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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20220905BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
E02F9/20 Z
F02D29/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018236553
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020097851
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平田 政貴
(72)【発明者】
【氏名】川島 宏治
(72)【発明者】
【氏名】水野 博之
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-139930(JP,A)
【文献】特開2010-173599(JP,A)
【文献】特開2006-121784(JP,A)
【文献】特開2013-203116(JP,A)
【文献】特開2012-136202(JP,A)
【文献】特開2002-227694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00- 9/28
F02D 29/00-29/06
H02P 4/00
H02P 25/08-25/098
H02P 29/00-31/00
H02P 6/00- 6/34
B60W 10/06
B60W 20/00-20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンをアシストするアシストモータと、
前記エンジンの回転軸と、前記アシストモータの回転軸とを所定の減速比で接続する減速機と、
前記エンジンの燃料噴射を制御する燃料噴射制御部と、
前記アシストモータの回転軸の回転角を推定する回転角推定部と、
前記燃料噴射制御部から出力される前記エンジンの回転軸の回転に関する情報に基づいて、前記回転角推定部で推定された回転角推定値を検証する検証部と、を備え、
前記検証部は、前記エンジンの回転軸の回転に関する情報として前記エンジンの1回転中に1以上の回転角度の通過を検出した通過検出信号を前記燃料噴射制御部から受信して、前記通過検出信号を検出したタイミングと、前記回転角推定部で推定された回転角推定値が所定の回転角となったタイミングとの時間差に基づいて、前記回転角推定値を検証する、建設機械。
【請求項2】
エンジンと、
前記エンジンをアシストするアシストモータと、
前記エンジンの回転軸と、前記アシストモータの回転軸とを所定の減速比で接続する減速機と、
前記エンジンの燃料噴射を制御する燃料噴射制御部と、
前記アシストモータの回転軸の回転角を推定する回転角推定部と、
前記燃料噴射制御部から出力される前記エンジンの回転軸の回転に関する情報に基づいて、前記回転角推定部で推定された回転角推定値を検証する検証部と、を備え、
前記検証部は、前記エンジンの回転軸の回転に関する情報として前記エンジンの1回転中に1以上の回転角度の通過を検出した通過検出信号を前記燃料噴射制御部から受信して、前記通過検出信号を受信したタイミングで前記回転角推定値を検証する、建設機械。
【請求項3】
エンジンと、
前記エンジンをアシストするアシストモータと、
前記エンジンの回転軸と、前記アシストモータの回転軸とを所定の減速比で接続する減速機と、
前記エンジンの燃料噴射を制御する燃料噴射制御部と、
前記アシストモータの回転軸の回転角を推定する回転角推定部と、
前記燃料噴射制御部から出力される前記エンジンの回転軸の回転に関する情報に基づいて、前記回転角推定部で推定された回転角推定値を検証する検証部と、を備え、
前記燃料噴射制御部は、前記エンジンの回転軸の回転に関する情報として、前記エンジンの1回転中に1以上の回転角度の通過を検出した通過検出信号、前記通過検出信号に基づき生成された前記エンジンの回転軸の回転角、および前記通過検出信号に基づき生成された前記エンジンの回転軸の回転速度、のうち複数を前記検証部に出力し、
前記検証部は、前記通過検出信号を検出したタイミングと、前記回転角推定値が所定の回転角となったタイミングとの時間差に基づく前記回転角推定値の検証と、
前記エンジンの回転軸の回転角から得られる前記アシストモータの回転軸の回転角検出値と、前記回転角推定値との差に基づく前記回転角推定値を検証と、
前記エンジンの回転軸の回転速度から得られる前記アシストモータの回転軸の回転速度検出値と、前記回転角推定値から得られる回転速度推定値との差に基づいて、前記回転角推定値を検証と、のうち受信した複数の前記エンジンの回転軸の回転に関する情報に応じて複数種類の検証を行う、建設機械。
【請求項4】
前記回転角推定部は、
前記アシストモータへの電流及び印加電圧に基づいて、前記アシストモータの回転軸の回転角を推定する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド型の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプの駆動力源であるエンジンをアシストするアシストモータや、上部旋回体を旋回駆動する旋回モータ等を備えるハイブリッド型の建設機械が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エンジンと、エンジンをアシストするための動力を生成する電動機と、電動機の駆動を制御するための情報を検出する電動機情報検出部(磁極位置センサ)と、電動機情報検出部が検出する情報に基いて電動機の駆動を制御する電動機制御部と、を備える、動力生成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-75075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アシストモータの回転角を検出するセンサを取り付ける代わりに、回転角を推定してアシストモータを制御するセンサレス制御技術がある。しかし、推定された回転角と実際の回転角との間に誤差が拡大すると、好適にアシストモータを制御できなくなるおそれがある。このため、センサレス制御技術においては、アシストモータの制御中に回転角推定値が好適に推定されているか否かを検出することが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、アシストモータの回転角推定値が好適に推定されているか否かを検出することができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様の建設機械は、エンジンと、前記エンジンをアシストするアシストモータと、前記エンジンの回転軸と、前記アシストモータの回転軸とを所定の減速比で接続する減速機と、前記エンジンの燃料噴射を制御する燃料噴射制御部と、前記アシストモータの回転軸の回転角を推定する回転角推定部と、前記燃料噴射制御部から出力される前記エンジンの回転軸の回転に関する情報に基づいて、前記回転角推定部で推定された回転角推定値を検証する検証部と、を備え、前記検証部は、前記エンジンの回転軸の回転に関する情報として前記エンジンの1回転中に1以上の回転角度の通過を検出した通過検出信号を前記燃料噴射制御部から受信して、前記通過検出信号を検出したタイミングと、前記回転角推定部で推定された回転角推定値が所定の回転角となったタイミングとの時間差に基づいて、前記回転角推定値を検証する
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アシストモータの回転角推定値が好適に推定されているか否かを検出することができる建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るショベルの一例を示す側面図。
図2】本実施形態に係るショベルの駆動系を中心とする構成の一例を示すブロック図。
図3】燃料噴射制御部の構成ブロック図。
図4】燃料噴射制御部から出力される信号の一例を示すグラフ。
図5】インバータの制御を説明するブロック図。
図6】検証部による処理を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0011】
本実施形態に係る建設機械としてのショベルの基本構成について、図1から図2を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るショベルの一例を示す側面図である。
【0012】
本実施形態に係るショベルは、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回可能に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、作業装置としてのブーム4、アーム5、及びバケット6と、オペレータが搭乗するキャビン10を備える。
【0013】
下部走行体1は、例えば、左右1対のクローラを含み、それぞれのクローラが走行油圧モータ1A,1B(図2参照)で油圧駆動されることにより、自走する。
【0014】
上部旋回体3は、後述する旋回用電動機21(図2参照)により電気駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
【0015】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0016】
キャビン10は、上部旋回体3の前部左側に搭載される。キャビン10は、例えば、シリコンオイル等を充填する液封マウント等の制振構造を介して上部旋回体3の旋回フレーム(不図示)に搭載される。
【0017】
図2は、本実施形態に係るショベルの駆動系を中心とする構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
尚、図中、機械的動力ラインは二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御ラインは細い実線でそれぞれ示される。
【0019】
まず、本実施形態に係るショベルの油圧駆動系は、エンジン11と、減速機13と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17を含む。また、本実施形態に係る油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1A,1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等を含む。
【0020】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、上部旋回体3の後部に搭載される。エンジン11は、後述するエンジンコントローラ30Cによる制御の下、予め設定される目標回転数で定回転する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンであり、減速機13を介してメインポンプ14、パイロットポンプ15を駆動する。また、エンジン11は、減速機13を介して電動発電機12を駆動し、電動発電機12に発電させる。
【0021】
エンジン11には、燃料噴射制御部200および燃料噴射部材250が設けられている。
【0022】
図3は、燃料噴射制御部200の構成ブロック図である。
【0023】
燃料噴射制御部200は、エンジンコントローラ(ECU)30Cと、クランク角センサ210と、位相同期回路(PLL;phase locked loop)220と、を有している。
【0024】
クランク角センサ210は、エンジン11のクランク軸11Aの回転角を検出するためのセンサである。クランク角センサ210は、例えば、クランク軸11Aが所定の回転角(例えば、上死点)を通過すると、図4(a)に示すように回転角検出値(通過検出信号)を出力する。この通過検出信号により、クランク軸11Aが所定の回転角となったことを検出することができる。
【0025】
なお、図4(a)に示す例では、クランク軸11Aが1回転する毎に通過検出信号が1回出力されるものとして図示しているが、これに限られるものではない。例えば、エンジン11は4気筒エンジンであって、各シリンダ(図示せず)において所定の回転角(例えば、上死点)に到達すると、通過検出信号を出力するようにクランク角センサ210を設けてもよい。これにより、図4(b)に示すように、クランク軸11Aが90°回転する毎に通過検出信号が出力される構成としてもよい。
【0026】
位相同期回路220は、クランク角センサ210から入力される周期的な信号(図4(a)及び図4(b)参照)に基づいて、位相が同期した信号を出力する。これにより、位相同期回路220は、図4(c)に示すように、回転角検出値を出力することができる。また、燃料噴射制御部200は、回転速度演算部(図示せず)を有していてもよい。回転速度演算部は、位相同期回路220から出力された回転角検出値に基づいて、図4(d)に示すように、回転速度検出値を出力することができる。
【0027】
エンジンコントローラ30Cは、クランク角センサ210の検出値に基づいて、燃料噴射部材250を制御する。燃料噴射部材250は、エンジンコントローラ30Cに制御され、エンジン11のシリンダに燃料を噴射する。
【0028】
図2に戻り、減速機13は、上部旋回体3の後部に搭載され、エンジン11及び後述する電動発電機12が接続される2つの入力軸と、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が直列に同軸接続される1つの出力軸を有する。減速機13は、エンジン11及び電動発電機12の動力を所定の減速比でメインポンプ14及びパイロットポンプ15に伝達することができる。また、減速機13は、エンジン11の動力を所定の減速比で、電動発電機12とメインポンプ14及びパイロットポンプ15とに分配して伝達することができる。このため、エンジン11のクランク軸11Aと、電動発電機12の回転軸12Aとは、所定の減速比で接続されている。
【0029】
メインポンプ14(油圧ポンプの一例)は、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ライン16を通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、エンジン11、或いは、エンジン11及び電動発電機12により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、後述するショベルコントローラ30Aによる制御の下、レギュレータ(不図示)が斜板の角度(傾転角)を制御することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量(吐出圧)を制御することができる。
【0030】
コントロールバルブ17は、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26に対する操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ライン16を介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、油圧アクチュエータである走行油圧モータ1A(右用),1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に供給可能に構成される。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する複数の油圧制御弁(方向切換弁)を含むバルブユニットである。
【0031】
また、本実施形態に係る電気駆動系は、電動発電機12と、電流センサ12s1と、電圧センサ12s2と、旋回用電動機21と、旋回減速機24と、電流センサ21sと、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23を含む。
【0032】
尚、本実施形態に係るショベルは、電気駆動系として、エンジン11をアシストする電動発電機12と、上部旋回体3を旋回駆動する旋回用電動機21の双方を備えるが、何れか一方を備える態様であってもよい。
【0033】
電動発電機12(アシストモータの一例)は、油圧駆動系に対するアシスト動力源であり、上部旋回体3の後部に搭載される。電動発電機12は、インバータ18Aを介してキャパシタ19を含む蓄電系120と接続され、インバータ18A(駆動装置の一例)を介してキャパシタ19や旋回用電動機21から供給される三相交流電力で力行運転し、減速機13を介してメインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。また、電動発電機12は、エンジン11により駆動されることにより発電運転を行い、発電電力をキャパシタ19や旋回用電動機21に供給することができる。電動発電機12の力行運転と発電運転との切替制御は、後述するハイブリッドコントローラ(HBコントローラ)30Bによりインバータ18Aが駆動制御されることにより実現される。
【0034】
電流センサ12s1は、電動発電機12の3相(U相、V相、W相)のそれぞれの電流を検出する。電流センサ12s1は、例えば、電動発電機12とインバータ18Bの間の電力経路に設けられる。電流センサ12s1は、電動発電機12の3相それぞれの電流に対応する検出信号をHBコントローラ30Bに送信する。
【0035】
電圧センサ12s2は、電動発電機12の3相(U相、V相、W相)のそれぞれの印加電圧を検出する。電圧センサ12s2は、例えば、電動発電機12とインバータ18Bの間の電力経路に設けられる。電圧センサ12s2は、電動発電機12の3相それぞれの印加電圧に対応する検出信号をHBコントローラ30Bに送信する。
【0036】
旋回用電動機21は、下部走行体1と上部旋回体3とを接続する旋回機構2に設けられ、HBコントローラ30Bによる制御の下、上部旋回体3を旋回駆動する力行運転、及び回生電力を発生させて上部旋回体3を旋回制動する回生運転を行う。旋回用電動機21は、インバータ18Bを介して蓄電系120に接続され、インバータ18Bを介してキャパシタ19や電動発電機12から供給される三相交流電力により駆動される。また、旋回用電動機21は、インバータ18Bを介して、回生電力をキャパシタ19や電動発電機12に供給する。これにより、回生電力で、キャパシタ19を充電したり、電動発電機12を駆動したりすることができる。旋回用電動機21の力行運転と回生運転との切替制御は、HBコントローラ30Bによりインバータ18Bが駆動制御されることにより実現される。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。
【0037】
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aと接続され、旋回用電動機21の出力(トルク)を所定の減速比で減速させることにより、トルクを増大させて、上部旋回体3を旋回駆動する。即ち、力行運転の際、旋回用電動機21は、旋回減速機24を介して、上部旋回体3を旋回駆動する。また、旋回減速機24は、上部旋回体3の慣性回転力を増速させて旋回用電動機21に伝達し、回生電力を発生させる。即ち、回生運転の際、旋回用電動機21は、旋回減速機24を介して伝達される上部旋回体3の慣性回転力により回生発電を行い、上部旋回体3を旋回制動する。
【0038】
電流センサ21sは、旋回用電動機21の3相(U相、V相、W相)のそれぞれの電流を検出する。電流センサ21sは、例えば、旋回用電動機21とインバータ18Bの間の電力経路に設けられる。電流センサ21sは、旋回用電動機21の3相それぞれの電流に対応する検出信号をHBコントローラ30Bに送信する。
【0039】
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転位置(回転角)等を検出する。レゾルバ22は、検出した回転角に対応する検出信号をコントローラ30に送信する。
【0040】
メカニカルブレーキ23は、HBコントローラ30Bによる制御の下、上部旋回体3(具体的には、旋回用電動機21の回転軸21A)に対して、機械的に制動力を発生させ、上部旋回体3を旋回制動すると共に、上部旋回体3の停止状態を維持させる。
【0041】
また、本実施形態に係るショベルの蓄電系120は、キャパシタ19と、DCバス100と、昇降圧コンバータ110を含み、例えば、電気駆動系のインバータ18A,18Bと共に、上部旋回体3の右側前部に搭載される。
【0042】
キャパシタ19は、電動発電機12、旋回用電動機21に電力を供給すると共に、電動発電機12、旋回用電動機21の発電電力を充電する蓄電装置の一例である。
【0043】
DCバス100は、インバータ18A,18Bと昇降圧コンバータ110との間に配設され、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。
【0044】
昇降圧コンバータ110は、電動発電機12、及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス100の電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える。昇降圧コンバータ110の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス100の電圧検出値、キャパシタ19の電圧検出値、及びキャパシタ19の電流検出値に基づき、HBコントローラ30Bにより実現される。
【0045】
また、本実施形態に係るショベルの操作系は、パイロットポンプ15、操作装置26、圧力センサ29等を含む。
【0046】
パイロットポンプ15は、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットライン25を介して操作装置26にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、エンジン11、或いはエンジン11及び電動発電機12により駆動される。
【0047】
操作装置26は、レバー26A,26Bと、ペダル26Cを含む。操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータが各動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、各動作要素を駆動する各油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1A,1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等)や電動アクチュエータ(旋回用電動機21等)の操作を行うための操作入力手段である。操作装置26(レバー26A,26B、及びペダル26C)は、油圧ライン27を介して、コントロールバルブ17にそれぞれ接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じたパイロット信号(パイロット圧)が入力される。そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26における操作状態に応じて、各油圧アクチュエータを駆動することができる。また、操作装置26は、油圧ライン28を介して圧力センサ29に接続される。
【0048】
圧力センサ29は、上述の如く、油圧ライン28を介して操作装置26と接続され、操作装置26の二次側のパイロット圧、即ち、操作装置26における各動作要素の操作状態に対応するパイロット圧を検出する。圧力センサ29は、ショベルコントローラ30Aに接続され、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じた圧力信号(圧力検出値)がショベルコントローラ30Aに入力される。
【0049】
また、本実施形態に係るショベルの制御系は、ショベルコントローラ30A、HBコントローラ30B等を含む。
【0050】
ショベルコントローラ30Aは、HBコントローラ30Bを含む各種コントローラ(制御装置)と連携し、ショベルの駆動制御を行う。例えば、ショベルコントローラ30Aは、HBコントローラ30Bを中心とする各種コントローラとの双方向通信に基づき、ショベル全体(ショベルに搭載される各種機器)の動作を統合的に制御してよい(全体制御)。また、例えば、ショベルコントローラ30Aは、HBコントローラ30Bを中心とする各種コントローラとの双方向通信に基づき、全体制御に関する情報(各種センサの検出値、各種コントローラの制御信号等)を統合的に取得してもよい。また、例えば、ショベルコントローラ30Aは、統合的に取得した情報に基づき、エンジン11の燃料タンク(不図示)内の燃料残量、選択還元型の排気ガス処理装置(不図示)に利用される処理剤(尿素水)の貯蔵タンク内の尿素水残量、エンジン11の水温及び油温、作業装置の姿勢(ブーム4、アーム5、バケット6の上部旋回体3に対する位置、角度)等を演算する機能を有してよい。また、例えば、ショベルコントローラ30Aは、上述の各種演算結果に基づき、ショベルの走行状態、旋回状態、掘削状態等を判定する機能を有してもよい。また、例えば、ショベルコントローラ30Aは、HBコントローラ30Bを中心とする各種コントローラや直接接続される各種機器から故障や異常の発生に関する情報(異常発生を表す信号や異常の有無を判定するための検出値、制御信号等)を統合して、異常処理判定を行う機能を有してもよい。また、例えば、ショベルコントローラ30Aは、操作装置26に対する操作状態(操作量、操作方向)に関する情報(圧力センサ29の検出値)に基づき、作業装置(ブーム4、アーム5、バケット6)や上部旋回体3を駆動させる駆動指令を生成してよい。
【0051】
具体的には、ショベルコントローラ30Aは、上述の統合的に取得した各種情報、各種演算結果、各種判定結果、及び駆動指令等をHBコントローラ30Bに送信してよい。より具体的には、ショベルコントローラ30Aは、圧力センサ29から入力される検出値を含む駆動指令をHBコントローラ30Bに送信することにより、操作装置26に対するオペレータの操作状態に応じた電動発電機12及び旋回用電動機21の動作を実現してよい。また、ショベルコントローラ30Aは、HBコントローラ30Bから電気駆動系の各種情報(例えば、電動発電機12、インバータ18A,18B、キャパシタ19、旋回用電動機21の電流検出値、電圧検出値、異常に関する情報等)を受信してよい。
【0052】
HBコントローラ30Bは、ショベルコントローラ30Aから送信される各種情報(例えば、操作装置26に対する操作状態に対応する圧力センサ29の検出値を含む駆動指令等)に基づき、電気駆動系の駆動制御を行う。例えば、HBコントローラ30Bは、圧力センサ29により検出される、操作装置26の操作状態に対応する検出値に基づき、インバータ18Aを駆動し、電動発電機12の運転状態(力行運転及び発電運転)の切替制御を行う。また、例えば、HBコントローラ30Bは、圧力センサ29により検出される、操作装置26の操作状態に対応する検出値に基づき、インバータ18Bを駆動し、旋回用電動機21の運転状態(力行運転及び回生運転)の切替制御を行う。この際、HBコントローラ30Bは、例えば、電流センサ21s及びレゾルバ22の検出値に基づき、旋回用電動機21の速度制御及びトルク制御を行う。また、例えば、HBコントローラ30Bは、圧力センサ29により検出される、操作装置26の操作状態に対応する検出値に基づき、昇降圧コンバータ110を駆動し、キャパシタ19の充電状態と放電状態との切替制御を行う。また、HBコントローラ30Bは、電気駆動系の各種情報を、ショベルの全体制御を司るショベルコントローラ30Aに送信してもよい。
【0053】
ショベルコントローラ30AとHBコントローラ30Bとは、例えば、ハードウェアとして同じ、即ち、同一の形状および同一の体格を有し、内部のソフトウェア処理の相違によりそれぞれの機能が実現されてよい。これにより、部品の共通化を図り、コスト抑制を図ることができる。
【0054】
また、ショベルの制御系には、その他、エンジン11(燃料噴射量等)を制御するエンジンコントローラ30C、排気ガス処理装置を制御する排気ガスコントローラ(図示せず)30D、エンジン11のタービン(過給圧)を制御するタービンコントローラ(図示せず)が含まれる。以下、ショベルコントローラ30A、HBコントローラ30B、エンジンコントローラ30C、排気ガスコントローラ、タービンコントローラを包括的に各種コントローラ30と称する場合がある。
【0055】
尚、各種コントローラ30は、例えば、CPU、ROM、RAM、I/O等を含むマイクロコンピュータで構成され、ROMに格納される各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能が実現される。また、各種コントローラは、例えば、CAN(Controller Area Network)規格等に基づく通信ネットワークで相互に通信可能に接続される。即ち、各種コントローラ30は、それぞれ、各種制御指令を生成(演算)する等の処理を行うCPUと、生成した各種制御指令を出力する通信部(例えば、CANトランシーバ、CANコントローラ等)を備えてもよい。
【0056】
次に、図5を用いて、電動発電機12のインバータ18Aの制御についてさらに説明する。図5は、インバータ18Aの制御を説明するブロック図である。
【0057】
インバータ18Aは、回転角推定部300と、インバータ制御部310と、検証部350と、を有している。電流センサ12s1で検出した検出電流、電圧センサ12s2で検出した印加電圧、燃料噴射制御部200の出力信号は、HBコントローラ30Bを介してインバータ18Aに入力される。なお、電流センサ12s1で検出した検出電流、電圧センサ12s2で検出した印加電圧、燃料噴射制御部200の出力信号は、インバータ18Aに直接入力される構成であってもよい。
【0058】
回転角推定部300は、電流センサ12s1で検出した検出電流と、電圧センサ12s2で検出した印加電圧に基づいて、電動発電機12の回転軸12Aの回転角を推定する。例えば、オブザーバにより、回転角、回転速度を推定する。なお、電圧センサ12s2は用いなくてもよい。電圧センサ12s2を用いない場合は、インバータ制御部310がインバータ18Aへ入力する電圧指令値を用いてもよい。
【0059】
インバータ制御部310は、回転角推定部300で推定した回転軸12Aの回転角推定値と、電流センサ12s1で検出した検出電流とに基づいて、インバータ18Aを制御する制御信号を出力する。電動発電機12は、例えば、IPM(Interior Permanent Magnet)モータを用いることができる。インバータ制御部310は、インバータ18Aを介して、電動発電機12の電流位相を制御することにより、電動発電機12の動作を制御する。
【0060】
このように、本実施形態に係るショベルは、電動発電機12の回転軸12Aの回転角を検出するレゾルバ等のセンサを不要とすることができる。これにより、メカニカルなセンサを削減することができるので、ショベルのコストを抑えるとともに、センサの汚れ等による検出不良を防止することができる。
【0061】
検証部350は、燃料噴射制御部200の出力信号を参照して、回転角推定部300で推定された回転角推定値を検証する。
【0062】
ここで、燃料噴射制御部200は、図3及び図4に示すように、クランク軸11Aの回転に関する情報(検出値)を出力する。また、前述のように、クランク軸11Aと回転軸12Aとは、減速機13により接続されており、所定の減速比となっている。このため、クランク軸11Aの回転角及び減速機13の減速比に基づいて、回転軸12Aの回転角を求めることができる。以下、燃料噴射制御部200の出力信号及び減速機13の減速比に基づいて求められた回転軸12Aの回転角を回転軸12Aの回転角検出値と称するものとする。
【0063】
次に、検証部350によって実行される回転軸12Aの回転角推定値の検証処理の一例について、図6を用いて説明する。図6は、検証部350による処理を説明する図である。
【0064】
例えば、燃料噴射制御部200は、図4(a)に示す通過検出信号を出力する。図6(a)において、上段に燃料噴射制御部200から出力された通過検出信号を示し、下段に回転角推定部300で推定された回転軸12Aの回転角推定値を示す。また、横軸は、時間を示す。なお、図6(a)において、減速比は1とし、通過検出信号は回転軸12Aの実回転角が0[rad]のときに出力されるものとして説明する。
【0065】
検証部350は、通過検出信号を検出したタイミングで回転軸12Aの回転角検出値と回転軸12Aの回転角推定値とを比較する。ここでは、回転軸12Aの回転角推定値が0[rad]となったタイミング(換言すれば、通過検出信号を検出したタイミング)と、回転軸12Aの実回転角が0[rad]となったタイミングとの時間差(誤差)を求める。検証部350は、誤差が所定の閾値未満である場合、回転軸12Aの回転角推定値は好適に推定されているものと判定する。一方、誤差が所定の閾値以上である場合、回転軸12Aの回転角推定値は好適に推定されていないものと判定する。
【0066】
なお、燃料噴射制御部200は、図4(b)に示すように、所定の回転角度ごとに通過検出信号が出力さていてもよい。これにより、誤差を求めるタイミングが増えるので、回転角推定値の検証精度を向上させることができる。
【0067】
例えば、燃料噴射制御部200は、図4(c)に示すクランク軸11Aの回転角検出値を出力する。図6(b)において、上段にクランク軸11Aの回転角検出値と減速機13の減速比から求めた回転軸12Aの回転角検出値と、回転軸12Aの回転角推定値と、を示す。下段に回転角検出値と回転角推定値との差(誤差)を示す。また、横軸は、時間を示す。
【0068】
検証部350は、回転角検出値と回転角推定値との差(誤差)を常時検証する。検証部350は、誤差が所定の閾値未満である場合、回転軸12Aの回転角推定値は好適に推定されているものと判定する。一方、誤差が所定の閾値以上である場合、回転軸12Aの回転角推定値は好適に推定されていないものと判定する。
【0069】
例えば、燃料噴射制御部200は、図4(d)に示すクランク軸11Aの回転速度検出値を出力する。図6(c)において、クランク軸11Aの回転速度検出値と減速機13の減速比から求めた回転軸12Aの回転速度検出値と、回転軸12Aの回転角推定値と、を示す。また、横軸は、時間を示す。
【0070】
ここでは、検証部350は、回転速度演算部(図示せず)を有している。回転速度演算部は、回転軸12Aの回転角推定値に基づいて、回転軸12Aの回転速度推定値を演算する。
【0071】
検証部350は、回転速度検出値と回転速度推定値との差(誤差)を常時検証する。検証部350は、誤差が所定の閾値未満である場合、回転軸12Aの回転角推定値は好適に推定されているものと判定する。一方、誤差が所定の閾値以上である場合、回転軸12Aの回転角推定値は好適に推定されていないものと判定する。
【0072】
以上のように、本実施形態に係るショベルは、回転角推定部300で推定された回転角推定値が好適に推定できているかを検証することができる。換言すれば、実際の回転角と回転角推定値との誤差が拡大しことを速やかに検知することができる。例えば、誤差が拡大した場合、HBコントローラ30Bは、誤差が小さくなるように回転角推定値を補正してもよい。また、その旨の警告を音や可視的に出力してもよい。これにより、HBコントローラ30Bは、電動発電機12をより好ましく制御することができる。
【0073】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0074】
本実施形態に係る建設機械は、ショベルであるものとして説明したが、これに限られるものではなく、アシストモータと他の動力を制御するハイブリッド式システムを用いた産業用車両、装置、フォークリフト、クレーン等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
11 エンジン
11A クランク軸(エンジンの回転軸)
12 電動発電機(アシストモータ)
12A 回転軸(アシストモータの回転軸)
12s1 電流センサ
12s2 電圧センサ
13 減速機
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
18A,18B インバータ
19 キャパシタ
21 旋回用電動機
30A ショベルコントローラ
30B HBコントローラ
30C エンジンコントローラ
100 DCバス
110 昇降圧コンバータ
120 蓄電系
200 燃料噴射制御部
210 クランク角センサ
220 位相同期回路
250 燃料噴射部材
300 回転角推定部
310 インバータ制御部
350 検証部
図1
図2
図3
図4
図5
図6