IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジクラの特許一覧

特許7134813荷重検知センサ及び荷重検知センサユニット
<>
  • 特許-荷重検知センサ及び荷重検知センサユニット 図1
  • 特許-荷重検知センサ及び荷重検知センサユニット 図2
  • 特許-荷重検知センサ及び荷重検知センサユニット 図3
  • 特許-荷重検知センサ及び荷重検知センサユニット 図4
  • 特許-荷重検知センサ及び荷重検知センサユニット 図5
  • 特許-荷重検知センサ及び荷重検知センサユニット 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】荷重検知センサ及び荷重検知センサユニット
(51)【国際特許分類】
   G01G 19/12 20060101AFI20220905BHJP
   G01G 19/52 20060101ALI20220905BHJP
   G01G 3/14 20060101ALN20220905BHJP
   H01H 13/16 20060101ALN20220905BHJP
【FI】
G01G19/12 Z
G01G19/52 Z
G01G3/14
H01H13/16 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018183937
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020051985
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】亀島 貴
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 仁
(72)【発明者】
【氏名】中崎 滋
(72)【発明者】
【氏名】川平 哲也
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-115472(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159704(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/00-19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁シートと、前記第1絶縁シートに設けられる第1電極と、を有する第1電極シートと、
前記第1絶縁シートと対向する第2絶縁シートと、前記第2絶縁シートに設けられ前記第1電極と対向する第2電極と、を有する第2電極シートと、
前記第1絶縁シートと前記第2絶縁シートとの間に介在され、前記第1電極と前記第2電極との間に開口が形成された絶縁性のスペーサとを備え、
前記第1絶縁シート及び前記第2絶縁シートの少なくとも一方と前記スペーサとは、前記開口の周囲に形成された溶着接続部によって直接接合されており、前記溶着接続部の内側領域は非接着であり
平面視すると、前記溶着接続部は、前記開口に沿って形成される内側溶着接続部と、前記内側溶着接続部よりも外周に形成される外側溶着接続部と、を有することを特徴とする荷重検知センサ。
【請求項2】
前記外側溶着接続部は、前記第1絶縁シート及び前記第2絶縁シートの少なくとも一方と前記スペーサとの重なる領域の外形に沿って形成されることを特徴とする請求項に記載の荷重検知センサ。
【請求項3】
前記第1絶縁シート及び前記第2絶縁シートの少なくとも一方と前記スペーサとの間であって、前記溶着接続部の外側には、接着層が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の荷重検知センサ。
【請求項4】
第1絶縁シートと、前記第1絶縁シートに設けられる第1電極と、を有する第1電極シートと、
前記第1絶縁シートと対向する第2絶縁シートと、前記第2絶縁シートに設けられ前記第1電極と対向する第2電極と、を有する第2電極シートと、
前記第1絶縁シートと前記第2絶縁シートとの間に介在され、前記第1電極と前記第2電極との間に開口が形成された絶縁性のスペーサとを備え、
前記第1絶縁シート及び前記第2絶縁シートの少なくとも一方と前記スペーサとは、前記開口の周囲に形成された溶着接続部によって直接接合されており、前記溶着接続部の内側領域は非接着であり、
前記第1絶縁シート及び前記第2絶縁シートの少なくとも一方と前記スペーサとの間であって、前記溶着接続部の外側には、接着層が設けられていることを特徴とする荷重検知センサ。
【請求項5】
前記第1絶縁シート及び前記第2絶縁シートの少なくとも一方には、一対の端子と、前記第1電極及び第2電極の少なくとも一方と前記一対の端子とを電気的に接続する一対の引出配線が設けられており、
平面視において前記引出配線と前記溶着接続部とが交差する交差部においては、溶着接続部が設けられていないことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の荷重検知センサ。
【請求項6】
請求項5に記載の前記荷重検知センサと、
前記荷重検知センサの前記一対の端子を覆う保護樹脂とを備え、
前記保護樹脂は、少なくとも一つの前記交差部も覆っていることを特徴とする荷重検知センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重検知センサ及び荷重検知センサユニットに関し、着座等による荷重を検知する場合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
車両における安全システムの一つとして、乗車時にシートベルトが非着用であることを警告するアラームシステムが実用化されている。このアラームシステムでは、人の着座が感知されている状態でシートベルトの着用が非感知となる場合に、警告が発せられる。この人の着座を感知する装置として、着座による荷重を検知する荷重検知センサが用いられる場合がある。
【0003】
人の着座に起因する荷重を検知する荷重検知センサとして、例えば下記特許文献1が開示されている。下記特許文献1の荷重検知センサでは、一対のフィルム間にスペーサが配置され、当該フィルムとスペーサとが接着剤層により貼り合わされ、それぞれのフィルム上に形成された電極が、スペーサの開口内において互いに所定の間隔をあけて対向している。このような荷重検知センサでは、座席装置の着座に応じて一対のフィルムが押されることでフィルム上に形成された電極が接触し、着座に起因する荷重が検知されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-121363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の荷重検知センサにおいて、フィルムとスペーサとを貼り合わせている接着剤層は、一般的に、高温環境下では軟化し、低温環境下では硬化する傾向にある。このため、高温環境下では、接着剤層の軟化により、各フィルムに設けられる電極が接触するために必要な荷重が低下してしまうことが懸念される。一方、低温環境下では、接着剤層の硬質化により、各フィルムに設けられる電極が接触するために必要な荷重が増加してしまうことが懸念される。つまり、荷重検知センサが置かれる環境温度に応じて、当該荷重検知センサがオンとなるときの荷重に誤差が生じることが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、適切に荷重を検知し得る荷重検知センサ及び荷重検知センサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の荷重検知センサは、第1絶縁シートと、前記第1絶縁シートに設けられる第1電極と、を有する第1電極シートと、前記第1絶縁シートと対向する第2絶縁シートと、前記第2絶縁シートに設けられ前記第1電極と対向する第2電極と、を有する第2電極シートと、前記第1絶縁シートと前記第2絶縁シートとの間に介在され、前記第1電極と前記第2電極との間に開口が形成された絶縁性のスペーサとを備え、前記第1絶縁シート及び前記第2絶縁シートの少なくとも一方と前記スペーサとは、前記開口の周囲に形成された溶着接続部によって直接接合されており、前記溶着接続部の内側領域は非接着であることを特徴とする。
【0008】
上記荷重検知センサによれば、第1絶縁シート及び第2絶縁シートの少なくとも一方とスペーサとは開口の周囲に形成された溶着接続部により直接接合されているため、第1絶縁シート及び第2絶縁シートの少なくとも一方とスペーサとは溶着接続部の内側領域を非接着としても、十分に固定される。そして、溶着接続部の内側領域が非接着となっているため、第1電極や第2電極の周囲であるこの内側領域には接着剤層が存在せず、環境温度の変化による接着剤層の粘度変化に起因して第1電極と第2電極とが接触するために必要な荷重が変化することを抑制できる。こうして、本発明の荷重検知センサは、適切に荷重を検知し得る。
【0009】
また、上記荷重検知センサにおいて、平面視すると、前記溶着接続部は、前記開口に沿って形成される内側溶着接続部と、前記内側溶着接続部よりも外周に形成される外側溶着接続部と、を有することが好ましい。
【0010】
この場合、内側溶着接続部と外側溶着接続部の2重で接合しているため、接合強度が向上する。また、2重で接合しているため、外部からの異物の侵入を効果的に抑制することができる。
【0011】
また、上記荷重検知センサにおいて、前記外側溶着接続部は、前記第1絶縁シート及び前記第2絶縁シートの少なくとも一方と前記スペーサとの重なる領域の外形に沿って形成されることが好ましい。
【0012】
この場合、外側溶着接続部の接合範囲を最大限広くすることができるため、接合強度がより向上する。また、外側溶着接続部よりも外側の領域を極力小さくでき、第1絶縁シート及び第2絶縁シートの少なくとも一方と前記スペーサとの浮きを抑制することができる。
【0013】
また、上記荷重検知センサにおいて、前記第1絶縁シート及び前記第2絶縁シートの少なくとも一方と前記スペーサとの間であって、前記溶着接続部の外側領域には、接着層が設けられていることが好ましい。
【0014】
この場合、溶着接続部の外側領域に接着層があることで、荷重に影響を与えずに、第1絶縁シート及び第2絶縁シートの少なくとも一方とスペーサとの固定をより確実にすることができる。また、接着層を有することで、異物の混入もより抑制することができる。
【0015】
また、上記荷重検知センサにおいて、前記第1絶縁シート及び前記第2絶縁シートの少なくとも一方には、一対の端子と、前記第1電極及び第2電極の少なくとも一方と前記一対の端子とを電気的に接続する一対の引出配線が設けられており、平面視において前記引出配線と前記溶着接続部とが交差する交差部においては、溶着接続部が設けられていないことが好ましい。
【0016】
この場合、交差部に溶着接続部が設けられていないため、荷重検知センサの曲げ等に伴う応力が加わった際に、交差部の引出配線に応力が集中せず、引出配線が断線等して破損することを防止することができる。
【0017】
また、本発明の荷重検知センサユニットは、前記荷重検知センサと、前記荷重検知センサの前記一対の端子を覆う保護樹脂とを備え、前記保護樹脂は、少なくとも一つの前記交差部も覆っていることが好ましい。
【0018】
この場合、一対の端子を覆う保護樹脂が少なくとも一つの交差部も覆っているため、溶着していない交差部から異物や水分が侵入することを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、適切に荷重を検知し得る荷重検知センサを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】荷重検知センサ及び荷重検知センサユニットの構成を示す平面図である。
図2】荷重検知センサの構成を示す分解図である。
図3図1のIV-IVでの荷重検知センサ及び荷重検知センサユニットの断面を示す図である。
図4図1のV-Vでの荷重検知センサ及び荷重検知センサユニットの断面を示す図である。
図5】荷重検知センサの変形例の一部を示す平面図である。
図6】荷重検知センサの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る荷重検知センサ及び荷重検知センサユニットの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、それぞれの図のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
【0022】
図1は本実施形態の荷重検知センサ1及び荷重検知センサユニット100の構成を示す平面図である。図2は荷重検知センサ1の構成を示す分解図である。図3は、図1のIV-IVでの荷重検知センサ1及び荷重検知センサユニット100の断面を示す図である。図4は、図1のV-Vでの荷重検知センサ1及び荷重検知センサユニット100の断面を示す図である。
【0023】
図1に示すように荷重検知センサユニット100は、荷重検知センサ1と保護樹脂60とを有する。荷重検知センサ1は、概ね半円形のスイッチ部2と、スイッチ部2に接続されスイッチ部2と同様の幅の引出部3と、引出部3に接続され引出部3と同様の幅の端子部4を有する。スイッチ部2には第1電極12と第2電極22とからなるスイッチSWが設けられており、引出部3には一対の引出配線13、23が設けられており、端子部4には一対の端子14、24が設けられている。
【0024】
図1図2に示すように、荷重検知センサ1は、第1電極シート10と第2電極シート20とスペーサ30とを主な構成要素として備え、荷重検知センサ1は、溶着接続部40と交差部50とを有する。
【0025】
第1電極シート10は、第1絶縁シート11と第1絶縁シート11の一方の面上に設けられる第1電極12と第1引出配線13と第1端子14とを有する。
【0026】
第1絶縁シート11は、可撓性を有する樹脂製の絶縁シートとされる。この第1絶縁シート11の平面形状は、概ね荷重検知センサ1の平面形状と同様の形状であるが、端子部4においては先端部位が、他の部位より幅が約半分となり、幅方向の一方に寄った形状とされる。このような第1絶縁シート11の材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)又はポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂が挙げられる。また、第1絶縁シート11とスペーサ30との界面の溶着接続部40を形成する際に、レーザー等を界面まで透過しやするくするため第1絶縁シート11は、透明であることが好ましい。
【0027】
第1電極12は、略円形であり、第1絶縁シート11のスイッチ部2の概ね中央に設けられている。第1電極12は、導体の層からなり、例えば銀、銅、金等の金属やカーボン等が用いられ、複層であってもよい。第1電極12は、例えば印刷で形成される。
【0028】
第1引出配線13は、線状であり、第1電極12と第1端子14とを接続するように延在しており、主に第1絶縁シート11の引出部3に設けられている。第1引出配線13は、一端が第1電極12と電気的に接続され、他端が第1端子14と電気的に接続される。第1引出配線13は、導体の層からなり、第1電極12と同様の材料を用いることができ、第1電極12と同時に同様の方法で形成することができる。
【0029】
第1端子14は、略四角形であり、第1絶縁シート11の端子部4の幅が狭くなっている先端部位に設けられる。また、第1電極12と第1端子14とは第1引出配線13を介して互いに電気的に接続されている。第1端子14は、導体の層からなり、第1電極12や第1引出配線13と同様の材料を用いることができ、第1電極12や第1引出配線13と同時に同様の方法で形成することができる。また、第1端子14には、図示せぬ制御ユニットと接続される信号ケーブル15が接続されている。第1端子14と信号ケーブル15とは導電性ペーストやはんだ付け等により接続される。
【0030】
第2電極シート20は、スペーサ30を介して第1電極シート10と対向しており、第2絶縁シート21と第2絶縁シート21の他方の面上に設けられる第2電極22と第2引出配線23と第2端子24とを有する。第2絶縁シート21の他方の面は、第1電極12と第1引出配線13と第1端子14が設けられる第1絶縁シート11の一方の面と対向する面である。
【0031】
第2絶縁シート21は、第1絶縁シート11と同様に樹脂製の絶縁シートとされる。また、第2絶縁シート21の平面形状は、第1絶縁シート11と同様に概ね荷重検知センサ1の平面形状と同様の形状であるが、端子部4においては先端部位が、他の部位より幅が約半分となり、幅方向の他方に寄った形状とされる。なお、第1絶縁シート11の端子部4の先端部位は一方に寄っているので、重ね合わせた際に、第2絶縁シート21の端子部4の先端部位は、第1絶縁シート11の端子部4の先端部位と重ならない。このような第2絶縁シート21の材料として、第1絶縁シート11の材料と同じ材料が挙げられ、第2絶縁シート21の材料と第1絶縁シート11の材料とは同じであっても異なっていても良い。また、第2絶縁シート21は、第1絶縁シート11と同様に、透明であることが好ましい。
【0032】
第2電極22は、略円形であり、第2絶縁シート21のスイッチ部2の概ね中央に設けられており、第1電極12と対向する。第2電極22は、導体の層からなり、材料としては、第1電極12と同じ材料があげられる。また、第2電極12は、第1電極12と同様に、例えば印刷で形成される。第1電極12と第2電極22とによってスイッチSWが構成され、スイッチ部2に圧力が加わると第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21の少なくとも一方が撓み、これにより第1電極12と第2電極22とが互いに接触して導通する。
【0033】
第2引出配線23は、第1引出配線13と同様に線状であり、第2電極22と第2端子24とを接続するように延在しており、主に第2絶縁シート21の引出部3に設けられている。第2引出配線23は、一端が第2電極22と電気的に接続され、他端が第2端子24と電気的に接続される。第2引出配線23は、導体の層からなり、第2電極22と同様の材料を用いることができ、第2電極22と同時に同様の方法で形成することができる。なお、耐久性を向上させる観点から、第1引出配線13と第2引出配線23は、平面視において重ならないように配置されている。
【0034】
第2端子24は、第1端子14と同様に略四角形であり、第2絶縁シート21の端子部4の幅が狭くなっている先端部位に設けられる。また、第2電極22と第2端子24とは第2引出配線23を介して互いに電気的に接続されている。第2端子24は、導体の層からなり、第2電極22や第2引出配線23と同様の材料を用いることができ、第2電極22や第2引出配線23と同時に同様の方法で形成することができる。平面視すると、第1絶縁シート11の端子部4の先端部位は一方に寄っており、第2絶縁シート21の端子部4の先端部位は他方に寄っているため、第1端子14と第2端子24は重ならない。また、第2端子24には、図示せぬ制御ユニットと接続される信号ケーブル25が接続されている。第2端子24と信号ケーブル25とは導電性ペーストやはんだ付け等により接続される。なお、スイッチSWの第1電極12と第2電極22とが接触すると、信号ケーブル15、25に接続される図示せぬ制御ユニットによりスイッチがオンになったことが検知される。
【0035】
スペーサ30は、第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21の間に配置され、可撓性を有する樹脂製の絶縁シートとされる。このスペーサ30の平面形状は、第1絶縁シート11や第2絶縁シート21と同様に概ね荷重検知センサ1の平面形状と同様の形状であるが、端子部4は有さない。これにより、第1絶縁シート11の端子部4の先端部位に設けられた第1端子14及び第2絶縁シート21の端子部4の先端部位に設けられた第2端子24はスペーサ30から露出する。このようなスペーサ30の材料として、第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21と同様の材料を挙げることができる。なお、スペーサ30の材料は、第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21の材料と同じであっても異なっていても良いが、同一の材料の方が、レーザー等で溶着接続部40を形成する際に、界面がなくなり一体的に強固に溶着されるため好ましい。また、スペーサ30は着色剤などを加えて着色されていてもよい。着色されていると、レーザー等で溶着接続部40を形成する際に、着色部で熱が吸収され、高温にしやすいため、溶着接続部40を容易かつ短時間で形成することができる。
【0036】
また、このスペーサ30のスイッチ部2の中央付近には、第1電極12と第2電極22との間に概ね円形の開口31が形成されている。これにより、第1電極12と第2電極22とは接触可能となっている。また、スペーサ30にはスリット32が形成されている。このスリット32は、開口31の引出部3と反対側から引出部3と離れる方向に向かって延在し、外気と繋がる。従って、スリット32を介して開口31は外気と連通する。
【0037】
図1図3図4に示すように、第1絶縁シート11とスペーサ30との間及び第2絶縁シート21とスペーサ30との間には、溶着接続部40が形成されている。第1絶縁シート11や第2絶縁シート21とスペーサ30とはこの溶着接続部40により、直接接合されている。溶着接続部40は、スペーサ30の開口31の周囲に形成されており、内側溶着接続部41と外側溶着接続部42とを有している。溶着接続部40は、第1絶縁シート11や第2絶縁シート21とスペーサ30とを溶着させることで形成することができる。具体的には、第1絶縁シート11とスペーサ30と第2絶縁シート21とを積層した後に、溶着接続部40を形成する箇所に、第1絶縁シート側や第2絶縁シート側から圧力を加えながらレーザーや超音波等を当てることで、第1絶縁シート11や第2絶縁シート21とスペーサ30との界面近傍が加熱され溶融することで相溶して接続され、溶着接続部40が形成される。なお、溶着接続部40としては、完全に相溶して界面が存在しない態様だけでなく、スイッチ動作をする際等の通常的な使用時に第1絶縁シート11や第2絶縁シート21とスペーサ30とが剥がれない接合強度を有しているのであれば界面が存在する態様であっても、含まれるものとする。
【0038】
内側溶着接続部41は、スペーサ30の開口31に沿って形成されている。具体的には、スペーサ30の開口31を囲むように内側溶着接続部41が設けられている。このように内側溶着接続部41が開口31を囲むように設けられているため、スイッチSWの周囲において、第1絶縁シート11や第2絶縁シート21とスペーサ30とが剥がれて浮きが発生することを防止することができ、適切に荷重を検知することができる。なお、スペーサ30のスリット32と重なる部分においては、スペーサ30が存在しないため、内側溶着接続部41は設けられていない。
【0039】
図3図4に示すように、本実施形態においては、第1絶縁シート11とスペーサ30との間、及び、第2絶縁シート21とスペーサ30との間には、全域に渡って接着層が設けられていない。したがって、第1絶縁シート11とスペーサ30、及び、第2絶縁シート21とスペーサ30とは、内側溶着接続部41よりも開口31側の内側領域において、非接着となっている。
【0040】
外側溶着接続部42は、荷重検知センサ1の外形に沿って形成されている。具体的には、第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21とスペーサ30との重なる領域の外形に沿って形成されており、本実施形態においては、スペーサ30の外形が最も小さいため、スペーサ30の外形に沿って形成されている。
【0041】
図1図4に示すように、交差部50は、溶着接続部40と一対の引出配線13、14が交差する部分である。交差部50は、内側溶着接続部41と一対の引出配線13、14とが交差する内側交差部51と、外側溶着接続部42と一対の引出配線13、14が交差する外側交差部52とを有する。交差部50においては、第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21とスペーサ30との間に溶着接続部40は設けられていない。また、外側交差部52は、後述する保護樹脂60に覆われている。
【0042】
図1図4に示すように、荷重検知センサユニット100には、一対の端子14,24を保護するために、端子部4を覆う保護樹脂60が設けられている。また、保護樹脂60は、荷重検知センサ1の端子部4を覆うとともに引出部3の一部も覆っている。具体的には、保護樹脂60は、荷重検知センサ1の端子部4の全体を覆い一対の端子14、24を覆うと共に、引出部3のうち端子部4側の一部を覆うことで、交差部50のうち外側交差部52も覆っている。保護樹脂60の材料として、例えば、ポリアミド系、ポリイミド系、オレフィン系、ウレタン系、アクリル系等の熱可塑性樹脂や光硬化樹脂等の樹脂が挙げられる。また、保護樹脂60は、一対の端子14,24を適切に保護するため、第1絶縁シート11、第2絶縁シート21及びスペーサ30よりも高いヤング率を有する。なお、図4に示すように保護樹脂60が設けられている部分においては、断面視すると、荷重検知センサ1の全周を覆うように設けられている。
【0043】
以上のように、本実施形態の荷重検知センサ1は、第1絶縁シート11と第1絶縁シート11に設けられる第1電極12とを有する第1電極シート10と、第1絶縁シート11と対向する第2絶縁シート21と第2絶縁シート21に設けられ第1電極12と対向する第2電極22とを有する第2電極シート20と、第1絶縁シート11と第2絶縁シート21との間に介在され第1電極12と第2電極22との間に開口31が形成された絶縁性のスペーサ30とを備え、第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21とスペーサ30とは、開口31の周囲に形成された溶着接続部40によって直接接合されており、溶着接続部40の内側領域は非接着である。
【0044】
これにより荷重検知センサ1において、第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21とスペーサ30とは開口31の周囲に形成された溶着接続部40により直接接合されているため、第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21とスペーサ30とは、溶着接続部40の内側領域を非接着としても、十分に固定される。そして、溶着接続部40の内側領域が非接着となっているため、第1電極12や第2電極22の周囲であるこの内側領域には接着剤層が存在せず、環境温度の変化による接着剤層の粘度変化に起因して第1電極12と第2電極22とが接触するために必要な荷重が変化することを抑制できる。こうして、本実施形態の荷重検知センサ1は、適切に荷重を検知し得る。
【0045】
本実施形態では、平面視すると、溶着接続部40が、開口31に沿って形成される内側溶着接続部41と、内側溶着接続部41よりも外周に形成される外側溶着接続部42とを有する。これにより、内側溶着接続部41と外側溶着接続部42の2重で接合されているため、接合強度が向上する。また、2重で接合しているため、外部からの異物の侵入を効果的に抑制することができる。
【0046】
本実施形態では、外側溶着接続部42は、第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21とスペーサ30との重なる領域の外形に沿って形成される。これにより、外側溶着接続部42の接続範囲を最大限広くすることができるため、接合強度がより向上する。また、外側溶着接続部42よりも外側の領域を極力小さくでき、第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21とスペーサ30との浮きを抑制することができる。
【0047】
本実施形態では、第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21には、一対の端子14、24と、第1電極12及び第2電極22と一対の端子14、24とを電気的に接続する一対の引出配線13、23が設けられており、平面視において引出配線13、23と溶着接続部40とが交差する交差部50においては、溶着接続部40が設けられていない。これにより、交差部50に溶着接続部40が設けられていないため、荷重検知センサ1の曲げ等に伴う応力が加わった際に、交差部50の引出配線13,23に応力が集中せず、引出配線13,23が断線等して破損することを防止することができる。
【0048】
本実施形態の荷重検知センサユニット100は、荷重検知センサ1と、荷重検知センサ1の一対の端子14、24を覆う保護樹脂60とを備え、保護樹脂60は、交差部50のうち外側溶着接続部42と引出配線13、23とが交差する外側交差部52も覆っている。この場合、一対の端子14,24を覆う保護樹脂60が交差部50のうち外側交差部52も覆っているため、溶着していないこの外側交差部52から異物や水分が侵入することを防止することができる。
【0049】
また、保護樹脂60は、少なくとも一つの交差部50を覆っていれば良いが、交差部50のうち、平面視すると、少なくとも最外周に設けられた溶着接続部40と引出配線13、23との交差部50を覆うことが好ましい。本実施形態において、保護樹脂60は、最外周に設けられた外側溶着接続部42と引出配線13、23とが交差する外側交差部52を覆っている。保護樹脂60が外側交差部52を覆うことで、外部からの異物や水分が侵入することを最外周で防止できる。一方で、本実施形態において、保護樹脂60は、内側溶着接続部41と引出配線13、23とが交差する内側交差部51を覆っていない。内側溶着接続部41は、スイッチSWの近傍に設けられており、スイッチSWの検知性能に影響を及ぼさないために、内側交差部51には保護樹脂60を設けない方が好ましい。
【0050】
以上、本発明の荷重検知センサ及び荷重検知センサユニットについて上記実施形態を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0051】
例えば、上記実施形態では、溶着接続部40は、内側溶着接続部41と外側溶着接続部42の2重構造であったが、中間溶着接続部を加えて、3重以上の構造としてもよいし、内側溶着接続部41と外側溶着接続部42のいずれか1方の1重構造であっても良い。
【0052】
また、上記実施形態では、溶着接続部40は、線状にほぼ全周に渡って設けられていたが、開口31の周囲に形成される限り、図5に示すように、点状に設けても良い。また、溶着接続部40の内側溶着接続部41と外側溶着接続部42はそれぞれ単線の1重で形成されているが、それぞれ複線にして2重以上にしてもよいし、点状と線状を組合せてもよいし、線状ではなく、例えば、第1絶縁シート11とスペーサ30との間及び第2絶縁シート21とスペーサ30との間の全域に渡って設けられてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、第1絶縁シート11とスペーサ30との間、及び、第2絶縁シート21とスペーサ30との間には、全域に渡って接着層が設けられていなかったが、図6に示すように、溶着接続部40の外側領域に接着層70を設けても良い。接着層70の材料としては、粘着剤、接着剤、PETや不織布などの基材の両面に粘着剤や接着剤を設けて構成される両面テープ等が挙げら、粘着剤、接着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂や光硬化樹脂等が挙げられる。接着層70として、粘着剤を用いる場合には、例えば、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤等を用いることができる。このように、溶着接続部40の外側領域に接着層70があることで、荷重に影響を与えずに、第1絶縁シート11及び第2絶縁シート21とスペーサ30との固定をより確実にすることができる。また、接着層70を有することで、異物の混入もより抑制することができる。なお、図5においては、便宜上、溶着接続部40としては、内側溶着接続部41のみを図示しているが、上記実施形態のように、内側溶着接続部41に加えて外側溶着接続部42も有していても良い。また、上述の通り、外側溶着接続部42のみであっても良いし、3重以上であってもよい。2重以上の場合においては、異物の混入を防止する観点と適切に荷重を検知する観点から、最外周の溶着接続部40の外側のみに接着層を設けることが好ましい。
【0054】
また、上記実施形態では、略円形の第1電極12と略円形の第2電極22とでスイッチSWを構成したが、第1電極を互いに電気的に絶縁された2つの略半円形の電極とし、第2電極を略半円形の第1電極の両方に跨るように略円形とするいわゆる櫛歯構造であっても良い。この場合、第1電極の一方の略半円形の電極と他方の半円形の電極とに、それぞれ引出配線及び端子が接続されるので、一対の引出配線及び一対の端子は第1絶縁シート11にのみに設けられ、第2絶縁シートは第2電極のみが設けられる。
【0055】
また、上記実施形態では、第1絶縁シート11とスペーサ30及び第2絶縁シート21とスペーサ30との両方が、溶着接続部40により接合されていたが、どちらか一方のみを溶着接続部40で接合し、他方は、溶着接続部40を設けずに接着層のみで接着してもよい。ただし、第1絶縁シート11とスペーサ30及び第2絶縁シート21とスペーサ30との両方を溶着接続部40で接合した方が、より第1電極と第2電極とが接触するために必要な荷重が変化することを抑制できるため好ましい。
【0056】
また、本実施形態では、保護樹脂60を有していたが、保護樹脂を有さなくてもよい。また、保護樹脂は、一対の端子14,24のみを覆っており、外側交差部52を覆わなくてもよい。
【0057】
本発明の荷重検知センサ及び荷重検知センサユニットは、荷重を検知すべき検知対象物に対する荷重の有無を検知する限り利用可能性を有する。例えば、介護用ベッドのシートクッションに荷重検知センサ及び荷重検知センサユニットを配置する形態が挙げられる。このような形態であっても、荷重検知センサ及び荷重検知センサユニットが荷重を検知でき、当該荷重検知センサ及び荷重検知センサユニットの検知結果に基づいて、シートクッション上に人が存在しているかを示す情報を得ることができる。また、電子機器のスイッチとして用いられ、荷重の有無を検知しても良い。
【符号の説明】
【0058】
1・・・荷重検知センサ
2・・・スイッチ部
3・・・引出部
4・・・端子部
10・・・第1電極シート
11・・・第1絶縁シート
12・・・第1電極
13・・・第1引出配線
14・・・第1端子
20・・・第2電極シート
21・・・第2絶縁シート
22・・・第2電極
23・・・第2引出配線
24・・・第2端子
30・・・スペーサ
31・・・開口
32・・・スリット
40・・・溶着接続部
41・・・内側溶着接続部
42・・・外側溶着接続部
50・・・交差部
51・・・内側交差部
52・・・外側交差部
60・・・保護樹脂
70・・・接着層
100・・・荷重検知センサユニット
SW・・・スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6