(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】加熱容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/32 20060101AFI20220905BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
B65D81/32 K
B65D81/34 U
(21)【出願番号】P 2018139209
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 由希子
(72)【発明者】
【氏名】村上 知行
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/136038(WO,A1)
【文献】実公平06-050390(JP,Y2)
【文献】特開2008-081160(JP,A)
【文献】特開平09-267864(JP,A)
【文献】特開2015-107832(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02484604(EP,A1)
【文献】特開2005-059863(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0017530(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/20
B65D 81/32
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切り部によって少なくとも第1区画室と第2区画室とに区画され、かつ加熱されることにより前記仕切り部が開く加熱容
器であって、
上部が開口した容器本体と、前記容器本体の深さ方向での中間部に前記容器本体の内周側に突出したインナーフランジ部と、前記インナーフランジ部の内周側の開口部と、前記開口部を塞ぐように前記インナーフランジ部の下面に接着された熱収縮フィルムとを有し、かつ前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとによって前記仕切り部が形成され、
前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとは、前記容器本体内の内容物の加熱温度まで前記容器本体を加熱した場合に前記熱収縮フィルムが熱収縮して前記インナーフランジ部から剥離するように熱接着され、
前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとの接着部には、前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとの厚さ方向に凹もしくは凸となって前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとが互いに接着されている凹凸部が設けら
れ、さらに
前記接着部の内周縁は、前記インナーフランジ部の内周縁よりも前記インナーフランジ部の幅方向で外側に後退して位置していて、前記熱収縮フィルムが前記内容物の重みで撓むことにより前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとの間に、前記内容物が入り込むスペースが生じる未接着部が設けられている
ことを特徴とする加熱容器。
【請求項2】
請求
項1に記載の加熱容
器であって、
前記容器本体は、上部が開口しかつ内部が前記第1区画室とされる外側容器と、前記外側容器の内部で前記上部側に挿脱可能に嵌合させられかつ内部が前記第2区画室とされる内側容器とを有し、
前記内側容器の底部に、前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとによる前記仕切り部が設けられている
ことを特徴とする加熱容器。
【請求項3】
請求
項1または2に記載の加熱容
器であって、
加熱されることによって前記熱収縮フィルムが熱収縮して前記インナーフランジ部から剥離するときの剥離強度は、加熱されることによって前記熱収縮フィルムが熱収縮して破断するときの破断強度より小さい
ことを特徴とする加熱容器。
【請求項4】
請求
項1ないし3のいずれか一項に記載の加熱容
器であって、
100℃における前記熱収縮フィルムの熱収縮率は5%以上かつ50%以下である
ことを特徴とする加熱容器。
【請求項5】
請求
項1ないし4のいずれか一項に記載の加熱容
器であって、
前記開口部は、前記容器本体の中心から前記中心を通る上下方向の軸線に対して直交する方向に偏って形成されている
ことを特徴とする加熱容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内容物を収容したまま加熱した後に飲食の用に供される加熱容器に関し、特に、少なくとも2種類の飲食物を区画分離して収容し、加熱することによりそれらの飲食物の仕切りを解除してそれらの飲食物を混ぜ合わせることが可能なように構成された加熱容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の容器の例が特許文献1や特許文献2に記載されている。特許文献1に記載された容器はカップ状の容器本体と、容器本体の内部に着脱可能に装着される内装容器とを備えている。内装容器は円筒状に形成されていて、その上側の開口部に蓋が取り付けられるようになっている。また、内装容器の下側の端部は開口していてその内周の全体に亘って、フランジ部が形成されている。フランジ部の上面に、加熱されることによって溶解する可食性の食品分離シートが接着されていて内装容器の下側の開口部が閉じられている。特許文献1に記載された構成では、内装容器の内部に調味液が収容され、内装容器と容器本体とによって区画されたスペース(すなわち容器本体の内部)に主食類が収容されている。容器ごと調味液および主食類を加熱すると、食品分離シートが溶解して調味液と主食類との間の仕切りが取り除かれるので、主食類に調味液が添加される。
【0003】
特許文献2には、容器本体と、容器本体のフランジ部に接着される中蓋と、中蓋の上側を覆うようにフランジ部に嵌合するドーム状の上蓋とによって構成された容器が記載されている。中蓋は熱収縮性を有する熱接着性樹脂層と樹脂フィルム層とによってアルミニウム箔を挟んで構成されている。アルミニウム箔には円形の欠落部が形成されている。熱接着性樹脂層と樹脂フィルム層とにおける、上記の欠落部に対応する位置に円弧状の切れ目が形成されている。その容器を電子レンジで加熱すると、熱接着性樹脂層が収縮して張力が増大するので、その張力によって上記の切れ目で破断が生じ、その切れ目がカールする。こうして中蓋が開口するので、中蓋上に載っていた内容物が、容器本体の内部に落下して容器本体内の他の内容物に添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-107832号公報
【文献】特開2009-12802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した各特許文献1,2に記載された容器は、加熱することにより仕切りが解除されて二種類の食材が混ざるように構成された容器であり、手が汚れたり、食材をこぼしたりしないように仕切りを取り除く面倒な手作業を解消できる。しかしながら、特許文献1に記載された構成では、溶解した食品分離シートが主食類や調味液に混入するため、食感や味が変化したり、見栄えが悪化したりし、さらには需用者に違和感を与えるなど商品性が劣ってしまう可能性がある。これに対して特許文献2に記載された構成では、アルミニウム箔が欠落していて熱接着性樹脂と樹脂フィルムとが直接積層されている部分に切れ目が形成され、当該切れ目の部分で破断し易くなっている。そのため、例えば搬送時に、中蓋に衝撃力が加わって切れ目から中蓋が破断してしまい、各内容物が混ぜ合わさってしまう可能性がある。
【0006】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、各内容物を収容している区画室の密閉性に優れ、かつ各区画室の仕切りを解除した場合の残渣などの残存物が内容物に混入することのない加熱容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明の加熱容器は、仕切り部によって少なくとも第1区画室と第2区画室とに区画され、かつ加熱されることにより前記仕切り部が開く加熱容器において、上部が開口した容器本体と、前記容器本体の深さ方向での中間部に前記容器本体の内周側に突出したインナーフランジ部と、前記インナーフランジ部の内周側の開口部と、前記開口部を塞ぐように前記インナーフランジ部の下面に接着された熱収縮フィルムとを有し、かつ前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとによって前記仕切り部が形成され、前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとは、前記容器本体内の内容物の加熱温度まで前記容器本体を加熱した場合に前記熱収縮フィルムが熱収縮して前記インナーフランジ部から剥離するように熱接着され、前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとの接着部には、前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとの厚さ方向に凹もしくは凸となって前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとが互いに接着されている凹凸部が設けられ、さらに前記接着部の内周縁は、前記インナーフランジ部の内周縁よりも前記インナーフランジ部の幅方向で外側に後退して位置していて、前記熱収縮フィルムが前記内容物の重みで撓むことにより前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとの間に、前記内容物が入り込むスペースが生じる未接着部が設けられていることを特徴としている。
【0010】
この発明では、前記容器本体は、上部が開口しかつ内部が前記第1区画室とされる外側容器と、前記外側容器の内部で前記上部側に挿脱可能に嵌合させられかつ内部が前記第2区画室とされる内側容器とを有し、前記内側容器の底部に、前記インナーフランジ部と前記熱収縮フィルムとによる前記仕切り部が設けられていてよい。
【0011】
この発明の加熱容器においては、加熱されることによって前記熱収縮フィルムが熱収縮して前記インナーフランジ部から剥離するときの剥離強度は、加熱されることによって前記熱収縮フィルムが熱収縮して破断するときの破断強度より小さくてよい。
【0012】
この発明では、100℃における前記熱収縮フィルムの熱収縮率は5%以上かつ50%以下であってよい。
【0014】
さらに、この発明の加熱容器では、前記開口部は、前記容器本体の中心から前記中心を通る上下方向の軸線に対して直交する方向に偏って形成されていてよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明の製造方法によれば、内容物を収容した状態で加熱されることにより熱収縮して仕切り部を開く熱収縮フィルムを、第1区画室と第2区画室との境界部分に設けられているインナーフランジ部の下面に熱溶着する。その熱溶着は、互いに重ね合わせてあるインナーフランジ部と熱収縮フィルムとに対して波動エネルギを局部的に与え、それに伴う発熱によって行う。しかもインナーフランジ部と熱収縮フィルムとはそれらの厚さ方向に凹凸に変形させられていて、接着面積が広くなっており、かつその凹凸部がインナーフランジ部と熱収縮フィルムの剪断剥離方向に対していわゆる引っ掛かり部分となっている。そのため、温度上昇部分が局部的になるので、製造過程における熱収縮フィルムの収縮や破断を回避もしくは抑制でき、あるいは接着作業が容易になる。また、凹凸部を設けて接着面積を広くすることにより、波動エネルギを与える範囲、あるいは発熱させる面積を小さくでき、言い換えれば、温度上昇部分を更に局部的に小さくできるので、内容物の漏洩を生じさせることなく確実に接着できるとともに、熱収縮フィルムの収縮や破断を生じさせることなく容易に接着することができる。
【0016】
また、この発明の加熱容器においては、内容物と共に容器本体を前記内容物の加熱温度まで加熱すると、熱収縮フィルムが熱収縮してインナーフランジ部から剥離し、その結果、仕切り部が開いて、第1区画室の内容物と第2区画室の内容物とが混ざり合う。すなわち、仕切り部を構成している熱収縮フィルムが内容物に混入することがない。このような剥離が生じるインナーフランジ部と熱収縮フィルムとの接着部は、インナーフランジ部あるいは熱収縮フィルムの厚さ方向に凹もしくは凸となっており、接着面積が拡大させられている。そのため、接着幅もしくは接着のために加熱する幅が狭くても、内容物の漏洩が生じないように確実に両者を接着できる。また、加熱する幅もしくは面積を小さくできることにより、製造過程で熱収縮フィルムが熱収縮したり、それに伴って破断したりすることを防止することができる。さらには、接着部の幅を狭くすることができることにより、インナーフランジ部の幅を狭くしてその内周側の開口部の開口面積を大きくすることができる。
【0017】
さらに、この発明では、接着部の内周縁が、インナーフランジ部の内周縁より後退していることにより、インナーフランジ部と熱収縮フィルムとの間に、僅かながら内容物が挟まり、その内容物が加熱されてその熱を熱収縮フィルムに伝達するから、内容物の加熱の際に熱収縮フィルムに対する熱の伝達やそれに伴う熱収縮、インナーフランジ部からの剥離を促進することができる。
【0018】
そして、この発明によれば、前記開口部の位置を容器本体の中心からずらすことにより、食材に適した混ざり合い方を演出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明に係る加熱容器の一例を分解して示す斜視図である。
【
図2】この発明に係る加熱容器の一例の断面図である。
【
図5】超音波溶着装置の一例の一部を示す断面図である。
【
図6】超音波溶着装置の受型の一例を示す平面図である。
【
図7】受型の先端部の形状の一例を示す断面図である。
【
図8】この発明に係る加熱容器による各内容物の加熱工程を示す図であり、(a)は各内容物を分離して収容している状態を示す図であり、(b)は加熱することにより熱収縮フィルムが剥離した状態を示す図であり、(c)は各内容物が混ぜ合わされた状態を示す図である。
【
図10】実施例1および比較例1ならびに比較例2についての試験1および試験2の結果をまとめて示す図表である。
【
図11】比較例3ないし7と、実施例2および3とについての試験1および試験2の結果をまとめて示す図表である。
【
図12】この発明に係る加熱容器の他の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係る加熱容器は、複数の内容物を区画して収容する複数の区画室を有しており、加熱容器ごと各内容物を温めることができる容器である。また、加熱容器は、加熱によって仕切りを開いて各区画室内に収容されていた各内容物を合わせるように構成されている。仕切り部は加熱容器の内部を加熱容器の高さ方向つまり上下に区画するように構成されていてもよく、あるいは、加熱容器の内部を加熱容器の幅方向あるいは横方向に区画するように構成されていてもよい。さらに、加熱容器は、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂材料、あるいは、片面または両面に合成樹脂材料によって形成された薄膜(フィルム)を貼り合わせたり、積層したりして構成された加工紙などによって構成することができる。この発明に係る加熱容器は加熱されるものであるから、耐熱性の点で、上述した合成樹脂材料のうち、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリプロピレン樹脂などによって構成されることが好ましい。上記の内容物は例えば食品であってよい。したがって、この発明に係る加熱容器は、加熱調理前においては、主食材と副食材とを分離して収容し、加熱調理したときには、主食材に副食材を添加することのできる容器であってよい。
【0021】
図1はこの発明に係る加熱容器1の一例を分解して示す斜視図であり、
図2はこの発明に係る加熱容器1の断面図である。
図1および
図2に示すように、加熱容器1の容器本体はこの発明における外側容器に相当する下皿2と、下皿2の内部に着脱可能に構成された、この発明における内側容器に相当する中皿3と、中皿3に着脱可能に構成された蓋体4とを備えている。中皿3は、後述するように閉じた底部を有しているので、加熱容器1の容器本体の内部がこの中皿3によって上下に区画されている。下皿2は
図1および
図2に示すように上部が開口した容器であり、中皿3はその下皿2に対して上部側に挿脱可能に嵌合させられ、したがって下皿2のうち、中皿3より下側のスペースが第1区画室5となっている。これに対して中皿3の内部、より具体的には中皿3と蓋体4とによって区画されたスペースが第2区画室6となっている。これらの第1区画室5と第2区画室6とのそれぞれに、互いに異なる内容物を収容できる。
【0022】
下皿2は、中皿3よりも深さあるいは高さがある容器である。ここに示す例では、ほぼ円形に形成された底部7と、底部7の外周縁部から上側の開口部2a側に向けて立ち上がっている円筒状の胴部8とを有している。
【0023】
底部7は、平坦であっても良いが、
図1および
図2に示す例では、高台あるいは脚として機能する突起部(脚部)9が、下面側に突出して形成されている。また、胴部8の下側の部分は、テーパー状に上広がりになり、それより上側の部分が円筒状になっている。その円筒状の部分の上端部が開口部2aである。さらに、その円筒状の部分のうち、開口部2a側の所定の深さの範囲で内径が拡大しており、その内径が拡大する部分が段差部10となっている。この段差部10では、胴部8を形成している周壁部の一部が、半径方向に向けたフランジ状になっていて断面係数が増大しているので、リブとして機能する。また、その拡大している内径は、中皿3の外径より大きいので、内径が大きくなっている部分は、中皿3を嵌合させる際に中皿3との干渉を少なくしてガイドとして機能することが考えられる。
【0024】
胴部8の上端部(開口部2a)には、外向きに延びたフランジ部11が形成されている。フランジ部11は、
図2に示すように、フラットな上面とその外周縁を下側に折り曲げたスカート部とを有し、断面が鉤状になっている。これは、開口部2aの形状を維持させる強度を付与するためである。このフランジ部11に中皿3の縁部が引っ掛かり、あるいは嵌合するようになっている。
【0025】
図3は中皿3の内部を示す斜視図であり、
図4は中皿3の底部を示す斜視図である。中皿3は、下皿2と比較して深さが浅く、また上述した下皿2の内部に嵌合できるように下皿2の上部の内径より小さい外径の容器である。中皿3は、容器であってもいわゆる仮の容器であり、円筒状の胴部12を備えているものの、その胴部12の底部は閉じておらず、開口部12aが形成されている。そして、中皿3の内部に内容物を漏れ出ることなく収容するために、開口部12aが熱収縮フィルム13によって閉じられている。具体的には、胴部12の下端部における内面の全周に亘ってインナーフランジ部14が形成されている。したがって、インナーフランジ部14は容器本体の深さ方向での中間部であって、第1区画室5と第2区画室6との境界部分に設けられている。そのインナーフランジ部14の内周側の部分が開口部12aとなっている。インナーフランジ部14の上面14aと下面14bとのうち、下面14bに、
図2や
図4に示すように、熱収縮フィルム13が接着されている。つまり、インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とによって中皿3の底部15が形成されている。換言すれば、インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とが、第1区画室5と第2区画室6とを仕切っていて、この発明における仕切り部を構成している。
【0026】
上記の熱収縮フィルム13は加熱されることによって収縮する従来知られている熱収縮フィルムと同様のフィルムであり、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂材料によって構成されている。また、熱収縮フィルム13は熱を受けて収縮するから、中皿3に対する熱収縮フィルム13の接着方法は、全体として熱収縮フィルム13に対する熱負荷が可及的に小さい接着方法が好ましく、この点で、熱接着(溶着)するとしても超音波溶着やレーザー溶着など、波動エネルギで局部的に発熱させる接着方法が好ましい。それらの溶着方法では、接着剤を使用しないので、中皿3(インナーフランジ部14)と熱収縮フィルム13とは同じ材料によって構成されることが好ましい。また、耐熱性の点で、加熱容器1をポリエチレンテレフタレート樹脂やポリプロピレン樹脂などによって構成する場合には、加熱容器1と同様に、熱収縮フィルム13をポリエチレンテレフタレート樹脂やポリプロピレン樹脂などによって構成することが好ましい。
【0027】
さらに、上記の熱収縮フィルム13の熱収縮率は、100℃において、5%以上かつ50%以下であることが好ましく、特に10%以上かつ30%以下であることが好ましい。100℃における熱収縮率が5%未満である場合には、加熱した際における収縮幅あるいは収縮長さが小さく、その結果、熱収縮フィルム13の熱収縮によっては中皿3の底部15(仕切り部)を開口させることができない可能性があるためである。これに対して、100℃における熱収縮率が50%を超えると、僅かな熱負荷によっても大きく熱収縮が生じて、底部15(仕切り部)が開いて第1区画室5と第2区画室6とが連通されてしまう可能性が高いためである。すなわち、熱に対して過敏になってしまう。
【0028】
熱収縮フィルム13は、その周辺部でインナーフランジ部14の下面14bに貼り付けられて開口部12aを密閉している。したがって、熱収縮フィルム13の外径は開口部12aの内径(開口径)より大きく、かつ、底部15の外径より小さい。そして、インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とが互いに重なり合っている接触部分において、それらが互いに押圧され、かつその状態で超音波溶着装置やレーザー溶着装置などによって超音波やレーザー光などの波動エネルギが与えられて接触部分で発熱し、その熱によって互いに接着される。インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とは、例えば、第2区画室6に流動性のある内容物が収容された場合に、上記の流動性のある内容物が第1区画室5に漏洩しないようにするために、第2区画室6の内部と外部とを連通させる半径方向に延びた隙間が生じないように接着される。また、接着部分の幅が狭くても接着面積が広くなるように接着される。その接着パターンについては後述する。
【0029】
一方、胴部12における他端部(上端部)の全周に亘って、
図2に示すように、下皿2のフランジ部11に嵌まり合う嵌合部16が形成されている。つまり、下皿2と中皿3とはいわゆるインロー嵌合するように構成されている。また、高さ方向で嵌合部16の反対側には、高さ方向に延びるリム17が中皿3の全周に亘って形成されている。
【0030】
前記リム17の内周側に、蓋体4の外周縁部が嵌まり合うようになっている。蓋体4の天板部18には、高さ方向で中皿3とは反対側に突出したリブ19が設けられている。そのため、蓋体4の上下をひっくり返した場合には、リブ19は加熱容器1の脚部として機能する。
【0031】
次に
、上記の加熱容器1の製造方法について説明する。
図5は超音波溶着装置20に中皿3と熱収縮フィルム13とを配置した状態を示す部分断面図である。なお、
図5では、説明の都合上、各部材を離隔して記載してある。予め定めた大きさの開口部12aが形成されている中皿3を用意する。または、中皿3に開口部12aが形成されていない場合には、例えば、打ち抜き加工によって中皿3に予め定めた大きさの開口部12aを形成する。これとは別に、図示しないロール巻きされている熱収縮フィルム13をロールから予め定めた長さ繰り出して超音波溶着装置20の受型21の上に載置す
る。
【0032】
ここで、受型21の構成について説明する。
図6は受型21の一例を示す平面図である。受型21はホーン22と共に中皿3のインナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とを挟み付けてそれらを超音波溶着するものである。受型21の上面(受面)は、
図6に示すように、インナーフランジ部14と同様に環状に形成されている。受型21の先端部の幅は、接着対象物であるインナーフランジ部14の幅(半径方向に測った内周端と外周端との間の寸法)より小さい。この受型21の上面は、インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13との接着部に、その厚さ方向の凹凸形状を付するために、凹凸状になっている。例えば受型21の上面には、ローレット加工が施されていて、受型21の上面が凹凸状になっている。この凹凸状になっている部分がインナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とを接着する溶着部21aとなっている。なお、その凹凸形状は、多数のディンプルや突起を形成した形状であってもよい。
【0033】
図7は、受型21の溶着部21aの一部を示す断面図であり、
図7に示す溶着部21aは、台形状の突起部23を複数有している。突起部23とホーン22とによってインナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とを所定の荷重で挟み付けて溶着したときに、インナーフランジ部14や熱収縮フィルム13のいわゆる余肉が突起部23同士の間に入り込んで、その部分が凹部もしくは凸部となる。したがって、インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とは、突起部23の頂部における平坦部分で加圧された状態で波動エネルギによって局部的に発熱させられて互いに溶着するとともに、凹部もしくは凸部においても互いに溶着するので、接着面積が単純な平坦面での接着よりも広くなっている。なお、突起部23同士の間に入り込んだことにより生じる上記の凹部もしくは凸部は、突起部23によって囲まれた部分であり、凹部もしくは凸部同士が上述したように互いに溶着している。したがって、凹部もしくは凸部があることにより、インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13との接着部には、内容物の漏洩の原因となる前記半径方向に連通する隙間が生じない。
【0034】
上記の突起部23に替えて環状のリブを、受型21の上面に、受型21と同心円状に複数形成してもよい。このような構成であっても、接着部の内外周両側を連通させる隙間が生じないようにすることができる。また、接着面積を広くすることができる。さらに、インナーフランジ部14から熱収縮フィルム13が剪断方向に剥離するときには、上記のリブが形成されている箇所で熱収縮フィルム13が引っ掛かる。そのため、熱収縮フィルム13の剥離強度が高くなるので、接着部の面積(特に幅)を小さくすることができる。そして、上記の突起部23やリブの高さ、あるいはそれらの数などを変更することによって、熱収縮フィルム13の剥離強度をコントロールすることができる。ここに示す例では、熱収縮フィルム13の剥離強度は、加熱されて収縮するときにおける熱収縮フィルム13の破断強度より小さくなるように設定されている。これは、実験により予め定めることができる。
【0035】
またここに示す例では、溶着部21aの幅は受型21の全周に亘ってほぼ同じ幅に設定されている。そのため、いずれの部分においても、接着強度あるいは剥離強度がほぼ同じになっている。上述した突起部23の先端形状は円形や方形などであってよい。
【0036】
続いて、熱収縮フィルム13の上に、開口部12aが形成されている中皿3を載置する。そして、中皿3の内部にホーン22を挿入するとともに、ホーン22によってインナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とを所定の荷重で受型21に押し付ける。
図5に示すホーン22は一例として円筒状あるいは円錐状に形成されており、受型21と同一軸線上に配置されている。そのホーン22の先端部の幅あるいは肉厚はインナーフランジ部14の幅とほぼ同じに設定されている。また、ホーン22の先端面は受型21の溶着部21aに対して面接触するように平坦に形成されており、かつ、その平坦な部分(以下、平坦部と記す。)22aを挟んで両側の角部は丸められている。平坦部22aの幅は、上記の溶着部21aの幅より小さく設定されている。これは、受型21の角部において、インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とを超音波溶着すると、前記角部で熱収縮フィルム13が擦れて熱収縮フィルム13が切断される可能性があるのでこれを避けるためである。そのため、溶着部21aの幅内でインナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とを超音波溶着するようになっている。
【0037】
そして、ホーン22によってインナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とを受型21に押し付けている状態でホーン22を図示しない超音波発振器によって超音波振動させる。これにより、インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13との間に摩擦熱が生じ、摩擦熱によってそれらが溶融されかつ溶着させられる。その結果、インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13との接着部24の幅は平坦部22aの幅とほぼ同じになり、また、接着部24での接着パターンは、溶着部21aの形状と同様に上述した凹凸状になる。その後、超音波溶着装置20から中皿3を取り出すとともに、熱収縮フィルム13を予め定めた大きさおよび形状に切断する。なお、熱収縮フィルム13は予め所定の大きさおよび形状に切断しておいてもよい。
【0038】
上記のように構成した中皿3とは別に下皿2を用意し、その下皿2に内容物を収容する。そして、内容物が収容されている下皿2に中皿3を組みつける。具体的には、下皿2に、その上部の開口部2aから中皿3を挿入し、下皿2のフランジ部11に、中皿3の嵌合部16を嵌合させて下皿2を密封する。次いで、中皿3の内部に他の内容物を収容し、中皿3のリム17に蓋体4を嵌合させて中皿3を密封する。あるいは、予め中皿3の内部に他の内容物を収容しておくとともに、蓋体4によって中皿3を密封し、これを下皿2に嵌合させてもよい。
【0039】
上記構成の加熱容器1の作用・効果について説明する。受型21の溶着部21aは凹凸状になっているため、受型21とホーン22とによってインナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とを挟み付けてそれらを超音波溶着すると、接着部24での接着パターンは凹凸状になる。具体的には、突起部23に対応する箇所でインナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とが接着され、半径方向に連通する隙間がなく、いわゆる密に接着される。その結果、中皿3内に流動性のある他の内容物を収容した場合であっても、他の内容物が下皿2側に漏洩することを防止もしくは抑制することができる。具体的には、
図8の(a)に示すように、各内容物を分離させた状態で保存できる。また、他の内容物の重さによる荷重が熱収縮フィルム13に作用するが、熱収縮フィルム13には脆弱部あるいは易破断部などが形成されていないので、搬送などのハンドリング時に熱収縮フィルム13が破断して仕切り部が開いてしまうことを防止もしくは抑制することができる。また、接着パターンが凹凸状になって接着面積を広くすることができる。そのため、接着力が強くなる上に、上述したように、凹凸が形成されている箇所で熱収縮フィルム13がインナーフランジ部14に引っ掛かり、熱収縮フィルム13の剪断方向への剥離強度が高くなっている。このように剥離強度を高くすることができることにより、接着部24の幅を狭くし、それに伴って開口部12aの開口面積を広くし、第2区画室6からの他の内容物の落下もしくは流下を促進させることができる。さらに、熱収縮フィルム13はインナーフランジ部14に超音波溶着されるから、接着の過程で熱収縮フィルム13が受ける熱負荷を可及的に小さくすることができ、熱収縮フィルム13の熱収縮やそれに伴う変形を防止もしくは抑制することができる。
【0040】
そして、上記の加熱容器1は耐熱性のある合成樹脂材料によって構成されているから、加熱時においては、熱による加熱容器1の変形を抑制することができ、各内容物を加熱容器1ごと加熱できる。また、加熱によって熱収縮フィルム13が熱収縮してインナーフランジ部14から熱収縮フィルム13が剥離する。具体的には、インナーフランジ部14や熱収縮フィルム13の厚さや、製造ばらつきなどに起因して接着部24には接着強度の低い箇所があり、そのような接着強度の低い箇所に熱収縮フィルム13の熱収縮に伴う収縮応力が集中する。また、熱収縮フィルム13の破断強度は熱収縮フィルム13の剥離強度より高く設定されている。それらの結果、収縮応力によって熱収縮フィルム13が破断するよりも前に、インナーフランジ部14から熱収縮フィルム13が剥離する。そして、剥離した熱収縮フィルム13が収縮変形するとともに、当該剥離した熱収縮フィルム13とインナーフランジ部14とが接着している境界部分において、インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とを引き剥がす、引き剥がし力が生じて剥離が進行する。これにより、
図8の(b)に示すように、中皿3の底部15が開口して第1区画室5と第2区画室6とが連通される。そして、
図8の(c)に示すように、第1区画室5内の内容物に第2区画室6内の他の内容物が添加される。したがって、上述した構成の加熱容器1では、使用者あるいは需用者が特に手間をかけることなく、仕切りを開いて各内容物を混ぜ合わせることができる。
【0041】
さらに、接着部24の幅はホーン22の平坦部22aの幅とほぼ同じになっていて、接着部24の内周縁部がインナーフランジ部14の内周縁部から半径方向で外側に後退している。したがって、半径方向で接着部24の内側には、インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13とが接着していない未接着部25がある。
図9は、未接着部25を示す断面図であり、
図9に示すように、第2区画室6に他の内容物を収容すると、他の内容物の重さに応じた荷重によって熱収縮フィルム13が高さ方向で下方に撓む。その結果、未接着部25においては、インナーフランジ部14と熱収縮フィルム13との間にスペースが生じ、このスペースに他の内容物が入り込む。この状態で、他の内容物が温められると、当該他の内容物の熱が接着部24の内周縁部に伝達される。その結果、接着部24の内周縁部においても熱収縮フィルム13の収縮が生じ、接着部24から熱収縮フィルム13が剥離しやすくなる。また、インナーフランジ部14の下面14bに熱収縮フィルム13が接着されているから、他の内容物に固形物が含まれている場合には、固形物がインナーフランジ部14の上面14aに載ることがある。これにより、固形物などの重さによる荷重が熱収縮フィルム13に直接作用しにくくなる。その結果、他の内容物の重さによる荷重によって、接着部24からの熱収縮フィルム13が剥離することを防止もしくは抑制することができる。
【0042】
ここで、接着強度を変化させた場合におけるこの発明に係る加熱容器1の作用および効果について、実施例1と比較例1および2とを比較して説明する。
【0043】
(実施例1)
板厚が0.5mmのポリプロピレン樹脂製のシートを用意し、これを真空圧空成型によって高さ85mm、直径140mmの加熱容器1を準備した。中皿3の開口部12aの直径は89mm、インナーフランジ部14の幅は7mmに設定した。中皿3の底部15に厚さ25μm、直径105mm、100℃における熱収縮率が約20%のポリプロピレン樹脂製の二軸延伸熱収縮フィルムを超音波溶着装置20によって接着した。なお、超音波溶着装置20の受型21の溶着部21aには、ローレット加工が施されていて凹凸状になっており、突起部23の先端部の幅は0.6mmに設定されている。超音波溶着時間は0.15秒に設定した。
【0044】
(比較例1)
超音波溶着時間を0.10秒にした以外は、実施例1と同様に加熱容器1を作製した。
【0045】
(比較例2)
超音波溶着時間を0.25秒にした以外は、実施例1と同様に加熱容器1を作製した。
【0046】
(試験1)
上記構成の加熱容器1の中皿3につまり第2区画室6に水を150g入れて10時間静置した後における第2区画室6から第1区画室5への水の漏れを目視によって確認した。
【0047】
(試験2)
水に替えて市販のレトルトカレーを第2区画室6に180g入れ、かつ、下皿2につまり第1区画室5に炊飯した米飯を220g入れ、その状態で500Wの業務用電子レンジで4分間加熱調理したときにおける中皿3の底部15の開口状態を目視によって確認した。
【0048】
(評価1)
実施例1および比較例1ならびに比較例2についての試験1および試験2の結果を
図10に図表として記載してある。
図10に示すように、実施例1では、試験1を行っても水漏れは認められなかった。また、試験2を行うと、レトルトカレーを入れて加熱調理したときに熱収縮フィルム13が収縮して中皿3の底部15が開口することが認められた。比較例1では、試験1を行うと、水漏れが認められた。試験2を行うと、熱収縮フィルム13が収縮して中皿3の底部15が開口することが認められた。これは、比較例1では、実施例1と比較して超音波溶着時間が短いために、接着部24の接着強度が低く、水の重さによってインナーフランジ部14から熱収縮フィルム13が剥離してしまい水漏れが生じたと思われる。比較例2では、試験1を行っても水漏れは認められなかった。また、試験2を行っても、中皿3の底部15が開口しないことが認められた。これは、比較例2では、実施例1と比較して超音波溶着時間が長いことにより、接着部24での接着強度が高いためであると思われる。以上のことにより、上記構成の加熱容器1では、超音波溶着時間を0.15秒に設定すると、内容物を別々に収容している状態を維持することができると共に、加熱することによって中皿3の底部15を開口できることが認められた。
【0049】
また、熱収縮フィルム13の熱収縮率を実施例1とは異ならせたり、受型21にローレット加工を行わなかったり、中皿3とは異なる材料によって熱収縮フィルム13を構成したりした場合におけるこの発明に係る加熱容器1の作用および効果について、実施例2および3と比較例3ないし7とを比較して説明する。
【0050】
(比較例3)
熱収縮フィルム13に替えて熱収縮性のないフィルムを使用した以外は実施例1と同様に加熱容器1を作製した。
【0051】
(比較例4)
熱収縮フィルム13として、100℃での熱収縮率が3%のフィルムを使用した以外は実施例1と同様に加熱容器1を作製した。
【0052】
(比較例5)
熱収縮フィルム13として、100℃での熱収縮率が60%のフィルムを使用した以外は実施例1と同様に加熱容器1を作製した。
【0053】
(比較例6)
受型21の溶着部21aにローレット加工を行わなかった以外は、つまり、溶着部21aが平坦な形状の受型21を使用した以外は、実施例1と同様に加熱容器1を作製した。
【0054】
(比較例7)
ポリエチレンテレフタレート樹脂によって中皿3を構成し、ポリプロピレン樹脂によって熱収縮フィルム13を構成した以外は実施例1と同様に加熱容器1を作製した。
【0055】
(実施例2)
熱収縮フィルム13として、100℃での熱収縮率が5%のフィルムを使用した以外は実施例1と同様に加熱容器1を作製した。
【0056】
(実施例3)
熱収縮フィルム13として、100℃での熱収縮率が50%のフィルムを使用した以外は実施例1と同様に加熱容器1を作製した。
【0057】
(評価2)
比較例3ないし7についての試験1および試験2の結果を
図11に図表として記載してある。
図11に示すように、比較例3および比較例4では、試験1を行っても、水漏れは認められなかった。一方、試験2を行うと、中皿3の底部15が開口しないことが認められた。これは、加熱時において、中皿3の底部15に貼り付けたフィルムが熱収縮しない、または熱収縮率が小さいためであると思われる。比較例5は、熱収縮フィルム13の熱収縮率が大きいことにより、超音波溶着であっても、中皿3の底部15に熱収縮フィルム13を接着することができず、加熱容器1を作製できなかった。比較例7は、中皿3と熱収縮フィルム13とをそれぞれ異なる材料によって構成したために、中皿3の底部15に熱収縮フィルム13を接着することができず、加熱容器1を作製できなかった。比較例6では、試験1を行うと、一部の加熱容器1で水漏れが生じ、試験2を行うと、中皿3の底部15が開口しない加熱容器1があった。これは、受型21の溶着部21aが平坦であることや、インナーフランジ部14や熱収縮フィルム13の厚さのばらつきがあることなどに起因して、それらを接着する際に隙間が生じ、また、全体として接着面積が大きくなったことにより接着強度が高くなったためであると思われる。つまり、全体として接着が安定しない。実施例2および3では、実施例1と同様に、試験1を行っても、水漏れは認められず、試験2を行うと、熱収縮フィルム13が収縮して中皿3の底部15が開口することが認められた。
【0058】
したがって、上記構成の加熱容器1では、中皿3と熱収縮フィルム13とを同じ材料によって構成し、また、受型21の溶着部21aにローレット加工を施して接着部24を凹凸状にすることにより、中皿3と熱収縮フィルム13とを安定的に接着することができる。これにより、互いに異なる内容物を区画して収容している状態を良好に維持することができる。また、上述したように超音波溶着時間が最適化されており、かつ、熱収縮フィルム13の熱収縮率が5%以上かつ50%以下の範囲であることにより、加熱容器1ごと各内容物を加熱すると、中皿3の底部15を開口して各内容物を混ぜ合わせることができる。
【0059】
なお、この発明は上述した実施例に限定されないのであって、中皿3の底部15の一部に開口部12aを形成してもよい。その例を
図12に示してある。
図12に示す例では、開口部12aは加熱容器1の幅方向で一方側、すなわち容器本体の中心を通る上下方向の軸線に対して直交する方向に偏って形成されており、その周辺部は熱収縮フィルム13が接着されるインナーフランジ部14となっている。熱収縮フィルム13はインナーフランジ部14の下面14bに超音波溶着されている。なお、
図12では、図面を簡単にするため、蓋体4の記載を省略している。
【0060】
したがって、
図12に示すように構成された加熱容器1では、加熱して熱収縮フィルム13が収縮すると、一方側に偏って形成された開口部12aが開口する。そして、第1区画室5内の内容物の上に第2区画室6内の他の内容物が添加される。このように、
図12に示すように構成した場合には、
図1に示すように構成した場合と同様の作用・効果を得ることができるとともに、内容物の上に、他の内容物を偏らせて載せることができる。すなわち、内容物の種類に応じた添加形態もしくは混ぜ方を演出できる。
【0061】
また、開口部12aや開口部12aを覆う熱収縮フィルム13の形状を三角形、星形、花形、キャラクターなどの形状にしてもよい。こうすることにより、内容物の上に他の内容物を載せる場合における他の内容物の形状や範囲を設計した形状や範囲にすることができる。また各内容物を混ぜ合わせた場合における商品としての見栄えを向上することができる。さらに、上述した形状に熱収縮フィルム13を形成すると、熱収縮フィルム13が剥がれる位置(剥離箇所)を制御できる。例えば、上述した形状のうち、熱収縮フィルム13の形状を不等辺三角形や二等辺三角形にした場合について説明すると、長辺での熱収縮フィルム13の収縮幅あるいは収縮長さは、短辺での収縮幅あるいは収縮長さより大きくなる。したがって、熱収縮フィルム13を不等辺三角形や二等辺三角形にすると、長辺で熱収縮フィルム13が剥がれて開口する。このようにして、剥離箇所を制御することができる。
【0062】
さらに、接着部24の一部に、他の部分と比較して接着強度を高くした強シール部26を形成してもよい。その例を
図13に示してある。
図13に示す例では、接着部24の一部が他の部分に比較して幅広に形成されており、幅広の部分が強シール部26となっている。強シール部26は、溶着部21aの一部や平坦部22aの一部を幅広にすることによって形成することができる。したがって、
図13に示すように構成された加熱容器1では、加熱したときに、強シール部26以外の接着部24では上述した原理によって熱収縮フィルム13が剥離するが、強シール部26では中皿3のインナーフランジ部14と熱収縮フィルム13との接着状態を維持することができる。これにより、熱収縮フィルム13が剥離したときに、内容物に対する熱収縮フィルム13の混入を防止もしくは抑制することができる。なお、この発明では、溶着部21aの一部や平坦部22aの一部を幅広にすることに替えて、所定の箇所に超音波溶着を少なくとも2回以上行ったり、所定の箇所での超音波溶着時間を長くしたりして、所定の箇所を強シール部26としてもよい。また、溶着部21aの一部や平坦部22aの一部に段差を設けて所定の箇所でのシール荷重を大きくして、上述した所定の箇所を強シール部26としてもよい。
【0063】
なお、レーザー溶着装置によってインナーフランジ部14に熱収縮フィルム13を接着する場合には、例えば、インナーフランジ部14の下面14bに着色し、あるいは、下面14bにレーザー光を吸収する材料を設ける。また、熱収縮フィルム13はレーザーを透過するように透明あるいは半透明にする。こうすることにより、レーザー溶着装置によってインナーフランジ部14に熱収縮フィルム13を接着することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…加熱容器、 2…下皿(容器本体)、 3…中皿、 5…第1区画室、 6…第2区画室、 12a…インナーフランジ部の内周側の開口部、 13…熱収縮フィルム(仕切り部)、 14…インナーフランジ部(仕切り部)、 15…底部、 20…超音波溶着装置、 24…接着部。