(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】組成物層および金属層を有する複合体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20220905BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220905BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220905BHJP
【FI】
B32B15/08 Q
B32B27/32 E
H01M50/531
(21)【出願番号】P 2018231589
(22)【出願日】2018-12-11
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】小林 恭子
(72)【発明者】
【氏名】小川 慶之
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/180165(WO,A1)
【文献】特開2015-170428(JP,A)
【文献】特開2016-184500(JP,A)
【文献】特開2016-091939(JP,A)
【文献】特開2014-225378(JP,A)
【文献】国際公開第2012/077706(WO,A1)
【文献】特開2018-060758(JP,A)
【文献】特開2018-138639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
H01M 50/50- 50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物(Ia)から形成された組成物層(I)と、
前記組成物層(I)に接する金属層(II)と
を有する複合体であり、
前記組成物(Ia)が、
プロピレン由来の構成単位の含有割合が90モル%を超え、DSCにより測定した融点(Tm)が135℃を超えるプロピレン共重合体(A)60~94質量部と、
DSCにより測定した融点(Tm)が100℃以下のエチレン・α-オレフィン共重合体(B)2~12質量部と、
ポリオレフィンが、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種により変性された変性ポリオレフィン(C)3~30質量部と
を含有し(但し、前記共重合体(A)、前記共重合体(B)および前記変性ポリオレフィン(C)の合計を100質量部とする)、かつ、
前記共重合体(A)、前記共重合体(B)および前記変性ポリオレフィン(C)の合計含有割合が前記組成物(Ia)の87質量%以上である
ことを特徴とする複合体。
【請求項2】
前記組成物層(I)における、前記金属層(II)が接していない面上に形成されたポリオレフィン樹脂層(III)をさらに有する請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記組成物層(I)における、前記金属層(II)が接していない面上に形成されたポリオレフィン樹脂層(III)と、
前記ポリオレフィン樹脂層(III)における2面のうち、前記金属層(II)に対してより遠い面上に形成された他の層(IV)と
をさらに有する
請求項1または2に記載の複合体。
【請求項4】
前記他の層(IV)が、前記プロピレン共重合体(A)60~94質量部と、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)2~12質量部と、前記変性ポリオレフィン(C)3~30質量部とを含有し(但し、前記共重合体(A)、前記共重合体(B)および前記変性ポリオレフィン(C)の合計を100質量部とする)、かつ、前記共重合体(A)、前記共重合体(B)および前記変性ポリオレフィン(C)の合計含有割合が87質量%以上である組成物から形成された層である請求項3に記載の複合体。
【請求項5】
前記組成物層(I)に対応するフィルムまたはシートと、前記金属層(II)に対応する金属部材とを熱融着する、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の複合体を含むリチウムイオン電池用タブリード。
【請求項7】
請求項6に記載のタブリードを有するリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物層および金属層を有する複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からポリプロピレンは、剛性、耐熱性および透明性に優れる熱可塑性成形材料として広く利用されている。ポリプロピレンは、非極性材料であるため、例えばアルミニウム等の金属材料との接着性に乏しい。接着性改良を目的として、ポリプロピレンを不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性する技術が広く知られている。
【0003】
また、ポリプロピレンは柔軟性に劣るため、接着樹脂として用いる際は、通常、ポリプロピレンに軟質ゴム成分を配合している。ポリプロピレンに軟質ゴム成分を配合することで、接着性が改善されたポリプロピレン系接着樹脂が提案されている(特許文献1)。
【0004】
一方、リチウムイオン電池に代表される二次電池では、従来から金属製の缶が用いられてきた。近年では、製品の薄型化や多様化の要求に対して、アルミニウム箔に樹脂フィルムを積層した複合体を袋状にしたラミネート包装材が用いられるようになっている。リチウムイオン電池の正極および負極の金属基材には、アルミニウム、ニッケルなどの金属製のリード基材が電気を取り出すために取り付けられる。リード基材とラミネート包装材のアルミニウム箔との短絡や電解液の漏洩を防ぐため、リード基材とラミネート包装材の最内層の樹脂層(シーラント)とのシール強度を向上させる目的で、リード基材のシール部分にはフィルム形状の絶縁体(タブリードフィルム)を挟み込んでシールすることが一般的となっている(特許文献2および特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平04-300933号公報
【文献】特開昭56-071278号公報
【文献】特開2001-102016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タブリードフィルムは、絶縁性が高いことはもちろんであるが、リード基材に対する剥離強度に優れる必要がある。例えば、近年、リチウムイオン電池は自動車用などの大型で大容量の電池への検討が盛んであり、剥離強度の向上が要求されている。
【0007】
しかしながら、ポリプロピレン系接着樹脂は、従来技術である柔軟性向上による接着力向上では、機械的強度がより低くなるために剥離試験では接着樹脂層が破壊され剥離強度としては低くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、ポリプロピレン系接着樹脂層の絶縁性を保持したまま、ポリプロピレン系接着樹脂層と金属層との剥離強度に優れる複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討した。その結果、以下の構成を有する複合体により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の[1]~[7]に関する。
【0010】
[1]組成物(Ia)から形成された組成物層(I)と、前記組成物層(I)に接する金属層(II)とを有する複合体であり、前記組成物(Ia)が、プロピレン由来の構成単位の含有割合が90モル%を超え、DSCにより測定した融点(Tm)が135℃を超えるプロピレン共重合体(A)60~94質量部と、DSCにより測定した融点(Tm)が100℃以下のエチレン・α-オレフィン共重合体(B)2~12質量部と、ポリオレフィンが、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種により変性された変性ポリオレフィン(C)3~30質量部とを含有し(但し、前記共重合体(A)、前記共重合体(B)および前記変性ポリオレフィン(C)の合計を100質量部とする)、かつ、前記共重合体(A)、前記共重合体(B)および前記変性ポリオレフィン(C)の合計含有割合が前記組成物(Ia)の87質量%以上であることを特徴とする複合体。
【0011】
[2]前記組成物層(I)における、前記金属層(II)が接していない面上に形成されたポリオレフィン樹脂層(III)をさらに有する前記[1]に記載の複合体。
[3]前記組成物層(I)における、前記金属層(II)が接していない面上に形成されたポリオレフィン樹脂層(III)と、前記ポリオレフィン樹脂層(III)における2面のうち、前記金属層(II)に対してより遠い面上に形成された他の層(IV)とをさらに有する前記[1]または[2]に記載の複合体。
【0012】
[4]前記他の層(IV)が、前記プロピレン共重合体(A)60~94質量部と、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)2~12質量部と、前記変性ポリオレフィン(C)3~30質量部とを含有し(但し、前記共重合体(A)、前記共重合体(B)および前記変性ポリオレフィン(C)の合計を100質量部とする)、かつ、前記共重合体(A)、前記共重合体(B)および前記変性ポリオレフィン(C)の合計含有割合が87質量%以上である組成物から形成された層である前記[3]に記載の複合体。
【0013】
[5]前記組成物層(I)に対応するフィルムまたはシートと、前記金属層(II)に対応する金属部材とを熱融着する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【0014】
[6]前記[1]~[4]のいずれかに記載の複合体を含むリチウムイオン電池用タブリード。
[7]前記[6]に記載のタブリードを有するリチウムイオン電池。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポリプロピレン系接着樹脂層の絶縁性を保持したまま、ポリプロピレン系接着樹脂層と金属層との剥離強度に優れる複合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の複合体の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
[複合体]
本発明の複合体は、
組成物(Ia)から形成された組成物層(I)と、
前記組成物層(I)に接する金属層(II)と
を有する。
【0018】
<組成物層(I)>
組成物層(I)は、プロピレン共重合体(A)、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)および変性ポリオレフィン(C)を含有する組成物(Ia)から形成される。以下、前記(A)~(C)をそれぞれ「成分(A)」、「成分(B)」、「成分(C)」ともいう。
【0019】
組成物層(I)は、高い絶縁性を有し、また金属層(II)に対する剥離強度に優れる。このため、組成物層(I)は、例えばリチウムイオン電池のラミネート包装材における正極、負極の金属製リード基材に対するタブリードフィルムとして好ましい。
【0020】
《プロピレン共重合体(A)》
プロピレン共重合体(A)は、絶縁性等の向上に寄与する成分である。
成分(A)は、プロピレン由来の構成単位を有する。成分(A)は、コモノマー由来の構成単位も有する。コモノマーとしては、例えば、エチレンと、プロピレン以外のα-オレフィンとが挙げられる。
【0021】
成分(A)におけるα-オレフィンとしては、例えば、炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数4~20、好ましくは炭素数4~10の直鎖状のα-オレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン等の炭素数5~20、好ましくは炭素数5~10の分岐状のα-オレフィンが挙げられる。ここで、1種のα-オレフィンを用いても2種以上のα-オレフィンを用いてもよい。α-オレフィンは、好ましくは炭素数4~10のα-オレフィンであり、より好ましくは炭素数4~8のα-オレフィンである。
【0022】
コモノマーとしては、エチレンおよび炭素数4~10のα-オレフィンが好ましく、エチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンがより好ましく、エチレンおよび1-ブテンがさらに好ましい。
【0023】
成分(A)における、プロピレン由来の構成単位の含有割合(以下「プロピレン含量」ともいう)は、90モル%を超え、好ましくは91~99モル%、より好ましくは92~98モル%である。プロピレン含量が前記範囲にあると、耐熱性の点で好ましい。
【0024】
成分(A)における、コモノマー由来の構成単位の含有割合(以下「コモノマー含量」ともいう;例えばエチレンの場合は「エチレン含量」である)は、10モル%未満、好ましくは1~9モル%、より好ましくは2~8モル%である。
【0025】
ここで、成分(A)を構成する全モノマー由来の構成単位量を100モル%とする。各構成単位の含有割合は、13C-NMRにより測定することができる。
成分(A)の、示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)は、135℃を超え、好ましくは136~155℃、より好ましくは136~150℃である。融点が前記範囲にあると、ヒートシール性の点で好ましい。
【0026】
成分(A)のメルトフローレート(MFR)は、通常は0.01~100g/10分、好ましくは0.5~50g/10分、より好ましくは1~30g/10分である。成分(A)のMFRは、ASTM D1238に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
【0027】
成分(A)の密度は、通常は0.86~0.92g/cm3、好ましくは0.87~0.91g/cm3である。密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して測定する。
【0028】
成分(A)は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。成分(A)は、好ましくはプロピレンランダム共重合体である。
成分(A)の製造方法は特に限定されるものではない。成分(A)はチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒等の周知の触媒を用いた周知の方法にて製造することができる。
成分(A)は1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
《エチレン・α-オレフィン共重合体(B)》
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、ヒートシール性等の向上に寄与する成分である。
成分(B)の、示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)は、100℃以下であり、好ましくは20~90℃、より好ましくは25~85℃である。
【0030】
成分(B)におけるα-オレフィンとしては、例えば、炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数3~20、好ましくは炭素数3~10の直鎖状のα-オレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン等の炭素数5~20、好ましくは炭素数5~10の分岐状のα-オレフィンが挙げられる。ここで、1種のα-オレフィンを用いても2種以上のα-オレフィンを用いてもよい。α-オレフィンは、好ましくは炭素数3~10のα-オレフィンであり、より好ましくは炭素数3~8のα-オレフィンである。
【0031】
成分(B)における、エチレン由来の構成単位の含有割合(以下「エチレン含量」ともいう)は、好ましくは50~99モル%、より好ましくは60~95モル%、更に好ましくは70~90モル%である。エチレン含量が前記範囲にあると、ヒートシール性の点で好ましい。
【0032】
成分(B)における、α-オレフィン由来の構成単位の含有割合(以下「α-オレフィン含量」ともいう)は、好ましくは1~50モル%、より好ましくは5~40モル%、更に好ましくは10~30モル%である。
【0033】
ここで、成分(B)を構成する全モノマー由来の構成単位量を100モル%とする。各構成単位の含有割合は、13C-NMRにより測定することができる。
成分(B)のメルトフローレート(MFR)は、通常は0.1~50g/10分、好ましくは0.5~40g/10分、より好ましくは1~20g/10分である。成分(B)のMFRは、ASTM D1238に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
【0034】
成分(B)の密度は、通常は0.80~0.90g/cm3、好ましくは0.85~0.89g/cm3である。密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して測定する。
【0035】
成分(B)は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。成分(B)は、好ましくはエチレン・α-オレフィンランダム共重合体である。
成分(B)の製造方法は特に限定されるものではない。成分(B)はチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒等の周知の触媒を用いた周知の方法にて製造することができる。
成分(B)は1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0036】
《変性ポリオレフィン(C)》
変性ポリオレフィン(C)は、金属層(II)に対する組成物層(I)の剥離強度等の向上に寄与する成分である。
【0037】
成分(C)は、ポリオレフィンを、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種(以下「変性用化合物」ともいう)によって変性して得られる。
【0038】
変性前のポリオレフィンを構成するオレフィンとしては、例えば、エチレン、炭素数3~20のオレフィンが挙げられる。炭素数3~20のオレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数3~20、好ましくは炭素数3~10の直鎖状のα-オレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン等の炭素数5~20、好ましくは炭素数5~10の分岐状のα-オレフィンなどのα-オレフィンが挙げられる。ここで、1種のα-オレフィンを用いても2種以上のα-オレフィンを用いてもよい。
【0039】
ポリオレフィンとしては、エチレン単独重合体、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体等のエチレン系重合体;プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体等のプロピレン系重合体が挙げられる。エチレン系重合体では、全モノマー含量のうちエチレン含量が最も大きい。プロピレン系重合体では、全モノマー含量のうちプロピレン含量が最も大きい。
【0040】
プロピレン系重合体としては、例えば、アイソタクティックポリプロピレンとシンジオタクティックポリプロピレンが挙げられる。アイソタクティックポリプロピレンは、プロピレン単独重合体であっても、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4~20のα-オレフィンとのランダム共重合体であっても、プロピレンブロック共重合体であってもよい。プロピレン系重合体の中でも、プロピレン含量が80モル%以上または90モル%以上のランダム共重合体、およびプロピレン単独重合体が好ましい。
【0041】
不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;などの、カルボキシ基を1つ以上有する不飽和化合物が挙げられる。前記不飽和化合物に含まれる不飽和基としては、例えば、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基が挙げられる。
【0042】
不飽和カルボン酸の誘導体としては、不飽和カルボン酸の、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩が挙げられ、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル;(メタ)アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸-N-モノエチルアミド、マレイン酸-N,N-ジエチルアミド、マレイン酸-N-モノブチルアミド、マレイン酸-N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸-N-モノエチルアミド、フマル酸-N,N-ジエチルアミド、フマル酸-N-モノブチルアミド、フマル酸-N,N-ジブチルアミド;マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウムが挙げられる。
【0043】
変性用化合物の中では、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物が好ましく、マレイン酸およびその酸無水物がより好ましい。
成分(C)における変性用化合物による変性量(具体的にはグラフト量)は、通常は0.5~10質量%、好ましくは0.5~8質量%、より好ましくは1~5質量%である。変性量が前記範囲にあると、組成物層(I)は、金属層(II)に対して高い剥離強度を示す。変性量の制御は、例えば、グラフト条件を適宜に選択することにより、容易に行なうことができる。
【0044】
変性用化合物をポリオレフィンにグラフトさせる場合には、その方法については特に限定されず、溶融混練法、溶液法等の従来公知のグラフト重合法を採用することができる。例えば、ポリオレフィンを溶融し、溶融ポリオレフィンに変性用化合物を添加して、ラジカル重合開始剤の存在下または不存在下でグラフト反応させる方法、ポリオレフィンを溶媒に溶解して溶液を得て、前記溶液に変性用化合物を添加して、ラジカル重合開始剤の存在下でグラフト反応させる方法が挙げられる。
【0045】
成分(C)の密度は、通常は0.80~0.92g/cm3、好ましくは0.85~0.91g/cm3である。密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して測定する。
成分(C)は1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0046】
《添加剤》
組成物(Ia)は、添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、顔料、染料、充填剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、結晶化助剤、防曇剤、老化防止剤、衝撃改良剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、加工助剤が挙げられる。
添加剤は1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0047】
《組成比および製造方法》
組成物(Ia)は、プロピレン共重合体(A)を60~94質量部含有し、好ましくは60~90質量部、より好ましくは67~90質量部含有する。成分(A)の含有量が60質量部未満であると、組成物層(I)の機械的強度が低下する傾向にあり、94質量部を超えると、剥離強度が低くなる傾向にある。
【0048】
組成物(Ia)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を2~12質量部、好ましくは3~11質量部、より好ましくは4~10質量部含有する。成分(B)の含有量が2質量部未満であると、剥離強度が低くなる傾向にあり、12質量部を超えると、組成物層(I)の機械的強度、例えば引張破断応力が低下し、さらに剥離強度も結果として低下する傾向にある。
【0049】
組成物(Ia)は、変性ポリオレフィン(C)を3~30質量部含有し、好ましくは4~28質量部含有する。成分(C)の含有量が3質量部未満であると、金属層(II)に対する組成物層(I)の剥離強度が低下する傾向にあり、30質量部を超えると、組成物層(I)の機械的強度が低下する傾向にある。
【0050】
ここで、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100質量部とする。
組成物(Ia)中の、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計含有割合は、87質量%以上であり、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。このような態様であると、架橋などの手段を用いずに、組成物層(I)の機械的強度が優れる点で好ましい。
【0051】
組成物(Ia)の製造方法として、公知の方法を採用できる。例えば、成分(A)~(C)および更に必要に応じ配合される添加剤を、一括でまたは逐次に溶融混練する方法が挙げられる。
【0052】
前記成分を溶融混練する方法としては、例えば、前記成分を必要に応じてドライブレンドした後、1軸又は2軸の押出機、バンバリーミキサー、ロール、各種ニーダー等で溶融混練する方法が挙げられ、工業的には1軸又は2軸の押出機が好適に用いられる。溶融混練における温度については、成分(A)~(C)が溶融していれば特に限定はないが、通常は160~300℃、好ましくは180℃~250℃である。
【0053】
<金属層(II)>
金属層(II)を構成する金属は、特に制限されないが、例えば、アルミニウム、チタン、銅、ニッケルおよびこれらから選ばれる少なくとも1種を含む合金が挙げられる。例えば、金属層(II)がリチウムイオン電池の正極に接続されるタブリードのリード基材である場合は、アルミニウム、チタンおよびこれらから選ばれる少なくとも1種を含む合金で形成された金属層(II)が好ましい。金属層(II)がリチウムイオン電池の負極に接続されるタブリードのリード基材である場合は、銅、ニッケルおよびこれらから選ばれる少なくとも1種を含む合金で形成された金属層(II)が好ましい。
【0054】
金属層(II)は、例えば、金属シートおよび金属板である。金属層(II)の一実施態様は、リチウムイオン電池の、正極および負極から選ばれる電極に接続されるタブリードを構成するリード基材である。
【0055】
<ポリオレフィン樹脂層(III)>
本発明の複合体は、ポリオレフィン樹脂層(III)をさらに有することができる。ポリオレフィン樹脂層(III)は、例えば、組成物層(I)における金属層(II)が接していない面上に形成される。すなわち、本発明の複合体は、金属層(II)/組成物層(I)/ポリオレフィン樹脂層(III)という構成を有することができる。
【0056】
ポリオレフィン樹脂層(III)におけるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。ポリプロピレン樹脂を用いると、耐熱性の観点から好ましい。ポリオレフィン樹脂は架橋されていてもよい。
【0057】
<他の層(IV)>
本発明の複合体は、他の層(IV)をさらに有することができる。他の層(IV)は、例えば、ポリオレフィン樹脂層(III)における2面のうち、前記金属層(II)に対してより遠い面上に形成される。すなわち、本発明の複合体は、金属層(II)/組成物層(I)/ポリオレフィン樹脂層(III)/他の層(IV)という構成を有することができる。
【0058】
他の層(IV)は、一実施態様において、前述した組成物(Ia)から形成され、すなわち、前記プロピレン共重合体(A)60~94質量部と、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)2~12質量部と、前記変性ポリオレフィン(C)3~30質量部とを含有し(但し、前記共重合体(A)、前記共重合体(B)および前記変性ポリオレフィン(C)の合計を100質量部とする)、かつ、前記共重合体(A)、前記共重合体(B)および前記変性ポリオレフィン(C)の合計含有割合が87質量%以上である組成物から形成された層である。ここで、他の層(IV)を形成する前記組成物は、前述した組成物(Ia)に包含される組成物であれば、組成物層(I)を形成する組成物(Ia)と組成が同一であっても異なってもよい。
【0059】
また、他の層(IV)は、他の一実施態様において、例えば、公知の酸変性ポリオレフィン樹脂およびその架橋体から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン等の、酸変性熱可塑性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。酸変性ポリプロピレンを用いると、耐熱性の観点から好ましい。
【0060】
<複合体の構成>
本発明の複合体の構成としては、例えば、
金属層(II)/組成物層(I)、
金属層(II)/組成物層(I)/ポリオレフィン樹脂層(III)、
金属層(II)/組成物層(I)/ポリオレフィン樹脂層(III)/他の層(IV)、
組成物層(I)/金属層(II)/組成物層(I)、
ポリオレフィン樹脂層(III)/組成物層(I)/金属層(II)/組成物層(I)/ポリオレフィン樹脂層(III)、
他の層(IV)/ポリオレフィン樹脂層(III)/組成物層(I)/金属層(II)/組成物層(I)/ポリオレフィン樹脂層(III)/他の層(IV)
が挙げられる。
【0061】
なお、本発明の複合体において、金属層(II)の全面に組成物層(I)が形成されている必要はなく、金属層(II)の一部に組成物層(I)が形成されていればよい。例えば、後述するリチウムイオン電池用タブリードの場合は、外装部材によりシールされる部位の金属層(II)(リード基材に相当)を被覆するように組成物層(I)が形成されていることが好ましい。
【0062】
<複合体の各層の厚みおよび複合体の製造方法>
本発明の複合体は、例えば、以下の方法にて製造することができる。
組成物層(I)を単独で使用する場合は、組成物(Ia)からTダイ付き押出成形機またはインフレーション成形機等の成形機でフィルムまたはシートなどを成形する。成形温度は、例えば180~250℃である。次いで、組成物層(I)に対応する前記フィルムまたはシートと、金属層(II)に対応する金属部材とを貼り合わせ、熱融着、具体的には熱圧着する。このとき、組成物層(I)の厚みは、通常は5~300μm、好ましくは10~250μmである。
【0063】
ポリオレフィン樹脂層(III)および必要に応じて他の層(IV)を設ける場合は、前記(I)、前記(III)および必要に応じて前記(IV)それぞれに対応するフィルムを予め成形し、熱圧着などを行って積層フィルムを作製する。あるいは、組成物層(I)、ポリオレフィン樹脂層(III)および必要に応じて他の層(IV)を公知の多層成形法により成形することで積層フィルムを作製してもよい。公知の多層成形法としては、例えば、共押出成形法、押出ラミネート法が挙げられる。このときの、組成物層(I)、ポリオレフィン樹脂層(III)、必要に応じて他の層(IV)を合わせた総厚みは、通常は10~300μm、好ましくは10~250μmである。この中で組成物層(I)の厚みは、通常は3~50μm、好ましくは5~40μmであり、ポリオレフィン樹脂層(III)の厚みは、例えば7~297μmまたは5~245μmであり、他の層(IV)の厚みは、通常は3~50μm、好ましくは5~40μmである。次いで、前記積層フィルムと金属層(II)に対応する金属部材とを、組成物層(I)が金属層(II)と接触するように貼り合わせ、熱融着、具体的には熱圧着する。
【0064】
金属層(II)の厚みは、特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは2μm~100mm、より好ましくは5μm~50mmである。
熱融着の条件、具体的には熱圧着の条件は、例えば、通常は130~200℃、好ましくは140~180℃であり、通常は0.1~1MPa、好ましくは0.2~0.8MPaである。
【0065】
[複合体の用途]
本発明の複合体の具体的な用途としては、太陽電池のアルミフレームの固定部材、色素増感太陽電池の活物質同士を固定するバインダーや透明電極と活物質とを固定する部材、リチウムイオン電池の包装材(アルミニウムとシーラントポリプロピレンとの間の接着層)、タブリード、燃料電池セルのセパレータ(チタンやステンレスなど)同士の接着部材、燃料電池セルのセパレータと各種ガスケットとの間の接着部材等が挙げられる。
【0066】
これらの中でも、本発明の複合体はタブリードとして用いることが特に好ましい。タブリードは、電池における電極と外部との電気の出し入れを行う端子である。本発明の複合体は、リチウムイオン電池イオン用、特にラミネート型リチウムイオン電池用のタブリードとして用いることが好ましい。ラミネート型リチウムイオン電池は、リチウムイオン電池としては軽量であり、形状自由度が高く、高速充電が可能である。
【0067】
本発明のタブリードは、リード基材である金属層(II)と、リード基材の少なくとも片面上に形成されたタブリードフィルムとを有する。タブリードは、リード基材の両面上にタブリードフィルムを有することができる。
【0068】
タブリードフィルムは、リード基材に接する組成物層(I)を有し、一実施形態においては組成物層(I)上にさらにポリオレフィン樹脂層(III)、および必要に応じて他の層(IV)を有することができる。タブリードフィルムは、リード基材(リード導体)の一部を被覆し、後述するリチウムイオン電池における外装部材の内面に接着させるために形成されている。一例として、
図1に、タブリードフィルムによりリード基材と外装部材とを接着させた構成を示す。
【0069】
タブリードフィルムは、一実施形態において、耐熱層と接着層とを有する積層フィルムである。リチウムイオン電池では、前記接着層をリード基材に接着させ、前記耐熱層を外装部材の内面に接着させる。一実施形態において、本発明の複合体における金属層(II)がリード基材に相当し、組成物層(I)がタブリードフィルムの接着層に相当し、ポリオレフィン樹脂層(III)がタブリードフィルムの耐熱層に相当する。
【0070】
リード基材の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、銅、ニッケルおよびこれらから選ばれる少なくとも1種を含む合金が挙げられる。リチウムイオン電池の正極に接続されるリード基材としては、例えば、アルミニウム、チタンおよびこれらから選ばれる少なくとも1種を含む合金からなるリード導体が用いられ、リチウムイオン電池の負極に接続されるリード基材としては、例えば、銅、ニッケルおよびこれらから選ばれる少なくとも1種を含む合金からなるリード導体が用いられる。
【0071】
[リチウムイオン電池]
本発明のリチウムイオン電池は、上述したタブリードを有する。
本発明のリチウムイオン電池は、具体的には、正極と、負極と、正極および負極の間のセパレータと、電解液と、これらを収容(すなわち封入)する外装部材とを有する。リチウムイオン電池は、前記正極に電気的に接続した正極タブリードと、前記負極に電気的に接続した負極タブリードとを有している。
【0072】
正極、負極およびセパレータとしては、従来公知の構成を採用することができる。正極および負極は、例えば、集電体と呼ばれる金属基材と、前記金属基材上に活性物質層とを有する。正極の金属基材には、例えば、アルミニウム、チタンおよびこれらから選ばれる少なくとも1種を含む合金からなる電極導電体が用いられる。負極の金属基材には、例えば、銅、ニッケルおよびこれらから選ばれる少なくとも1種を含む合金からなる電極導電体が用いられる。セパレータは、例えば、ポリオレフィン系の多孔膜で形成される。リチウムイオン電池における電極は、正極と負極とをセパレータを介して積層した積層電極群であることができる。
【0073】
電解液としては、電解質を有機溶媒に溶解させた非水電解液が挙げられる。電解質としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6等のリチウム化合物が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロドフランが挙げられる。
【0074】
リチウムイオン電池からその外部に電流を取り出すために、すなわち外部との電気的な接続を可能にするために、正極タブリードおよび負極タブリードは、外装部材内から外部に延びている。具体的には、正極の金属基材は、電気的に正極タブリードの一端に接続され、正極タブリードの他端は外装部材の外部に延びている。また、負極の金属基材は、電気的に負極タブリードの一端に接続され、負極タブリードの他端は外装部材の外部に延びている。
【0075】
本発明のリチウムイオン電池は、少なくとも一部のタブリードに本発明のタブリードが使用されている。外装部材からのタブリードの取出し部分において、リード基材の一部と外装部材とがタブリードフィルムの熱融着によって接合されている。タブリード取出し部分において外装部材のシール性が低下することがあるが、本発明では前記熱融着により、外装部材のシール性の低下を防止することができる。また、本発明では前記シールの接着強度が高く優れている。
【0076】
外装部材は、通常、金属層を有するラミネートシートからなる袋状の部材、すなわちラミネート包装材である。前記ラミネートシートは、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属からなる金属層と、前記金属層の両面に形成された樹脂フィルムとを有する。このような構成とすることで、外装部材の密封性が高まる。
【0077】
外装部材の最内層フィルム(電池内部側の前記樹脂フィルム)は、非水電解液と接触するため、シール部分から非水電解液が漏出することを防止する観点から、例えば、ヒートシール性に優れるポリプロピレンから形成される。外装部材の最外層フィルム(電池外部側の前記樹脂フィルム)は、前記金属層を外傷から保護する観点から、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルから形成される。
【0078】
外装部材は、矩形状に裁断された2枚の前記ラミネートシートの周縁のシール部を、ヒートシールすることにより形成することができる。例えば、2枚の前記ラミネートシートの矩形の周縁部3辺を、所望のシール幅だけヒートシールする。このようにして、3辺がシールされ、1辺が開いた、開口を有する外装部材が得られる。
【0079】
次に、開口を有する外装部材の内部に、前記開口を通して、リチウムイオン電池の構成部材とタブリードの一部とを収容する。次に、タブリードにおいてタブリードフィルムが形成された部分を、開口端部の外装部材によって挟み込み、ヒートシールする。このようにして、本発明のリチウムイオン電池を得ることができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例に何ら制約されない。
[物性の測定条件]
<メルトフローレート(MFR)>
プロピレン共重合体(A)のMFRは、ASTM D1238に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0081】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のMFRは、ASTM D1238に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
変性ポリオレフィン(C)のMFRは、ASTM D1238に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0082】
<密度>
密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して測定した。
<構成単位の含有割合>
共重合体中のプロピレン、ブテン等のα-オレフィン由来の構成単位、およびエチレン由来の構成単位の含有割合の定量化は、13C-NMRにより以下の装置および条件にて行った。
【0083】
日本電子(株)製JECX400P型核磁気共鳴装置を用い、溶媒として重オルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒を用い、試料濃度を60mg/0.6mL、測定温度を120℃、観測核を13C(100MHz)、シーケンスをシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅を4.62μ秒(45°パルス)、繰り返し時間を5.5秒、積算回数を8000回、29.73ppmをケミカルシフトの基準値とする条件を採用した。
【0084】
<融点>
融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、次のように測定した。試料5mg程度をアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で230℃まで加熱し、その試料を、完全融解させるために230℃で10分間保持した。次いで10℃/分で-20℃まで冷却し、-20℃で10分間置いた後、その試料を10℃/分で230℃まで再度加熱した。この2度目の加熱試験でのピーク温度を、融点(Tm)として採用した。
【0085】
<グラフト量>
不飽和カルボン酸および/またはその誘導体に由来する構造単位の量(グラフト量)は、赤外線吸収分析装置により、前記構造単位に由来するピーク(無水マレイン酸を用いた場合は1790cm-1)の強度を測定し、予め作成した検量線を用いて定量した。
【0086】
[使用したポリオレフィン]
実施例および比較例において使用したポリオレフィンを以下に示す。なお、特に断らない限り、これらポリオレフィンは、いずれも常法に従い重合を行い調製した。
【0087】
<プロピレン共重合体(A)>
・PP:ランダムポリプロピレン(MFR=7.0g/10分、密度=0.90g/cm3、エチレン含量=3モル%、プロピレン含量=96モル%、ブテン含量=1モル%、融点=140℃)
<エチレン・α-オレフィン共重合体(B)>
・EPR:エチレン・α-オレフィン共重合体(MFR=1g/10分、密度=0.87g/cm3、エチレン含量=80モル%、プロピレン含量=20モル%、融点=44℃)
・EBR-1:エチレン・α-オレフィン共重合体(MFR=7.0g/10分、密度=0.87g/cm3、エチレン含量=85モル%、ブテン含量=15モル%、融点53℃)
・EBR-2:エチレン・α-オレフィン共重合体(MFR=7.0g/10分、密度=0.89g/cm3、エチレン含量=90モル%、ブテン含量=10モル%、融点=81℃)
<変性ポリオレフィン(C)>
・変性PP-1:変性アイソタクティックホモポリプロピレン(MFR=100g/10分、密度0.90g/cm3、無水マレイン酸グラフト量=3.0wt%)
・変性PP-2:変性ランダムポリプロピレン(MFR=100g/10分、密度0.90g/cm3、プロピレン含量=95モル%、エチレン含量=5モル%、無水マレイン酸グラフト量=1.0wt%)
【0088】
[実施例1]
<組成物(Ia-1)の製造>
82質量部のPPと、10質量部のEBR-1と、8質量部の変性PP-1とを、1軸押出機を用いて230℃で溶融混練し、組成物(Ia-1)を得た。
【0089】
<複合体の製造と剥離強度>
Tダイ付き押出成形機により、得られた組成物(Ia-1)から厚み100μmのフィルムを成形した。得られたフィルムを厚み350μm、幅15mmのアルミシートと重ね、ヒートシーラーにて140℃、0.2MPaの条件で4秒間ヒートシールした。得られた複合体のアルミシートと組成物(Ia-1)からなるフィルムとの剥離強度(単位:N/15mm)を、引張試験機を使用して、180°ピール法にて、室温23℃下で測定した。クロスヘッドスピードは200mm/minとした。結果を表1に示す。
【0090】
[実施例2~5、比較例1~2]
表1に示す配合処方に従って組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で組成物を調製し、得られた組成物を用いて複合体を製造し、その剥離強度を測定した。結果を表1に示す。
【0091】
実施例および比較例で得られた組成物の物性は、以下の測定方法で測定した。
[1]引張試験
得られた組成物をプレス成形機により厚み2mmのプレスシートに成形した。このプレスシートを打ち抜いてASTM4号形ダンベル試験片を作製し、この試験片を用いてASTM D638に規定される方法に従い、測定温度23℃、引張速度50mm/分の条件で引張り試験を行ない、引張破断応力を測定した。
【0092】
[2]表面抵抗率
得られた組成物をプレス成形機により厚み2mmのプレスシートに成形した。このプレスシートから100mmφの試験片を作製し、この試験片を用いてJIS K6911に規定される方法に従い、測定温度23℃、湿度50%雰囲気下にて、500V印加の条件で表面抵抗率を測定した。
【0093】
【符号の説明】
【0094】
10…リード基材(金属層(II))
20…タブリードフィルム
21…組成物層(I)
22…ポリオレフィン樹脂層(III)
23…他の層(IV)
30…外装部材