(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】連通口用の仕切り枠セット
(51)【国際特許分類】
E04G 15/02 20060101AFI20220905BHJP
E04G 11/06 20060101ALI20220905BHJP
E04G 9/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
E04G15/02 Z
E04G11/06 A
E04G9/00 102
(21)【出願番号】P 2018232106
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】502424724
【氏名又は名称】小無田 利文
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小無田 利文
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-141123(JP,A)
【文献】実開昭62-203351(JP,U)
【文献】特開平09-100626(JP,A)
【文献】特開平10-060910(JP,A)
【文献】米国特許第05843324(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-19/00
E04G 25/00-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の基礎用コンクリートを打設する際に連通口予定位置の周囲に配置することで基礎用コンクリートの流入を阻止して基礎の立ち上がり部に連通口を形成するために使用される連通口用の仕切り枠セットであって、
前記基礎の立ち上がり部を形成するために対面配置する型枠の上に載置される天板と、前記天板と対向する底面に配置される所定長さの間隔保持部材と、前記天板の左右寄りに形成された前記基礎の立ち上がり部の厚み方向に延びるスリット内に嵌挿され、前記スリット内で保持されるとともに前記間隔保持部材の端部にその下端部内面が接することで垂直に起立させられる対面配置される前記型枠の間隔に対応した一対のせき板と、を有することを特徴とする連通口用の仕切り枠セット。
【請求項2】
前記天板を前記型枠上に固定する固定手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の連通口用の仕切り枠セット。
【請求項3】
前記せき板は両端位置に屈曲して形成された屈曲部を備えており、前記天板の前記スリットの両端に連接した位置には前記屈曲部を通過させるための屈曲部用通路が形成されていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の連通口用の仕切り枠セット。
【請求項4】
前記せき板は幅の異なる複数種類が用意され、前記屈曲部用通路は異なる幅の前記せき板の前記屈曲部が干渉せず配置できる幅を有していることを特徴とする請求項3に記載の連通口用の仕切り枠セット。
【請求項5】
前記スリットは前記天板の端部側が一部カットされて外方に開放されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の連通口用の仕切り枠セット。
【請求項6】
前記スリットは左右一方の側に複数が接近して平行に配置されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の連通口用の仕切り枠セット。
【請求項7】
複数が平行に配置された前記スリットのうちの少なくとも1つはアンカーボルトの干渉を避けるために前記天板に形成された透孔と交差していることを特徴とする請求項6に記載の連通口用の仕切り枠セット。
【請求項8】
前記天板には対面配置された前記型枠間を連結する間隔保持金具を係合する一対の第1の切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の連通口用の仕切り枠セット。
【請求項9】
前記天板には
、異なる幅となる前記型枠間に前記間隔保持金具を係合させるための
前記天板に形成された前記一対の第1の切り欠き部の間隔とは異なる間隔
となる一対の第2の切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の連通口用の仕切り枠セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば布基礎やベタ基礎等の基礎の立ち上がり部の途中に形成される連通口をコンクリート打設時に形成するための連通口用の仕切り枠セット等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から木造建築物の布基礎やベタ基礎等の基礎の立ち上がり部の途中には、例えば点検や配線・配管等のための連通口が形成される。連通口は一般に基礎用の型枠をセッティングしてその内部にコンクリートを打設する際に「せき板(堰板)」でコンクリートの流入を一部阻止することで形成される。このような連通口に関する先行技術の一例として特許文献1を示す。特許文献1には、連通口としての床下出入口22をせき板としての仕切り枠1、7で形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術(特許文献1に限らず)では、連通口を形成する予定位置において一々その連通口の間隔を計測し基礎用の型枠と一緒に仕切り枠1、7を配置することが必要になる。更に、仕切り枠1、7の位置決め後に仕切り枠1、7間に仕切り枠固定金具17を配置する。つまり、床下出入口22(連通口)ごとに仕切り枠1、7を含めた周辺の部材を計測しながらセッティングしていかなければならず面倒であった。また、せき板としての仕切り枠1、7がコンクリートに押圧されて傾いてしまう可能性もあり、確実にせき板を垂直に支持できることも求められていた。
本発明は、主として上記の課題等を解決した連通口用の仕切り枠セットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
手段1として、建築物の基礎用コンクリートを打設する際に連通口予定位置の周囲に配置することで基礎用コンクリートの流入を阻止して基礎の立ち上がり部に連通口を形成するために使用される連通口用の仕切り枠セットであって、前記基礎の立ち上がり部を形成するために対面配置する型枠の上に載置される天板と、前記天板と対向する底面に配置される所定長さの間隔保持部材と、前記天板の左右寄りに形成された前記基礎の立ち上がり部の厚み方向に延びるスリット内に嵌挿され、前記スリット内で保持されるとともに前記間隔保持部材の端部にその下端部内面が接することで垂直に起立させられる対面配置される前記型枠の間隔に対応した一対のせき板と、を有するようにした。
【0006】
このような連通口用の仕切り枠セットを使用すると、建築物の基礎用コンクリートを打設する際の連通口を形成する際のこれらセットの設置が容易であり、セットとしても嵩張ることがなく取り扱いにおいて有利である。
「建築物の基礎」とは本発明の趣旨から基礎に立ち上がり部を有し、その立ち上がり部の一部に出入りできる連通口を形成する場合である。基礎の概念には布基礎もベタ基礎も含む。
「天板」は型枠の上に載置される部材である。硬質で丈夫で耐候性があれば素材は例えば金属製でもプラスチックでも木材でもよい。軽量化のために必要な部分以外の肉をカットしてもよい。例えば天板中央位置に大きな透孔を形成するようにしてもよい。それによって透孔から型枠で挟まれた内部をのぞき込むことができ、内部の点検も容易になる。
「スリット」は細溝であって基礎の立ち上がり部の厚み方向に延びる構成である。「基礎の立ち上がり部の厚み方向」は言い換えれば型枠の面方向に直交する方向でもある。スリットは本発明の目的からせき板が挿入できて前後から支えて起立させられる構造であればせき板前面を支えなくともよく、ごく短い溝構造でもここにいう「スリット」の概念である。また、部分的に切れ目があっていくつかの部分に分かれていてもよい。
「間隔保持部材」は硬質で丈夫で耐候性があれば素材は例えば金属製でもプラスチックでも木材でもよい。形状もせき板の間隔を保持できる形状であれば問わない。
「せき板」は垂直に起立させられた状態で天板のスリット周縁と間隔保持部材の端部によって支えられるため、天板が載置される型枠の高さよりも長い。また、対面配置される型枠の間隔と同幅とされる。同幅としないと隙間から打設したコンクリートが連通口側に流入してしまうからである。そのため、一般にせき板は方形形状(主として長方形)に構成される。型枠の間隔が変更された場合にはせき板の幅の異なる種類がそれに応じて使用される。せき板は一枚のパーツで構成しても複数のパーツを組み合わせて構成してもどちらでもよい。
以上の語句の説明は以下の手段においても同様である。
【0007】
また、手段2として、前記天板を前記型枠上に固定する固定手段を備えているようにした。
天板を型枠上に固定することで連通口の位置がずれたり、せき板の垂直度がずれたりせず、確実に予定された連通口を形成することが可能となるからである。固定手段は例えばクランプ装置であって天板を型枠に対して締め付けるようにすることがよい。また、くさび部材を天板を型枠の間に打ち込むようにしてもよい。また、ボルトとナットのような締結具を使用して天板を型枠に固定してもよい。
また、手段3として、前記せき板は両端位置に屈曲して形成された屈曲部を備えており、前記天板の前記スリットの両端に連接した位置には前記屈曲部を通過させるための屈曲部用通路が形成されているようにした。
せき板をまったくの平板で構成することも可能であるが、同じ厚みであればこのように屈曲部を設けることで曲げ応力が向上するからである。屈曲部はせき板の左右位置に上下にわたって形成してもよく、部分的に屈曲部を設けるようにしてもよい。このように屈曲部を形成した場合にはその屈曲部を嵌挿させるための屈曲部用通路を天板に形成することがよい。
また、手段4として前記せき板は幅の異なる複数種類が用意され、前記屈曲部用通路は異なる幅の前記せき板の前記屈曲部が干渉せず配置できる幅を有しているようにした。
基礎の立ち上がり部の幅の規格は1つではなく建築物の大きさ等に応じていくつかの幅で作成されるものである。そのため、立ち上がり部の幅(つまり対面配置された型枠の間隔)に応じてせき板の幅も変わってくる。屈曲部はせき板の両端位置に形成されるため屈曲部の位置はせき板の幅が異なると延出される位置も異なってしまう。そのため、屈曲部用通路をこのように幅をもたせて構成することで、幅の異なるせき板であっても屈曲部が干渉することなく使用することが可能となる。
【0008】
また手段5として、前記スリットは前記天板の端部側が一部カットされて外方に開放されているようにした。
このように天板の端部側が一部カットされて外方に開放されていると、スリット内に嵌挿されたせき板に対してカットされた位置にレベル(垂直度測定器)をあててせき板が底面に対して垂直に起立しているかどうかを測定しやすく、また、測定した結果を見る際にも天板が邪魔になることがなくなる。
また、手段6として、前記スリットは左右一方の側に複数が接近して平行に配置されているようにした。
これによって1つのセットで様々な長さの連通口を形成することが可能となる。
また手段7として、複数が平行に配置された前記スリットのうちの少なくとも1つはアンカーボルトの干渉を避けるために前記天板に形成された透孔と交差しているようにした。
これによって、所定間隔で基礎の立ち上がり部に埋設されているアンカーボルトとの干渉を避けることができる。様々な長さの連通口を形成しない場合には天板は連通口位置に配置されるため、アンカーボルトとの干渉はないが、様々な長さ(幅)の連通口を形成する場合には最も短い長さの連通口を形成するよりも外側まで天板は長く構成されることとなる。その場合に天板がアンカーボルトと交差する位置関係となるケースがあるため、そのような場合に透孔を形成して干渉を避けることが可能となる。
【0009】
また手段8として、前記天板には対面配置された前記型枠間を連結する間隔保持金具を係合する一対の第1の切り欠き部が形成されているようにした。
基礎の立ち上がり部を形成しない連通口形成位置にも型枠が配置されるため、このように間隔保持金具を係合するための一対の第1の切り欠き部を設けることで連通口形成位置の型枠の形状維持が可能となる。
また手段9として、前記天板には異なる幅となる前記型枠間に前記間隔保持金具を係合させるための異なる間隔の一対の第2の切り欠き部が形成されているようにした。
これによって型枠間の間隔が変わって第1の切り欠き部が使用できない場合にも第2の切り欠き部を使用して間隔保持金具を係合させることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建築物の基礎用コンクリートを打設する際の連通口を形成する際にこれらセットの設置が容易に行え、セットとしても嵩張ることがなく取り扱いにおいて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態の仕切り枠セットの一部をなす天板の斜視図。
【
図2】同じ仕切り枠セットの一部をなすせき板の一部破断斜視図。
【
図3】(a)~(c)は基礎の立ち上がり部のコンクリート施工用の型枠と仕切り枠の組み立て状態を説明する説明図。
【
図4】(a)及び(b)は基礎の立ち上がり部のコンクリート施工用の型枠と仕切り枠の組み立て状態を説明する説明図。
【
図5】基礎の立ち上がり部の連通口付近を説明する斜視図。
【
図6】狭い間隔で対面配置した型枠の上にせき板を配置して異なる間隔のスリット間の寸法を説明する説明図。
【
図7】(a)~(c)は第1及び第4のスリットの設計手法を説明する説明図。
【
図8】(a)~(c)は第2及び第3のスリットの設計手法を説明する説明図。
【
図10】他の実施の形態の仕切り枠セットの一部をなす天板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態である連通口用の仕切り枠セットについて図面に基づいて説明する。以下、サイズは一例であって、他のサイズの部材とすることは自由である。
本実施の形態の連通口用の仕切り枠セットは天板1、せき板2、間隔保持部材としての底板3を主要な部材として有している。まず、天板1について説明する。
図1、
図3、
図6等に示すように、天板1は長方形形状のステンレス合金製の板材をプレス加工によって部分的に打ち抜いて加工成形した部材である。打ち抜かれた際の角部はすべて尖らないように丸く面取り状に形成されている。天板1の短辺側長さ(幅)は222mm、長辺側長さは645mmとされている。
【0013】
天板1には長さ方向左右寄りにせき板2を嵌挿させるための複数のスリット部4A~4Dが形成されている。本実施の形態では一方の側に第1のスリット部4Aが、他方の側に第2~第4のスリット部4B~4Dが形成されている。第1のスリット部4Aと他方の側の最も外側に配置される第4のスリット部4Dは同形状とされ鏡像対象となるように対向配置されている。第2のスリット部4Bと第3のスリット部4Cはそれぞれ異なる形状でかつ第1のスリット部4A(と、第4のスリット部4D)とも異なる形状で構成されている。
第1のスリット部4A(と、第4のスリット部4D)は次のように形成されている。第1のスリット部4A(と、第4のスリット部4D)はそれぞれ天板1の短辺側端部1aに隣接して配置されている。これらスリット部4A、4Dの形状は複雑であるため形状の理解を容易とするために形状が完成するまでの過程を分解して説明する。まず、
図7(a)に示すように、スリット部4A、4Dの基本形状として天板1の長辺側端部1bと直交する等幅(本実施の形態では5mm)かつ長辺側端部1bから等間隔で配置された所定長さ(本実施の形態では150mm)の直線状のベーススリットLがデザインされている。ベーススリットLは第1の直線縁Laと第2の直線縁Lbが平行に対向配置されることとなる。このベーススリットLに対して短辺側端部1aの中央寄り部分を所定長さ(本実施の形態では90mm)切り欠くとベーススリットLを構成していた直線縁Laが外方に露出させられる(
図7(b)の状態)。そして、
図7(c)のようにベーススリットLの両端位置にベーススリットLに対して直角に折れ曲がったカーブを形成する屈曲部用通路としての長方形通路5を形成するとスリット部4A、4Dの形状となる。長方形通路5は外縁5aで後述する150mmの厚みの基礎の立ち上がり部18と面一となり、内縁5bで後述する120mmの厚みの基礎の立ち上がり部18と面一となる。このとき、長方形通路5は切り欠かれた部分までは及ばないように、つまり、せき板2を保持する部分を残すため第1の直線縁Laと対向する第2の直線縁Lb部分を残すような形状とされる。
【0014】
第2のスリット部4Bと第3のスリット部4Cも同様に形状が完成するまでの過程を分解して説明する。
図8(a)に示すように、第2のスリット部4Bは第4のスリット部4Dと同様のベーススリットLがデザインされ、
図8(b)のようにベーススリットLの両端位置にベーススリットLに対して直角に折れ曲がったカーブを形成する屈曲部用通路としての長方形通路5が形成された形状とされている。第3のスリット部4Cは、この
図8(b)のデザインの透孔に対して、この
図8(c)に示すように天板1の幅方向中央にベーススリットLと交差するように正方形形状のアンカーボルト用透孔6が形成された形状とされている。
図6に示すように、本実施の形態では、第1のスリット部4A側と第2のスリット部4Bの第1の直線縁Laの間隔は500mmとされている。この間隔が後述する一例としての連通口19の開口幅とされる。また、第1のスリット部4A側と第3のスリット部4Cの第1の直線縁Laの間隔は550mmとされている。第1のスリット部4A側と第4のスリット部4Dの第1の直線縁Laの間隔は600mmとされている。各スリット部4A~4Dのベーススリットは等間隔に配置され、かつすべて相互に平行で同じ長さに構成されている。
【0015】
天板1の第1のスリット部4Aと第2~第4のスリット部4B~4Dとに挟まれた領域には長方形形状に打ち抜き形成された大きな透孔7が形成されている。透孔7のサイズは本実施の形態では縦・横360mm×133mmとされている。透孔7を構成する内側縁部において左右の短辺側の縁部7aに寄った位置の長辺側の縁部7bにはそれぞれ対向する一対の第1の切り欠き部8が形成されている。第1の切り欠き部8は方形に形成されている。天板1の一対の長辺側端部1bには背中合わせになる二箇所の位置にはそれぞれ一対の第2の切り欠き部9が形成されている。第2の切り欠き部9も方形に形成されている。第2の切り欠き部9は第1の切り欠き部8と配置位置が一直線とはならないずれた位置に形成されている。
【0016】
次にせき板2について説明する。
図2~
図4に示すように、せき板2は両端に直角に折れ曲がった屈曲部10が長手方向に沿って形成されたチャネル状の外観形態をなすステンレス合金製の板材からなる長尺の部材である。せき板2の幅は第1~第4のスリット部4A~4Dの横幅と一致し150mmとされている(スリット部4A~4Dと干渉せず通過させるためにごくわずかに短い)、厚みはベーススリットLの厚みよりも若干小さく3mmとされている。
次に底板3について説明する。
図3及び
図4に示すように、底板3は直方体形状のプラスチック製の硬質の部材である。本実施の形態では500mmの長さとされている。
【0017】
次に、
図3~
図5に基づいてこれら天板1、せき板2、底板3を使用した連通口用の仕切り枠のセッティング方法の一例について説明する。
まず、
図3(a)に示すように、基礎の立ち上げ部を形成する際の常法に従って、基礎の立ち上げ部予定位置に配設された鉄筋13を挟むように型枠15を設置していく。この段階で床面Tにはコンクリートがすでに打設されている。型枠15は所定間隔(150mmの間隔)となるように平行に対向設置する。この間隔において型枠15の上面フランジ15aの縁の間隔は天板1の幅と一致する(そのように天板1が構成されている。型枠間隔に応じてこの幅は設計される)。
そして、まず、連通口を形成する予定位置に底板3を配置する。底板3は対面配置された型枠15の中央付近(厳密に中央でなくともよい)に型枠15の面方向に長手方向が平行となるように配置される。次いで、
図3(b)及び
図4(a)のように底板3の上部の型枠15の上面に天板1を載せる。天板1の長辺側端部1bは型枠15の上面フランジ15aの縁と一致するように配置される。透孔7の縁部7bに形成された第1の切り欠き部8は型枠15よりも内側に配置される。
このとき、
図4(a)に示すように、第1のスリット部4Aと第2のスリット部4Bの第1の直線縁Laは
図3(b)及び
図4(b)のように底板3の長手方向端面3aと垂直方向において位置が一致することが求められる。但し、これは最終的に基礎のコンクリートを打設する際に決まっていればよいため、この段階においては概ね垂直と目視で認められる程度の垂直度でよい。
【0018】
このように天板1と底板3を配置して連通口位置が定まった状態で、
図3(c)、
図4(a)(b)のように第1のスリット部4Aと第2のスリット部4B内にせき板2を嵌挿する。せき板2の屈曲部10内面上方寄りは長方形通路5の外縁5aと接し、せき板2の屈曲部10内面下方寄りは底板3の長手方向端面3aに接する。このようにせき板2は上下で保持されることでコンクリートが打設された際の圧力に耐えることができる。せき板2の幅は対向する型枠15間と一致するため対向する連通口予定位置の空間はせき板2によって塞がれることとなる。ここで、図示しないレベルをせき板2の外側から、例えば、
図4(b)の矢印付近にあてがい、その数値を見て天板1や天板1の位置を微調整し、せき板2が垂直となるように最終調整をする。
せき板2の垂直が確認できた段階で
図3(c)のようにクランプ16で天板1を型枠15に対して固定し、また型枠15の間隔を保持する間隔保持金具17を第1の切り欠き部8位置に連結する。
図9に示すように、間隔保持金具17は本体17a裏面に爪金具20が固着された部材である。爪金具20は本体17aの長手方向端部寄りに鏡像対象となるように固定されている。爪金具20は短爪20Aと長爪20Bを備え、対向する第1の切り欠き部8内側にそれぞれ短爪20Aを、対向する型枠15の上面フランジ15aの縁にそれぞれ長爪20Bを係止させ、それら爪20A、20Bで挟むことで型枠15の間隔を保持する。尚、図示しないがこの連通口予定位置以外でも型枠15は間隔保持金具17(及び他の保持部材で)で保持される。
このようにしてセッティングされた連通口用の仕切り枠の周囲の型枠15内にコンクリートを打設する。コンクリートはせき板2にせき止められて連通口予定位置内に浸入することがないため、基礎の立ち上げの一部にコンクリートが及ばない部分、つまり連通口が形成されることとなる。そして、コンクリート養生後に型枠15等と一緒に天板1、せき板2、底板3等をすべて取り外す。これによって
図5に示すような150mmの厚みの基礎の立ち上がり部18の一部に500mmの開口部サイズの連通口19が形成されることとなる。
【0019】
次に上記セッティングのバリエーションについて簡単に説明する。
上記のようにこの実施の形態では第1のスリット部4Aと第2のスリット部4Bの間隔(つまり500mmサイズ)で連通口19の開口部が設定された。
図6に基づいて天板1の第2又は第3のスリット部4C、4Dを使用して異なるサイズの開口部幅の連通口19を形成させる場合について説明する。
上記と同様にせき板2を第1のスリット部4Aに嵌挿し、これを基準として550mm離間した位置にある第3のスリット部4Cに上記と同じせき板2を嵌挿する。このとき使用する底板3は長さ550mmのものとされる。この間隔でセッティングすれば連通口19の開口部幅は550mmとなる。
上記と同様にせき板2を第1のスリット部4Aに嵌挿し、これを基準として600mm離間した位置にある第4のスリット部4Dに上記と同じせき板2を嵌挿する。このとき使用する底板3は長さ600mmのものとされる。この間隔でセッティングすれば連通口19の開口部幅は600mmとなる。これらは連通口19の間口方向のバリエーションの例である。
【0020】
上記では対向する型枠15は150mmの間隔で配置されていたが、
図6のように型枠15がより狭い間隔で(この図では120mm)で配置されている場合にも同じ天板1を使用することが可能である。つまり、基礎の立ち上がり部18の幅(厚み)の違いに対応することができる。その場合には
図2で示すせき板2の幅は120mmとされる。120mm幅のせき板2を使用するとせき板2はスリット部4A~4Dに嵌挿された際に内縁5bと接する。各スリット部4A~4Dの長方形通路5間の間隔は最も外方で150mmとされ、最も内方で114mmとされている。横幅150mmサイズのせき板2も横幅120mmサイズのせき板2もスリットに嵌挿された状態で対向する型枠15間にぴったりと収まることとなる。
一方、
図6のように型枠15の間隔が120mmでは第1の切り欠き部8は間隔保持金具17の取り付けには対応できない。型枠15の上面フランジ15aの縁は天板1の長辺側端部1bよりも内側に配置されてしまっているからである。そのため、間隔保持金具17は型枠15内面に短爪20Aを、第2の切り欠き部9に長爪20Bをそれぞれ係止させて型枠15の間隔を保持することができる。
図3(b)における第1の切り欠き部8から天板1の長辺側端部1bまでの距離は第2の切り欠き部9から
図6位置の型枠15内面までの距離は一致するため、同じ間隔保持金具17を使用することができる。本実施の形態では第1の切り欠き部8と第2の切り欠き部9の深さを調整して同じ間隔保持金具17を使用することができるようにしたが、2つの爪の間隔の異なる間隔保持金具や間隔保持金具の2つの爪の間隔が可変であるタイプの場合には、上記以外の任意の幅(厚み)の型枠15の間隔に対応することができる。
【0021】
以上のような実施の形態によって次のような効果が奏される。
(1)天板1の第1のスリット部4Aと第4のスリット部4Dの間隔と底板3は固定化されているため、現場で計測しなくとも予定された開口幅の連通口19を作ることができる。
(2)決まったサイズの天板1にせき板2を挿し込むだけで連通口用の仕切り枠のセッティングができるため、作業効率が向上する。
(3)天板は2種類の厚みの立ち上がり部18に対応して150mmサイズと120mmサイズのせき板2を使用することができ、せき板2の屈曲部10はいずれのサイズでも長方形通路5内の外縁5aと内縁5bに当接して保持されるため、安定性がよい。また、このような屈曲部10を設けているため打設したコンクリートの流入も防止しやすい。また、せき板2は屈曲部10が形成されているため、曲げに強くコンクリート打設の際に曲がりにくい。
(4)天板1は複数の異なる位置にスリット部4A~4Dが形成され、せき板2の間隔を容易に変更することが可能となっているため、施工条件が変わった場合でも同じ天板1でその条件に応じた開口部幅(間口)の連通口19を形成することが可能である。
(5)第1の切り欠き部8とは異なる位置に第2の切り欠き部を設けているため、天板1は異なる厚みとなる基礎の立ち上がり部18を構築するための型枠15の間隔変更があっても同じ間隔保持金具17を使用することができる。
(6)天板1の第1のスリット部4Aと第4のスリット部4Dは短辺側端部1aがカットされているため、せき板2を嵌挿した際に垂直度を測定するためのレベルをせき板2に当接して数値を読み取る際に天板1がそのレベル接地の邪魔になったり読み取りの邪魔になったりすることがない。
(7)一般に基礎の立ち上がり部18の上面に突設されるアンカーボルトは連通口19位置と連通口19に近接した位置には配置されないが、設計上連通口19に隣接した位置には配置される可能性がある。そうすると本実施の形態の天板1のように他方に複数のスリット部4B~4Dの領域を設けることによっていずれかのスリットがアンカーボルトと干渉してしまい天板1を設置できなくなる可能性がある。本実施の形態の天板1には複数のスリット部4B~4Dの領域の途中(中間位置)にアンカーボルト用透孔6を設けているためアンカーボルトとの干渉を避けることが可能となる。
【0022】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記実施の形態の天板1やせき板2や底板3の形状や寸法や材質等の条件は一例であり、本発明の目的を実行できる限り変更した態様で構成することは自由である。
・上記実施の形態の天板1のスリット部4A~4Dの形状や寸法は一例である。本発明の目的を実行できる限り変更した態様で構成することは自由である。
・上記では間隔保持部材としての底板3は直方体形状であったが、両端に配置される一対のせき板2を保持できるのであれば、特に形状や材質は限定されるものではない。
・上記では
図7、
図8に記載された順でスリット部4A~4Dを想定したが、これはスリット形状の理解のために複数の形状を組み合わせて説明したものであり、他の類似スリット形状をこのような順によらずデザインすることも自由である。
・上記において天板1、せき板2、底板3の施工順序は一例であり上記に限定されるものではない。例えば天板1を一番先に型枠15上に配置したり、せき板2を天板1に嵌挿させた状態で型枠15上に配置するようにしてもよい。クランプ16や間隔保持金具17も同様である。
・第2~第4の三つのスリット部4B~4Dは等間隔に配置されていたが等間隔でなくともよい。また、二つあるいは四つ以上のスリットでこの領域が構成されていてもよい。
・アンカーボルト用透孔6は第3のスリット部4Cと交差する位置に形成されていたが、天板1の長さや複数のスリットの数や間隔によってはアンカーボルト用透孔6の位置をずらしたり、数を増やしたりすることは自由である。
・固定手段としてはクランプ16以外の手段でも天板1を型枠15に対して固定できるものであればよい。例えば、天板1と型枠15との間にクサビ穴を設け、クサビを打ち込んだり、例えばボルトを天板1と型枠15間に連通させたボルト穴に挿通しナットを使用して締め付けるようにしてもよい。
・上記では天板1の片側に第2~第4のスリット部4B~4Dを設けるようにしていたが、このように複数のスリットを設けず、
図10に示すように、第1のスリット部4Aと鏡像対象となる他方の端位置に第1のスリット部4Aと同形状のスリットを1つだけ設けるように構成した天板21としてもよい。これによって天板21は単一の幅にのみ対応することとなるため、より簡便で軽量化することとなる。尚、
図10においては実施の形態の天板1と同じ構成については同じ番号を付すことで説明を省略する。
【0023】
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としてもよいし、その部材の部分としてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1…天板、2…せき板、3…間隔保持部材としての底板、4A~4D…スリットを有するスリット部、15…型枠、18…立ち上がり部、19…連通口。