(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】自動ドアの通行性確認装置、自動ドアの通行性確認方法、自動ドア制御装置及び自動ドアシステム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/73 20150101AFI20220905BHJP
E05F 15/79 20150101ALI20220905BHJP
G01V 8/20 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
E05F15/73
E05F15/79
G01V8/20 N
(21)【出願番号】P 2018216846
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】横山 達哉
(72)【発明者】
【氏名】飯白 豊充
(72)【発明者】
【氏名】松永 絢一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康美
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-215122(JP,A)
【文献】特開2021-212367(JP,A)
【文献】特開平2-208584(JP,A)
【文献】特開2015-227867(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ドアから所定範囲内に存在する通行者の通行速度の変化を検出する速度変化検出部と、
前記通行速度の変化に基づいて前記通行者による前記自動ドアの通過し易さを示す通行性情報を生成する通行性情報生成部とを備える
自動ドアの通行性確認装置。
【請求項2】
前記速度変化検出部は、前記所定範囲内における前記通行者の通行速度の変化と前記通行者の立ち止まりに関する情報とを検出する
請求項1に記載の自動ドアの通行性確認装置。
【請求項3】
前記通行者の立ち止まりが生じたか否かを判定する立ち止まり判定部を備え、
前記通行性情報生成部は、前記立ち止まり判定部にて立ち止まりが生じなかったと判定された場合に前記通行者が前記所定範囲内に入ったときの通行速度と前記通行者が前記自動ドアを通過する際の通行速度とに基づいて前記通行性情報を生成する
請求項1又は2に記載の自動ドアの通行性確認装置。
【請求項4】
前記立ち止まり判定部にて前記通行者の立ち止まりが生じたと判定されると立ち止まり時間を検出する立ち止まり時間検出部と、
前記立ち止まり時間が所定の制限時間以内か否かを判定する立ち止まり時間判定部とを備え、
前記通行性情報生成部は、前記立ち止まり時間判定部にて前記立ち止まり時間が前記制限時間を超えていないと判定された場合、前記通行者が前記所定範囲内に入ったときの通行速度と前記通行者が前記自動ドアを通過したときの通行速度と前記立ち止まり時間とに基づいて前記通行性情報を生成する
請求項3に記載の自動ドアの通行性確認装置。
【請求項5】
前記通行性情報生成部は、前記立ち止まり時間判定部にて前記立ち止まり時間が前記制限時間を超えていると判定された場合には、前記立ち止まり時間を前記通行性情報の生成に利用することを中止する
請求項4に記載の自動ドアの通行性確認装置。
【請求項6】
前記通行性情報は、前記所定範囲内での通行速度の変化割合と前記自動ドアを通過する際に生じた立ち止まり時間との少なくとも一方に基づいて数値化された情報である
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の自動ドアの通行性確認装置。
【請求項7】
前記所定範囲を断続的又は連続的に撮影する撮影部で撮影された撮影画像と前記通行性情報とを関連づけて記憶する履歴情報記憶部を備える
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の自動ドアの通行性確認装置。
【請求項8】
前記通行性情報を記憶する通行性情報記憶部と、
前記記憶された通行性情報を所定の通信機器に送信する通行性情報提供部と
を備える請求項1乃至7のいずれか一項に記載の自動ドアの通行性確認装置。
【請求項9】
自動ドアから所定範囲内に存在する通行者の通行速度の変化を検出する工程と、
前記通行速度の変化に基づいて前記通行者による前記自動ドアの通過し易さを示す通行性情報を生成する
自動ドアの通行性確認方法。
【請求項10】
ドアと、
前記ドアを開閉制御する開閉制御部と、
前記ドアから所定範囲内に存在する通行者の通行速度の変化を検出する速度変化検出部と、
前記通行速度の変化に基づいて前記通行者による前記ドアの通過し易さを示す通行性情報を生成する通行性情報生成部と
を備える自動ドア制御装置。
【請求項11】
ドアと、
前記ドア近傍に設けられた検知エリア内の被検知物を検知する検知部と
前記検知部が被検知物を検知したときに前記ドアを開閉制御する開閉制御部と、
前記ドアから所定範囲内に存在する通行者の通行速度の変化を検出する速度変化検出部と、
前記通行速度の変化に基づいて前記通行者による前記ドアの通過し易さを示す通行性情報を生成する通行性情報生成部とを備える
自動ドアシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドアの通行性確認装置、自動ドアの通行性確認方法、自動ドア制御装置及び自動ドアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動ドアシステムは、検知エリア内の人間を自動ドアセンサで検知して自動ドアを開く制御を行っている。検知エリアの範囲や場所、自動ドアセンサの感度は、自動ドアシステムの設置後に調整できるようになっており、自動ドアシステムのオーナー等の管理者の意見や要望、設置作業者の経験などを加味して、調整を繰り返して最適な設定を行っている。このため、最適な設定を行うのに何度も調整を行わなければならず、手間がかかる。また、時間をかけて調整を行っても、自動ドアシステムの利用者から、苦情等を受けて再度調整を強いられることもある。さらに、経年劣化や部材の故障、性能劣化等により、当初の調整からずれてしまって、再調整が必要になる場合もある。
【0003】
特許文献1には、状態監視センサを設けて、このセンサで物体を検知すると、異常発生と認識して、画像を撮影・記録する技術が開示されている。また、特許文献2には、自動ドアの通行者の歩行速度が速い場合には自動ドアを素早く開いて素早く閉じ、通行者の歩行速度が遅い場合には自動ドアをゆっくり開いてゆっくり閉じる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-17990号公報
【文献】特開平2-208584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単に自動ドア付近の画像を撮影・記録するだけでは、自動ドアの通行のし易さを把握することはできない。また、自動ドアの通行者は、必ずしも同じ速度で自動ドアを通過するとは限らない。例えば、自動ドアの近くに、通行を妨げる障害物がある場合には、自動ドアを素早く通り抜けたい人でも一時的に歩行速度を緩めざるを得ない。また、通行者の中には、自動ドアの手前で歩行速度を緩める癖のある人や、自動ドアの手前で立ち止まって内部の様子をしばらく窺ってから自動ドアを通過する人などがいる。このように、単に歩行速度だけで自動ドアの開閉速度を決定するのが通行者にとって望ましいとは言えない。
【0006】
本発明の一態様は、自動ドアの通行性を確認することができる自動ドアの通行性確認装置、自動ドアの通行性確認方法、自動ドア制御装置及び自動ドアシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、自動ドアから所定範囲内に存在する通行者の通行速度の変化を検出する速度変化検出部と、
前記通行速度の変化に基づいて前記通行者による前記自動ドアの通過し易さを示す通行性情報を生成する通行性情報生成部とを備える自動ドアの通行性確認装置が提供される。
【0008】
前記速度変化検出部は、前記所定範囲内における前記通行者の通行速度の変化と、前記通行者の立ち止まりに関する情報とを検出してもよい。
【0009】
前記通行者の立ち止まりが生じたか否かを判定する立ち止まり判定部を備え、
前記通行性情報生成部は、前記立ち止まり判定部にて立ち止まりが生じなかったと判定された場合に前記通行者が前記所定範囲内に入ったときの通行速度と前記通行者が前記自動ドアを通過する際の通行速度とに基づいて前記通行性情報を生成してもよい。
【0010】
前記立ち止まり判定部にて前記通行者の立ち止まりが生じたと判定されると立ち止まり時間を検出する立ち止まり時間検出部と、
前記立ち止まり時間が所定の制限時間以内か否かを判定する立ち止まり時間判定部とを備え、
前記通行性情報生成部は、前記立ち止まり時間判定部にて前記立ち止まり時間が前記制限時間を超えていないと判定された場合、前記通行者が前記所定範囲内に入ったときの通行速度と、前記通行者が前記自動ドアを通過したときの通行速度と前記立ち止まり時間とに基づいて前記通行性情報を生成してもよい。
【0011】
前記通行性情報生成部は、前記立ち止まり時間判定部にて前記立ち止まり時間が前記制限時間を超えていると判定された場合には、前記立ち止まり時間を前記通行性情報の生成に利用することを中止してもよい。
【0012】
前記通行性情報は、前記所定範囲内での通行速度の変化割合と、前記自動ドアを通過する際に生じた立ち止まり時間との少なくとも一方に基づいて数値化された情報であってもよい。
【0013】
前記所定範囲を断続的又は連続的に撮影する撮影部で撮影された撮影画像と前記通行性情報とを関連づけて記憶する履歴情報記憶部を備えてもよい。
【0014】
前記通行性情報を記憶する通行性情報記憶部と、
前記記憶された通行性情報を所定の通信機器に送信する通行性情報提供部とを備えてもよい。
【0015】
自動ドアから所定範囲内に存在する通行者の通行速度の変化を検出する工程と、
前記通行速度の変化に基づいて、前記通行者による前記自動ドアの通過し易さを示す通行性情報を生成してもよい。
【0016】
ドアと、
前記ドアを開閉制御する開閉制御部と、
前記ドアから所定範囲内に存在する通行者の通行速度の変化を検出する速度変化検出部と、
前記通行速度の変化に基づいて前記通行者による前記ドアの通過し易さを示す通行性情報を生成する通行性情報生成部とを備える自動ドア制御装置が提供されてもよい。
【0017】
ドアと、
前記ドア近傍に設けられた検知エリア内の被検知物を検知する検知部と
前記検知部が被検知物を検知したときに前記ドアを開閉制御する開閉制御部と、
前記ドアから所定範囲内に存在する通行者の通行速度の変化を検出する速度変化検出部と、
前記通行速度の変化に基づいて前記通行者による前記ドアの通過し易さを示す通行性情報を生成する通行性情報生成部とを備える自動ドアシステムが提供されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、自動ドアの通行性を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態による自動ドアの通行性確認装置を備えた自動ドアシステムの概略構成を示すブロック図。
【
図3】速度変化検出部の処理動作を模式的に示す図。
【
図4】通行性情報提供部からの通行性情報の提供を受けたスマートフォンの画面表示例を示す図。
【
図5】通行性確認装置の処理動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0021】
図1は一実施形態による自動ドアの通行性確認装置1を備えた自動ドアシステム2の概略構成を示すブロック図、
図2は
図1の自動ドアシステム2の模式的な鳥瞰図である。本実施形態による自動ドアシステム2は、ドア3を自動で開閉する自動ドア装置4と、検知エリア5内の被検知物を検知する自動ドアセンサ6と、ドア3の通行性を確認する通行性確認装置1とを備えている。通行性確認装置1と、自動ドア装置4の一部である開閉制御部7とで、自動ドア制御装置8が構成されている。自動ドアシステム2は、ドア3を通行しようとする通行者を自動ドアセンサ6で検知し、自動ドアセンサ6の検知結果に応じて、通行者がドア3を通過できるようにドア3を開動作させる。自動ドア制御装置8は、自動ドアセンサ6の検知結果に基づいて、ドア3の開閉タイミングや開閉速度、開口幅等を指示する信号を開閉制御部7に送信する。
【0022】
(自動ドア装置4)
自動ドア装置4は、ドア3と、モータ9と、開閉制御部7とを備える。モータ9は、図示しない電源の電力が供給されることで、ドア3を自動で開閉するための回転力を発生させる。モータ9の回転力は、図示しないプーリやタイミングベルトなどの動力伝達部材を介して
図2に示す開閉方向d1への並進力としてドア3に伝達される。
図2の例において、2つのドア3は、引き分けタイプの引戸である。ドア3の態様は
図2の例に限定されず、例えば、片引きタイプの引戸、開き戸、折り戸、グライドドア3などの様々な態様のドア3を採用してもよい。
【0023】
開閉制御部7は、モータ9および自動ドアセンサ6に接続されている。開閉制御部7は、自動ドアセンサ6およびモータ9から取得された信号または情報に基づいて、電力供給の制御によるモータ9の駆動制御を行う。モータ9の駆動制御を行うことで、開閉制御部7は、ドア3の開閉を制御する。モータ9の駆動制御は、モータ9の駆動の有無、駆動速度、駆動トルクおよび回転方向の少なくとも1つまたはこれらの2つ以上の組み合わせの制御である。
【0024】
例えば、開閉制御部7には、自動ドアセンサ6から、後述する有効検知エリア5a内の通行者や物体の検知に応じた開信号が入力される。開閉制御部7は、開信号の入力に応じてドア3を開方向に駆動する制御(以下、開駆動制御とも呼ぶ)を行う。
【0025】
(自動ドアセンサ6)
自動ドアセンサ6は、検知エリア5内の被検知物を検知してドア3を開く制御を行う。自動ドアセンサ6は、ドア3の通行者等を検知するために、ドア3の上方の無目部11の中央、より具体的には、全閉状態の2枚のドア3の境界部の上方に設けられている。なお、自動ドアセンサ6は、無目部11以外の場所(例えば、建物の天井)に設けられていてもよい。
【0026】
図1に示すように、自動ドアセンサ6は、検知部12と、センサ制御部13とを備える。センサ制御部13は検知部12に接続されている。
【0027】
センサ制御部13は、例えば、不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのハードウェアで構成される。センサ制御部13の少なくとも一部をソフトウェアで構成してもよい。検知部12は、投光部12aと受光部12bとを有する。
【0028】
センサ制御部13は、有効検知エリア5a内で被検知物を検知して、開閉制御部7にドア3の開動作を指示する。有効検知エリア5aとは、
図2に示すように、自動ドアセンサ6を用いて検知可能な床面上の領域である検知エリア5のうち、ドア3の通行者等の検知のために設定された少なくとも一部の範囲の領域である。検知エリア5は、ドア3の移動方向に平行な方向d1と、ドア3の移動方向に直交する方向d2とに広がる矩形状である。
【0029】
投光部12aは、図示しない複数の投光素子を有する。投光部12aは、複数の投光素子のそれぞれから検知エリア5にパルス状の近赤外光を投光すなわち照射する。受光部12bは、投光部12aの複数の投光素子のそれぞれに光学的に対応する図示しない複数の受光素子を有する。受光部12bは、投光部12aの複数の投光素子のそれぞれから検知エリア5に投光された近赤外光の反射光を複数の受光素子のそれぞれによって受光し、受光素子毎に近赤外光の反射光の受光量を検知する。受光部12bは、検知された受光量を、受光量に応じた信号値を有する検知信号としてセンサ制御部13に出力する。なお、投光部12a及び受光部12bは、近赤外光以外の周波数帯の光すなわち電磁波を投光および受光してもよい。
【0030】
図2の例において、検知エリア5は、2枚のドア3の正面においてドア3の開閉方向d1およびこれに直交する前後方向d2に間隔を空けて配置された複数の小検知エリア5bで構成されている。
図2の例では、小検知エリア5bは、6列×12個の計72個存在する。なお、小検知エリア5bの数やサイズ、具体的配置は任意である。
【0031】
個々の小検知エリア5bは、投光部12aの複数の投光素子のそれぞれから投光され、受光部12bの複数の受光素子によってそれぞれ受光される近赤外光の照射スポットに対応している。
【0032】
図2の例における有効検知エリア5aは、複数の小検知エリア5bのうち少なくとも1つの小検知エリア5bで構成される。なお、
図2の例において、各小検知エリア5bは、円形状を有する。この場合の小検知エリア5bの床面における直径は、例えば、10cmから30cmの間の任意の値に設定することができる。小検知エリア5bは、楕円形状、矩形状および多角形状などの円形状以外の形状を有していてもよい。
【0033】
センサ制御部13は、投光部12aの全ての投光素子に対して、それぞれに対応する小検知エリア5bに向けて近赤外光を投光させる。受光部12bの全ての受光素子は、各小検知エリア5bからの近赤外光の反射光をそれぞれ受光する。そして、センサ制御部13は、受光部12bから入力された小検知エリア5b毎の検知信号のうち、有効検知エリア5aの検知信号を抽出する。そして、センサ制御部13は、抽出された有効検知エリア5aの検知信号に基づいて、ドア3の開閉制御を行う。
【0034】
センサ制御部13は、例えば、自動ドアシステム2の電源投入直後の有効検知エリア5aの検知信号の信号値(すなわち、受光量)を基準値として記憶しておき、基準値に対する信号値の変化量に基づいて通行者等の被検知物を検知してもよい。有効検知エリア5a内の通行者が検知された場合、センサ制御部13は、自動ドア装置4の開閉制御部7に開信号を出力することで、有効検知エリア5aにおける検知結果をドア3の開駆動制御に使用する。
【0035】
(通行性確認装置1)
図1の通行性確認装置1は、撮影部20を備えていてもよい。撮影部20は、ドア3に近づいてくる通行者を撮影するものである。撮影部20は、自動ドアセンサ6に内蔵されていてもよい。
【0036】
図1の通行性確認装置1は、速度変化検出部21と通行性情報生成部22を備えている。速度変化検出部21は、自動ドア3から所定範囲内に存在する通行者の通行速度の変化を検出する。速度変化検出部21は、例えば撮影部20の撮影画像に基づいて、通行者の通行速度の変化を検出する。
【0037】
速度変化検出部21は、所定範囲内における通行者の通行速度の変化と、通行者の立ち止まりに関する情報とを検出してもよい。撮影部20が撮影する所定範囲は、検知エリア5の範囲よりも広いのが望ましい。これにより、速度変化検出部21は自動ドアセンサ6が通行者を検知するよりも前から、通行者の通行速度の変化を検出できる。なお、場合によっては、撮影部20を省略して、速度変化検出部21は、自動ドアセンサ6の検知結果を利用して、通行者の通行速度の変化を検出してもよい。この場合、速度変化検出部21は、自動ドアセンサ6におけるどの小検知エリア5bでいつ通行者を検知したかによって、通行者の通行速度の変化を検出する。
【0038】
図3は速度変化検出部21の処理動作を模式的に示す図である。
図3の一点鎖線は、撮影部20で撮影される所定範囲20aを示している。所定範囲20aは、例えば検知エリア5を包含する範囲である。撮影部20は、自動ドアシステム2が動作している間は、継続してドア3の周囲の画像を撮影する。画像は動画でもよいし、静止画でもよい。静止画の場合、短い間隔で連続して撮影するのが望ましい。速度変化検出部21は、撮影部20によってそれぞれ異なる時刻に撮影された複数の撮影画像をそれぞれ比較することで、撮影画像に写っている通行者10の通行速度を検出する。撮影画像中に複数の通行者10が写る場合もあるため、顔の特徴等を抽出する特徴点抽出処理を行って個々の通行者10を識別し、各通行者10ごとに通行速度の変化を検出する。より詳しくは、速度変化検出部21は、撮影画像内の通行者10の撮影位置の移動量と、撮影画像同士の撮影間隔とに基づいて、通行速度の変化を検出する。2枚の撮影画像同士で通行速度の変化を検出しただけでは、正確な通行速度を検出できないおそれがあるため、3枚以上の撮影画像のうち任意の2枚の撮影画像同士で通行速度の変化を検出する処理を繰り返して、その平均値を算出してもよい。
【0039】
通行性情報生成部22は、通行速度の変化に基づいて、通行者10による自動ドア3の通過し易さを示す通行性情報を生成する。通行性情報は、通行者10による自動ドア3の通過し易さを数値化した情報であってもよい。より具体的には、通行性情報は、所定範囲内での通行速度の変化割合と、自動ドア3を通過する際に生じた立ち止まり時間との少なくとも一方に基づいて数値化された情報を含んでいてもよい。あるいは、通行性情報は、通行者10による自動ドア3の通過し易さをイラストや文字等で表した情報を含んでいてもよい。また、通行性情報は、通行者10の通行方向に関する情報を含んでいてもよい。
【0040】
図1の通行性確認装置1は、立ち止まり判定部23を備えていてもよい。立ち止まり判定部23は、通行者10の立ち止まりが生じたか否かを判定してもよい。この場合、通行性情報生成部22は、立ち止まり判定部23にて立ち止まりが生じなかったと判定された場合、通行者10が所定範囲内に入ったときの通行速度と、通行者10が自動ドア3を通過する際の通行速度と、に基づいて、通行性情報を生成してもよい。
【0041】
図1の通行性確認装置1は、立ち止まり時間検出部24と立ち止まり時間判定部25を備えていてもよい。立ち止まり時間検出部24は、立ち止まり判定部23にて通行者10の立ち止まりが生じたと判定されると、立ち止まり時間を検出する。立ち止まり時間判定部25は、立ち止まり時間が所定の制限時間以内か否かを判定する。この場合、通行性情報生成部22は、立ち止まり時間判定部25にて立ち止まり時間が制限時間を超えていないと判定された場合、通行者10が所定範囲内に入ったときの通行速度と、通行者10が自動ドア3を通過したときの通行速度と、立ち止まり時間とに基づいて、通行性情報を生成する。また、通行性情報生成部22は、立ち止まり時間判定部25にて立ち止まり時間が制限時間を超えたと判定された場合、その通行者10の立ち止まり時間は通行性情報を生成するのにふさわしくないと判断して、その立ち止まり時間を通行性情報に含めるのを中止する。
【0042】
図1の通行性確認装置1は、履歴情報記憶部26を備えていてもよい。履歴情報記憶部26は、撮影部20で撮影された撮影画像と通行性情報とを関連づけて記憶する。履歴情報記憶部26には、通行性情報に関連づけて撮影画像が記憶されるため、通行性情報に何らかの異常があったときに、履歴情報記憶部26から対応する撮影画像を読み出して、異常の原因を探ることができる。
【0043】
図1の通行性確認装置1は、通行性情報記憶部27と通行性情報提供部28を備えていてもよい。通行性情報記憶部27は、通行性情報を記憶する。通行性情報提供部28は、通行性情報記憶部27に記憶された通行性情報を所定の通信機器に送信する。例えば、通行性情報提供部28は、自動ドアシステム2の管理者や保守作業者が所持する携帯機器31に通行性情報を提供してもよい。携帯機器31とは、スマートフォン、タブレット、PC、携帯電話などである。自動ドアシステム2の管理者や保守作業者等が所持する携帯機器31に通行性情報を送信することで、自動ドア3の開閉タイミング等の調整の必要があるかどうかの判断と、どの程度の調整を行えばよいかの判断とを行うことができる。
【0044】
自動ドアシステム2の管理者や保守作業者等が所持する携帯機器31は、例えば、
図1に示すように、通行性情報受信部32と、表示部33とを備えている。通行性情報受信部32は、通行性情報提供部28から提供された通行性情報を受信して、表示部33に表示する制御を行う。なお、上述した履歴情報記憶部26と通行性情報記憶部27は一つに統合してもよい。
【0045】
図4は通行性情報提供部28からの通行性情報の提供を受けたスマートフォンの画面表示例を示す図である。
図4の例では、通行性情報を表す数値を表示している。例えば、数値は0~100のパーセント表示であり、数値が大きいほど、通行性がよい、すなわち快適であることを示している。より具体的には、通行性情報を表す数値が90~100パーセントであれば、通行者10の通行速度の変化の割合が例えば±20%以下を示しており、通行者10の快適度が高いことを示している。通行性情報を表す数値が50%であれば、ドア3の通過時にドア3が開くまで待機する若干の立ち止まりが発生しており、通行者10の快適度が中程度であることを示している。通行性情報を表す数値が10~20%であれば、ドア3の通過時に3秒程度の立ち止まりが発生し、通行者10の快適度が低いことを示している。所定時間(例えば5秒)以上の立ち止まりが発生した場合は、ドア3の通行とは別要因による立ち止まりが生じたことを示しており、快適度の算出対象から除外される。
【0046】
図4は一例であり、通行性情報の表示形態は任意である。例えば、通行性がよいことを示す顔イラストと、通行性が普通であることを示す顔イラストと、通行性が悪いことを示す顔イラストを表示し、通行性がよいかどうかを顔イラストの表情の違いで直感的にわかるようにしてもよい。
【0047】
図5は通行性確認装置1の処理動作の一例を示すフローチャートである。通行性確認装置1は、自動ドアシステム2が起動している間、継続して
図5の処理を実行する。まず、撮影部20は所定範囲内を撮影し(ステップS1)、所定範囲内に通行者10が侵入したか否かを判定する(ステップS2)。所定範囲内に通行者10が侵入していなければ、ステップS1に戻る。所定範囲とは、撮影部20による撮影可能な範囲である。所定範囲内に通行者10が侵入すると、通行者10の通行速度V1を算出する(ステップS3)。ステップS3では、速度変化検出部21は、通行者10が所定範囲内に侵入した直後に撮影された複数の撮影画像内の通行者10の撮影位置と撮影間隔とに基づいて、所定範囲内に侵入した直後の通行者10の通行速度を算出する。
【0048】
次に、通行者10がドア3を通過するまでの通行性情報を通行性情報記憶部27に記憶する(ステップS4)。通行性情報記憶部27に記憶される通行性情報には、時刻と各通行者10の通行速度の他、各通行者10の通行方向を含んでいてもよい。
【0049】
次に、通行者10の立ち止まりが発生したか否かを判定する(ステップS5)。このステップS5では、立ち止まり判定部23が判定処理を行う。立ち止まり判定部23は、異なる時間に撮影された複数の撮影画像内に写っている通行者10の撮影位置に基づいて、立ち止まりが発生したか否かを判定する。立ち止まりが発生したと判定されると、立ち止まり時間検出部24にて、立ち止まり時間を算出する(ステップS6)。次に、立ち止まり時間判定部25は、立ち止まり時間が所定の制限時間を超えたか否かを判定する(ステップS7)。制限時間は、例えば5秒である。立ち止まり時間が制限時間を超えた場合には、この通行者10の通行時間を除外して(ステップS8)、
図5の処理を終了する。通行者10が制限時間を超えて立ち止まった場合は、自動ドア3の通過し易さとは関係のない理由により立ち止まった場合が多いため、このような場合は、通行性情報の生成に含めないようにする。
【0050】
ステップS5で立ち止まりが発生しなかったと判定された場合、又はステップS7で立ち止まり時間が制限時間を超えなかったと判定された場合、ドア3を通過する際の通行者10の通行速度V2を算出する(ステップS9)。このステップS9では、それぞれ異なる時間に撮影した複数の撮影画像内に写っている通行者10の撮影位置と撮影間隔に基づいて、通行者10の通行速度V2を算出する。
【0051】
次に、ステップS3で算出された通行速度とステップS9で算出された通行速度との差分で表される速度変化量A=V1-V2を算出する(ステップS10)。次に、ステップS10で算出された速度変化量Aを、ステップS2で算出された通行速度V1で割った値で表される速度変化割合B=A/V1を算出する(ステップS11)。
【0052】
次に、通行性情報生成部22は、速度変化割合Bと、ステップS6で算出された立ち止まり時間とに基づいて、通行性情報を生成する(ステップS12)。生成された通行性情報は、通行性情報記憶部27に記憶される。
【0053】
通行性情報記憶部27に記憶された通行性情報は、必要に応じて読み出される。通行性情報提供部28は、通行性情報記憶部27に記憶された通行性情報を自動ドアシステム2の管理者や保守作業者が所持する携帯機器31等に送信することができる。通行性情報を受信した管理者や保守作業者は、所持する携帯機器31の画面に表示された通行性情報に基づいて、自動ドア3の開閉タイミングや開閉速度、開口幅等が適切か否かを判断でき、適切でないと判断される場合には、通行性情報に基づいて開閉タイミング等を調整する。これにより、自動ドア3の開閉タイミング等を容易に最適化することができる。
【0054】
本実施形態による通行性確認装置1は、既存の自動ドアシステム2に組み込むことができる。本実施形態による通行性確認装置1によれば、既存の自動ドアシステム2における自動ドア3の開閉タイミングや開閉速度、開口幅等を再調整することが容易になる。より具体的には、通行性情報を表す数値が低い場合には、通行者10が自動ドア3の間際で立ち止まる頻度や時間が長いことを示している。この場合、自動ドア3の開閉タイミングを早める調整を行ったり、検知エリア5を広げる調整を行ったり、自動ドアセンサ6の反応が鈍い場合は交換を行うなどの方策が考えられる。よって、通行性情報提供部28は、通行性情報を表す数値が低い場合には、想定しうる不具合の調整方法を通行性情報とともに提供してもよい。また、調整方法だけでなく、自動ドアセンサ6の反応が鈍くなっているか否かの検査方法や、検知エリア5が狭くなったりずれていないかの検査方法などの種々の検査方法を、通行性情報とともに提供してもよい。
【0055】
このように、本実施形態では、自動ドア3の近くを通行する通行者10の通行速度の変化を検出し、通行速度の変化に基づいて、通行者10による自動ドア3の通過し易さを表す通行性情報を生成する。各通行者10の通行性情報を通行性情報記憶部27に記憶しておき、必要に応じて通行性情報記憶部27から読み出して、自動ドア3の管理者や保守作業者に提供することにより、自動ドア3の開閉タイミングや開閉速度、開口幅等が適切であるか否かを判断できる。適切でないと判断される場合には、通行性情報に基づいて、自動ドア3の開閉タイミングや開閉速度、開口幅等を最適化する調整を容易に行うことができる。
【0056】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 通行性確認装置、2 自動ドアシステム、3 ドア、4 自動ドア装置、6 自動ドアセンサ、7 開閉制御部、8 自動ドア制御装置、9 モータ、12 検知部、12a 投光部、12b 受光部、13 センサ制御部、20 撮影部、21 速度変化検出部、22 通行性情報生成部、23 立ち止まり判定部、24 立ち止まり時間検出部、25 立ち止まり時間判定部、26 履歴情報記憶部、27 通行性情報記憶部、28 通行性情報提供部、31 携帯機器、32 通行性情報受信部、33 表示部