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  • 特許-同軸ケーブル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】同軸ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/18 20060101AFI20220905BHJP
【FI】
H01B11/18 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018135013
(22)【出願日】2018-07-18
(65)【公開番号】P2020013694
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺師 大助
(72)【発明者】
【氏名】薄田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄気
(72)【発明者】
【氏名】上田 祥
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-002101(JP,A)
【文献】特開2007-042399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体と、前記中心導体の外周を覆う絶縁体と、前記絶縁体の外周を覆う金属パイプからなる外部導体と、を有する同軸ケーブルであって、
前記絶縁体が前記外部導体の内周面に接触する周方向における接触面積は、前記内周面の全体に対し、0%より大きく且つ30%以下であり、
前記絶縁体は、前記中心導体を囲う環状部、及び、前記環状部から径方向外側に突出した複数の突起部を備える歯車型に形成され、
前記突起部は、前記同軸ケーブルの軸方向に直線状に延設されている、ことを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
前記接触面積は、前記内周面の全体に対し、26%以上且つ30%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
前記突起部は、先端の歯厚が根本の歯厚よりも小さい山型に形成されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の同軸ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、各種通信機器間接続、計測機器から被測定物間接続(入・出力)や、内部および外部配線用などに使用される同軸ケーブルが開示されている。この同軸ケーブルは、中心導体の周囲に絶縁体を設け、この絶縁体の周囲に金属パイプからなる外部導体を設けて形成したセミリジット形式の同軸ケーブル、所謂、セミリジットケーブルである。セミリジットケーブルは、所定位置にある機器端末などへの接続のために、ケーブルに曲げ加工を施す必要がある場合、曲げ加工後のケーブルの形状維持性に優れるため、その位置における配線作業がし易い。
【0003】
このようなセミリジットケーブルには、ケーブル端末から中心導体を所定長さ露出させる(口出しする)端末加工を行う。この端末加工は、先ず、外部導体に機械的またはレーザによって切れ目を入れる。次に、切れ目より先の外部導体を引き抜き(ストリップし)、絶縁体を露出させる。次に、絶縁体に機械的またはレーザによって切れ目を入れ、同じように切れ目より先の絶縁体を引き抜く(ストリップする)。これにより、ケーブル端末から中心導体を所定長さ露出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-27626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の同軸ケーブルでは、当該特許文献1の図1(b)に示すように、絶縁体が金属パイプからなる外部導体の内周面の全体に密着している。このため、上述した端末加工時において外部導体を引き抜く際、外部導体と絶縁体との間の強い密着力によって、絶縁体が外部導体と共に引っ張られ、その力で中心導体が断裂してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、中心導体の断裂を抑制し、端末加工が容易になる同軸ケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様に係る同軸ケーブルは、中心導体と、前記中心導体の外周を覆う絶縁体と、前記絶縁体の外周を覆う金属パイプからなる外部導体と、を有する同軸ケーブルであって、前記絶縁体が前記外部導体の内周面に接触する周方向における接触面積は、前記内周面の全体に対し、0%より大きく且つ30%以下である。
【0008】
(2)上記(1)に記載された同軸ケーブルであって、前記接触面積は、前記内周面の全体に対し、26%以上且つ30%以下であってもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載された同軸ケーブルであって、前記絶縁体は、前記中心導体を囲う環状部、及び、前記環状部から径方向外側に突出した複数の突起部を備える歯車型に形成されており、前記突起部は、先端の歯厚が根本の歯厚よりも小さい山型に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明の態様によれば、中心導体の断裂を抑制し、端末加工が容易になる同軸ケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る同軸ケーブル1の断面構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る同軸ケーブル1の端末加工を説明する工程図である。
図3】(a)比較例として絶縁体20Aと外部導体30との接触面積が0%の同軸ケーブル1Aの断面構成図、(b)実施例として絶縁体20Bと外部導体30との接触面積が28%の同軸ケーブル1Bの断面構成図、(c)比較例として絶縁体20Cと外部導体30との接触面積が50%の同軸ケーブル1Cの断面構成図である。
図4】絶縁体20と外部導体30の接触面積と、密着力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る同軸ケーブルについて図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る同軸ケーブル1の断面構成図である。
同図に示した同軸ケーブル1は、中心導体10と、絶縁体20と、外部導体30と、を備えている。この同軸ケーブル1は、外部導体30が金属パイプから形成されたセミリジット同軸ケーブルである。なお、以下説明する構成は、ケーブル外径が2.0mm以下で、中心導体10が細径(例えば0.1~0.5mm程度)になるマイクロセミリジット同軸ケーブルに特に有効である。
【0013】
中心導体10は、例えば、銅線などの断面円形の単線である。なお、中心導体10は、複数の導体線を撚り合わせて形成されていてもよい。
絶縁体20は、中心導体10の外周を覆うように設けられている。絶縁体20は、例えば、PTFE、FEP、PFA等の弗素系樹脂、或いはPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、APO(アモルファスポリオレフィン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の合成樹脂などの電気絶縁性を有する樹脂材を、中心導体10の外周に押出成形したものである。
【0014】
絶縁体20は、中心導体10の外周を囲う環状部21、及び、環状部21から径方向外側に突出した複数の突起部22を備える歯車型に形成されている。環状部21は、同軸ケーブル1の軸方向に延びる円筒状に形成され、内周側に中心導体10が配置され、外周側に8本の突起部22が形成されている。8本の突起部22は、周方向において環状部21の外周面に等間隔(突起部22の周方向におけるピッチが45°間隔)で形成され、同軸ケーブル1の軸方向において、この間隔を維持しながら、直線状に延設されている。
【0015】
同図に示すように、突起部22は、先端22aの歯厚aが根本22bの歯厚bよりも小さい山型(略台形型)に形成されている。すなわち、歯厚a(円弧長)は、歯厚b(円弧長)に対し、a<bの関係を有する。また、突起部22と、当該突起部22と周方向で隣り合う突起部22との隙間cは、突起部22の先端22aの歯厚aよりも大きい。すなわち、隙間cは、歯厚aに対し、a<cの関係を有する。
【0016】
外部導体30は、絶縁体20の外周を覆うように設けられている。この外部導体30は、銅またはアルミニウムからなる金属パイプによって形成されている。外部導体30の内周面31は、絶縁体20の突起部22によって支持されている。このため、外部導体30の内周側は、突起部22で周方向に区画され、同軸ケーブル1の軸方向に連続した8個の中空部23が形成されている。なお、外部導体30の外周側には、図示しない保護被覆層(外被)があってもよい。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係る同軸ケーブル1の端末加工を説明する工程図である。
上記構成の同軸ケーブル1の端末加工は、先ず、図2(a)に示すように、外部導体30の端末に機械的またはレーザによって切れ目40を入れる。図2(a)では、レーザを用いた場合を例示しており、外部導体30の切れ目40から一部溶融した絶縁体20が露出している。なお、レーザとしては、例えばCOレーザを好適に用いることができる。
【0018】
次に、図2(b)に示すように、切れ目40より先の外部導体30aを引き抜き(ストリップし)、絶縁体20を露出させる。この外部導体30aの引き抜きに要する力Fは、絶縁体20と外部導体30との密着力(接触面積)に依存する。
次に、図2(c)に示すように、露出した絶縁体20に機械的またはレーザによって切れ目41を入れる。なお、前工程で外部導体30にレーザによって切れ目40を入れていた場合、絶縁体20でもレーザによって切れ目41を入れるとよい。
【0019】
最後に、図2(d)に示すように、切れ目41より先の絶縁体20aを引き抜き(ストリップし)、中心導体10を露出させる。
以上の端末加工により、同軸ケーブル1の端末から中心導体10を所定長さ露出させる(口出しする)ことができる。
【0020】
上記構成の同軸ケーブル1は、図1に示すように、複数の突起部22を備える歯車型の絶縁体20を有し、突起部22と突起部22との間に、外部導体30の内周面31と非接触の中空部23を設けているので、絶縁体20と外部導体30との密着力を小さくすることができる。このため、図2(b)に示す外部導体30aの引き抜きに要する力Fが小さくなり、これによって当該引き抜き時に中心導体10にかかる負荷が減り、その結果、中心導体10の断裂を抑制することが可能となる。
【0021】
また、本実施形態では、図1に示すように、突起部22は、先端22aの歯厚aが根本22bの歯厚bよりも小さい山型に形成されている。このため、外部導体30aの引き抜きの際に、突起部22の先端22aが同軸ケーブル1の軸方向に引っ張られても、突起部22の根本22bが厚いため、突起部22の根本22bにおける損傷や断裂の発生を抑制することができる。
【0022】
ここで、絶縁体20を歯車型にしただけでは、絶縁体20と外部導体30との密着力が強すぎてストリップできない場合があった。このため、絶縁体20が外部導体30の内周面31に接触する周方向における接触面積(接触周長)は、内周面31の全体(全周)に対し、0%より大きく且つ30%以下にするとよい。この構成によれば、絶縁体20からの外部導体30(30a)のストリップが容易になり、また、中心導体10の断裂を抑制することができる。
【0023】
[実施例]
以下、実施例により本発明の効果をより明らかにする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0024】
図3は、(a)比較例として絶縁体20Aと外部導体30との接触面積が0%の同軸ケーブル1Aの断面構成図、(b)実施例として絶縁体20Bと外部導体30との接触面積が28%の同軸ケーブル1Bの断面構成図、(c)比較例として絶縁体20Cと外部導体30との接触面積が50%の同軸ケーブル1Cの断面構成図である。
【0025】
図3(a)に示す比較例に係る同軸ケーブル1Aは、外部導体30の内周面31との接触面積が0%の絶縁体20Aを備えている。すなわち、絶縁体20Aの突起部22と、外部導体30の内周面31との間には、空間Sが形成されている。絶縁体20Aと外部導体30との接触面積が0%の場合、絶縁体20Aと製品側の外部導体30との間でずれが生じ、製品として成り立たない。よって、接続面積は、0%より大きいことが好ましい。
【0026】
図3(b)に示す実施例に係る同軸ケーブル1Bは、外部導体30の内周面31との接触面積が28%の絶縁体20Bを備えている。すなわち、外部導体30の内周面31に接触する絶縁体20Bの先端22aの歯厚aと、中空部23による隙間cとの比は、28:72となっている。絶縁体20Bと外部導体30との接触面積が28%の場合、両者の密着力は、実測値で91.6gf(重量グラム)であった。中心導体10の断裂を抑制し、外部導体30のストリップが容易な密着力は、100.0gf以下である。よって、接触面積が28%の場合、中心導体10の断裂を抑制できる。
【0027】
図3(c)に示す比較例に係る同軸ケーブル1Cは、外部導体30の内周面31との接触面積が50%の絶縁体20Cを備えている。すなわち、外部導体30の内周面31に接触する絶縁体20Cの先端22aの歯厚aと、中空部23による隙間cとの比は、50:50となっている。絶縁体20Cと外部導体30との接触面積が50%の場合、両者の密着力は、実測値で946.2gfであった。このため、密着力が100.0gfを大きく超えており、接触面積が50%の場合、外部導体30のストリップができなかった。
【0028】
図4は、絶縁体20と外部導体30の接触面積と、密着力との関係を示すグラフである。
図4に示すように、絶縁体20と外部導体30の接触面積を変化させ、絶縁体20と外部導体30の密着力を実測し検証を行った結果、接触面積が小さくなるほど指数関数的に密着力が減少していく傾向が確認された。なお、接触面積は、試作した同軸ケーブル1の切断面をマイクロスコープなどで実測した。
【0029】
図4に示す傾向、及び、好ましい密着力が100.0gf(0.1kfg)以下であることを鑑みると、接触面積は、0%より大きく且つ30%以下であることが好ましいことが分かる。また、密着力の下限は、同軸ケーブル1の製造上の問題から50.0gf(0.05kgf)であることを鑑みると、接触面積は、26%より大きく且つ30%以下であることが好ましいことが分かる。
【0030】
以上のことから、絶縁体20が外部導体30の内周面31に接触する周方向における接触面積は、内周面31の全体に対し、0%より大きく且つ30%以下であることが好ましく、これにより、中心導体10の断裂を抑制し、端末加工を容易に行うことができる。また、接触面積が、内周面31の全体に対し、26%以上且つ30%以下であれば、中心導体10の断裂を抑制し、端末加工を容易に行うことができる同軸ケーブル1の製造が容易になる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0032】
例えば、上記実施形態では、絶縁体20の突起部22が8本である場合を例示したが、突起部22は8本に限定されず、2~7本、9本以上あってもよい。
【0033】
また、例えば、上記実施形態では、絶縁体20が歯車型である場合を例示したが、外部導体30との接触面積を減らせる形状であれば、絶縁体20の形状は歯車型に限定されない。例えば、絶縁体20は、先端22aが根本22bよりも広い略T字状の突起部22を有していてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…同軸ケーブル、1A…同軸ケーブル、1B…同軸ケーブル、1C…同軸ケーブル、10…中心導体、20(20a)…絶縁体、20A…絶縁体、20B…絶縁体、20C…絶縁体、21…環状部、22…突起部、22a…先端、22b…根本、23…中空部、30(30a)…外部導体、31…内周面、40…切れ目、41…切れ目、a…歯厚、b…歯厚、c…隙間、F…引き抜きに要する力(密着力)、S…空間

図1
図2
図3
図4