(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】セルロース繊維と非セルロース粉粒物を含む再分散可能な組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 1/02 20060101AFI20220905BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220905BHJP
C08L 1/08 20060101ALI20220905BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20220905BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
C08L1/02
C08K3/04
C08L1/08
H01B1/24 A
H01B5/14 Z
(21)【出願番号】P 2018245990
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018075630
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 恭輝
(72)【発明者】
【氏名】後居 洋介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭樹
(72)【発明者】
【氏名】東崎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松本 真昌
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-014741(JP,A)
【文献】国際公開第98/028362(WO,A1)
【文献】特許第5921960(JP,B2)
【文献】特開2017-128663(JP,A)
【文献】特開2012-201767(JP,A)
【文献】特開2018-009134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/02
C08K 3/04
C08L 1/08
H01B 1/24
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物であって、
前記(B)非セルロース粉粒物の含有量は、前記組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下であり、
前記(C)水の含有量は、前記組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下であり、
前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(A1)/(B)が1.0/99.0以上50.0/50.0以下であ
り、
前記(B)非セルロース粉粒物が炭素から構成される粒子である、
ことを特徴とする再分散可能な組成物。
【請求項2】
(A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維と、(A2)カルボキシメチルセルロース塩と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物であって、
前記(B)非セルロース粉粒物の含有量は、前記組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下であり、
前記(C)水の含有量は、前記組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下であり、
前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(A2)カルボキシメチルセルロース塩の含有量の合計量と、前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率((A1)+(A2))/(B)が1.0/99.0以上50.0/50.0以下である
ことを特徴とする再分散可能な組成物。
【請求項3】
前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(A2)カルボキシメチルセルロース塩の含有量との質量比率(A1)/(A2)が20.0/80.0以上99.0/1.0以下である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(A2)カルボキシメチルセルロース塩の1質量%水溶液粘度(25℃)が500mPa・s以下である、請求項2または3に記載の組成物
。
【請求項5】
前記(B)非セルロース粉粒物が炭素から構成される粒子である、請求項
2ないし
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の組成物を極性溶媒に再分散させた再分散体。
【請求項7】
請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の組成物または請求項
6に記載の再分散体を用いた電極塗料組成物。
【請求項8】
(A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物であって、
前記(B)非セルロース粉粒物の含有量は、前記組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下であり、
前記(C)水の含有量は、前記組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下であり、
前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(A1)/(B)が1.0/99.0以上50.0/50.0以下である
再分散可能な組成物
を、極性溶媒に再分散させた再分散体。
【請求項9】
(A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物であって、
前記(B)非セルロース粉粒物の含有量は、前記組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下であり、
前記(C)水の含有量は、前記組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下であり、
前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(A1)/(B)が1.0/99.0以上50.0/50.0以下である
再分散可能な組成物
、または、該組成物を極性溶媒に再分散させた再分散体、
を用いた電極塗料組成物。
【請求項10】
請求項
7または9に記載の電極塗料組成物を用いて作製された電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再分散可能な組成物、これを用いた電極塗料組成物、および電極に関し、より詳細には、セルロース繊維と非セルロース粉粒物を含む組成物であって、水等の極性溶媒への再分散性に優れた組成物、および導電性に優れた電極が得られる電極塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックやカーボンナノチューブなどの機能性粒子は、各種の電子情報素子、光機能素子、構造体材料、化粧品、薬品、セラミックスなどの素材として、近年ますます注目を集めている。機能性粒子のサイズとしては、ミクロンオーダー以上やサブミクロンのサイズのみならず、最近ではさらに粒子径の小さい100nm(0.1μm)以下のナノ粒子が各種開発されている。特に大きさが100nm以下のナノ粒子になると、その表面積や粒子間力により物理的・化学的性質が数100nmよりも大きい粒子に比べて大きく変化することから、各種材料への利用が増加しつつある。
【0003】
このような機能性粒子は非常に扱いづらいため、安全かつ簡便な使用方法が模索されている。その最適な利用法の一つとして、液体へ機能性粒子を分散させた「分散スラリー」が挙げられる。ただし、分散スラリーの作製にもいくつか問題点があり、特に注視すべきは均一な分散性である。一般的に、粉粒物はvan dar waals引力による粒子間相互作用と界面電気二重層の重なりによる静電相互作用の存在のため、液中分散制御が難しいとされている。また、上記のような機能性粒子は疎水性を有していることが多いことから、水中での均一分散は非常に困難である。このような粉粒物を水中に分散する手法のひとつとして、微細繊維状セルロースなどのセルロース繊維の利用が挙げられる。
【0004】
セルロース繊維は、全ての植物の基本骨格物質であり、地球上に一兆トンを超える豊富な天然資源である。環境問題が注目され始めた昨今、その優れた特徴から次世代材料として注目を集めている。セルロース繊維の主な特徴として、鋼鉄の1/5の軽さであるにも関わらず、鋼鉄の5倍以上の強度、ガラスの1/50の低線熱膨張係数を有することが知られている。さらに約4~数百nm程度の大きさの微細繊維になると優れた水系分散性を示し、表面化学修飾によって有機溶剤分散性も示すことから、食品、化粧品、医療品又は塗料に限らず、樹脂材料の強化や乳化安定化助剤としての利用も期待されている。
【0005】
微細繊維状セルロースの水性懸濁液又は分散液は、通常、微細繊維状セルロースに対して数倍~数百倍の質量の水が含まれている。水に分散している状態(湿潤状態)の微細繊維状セルロースを乾燥させた固形物は、微細なセルロース繊維間に水素結合が形成されるため、この乾燥固形物に水を加えても乾燥前(湿潤状態)の溶解性、分散性、沈降度、及び粘度などの諸特性が復元しない。このため、微細繊維状セルロースを含む分散スラリーは、通常、水に分散している状態(湿潤状態)で製造され、乾燥させずに湿潤状態のままで各種ユーザーに運搬される。しかし、このような分散スラリーをそのままの状態で扱うことは、保存スペースの増大、保存及び輸送コストの増大、加えて高濃度使用用途に不向きといった問題点がある。
【0006】
従来、微細繊維状セルロースを分散剤として用いて、機能性粒子などの非セルロース粉粒物を水に分散させる技術が知られており、非特許文献1および特許文献1には、微細繊維状セルロースと非セルロース粉粒物(カーボンナノチューブ)と水を含有する組成物が記載されている。しかしながら、これらの文献に記載の技術では、組成物中における非セルロース粉粒物の配合比率が少なく、水等の極性溶媒に再分散されるものではない。従って、非セルロース粉粒物をより高濃度で含有し、水等の極性溶媒に再分散させることができる組成物を提供することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】古賀大尚、他4名「カーボンナノチューブ/セルロースナノフィブリルハイブリッドの調製と機能開発」、日本木材学会大会研究発表要旨集,Vol.62,2012,K-16-06-1445
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態は、セルロース繊維と非セルロース粉粒物とを含有する組成物において、水等の極性溶媒への再分散性に優れた組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の実施形態に係る組成物は、(A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物であって、前記(B)非セルロース粉粒物の含有量は、前記組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下であり、前記(C)水の含有量は、前記組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下であり、前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(A1)/(B)が1.0/99.0以上50.0/50.0以下である、再分散可能な組成物である。
【0011】
本発明の第2の実施形態に係る組成物は、(A1)短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下のセルロース繊維と、(A2)カルボキシメチルセルロース塩と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を少なくとも含有する組成物であって、前記(B)非セルロース粉粒物の含有量は、前記組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下であり、前記(C)水の含有量は、前記組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下であり、前記(A1)セルロース繊維の含有量と前記(A2)カルボキシメチルセルロース塩の含有量の合計量と、前記(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率((A1)+(A2))/(B)が1.0/99.0以上50.0/50.0以下である、再分散可能な組成物である。
【0012】
本発明の実施形態に係る再分散体は、前記組成物を極性溶媒に再分散させたものである。本発明の実施形態に係る電極塗料組成物は、前記組成物または再分散体を用いたものである。本発明の実施形態に係る電極は、前記電極塗料組成物を用いて作製されたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態に係る組成物であると、非セルロース粉粒物を高濃度で含有し、水等の極性溶媒への再分散性に優れる。そのため、保存スペースの増大や保存及び輸送コストの増大を抑えて運搬性を向上することができ、また、高濃度使用用途への適用が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係る組成物は、(A1)セルロース繊維と、(B)非セルロース粉粒物と、(C)水を含有する再分散可能な組成物(以下、粉粒物含有組成物ということがある)である。該組成物は、さらに(A2)カルボキシメチルセルロース塩を含有してもよい。
【0016】
[(A1)セルロース繊維]
(A1)セルロース繊維としては、短幅の方の数平均幅が2nm以上1000nm以下であるものが用いられる。短幅の方の数平均幅がこの範囲内であることにより、非セルロース粉粒物に対する分散剤としての機能を発揮することができ、再分散性の向上効果を高めることができる。短幅の方の数平均幅は、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0017】
セルロース繊維の短幅の方の数平均幅は、数平均繊維径とも称され、次のようにして測定することができる。すなわち、固形分率で0.05~0.1質量%のセルロース繊維の水分散体を調製し、その水分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。なお、大きな繊維径の繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。また、観察用試料は、例えば2質量%ウラニルアセテート水溶液でネガティブ染色してもよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の短幅(繊維径)を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の短幅の値を読み取る(したがって、最低20本×2×3=120本の短幅の情報が得られる)。このようにして得られた短幅の相加平均を数平均幅とする。
【0018】
(A1)セルロース繊維は、アスペクト比が7.5以上250以下であることが好ましい。このようにアスペクト比が小さいものを用いることにより、再分散性の向上効果を高めることができ、また再分散体の粘度を低減することができる。アスペクト比は、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上であり、また、より好ましくは75以下、更に好ましくは50以下である。
【0019】
セルロース繊維のアスペクト比は、次のようにして測定することができる。すなわち、先に述べた方法に従い短幅の方の数平均幅を算出する。また、同様の観察画像からセルロース繊維の長幅の方の数平均幅(数平均繊維長)を算出する。詳細には、繊維の始点から終点までの長幅(繊維長)を最低10本目視で読み取る。なお、枝分かれしている繊維については、その繊維の最も長い部分の長さを長幅とする。このようにして得られた長幅の相加平均を算出し、長幅の数平均幅とする。これらの値を用いてアスペクト比を下記式に従い算出する。
アスペクト比=長幅の方の数平均幅(nm)/短幅の方の数平均幅(nm)
【0020】
(A1)セルロース繊維は、I型結晶構造を有し、X線回折装置を用いてSegal法で算出した結晶化度が70%以上95%以下であることが好ましい。結晶化度が70%以上であることにより、再分散性の向上効果を高めることができる。結晶化度は、より好ましくは80%以上である。結晶化度の上限は特に限定されないが、例えば、95%以下でもよく、92%以下でもよい。
【0021】
結晶化度は、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したセルロースI型結晶化度であり、次式により定義される。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6-I18.5)/I22.6〕×100
式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。なお、I型結晶構造は天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。
【0022】
(A1)セルロース繊維は、その繊維表面の水酸基が化学修飾されていてもよい。例えば、I型結晶構造を維持することができ、所定の繊維径まで効率良く解繊することができる観点から、アニオン性官能基を有するセルロース繊維であることが好ましい。アニオン性官能基は、セルロース分子中のグルコースユニットの水酸基の一部を化学修飾することにより導入することができる。
【0023】
アニオン性官能基としては、特に限定されず、例えば、カルボキシル基、硫黄を含む官能基、リンを含む官能基などが挙げられる。好ましいアニオン性官能基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、及び硫酸基からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。なお、セルロースを構成するグルコースユニットと、アニオン性官能基との間に連結基を有していてもよい。
【0024】
本明細書において、カルボキシル基は、酸型(-COOH)だけでなく、塩型、即ちカルボン酸塩基(-COOX、ここでXはカルボン酸と塩を形成する陽イオン)も含む概念であり、酸型と塩型が混在してもよい。リン酸基、スルホン酸基、及び硫酸基についても、同様に、酸型だけでなく、塩型も含む概念であり、酸型と塩型が混在してもよい。
【0025】
アニオン性官能基の塩としては、特に限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩、1級アミン、2級アミン、3級アミン等のアミン塩等が挙げられる。
【0026】
セルロース繊維におけるアニオン性官能基の含有量は、特に限定されないが、セルロース繊維の乾燥質量あたり、0.2mmol/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.5mmol/g以上であり、1.0mmol/g以上でもよく、1.2mmol/g以上でもよく、1.5mmol/g以上でもよい。また、2.5mmol/g以下であることが好ましく、2.0mmol/g以下でもよい。アニオン性官能基の含有量は、電気伝導度測定により求めることができ、例えば、0.05~1質量%程度の濃度に調製したセルロース繊維含有スラリーを水酸化ナトリウム水溶液により中和し、中和段階で消費された水酸化ナトリウム水溶液の量V(mL)と水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度c(mol/L)を用いて次式により求めることができる。
アニオン性官能基量(mmol/g)=V×〔c/セルロース試料質量(g)〕
【0027】
一実施形態に係るアニオン性官能基を有するセルロース繊維の例として、セルロースを構成するグルコースユニットの水酸基を酸化してなる酸化セルロース繊維を例示して、より具体的に説明し、製造方法の例についても説明する。
【0028】
酸化セルロース繊維としては、特に限定されないが、グルコースユニットの6位の水酸基が選択的に酸化されたものであることが好ましい。酸化セルロース繊維がグルコースユニット上の6位の水酸基が選択的に酸化されたものであることは、例えば、13C-NMRチャートにより確認することができる。なお、酸化セルロース繊維は、カルボキシル基と共に、アルデヒド基又はケトン基を有していてもよい。
【0029】
酸化セルロース繊維は、天然セルロース繊維を原料とし、水中においてN-オキシル化合物を酸化触媒とし、共酸化剤を作用させることにより天然セルロース繊維を酸化して反応物を得る酸化反応工程(1)、不純物を除去して水を含浸させた反応物を得る精製工程(2)、および水を含浸させた反応物を溶媒に分散させる分散工程(3)を含む製造方法により得ることができる。
【0030】
(1)酸化反応工程
天然セルロース繊維とN-オキシル化合物とを水(分散媒体)に分散させた後、共酸化剤を添加して、反応を開始する。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10~11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なす。ここで、共酸化剤とは、直接的にセルロース水酸基を酸化する物質ではなく、酸化触媒として用いられるN-オキシル化合物を酸化する物質のことである。
【0031】
上記天然セルロース繊維は、植物、動物、バクテリア産生ゲル等のセルロースの生合成系から単離した精製セルロース繊維を意味する。より具体的には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター,コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプ、バクテリアセルロース繊維(BC)、ホヤから単離されるセルロース繊維、海草から単離されるセルロース繊維等を挙げることができる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0032】
上記反応における天然セルロース繊維の分散媒体は水であり、反応水溶液中の天然セルロース繊維濃度は、試薬(天然セルロース繊維)の充分な拡散が可能な濃度であれば任意である。通常は、反応水溶液の質量に対して約5%以下であるが、機械的撹拌力の強い装置を使用することにより反応濃度を上げることができる。
【0033】
また、上記N-オキシル化合物としては、例えば、一般に酸化触媒として用いられるニトロキシラジカルを有する化合物が挙げられる。N-オキシル化合物は、水溶性の化合物が好ましく、なかでもピペリジンニトロキシオキシラジカルが好ましく、特に2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)または4-アセトアミド-TEMPOが好ましい。N-オキシル化合物の添加は、触媒量で充分であり、好ましくは0.1~4mmol/L、さらに好ましくは0.2~2mmol/Lの範囲で反応水溶液に添加する。
【0034】
上記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、上記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、反応速度の点から、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが好ましい。上記臭化アルカリ金属の添加量は、上記N-オキシル化合物に対して約1~40倍モル量、好ましくは約10~20倍モル量である。
【0035】
上記反応水溶液のpHは約8~11の範囲で維持されることが好ましい。水溶液の温度は約4~40℃において任意であるが、反応は室温(25℃)で行うことが可能であり、特に温度の制御は必要としない。所望のカルボキシル基量等を得るためには、共酸化剤の添加量と反応時間により、酸化の程度を制御する。通常、反応時間は約5~120分、長くとも240分以内に完了する。また、共酸化剤の添加量と反応水溶液のpHを制御することにより、セルロース分子の加水分解の程度を制御しセルロース繊維のアスペクト比を任意に設定することもできる。
【0036】
(2)精製工程
つぎに、未反応の共酸化剤(次亜塩素酸等)や、各種副生成物等を除く目的で精製を行う。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散しているわけではないため、通常の精製法、すなわち水洗とろ過を繰り返すことで高純度(99質量%以上)の反応物繊維と水の分散体とする。
【0037】
精製工程における精製方法は、遠心脱水を利用する方法(例えば、連続式デカンダー)のように、上述した目的を達成できる装置であればどのような装置を利用しても差し支えない。このようにして得られる反応物繊維の水分散体は、絞った状態で固形分(セルロース繊維)濃度としておよそ10質量%~50質量%の範囲としてもよい。
【0038】
(3)分散工程(微細化処理工程)
上記精製工程にて得られる水を含浸した反応物(水分散体)を、分散媒体中に分散させ分散処理を行う。処理に伴って粘度が上昇し、微細化処理されたセルロース繊維の分散体を得ることができる。なお、セルロース繊維の微細化(解繊)に伴ってセルロース繊維の長さ方向の切断も同時に生じるため、微細化処理の程度(例えば、分散機の処理せん断力、処理圧力、処理回数、処理時間など)を制御することによって、任意にセルロース繊維のアスペクト比を設定することが可能である。
【0039】
分散工程で使用する分散機としては、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理機、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩解能力のある装置を使用することにより、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能となり、経済的に有利に含水潤滑剤組成物を得ることができる点で好ましい。なお、分散機としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー、ブレンダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ペブルミル、ビーズミル粉砕機等を用いても差し支えない。また、2種類以上の分散機を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
なお、セルロース繊維は、上記酸化反応後に、さらに還元反応を行うことが好ましい。具体的には、酸化反応後の酸化セルロース繊維を精製水に分散し、水分散体のpHを約10に調整し、各種還元剤により還元反応を行う。還元剤としては、一般的なものを使用することが可能であるが、好ましくは、LiBH4、NaBH3CN、NaBH4等が挙げられる。還元剤の量は、酸化セルロース繊維を基準として、0.1~4質量%の範囲でもよい。還元反応は、室温または室温より若干高い温度で、通常、10分~10時間、好ましくは30分~2時間行う。
【0041】
(A1)セルロース繊維の含有量は、粉粒物含有組成物の全質量に対して0.3質量%以上48.6質量%以下であることが好ましい。0.3質量%以上であることにより、(B)非セルロース粉粒物の分散性を高めることができ、再分散性を向上することができる。また、48.6質量%以下であることにより、再分散体の粘度を低減することができる。セルロース繊維の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上であり、また、45.0質量%以下が好ましく、より好ましくは30.0質量%以下である。
【0042】
[(A2)カルボキシメチルセルロース塩]
(A2)カルボキシメチルセルロース塩は、上記(A1)セルロース繊維とともに、(B)非セルロース粒状物を分散させる分散剤ないし分散安定剤として機能するセルロース成分であり、水溶性のカルボキシメチルセルロース塩が用いられる。(A2)カルボキシメチルセルロース塩を(A1)セルロース繊維と組み合わせて用いることにより、(B)非セルロース粉粒物として導電性粉粒物を用いた場合における導電性を向上させることができ、例として、粉粒物含有組成物を電極塗料組成物に用いた場合に、導電性に優れた電極を得ることができる。
【0043】
カルボキシメチルセルロース塩の塩としてはアルカリ金属塩が好ましく、中でもナトリウム塩、リチウム塩、及びカリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。より好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム塩である。
【0044】
カルボキシメチルセルロース塩としては、粘度の低いものを用いることが、上記セルロース繊維と組み合わせたときに、より優れた導電性を付与することができることから好ましい。詳細には、カルボキシメチルセルロース塩の1質量%水溶液粘度が500mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは100mPa・s以下でもよい。1質量%水溶液粘度の下限としては、例えば10mPa・s以上でもよい。
【0045】
ここで、カルボキシメチルセルロース塩の1質量%水溶液粘度は、次のようにして測定される。すなわち、カルボキシメチルセルロース塩(約2.2g)を共栓付き300ml三角フラスコに入れて精秤する。ここに、計算式「試料(g)×(99-水分量(質量%))」により算出される量の水を加えて12時間静置し、さらに5分間混合する。得られた溶液を用いて、単一円筒型回転粘度計を用いてJIS Z8803に準じて25℃における粘度を測定する。
【0046】
(A2)カルボキシメチルセルロース塩の含有量は、特に限定されないが、粉粒物含有組成物の全質量に対して、0.1質量%以上39質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5質量%以上30質量%以下である。
【0047】
[(B)非セルロース粉粒物]
(B)非セルロース粉粒物としては、セルロース以外の様々な粉粒物が挙げられる。非セルロース粉粒物(以下、単に粉粒物ということがある。)は、粉状ないし粒状の物質であり、好ましくは粒子径が0.5mm以下の微細な粒子からなる粉状物質が用いられる。
【0048】
(B)非セルロース粉粒物の平均粒子径は、特に限定されず、100μm以下でもよく、30μm以下でもよく、5nm~5μmでもよく、10~100nmの粒子でもよい。粒子の大きさの指標として、(B)非セルロース粉粒物のBET法による比表面積は、0.1~1400m2/gでもよく、1~300m2/gでもよく、10~100m2/gでもよい。(B)非セルロース粉粒物の粒子の形状は、特に限定されず、球状、板状、針状等のいずれでもよい。
【0049】
非セルロース粉粒物の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装社製、マイクロトラックUPA)で測定し、体積基準でのメジアン径として算出することができる。
【0050】
BET法による比表面積は、例えば、JIS Z8830:2013に記載のガス吸着法により測定することができる。
【0051】
(B)非セルロース粉粒物としては、例えば、無機粒子や有機粒子を挙げることができ、用途に応じた様々な機能性粒子を用いることができる。
【0052】
無機粒子(無機微粒子ともいう。)としては、特に限定されず、例えば、金属、金属化合物、ガラス繊維、鉱物、無機化合物、化学合成により製造された成分等からなる粒子が挙げられる。具体的には、カーボン、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、アルミナ水和物、アルミノシリケート、ベーマイト、擬ベーマイト、酸化銅、酸化鉄などの粒子が挙げられる。
【0053】
有機粒子(有機微粒子ともいう。)としては、特に限定されず、例えば、樹脂、天然物由来成分、糖類、化学合成により製造された成分等からなる粒子が挙げられる。具体的には、アクリル樹脂、ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、キチン、キトサン、デキストリン、オリゴ糖、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリン、乳糖、ブドウ糖、砂糖、還元麦芽糖、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトール、カゼインなどの粒子が挙げられる。
【0054】
これらの無機粒子や有機粒子は、いずれか1種を用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(B)非セルロース粉粒物としては無機粒子を用いることが好ましく、疎水性無機粒子を用いることがより好ましい。疎水性無機粒子は、粒子表面に親水基を実質的に持たず、そのため撥水性または親油性を示す無機粒子であり、本来は親水性無機粒子であるがその表面を撥水剤で処理することにより撥水性を示す無機粒子も含まれる。
【0056】
疎水性無機粒子としては、例えば、カーボン粒子、一部の金属微粒子、一部の天然の粘土鉱物などが挙げられる。これらの中でも、炭素から構成される粒子であるカーボン粒子を用いることが好ましく、カーボン粒子としては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックの他、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、黒鉛、ダイヤモンドなどが挙げられ、これらはいずれか1種用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0057】
上記撥水剤としては、親水性無機粒子の表面に疎水基を導入できるものであれば特に限定されない。疎水基としては極性基を有さない炭化水素基を有する基等を挙げることができる。撥水剤の例としては、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル等を挙げることができる。表面処理対象としての親水性無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの金属酸化物などを挙げることができる。
【0058】
(B)非セルロース粉粒物としては、導電性粉粒物を用いてもよい。導電性粉粒物としては、後述する電極活物質及び/又は導電助剤が挙げられる。
【0059】
(B)非セルロース粉粒物の含有量は、粉粒物含有組成物の全質量に対して14.0質量%以上98.4質量%以下である。このように非セルロース粉粒物の含有量が高いことにより、再分散後における非セルロース粉粒物の濃度を確保することができる。非セルロース粉粒物の含有量は、25.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは30.0質量%以上であり、更に好ましくは40.0質量%以上であり、50.0質量%以上でもよい。また、96.0質量%以下でもよく、80.0質量%以下でもよい。
【0060】
[(C)水]
本実施形態に係る粉粒物含有組成物は水を含有する。水の含有量は、粉粒物含有組成物の全質量に対して0.6質量%以上72.0質量%以下である。粉粒物含有組成物は、その固形分濃度が高いほど再分散後における(B)非セルロース粉粒物の濃度を確保することができ、例えば塗料に用いる場合に高濃度塗料の作製が容易となる。また、長期保存における経時変化を抑えることができる。
【0061】
水の含有量(含水量)は、粉粒物含有組成物の全質量に対して、0.6質量%以上45.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30.0質量%以下、更に好ましくは25.0質量%以下であり、20.0質量%以下でもよい。また、1.5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは10.0質量%以上である。
【0062】
本願明細書における水の含有量は、加熱乾燥式水分計(株式会社エー・アンド・デイ製MX-50)を用いて、組成物を140℃で加熱し、重量変化速度が0.05%/分以下となった重量を終点として測定し、測定前の重量と比較することで算出することができる。
【0063】
[粉粒物含有組成物]
第1の実施形態に係る粉粒物含有組成物において、(A1)セルロース繊維の含有量と(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(即ち、成分(B)に対する成分(A1)の質量比)(A1)/(B)は1.0/99.0以上50.0/50.0以下である。このような範囲内に設定することにより、粉粒物含有組成物の再分散性を向上することができる。また、再分散体の粘度上昇を抑えることができ、例えば塗料に用いた場合の塗工性を向上することができる。該質量比率(A1)/(B)は、30.0/70.0以下であることが好ましく、より好ましくは20.0/80.0以下であり、また2.0/98.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.5/97.5以上である。
【0064】
第2の実施形態に係る粒状物含有組成物は、(A2)カルボキシメチルセルロース塩を含有し、その場合、(A1)セルロース繊維の含有量と(A2)カルボキシメチルセルロース塩の含有量の合計量と、(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(即ち、成分(B)に対する成分(A1)及び成分(A2)の合計量の質量比)((A1)+(A2))/(B)は1.0/99.0以上50.0/50.0以下である。このような範囲内に設定することにより、粉粒物含有組成物の再分散性を向上することができる。また、再分散体の粘度上昇を抑えることができ、例えば塗料に用いた場合の塗工性を向上することができる。該質量比率((A1)+(A2))/(B)は、30.0/70.0以下であることが好ましく、より好ましくは20.0/80.0以下であり、また1.1/98.9以上であることが好ましく、より好ましくは2.0/98.0以上であり、更に好ましくは2.5/97.5以上である。
【0065】
第2の実施形態において、(A1)セルロース繊維の含有量と(B)非セルロース粉粒物の含有量との質量比率(A1)/(B)は1.0/99.0以上50.0/50.0以下であることが好ましく、より好ましくは30.0/70.0以下、更に好ましくは20.0/80.0以下であり、また2.0/98.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.5/97.5以上である。
【0066】
第2の実施形態において、(A1)セルロース繊維の含有量と(A2)カルボキシメチルセルロース塩の含有量との質量比率(即ち、成分(A2)に対する成分(A1)の質量比)(A1)/(A2)は、20.0/80.0以上99.0/1.0以下であることが好ましい。このような範囲内に設定することにより、粉粒物含有組成物の再分散性を向上させながら、導電性の向上効果を高めることができる。該質量比率(A1)/(A2)は、30.0/70.0以上70.0/30.0以下であることが好ましく、より好ましくは40.0/60.0以上70.0/30.0以下である。
【0067】
粉粒物含有組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、上記のようにして得られた(A1)セルロース繊維の水分散体に、(B)非セルロース粉粒物、及び、必要に応じて追加の水、その他の任意成分を混合し、分散することにより調製することができる。また、混合・分散後に乾燥することにより、粉粒物含有組成物の含水量(即ち、水の含有量)を調整してもよい。第2の実施形態の場合、例えば、(A1)セルロース繊維の水分散体に(A2)カルボキシメチルセルロース塩を溶解させたものに、(B)非セルロース粉粒物、及び、必要に応じて追加の水、その他の任意成分を混合し、分散させてもよい。
【0068】
混合・分散処理に用いる混合・分散装置としては、特に限定されず、例えば、ホモディスパー、プラネタリーミキサー、プロペラミキサー、ニーダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ビーズミル、サンドミル、高圧ホモジナイザー等を用いることができる。
【0069】
乾燥方法としては、特に限定されず、例えば、凍結乾燥、真空乾燥(例えば、コニカルドライヤーを用いた乾燥)、噴霧乾燥、送風乾燥、加熱乾燥(例えば、ドラムドライヤーを用いた乾燥)などが挙げられる。乾燥温度及び乾燥時間などの乾燥条件により、得られる粉粒物含有組成物の含水量を所定範囲内に調整することができる。
【0070】
粉粒物含有組成物には、上記成分(A1)、(A2)、(B)及び(C)の他、本実施形態の効果を阻害しない範囲において、分散安定剤、有機溶媒、界面活性剤などの他の成分を含有してもよい。
【0071】
分散安定剤は、分散安定性を更に高めるために添加されるものであり、例えば、メチルセルロース、ヒロドキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコールなどの水溶性高分子が挙げられる。
【0072】
有機溶媒は、上記の混合・分散処理における分散媒として用いられるものでもよい。すなわち、分散媒は基本的には水であるが、水とともに水混和性の有機溶媒を用いてもよく、その場合、該有機溶媒が粉粒物含有組成物に含まれてもよい。かかる水混和性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、t-ブタノールなどのアルコール類; エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類; アセトンなどのケトン類; テトラヒドロフランなどのエーテル類; 酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類; N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類; ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが挙げられる。これらはいずれか一種用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0073】
本実施形態に係る粉粒物含有組成物は、水などの極性溶媒に再分散可能な再分散性組成物であり、そのため、水などの極性溶媒に再分散させて用いられることが好ましい。再分散とは、粉粒物含有組成物に水等の極性溶媒を加えて、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を極性溶媒(この極性溶媒には、再分散に際して加えた極性溶媒だけでなく、粉粒物含有組成物に含まれていた(C)水などの極性溶媒も含まれる。)中に分散させることである。また、再分散可能とは、このように再分散させたときに、(A1)セルロース繊維と(B)非セルロース粉粒物を均一に分散させることができることをいい、例えば、後述する実施例における再分散性の評価で3以上のものは再分散可能であり、かつ再分散性に優れるといえる。
【0074】
[再分散体]
本実施形態に係る再分散体は、上記粉粒物含有組成物を極性溶媒に再分散させたものであり、再分散液ということもできる。再分散させる際の極性溶媒としては、水、水混和性有機溶媒、水と水混和性有機溶媒との混合物を挙げることができる。好ましくは、極性溶媒は、水、又は、水と水混和性有機溶媒との混合物であり、その場合、水の含有量は50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上である。水混和性有機溶媒の具体例としては、上記の通りである。再分散させる際に用いる分散装置としては、上記の混合・分散処理で記載した混合・分散装置と同様のものを用いることができる。
【0075】
再分散体における濃度は特に限定されず、全固形分の濃度が0.5~20.0質量%でもよく、1.0~15.0質量%でもよい。
【0076】
[作用効果]
本実施形態によれば、機能性粒子などの非セルロース粉粒物を高濃度で含有し、かつ、水等の極性溶媒への再分散性に優れる粉粒物含有組成物が得られる。そのため、保存スペースの増大や保存及び輸送コストの増大を抑えて運搬性を向上することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る粉粒物含有組成物は、様々な塗料組成物への応用が可能であり、その際、機能性粒子などの非セルロース粉粒物を高濃度で含むことから、塗料組成物に添加する場合にも固形分濃度の低下を抑えることができ、高濃度塗料の作製を簡便に行うことができる。また、濃度の急激な変化による塗料組成物の凝集を抑制する効果も期待できる。本実施形態に係る粉粒物含有組成物は、再分散性に優れているので、例えば、粉粒物含有組成物を再分散により予め適切な固形分濃度に調整した上で作製中の塗料組成物に添加してもよく、あるいは粉粒物含有組成物を極性溶媒とともに加えて再分散させながら塗料組成物を作製してもよく、いずれにしても良好な塗工性を有する塗料組成物を作製することができる。
【0078】
本実施形態に係る粉粒物含有組成物であると、更に、長期間の保存でも経時変化が起こりにくく、保存安定性に優れる。また、含水量が30質量%以下の場合、粉粒体含有組成物は粉体状ないし固形状の固体材料として扱うことができ、運搬性、流動性の面で特に優れているため、取り扱いの点でさらに好ましい。また、含水量が10質量%以上の場合、乾燥条件によってブロック状に固形化した場合でも小さな力で容易に粉体に解砕することができるため、取り扱いの面でより好ましい。
【0079】
本実施形態に係る粉粒物含有組成物は、再分散性に優れているため、例えば、建材、文房具、電子デバイスなどの各種用途の塗料やインクの組成物として好適に使用することができる。
【0080】
[電極塗料組成物および電極]
本実施形態に係る粉粒物含有組成物及びそれを用いた再分散体は、電極塗料組成物に用いることができ、固形分濃度の高い電極塗料組成物を簡便に作製することができる。また、該電極塗料組成物を金属箔や導電性基板に塗布し乾燥することにより、デバイス電極などの電極を形成することができる。また、粉粒物含有組成物に(A1)セルロース繊維とともに(A2)カルボキシメチルセルロース塩を用いた場合、電極の導電性を向上することができる。
【0081】
電極塗料組成物は、電極活物質(以下、単に活物質ということがある。)と、導電助剤とを含有する。そのうち、導電助剤を上記(B)非セルロース粉粒物として用いて、(A1)セルロース繊維と導電助剤を含む粉粒物含有組成物を、活物質及び任意成分とともに混合して電極塗料組成物を作製してもよい。あるいはまた、活物質を(B)非セルロース粉粒物として用いて、(A1)セルロース繊維と活物質を含む粉粒物含有組成物を、導電助剤及び任意成分とともに混合して電極塗料組成物を作製してもよい。あるいはまた、活物質と導電助剤を(B)非セルロース粉粒物として用いて、(A1)セルロース繊維と活物質と導電助剤を含む粉粒物含有組成物を、任意成分とともに混合して電極塗料組成物を作製してもよい。その際、粉粒物含有組成物に予め極性溶媒を添加して再分散させてから他の成分と混合して電極塗料組成物を作製してもよく、あるいはまた、粉粒物含有組成物に上記他の成分とともに極性溶媒を添加して再分散させると同時に電極塗料組成物を作製してもよい。なお、これらの粉粒物含有組成物は、任意成分としての(A2)カルボキシメチルセルロース塩を含んでもよい。
【0082】
活物質としては、特に限定さないが、リチウム二次電池の正極に使用する正極活物質として、例えば、CuO、Cu2O、MnO2、MoO3、V2O5、CrO3、MoO3、Fe2O3、Ni2O3、CoO3等の金属酸化物、LixCoO2、LixNiO2、LixMn2O4、LiFePO4等のリチウムと遷移金属との複合酸化物(リチウム複合酸化物)や、TiS2、MoS2、NbSe3等の金属カルコゲン化物、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子化合物等が挙げられる。また、リチウム複合酸化物に、少量のフッ素、ホウ素、アルミニウム、クロム、ジルコニウム、モリブデン、鉄などの元素をドーブしたものや、リチウム複合酸化物の粒子表面を、炭素、MgO、Al2O3、SiO2等で表面処理したものも使用できる。また、リチウム二次電池の負極に使用する負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素などの炭素材料、金属リチウムや合金、スズ化合物などの金属材料、リチウム遷移金属窒化物、結晶性金属酸化物、非晶質金属酸化物、ケイ素化合物、導電性ポリマー等が挙げられる。
【0083】
活物質として、電気二重層キャパシタ用電極に用いる電極活物質としては、例えば、活性炭、ポリアセン、カーボンウイスカー及びグラファイト等の炭素の同素体が挙げられる。
【0084】
活物質として、リチウムイオンキャパシタ用電極の正極に用いる電極活物質としては、電気二重層キャパシタ用電極と同様の、炭素の同素体が挙げられる。また、リチウムイオンキャパシタ用電極の負極に用いる電極活物質としては、例えば、黒鉛、難黒鉛化炭素等の結晶性炭素材料、ポリアセン系物質(PAS)等を挙げることができる。
【0085】
導電助剤としては、例えば、カーボンブラック(アセチレンブラックやケッチンブラック等)、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人造黒鉛、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金等)粉末、金属繊維、導電性セラミックス材料等が挙げられる。
【0086】
本実施形態に係る電極塗料組成物において、活物質の含有量は、特に制限されないが、全固形分100質量%中60~97質量%でもよい。また、導電助剤の含有量は、活物質の含有量に対して0.1~30質量%でもよい。また、上記粉粒物含有組成物を用いることで電極塗料組成物に含まれる(A1)セルロース繊維の量は特に限定されず、例えば、電極塗料組成物の全固形分100質量%中0.05~5.00質量%でもよい。また、上記第2の実施形態に係る粉粒物含有組成物を用いた場合に含まれる(A2)カルボキシメチルセルロース塩の量も特に限定されず、例えば、電極塗料組成物の全固形分100質量%中0.02~5.00質量%でもよい。
【0087】
本実施形態に係る電極塗料組成物には、上記の他、任意成分として、例えば、結着剤(例えば、水溶性及び/又は水分散性を有する高分子化合物)、増粘剤、分散安定剤などの公知の添加剤を配合してもよい。
【0088】
本実施形態に係る電極は、該電極塗料組成物を金属箔や導電性基板に塗布し乾燥することにより得られるものであり、例えば、リチウム二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスのためのデバイス電極が挙げられる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下、「%」とあるのは、特に限定しない限り質量基準を意味する。
【0090】
[セルロース繊維A1-1(実施例用)の製造]
針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)50gを水4950gに分散させ、パルプ濃度1質量%の分散液を調整した。この分散液をグラインダー(増幸産業(株)製、セレンディピターMKCA6-3)で5回処理し、セルロース繊維A1―1を得た。セルロース繊維A1-1は化学修飾されていない、即ち無置換のセルロースナノファイバーである。
【0091】
[セルロース繊維A1-2(実施例用)の製造]
針葉樹パルプ2gに、水150ml、臭化ナトリウム0.25g、TEMPO0.025gを加え、充分撹拌して分散させた後、13%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が6.5mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応中は温度を10℃に保持した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10~11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加してpHを2以下に調整した後、ろ過と水洗を繰り返して精製した。これに純水を加えて固形分濃度2%に調整した。
【0092】
その後、24%NaOH水溶液にてスラリーのpHを10に調整した。スラリーの温度を30℃として水素化ホウ素ナトリウムをセルロース繊維に対して0.2mmol/g加え、2時間反応させることで還元処理した。反応後、0.1N塩酸を添加してpHを2以下に調整した後、ろ過と水洗を繰り返して精製した。これに純水を加え、終濃度がセルロース繊維2%、残分が水となるように調製した。ここに24%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを7に調整した。これを高圧ホモジナイザー(三和エンジニアリング製、H11)を用いて圧力100MPaで3回処理することにより、セルロース繊維A1-2を得た。セルロース繊維A1-2は、アニオン性官能基としてカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーである。
【0093】
[セルロース繊維A1-3(実施例用)の製造]
反応中の反応液の温度を40℃、pHを11とし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を上記パルプ1gに対して4.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1-2の製造に準じてセルロース繊維A1-3を製造した。セルロース繊維A1-3は、アニオン性官能基としてカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーである。
【0094】
[セルロース繊維A1-4(実施例用)の製造]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を上記パルプ1gに対して6.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1-3の製造に準じてセルロース繊維A1-4を製造した。セルロース繊維A1-4は、アニオン性官能基としてカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーである。
【0095】
[セルロース繊維A1-5(実施例用)の製造]
平均粒子径が45μmの微小結晶セルロース(日本製紙株式会社製「KC-フロックW-50」)10gをガラス製セパラブルフラスコ内で200mLの蒸留水に懸濁させた。このセパラブルフラスコを氷浴中に置き、撹拌しながら系中の温度を40℃以下に維持しながら、最終濃度が48%となるまで濃硫酸を徐々に加えた。次いで、この懸濁液を60℃の水浴に移して30分間撹拌を継続した後、粗製物を取り出し、8000rpmで10分間遠心分離を行った。この遠心分離操作により余剰の硫酸を除去し、残留物を蒸留水に再懸濁させ、遠心分離後、再び蒸留水を添加する操作を繰り返して洗浄と再懸濁を5回繰り返した。この操作で得られた残留物を蒸留水に懸濁させ、pHを8に調整した後、固形分が5%となるように調整した。その後、得られたセルロース懸濁液を高圧ホモジナイザーを用いて圧力140MPaで3回処理してセルロース繊維A1-5を製造した。セルロース繊維A1-5は、アニオン性官能基としてスルホン酸基を有するセルロースナノファイバーである。
【0096】
[セルロース繊維A1-6(実施例用)の製造]
特開2015-189698号公報の製造例1に記載の方法に準じ、セルロース繊維の脱水シートを得た(段落0080~0083に記載の脱水洗浄後のシート)。得られた脱水シートに蒸留水を添加、撹拌して固形分を2.0%に調整し、高圧ホモジナイザーを用いて100MPaで3回処理することにより、セルロース繊維A1-6を製造した。セルロース繊維A1-6は、アニオン性官能基としてリン酸基を有するセルロースナノファイバーである。
【0097】
[セルロース繊維A’-1(比較例用)の製造]
原料の針葉樹パルプに替えて再生セルロースを使用するとともに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、再生セルロース1.0gに対して27.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1-2の製造に準じて、セルロースA’-1を製造した。
【0098】
[セルロース繊維A’-2(比較例用)の製造]
針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)50gを水4950gに分散させ、パルプ濃度1%の分散液を調整した。この分散液をグラインダー(増幸産業(株)製、セレンディピターMKCA6-3)で1回処理し、セルロース繊維A’-2を得た。
【0099】
上記で得られたセルロース繊維A1-1~A1-6、およびA’-1、A’-2について、下記の評価に供し、その結果を表1に記載した。
【0100】
[セルロースI型結晶化度]
セルロース繊維のX線回折強度をX線回折法にて測定し、その測定結果からSegal法を用いて下記式により算出した。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6-I18.5)/I22.6〕×100
式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。
サンプルのX線回折強度の測定は、株式会社リガク製の「RINT2200」を用いて以下の条件にて実施した。
X線源:Cu/Kα-radiation
管電圧:40Kv
管電流:30mA
測定範囲:回折角2θ=5~35°
X線のスキャンスピード:10°/min
【0101】
[短幅の方の数平均幅]
セルロース繊維の数平均幅を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、JEM-1400)を用いて観察した。すなわち、各セルロース繊維を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、短幅の方の数平均幅を算出した。
【0102】
[アスペクト比]
セルロース繊維を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:5000倍あるいは10000倍)から、セルロース繊維の短幅の方の数平均幅、長幅の方の数平均幅を観察した。すなわち、各先に述べた方法に従い、短幅の方の数平均幅、および長幅の方の数平均幅を算出し、これらの値を用いてアスペクト比を下記の式に従い算出した。
アスペクト比=長幅の方の数平均幅(nm)/短幅の方の数平均幅(nm)
【0103】
[アニオン性官能基量]
作製したセルロース繊維について、アニオン性官能基量として、セルロース繊維A1-5についてはスルホン酸基量、A1-6についてはリン酸基量、それ以外のセルロース繊維についてはカルボキシル基量を下記に示す方法で算出した。
【0104】
[カルボキシル基量]
セルロース繊維0.25gを水に分散させたセルロース水分散体60mLを調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行った。測定はpHが11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において、消費された水酸化ナトリウム水溶液の量V(mL)から、下記の式に従いカルボキシル基量を求めた。
カルボキシル基量(mmol/g)=V(mL)×〔0.05/セルロース繊維質量(g)〕
【0105】
[スルホン酸基量]
スルホン酸基量は非特許文献(I.Kalashnikova et al.Biomacromolecules 2012,13,267‐275)を参考に測定した。つまり、セルロース繊維0.05gを水に分散させたセルロース水分散体50mLを調製し、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して電気伝導度測定を行った。消費された水酸化ナトリウム水溶液の量V(mL)から、下記の式に従いスルホン酸基量を求めた。
スルホン酸基量(mmol/g)=V(mL)×〔0.05/セルロース繊維質量(g)〕
【0106】
[リン酸基量]
リン酸基量は特開2015-189698号公報に記載の手法に従い測定した。つまり、セルロース繊維を絶乾質量で0.04g程度の固形分を含む微細セルロース繊維含有スラリーを分取し、イオン交換水を用いて50g程度に希釈した。この溶液を、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、0.01Mの水酸化ナトリウム水溶液を加えていったときの電気伝導度の値の変化を測定し、その値が極小となる時の0.01M水酸化ナトリウム水溶液の滴下量を滴定終点における滴下量とした。この時、セルロース表面のリン酸基量XはX(mmol/g)=0.01(mol/L)×V(mL)/W(g)で表される。ここで、V:0.01M水酸化ナトリウム水溶液の滴下量(mL)、W:微細セルロース繊維含有スラリーが含む固形分(g)である。
【0107】
表1に示すように、実施例用のセルロース繊維A1-1~A1-6は、短幅の方の数平均幅が2~1000nmの範囲内であった。また、アスペクト比が7.5~250の範囲内であり、更に、セルロースI型結晶構造の結晶化度が70%以上であった。これに対し、比較例用のセルロース繊維A’-1はセルロースI型結晶構造を持たず、微粒子状をなしており、短幅の方の数平均幅とアスペクト比は測定不可であった。また、比較例用のセルロース繊維A’-2は、セルロースI型結晶構造は有していたが、短幅の方の数平均幅が上記範囲の上限以上であった。なお、表1中「-」は測定していないことを意味する。
【0108】
セルロース繊維A1-2~A1-4に関し、セルロース表面上のグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的にカルボキシル基に酸化されているかどうかについて、13C-NMRチャートで確認した結果、酸化前のセルロースの13C‐NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりに178ppmにカルボキシル基に由来するピークが現れていた。このことから、セルロース繊維A1-2~A1-4は、いずれもグルコース単位のC6位水酸基のみがカルボキシル基等に酸化されていることが確認された。
【0109】
【0110】
[実施例1]
セルロース繊維A1-1と粉粒物B-1との質量比率が2.6/97.4となるように両者を加え、かつ水の含有割合が72%となるように水を加え、プラネタリーミキサー(プライミクス株式会社製 ハイビスミックス2P-1型)で40rpm×60分間攪拌した。得られたペースト又は粘土状の組成物を90℃で24時間、送風乾燥機中(ADVANTEC製、DRM620DB)で乾燥させることにより粉体~固形状の粉粒物含有組成物を得た。
【0111】
[実施例2~6]
セルロース繊維A1-1に代えて、セルロース繊維A1-2、A1-3、A1-4、A1-5、A1-6を用いた以外は、実施例1と同様の手法で粉体~固形状の粉粒物含有組成物を調製した。
【0112】
[実施例7]
セルロース繊維A1-4と粉粒物B-1との質量比率が2.6/97.4となるように両者を加え、かつ水の含有割合が72%となるように水を加え、プラネタリーミキサー(プライミクス株式会社製 ハイビスミックス2P-1型)で40rpm×60分間攪拌することで、ペースト又は粘土状の粉粒物含有組成物を調製した。
【0113】
[実施例8]
実施例4で調製した粉粒物含有組成物を100℃で24時間、送風乾燥機中(ADVANTEC製、DRM620DB)で乾燥させることにより粉体~固形状の粉粒物含有組成物を得た。
【0114】
[実施例9、10]
セルロース繊維A1-4と粉粒物B-1との質量比率を表2に記載の通りに変更した以外は、実施例4と同様の手法により、粉体~固形状の粉粒物含有組成物を調製した。
[実施例11]
セルロース繊維A1-4と粉粒物B-1と水の含有量を表2に記載の通りに変更した以外は、実施例7と同様の手法により、粘稠固体状の粉粒物含有組成物を調製した。
【0115】
[実施例12]
実施例11で調製した粉粒物含有組成物を80℃で8時間、送風乾燥機中(ADVANTEC製、DRM620DB)で乾燥させることにより粘稠固体状の粉粒物含有組成物を調製した。
【0116】
[実施例13]
セルロース繊維A1-4と粉粒物B-1と水の含有量を表2に記載の通りに変更した以外は、実施例7と同様の手法によりペースト又は粘土状の粉粒物含有組成物を調製した。
【0117】
[実施例14]
実施例13で調製した粉粒物含有組成物を80℃で8時間、送風乾燥機中(ADVANTEC製、DRM620DB)で乾燥させることにより粘稠固体状の粉粒物含有組成物を得た。
【0118】
[実施例15]
実施例14で調製した粉粒物含有組成物をさらに100℃で24時間、送風乾燥機中(ADVANTEC製、DRM620DB)で乾燥させることにより粉体~固形状の粉粒物含有組成物を得た。
【0119】
[実施例16~18,20~21]
粉粒物の種類を表2に記載の通りに変更し、さらにセルロース繊維A1-4と粉粒物との質量比率を表2に記載の通りに変更した以外は、実施例4と同様の手法により粉体~固形状の粉粒物含有組成物を調製した。
【0120】
[実施例19]
セルロース繊維A1-4と粉粒物B-5との質量比率を50.0/50.0とし、水の含有量が90%となるように、セルロース繊維A1-4、粉粒物B-5および水を加え、超音波ホモジナイザー(ソニックス社製、VC-505)で出力40%にて10分間照射して混合分散させた。その後、90℃で24時間、送風乾燥機中(ADVANTEC製、DRM620DB)で乾燥させることにより粉体~固形状の粉粒物含有組成物を得た。
【0121】
[実施例22]
粉粒物の種類を表2に記載の通りに変更し、さらに各成分の含有量を表2に記載の通りに変更した以外は、実施例7と同様の手法によりペースト又は粘土状の粉粒物含有組成物を調製した。
【0122】
[実施例23]
実施例22で調製した粉粒物含有組成物を90℃で24時間、送風乾燥機中(ADVANTEC製、DRM620DB)で乾燥させることにより粉体~固形状の粉粒物含有組成物を得た。
【0123】
[実施例24]
実施例23で調製した粉粒物含有組成物をさらに100℃で24時間、送風乾燥機中(ADVANTEC製、DRM620DB)で乾燥させることにより粉体~固形状の粉粒物含有組成物を得た。
【0124】
[比較例1、2]
セルロース繊維A1-1に代えて、セルロース繊維A’-1、A’-2を用いた以外は、実施例1と同様の手法で粉体~固形状の粉粒物含有組成物を調製した。
【0125】
[比較例3]
水の含有量を表3に記載の通りに変更した以外は、実施例4と同様の手法でスラリー状の粉粒物含有組成物を調製した。
【0126】
[比較例4、5]
セルロース繊維A1-4と粉粒物B-1との質量比率を表3に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の手法で粉体~固形の粉粒物含有組成物を調製した。
【0127】
[比較例6]
セルロース繊維A1-4と粉粒物B-1との質量比率を0.8/99.2とし、水の含有量が50%となるように変更し、その他は実施例4と同様の手法で組成物を調製した。その後、調製した組成物を90℃で24時間、100℃で24時間、送風乾燥機中(ADVANTEC製、DRM620DB)で乾燥させることにより粉体~固形状の粉粒物含有組成物を得た。
【0128】
[比較例7]
セルロース繊維A1-4と粉粒物B-1との質量比率を87.2/12.8とし、水の含有量が50%となるように変更し、その他は実施例4と同様の手法で組成物を調製した。その後、調製した組成物を90℃で24時間、100℃で24時間、送風乾燥機中(ADVANTEC製、DRM620DB)で乾燥させることにより粉体~固形状の粉粒物含有組成物を得た。
【0129】
[比較例8]
比較例5で調製した粉粒物含有組成物をさらに100℃で24時間、送風乾燥機中(ADVANTEC製、DRM620DB)で乾燥させることにより粉体~固形状の粉粒物含有組成物を得た。
【0130】
[比較例9]
水の含有量を表3に記載の通りに変更した以外は、比較例3と同様の手法でスラリー状の粉粒物含有組成物を調製した。
【0131】
[比較例10]
セルロース繊維A1-4と粉粒物B-1との質量比率を80.0/20.0とし、水の含有量が42%となるように変更し、その他は実施例4と同様の手法で粘稠固体状の組成物を調製した。
【0132】
上記の実施例及び比較例で使用したセルロース繊維及び粉粒物の詳細は以下の通りである。なお、表2及び表3におけるセルロース繊維の含有量は固形分としての質量比率である。
(セルロース繊維)
・A1-1:セルロース繊維A1-1の1質量%水分散体
・A1-2:セルロース繊維A1-2の2質量%水分散体
・A1-3:セルロース繊維A1-3の2質量%水分散体
・A1-4:セルロース繊維A1-4の2質量%水分散体
・A1-5:セルロース繊維A1-5の5質量%水分散体
・A1-6:セルロース繊維A1-6の2質量%水分散体
・A’-1:セルロース繊維A’-1の2質量%水分散体
・A’-2:セルロース繊維A’-2の1質量%水分散体
(粉粒物)
・B-1:アセチレンブラック(デンカ株式会社製、HS-100、BET表面積:39m2/g)
・B-2:ケッチェンブラック(ライオン株式会社製、EC600JD、BET表面積:1270m2/g)
・B-3:カーボンブラック(イメリス社製、Super-P、BET表面積:60m2/g)
・B-4:活性炭(関東化学株式会社製、平均粒子径:20μm)
・B-5:多層カーボンナノチューブ(シグマアルドリッチ製、BET表面積:220m2/g)
・B-6:TiO2(日本アエロジル製、AEROXIDE TiO2 P25、BET表面積:50m2/g)
・B-7:シリコン粒子(エルケム社製、Silgrain e-Si、平均粒子径:3
μm)
・B-8:カーボンファイバー(昭和電工製、VGCF-H、BET表面積:13m2/g)
【0133】
粉粒物含有組成物の含水量の測定方法は、以下の通りである。
5g以上の粉粒物含有組成物Xgを、加熱乾燥式水分計(株式会社エー・アンド・デイ製MX-50)の試料皿にのせ、サンプルを140℃で加熱し、重量変化速度が0.05%/分以下となった重量Yを測定し、下式により含水量を算出する。
組成物の含水量(%)=〔(X-Y)/X〕×100
【0134】
[粉粒物含有組成物の評価]
上記により得られた実施例1~24、および比較例1~10の粉粒物含有組成物について、下記の基準に従って各特性の評価を行なった。その結果を下記表2,3に示した。
【0135】
[粉粒物含有組成物の再分散性]
調製した粉粒物含有組成物を一部取り、全固形分が1.0質量%になるよう水を加え、ホモディスパー(プライミクス株式会社製、2.5型)で1,600rpm×15分間撹拌することによって、粉粒物含有組成物の再分散体を調製した。得られた再分散体を用いてプレパラートを作製し、光学顕微鏡(倍率200倍)で観察することにより、粉粒物含有組成物の再分散性を以下の6段階で評価し、3以上を合格とした。
5:凝集物が見られない
4:1画像中に1~7個の凝集物が見られる
3:1画像中に8~15個の凝集物が見られる
2:1画像中に16~25個の凝集物が見られる
1:1画像中に26個以上の凝集物が見られる
0:1画像中に納まらないほどの大きい凝集物が見られる
【0136】
[粉粒物含有組成物再分散体の塗工性]
調製した粉粒物含有組成物を一部取り、全固形分が13.0質量%になるよう水を加え、ホモディスパー(プライミクス株式会社製)で1,600rpm×15分間撹拌することによって、粉粒物含有組成物の再分散体を調製した。得られた再分散体を、アルミ箔上にベーカー式フィルムアプリケーター((株)安田精機製作所製 No.510)と卓上コーター(三井電気精機(株)製 TC-3型)を用いて塗工した。塗工速度は10mm/秒、塗工厚みは50μm。その際の塗布状態を目視で観察し、以下の5段階で評価し、3以上を合格とした。
5:スジやムラ、凝集物がなく、均一な塗工が可能である
4:部分的にスジやムラ、凝集物などはみられるが、8割方均一な塗工が可能である
3:塗工面積の50%以上の部分にスジやムラ、凝集物に加え、気泡などが確認される
2:塗工面積の80%以上の部分にスジやムラ、凝集物に加え、気泡などが確認され、均一な塗工が難しい
1:塗料がアプリケーター上で転がり、塗工することができない
【0137】
[粉粒物含有組成物の保存安定性]
調製した粉粒物含有組成物の保存安定性を評価するため、経時変化評価を行った。50mLの密閉容器の50体積%を粉粒物含有組成物で満たしたサンプルを準備し、1ヶ月間室温下で放置後、粉粒物含有組成物を容器上部と下部から各2g採取し、水分/揮発分測定装置((株)アクタック製 マーク3)にて粉粒物含有組成物の揮発分測定を行い、固形分濃度の差を以下の6段階で評価し、2以上を合格とした。
5:組成物中における固形分の濃度差が1質量%以下である
4:組成物中における固形分の濃度差が1質量%より大きく2質量%以下である
3:組成物中における固形分の濃度差が2質量%より大きく3質量%以下である
2:組成物中における固形分の濃度差が3質量%より大きく5質量%以下である
1:組成物中における固形分の濃度差が5質量%より大きいが、目視では判断できない
0:目視で確認できる程度に内容物が分離している
【0138】
【0139】
【0140】
結果は表2,3に示す通りである。実施例についてはいずれも十分な再分散性を示しており、セルロース繊維が短く、細いほど良好な再分散性を示した。また、セルロース繊維が増えるほど再分散時に増粘するため、塗工性を考慮すると粉粒物とセルロース繊維の割合にも最適値があると判明した。
【0141】
比較例1に関しては、結晶構造を有していないセルロース繊維であり、再分散させると大きな保護コロイドを生成することから、再分散性は低い傾向にあった。比較例2に関しては、セルロース繊維の短幅の方の繊維幅が大きく、繊維長が長いため繊維同士の絡まりから再分散性は低い結果であった。比較例3に関しては、含水量が多いことから、セルロース繊維と粉粒物との接触が不十分となったためか、セルロース繊維による粉粒物の分散効果に劣り、再分散性が低い結果であった。また、保存安定性にも劣っていた。
【0142】
比較例4に関しては、セルロース繊維/粉粒物の比が小さく、セルロース繊維の含有量が少ないために、再分散性はほとんど有していなかった。比較例5に関しては、セルロース繊維/粉粒物の比が大きく、セルロース繊維の含有量が多いために、再分散性は良好であったものの、再分散時の粘度が高く、塗工段階で空回りする結果となった。比較例6に関しては、セルロース繊維/粉粒物の比が小さく、また粉粒物の含有量が多すぎたため、再分散性はほとんど有していなかった。
【0143】
比較例7に関しては、セルロース繊維/粉粒物の比が大きく、粉粒物の含有量が少ないために、過剰のセルロース繊維同士が凝集し、再分散が難しい結果であった。比較例8に関しては、セルロース繊維/粉粒物の比が大きいため、再分散性は良好であったものの、再分散時の粘度が高く、塗工段階で空回りする結果となった。
【0144】
表2,3の結果より、本実施形態に係る粉粒物含有組成物は良好な再分散性と再分散後塗工性、保存安定性の点で良好な性能を示すことがわかる。
【0145】
[実施例25~28,比較例11]
(A1)セルロース繊維、(A2)カルボキシメチルセルロース塩、(B)粉粒物、および(C)水の含有量を表4に記載の通りに変更した以外は、実施例8と同様の手法により、粉体~固形状の粉粒物含有組成物を得た。
【0146】
実施例25~28及び比較例11で使用したセルロース繊維、カルボキシメチルセルロース塩及び粉粒物の詳細は以下の通りである。なお、表4におけるセルロース繊維の含有量は固形分としての質量比率である。
・A1-2:セルロース繊維A1-2の2質量%水分散体
・カルボキシメチルセルロース塩:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(第一工業製薬(株)製、セロゲンPR、1質量%水溶液粘度(25℃):35mPa・s)
・B-1:アセチレンブラック(デンカ株式会社製、HS-100、BET表面積:39m2/g)
【0147】
上記により得られた実施例25~28及び比較例11の粉粒物含有組成物について、再分散性、塗工性、保存安定性及び導電性の評価を行なった。その結果を下記表4に示した。再分散性、塗工性及び保存安定性の評価方法は上記の通りであり、導電性の評価方法は以下の通りである。
【0148】
[粉粒物含有組成物の導電性]
作製した粉粒物含有組成物を一部取り、乳鉢で十分に粉砕した後、直径12mmのペレット作製のプレス用金型に0.3gの粉粒物含有組成物を挿入し、圧縮装置(理研精機株式会社製、SMP-3,S1-100)で40MPa×30秒間圧縮することによって、粉粒物含有組成物のペレットを調製した。得られたペレットについて、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、ロレスタGP)を用いて導電率を測定し、比較例11の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど導電性が高いことを示す。
【0149】
【0150】
結果は表4に示す通りであり、セルロース繊維とともにカルボキシメチルセルロース塩を併用することで導電性を向上できることが分かる。
【0151】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。