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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】光デバイス及びレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/26 20060101AFI20220905BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
G02B6/26
H01S3/10 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018193695
(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2020060741
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 亮吉
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191298(JP,A)
【文献】特開2011-186267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0017036(US,A1)
【文献】特開2004-264836(JP,A)
【文献】特開2007-310208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0281948(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1429783(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/42 - 6/43
H01S 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の第1の光ファイバと、
コアと該コアの外周を覆うクラッドとを含む第2の光ファイバと、
前記第1の光ファイバのコアと前記第2の光ファイバの前記コアとが接続されるファイバ接続部と、
前記第1の光ファイバ及び前記第2の光ファイバを支持するファイバ支持部と、
前記第1の光ファイバを前記ファイバ支持部に固定する固定樹脂と
を備え、
前記第1の光ファイバは、テーパ開始部から前記ファイバ接続部に向かって縮径されたテーパ部を有しており、
前記固定樹脂の縁部の全部は、前記ファイバ接続部における前記第2の光ファイバの前記クラッドの端面のうち前記第2の光ファイバの光軸に最も近い位置にある点と、前記第1の光ファイバの前記テーパ部の前記テーパ開始部における外周輪郭線上で前記光軸から最も離れた位置にある点とを結んだ線を延長した第1の基準線よりも前記光軸に近い側に位置している、
光デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1本の第1の光ファイバは、3本以上の第1の光ファイバを含み、
前記固定樹脂の前記縁部の全部は、前記ファイバ接続部における前記第2の光ファイバの前記クラッドの前記端面のうち前記光軸から最も離れた位置にある点と、前記第1の光ファイバの前記テーパ部の前記テーパ開始部における外周輪郭線上で前記光軸に最も近い位置にある点とを結んだ線を延長した第2の基準線よりも前記光軸に近い側に位置している、
請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記ファイバ支持部に接する前記固定樹脂の部分が、前記ファイバ支持部から離れた位置にある前記固定樹脂の部分よりも広がっている、請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記ファイバ支持部は、前記第1の基準線よりも前記光軸から離れる側に配置される反射抑制部であって、前記第2の光ファイバの前記クラッドの前記端面から出射される光の反射を抑制する反射抑制部を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記固定樹脂の縁部の一部は、前記第1の基準線よりも前記光軸から離れる側に位置し、
前記ファイバ支持部は、前記固定樹脂の前記縁部と前記テーパ部の前記テーパ開始部との間で前記第1の基準線を越えて前記光軸に近い側に延びる遮光部を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記固定樹脂は、前記ファイバ接続部から遠ざかるにつれて前記第1の光ファイバと前記ファイバ支持部との間の距離が大きくなるように、前記ファイバ支持部が延びる方向に対して前記第1の光ファイバを傾けた状態で前記ファイバ支持部に固定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記固定樹脂は、前記ファイバ接続部から遠ざかるにつれて前記第1の光ファイバと前記ファイバ支持部との間の距離が小さくなるように、前記ファイバ支持部が延びる方向に対して前記第1の光ファイバを傾けた状態で前記ファイバ支持部に固定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記固定樹脂の前記縁部の全部が、前記第1の基準線よりも前記光軸に近い側に位置している、請求項1から7のいずれか一項に記載の光デバイス。
【請求項9】
少なくとも1つのレーザ光源と、
請求項1から8のいずれか一項に記載の光デバイスと
を備え、
前記光デバイスの前記第1の光ファイバは、前記少なくとも1つのレーザ光源に接続される、
レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス及びこれを用いたレーザ装置に係り、特に光ファイバ同士を接続したファイバ接続部を有する光デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ファイバレーザなどを用いたレーザ加工の分野においては、レーザ光の出力を増大させることによって、加工速度の向上や厚い材料の加工が期待できることから、レーザ光の高出力化が求められている。レーザ光の出力を高めるために、複数のレーザ光源からの出力光を合成したり、複数の励起光源からの励起光をレーザ共振器に導入したりするが、その際に複数本の光ファイバと1本の光ファイバとを光コンバイナで接続することがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1は、このような従来の光コンバイナを模式的に示す斜視図である。図1に示す光コンバイナでは、複数本の入力側光ファイバ901のコア910を伝搬する光が合波され出力側光ファイバ902のコア920に導入される。このとき、入力側光ファイバ901のコア910の端面形状と出力側光ファイバ902のコア920の端面形状とは完全に一致しないが、入力側光ファイバ901から出力側光ファイバ902に伝搬する光が接続点で漏洩することを防止するために、出力側光ファイバ902のコア920の内側にすべての入力側光ファイバ901のコア910の領域が含まれるように設計されることが一般的である。
【0004】
しかしながら、上述したようにレーザ光の出力が増大するのに伴って、レーザ加工時に被加工物で反射したレーザ光や双方励起型のファイバレーザにおいて反対側の励起光源からの出射された励起光が出力側光ファイバ902のクラッド930に入射してこのクラッド930中を入力側光ファイバ901に向かって伝搬することが考えられる。このような場合には、図1の矢印で示すように、出力側光ファイバ902のクラッド930から反射光や励起光が外部空間に放射されることになる。このような外部空間に放射された反射光や励起光は、入力側光ファイバ901を固定している樹脂にも照射され、この樹脂の劣化、ひいては光コンバイナの故障を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-191298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、光ファイバを固定する樹脂の劣化を抑制することができる光デバイスを提供することを第1の目的とする。
【0007】
また、本発明は、故障の生じにくいレーザ装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、光ファイバを固定する樹脂の劣化を抑制することができる光デバイスが提供される。この光デバイスは、少なくとも1本の第1の光ファイバと、コアと該コアの外周を覆うクラッドとを含む第2の光ファイバと、上記第1の光ファイバの上記コアと上記第2の光ファイバのコアとが接続されるファイバ接続部と、上記第1の光ファイバ及び上記第2の光ファイバを支持するファイバ支持部と、上記第1の光ファイバを上記ファイバ支持部に固定する固定樹脂とを備える。上記第1の光ファイバは、テーパ開始部から上記ファイバ接続部に向かって縮径されたテーパ部を有している。上記固定樹脂の縁部の全部は、上記ファイバ接続部における上記第2の光ファイバの上記クラッドの端面のうち上記第2の光ファイバの光軸に最も近い位置にある点と、上記第1の光ファイバの上記テーパ部の上記テーパ開始部における外周輪郭線上で上記光軸から最も離れた位置にある点とを結んだ線を延長した第1の基準線よりも上記光軸に近い側に位置している。なお、本明細書においては、「第2の光ファイバの光軸」は、第2の光ファイバ内の光軸を無限遠点まで延長した軸線を意味する。また、任意の点から光軸までの距離は、当該点から光軸に下ろした垂線の距離をいうものとし、この距離の大小によって当該点が光軸から離れているか、あるいは光軸に近いかが決まる。
【0009】
このような構成によれば、第2の光ファイバのクラッド中を第1の光ファイバに向かって伝搬する光は、ファイバ接続部のクラッドの端面から外部に放射されるが、第1の基準線よりも光軸に近い側には、この光に対する影の領域が含まれるため、固定樹脂の縁部の全部を第1の基準線よりも光軸に近い側に配置することにより、第2の光ファイバから第1の光ファイバに向かって伝搬する光の照射により固定樹脂が劣化することを抑制することができる。したがって、光コンバイナの故障が発生しにくくなり、光コンバイナの信頼性が高まる。
【0010】
上記少なくとも1本の第1の光ファイバは、3本以上の第1の光ファイバを含んでいてもよい。この場合において、上記固定樹脂の上記縁部の全部が、上記ファイバ接続部における上記第2の光ファイバの上記クラッドの上記端面のうち上記光軸から最も離れた位置にある点と、上記第1の光ファイバの上記テーパ部の上記テーパ開始部における外周輪郭線上で上記光軸に最も近い位置にある点とを結んだ線を延長した第2の基準線よりも上記光軸に近い側に位置していることが好ましい。第2の基準線よりも光軸に近い側は、第2の光ファイバから第1の光ファイバに向かって伝搬する光に対する影となるので、固定樹脂の縁部の少なくとも一部を第2の基準線よりも光軸に近い側に配置することにより、第2の光ファイバから第1の光ファイバに向かって伝搬する光が固定樹脂に照射されることがなくなる。したがって、固定樹脂の劣化が抑制され、光コンバイナの故障が発生しにくくなる。
【0011】
上記ファイバ支持部に接する上記固定樹脂の部分が、上記ファイバ支持部から離れた位置にある上記固定樹脂の部分よりも広がっていてもよい。この場合には、テーパ部により近い位置に固定樹脂を配置することができ、テーパ部により近い位置で第1の光ファイバをファイバ支持部に固定することができる。このため、第1の光ファイバがファイバ支持部に固定される位置と第2の光ファイバがファイバ支持部に固定される位置との間の距離を短くでき、第1の光ファイバ及び第2の光ファイバのファイバ支持部への固定を強固にすることができる。この結果、光コンバイナの機械的信頼性を高めることができるとともに、光コンバイナを短尺化することができる。
【0012】
上記ファイバ支持部は、上記第1の基準線よりも上記光軸から離れる側に配置される反射抑制部を有していてもよい。この反射抑制部は、上記第2の光ファイバの上記クラッドの上記端面から出射される光の反射を抑制するために設けられる。
【0013】
上記固定樹脂の縁部の一部は、上記第1の基準線よりも上記光軸から離れる側に位置していてもよい。この場合において、上記ファイバ支持部は、上記固定樹脂の上記縁部の一部と上記テーパ部の上記テーパ開始部との間で上記第1の基準線を越えて上記光軸に近い側に延びる遮光部を有していてもよい。このような遮光部によって、固定樹脂の縁部の一部が第1の基準線よりも光軸から離れる側に位置していても、第2の光ファイバから第1の光ファイバに向かって伝搬する光が固定樹脂に入射する前に遮光部によって遮られるため、この光が固定樹脂に入射することを抑制することができる。
【0014】
上記固定樹脂は、上記ファイバ接続部から遠ざかるにつれて上記第1の光ファイバと上記ファイバ支持部との間の距離が大きくなるように、上記ファイバ支持部が延びる方向に対して上記第1の光ファイバを傾けた状態で上記ファイバ支持部に固定してもよい。
【0015】
上記固定樹脂は、上記ファイバ接続部から遠ざかるにつれて上記第1の光ファイバと上記ファイバ支持部との間の距離が小さくなるように、上記ファイバ支持部が延びる方向に対して上記第1の光ファイバを傾けた状態で上記ファイバ支持部に固定してもよい。
【0016】
上記固定樹脂の上記縁部の全部が、上記第1の基準線よりも上記光軸に近い側に位置していてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、故障の生じにくいレーザ装置が提供される。このレーザ装置は、少なくとも1つのレーザ光源と、上述した光デバイスとを備えている。上記光デバイスの上記第1の光ファイバは、上記少なくとも1つのレーザ光源に接続される。このようなレーザ装置によれば、上述したように光コンバイナの固定樹脂の劣化が抑制され、光コンバイナの故障が発生しにくくなるので、レーザ装置の故障も生じにくくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第2の光ファイバから第1の光ファイバに向かって伝搬する光の照射により固定樹脂が劣化することを抑制することができ、光コンバイナの故障が発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、従来の光コンバイナを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態におけるレーザ装置を模式的に示す図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態における光コンバイナの主要部分を模式的に示す図である。
図4図4は、図3の光コンバイナのファイバ接続部近傍を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、図4のテーパ部のテーパ開始部における入力側光ファイバの配置を示す模式図である。
図6図6は、図3の光コンバイナのファイバ接続部における入力側光ファイバのコアと出力側光ファイバのコアとの位置関係を示す模式図である。
図7図7は、図5のテーパ部のテーパ開始部における外周の輪郭を示す模式図である。
図8図8は、図3の光コンバイナにおける戻り光の伝搬経路を説明するための模式図である。
図9図9は、本発明の第2の実施形態における光コンバイナの主要部分を模式的に示す図である。
図10図10は、本発明の第3の実施形態における光コンバイナの主要部分を模式的に示す図である。
図11図11は、本発明の第4の実施形態における光コンバイナの主要部分を模式的に示す図である。
図12図12は、本発明の第5の実施形態における光コンバイナの主要部分を模式的に示す図である。
図13図13は、本発明の第6の実施形態における光コンバイナの主要部分を模式的に示す図である。
図14図14は、本発明の第7の実施形態における光コンバイナの主要部分を模式的に示す図である。
図15図15は、本発明の第8の実施形態における光コンバイナの主要部分を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る光デバイス及びこれを用いたレーザ装置の実施形態について図2から図15を参照して詳細に説明する。なお、以下では、本発明に係る光デバイスの例として光コンバイナについて説明するが、本発明に係る光デバイスはこれに限られるものではない。また、図2から図15において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。さらに、図2から図15においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施形態におけるレーザ装置1を模式的に示す図である。図2に示すように、レーザ装置1は、レーザ光源としての複数のファイバレーザ10と、複数のファイバレーザ10から出力されるレーザ光を合波する光コンバイナ20と、合波された出力レーザ光を例えば被加工物に照射する出射端40とを含んでいる。光コンバイナ20は、ファイバレーザ10から延びる複数の入力側光ファイバ12(第1の光ファイバ)と、入力側光ファイバ12に接続された1本の出力側光ファイバ32(第2の光ファイバ)とを含んでいる。複数のファイバレーザ10から出射されたレーザ光は、それぞれの入力側光ファイバ12を伝搬し、1本の出力側光ファイバ32に導入されて合波され、出射端40から出射される。
【0022】
図3は、光コンバイナ20の主要部分を模式的に示す図である。図3に示すように、光コンバイナ20は、バンドル化された複数の入力側光ファイバ12と出力側光ファイバ32とが接続されたファイバ接続部53を有している。また、光コンバイナ20は、入力側光ファイバ12と出力側光ファイバ32とを支持する板状のファイバ支持部54を含んでいる。入力側光ファイバ12及び出力側光ファイバ32は、それぞれ固定樹脂81,82によってファイバ支持部54に固定されている。
【0023】
それぞれの入力側光ファイバ12のファイバ接続部53側の端部においては、被覆材61が除去されクラッド62が露出している。この入力側光ファイバ12のクラッド62が露出している部分のファイバ接続部53側は、テーパ開始部64からファイバ接続部53に向かって縮径され、テーパ部66が形成されている。また、出力側光ファイバ32のファイバ接続部53側の端部においては、被覆材71が除去されクラッド72が露出している。この出力側光ファイバ32のクラッド72が露出した端部と入力側光ファイバ12のテーパ部66とがファイバ接続部53で互いに接続されている。
【0024】
図4は、光コンバイナ20のファイバ接続部53近傍を模式的に示す斜視図である。複数のファイバレーザ10から出射されたレーザ光は、それぞれの入力側光ファイバ12のコア63を伝搬し、テーパ部66を通って出力側光ファイバ32のコア73に導入される。これにより、複数のファイバレーザ10から出射されたレーザ光が1本の出力側光ファイバ32のコア73に導入されて高パワーのレーザ光となり、出力側光ファイバ32のコア73を伝搬して出射端40から高パワーのレーザ光が出射される。
【0025】
図5は、テーパ開始部64における入力側光ファイバ12の配置を示す模式図である。図5に示すように、本実施形態では、入力側光ファイバ12として7本の光ファイバが使用されており、1本の光ファイバ12Aの周囲に6本の光ファイバ12Bが互いに接するように配置されている。
【0026】
図6は、光コンバイナ20のファイバ接続部53における入力側光ファイバ12のコア63と出力側光ファイバ32のコア73との位置関係を示す模式図である。図4及び図6に示すように、入力側光ファイバ12から出力側光ファイバ32に伝搬する光がファイバ接続部53で漏洩することを防止するために、光コンバイナ20は、出力側光ファイバ32のコア73の内側にすべての入力側光ファイバ12のコア63の領域が含まれるように設計されている。出力側光ファイバ32のコア73の形状は入力側光ファイバ12のテーパ部66の端部の形状と一致しないため、ファイバ接続部53では出力側光ファイバ32のコア73の一部の領域が入力側光ファイバ12の外側で露出することになる。すなわち、出力側光ファイバ32のコア73は、ファイバ接続部53で入力側光ファイバ12の外側で露出するコア露出領域74(図6においてハッチングされている領域)を有している。
【0027】
例えば高パワーのレーザ光を出射端40から被加工物に照射した場合、被加工物で反射したレーザ光が出射端40からレーザ装置1に戻り、出力側光ファイバ32を通って入力側光ファイバ12に向かって伝搬することがある。このような戻り光の一部は、出力側光ファイバ32のクラッド72に入射してクラッド72中を伝搬する。このクラッド72中を伝搬する戻り光は、ファイバ接続部53におけるクラッド72の端面72A(図4参照)から外部空間に放射されることとなるが、本実施形態における光コンバイナ20は、そのような戻り光が固定樹脂81に照射されないような構造を有している。すなわち、図4の矢印に示すように、クラッド72の端面72Aから外部空間に放射された戻り光が入力側光ファイバ12のテーパ部66の外周面で反射して固定樹脂81には到達しないようになっている。以下、この点について説明する。
【0028】
上述した戻り光はクラッド72の端面72Aから様々な角度で放射されるが、この戻り光がテーパ部66の外周面に当たると、その入射角が大きく、また、テーパ部66を構成するガラスの屈折率と空気の屈折率との差が大きいため、図4の矢印に示すように、戻り光がテーパ部66の外周面で反射する。このため、テーパ部66の上流側には戻り光が直接照射されない影の部分が生じる。この影の部分に固定樹脂81を配置すれば、戻り光が固定樹脂81に直接照射されず、固定樹脂81の劣化を抑えることができ、光コンバイナ20の故障が発生しにくくなる。
【0029】
図7は、テーパ部66のテーパ開始部64における外周の輪郭(以下、外周輪郭線という)65を示す模式図、図8は、戻り光の伝搬経路を説明するための模式図である。まず、テーパ部66の上流側で影ができるのは、クラッド72の端面72Aの最も内周側(光軸90に最も近い位置)にある点72Bと、テーパ部66のテーパ開始部64における外周輪郭線65上で光軸90から最も離れた位置にある点65Fとを結んだ線を延長した基準線L1(第1の基準線)よりも光軸90に近い側の領域S1である。したがって、固定樹脂81をこの領域S1内に配置すれば、固定樹脂81が戻り光の影の領域に入るため、戻り光による固定樹脂81の劣化が低減される。
【0030】
また、クラッド72の端面72Aの最も外周側(光軸90から最も離れた位置)にある点72Cと、テーパ部66のテーパ開始部64における外周輪郭線65上で光軸90に最も近い位置にある点65Cとを結んだ線を延長した基準線L2(第2の基準線)よりも光軸90に近い側の領域S2は、完全に戻り光の影となり、戻り光が直接照射されない領域となる。したがって、固定樹脂81をこの領域S2内に配置すれば、固定樹脂81に戻り光が直接照射されることがなくなり、固定樹脂81の劣化を抑えることができる。
【0031】
本実施形態では、図3に示すように、固定樹脂81の上縁部81A、下縁部81B、及び側縁部81C,81Dが基準線L2よりも出力側光ファイバ32の光軸90に近い側に位置している。したがって、固定樹脂81の全体が戻り光の影となる領域S2内に位置することとなり、固定樹脂81に戻り光が直接照射されることがない。したがって、戻り光によって固定樹脂81が劣化することが抑制され、光コンバイナ20の故障も発生しにくくなる。なお、固定樹脂81が戻り光の影が生じる領域S1に位置していても、上述したように戻り光による影響を低減することができる。
【0032】
図9は、本発明の第2の実施形態における光コンバイナ120の主要部分を模式的に示す図である。上述した第1の実施形態では、固定樹脂81のすべての縁部が基準線L2よりも出力側光ファイバ32の光軸90に近い側に位置しているが、固定樹脂81の縁部の一部が基準線L2(あるいは基準線L1)よりも出力側光ファイバ32の光軸90に近い側に位置していれば、その部分については上述した効果が得られる。本実施形態では、固定樹脂81が、上部181Aから下部181Bに向かって広がっており、固定樹脂81の下部181Bの一部が基準線L2よりも外側に(光軸90から離れる側に)位置している。
【0033】
図9に示す例では、基準線L2よりも外側に位置する固定樹脂81の下部181Bに戻り光が照射されるため、この部分の温度が上昇することが考えられるが、固定樹脂81の下部181Bは、放熱板として作用し得るファイバ支持部54に接しているため、固定樹脂81の下部181Bで熱が発生したとしても、発生した熱がファイバ支持部54を介して放熱されやすく、戻り光による影響を抑えることができる。一方、固定樹脂81の上部181Aは、伝熱性が低い空気と接しているため、固定樹脂81の上部181Aを戻り光の影の領域、すなわち基準線L2(あるいは基準線L1)よりも光軸90に近い側に位置させて、熱の発生を抑制することが好ましい。
【0034】
また、本実施形態では、固定樹脂81が、上部181Aから下部181Bに向かって広がっているため、テーパ部66により近い位置に固定樹脂81の下部181Bを配置することができる。すなわち、テーパ部66により近い位置で入力側光ファイバ12をファイバ支持部54に固定することができる。このため、入力側光ファイバ12がファイバ支持部54に固定される位置と出力側光ファイバ32がファイバ支持部54に固定される位置との間の距離を短くでき、入力側光ファイバ12及び出力側光ファイバ32のファイバ支持部54への固定を強固にすることができる。この結果、光コンバイナ120の機械的信頼性を高めることができるとともに、光コンバイナ120を短尺化することができる。
【0035】
本実施形態では、上述のように、出力側光ファイバ32のクラッド72の端面72Aから外部空間に放射された戻り光が固定樹脂81の一部に照射されるが、この固定樹脂81に照射された戻り光が固定樹脂81の内部を伝搬することを抑制するために、固定樹脂81として不透明な樹脂を使用することが好ましい。
【0036】
図10は、本発明の第3の実施形態における光コンバイナ220の主要部分を模式的に示す図である。上述した第2の実施形態では、戻り光が固定樹脂81の下部181Bに照射されていたが、本実施形態におけるファイバ支持部54は、固定樹脂81の下部181Bに入射する戻り光を遮る遮光部250を有している。この遮光部250は、固定樹脂81の下部181Bとテーパ部66のテーパ開始部64との間で、基準線L2を越えて光軸90に近い側に延びる部分を有していれば、どのような形状であってもよい。
【0037】
このような遮光部250によって、固定樹脂81の下部181Bが基準線L2よりも外側に位置していても、戻り光が固定樹脂81の下部181Bに入射する前に遮光部250によって遮られるため、戻り光が固定樹脂81に入射することを抑制することができる。
【0038】
図11は、本発明の第4の実施形態における光コンバイナ320の主要部分を模式的に示す図である。上述した第1の実施形態では、入力側光ファイバ12及び出力側光ファイバ32が、ファイバ支持部54が延びる方向と平行に延びていたが、本実施形態では、入力側光ファイバ12及び出力側光ファイバ32をファイバ支持部54が延びる方向に対して斜めになるように配置している。すなわち、入力側光ファイバ12がファイバ接続部53から遠ざかるにつれて入力側光ファイバ12とファイバ支持部54との間の距離が大きくなるように、また、出力側光ファイバ32がファイバ接続部53から遠ざかるにつれて出力側光ファイバ32とファイバ支持部54との間の距離が小さくなるように、入力側光ファイバ12及び出力側光ファイバ32がファイバ支持部54に対して傾けられている。固定樹脂81,82は、このように傾いた状態の入力側光ファイバ12及び出力側光ファイバ32をそれぞれファイバ支持部54に固定している。
【0039】
このように入力側光ファイバ12を傾けることで、伝熱性が低い空気と接する固定樹脂81の上縁部81Aを基準線L2(あるいは基準線L1)よりも光軸90に近い側の領域S2(あるいは領域S1)に配置することが容易になる。この場合、図11に示すように、固定樹脂81の下部381Bの一部が基準線L2よりも外側に(光軸90から離れる側に)位置しやすくなるが、上述したように、固定樹脂81の下部381Bは、放熱板として作用し得るファイバ支持部54に接しているため、固定樹脂81の下部381Bに戻り光が当たって熱が発生したとしても、発生した熱がファイバ支持部54を介して放熱されやすく、戻り光による影響を抑えることができる。
【0040】
図12は、本発明の第5の実施形態における光コンバイナ420の主要部分を模式的に示す図である。本実施形態は、上述した第4の実施形態において、戻り光が照射される固定樹脂81の下部381Bの部分に、基準線L2を越えて光軸90に近い側に延びる遮光部450を設けた例である。このような遮光部450を設けることにより、戻り光が固定樹脂81の下部381Bに照射されることが抑制されるので、戻り光による固定樹脂81の劣化を抑制することができる。
【0041】
図13は、本発明の第6の実施形態における光コンバイナ520の主要部分を模式的に示す図である。本実施形態は、上述した第4の実施形態とは逆に、入力側光ファイバ12がファイバ接続部53から遠ざかるにつれて入力側光ファイバ12とファイバ支持部54との間の距離が小さくなるように、また、出力側光ファイバ32がファイバ接続部53から遠ざかるにつれて出力側光ファイバ32とファイバ支持部54との間の距離が大きくなるように、入力側光ファイバ12及び出力側光ファイバ32がファイバ支持部54に対して傾けられている。固定樹脂81,82は、このように傾いた状態の入力側光ファイバ12及び出力側光ファイバ32をそれぞれファイバ支持部54に固定している。
【0042】
このように入力側光ファイバ12を傾けることで、テーパ部66により近い位置で入力側光ファイバ12をファイバ支持部54に固定することができる。このため、入力側光ファイバ12がファイバ支持部54に固定される位置と出力側光ファイバ32がファイバ支持部54に固定される位置との間の距離を短くでき、入力側光ファイバ12及び出力側光ファイバ32のファイバ支持部54への固定を強固にすることができる。この結果、光コンバイナ520の機械的信頼性を高めることができるとともに、光コンバイナ520を短尺化することができる。
【0043】
図13に示す例では、固定樹脂81の下部181Bの一部が基準線L2よりも外側に(光軸90から離れる側に)位置しているが、固定樹脂81の下部181Bは、放熱板として作用し得るファイバ支持部54に接しているため、固定樹脂81の下部181Bで熱が発生したとしても、発生した熱がファイバ支持部54を介して放熱されやすく、戻り光による影響を抑えることができる。
【0044】
図14は、本発明の第7の実施形態における光コンバイナ620の主要部分を模式的に示す図である。本実施形態は、上述した第6の実施形態において、戻り光が照射される固定樹脂81の下部181Bの部分に、基準線L2を越えて光軸90に近い側に延びる遮光部650を設けた例である。このような遮光部650を設けることにより、戻り光が固定樹脂81の下部181Bに直接照射されることが抑制されるので、戻り光による固定樹脂81の劣化を抑制することができる。
【0045】
図15は、本発明の第8の実施形態における光コンバイナ720の主要部分を模式的に示す図である。本実施形態は、第1の実施形態における入力側光ファイバ12と出力側光ファイバ32との間をブリッジファイバ712で接続したものである。このブリッジファイバ712は、単一のコア763と、コア763の外周を覆うクラッド762とを有しており、入力側光ファイバ12側には径の大きな大径部712Aが形成され、出力側光ファイバ32側には径の小さな小径部712Bが形成されている。
【0046】
入力側光ファイバ12のテーパ部66の端部とブリッジファイバ712の大径部712Aとが第1のファイバ接続部743において接続されており、ブリッジファイバ712の小径部712Bと出力側光ファイバ32の端部とが第2のファイバ接続部753において接続されている。ブリッジファイバ712の大径部712Aと小径部712Bとの間には、テーパ開始部764から第2のファイバ接続部753に向かって縮径されたテーパ部766が形成されている。ブリッジファイバ712は固定樹脂781によってファイバ支持部54に固定されている。
【0047】
このような構成において、複数のファイバレーザ10から出射されたレーザ光は、それぞれの入力側光ファイバ12のコア63を伝搬し、テーパ部66を通ってブリッジファイバ712のコア763に導入される。ブリッジファイバ712のコア763に導入されたレーザ光は、縮径されたコア763を伝搬して出力側光ファイバ32のコア73に導入される。これにより、複数のファイバレーザ10から出射されたレーザ光が1本の出力側光ファイバ32のコア73に導入されて高パワーのレーザ光となり、出力側光ファイバ32のコア73を伝搬して出射端40から高パワーのレーザ光が出射される。このように複数のテーパ部66,766を設けることで、1つのテーパ部での縮径率を低く抑えることができるので、光ファイバ間の融着がしやすくなる。
【0048】
本実施形態では、ブリッジファイバ712のクラッド762の最も外周側(光軸790から最も離れた位置)にある点と、テーパ部66のテーパ開始部64における外周輪郭線65上で光軸790に最も近い位置にある点とを結んだ線を延長した基準線L3よりも光軸790に近い側の領域に、固定樹脂81が配置されている。この領域は、ブリッジファイバ712から入力側光ファイバ12に向かって伝搬する戻り光の影の領域となるため、固定樹脂81に戻り光が直接照射されることがなくなり、固定樹脂81の劣化を抑えることができる。
【0049】
なお、上述したブリッジファイバ712のクラッド762の最も内周側(光軸790に最も近い位置)にある点と、テーパ部66のテーパ開始部64における外周輪郭線65上で光軸790から最も離れた位置にある点とを結んだ線を延長した基準線よりも光軸790に近い領域に固定樹脂81を配置してもよい。この領域には、戻り光の影の領域が含まれるため、固定樹脂81をこの領域内に配置しても、戻り光による固定樹脂81の劣化が低減される。
【0050】
また、本実施形態では、出力側光ファイバ32のクラッド72の最も外周側(光軸90から最も離れた位置)にある点と、ブリッジファイバ712のテーパ開始部764における外周輪郭線上で光軸90に最も近い位置にある点とを結んだ線を延長した基準線L4よりも光軸90に近い側の領域に、固定樹脂781が配置されている。この領域は、出力側光ファイバ32からブリッジファイバ712に向かって伝搬する戻り光の影の領域となるため、固定樹脂781に戻り光が直接照射されることがなくなり、固定樹脂781の劣化を抑えることができる。
【0051】
なお、上述した出力側光ファイバ32のクラッド72の最も内周側(光軸90に最も近い位置)にある点と、ブリッジファイバ712のテーパ開始部764における外周輪郭線上で光軸90から最も離れた位置にある点とを結んだ線を延長した基準線よりも光軸90に近い領域に固定樹脂781を配置してもよい。この領域には、戻り光の影の領域が含まれるため、固定樹脂781をこの領域内に配置しても、戻り光による固定樹脂781の劣化が低減される。
【0052】
入力側光ファイバ12のテーパ部66は7本の光ファイバで構成されるが、ブリッジファイバ712のテーパ部766は1本の光ファイバで構成される。このように、テーパ部を形成している光ファイバの数は1本以上であれば何本であってもよい。ただし、図8における基準線L2は3本以上の入力側光ファイバ12を必要とする。
【0053】
上述した第1から第8の実施形態において、基準線L1~L4よりも光軸90,790から離れる側の領域に、上述したクラッド72,762から出射される光の反射を抑制する反射抑制部を設けてもよい。例えば、ファイバ支持部54の表面を黒アルマイト処理してクラッド72,762から出射される光を吸収させて反射抑制部800(図3参照)を形成してもよい。あるいは、反射抑制部としてファイバ支持部54の表面に白色散乱面を形成して、クラッド72,762から出射される光を散乱させてもよい。あるいは、透明体からなる反射抑制部を設けて、クラッド72,762から出射される光をこの透明体に透過させて鏡面反射を抑制してもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、被加工物から反射した光が戻り光として出力側光ファイバ32から入力側光ファイバ12に向かって戻ってくる場合を例として説明したが、出力側光ファイバ32から入力側光ファイバ12に向かって伝搬する光は、このような戻り光に限られるものではなく、例えば、双方励起型のファイバレーザにおいて反対側の励起光源からの出射された励起光も出力側光ファイバ32から入力側光ファイバ12に向かって伝搬する光となり得る。
【0055】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1 レーザ装置
10 ファイバレーザ
12 入力側光ファイバ
20 光コンバイナ
32 出力側光ファイバ
40 出射端
53 ファイバ接続部
54 ファイバ支持部
61 被覆材
62 クラッド
63 コア
64 テーパ開始部
65 外周輪郭線
66 テーパ部
71 被覆材
72 クラッド
72A 端面
73 コア
74 コア露出領域
81,82 固定樹脂
90 光軸
120,220,320,420,520,620,720 光コンバイナ
250,450,650 遮光部
712 ブリッジファイバ
712A 大径部
712B 小径部
743 第1のファイバ接続部
753 第2のファイバ接続部
762 クラッド
763 コア
764 テーパ開始部
766 テーパ部
781 固定樹脂
790 光軸
800 反射抑制部
L1 (第1の)基準線
L2 (第2の)基準線
L3,L4 (第2の)基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15