】
【表6】