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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20220905BHJP
   H01M 8/04029 20160101ALI20220905BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20220905BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04029
H01M8/04746
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019026980
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020136041
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】永田 優作
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-199557(JP,A)
【文献】特開2011-257977(JP,A)
【文献】特開2006-049182(JP,A)
【文献】特開2007-188667(JP,A)
【文献】特開2005-073400(JP,A)
【文献】特開2000-352391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池を備える燃料電池システムであって、
各燃料電池に対して冷却水を供給し、各燃料電池から排熱を回収する冷却水ラインと、
前記冷却水ライン内の冷却水を各燃料電池へ供給するヘッダー管と、
前記冷却水ラインの圧力の調整を行う循環ポンプと、
前記ヘッダー管内の冷却水の圧力を予め設定された設定圧力値に保つように前記循環ポンプを駆動させる制御部と、
を備え
前記各燃料電池は、前記ヘッダー管内から供給される前記冷却水の流速を調整する流調弁を、当該燃料電池の上流側に備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記ヘッダー管は、前記ヘッダー管内の冷却水の圧力を測定する圧力計を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記冷却水ラインは、
前記ヘッダー管を含み各燃料電池に対して冷却水を供給する冷却水供給ラインと、
各燃料電池から冷却水を回収する排熱回収ラインと、
を備え、
前記循環ポンプは、前記冷却水供給ラインに備えられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記冷却水供給ラインは複数に分岐し、
各燃料電池に対して冷却水を分配することを特徴とする請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記各燃料電池は、前記排熱回収ラインとの離接を切替える弁を備えることを特徴とする請求項または請求項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素との電気的化学反応により発電する装置である。燃料電池は、電気的化学反応を発生させる際に発熱する。燃料電池の発電を継続するには、燃料電池を所定の温度に維持する必要があり、冷却水を供給することで燃料電池の冷却を行っている。
【0003】
換言すると、燃料電池は、電気エネルギー、熱エネルギーを取り出すことのできる装置である。この燃料電池は、小型なものでも高効率の運用が可能である。また、小型の燃料電池を複数台連結し、大型の燃料電池システムとして大きな熱や電力を取り出すことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-027366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池を複数台連結して運転する場合には、それぞれの燃料電池で放熱器を有し、各燃料電池システムで余分な熱を排熱していた。そのため、連結した燃料電池の数と同数の放熱器が必要であった。また、放熱器に接続する放熱用の配管も必要であるため、放熱器が燃料電池の数と同数必要となると、大きな設置スペースが必要であった。また、放熱器の数が多くなるため、放熱器単体では問題とならなかった騒音も問題となっていた。
【0006】
本実施形態の燃料電池システムは、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、複数の燃料電池で発生した排熱を単純な構成により効率よく利用可能とする燃料電池システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る燃料電池システムは、複数の燃料電池を備える燃料電池システムであって、各燃料電池に対して冷却水を供給し、各燃料電池から排熱を回収する冷却水ラインと、前記冷却水ライン内の冷却水を各燃料電池へ供給するヘッダー管と、前記冷却水ラインの圧力の調整を行う循環ポンプと、前記ヘッダー管内の冷却水の圧力を一定以上に保つように前記循環ポンプを駆動させる制御部と、を備え、前記各燃料電池は、前記ヘッダー管内から供給される前記冷却水の流速を調整する流調弁を、当該燃料電池の上流側に備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の構成を示す配管図である。
図2】本実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態の燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
図4】本実施形態の燃料電池システムの冷却水ラインの態様を示す配管図である。
【0009】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。
【0010】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム1は、燃料電池2a~n、冷却水ライン3、ヘッダー管31a、循環ポンプ4、圧力計5、熱交換器6、及び制御部7を備える。
【0011】
燃料電池2a~nは複数の燃料電池であり、水素と酸素との電気的化学反応により発電する装置である。燃料電池2a~nは、複数であれば良くその数は問わない。燃料電池2a~nには、冷却水ライン3と接続され、冷却水が流れる冷却路20a~nがある。冷却路20a~nには、流調弁21a~nが設けられる。燃料電池2a~n内で発生した熱は、冷却路20a~nを流れる冷却水に伝える。排熱を効率良く行うためには、冷却路20a~nを流れる冷却水の流速を調整する必要がある。燃料電池2a~nは、冷却水ライン3の冷却水の圧力が上下した場合においても、流量制御が可能な流調弁21a~nにより冷却路20a~nの流速を調整している。
【0012】
冷却路20a~nの入口は、冷却水供給ライン3aと接続される。この接続部分には、手動弁22a~nが配置される。一方、冷却路20a~nの出口は、排熱回収ライン3bと接続される。この接続部分には、手動弁23a~nが配置される。
【0013】
冷却水ライン3は、燃料電池2a~nに対して冷却水を供給し、燃料電池2a~nから冷却水を回収する。冷却水ライン3は、燃料電池2a~nと熱交換器6との間で冷却水を循環させる。冷却水ライン3は、冷却水供給ライン3aと、排熱回収ライン3bとを備える。
【0014】
冷却水供給ライン3aは、熱交換器6と燃料電池2a~nとを接続する管より構成される。冷却水供給ライン3aは、冷却路20a~nの入口側に接続される。冷却水供給ライン3aは、熱交換器6で冷却された冷却水を燃料電池2a~nに対して供給する。冷却水供給ライン3aは、ライン内の冷却水を燃料電池2a~nに分配するヘッダー管31aを備える。ヘッダー管31aは、循環ポンプ4及び圧力計5を備える。
【0015】
循環ポンプ4は、内蔵するモータにより冷却水供給ライン3a内の冷却水に対して圧力を加える。循環ポンプ4は、モータの回転数を可変させることで、冷却水の吐出量を可変させ、冷却水供給ライン3a内の冷却水に対して圧力を加える。圧力計5は、ヘッダー管31a内の冷却水の圧力を計測する。
【0016】
排熱回収ライン3bは、燃料電池2a~nと熱交換器6とを接続する管より構成される。排熱回収ライン3bは、冷却路20a~nの出口側に接続される。燃料電池2a~nから排出される冷却水の圧力により、冷却水を熱交換器6まで循環させる。
【0017】
熱交換器6は、冷却水から熱を回収し、冷却水ライン3内の冷却水の温度を低下させる。熱交換器6は、熱交換器に限らず空冷ファン、ラジエターなどの冷却水ライン3内の冷却水の熱を回収する公知の放熱手段を適宜使用することができる。
【0018】
制御部7は、ヘッダー管3a内の冷却水の圧力を一定以上に保つように循環ポンプ4を駆動させる。制御部7は、圧力検出部71、記憶部72、ポンプ制御部73、ポンプ動作指示部74を備える。
【0019】
圧力検出部71は、圧力計5から周期的にヘッダー管31a内の圧力値を受信する。記憶部72には、保つべきヘッダー管31a内の圧力である設定圧力値Psが記憶される。制御部7は、図示しない入力インターフェースを介して、ユーザからの設定圧力値Psの入力を受け付ける。
【0020】
ポンプ制御部73は、ヘッダー管31a内の圧力値が設定圧力値Psと同じになるような循環ポンプ4の回転数を算出する。循環ポンプ4の回転数の算出は、比例制御と積分制御を用いたフィードバック制御(PI制御)により行う。PI制御は、PとIとのそれぞれの制御により、検出したヘッダー管31a内の圧力値を設定圧力値Psに一致させる循環ポンプの回転数を算出する。ポンプ動作指示部74は、算出した循環ポンプ4の回転数に基づいて、循環ポンプ4を動作させる。
【0021】
[1-2.作用]
以上のような構成を有する本実施形態の燃料電池システム1では、ヘッダー管31a内の圧力が設定圧力値Psとなるように循環ポンプ4を動作させる。図3は、本実施形態の燃料電池システム1の動作を示すフローチャートである。
【0022】
燃料電池システム1の運転が開始される前に、予め設定圧力値Psを設定しておく。そして、燃料電池システム1において、発電が開始されると、圧力検出部71は、圧力計5の検出結果を周期的に受信する(S1)。
【0023】
そして、ポンプ制御部73は、ヘッダー管31a内の圧力値が設定圧力値Psと同じになるようフィードバック制御を行い循環ポンプ4の回転数を算出する。そして、ポンプ動作指示部は、算出結果に基づいて循環ポンプを駆動させる。これにより、ヘッダー管31a内の冷却水の圧力を一定に保たれる(S2)。
【0024】
以上のS1~S2の動作を、燃料電池システム1において発電が停止するまで継続する(S3)。
【0025】
[1-3.効果]
(1)以上の構成を備える燃料電池システム1では、複数の燃料電池を連結した場合に、冷却水ライン3を1本とすることができ、冷却水ライン3に設置する放熱器6、循環ポンプ4は1台ずつの設置で済む。また、燃料電池2a~nの運転状態が異なった場合に、ヘッダー管31a内の圧力を設定圧力値Psに保つように循環ポンプ4を駆動させることにより、燃料電池2a~nに供給される冷却水の圧力を一定とすることが可能となる。
【0026】
燃料電池2a~nは、供給先の電力需要に応じて、効率の良い定格の中間出力付近で運転を行う制御を行っている。例えば、10台100kWの燃料電池2a~nを連結する場合、高効率化のため各燃料電池2a~nの発電出力は異なる。その場合、各燃料電池2a~nで必要な排熱回収水流量は異なり、燃料電池2a~n内の流調弁21a~nで制御される冷却水の流速も異なる。また、1台の燃料電池で発電出力を変更した場合など排熱回収水流量を変更する場合など1つの流調弁の開度を変更することで、ヘッダー管31a内の圧力が変動し、他の燃料電池での流量制御に影響がでる可能性があった。
【0027】
本実施形態では、ヘッダー管31a内の圧力を設定圧力値Psに保つように循環ポンプを駆動させることで、システム内の燃料電池2a~nのいずれかで流調弁の開度が変わったとしても、ヘッダー管31a内の圧力は一定に保たれるため、各燃料電池2a~nでの冷却水の流量制御を円滑に行うことが可能となる。
【0028】
(2)本実施形態の燃料電池システム1では、ヘッダー管内に冷却水の圧力を測定する圧力計5を備える。これにより、直接的にヘッダー管31a内の圧力を測定することができるため、各燃料電池2a~nでの冷却水の流量制御を円滑に行うことが可能となる。
【0029】
(3)本実施形態の燃料電池システム1の各燃料電池2a~nには、流速を一定にする流調弁を介してヘッダー管内から冷却水が供給される。これにより、ヘッダー管内の冷却水の圧力制御にタイムラグが生じ、ヘッダー管内の圧力が設定値よりズレた場合にでも、流調弁の性能の範囲において冷却水の流量制御を円滑に行うことが可能となる。
【0030】
(4)本実施形態の燃料電池システム1は循環ポンプ4、冷却水供給ライン3aを備える。冷却水供給ライン3aでは、循環ポンプ4はヘッダー管31aすぐ上流に配置される。そのため、循環ポンプ4の回転数を変更した場合に、すぐにヘッダー管31a内の圧力に影響ができるため、圧力制御のタイムラグが生じにくい。このため、各燃料電池2a~nでの冷却水の流量制御を円滑に行うことが可能となる。
【0031】
(5)本実施形態の燃料電池システム1では、図1に示すように、冷却水供給ライン3a及び排熱回収ライン3bは、分岐がない1本の管で構成された。しかしながら、各燃料電池2a~nに対して冷却水を供給及び回収することができるならば、これに限らない。例えば、図4に示すように、4台の燃料電池2a~dに対して冷却水を供給及び回収する場合には、2つの分岐の有する冷却水供給ライン3a及び排熱回収ライン3bを用いても良い。この場合、冷却水供給ライン3aにおいては、循環ポンプの下流のヘッダー管31aに分岐を設けることで、ヘッダー管内の圧力を一定に保つことができ、各燃料電池2a~nでの冷却水の流量制御を円滑に行うことが可能となる。
【0032】
(6)本実施形態の燃料電池2a~nでは、燃料電池2a~nの冷却路の出口に、冷却路20a~nを排熱回収ライン3bから切り離すための手動弁23a~nを設ける。他の燃料電池で発電中に、ある燃料電池の運転を停止する場合、流調弁21a~nが動作しなくなる可能性がある。その場合、ヘッダー管31a内の冷却水は、停止中の燃料電池内の冷却路20を経由して、圧力損失なく排熱回収ライン3bに流れる。そのため、循環ポンプの回転数を上げても、ヘッダー管31a内の圧力が上昇しなくなる。この現象を回避するため、停止中の燃料電池に対して冷却水の供給を遮断することが好ましい。故に、燃料電池2a~nの冷却路の出口に冷却路を排熱回収ライン3bから切り離すための手動弁23a~nを設けることで、手動弁23a~nを閉じることで冷却路20a~nを冷却水が損失なく流すことができる。
【0033】
停止中の燃料電池への冷却水の供給を遮断するためには、冷却路20a~nと排熱回収ライン3bとの間に手動弁23a~nをもうけることが好ましいが、冷却水供給ライン3aと冷却路20a~nとの間に手動弁22a~nを設け、この手動弁22a~nにより冷却水供給ライン3aからの冷却水の供給を遮断しても良い。手動弁22a~n、及び手動弁23a~nは、片方だけでなく、両方を備えても良いのは言うまでもない。
【0034】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1…燃料電池システム
2a~n…燃料電池
20a~n…冷却路
21a~n…流調弁
22a~n…手動弁
23a~n…手動弁
3…冷却水ライン
3a…冷却水供給ライン
31a…ヘッダー管
3b…排熱回収ライン
4…循環ポンプ
5…圧力計
6…熱交換器
7…制御部
71…圧力検出部
72…記憶部
73…ポンプ制御部
74…ポンプ動作指示部
図1
図2
図3
図4