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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】基板処理システム及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20220905BHJP
   H05K 13/00 20060101ALI20220905BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
H05K13/00 Z
G05B19/418 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019016934
(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公開番号】P2020126880
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】荒井 將崇
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058671(JP,A)
【文献】特開2003-133789(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130341(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/131066(WO,A1)
【文献】特開2015-076536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理を施す処理機が複数配列され、処理基板を生産する生産ラインを備える基板処理システムであって、
前記複数の処理機の各々は、
所定の処理位置において基板に処理を施す処理動作を行う処理機構と、
前記処理位置に基板を搬送する搬送動作を行う基板搬送機構と、
前記処理機構を駆動するための処理駆動電力と、前記基板搬送機構を駆動するための搬送駆動電力とを生成する電源回路を構成する主電源回路部と、
前記処理動作を制御するための処理制御信号と、前記搬送動作を制御するための搬送制御信号とを発信する制御回路を構成する主制御回路部と、
前記主電源回路部から前記処理機構へ前記処理駆動電力を供給するための処理用給電経路を構築すると共に、前記主制御回路部から前記処理機構へ前記処理制御信号を供給するための処理用通信経路を構築する処理用経路部と、
前記主電源回路部から前記基板搬送機構へ前記搬送駆動電力を供給するための搬送用給電経路を構築すると共に、前記主制御回路部から前記基板搬送機構へ前記搬送制御信号を供給するための搬送用通信経路を構築する搬送用経路部と、
前記搬送用給電経路の中間部から分岐した分岐給電経路を構築すると共に、前記搬送用通信経路の中間部から分岐した分岐通信経路を構築する分岐経路部と、を含み、
前記複数の処理機のうちの特定の処理機を、前記処理駆動電力及び前記処理制御信号の前記処理機構に対する供給を停止した状態で、前記基板搬送機構の前記搬送動作を実行させる搬送装置として機能させる場合、
前記分岐給電経路は、前記特定の処理機以外の他の処理機における前記主電源回路部から、前記特定の処理機の前記基板搬送機構への電力の供給を可能とし、
前記分岐通信経路は、前記他の処理機における前記主制御回路部から、前記特定の処理機の前記基板搬送機構への信号の供給を可能とする、基板処理システム。
【請求項2】
前記特定の処理機は、前記処理機構に故障が発生した故障機である、請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記複数の処理機の各々と情報通信可能に接続され、前記処理基板の生産に必要な各種情報を管理する情報管理装置を、更に備え、
前記情報管理装置は、前記処理機の仕様に関する仕様情報を、前記複数の処理機の各々に対応付けて記憶する第1記憶部を有し、
前記他の処理機は、前記特定の処理機に対応付けられた前記仕様情報を前記第1記憶部から読み出し、その読み出した仕様情報に基づいて、前記特定の処理機を搬送装置として機能させる、請求項1又は2に記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記情報管理装置は、
前記複数の処理機ごとの、基板に対する処理内容の割り振りを示す分担情報を記憶する第2記憶部と、
前記特定の処理機を搬送装置として機能させる場合に、当該特定の処理機に割り振られていた処理内容を、前記他の処理機の分担に組み入れて、前記分担情報を更新する情報更新部と、を更に有し、
前記他の処理機において、前記処理機構は、前記情報更新部によって更新された前記分担情報に基づいて、前記処理動作を実行する、請求項3に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記他の処理機は、前記特定の処理機の一方側に隣接して配置された処理機であり、
前記他の処理機と、前記特定の処理機の他方側に隣接して配置された処理機とは、前記処理機構による前記処理動作の実施状況を示す基板管理情報の通信が可能に接続される、請求項4に記載の基板処理システム。
【請求項6】
前記複数の処理機の各々は、
前記処理機構及び前記基板搬送機構を収容する本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに開閉自在に設けられたカバー体と、
前記カバー体の開閉状態を検知するインターロック機構と、を更に含み、
前記他の処理機は、前記特定の処理機における前記インターロック機構による検知結果を示す検知信号の受信が可能であって、当該検知信号が前記カバー体の開状態を表す信号である場合に、前記特定の処理機における前記基板搬送機構の前記搬送動作を停止させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記他の処理機は、自身の主制御回路部から前記特定の処理機の前記基板搬送機構へテスト信号を供給し、当該テスト信号の通信が成立した場合に、前記特定の処理機の前記基板搬送機構が正常に動作可能であると判定する、請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記他の処理機は、前記特定の処理機を搬送装置として機能させる場合に、基板の搬送と停止を間欠的に繰り返す間欠搬送モードと、前記特定の処理機内で基板が停止することなく通過するように搬送する通過搬送モードとの間で、搬送モードの切替えが可能である、請求項1~7のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項9】
基板に処理を施す処理動作を行う処理機構と、基板を搬送する搬送動作を行う基板搬送機構とを備えた処理機が複数配列された生産ラインにおける基板処理方法であって、
前記複数の処理機のうちの特定の処理機において、主電源を投入することなく処理機構に対する駆動電力及び制御信号の供給を停止した状態で、基板搬送機構が正常に動作可能であるか否かを判定する判定ステップと、
前記特定の処理機の基板搬送機構が正常に動作可能である場合に、当該基板搬送機構を駆動するための搬送駆動電力と、搬送動作を制御するための搬送制御信号とを、前記特定の処理機以外の他の処理機から供給し、前記特定の処理機を搬送装置として機能させる搬送ステップと、を含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に部品を搭載する実装機などの処理機が複数配列された生産ラインを備えた基板処理システム、及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の基板上に電子部品(以下、単に「部品」という)が搭載された部品搭載基板を生産する生産ラインは、基板上に部品を搭載する実装機などの処理機が複数配列されて構成されている。この生産ラインでは、各処理機で基板を搬送しつつ当該基板に順次処理を施し、処理基板を生産するようになっている。
【0003】
各処理機で基板を搬送して処理を施す際には、その基板の搬送動作と基板に対する処理動作とを制御する必要がある。各処理機での動作を制御する技術が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される技術では、複数の実装機に対して1つのコントローラを設け、このコントローラにより各実装機の動作を制御するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-291996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生産ラインにおいて複数の処理機のうちの1台の処理機が例えば故障し、当該故障した処理機の主電源が投入できない場合、或いは主電源の投入により何らかのトラブルの発生が懸念される場合を想定する。この場合、故障した処理機において基板に対する処理動作が停止されるばかりではなく、基板の搬送動作も停止される。このため、生産ラインの全体として処理基板の生産が停止されてしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の処理機が配列されてなる生産ラインにおいて、特定の処理機における主電源の投入を停止した状態であっても、生産ライン全体としての処理基板の生産停止を回避することが可能な基板処理システム及び基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る基板処理システムは、基板に処理を施す処理機が複数配列され、処理基板を生産する生産ラインを備えるシステムである。この基板処理システムにおいて、前記複数の処理機の各々は、所定の処理位置において基板に処理を施す処理動作を行う処理機構と、前記処理位置に基板を搬送する搬送動作を行う基板搬送機構と、前記処理機構を駆動するための処理駆動電力と、前記基板搬送機構を駆動するための搬送駆動電力とを生成する電源回路を構成する主電源回路部と、前記処理動作を制御するための処理制御信号と、前記搬送動作を制御するための搬送制御信号とを発信する制御回路を構成する主制御回路部と、前記主電源回路部から前記処理機構へ前記処理駆動電力を供給するための処理用給電経路を構築すると共に、前記主制御回路部から前記処理機構へ前記処理制御信号を供給するための処理用通信経路を構築する処理用経路部と、前記主電源回路部から前記基板搬送機構へ前記搬送駆動電力を供給するための搬送用給電経路を構築すると共に、前記主制御回路部から前記基板搬送機構へ前記搬送制御信号を供給するための搬送用通信経路を構築する搬送用経路部と、前記搬送用給電経路の中間部から分岐した分岐給電経路を構築すると共に、前記搬送用通信経路の中間部から分岐した分岐通信経路を構築する分岐経路部と、を含む。前記複数の処理機のうちの特定の処理機を、前記処理駆動電力及び前記処理制御信号の前記処理機構に対する供給を停止した状態で、前記基板搬送機構の前記搬送動作を実行させる搬送装置として機能させる場合を想定する。この場合、前記分岐給電経路は、前記特定の処理機以外の他の処理機における前記主電源回路部から、前記特定の処理機の前記基板搬送機構への電力の供給を可能とし、前記分岐通信経路は、前記他の処理機における前記主制御回路部から、前記特定の処理機の前記基板搬送機構への信号の供給を可能とする。
【0008】
この基板処理システムによれば、複数の処理機の各々は、分岐給電経路と分岐通信経路とを構築する分岐経路部を備えている。分岐給電経路は、主電源回路部から基板搬送機構へ搬送駆動電力を供給するための搬送用給電経路から分岐した給電経路である。分岐通信経路は、主制御回路部から基板搬送機構へ搬送制御信号を供給するための搬送用通信経路から分岐した通信経路である。
【0009】
ここで、例えば、基板に対して部品を搭載するなどの処理の回数が比較的少ない処理基板を生産する際には、複数の処理機のうちの特定の処理機において主電源の投入を停止することによって、生産ライン全体としての電力の消費を軽減することができる。また、複数の処理機のうちの特定の処理機が故障した場合、当該特定の処理機の主電源が投入できない、或いは主電源の投入により何らかのトラブルの発生が懸念される状況となる。このような、複数の処理機のうちの特定の処理機を、主電源の投入を停止した状態とする場合を想定する。この場合、特定の処理機において、主電源回路部から処理機構及び基板搬送機構への電力の供給と、主制御回路部から処理機構及び基板搬送機構への制御信号の供給とができなくなる。
【0010】
そこで、複数の処理機の各々は、上述の分岐給電経路と分岐通信経路とを構築する分岐経路部を備えている。分岐給電経路は、特定の処理機以外の他の処理機における主電源回路部から、特定の処理機の基板搬送機構への電力の供給を可能とする。分岐通信経路は、他の処理機における主制御回路部から、特定の処理機の基板搬送機構への信号の供給を可能とする。これにより、特定の処理機を、処理駆動電力及び処理制御信号の処理機構に対する供給を停止した状態で、基板搬送機構の搬送動作を実行させる搬送装置として機能させることができる。このため、生産ラインにおいて特定の処理機における主電源の投入を停止した状態であっても、生産ライン全体としての処理基板の生産停止を回避することが可能となる。
【0011】
上記の基板処理システムにおいて、前記特定の処理機は、前記処理機構に故障が発生した故障機である。
【0012】
この態様では、処理機構に故障が発生した故障機における基板搬送機構に対し、他の処理機における主電源回路部から分岐給電経路を通じて搬送駆動電力の供給が可能である。更に、故障機における基板搬送機構に対し、他の処理機における主制御回路部から分岐通信経路を通じて搬送制御信号の供給が可能である。これにより、故障機において主電源を投入することなく、当該故障機を搬送装置として機能させることができる。このため、特定の処理機における処理機構の故障に起因した、生産ライン全体としての処理基板の生産停止を回避することが可能となる。
【0013】
上記の基板処理システムは、前記複数の処理機の各々と情報通信可能に接続され、前記処理基板の生産に必要な各種情報を管理する情報管理装置を、更に備える。前記情報管理装置は、前記処理機の仕様に関する仕様情報を、前記複数の処理機の各々に対応付けて記憶する第1記憶部を有する。前記他の処理機は、前記特定の処理機に対応付けられた前記仕様情報を前記第1記憶部から読み出し、その読み出した仕様情報に基づいて、前記特定の処理機を搬送装置として機能させる。
【0014】
この態様では、特定の処理機を搬送装置として機能させる場合に、他の処理機は、特定の処理機の仕様に関する仕様情報を情報管理装置から読み出して取得する。これにより、特定の処理機を搬送装置として機能させるために必要な仕様情報を、例えばオペレーターが他の処理機に対して入力する作業を実施しなくてもよい。このため、特定の処理機の仕様に関する仕様情報の、他の処理機に対する設定に要する時間を短縮することができる。
【0015】
上記の基板処理システムにおいて、前記情報管理装置は、前記複数の処理機ごとの、基板に対する処理内容の割り振りを示す分担情報を記憶する第2記憶部と、前記特定の処理機を搬送装置として機能させる場合に、当該特定の処理機に割り振られていた処理内容を、前記他の処理機の分担に組み入れて、前記分担情報を更新する情報更新部と、を更に有する。そして、前記他の処理機において、前記処理機構は、前記情報更新部によって更新された前記分担情報に基づいて、前記処理動作を実行する。
【0016】
この態様では、搬送装置として機能させる特定の処理機に割り振られていた基板に対する処理動作を、更新された分担情報に基づいて他の処理機において実行することができる。これにより、特定の処理機を搬送装置として機能させつつ、生産ライン全体としての処理基板の生産を継続することができる。
【0017】
上記の基板処理システムにおいて、前記他の処理機は、前記特定の処理機の一方側に隣接して配置された処理機である。そして、前記他の処理機と、前記特定の処理機の他方側に隣接して配置された処理機とは、前記処理機構による前記処理動作の実施状況を示す基板管理情報の通信が可能に接続される。
【0018】
この態様では、搬送装置として機能させる特定の処理機を介さずに、当該特定の処理機以外の処理機間で、基板管理情報の相互通信が可能となる。
【0019】
上記の基板処理システムにおいて、前記複数の処理機の各々は、前記処理機構及び前記基板搬送機構を収容する本体ハウジングと、前記本体ハウジングに開閉自在に設けられたカバー体と、前記カバー体の開閉状態を検知するインターロック機構と、を更に含む。そして、前記他の処理機は、前記特定の処理機における前記インターロック機構による検知結果を示す検知信号の受信が可能であって、当該検知信号が前記カバー体の開状態を表す信号である場合に、前記特定の処理機における前記基板搬送機構の前記搬送動作を停止させる。
【0020】
この態様では、搬送装置として機能させる特定の処理機におけるインターロック機構の検知信号を、他の処理機において受信可能とする。これにより、特定の処理機におけるカバー体が開状態とされたときに、インターロック機構の検知信号に基づいて、他の処理機にて特定の処理機における基板搬送機構の搬送動作を停止させることができる。
【0021】
上記の基板処理システムにおいて、前記他の処理機は、自身の主制御回路部から前記特定の処理機の前記基板搬送機構へテスト信号を供給し、当該テスト信号の通信が成立した場合に、前記特定の処理機の前記基板搬送機構が正常に動作可能であると判定する。
【0022】
この態様では、特定の処理機の基板搬送機構が正常に動作可能であるか否かの判定を、他の処理機において行うことができる。
【0023】
上記の基板処理システムにおいて、前記他の処理機は、前記特定の処理機を搬送装置として機能させる場合に、基板の搬送と停止を間欠的に繰り返す間欠搬送モードと、前記特定の処理機内で基板が停止することなく通過するように搬送する通過搬送モードとの間で、搬送モードの切替えが可能である。
【0024】
この態様では、搬送装置として機能させる特定の処理機における基板搬送機構の搬送動作について、他の処理機において、間欠搬送モードと通過搬送モードとの間で搬送モードの切替えが可能である。これにより、生産ラインにおける処理基板の生産時に、各処理機での基板に対する処理状況に応じて、特定の処理機における基板搬送機構による搬送動作を切替えることができる。
【0025】
本発明の他の局面に係る基板処理方法は、基板に処理を施す処理動作を行う処理機構と、基板を搬送する搬送動作を行う基板搬送機構とを備えた処理機が複数配列された生産ラインにおける基板処理方法である。この基板処理方法は、前記複数の処理機のうちの特定の処理機において、主電源を投入することなく処理機構に対する駆動電力及び制御信号の供給を停止した状態で、基板搬送機構が正常に動作可能であるか否かを判定する判定ステップと、前記特定の処理機の基板搬送機構が正常に動作可能である場合に、当該基板搬送機構を駆動するための搬送駆動電力と、搬送動作を制御するための搬送制御信号とを、前記特定の処理機以外の他の処理機から供給し、前記特定の処理機を搬送装置として機能させる搬送ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、複数の処理機が配列されてなる生産ラインにおいて、特定の処理機における主電源の投入を停止した状態であっても、生産ライン全体としての処理基板の生産停止を回避することが可能な基板処理システム及び基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理システムの構成を概略的に示す図である。
図2】基板処理システムに備えられる処理機としての実装機の構成を示す平面図である。
図3】実装機の電気的構成を示すブロック図である。
図4】複数の実装機のうちの特定の実装機を搬送装置として機能させる場合を説明するための図である。
図5】特定の実装機を搬送装置として機能させる場合の電気的な構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る基板処理システム及び基板処理方法について、図面に基づいて説明する。
【0029】
[基板処理システムの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理システム1の構成を概略的に示す図である。基板処理システム1は、基板に処理を施す複数の処理機が配列されてなる生産ライン2と、情報管理装置10とを備える。前記処理機としては、基板に半田ペーストのパターンを印刷する処理を施す印刷機や、基板に部品を搭載する処理を施す実装機などを挙げることができる。以下では、処理機として前記実装機を例に挙げて説明する。すなわち、生産ライン2には、複数の実装機3が配列されている。図1では、生産ライン2において3台の実装機3が配列された例が示されているが、1つの生産ライン2に配列される実装機3の数は、特に限定されるものではない。また、生産ライン2の数についても、1つのラインに限定されるものではなく、複数の生産ライン2が並設されていてもよい。基板処理システム1においては、複数の実装機3の各々と、情報管理装置10とが情報通信可能に接続されている。
【0030】
生産ライン2では、各実装機3で基板を搬送しつつ部品を順次搭載し、処理基板として部品搭載基板を生産するようになっている。各実装機3において基板に対して部品を搭載する際には、必要に応じて各実装機3と情報管理装置10との間で情報の通信が行われる。
【0031】
<実装機の構成>
まず、図1に加えて図2の平面図及び図3のブロック図を参照して実装機3の構成を説明する。なお、以下では、方向関係については水平面上のXY直交座標軸を用いて説明する。X軸方向の一方向側を「+X側」と称し、X軸方向の一方向側とは反対の他方向側を「-X側」と称する。また、Y軸方向の一方向側を「+Y側」と称し、Y軸方向の一方向側とは反対の他方向側を「-Y側」と称する。
【0032】
実装機3は、基板Pに部品を搭載(実装)する装置である。なお、実装機3による部品の搭載前において基板Pには、図略の塗布装置によって接着剤が塗布されると共に、印刷機によって半田ペーストのパターンが印刷されている。実装機3は、本体ハウジング31と、カバー体32と、本体フレーム33と、部品搭載機構34(処理機構)と、基板搬送機構35と、インターロック機構36と、タッチパネル37と、を備える。なお、図2の平面図では、本体ハウジング31が取り外された状態の実装機3が示されている。
【0033】
本体ハウジング31は、実装機3の外装体を構成し、本体フレーム33、部品搭載機構34及び基板搬送機構35等を収容する。この本体ハウジング31には、カバー体32が取り付けられている。カバー体32は、本体ハウジング31に開閉自在に設けられている。カバー体32が開状態であるときに、実装機3を操作するオペレーターは、本体ハウジング31に収容される部品搭載機構34や基板搬送機構35に対するアクセスが可能である。オペレーターは、カバー体32が開状態であるときに、部品搭載機構34や基板搬送機構35にアクセスし、当該機構のメンテナンス等を実施することができる。一方、実装機3の稼働中にはカバー体32が閉状態とされ、オペレーターの安全性が確保される。すなわち、カバー体32が閉状態であるときには、部品搭載機構34や基板搬送機構35に対するオペレーターのアクセスが不可能とされる。
【0034】
インターロック機構36は、カバー体32の開閉状態を検知する機構である。インターロック機構36は、図1に示すように、インターロックコネクタ361と、待ち受けコネクタ362とを含む。インターロックコネクタ361はカバー体32に設けられ、待ち受けコネクタ362は本体ハウジング31に設けられている。インターロック機構36では、カバー体32が閉状態であるときには、インターロックコネクタ361と待ち受けコネクタ362とが電気的に接続された状態となる。一方、カバー体32が開状態であるときには、インターロックコネクタ361と待ち受けコネクタ362とが電気的に接続されない状態となる。インターロック機構36は、インターロックコネクタ361と待ち受けコネクタ362との電気的な接続状態を検知することによって、カバー体32の開閉状態を検知することができる。
【0035】
タッチパネル37は、実装機3の稼働状況に関する情報などを表示する表示部としての機能を有すると共に、オペレーターの操作によって実装機3の動作に関する指令が入力される入力部としての機能を有する。
【0036】
本体フレーム33は、部品搭載機構34及び基板搬送機構35を構成する各部が配置される構造体であり、X軸方向及びY軸方向の両方向と直交する鉛直方向から見た平面視で略矩形状に形成されている。
【0037】
基板搬送機構35は、コンベア351と、搬送駆動部352(図3)と、搬送検出部353(図3)と、を含む。コンベア351は、X軸方向に延び、本体フレーム33に配置される。コンベア351は、搬送駆動部352の駆動力に基づいて基板Pを、所定の搭載位置(処理位置)に向けてX軸方向に搬送する搬送動作を行う。搬送駆動部352は、コンベア351を駆動させる駆動力を発する機器であって、例えば駆動モーターである。コンベア351上を搬送される基板Pは、部品が搭載される搭載位置に位置決めされるようになっている。搬送検出部353は、コンベア351上を搬送される基板Pを検出可能なセンサである。搬送検出部353による検出結果を示す検出信号に基づいて、搬送駆動部352の駆動が制御されて、コンベア351による基板Pの搬送動作が制御される。
【0038】
なお、図2では、基板Pを搬送するレーンとなるコンベア351が1台であるシングルレーン型の基板搬送機構35が例示されているが、コンベア351が2台となるデュアルレーン型の基板搬送機構35としてもよい。
【0039】
部品搭載機構34は、基板Pに部品を搭載する処理を施す処理機構を構成する。部品搭載機構34は、移動フレーム341と、部品供給部342と、ヘッドユニット343と、第1移動機構344と、第2移動機構345と、搭載駆動部346(図3)と、搭載検出部347(図3)と、を含む。
【0040】
部品供給部342は、本体フレーム33におけるY軸方向の+Y側及び-Y側の領域部分にそれぞれ、X軸方向に2箇所ずつ合計4箇所に配置される。部品供給部342は、基板Pに搭載される部品を供給するものであり、複数の部品供給装置3421が並設される。部品供給装置3421は、基板Pに搭載される部品を所定の部品供給位置に供給する装置である。部品供給装置3421は、部品供給方式の違いにより、テープフィーダー、トレイフィーダー及びスティックフィーダーに大別される。各部品供給部342には、部品供給方式が同一の1種の部品供給装置3421が配置されていてもよいし、部品供給方式が異なる2種以上の部品供給装置3421がそれぞれ配置されていてもよい。テープフィーダーは、部品が収納された部品収納テープを部品供給位置に向けて送出することにより部品を供給する方式の装置である。トレイフィーダーは、複数の部品を保持したトレイが載置されたパレットを部品供給位置に移動させることにより部品を供給する方式の装置である。スティックフィーダーは、筒状のスティックに収納された部品を当該スティックから押し出しながら部品供給位置に供給する方式の装置である。
【0041】
移動フレーム341は、X軸方向に延び、本体フレーム33に、所定の移動方向(Y軸方向)に移動可能に支持される。この移動フレーム341にヘッドユニット343が搭載されている。ヘッドユニット343は、X軸方向に移動可能となるように、移動フレーム341に搭載される。すなわち、ヘッドユニット343は、移動フレーム341の移動に伴ってY軸方向に移動可能であり、且つ、移動フレーム341に沿ってX軸方向に移動可能である。ヘッドユニット343は、部品供給部342とコンベア351により搬送された基板Pの所定の搭載位置とにわたって移動可能とされ、部品供給部342から部品を取り出すとともに、その取り出した部品を基板P上に搭載する搭載動作を行う。
【0042】
ヘッドユニット343は、吸着ノズル3431を備えている。吸着ノズル3431は、部品供給部342により供給された部品を吸着して保持可能な保持具である。吸着ノズル3431は、電動切替弁を介して負圧発生装置、正圧発生装置及び大気の何れかに連通可能とされている。つまり、吸着ノズル3431に負圧が供給されることで当該吸着ノズル3431による部品の吸着保持(部品の取り出し)が可能となり、その後、正圧が供給されることで当該部品の吸着保持が解除される。
【0043】
第1移動機構344は、本体フレーム33の+X側及び-X側の端部に配設される。第1移動機構344は、移動フレーム341をY軸方向に移動させる機構である。第1移動機構344は、例えば、駆動モーターと、Y軸方向に延び、駆動モーターに連結されるボールねじ軸と、移動フレーム341に配設されてボールねじ軸と螺合するボールナットと、を含んで構成される。このような構成の第1移動機構344は、駆動モーターによるボールねじ軸の回転駆動に伴ってボールナットがボールねじ軸に沿って進退することにより、移動フレーム341をY軸方向に移動させる。
【0044】
第2移動機構345は、移動フレーム341に配設される。第2移動機構345は、ヘッドユニット343を移動フレーム341に沿ったX軸方向に移動させる機構である。第2移動機構345は、第1移動機構344と同様に、例えば、駆動モーターと、X軸方向に延び、駆動モーターに連結されるボールねじ軸と、ヘッドユニット343に配設されてボールねじ軸と螺合するボールナットと、を含んで構成される。このような構成の第2移動機構345は、駆動モーターによるボールねじ軸の回転駆動に伴ってボールナットがボールねじ軸に沿って進退することにより、ヘッドユニット343をX軸方向に移動させる。
【0045】
搭載駆動部346は、部品供給部342の部品供給装置3421、ヘッドユニット343、第1移動機構344、及び第2移動機構345をそれぞれ駆動させる駆動力を発する機器群であって、例えば駆動モーター群である。搭載検出部347は、搭載駆動部346によって駆動される各部の動作状況を検出可能なセンサ群である。搭載検出部347による検出結果を示す検出信号に基づいて、搭載駆動部346の駆動が制御されて、部品供給装置3421による部品の供給動作、並びに、ヘッドユニット342、第1移動機構344及び第2移動機構345による基板Pに対する部品の搭載動作が制御される。
【0046】
図3に示すように、実装機3は、電力供給系及び制御系の構成として、主電源回路部41、主制御回路部42、搭載制御部51、搬送制御部52、搭載用経路部6(処理用経路部)、搬送用経路部7、ロック検知通信ケーブル73、及び分岐経路部8を、更に備える。
【0047】
主電源回路部41及び主制御回路部42は、主電源4と直接的に電気的に接続される。主電源回路部41及び主制御回路部42は、主電源4が投入された状態において動作が可能であり、主電源4の投入が解除されると動作が停止される。
【0048】
主電源回路部41は、主電源4が投入されることにより入力される入力電力に基づいて、搭載駆動電力(処理駆動電力)と搬送駆動電力とを生成する電源回路を構成する。前記搭載駆動電力は、部品搭載機構34を駆動するための電力、すなわち、搭載駆動部346を駆動するための電力である。前記搬送駆動電力は、基板搬送機構35を駆動するための電力、すなわち、搬送駆動部352を駆動するための電力である。
【0049】
主制御回路部42は、搭載制御信号(処理制御信号)と搬送制御信号とを発信する制御回路を構成する。前記搭載制御信号は、部品搭載機構34による基板Pに対する部品の搭載動作を制御するための制御信号である。前記搬送制御信号は、基板搬送機構35による基板Pの搬送動作を制御するための制御信号である。主制御回路部42は、搭載検出部347からの検出信号に基づいて前記搭載制御信号を生成し、その生成した搭載制御信号を発信する。また、主制御回路部42は、搬送検出部353からの検出信号に基づいて前記搬送制御信号を生成し、その生成した搬送制御信号を発信する。
【0050】
搭載制御部51は、部品搭載機構34による基板Pに対する部品の搭載動作を制御する部分である。搭載制御部51は、主電源回路部41からの搭載駆動電力を部品搭載機構34へ供給すると共に、主制御回路部42からの搭載制御信号を部品搭載機構34へ供給する。
【0051】
搬送制御部52は、基板搬送機構35による基板Pの搬送動作を制御する部分である。搬送制御部52は、主電源回路部41からの搬送駆動電力を基板搬送機構35へ供給すると共に、主制御回路部42からの搬送制御信号を基板搬送機構35へ供給する。
【0052】
搭載用経路部6は、搭載用給電経路61(処理用給電経路)と搭載用通信経路62(処理用通信経路)とを構築する。搭載用給電経路61は、主電源回路部41から部品搭載機構34へ前記搭載駆動電力を供給するための給電経路である。搭載用通信経路62は、主制御回路部42から部品搭載機構34へ前記搭載制御信号を供給するための通信経路である。
【0053】
搭載用給電経路61は、第1搭載用給電ケーブル611と第2搭載用給電ケーブル612とを含む。第1搭載用給電ケーブル611は、主電源回路部41と搭載制御部51との間を電気的に接続する給電ケーブルである。第2搭載用給電ケーブル612は、搭載制御部51と部品搭載機構34との間を電気的に接続する給電ケーブルである。主電源回路部41から出力された前記搭載駆動電力は、搭載制御部51を経由して、第1搭載用給電ケーブル611及び第2搭載用給電ケーブル612を通じて部品搭載機構34へ供給される。
【0054】
搭載用通信経路62は、第1搭載用通信ケーブル621と第2搭載用通信ケーブル622とを含む。第1搭載用通信ケーブル621は、主制御回路部42と搭載制御部51との間を接続する通信ケーブルである。第2搭載用通信ケーブル622は、搭載制御部51と部品搭載機構34との間を接続する通信ケーブルである。主制御回路部42から発信された前記搭載制御信号は、搭載制御部51を経由して、第1搭載用通信ケーブル621及び第2搭載用通信ケーブル622を通じて部品搭載機構34へ供給される。
【0055】
搬送用経路部7は、搬送用給電経路71と搬送用通信経路72とを構築する。搬送用給電経路71は、主電源回路部41から基板搬送機構35へ前記搬送駆動電力を供給するための給電経路である。搬送用通信経路72は、主制御回路部42から基板搬送機構35へ前記搬送制御信号を供給するための通信経路である。
【0056】
搬送用給電経路71は、第1搬送用給電ケーブル711と第2搬送用給電ケーブル712とを含む。第1搬送用給電ケーブル711は、主電源回路部41と搬送制御部52との間を電気的に接続する給電ケーブルである。第2搬送用給電ケーブル712は、搬送制御部52と基板搬送機構35との間を電気的に接続する給電ケーブルである。主電源回路部41から出力された前記搬送駆動電力は、搬送制御部52を経由して、第1搬送用給電ケーブル711及び第2搬送用給電ケーブル712を通じて基板搬送機構35へ供給される。
【0057】
搬送用通信経路72は、第1搬送用通信ケーブル721と第2搬送用通信ケーブル722とを含む。第1搬送用通信ケーブル721は、主制御回路部42と搬送制御部52との間を接続する通信ケーブルである。第2搬送用通信ケーブル722は、搬送制御部52と基板搬送機構35との間を接続する通信ケーブルである。主制御回路部42から発信された前記搬送制御信号は、搬送制御部52を経由して、第1搬送用通信ケーブル721及び第2搬送用通信ケーブル722を通じて基板搬送機構35へ供給される。
【0058】
ロック検知通信ケーブル73は、主制御回路部42とインターロック機構36との間を接続する通信ケーブルである。ロック検知通信ケーブル73は、インターロック機構36によるカバー体32の開閉状態の検知結果を示す検知信号を伝送するための通信ケーブルである。
【0059】
分岐経路部8は、分岐給電ケーブル81と、第1分岐通信ケーブル82と、第2分岐通信ケーブル83と、分岐経路コネクタ84と、を含む。分岐給電ケーブル81は、搬送用給電経路71の中間部から分岐した分岐給電経路を構築する給電ケーブルである。本実施形態では、分岐給電ケーブル81は、第1搬送用給電ケーブル711から分岐している。第1分岐通信ケーブル82は、搬送用通信経路72の中間部から分岐した第1分岐通信経路を構築する通信ケーブルである。本実施形態では、第1分岐通信ケーブル82は、第1搬送用通信ケーブル721から分岐している。第2分岐通信ケーブル83は、ロック検知通信ケーブル73の中間部から分岐した第2分岐通信経路を構築する通信ケーブルである。分岐経路コネクタ84は、分岐給電ケーブル81、第1分岐通信ケーブル82及び第2分岐通信ケーブル83の各々の先端部に取り付けられたコネクタである。
【0060】
詳細については後述するが、複数の実装機3のうちの特定の実装機3を、部品搭載機構34による搭載動作を停止させた状態で基板搬送機構35の搬送動作を実行させる搬送装置として機能させる場合に、分岐経路部8は利用される。この場合、分岐給電ケーブル81は、前記特定の実装機3以外の他の実装機3における主電源回路部41から、前記特定の実装機3の基板搬送機構35への搬送駆動電力の供給を可能とする。第1分岐通信ケーブル82は、前記他の実装機3における主制御回路部42から、前記特定の実装機3の基板搬送機構35への搬送制御信号の供給を可能とする。第2分岐通信ケーブル83は、前記特定の実装機3におけるインターロック機構36の検知信号の、前記他の実装機3における主制御回路部42への伝送を可能とする。
【0061】
<情報管理装置の構成>
次に、情報管理装置10の構成について、図1を参照して説明する。情報管理装置10は、生産ライン2における部品搭載基板の生産に必要な各種情報を管理する装置である。情報管理装置10は、例えばパーソナルコンピュータからなる。情報管理装置10は、第1記憶部101と、第2記憶部102と、情報更新部103とを備える。
【0062】
第1記憶部101は、実装機3の仕様に関する仕様情報J1を、複数の実装機3の各々に対応付けて記憶する記憶部である。前記仕様情報J1は、実装機3の形式を示す機種情報、基板搬送機構35の仕様を示す搬送仕様情報、実装機3の通信に関する仕様を示す通信仕様情報などの情報を含む。
【0063】
第2記憶部102は、複数の実装機3ごとの、基板Pに対する部品の搭載内容(処理内容)の割り振りを示す部品搭載分担情報J2(分担情報)を記憶する記憶部である。前記部品搭載分担情報J2は、基板Pの識別を示す基板識別情報と、基板Pに搭載すべき部品の識別を示す部品識別情報と、各部品の基板P上での搭載位置を示す部品位置情報と、実装機3の識別を示す実装機識別情報と、が関連付けられた情報である。
【0064】
情報更新部103は、前記特定の実装機3を搬送装置として機能させる場合に、当該特定の実装機3に割り振られていた部品の搭載内容を、前記他の実装機3の分担に組み入れて、前記部品搭載分担情報J2を更新する。
【0065】
[基板処理システムの動作について]
次に、基板処理システム1の動作について、図4及び図5を参照して説明する。なお、本実施形態に係る基板処理方法は、基板処理システム1によって実行される。また、以下の説明では、生産ライン2に備えられる複数の実装機3において、基板Pの搬送方向上流から下流に向かって順番に、実装機3A、実装機3B、実装機3Cと称することとする。
【0066】
生産ライン2において、基板Pに対する部品の搭載点数が比較的少ない部品搭載基板を生産する際には、複数の実装機3A,3B,3Cのうちの特定の実装機3Bにおいて主電源4の投入を停止することによって、生産ライン2全体としての電力の消費を軽減することができる。また、複数の実装機3A,3B,3Cのうちの特定の実装機3Bが故障した場合、当該特定の実装機3Bの主電源4が投入できない、或いは主電源4の投入により何らかのトラブルの発生が懸念される状況となる。このような、複数の実装機3A,3B,3Cのうちの特定の実装機3Bを、主電源4の投入を停止した状態とする場合を想定する。この場合、特定の実装機3Bにおいて、主電源回路部41から部品搭載機構34及び基板搬送機構35への駆動電力の供給と、主制御回路部42から部品搭載機構34及び基板搬送機構35への制御信号の供給とができなくなる。
【0067】
そこで、本実施形態に係る基板処理システム1は、特定の実装機3Bを、搭載駆動電力及び搭載制御信号の部品搭載機構34に対する供給を停止した状態で、基板搬送機構35の搬送動作を実行させる搬送装置として機能させることが可能に構成されている。すなわち、特定の実装機3Bの主電源4の投入を停止した状態で、特定の実装機3B以外の他の実装機3Aによって、特定の実装機3Bの基板搬送機構35を制御し、当該特定の実装機3Bを搬送装置として機能させる。
【0068】
前記他の実装機3Aは、前記特定の実装機3Bの一方側に隣接して配置された実装機であることが望ましい。図4に示すように、前記他の実装機3Aと、前記特定の実装機3Bの他方側に隣接して配置された実装機3Cとの間で基板管理情報J3の通信が可能となるように、実装機3Aと実装機3Cとの間に通信線95が接続される。前記基板管理情報J3は、部品搭載機構34による基板Pに対する部品の搭載動作の実施状況を示す情報である。実装機3Aと実装機3Cとの間に通信線95が接続されることにより、特定の実装機3Bを介さずに、実装機3Aと実装機3Cとの間で、基板管理情報J3の相互通信が可能となる。なお、通信線95の接続は、オペレーターによって行われる。
【0069】
また、図5に示すように、前記特定の実装機3Bの分岐経路部8と、前記他の実装機3Aの分岐経路部8との間が、経路連結体9によって接続される。この経路連結体9を用いた接続作業は、オペレーターによって行われる。経路連結体9は、連結給電ケーブル91、第1連結通信ケーブル92及び第2連結通信ケーブル93の各ケーブルの両端に、経路連結コネクタ94が取り付けられてなる構造体である。経路連結体9の一方の経路連結コネクタ94が、前記他の実装機3Aの分岐経路部8における分岐経路コネクタ84に装着される。経路連結体9の他方の経路連結コネクタ94が、前記特定の実装機3Bの分岐経路部8における分岐経路コネクタ84に装着される。これにより、前記他の実装機3Aと前記特定の実装機3Bの双方の分岐給電ケーブル81同士が、連結給電ケーブル91を介して接続される。また、前記他の実装機3Aと前記特定の実装機3Bの双方の第1分岐通信ケーブル82同士が、第1連結通信ケーブル92を介して接続される。更に、前記他の実装機3Aと前記特定の実装機3Bの双方の第2分岐通信ケーブル83同士が、第2連結通信ケーブル93を介して接続される。
【0070】
なお、分岐経路部8の分岐経路コネクタ84と、経路連結体9の経路連結コネクタ94とは、ショートコネクタを構成する。すなわち、経路連結コネクタ94が分岐経路コネクタ84に装着されない場合には、分岐経路コネクタ84内でショート回路を形成する。一方、経路連結コネクタ94が分岐経路コネクタ84に装着された場合には、前記ショート回路が切断されると共に、分岐経路部8の各ケーブル81,82,83と経路連結体9の各ケーブル91,92,93とが接続される。これにより、前記他の実装機3Aにおける主電源回路部41及び主制御回路部42と、前記特定の実装機3Bにおける基板搬送機構35及びインターロック機構36との間の電気回路が形成される。
【0071】
オペレーターによる上記の通信線95の接続作業、及び経路連結体9の接続作業が終了すると、前記特定の実装機3Bを搬送装置として機能させるようにした、生産ライン2における部品搭載基板の生産が開始される。
【0072】
まず、前記他の実装機3Aは、前記特定の実装機3Bに対応付けられた仕様情報J1を、情報管理装置10の第1記憶部101から読み出して取得する(仕様情報取得ステップ)。これにより、前記特定の実装機3Bを搬送装置として機能させるために必要な仕様情報J1を、例えばオペレーターが前記他の実装機3Aに対して入力する作業を実施しなくてもよい。このため、前記特定の実装機3Bの仕様に関する仕様情報J1の、前記他の実装機3Aに対する設定に要する時間を短縮することができる。
【0073】
次に、前記他の実装機3Aは、前記特定の実装機3Bにおいて主電源4の投入が停止された状態で、前記特定の実装機3Bの基板搬送機構35が正常に動作可能であるか否かを判定する(判定ステップ)。具体的には、前記他の実装機3Aは、自身の主制御回路部42から前記特定の実装機3Bの基板搬送機構35へテスト信号を供給する。実装機3Aの主制御回路部42から出力されたテスト信号は、当該実装機3Aの第1分岐通信ケーブル82、第1連結通信ケーブル92、及び実装機3Bの第1分岐通信ケーブル82を通じて、実装機3Bの基板搬送機構35へ伝送される。前記他の実装機3Aは、前記テスト信号の通信が成立した場合に、前記特定の実装機3Bの基板搬送機構35が正常に動作可能であると判定する。このようにして、前記特定の実装機3Bの基板搬送機構35が正常に動作可能であるか否かの判定を、前記他の実装機3Aにおいて行うことができる。
【0074】
前記特定の実装機3Bの基板搬送機構35が正常に動作可能であることが確認された場合を想定する。この場合、前記他の実装機3Aは、前記特定の実装機3Bの基板搬送機構35に対し、自身の主電源回路部41から搬送駆動電力を供給すると共に、自身の主制御回路部42から搬送制御信号を供給する。
【0075】
ここで、各実装機3に備えられる分岐経路部8において、分岐給電ケーブル81は、前記他の実装機3Aの主電源回路部41から、前記特定の実装機3Bの基板搬送機構35への搬送駆動電力の供給を可能とする。また、第1分岐通信ケーブル82は、前記他の実装機3Aの主制御回路部42から、前記特定の実装機3Bの基板搬送機構35への搬送制御信号の供給を可能とする。これにより、前記特定の実装機3Bを、搭載駆動電力及び搭載制御信号の部品搭載機構34に対する供給を停止した状態で、基板搬送機構35の搬送動作を実行させる搬送装置として機能させることができる(搬送ステップ)。このため、生産ライン2において前記特定の実装機3Bにおける主電源4の投入を停止した状態であっても、生産ライン2全体としての部品搭載基板の生産停止を回避することが可能となる。
【0076】
具体的には、前記他の実装機3Aの主電源回路部41から出力された搬送駆動電力は、当該実装機3Aの分岐給電ケーブル81、連結給電ケーブル91、及び実装機3Bの分岐給電ケーブル81を通じて、実装機3Bの基板搬送機構35へ供給される。また、前記他の実装機3Aの主制御回路部42から出力された搬送制御信号は、当該実装機3Aの第1分岐通信ケーブル82、第1連結通信ケーブル92、及び実装機3Bの第1分岐通信ケーブル82を通じて、実装機3Bの基板搬送機構35へ伝送される。
【0077】
また、前記特定の実装機3Bを搬送装置として機能させる場合、前記他の実装機3Aは、間欠搬送モードと通過搬送モードとの間で搬送モードの切替えが可能に構成される。前記間欠搬送モードは、前記特定の実装機3Bにおいて基板Pの搬送と停止を間欠的に繰り返す搬送モードである。前記通過搬送モードは、前記特定の実装機3B内で基板Pが停止することなく通過するように搬送する搬送モードである。これにより、生産ライン2における部品搭載基板の生産時に、各実装機3での基板Pに対する部品の搭載状況に応じて、前記特定の実装機3Bにおける基板搬送機構35による搬送動作を切替えることができる。なお、前記他の実装機3Aにおける、前記特定の実装機3Bに対する搬送モードの切替えは、前記他の実装機3Aのタッチパネル37に入力されるオペレーターの指令情報に基づき実施される。
【0078】
また、前記他の実装機3Aは、前記特定の実装機3Bにおけるインターロック機構36からの検知信号の受信が可能である。具体的には、前記他の実装機3Aの主制御回路部42と、前記特定の実装機3Bのインターロック機構36とが、各実装機3A,3Bの第2分岐通信ケーブル83、及び第2連結通信ケーブル93を介して接続されている。これにより、前記他の実装機3Aにおいて、前記特定の実装機3Bのインターロック機構36からの検知信号の受信が可能となる。前記他の実装機3Aは、前記検知信号がカバー体32の開状態を表す信号である場合に、前記特定の実装機3Bにおける基板搬送機構35の搬送動作を停止させる。具体的には、前記他の実装機3Aは、自身の主制御回路部42から前記特定の実装機3Bの基板搬送機構35に対し、搬送動作の停止を示す搬送制御信号を供給する。これにより、前記特定の実装機3Bにおけるカバー体32が開状態とされたときに、インターロック機構36の検知信号に基づいて、前記他の実装機3Aにて実装機3Bにおける基板搬送機構35の搬送動作を停止させることができる。
【0079】
また、前記他の実装機3Aは、情報管理装置10の情報更新部103によって更新された部品搭載分担情報J2を、第2記憶部102から読み出して取得する(分担情報取得ステップ)。既述の通り、前記更新された部品搭載分担情報J2は、前記特定の実装機3Bに割り振られていた部品の搭載内容を、前記他の実装機3Aの分担に組み入れられた情報である。そして、前記他の実装機3Aにおいて部品搭載機構34は、部品搭載分担情報J2に基づいて、基板Pに対する部品の搭載動作を実行する。これにより、前記特定の実装機3Bに割り振られていた基板Pに対する部品の搭載動作を、更新された部品搭載分担情報J2に基づいて前記他の実装機3Aにおいて実行することができる。このため、前記特定の実装機3Bを搬送装置として機能させつつ、生産ライン2全体としての部品搭載基板の生産を継続することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 基板処理システム
2 生産ライン
3 実装機(処理機)
31 本体ハウジング
32 カバー体
33 本体フレーム
34 部品搭載機構(処理機構)
35 基板搬送機構
36 インターロック機構
4 主電源
41 主電源回路部
42 主制御回路部
6 搭載用経路部(処理用経路部)
61 搭載用給電経路(処理用給電経路)
62 搭載用通信経路(処理用通信経路)
7 搬送用経路部
71 搬送用給電経路
72 搬送用通信経路
73 ロック検知通信ケーブル
8 分岐経路部
81 分岐給電ケーブル(分岐給電経路)
82 第1分岐通信ケーブル(分岐通信経路)
83 第2分岐通信ケーブル
84 分岐経路コネクタ
9 経路連結体
91 連結給電ケーブル
92 第1連結通信ケーブル
93 第2連結通信ケーブル
94 経路連結コネクタ
10 情報管理装置
101 第1記憶部
102 第2記憶部
103 情報更新部
J1 仕様情報
J2 部品搭載分担情報(分担情報)
J3 基板管理情報
図1
図2
図3
図4
図5