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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】開き戸用固定具及び開き戸固定構造
(51)【国際特許分類】
   E05D 7/081 20060101AFI20220905BHJP
   E05D 11/00 20060101ALI20220905BHJP
   E05D 15/26 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
E05D7/081
E05D11/00
E05D15/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018180041
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020051084
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000169329
【氏名又は名称】アトムリビンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】田中 潔
(72)【発明者】
【氏名】藤本 春美
(72)【発明者】
【氏名】村本 歩
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-234469(JP,A)
【文献】特開2009-256984(JP,A)
【文献】特開2004-225245(JP,A)
【文献】実開平01-112283(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0289463(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0231218(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 7/081
E05D 11/00
E05D 15/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開き戸の吊元側において、上枠材に取り付けられるレールに固定され、開き戸を構成する戸板を回動自在に位置決めする、開き戸用固定具であって、
前記レールに収容される本体と、
前記本体に回動自在に取り付けられているロックキーと、を有し、
前記本体は、
前記戸板の上端に取り付けられているピボット軸体が嵌まり込むピボット軸受け凹部と、
前記レールを介して前記上枠材に該本体を固定する固定手段が挿通される固定手段挿通孔と、
前記レールに係合されながら該レールの端部から内側に案内されるレール係合部と、
前記固定手段挿通孔よりも前記戸板側にある戸板対向片と、を有し、
前記レール係合部における前記戸板側の表面に前記ロックキーが回動自在に固定されており、
前記戸板対向片は、前記固定手段を挿通可能とし、かつ前記ピボット軸体を挿通不可とするピボット軸体規制溝を有し、該ピボット軸体規制溝に沿って該ピボット軸体が滑りながら前記ピボット軸受け凹部に嵌まり込み自在であり、
前記ピボット軸受け凹部に前記ピボット軸体が嵌まり込んだ状態において、前記ロックキーが軸部材を中心に回動されて前記ピボット軸体に係合され、該軸部材が締め付けられることにより該ロックキーによる該ピボット軸体の係合が保持されることを特徴とする、開き戸用固定具。
【請求項2】
前記軸部材が頭付きボルトにより形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の開き戸用固定具。
【請求項3】
前記軸部材の締付けの際の回転方向と、前記ロックキーが前記ピボット軸体に係合される際の回動方向が反対方向である形態において、前記ロックキーが前記ピボット軸体に係合された際に、双方の係合姿勢を保持するべく相互に係合される保持突起と保持溝のいずれか一方が前記ロックキーに設けられ、いずれか他方が前記本体に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の開き戸用固定具。
【請求項4】
開き戸の吊元側において、上枠材に取り付けられているレールに対して、開き戸を構成する戸板を回動自在に位置決めする、開き戸固定構造であって、
前記レールに開き戸用固定具が収容され、該開き戸用固定具は該レールを介して前記上枠材に固定されており、
前記開き戸用固定具は、本体と、該本体に対して軸部材を中心に回動自在に取り付けられているロックキーと、を有し、
前記本体は、前記戸板の上端に取り付けられているピボット軸体の上端が嵌まり込むピボット軸受け凹部と、前記レールを介して前記上枠材に該本体を固定する固定手段が挿通される固定手段挿通孔と、前記レールに係合されながら該レールの端部から内側に案内されるレール係合部と、前記固定手段挿通孔よりも前記戸板側にある戸板対向片と、を有し、
前記レール係合部における前記戸板側の表面に前記ロックキーが回動自在に固定されており、
前記戸板対向片は、前記固定手段を挿通可能とし、かつ前記ピボット軸体を挿通不可とするピボット軸体規制溝を有し、該ピボット軸体規制溝に沿って該ピボット軸体が滑りながら前記ピボット軸受け凹部に嵌まり込み自在であり、
前記ピボット軸受け凹部に前記ピボット軸体が嵌まり込んだ状態において、前記ロックキーが軸部材を中心に回動されて前記ピボット軸体に係合され、該軸部材が締め付けられることにより該ロックキーによる該ピボット軸体の係合が保持されていることを特徴とする、開き戸固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開き戸用固定具及び開き戸固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の扉には、引き戸(引き違い戸、片引き戸、片引き込み戸)や開き戸(片開き戸、親子開き戸)、折れ戸(片折れ戸、両折れ戸)など、様々な種類の扉が存在する。引き戸と異なり、開き戸と折れ戸は、吊元側において、ピボットヒンジ等を中心に開き戸や折れ戸を構成する戸板が回動する共通の構成を有している。
【0003】
ここで、開き戸の吊元において、扉の端部を固定するピボットヒンジに関し、扉から上方に突出する支軸をベースプレートのベース切欠溝に挿入し、ベースプレートのビスに回動自在に取り付けられている軸止めプレートを回動させて切欠溝を支軸に係合させた後、回動軸であるビスとは異なる位置で固定具によりベースプレートと軸止めプレートを固定するピボットヒンジが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第2573573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のピボットヒンジでは、ベースプレートに対する軸止めプレートの回動軸(ビス)と、軸止めプレートによるロック姿勢を保持する固定具の位置が異なるため、固定具の挿入に当たり、ベースプレートと軸止めプレートの双方の固定具挿通用の孔の位置合わせに手間がかかる等の課題を有する。
【0006】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、戸板の上端から突出するピボット軸体をロックキーによりロックする際に、手間をかけずにロックすることのできる開き戸用固定具及び開き戸固定構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による開き戸用固定具の一態様は、
開き戸の吊元側において、上枠材に取り付けられるレールに固定され、開き戸を構成する戸板を回動自在に位置決めする、開き戸用固定具であって、
前記レールに収容される本体と、
前記本体に回動自在に取り付けられているロックキーと、を有し、
前記本体は、
前記戸板の上端に取り付けられているピボット軸体が嵌まり込むピボット軸受け凹部と、
前記ピボット軸受け凹部に前記ピボット軸体が嵌まり込んだ状態において、前記ロックキーが軸部材を中心に回動されて前記ピボット軸体に係合され、該軸部材が締め付けられることにより該ロックキーによる該ピボット軸体の係合が保持されることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、ロックキーが軸部材を中心に回動されてピボット軸体に係合された後、回動軸である軸部材が直接締め付けられることにより、ロックキーによるピボット軸体の係合が保持される。そのため、ロックキーの回動軸となる軸部材とロックキーの係合姿勢を保持する軸部材が別部材とならず、速やかにピボット軸体に対するロックキーの係合状態を保持することができる。ここで、以下の説明において「開き戸」とは、一般的な開き戸(片開き戸、親子開き戸)の他、折れ戸(片折れ戸、両折れ戸)を含むものとするが、本発明の固定具が適用される戸は典型的には折れ戸である。本態様は、吊元側において戸板を回動自在に固定する固定具であるが、回動する戸板に関しては既述するように開き戸も折れ戸も共通の構成を有していることから、開き戸と折れ戸をまとめて開き戸として説明することにする。
【0009】
本態様の開き戸用固定具が適用される開き戸は、扉用の開口の周囲に取り付けられている開口枠のうち、上方の上枠材に取り付けられるレールの吊元側に固定される。例えば、レールの吊元側の端部から開き戸用固定具が嵌め込まれ、レールに対する所定位置において、開き戸用固定具がレールに対して、もしくはレールを介して上枠材に対して固定される。尚、片開き戸等の場合は、吊元側においてピボットヒンジを構成する、ピボット軸受け凹部と戸板の上端に取り付けられているピボット軸体とを中心に戸板が回動して扉が開閉される。一方、折れ戸の場合は、例えば二枚の戸板が丁番にて相対的に回動自在に取り付けられ、吊元側の戸板が、ピボットヒンジを中心に回動し、戸先側の戸板がその上方に取り付けられている走行ランナーをレールに案内されながら左右にスライドすることにより扉が開閉される。
【0010】
吊元側において、戸板はその上下端にピボット軸体が取り付けられており、上方のレールに固定されている開き戸用固定具の有するピボット軸受け凹部に対して、戸板の上端に取り付けられているピボット軸体の上端が嵌まり込む。このようにピボット軸受け凹部に対してピボット軸体の一部が嵌まり込んだ状態においては、回動される前のロックキーは例えばレールの長手方向に直交もしくは傾斜する方向である、例えば室内側に張り出した状態である。ピボット軸受け凹部に対してピボット軸体の上端を嵌まり込ませることにより、原則的には戸板は外れない態様で取付けられる。しなしながら、ピボット軸受け凹部にピボット軸体の上端が嵌まり込んでいるだけでは、例えば地震時に振動を受けた際に戸板が外れる恐れがある。そこで、ロックキーを回動させてピボット軸体に係合させ、軸部材を締め付けることにより、ロックキーによるピボット軸体の係合保持(ロック)を図ることができる。
【0011】
ロックキーを回動させてピボット軸体に係合させた際には、ロックキーはレールに沿う方向に配向しており、従って、ロックキーはレールから例えば室内側に張り出していない。一方、ロックキーを回動させてロックする前の状態においては、ロックキーをレールの長手方向に直交もしくは傾斜させて、例えば室内側に張り出させておくことにより、施工時においてロックキーが未だロックされていないことを作業員が確認することができ、ロックキーのロック忘れを防止することができる。
【0012】
また、本発明による開き戸用固定具の他の態様は、前記軸部材が頭付きボルトにより形成されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、軸部材が頭付きボルトであることにより、レンチ等の工具にて容易にボルトを締付けることができる。例えば、ロック前の状態で室内側に張り出しているロックキーを、軸部材を中心に回動させて戸板の上端のピボット軸体に係合させた後、戸板の上端とレールの間の隙間にレンチ等の工具を差し込み、頭付きボルトを締め付けることによりロックを完了させることができる。
【0014】
また、本発明による開き戸用固定具の他の態様において、前記本体は、前記レールを介して前記上枠材に該本体を固定する固定手段が挿通される固定手段挿通孔をさらに有していることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、レールの長手方向の所望の位置に対して、該レールを介して上枠材に対して開き戸用固定具を固定することができる。ここで、「固定手段」には、ビスや釘等が含まれる。例えば、レールに対してその長手方向に所定の間隔を置いて複数のビス孔を設けておき、レールの所望位置に開き戸用固定具を位置決めし、固定手段挿通孔とその位置のビス孔を通してビス等の固定手段を本体側から上枠材に対して捻じ込む等することにより開き戸用固定具が固定される。また、上記するようにレールが複数のビス孔等を有していることにより、レールにおける固定手段の打ち込み箇所(捩じ込み箇所)が複数存在することから、開き戸用固定具の固定位置を所望の位置に設定もしくは調整することができる。
【0016】
また、本発明による開き戸用固定具の他の態様において、前記本体は、前記レールに係合されながら該レールの端部から内側に案内されるレール係合部を有し、
前記レール係合部における前記戸板側の表面に前記ロックキーが回動自在に固定されており、
前記本体は、前記固定手段挿通孔よりも前記戸板側に戸板対向片を有し、
前記戸板対向片は、前記固定手段を挿通可能とし、かつ前記ピボット軸体を挿通不可とするピボット軸体規制溝を有し、該ピボット軸体規制溝に沿って該ピボット軸体が滑りながら前記ピボット軸受け凹部に嵌まり込み自在であることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、本体の有するレール係合部により、レールに沿った開き戸用固定具の案内をスムーズに実行することができる。また、本体が戸板対向片を有し、戸板対向片が、固定手段を挿通可能とし、かつピボット軸体を挿通不可とするピボット軸体規制溝を備えていることにより、戸板の上端のピボット軸体をピボット軸体規制溝に沿って滑らせながら、ピボット軸体を固定手段挿通孔に入り込ませることなく、ピボット軸受け凹部にスムーズに嵌まり込ませることができる。
【0018】
また、本発明による開き戸用固定具の他の態様は、前記軸部材の締付けの際の回転方向と、前記ロックキーが前記ピボット軸体に係合される際の回動方向が反対方向である形態において、前記ロックキーが前記ピボット軸体に係合された際に、双方の係合姿勢を保持するべく相互に係合される保持突起と保持溝のいずれか一方が前記ロックキーに設けられ、いずれか他方が前記本体に設けられていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、軸部材の締付けの際の回転方向と、ロックキーがピボット軸体に係合される際の回動方向が反対方向であっても、ロックキーがピボット軸体に係合された際に、ロックキーと本体にそれぞれ設けられている保持突起と保持溝が相互に係合することにより、軸部材を回転させて係合保持を図る際にロックキーが係合姿勢から解除されることを防止することができる。尚、保持突起と保持溝はそれぞれ、ロックキーと本体のいずれに設けられてもよい。また、軸部材の締付けの際の回転方向と、ロックキーがピボット軸体に係合される際の回動方向が同一方向である形態においては、軸部材を回転させて係合保持を図る際に、ロックキーは係合姿勢を保持する方向に力を付与されることから、ロックキーの係合姿勢が解除される恐れはない。
【0020】
また、本発明による開き戸固定構造の一態様は、
開き戸の吊元側において、上枠材に取り付けられているレールに対して、開き戸を構成する戸板を回動自在に位置決めする、開き戸固定構造であって、
前記レールに開き戸用固定具が収容され、該開き戸用固定具は該レールを介して前記上枠材に固定されており、
前記開き戸用固定具は、本体と、該本体に対して軸部材を中心に回動自在に取り付けられているロックキーと、を有し、
前記本体は、前記戸板の上端に取り付けられているピボット軸体の上端が嵌まり込むピボット軸受け凹部を有し、
前記ピボット軸受け凹部に前記ピボット軸体が嵌まり込んだ状態において、前記ロックキーが軸部材を中心に回動されて前記ピボット軸体に係合され、該軸部材が締め付けられることにより該ロックキーによる該ピボット軸体の係合が保持されていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、レールに上記する開き戸用固定具を収容して上枠材に固定し、戸板の上端のピボット軸体にロックキーを係合させ、ロックキーの回動軸である軸部材を締め付けることにより、速やかにロックキーによるピボット軸体の係合保持を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明から理解できるように、本発明の開き戸用固定具及び開き戸固定構造によれば、戸板の上端から突出するピボット軸体を、手間をかけずにロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る開き戸用固定具の分解斜視図である。
図2】実施形態に係る開き戸用固定具の組立て斜視図である。
図3】戸板に取り付けられているピボット軸体が滑りながらピボット軸受け凹部に嵌まり込むことを説明する斜視図である。
図4】ロックキーによるピボット軸体の係合状態が保持され、実施形態に係る開き戸固定構造が形成されていることを説明する斜視図である。
図5】上枠材に接続されているレールの端部から開き戸用固定具を挿通する前の状態を示す、レールの下方から見た斜視図である。
図6図5に続いて、レールの端部に開き戸用固定具が挿通され、開き戸用固定具が固定手段によりレールを介して上枠材に固定される前の状態を示す斜視図である。
図7】開き戸用固定具とレールに吊元側ピボット軸体と案内ランナー側ピボット軸体を係合する前の状態を示す斜視図である。
図8】開き戸用固定具とレールに吊元側ピボット軸体と案内ランナー側ピボット軸体が係合され、ロックキーを回動させて吊元側ピボット軸体をロックする前の状態を示す斜視図である。
図9】ロックキーを回動させて吊元側ピボット軸体の係合状態が保持され、開き戸固定構造が形成されている状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の各実施形態に係る開き戸用固定具と開き戸固定構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0025】
[実施形態]
<開き戸用固定具>
はじめに、図1及び図2を参照して、実施形態に係る開き戸用固定具について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る開き戸用固定具の分解斜視図であり、図2は、実施形態に係る開き戸用固定具の組立て斜視図である。尚、図2に示す開き戸用固定具100は、開き戸用の開口枠のうち、上枠材に取付けられていて下方に開口を有するレールに対して、図2に示す状態を上下逆転させた姿勢で取り付けられるものである。以下の図1及び図2の説明において使用する「上方」、「上面」等は、図1及び図2に示す状態における上方や上面を意味するものであり、実際のレールに開き戸用固定具100が取り付けられている状態では上方が下方となり、上面は下面となる。また、図1において、軸部材60がシーケンシャルに挿通される各孔に一点鎖線の矢印を付しており、同様に、ピボット軸受け凹部23が第一長孔16に嵌まることを示す一点鎖線の矢印を付している。
【0026】
図1に示すように、開き戸用固定具100は、複数の部材が積層されることにより形成される。積層構造の下方から順に、基台10と、スライド台20と、ロックキー台座30と、により構成される本体40と、本体40に対して軸部材60を回転中心として取り付けられるロックキー50とを有する。
【0027】
基台10は、鋼製プレートが曲げ加工された部材と、この部材の一部に嵌め込まれた樹脂製のブロック体により構成される。鋼製プレートが曲げ加工された部材は、第一水平片11と、第一水平片11の一端において曲げ部を介して下方に延出する第一鉛直片12と、第一水平片11の他端において曲げ部を介して下方に延出する第二鉛直片13と、を有する。さらに、第二鉛直片13から曲げ部を介して水平方向に延出する第二水平片14と、第二水平片14から曲げ部を介して上方に延出する第三鉛直片15と、を有する。図1に示すように、鋼製プレートを曲げ加工してなる部材は、側面視形状が数字の2の線形を有している。第一鉛直片12の下端と、第二水平片14の下面は同じ高さレベルにあり、平坦面に対して基台10を安定した姿勢で載置することができる。
【0028】
第一水平片11には、基台10の長手方向に延出する第一長孔16が開設され、第一長孔16から離れた位置に第一軸部材挿通孔17が開設されている。第一長孔16は、スライド台20の有するピボット軸受け凹部23をスライド自在に嵌め込む長孔である。一方、第一軸部材挿通孔17にはその内壁面に螺子溝が設けられており、軸部材60である頭付きボルトのボルトが螺合される挿通孔である。
【0029】
第一鉛直片12の前面には、例えばゴム製の案内ランナーストッパー19が取り付けられており、開き戸用固定具100がレールに固定され、開き戸の一形態である折れ戸の戸先側の戸板に取り付けられている、案内ランナー側ピボット軸体が当接した際の緩衝材として機能する。
【0030】
一方、第二鉛直片13と、第二水平片14と、第三鉛直片15とにより形成される窪みには樹脂製の戸板対向ブロック18が嵌め込まれ、各片と例えば接着剤により接続されている。図示例の戸板対向ブロック18は、側面視コの字状を呈し、上方の戸板対向片18aにはピボット軸体規制溝18bが開設され、下片18cにおいてピボット軸体規制溝18bに対応する位置には固定手段挿通孔18dが開設されている。そして、上方から見た際に、ピボット軸体規制溝18bと固定手段挿通孔18dは連通しており、さらに、第二水平片14における固定手段挿通孔18dの下方位置にも固定手段用孔14aが開設されている。従って、ピボット軸体規制溝18bを介してビス等の固定手段を挿通し、固定手段挿通孔18d、14aを介して、基台10をレールやレールが固定される上枠材(図示せず)に対して固定手段にて固定することができる。
【0031】
このように、ピボット軸体規制溝18bは、ビス等の固定手段や固定手段を締める工具の先端が入り込むことのできる開口寸法を有し、かつ、戸板に取り付けられているピボット軸体の先端が入り込むことのできない開口寸法を有することにより、ピボット軸体の挿入を規制する溝として機能する。尚、戸板対向ブロック18は樹脂製の他、鋼製ブロックであってもよいし、鋼製プレートが曲げ加工された部材と戸板対向ブロック18が別体でなく、例えば鋼製や硬質の樹脂製で一体成形されてもよい。
【0032】
また、第二鉛直片13と、第二水平片14と、第三鉛直片15とにより形成される窪みに戸板対向ブロック18が嵌め込まれた状態において、第三鉛直片15は戸板対向ブロック18よりも側方に張り出す張り出し部15aを有している。後述するように、レールに対して開き戸用固定具100をスライドさせて取付ける際に、この張り出し部15aにレールの側片が係止されることにより、レールに対する開き戸用固定具100の位置決めが図られる。
【0033】
スライド台20は、鋼製プレートにより形成されて平面視略矩形状を呈するスライド台本体21を有する。スライド台本体21には、プレス加工によりすり鉢状のピボット軸受け凹部23が形成され、ピボット軸受け凹部23から離れた位置に、案内突起25と、スライド台本体21の長手方向に延出する第二長孔24とを有する。
【0034】
また、スライド台本体21の長手方向の端面には半円形状の固定手段用溝22が開設されている。ピボット軸受け凹部23は、基台10の第一長孔16にスライド自在に嵌め込まれるとともに、戸板に取り付けられているピボット軸体の先端を入り込ませる凹部である。一方、案内突起25は、ロックキー台座30の下面に設けられている案内溝35に入り込み、スライド台20に対するロックキー台座30のおよその位置決めを図ることを可能とした突起である。
【0035】
さらに、第二長孔24は、軸部材60が挿通される孔である。第二長孔24は、ここに軸部材60が挿通された状態において、基台10の第一長孔16内においてスライド台本体21の有するピボット軸受け凹部23がスライドするのを可能とするべく、長孔とされている。
【0036】
固定手段用溝22は、ピボット軸体規制溝18bや固定手段挿通孔18dとともに、ビス等の固定手段が挿通される挿通孔を形成する。
【0037】
ロックキー台座30は、樹脂製の台座であり、その長手方向に直交する断面形状が略Tの字状の柱状体である台座本体31を有する。台座本体31の中央位置には、台座本体31を貫通する第二軸部材挿通孔32が開設されている。また、台座本体31の上面において、その平面視矩形の一つの対角位置には、第一ストッパー33と第二ストッパー34が上方に突出する態様で設けられている。
【0038】
また、台座本体31の下面の中央位置には、下面の端部から中央側に延出する案内溝35が設けられており、スライド台20の有する案内突起25が挿入されるようになっている。案内突起25が案内溝35に挿入されて案内されることにより、スライド台20に対する台座本体31のおよその位置決めが図られる。ロックキー50が回動されてピボット軸の係合状態をロックした後、このロック姿勢を保持するべく、第二軸部材挿通孔32と第二長孔24に軸部材60が挿通され、第一軸部材挿通孔17に軸部材60の先端が捻じ込まれることにより、スライド台20に対してロックキー台座30が固定される。尚、ロックキー台座30は鋼製の台座であってもよい。
【0039】
ロックキー50は、鋼製プレートにより形成されているロックキー本体51を有する。ロックキー本体51には、ピボット軸受け凹部23に先端が嵌まり込んでいるピボット軸体に係合するピボット係合溝52と、ロックキー本体51がピボット軸体に係合した際にロックキー本体51のさらなる回動を規制するべく、ロックキー台座30の第一ストッパー33に係合する第一ストッパー係合溝53が設けられている。さらに、ロックキー本体51の長手方向に延出して軸部材60が挿通される第三長孔54が開設されている。挿通される軸部材60に対して第三長孔54の長さの範囲内で、ロックキー台座30に対してロックキー50がスライドできることから、第一ストッパー係合溝53の長さもこのロックキー50のスライド可能長さに対応する長さを有している。
【0040】
ロックキー50の有する第三長孔54に挿通される図示例の軸部材60は、プラス孔が上面に開設されている頭付きボルトにより形成される。座金を介して第三長孔54に挿通される頭付きボルト60は、第二軸部材挿通孔32、第二長孔24を介して、基台10の有する第一軸部材挿通孔17に螺合されるようになっている。図示する頭付きボルト60は、プラス孔の孔付きナットを頭部に備えたボルト(六角孔付きボルト)であるが、マイナス孔の六角孔付きボルトであってもよいし、孔のない六角ナットを頭部に備えた六角ボルト等であってもよい。尚、この第一軸部材挿通孔17に対する頭付きボルト60の螺合(締め付け)は、ピボット軸受け凹部23に嵌め込まれたピボット軸体に対してロックキー50を回動させて係合させ、ロックキー50によるピボット軸体の係合を保持する際に行われる。
【0041】
図1に示す各種部材を積層し、ロックキー50が回動できる程度に軸部材60を軽く締付けることにより、図2に示す開き戸用固定具100が形成される。図2において、開き戸用固定具100は、その長手方向を、開き戸用固定具100が取り付けられるレール(図示せず)の長手方向であるL方向に向けて配設されているものとして示している。図2に示すように、第一長孔16に対してピボット軸受け凹部23がスライド自在に嵌め込まれることにより、基台10に対してスライド台20がL方向に沿うX1方向にスライド自在となる。尚、ボット軸体規制溝18bと、固定手段挿通孔18dと、固定手段挿通孔14aに対して、ビス等の固定手段(図示せず)がZ1方向に挿入され、工具を使用してレールやレールが固定される上枠材に対して開き戸用固定具100が固定される。
【0042】
また、断面略Tの字状のロックキー台座30とスライド台20の間に形成される隙間がレール係合部70となり、左右のレール係合部70がレールの有する左右の係合突起(図示せず)に係合されることにより、開き戸用固定具100をレールから係脱させることなく、レールに対してその長手方向であるL方向に移動自在に係止させることができる。
【0043】
軸部材60を中心にロックキー50はX3方向に回動するが、第一ストッパー33と第二ストッパー34により、ロックキー50の回動範囲は規制され、ロックキー50が過度に回動することが抑制される。
【0044】
また、ピボット軸受け凹部23に嵌め込まれたピボット軸体に対してロックキー50を回動させて係合させ、ロックキー50によるピボット軸体の係合状態を保持するに当たり、ロックキー50の回動軸でもある軸部材60をX4方向に締め付けることにより、ロックキー50の締付けが行われる。このように、ロックキー50の回動軸とロックキー50の締付け手段がともに軸部材60であることから、手間をかけずにロックキー50によるピボット軸体のロックを実現することができる。
【0045】
さらに、ロックキー50が回動してその長手方向が基台10やスライド台20の長手方向に沿う位置にある際には、第三長孔54に挿通される軸部材60に対して、第三長孔54の長さ範囲内でロックキー50がL方向に沿うX2方向にスライド自在となる。このように、開き戸用固定具100を構成する複数の部材が、レールの長手方向であるL方向に対して相互にスライド自在に組み付けられていることにより、戸板の建て付けに際して良好な建て付け性が得られる。
【0046】
具体的には、上板枠に取り付けられているレールの吊元に戸板を固定する際には、戸板の下端のピボット軸体を吊元下方のピボット軸受け(図示せず)に対してレールに沿って斜め方向から嵌め込んだ後、戸板の上端のピボット軸体を、吊元上方のレールに固定されている開き戸用固定具100の有するピボット軸受け凹部23に対して同様にレールに沿って斜め方向から嵌め込んでいくのが一般的である。この建て付けに当たり、開き戸用固定具100を構成する複数の部材が、レールの長手方向にスライドすることにより、ピボット軸体が嵌まり込み易い位置にピボット軸受け凹部23の位置を調整することができる。そのため、斜め方向からピボット軸体の先端をピボット軸受け凹部23に容易に導きながら、戸板の建て付けを行うことが可能になる。
【0047】
<開き戸固定構造>
次に、図3及び図4を参照して、実施形態に係る開き戸固定構造について説明する。ここで、図3は、戸板に取り付けられているピボット軸体が滑りながらピボット軸受け凹部に嵌まり込むことを説明する斜視図である。また、図4は、ロックキーによるピボット軸体の係合状態が保持され、実施形態に係る開き戸固定構造が形成されていることを説明する斜視図である。
【0048】
図3及び図4に示すピボット軸体200は、開き戸を構成する吊元側の戸板(図示せず)の上端に取り付けられるが、図3及び図4では、このようにピボット軸体200が取り付けられている開き戸用固定具100を上下逆転させて示している。
【0049】
ピボット軸体200は、鋼製の軸材201の先端に樹脂製の係合リング202が取り付けられており、軸材202の他端は樹脂製の戸板取付け筒203の内部に収容され、この内部に収容されている圧縮コイルばね204に取り付けられている。従って、例えば図3においてピボット軸体200を上方から押圧すると、圧縮コイルばね204が縮んでピボット軸体200の全長が短くなる。また、押圧を開放することにより、圧縮コイルばね204は元に戻り、ピボット軸体200は当初の長さとなる。このように、ピボット軸体200はその長手方向にY2方向に伸縮自在となっており、戸板の建て付け時にピボット軸体200がその長さを所望に変化させることにより、良好な戸板の建て付け性を保証している。また、緩衝機能を有する樹脂製の係合リング202が鋼製の軸材201の先端に取り付けられていることにより、鋼製のピボット軸受け凹部23に嵌まり込んだ際に、軸材201の先端がピボット軸受け凹部23を傷付ける恐れがなくなる。さらに、緩衝作用のある樹脂製の戸板取付け筒203が戸板に嵌め込まれることにより、戸板取付け筒203が戸板の嵌め込み部を傷付ける恐れがなくなる。
【0050】
本体40は戸板対向片18aを有し、戸板対向片18aが、ビス等の固定手段(図示せず)を挿通可能とし、かつピボット軸体200を挿通不可とする開口寸法及び開口形状のピボット軸体規制溝18bを備えている。そのため、戸板の上端のピボット軸体200の先端をピボット軸体規制溝18bに沿ってY1方向に滑らせた際に、ピボット軸体200の先端を固定手段挿通孔14aに入り込ませることなく、ピボット軸受け凹部23にスムーズに嵌まり込ませることができる。従って、上記するように、戸板の上端から突出するピボット軸体200の先端を斜め方向からピボット軸受け凹部23に嵌め込もうとした際に、ピボット軸体規制溝18bに沿ってピボット軸体200の先端をピボット軸受け凹部23に導くことができ、このことによっても、良好な戸板の建て付け性が保証される。
【0051】
ピボット軸受け凹部23に対してピボット軸体200の上端を嵌まり込ませることにより、原則的には戸板は外れない態様で取付けられる。しなしながら、ピボット軸受け凹部23にピボット軸体200の上端が嵌まり込んでいるだけでは、例えば地震時に振動を受けた際に戸板が外れる恐れがある。そこで、図4に示すように、ロックキー50をX3方向に回動させてピボット軸体200に係合させ、軸部材60をX4方向に回転させて締め付けることにより、ロックキー50によるピボット軸体200の係合状態の保持(ロック)を図ることができる。
【0052】
尚、図示例では、軸部材60を締付ける際に回転させる方向(時計周り)と、ロックキー50がピボット軸体200に係合する方向が同一方向であることから、軸部材60を締付けの際に回転させることに応じて、ロックキー50がさらに回動したとしてもロックキー50のピボット軸体200に対する係合姿勢は保持される。これに対して、軸部材を締付ける際に回転させる方向とロックキーがピボット軸体に係合する方向が異なる場合には、軸部材を回転させた際にロックキーがピボット軸体から離れる方向に回動して係合が外れる恐れがある。そこで、このような場合に備えて、ロックキーがピボット軸体に係合された際に双方の係合姿勢を保持するべく、相互に係合される保持突起と保持溝(いずれも図示せず)のいずれか一方をロックキーに設け、いずれか他方を本体に設けておくのが好ましい。
【0053】
<開き戸固定構造の形成方法>
次に、図5乃至図9を参照して、実施形態に係る開き戸固定構造の形成方法について説明する。ここで、図5は、上枠材に接続されているレールの端部から開き戸用固定具を挿通する前の状態を示す、レールの下方から見た斜視図である。また、図6は、図5に続いて、レールの端部に開き戸用固定具が挿通され、開き戸用固定具が固定手段によりレールを介して上枠材に固定される前の状態を示す斜視図である。また、図7は、開き戸用固定具とレールに吊元側ピボット軸体と案内ランナー側ピボット軸体を係合する前の状態を示す斜視図である。また、図8は、開き戸用固定具とレールに吊元側ピボット軸体と案内ランナー側ピボット軸体が係合され、ロックキーを回動させて吊元側ピボット軸体をロックする前の状態を示す斜視図である。さらに、図9は、ロックキーを回動させて吊元側ピボット軸体の係合状態が保持され、開き戸固定構造が形成されている状態を示す斜視図である。
【0054】
図5乃至図9において、図示するレール300の左端を吊元側とし、レール300に対して紙面の手前側を物入側、紙面の奥側を室内側として説明する。また、図7に示すように、開き戸の一例として折れ戸を例示し、折れ戸の戸先側がレール300に沿ってスライドするものとする。尚、開き戸には、通常の片開き戸等が適用されてもよい。
【0055】
図5に示すように、開き戸の開口枠を形成する上枠材400には、上枠材400の長手方向であるL方向に沿うようにレール300が複数のビス等(図示せず)により固定されている。レール300は、天井片301と、左右の側片302とを有して断面形状が略コの字状を呈している。左右の側片302の内側には水平に張り出す係合片303が設けられており、下方に開口を有する態様で上枠材400に対して天井片301が固定される。
【0056】
天井片301のうち、開き戸用固定具100が固定される吊元側には、所定間隔を置いてビス孔304が開設されており、開き戸用固定具100を固定手段を介して上枠材400に固定するための複数の取り付け位置を形成している。このように、天井片301が複数のビス孔304を有していることにより、開き戸用固定具100の取り付け位置を所望に調整することができる。
【0057】
図5に示すように、開き戸用固定具100は、左右にあるレール係合部70をレール300の左右の係合片303に係合させるようにしてX5方向に嵌め込まれる。この開き戸用固定具100のレール300への嵌め込みに当たり、ロックキー50をその長手方向に直交する室内側に向けた姿勢として第二ストッパー34に係止させ、この状態でレール300への嵌め込みを行う。
【0058】
図6に示すように、レール300に対して開き戸用固定具100をスライドさせ、第三鉛直片15の左右の張り出し部15aにレール300の左右の側片302の端部が係止されることにより、レール300に対する開き戸用固定具100の位置決めが図られる。そして、開き戸用固定具100がレール300に対して位置決めされた後、ピボット軸体規制溝18bを介し、固定手段挿通孔18d、14a(図2参照)を介し、さらにレール300の天井片301のビス孔304(図5参照)を介して、下方からビス等の固定手段80を打ち込むことにより、レール300及び上枠材400に対して開き戸用固定具100が固定される。
【0059】
開き戸用固定具100がレール300及び上枠材400に固定された後、図7に示すように、開き戸用固定具100及びレール300に対する、開き戸の一例である折れ戸500の建て付けを行う。折れ戸500は、二枚の戸板501,502が丁番(図示せず)を介して相互に回動自在に組み付けられており、吊元側の戸板501の上端には吊元側ピボット軸体200Aが取り付けられ、他方の戸板502の上端には案内ランナー側ピボット軸体200Bが取り付けられている。折れ戸500の取り付けに当たり、吊元側下方にあるピボット受け(図示せず)に対して戸板501の下端に取り付けられているピボット軸体(図示せず)を嵌め込んだ後、吊元側ピボット軸体200Aを開き戸用固定具100の有するピボット軸受け凹部23に対して斜め方向から図示するZ2方向に嵌め込んでいく。このピボット軸受け凹部23に対する吊元側ピボット軸体200Aの嵌め込みに際し、既述するように、ピボット軸受け凹部23がX1方向にスライドしながら、吊元側ピボット軸体200Aの先端の入り込みを導きくことにより、戸板501の容易な建て付けが実現される。一方、案内ランナー側ピボット軸体200Bの先端はレール300の左右の係合片303の間の開口を介してZ3方向に挿通され、左右の係合片303に対して係合されることにより、図8に示すように、戸板501、502のピボット軸受け凹部23とレール300への取り付けが行われる。
【0060】
図8に示す状態、すなわち、ロックキー50が吊元側ピボット軸体200Aに係合してロックされていない状態においては、ロックキー50が室内側に張り出している。そのため、作業員は、未だロックキー50が吊元側ピボット軸体200Aに係合していないことを了解することができる。
【0061】
図9に示すように、ロックキー50を、レール300の長手方向に沿うX2方向にスライドさせながら、さらにX3方向に回動させて吊元側ピボット軸体200Aに係合させ、軸部材60をX4方向に回転させて締め付けることにより、ロックキー50による吊元側ピボット軸体200Aの係合状態の保持(ロック)を図ることができる。そして、ロックキー50による吊元側ピボット軸体200Aの係合状態の保持により、開き戸用固定具100による戸板501の回動自在な位置決めが図られる。軸部材60の回転締付けは、工具用のプラス孔が下方に臨んでいることにより、下方から工具を差し込んで容易に行うことができる。また、戸板501とレール300の間に隙間がある場合には、この隙間を介してレンチ等を差し込み、軸部材60の六角ナットを締め付けることもできる。取り付けられた折れ戸500において、吊元側の戸板501がX6方向に回動し、戸板501の回動に応じて、戸板501に丁番を介して連結されている他方の戸板502がレール300に沿ってX7方向にスライドすることにより、折れ戸500の開閉が行われる。
【0062】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0063】
10:基台、11:第一水平片、12:第一鉛直片、13:第二鉛直片、14:第二水平片、14a:固定手段挿通孔、15:第三鉛直片、16:第一長孔、17:第一軸部材挿通孔、18:戸板対向ブロック、18a:戸板対向片、18b:ピボット軸体規制溝、19:案内ランナーストッパー、20:スライド台、21:スライド台本体、22:固定手段用溝、23:ピボット軸受け凹部、24:第二長孔、25:案内突起、30:ロックキー台座、31:台座本体、32:第二軸部材挿通孔、33:第一ストッパー、34:第二ストッパー、35:案内溝、40:本体、50:ロックキー、51:ロックキー本体、52:ピボット係合溝、53:第一ストッパー係合溝、54:第三長孔、60:頭付きボルト(軸部材)、70:レール係合部、80:固定手段(ビス)、100:開き戸用固定具、200:ピボット軸体、200A:吊元側ピボット軸体、200B:案内ランナー側ピボット軸体、201:軸材、202:係合リング、203:戸板取付け筒、204:圧縮コイルばね、300:レール、301:天井片、302:側片、303:係合片、304:ビス孔、400:上枠材、500:折れ戸(開き戸)、501,502:戸板、600:開き戸固定構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9