(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】撹拌方法
(51)【国際特許分類】
B01F 27/00 20220101AFI20220905BHJP
B01F 27/86 20220101ALI20220905BHJP
B01F 27/90 20220101ALI20220905BHJP
B01F 35/00 20220101ALI20220905BHJP
【FI】
B01F27/00
B01F27/86
B01F27/90
B01F35/00
(21)【出願番号】P 2019107764
(22)【出願日】2019-06-10
(62)【分割の表示】P 2015138449の分割
【原出願日】2015-07-10
【審査請求日】2019-06-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹マルチミクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好一
(72)【発明者】
【氏名】岸 直樹
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】河本 充雄
【審判官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-159005(JP,A)
【文献】特開平7-60093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F27/
B09B 3/
C02F 3/,11/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化槽である撹拌槽と、
該撹拌槽に設けた回転軸に固定された回転翼と、
該撹拌槽の底部に設けた放射状に延びる静翼と、
該回転翼の回転を制御する回転制御装置とよりなる撹拌装置を用いて行う撹拌方法であって、
第1の所望の時間
、消化率に影響を与えない範囲で該撹拌槽内底部に堆積物の堆積が発生する程度の第1の所望の撹拌回転数で、該回転翼が回転するように、前記回転制御装置により制御する第1の工程と、
前記第1の工程に後続する前記第1の所望の時間よりも短い第2の所望の時間、前記第1の撹拌回転数より増速した
、該撹拌槽内底部に貯まった堆積物を上昇させ
ると共に、該撹拌槽内の均一化を図る程度の第2の所望の撹拌回転数で前記回転翼が回転するように、前記回転制御装置により制御する第2の工程とよりなることを特徴とする撹拌方法。
【請求項2】
前記第1の工程及び前記第2の工程を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の撹拌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撹拌方法、例えば、生汚泥や余剰汚泥や生ゴミをメタン発酵させて処理する消化槽や、液体とスラリーが混在した液体を撹拌する撹拌槽や、扁平槽など、液体撹拌、固液撹拌、気液撹拌等の種々の撹拌に対しても適用可能な撹拌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、消化槽内の撹拌には、槽内を均一に保ち、消化率(有機物分解率)を維持することが必要となる性能の一つとなる。合わせて、投入する汚泥には無機物の固形分等が含まれており、沈降性が高い。それら固形物が底部に沈降し堆積することで、消化槽内の有効容量が低下し、消化率に悪影響を及ぼす。
【0003】
また、槽内底部に堆積物が発生することで、槽内点検時の点検作業の妨げとなり、必要に応じて堆積物除去(浚渫)する手間が増加すること、或いは状況によっては廃棄物処理が必要になるなどコストが増加する問題がある。
【0004】
そこで、槽内底部に堆積物を発生させずに撹拌することが求められるが、撹拌強度を増加することは撹拌動力の増加につながってしまう。
【0005】
図10は、前記の問題点を解決した従来の生物処理に適用する撹拌装置aを示し、該撹拌装置aは、円筒状の撹拌槽bと、該撹拌槽b内の底部に設けた放射状に延びる複数の静翼cと、該静翼cの上部であって、液面下方付近に設けた、放射状に延びる、例えば4枚の翼体eからなる回転翼dとよりなり、該翼体eは、前記回転翼dの回転方向に対して直角な面を有する、直線の矩形状の帯板状のフラットパドル翼よりなる。
【0006】
前記従来の撹拌装置aにおいては、槽b内の担体にダメージを与えることなく、低せん断、低動力にて運転が可能で、撹拌槽b内を極めて均一に、且つ容易に撹拌できる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の撹拌装置は、低動力にて運転が可能であるが、近年においては、更に低動力で、かつ、従来同様の撹拌性能を要求される。
【0009】
本発明は、前記従来の撹拌装置を更に改良したもので、より低動力で、かつ、撹拌槽内を極めて均一に撹拌できる撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の撹拌装置は、撹拌槽と、該撹拌槽内に設けた回転翼と、該撹拌槽の底部に設けた放射状に延びる静翼とよりなり、前記回転翼は、1又は複数のフラットテーパー翼からなることを特徴とする。
【0011】
また、前記フラットテーパー翼は、その外形形状が、前記撹拌翼の回転軸から外方に向かって徐々に面積が小さくなる形状であることを特徴とする。
【0012】
また、前記フラットテーパー翼は、該フラットテーパー翼の外形形状が、水平方向に延びる上側辺と、垂直方向に延びる外側辺と、垂直方向に延びる内側辺と、外方に向かって直線状に斜め上方に延びる下側辺とよりなることを特徴とする。
【0013】
また、前記回転翼の回転を制御する回転制御装置を更に有することを特徴とする。
【0014】
また、前記回転制御装置は、前記回転翼の回転速度を変化させる制御装置であることを特徴とする。
【0015】
また、前記回転制御装置は、前記回転翼の回転を正逆回転させる制御装置であることを特徴とする。
【0016】
本発明の撹拌方法は、消化槽である撹拌槽と、該撹拌槽に設けた回転軸に固定された回転翼と、該撹拌槽の底部に設けた放射状に延びる静翼と、該回転翼の回転を制御する回転制御装置とよりなる撹拌装置を用いて行う撹拌方法であって、第1の所望の時間、消化率に影響を与えない範囲で該撹拌槽内底部に堆積物の堆積が発生する程度の第1の所望の撹拌回転数で、該回転翼が回転するように、前記回転制御装置により制御する第1の工程と、前記第1の工程に後続する前記第1の所望の時間よりも短い第2の所望の時間、前記第1の撹拌回転数より増速した、該撹拌槽内底部に貯まった堆積物を上昇させると共に、該撹拌槽内の均一化を図る程度の第2の所望の撹拌回転数で前記回転翼が回転するように、前記回転制御装置により制御する第2の工程とよりなることを特徴とする。
【0017】
また、前記第1の工程及び前記第2の工程を複数回繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、撹拌槽内を極めて均一に、且つ容易に撹拌できると共に、より低動力で運転が可能となる。
【0019】
また、本発明によれば、従来の翼体に比べて、翼体(フラットテーパー翼)を小さくできるので、撹拌槽の開口部を小さくできる、又は、開口部が小さい撹拌槽にも適用することができる、或いは、撹拌槽の開口部からの出し入れがしやすくなり、メンテナンスが容易となる。
【0020】
また、本発明によれば、従来の翼体に比べて、槽内中央部の上昇流を、前記翼体(フラットテーパー翼)により、より効果的に外方に吐出することができるので、吐出量を大きくできると共に、槽底部における流速を高めることができる。また、本発明によれば、従来の翼体よりも小さい翼体を用いても、低動力で、従来の翼体と同じ吐出量或いは層底部における流速を同じにすることができる。
【0021】
また、回転翼の回転を制御することにより、平均的な動力を従来以下とすることができるようになる。
【0022】
また、回転翼を折り畳むことができるので、撹拌槽の開口部を小さくできる、又は、開口部が小さい撹拌槽にも適用することができる、或いは、撹拌槽の開口部からの出し入れがしやすくなり、メンテナンスが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例1の撹拌装置の縦断正面図である。
【
図4】従来のフラットパドル翼の説明用縦断正面図である。
【
図5】本発明のフラットターパー翼の説明用縦断正面図である。
【
図6】レイノルズ数と動力数との関係を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施例1の他の実施例の撹拌装置の縦断正面図である。
【
図8】本発明の実施例2の回転翼の説明用拡大正面図である。
【
図9】本発明の実施例2の回転翼の説明用拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0025】
【0026】
1は、本発明の実施例1の撹拌装置を示し、2は、該撹拌装置1の撹拌槽であり、該撹拌槽2は、例えば、直径20mの縦型の円筒状、楕円筒状又は矩形筒状に形成され、該撹拌槽2の天井部2aの中央部には、開口部3と、該開口部3の蓋部4が設けられている。
【0027】
5は、回転翼を示し、該回転翼5は、回転軸5aの下端にボス部5bを介して半径方向外方に放射状に固定した、例えば、4枚の翼板6からなり、前記回転軸5aは、前記撹拌槽2の中心軸と同軸に垂下し、前記蓋部4を貫通して設けられ、前記回転翼5は、前記撹拌槽2内に挿入されている。
【0028】
また、前記翼板6は、前記回転軸5aの回転方向に対して直角な面を有する、台形板状のフラットテーパー翼よりなり、該翼板6の外形形状は、回転軸5aから外方に向かって徐々に面積が小さくなる形状であり、例えば、水平方向に延びる上側辺6aと、垂直方向に延びる外側辺6bと、垂直方向に延びる内側辺6cと、外方に向かって直線状に斜め上方に延びる下側辺6dとよりなる。
【0029】
そして、前記回転翼5は、前記撹拌槽2の上方に設けたモータ7の駆動により該回転軸5aを介して、該撹拌槽2内の被処理液内の液面近傍において回転するようにした。
【0030】
8は、静翼を示し、該静翼8は、例えば、直線状の帯状板からなり、該帯状板は、前記撹拌槽2内の底部2bの中心部に放射状に、例えば、4枚固定されると共に、これら帯状板の交差部に相当する該底部の中心部には隙間が形成されている。
【0031】
次に本発明の撹拌装置の作用と効果を説明する。
【0032】
例えば、生汚泥や余剰汚泥や生ゴミなどを含む排水と該排水を処理してメタン発酵をさせる微生物などを含んだ被処理液が容れられた消化槽として使用する撹拌槽2において、前記回転翼5を回転すれば、前記被処理液は、
図1に示すように、下方に向かう、前記撹拌槽2の内周面に沿う旋回流を生ずると共に、底部2bの静翼8により中心部で上昇流を生じ、該被処理液は、前記撹拌槽内で循環するようになる。
【0033】
ところで、本願のフラットテーパー翼からなる翼板6は、従来のフラットパドル翼eに比べて、翼体の動力数(Np)を下げることができる。
【0034】
ここで、一般に、回転翼を回転させるためのモータ出力(P)は、動力数(Np)×回転数(N)3×翼径(d)5で表せるので、モータ出力(P)を一定とした場合、動力数(Np)を下げることにより、回転数(N)を上げることができる。
【0035】
また、撹拌槽底部に堆積物が堆積しないように撹拌槽内を撹拌するためには、撹拌槽底部における流速が重要であり、該流速は、翼の翼先端速度と関係し、該翼の翼先端速度(VTip=N×d×π)を一定とした場合に、回転数(N)を上げることにより、翼径(d)を下げることができる。
【0036】
以上より、モータ出力(P)は、回転数(N)の三乗に比例し、翼径(d)の五乗に比例することより、従来のフラットパドル翼と本願のフラットテーパー翼の翼先端速度(VRip)を同じにした場合、回転数(N)を上げることにより動力(P)が上がる効果よりも、翼径(d)を小さくすることにより動力(P)を下げる効果の方が大きい。
【0037】
従って、従来のフラットパドル翼eを用いる代わりに、本願発明のフラットテーパー翼からなる翼板6を用いることにより、従来のフラットテーパー翼の翼径よりも翼径の狭い該翼板6を用いることができるので、従来のフラットパドル翼eの撹拌効果を維持しつつ、効果的に、モータ出力(動力)を下げることができるようになる。
【0038】
更に、本発明の撹拌装置においては、静翼8を用いて、槽内底部の中心部で上昇流を生じさせているため、フラットテーパー翼からなる翼板6の基部部分の面積の広い部分で、該上昇流を受け、より効果的に、被撹拌液を半径方向に吐出することができる。
【0039】
従って、静翼8を用いずに、フラットテーパー翼のみを用いて撹拌した場合に比べて、静翼8とフラットテーパー翼の双方を用いて撹拌した場合の方が、同条件で半径方向への吐出量を増やすことができると共に、層底部における流速を高めることができる。従って、層底部における流速を同じにするという条件で、フラットテーパー翼のみを用いた場合と、静翼8とフラットテーパー翼の双方を用いた場合とを比較した場合、該フラットテーパー翼の方が翼径を小さくすることができるので、翼径を小さくできる効果により、更に効果的に、動力を下げることができるようになる。
【0040】
本発明によれば、従来のフラットパドル翼の撹拌装置と同程度の撹拌性能を維持しつつ、翼径の小さい翼体を用いることができるので、従来よりも低動力とすることができるようになる。
【0041】
以下、
図4~
図6において、従来のフラットパドル翼の一例と、本発明のフラットテーパー翼の一例とを比較して説明する。
【0042】
本発明において適用する消化槽等においては、撹拌槽底部に堆積物が堆積しないように撹拌槽内を撹拌するためには、撹拌槽底部における流速が重要であり、該流速は、低動力で、かつ、撹拌槽底部に堆積物が堆積しない流速が最適な流速となる。そして、かかる流速は、翼の面積に大よそ比例する。
【0043】
そこで、最適の流速となる翼の面積において、もっとも動力数が小さくなるフラットパドル翼の形状を調べるため、該フラットパドル翼の面積を一定となるように、フラットパドル翼の形状を変化させて、動力特性と流動作用の関係を実験と数値シミュレーションにより求めた。
【0044】
その結果、最適な従来のフラットパドル翼の一例を
図4に示す。
【0045】
該フラットパドル翼は、撹拌槽の直径Dが12m、水面からフラットパドル翼までの距離hが1.5m、静翼の翼径が3.4m、翼幅が0.8mの場合において、フラットパドル翼の翼径dが4.2m、翼幅bが1.1mとなる。なお、槽底部の流動化の基準とする流速が10cm/s以上得るのに必要な翼の先端周速は、Vyip≧1.05m/sであった。
【0046】
次に、本発明のフラットテーパー翼の一例を
図5に示す。
【0047】
該フラットテーパー翼は、撹拌槽の直径Dが12m、水面からフラットパドル翼までの距離hが1.1m、静翼の翼径が3.4m、翼幅が0.8mの場合において、翼径が4.0m、翼幅b2(内側辺6c)が1.4m、翼幅b1(外側辺6b)が0.6mのフラットテーパー翼となる。なお、槽底部の流動化の基準とする流速が10cm/s以上得るのに必要な翼の先端周速は、Vyip≧1.10m/sであった。
【0048】
また、
図6は、扁平型消化槽において、レイノルズ数(Re)における、前記従来のフラットパドル翼の動力数(Np)と、前記本発明のフラットテーパー翼の動力数を実験により求めた結果を示す。
【0049】
この実験結果より、前記従来のフラットパドル翼の翼径(4.2m)に比べて、前記本発明のフラットテーパー翼の翼径(4.0m)の動力数(Np)が低いことが判る。
【0050】
以上より、前記本発明のフラットテーパー翼は、前記従来のフラットパドル翼に比べて、翼径、翼面積、翼重量が小さいにも関わらず、同じ、槽底部の流動化の基準とする流速とした場合、フラットパドル翼に比べて、上述したように、フラットテーパー翼の方が動力数を小さくすることができると共に、先端周速が上がるものの、翼径が小さくできるので、動力数(Np)×回転数(N)3×翼径(d)5で表されるモータ出力(P)を下げることができるようになる。
これにより、フラットテーパー翼は、製品のイニシャルコストと、消費動力のランニングコスト両面で優位であると言える。
【0051】
なお、従来のフラットパドル翼eの横径が例えば、9mの場合、本願発明のフラットテーパー翼の翼体6の横径を6mとしても、略同程度の撹拌性能を発揮することができる。
【0052】
また、本願発明では、翼板6の翼径を小さくすることができるので、前記撹拌槽2の開口部3の径を従来に比べて小さく設計することができる。また、開口部3の小さい撹拌槽2も利用できるようになる。また、撹拌槽2の開口部3から、前記回転翼5の取り出しが容易となる。
【0053】
なお、
図7に示すように、前記モータ7にインバータ装置や可変変速装置などを有する回転制御装置9を別途設け、該回転制御装置9により、前記回転翼5の回転速度を定期的に変化させたり、前記回転翼の回転を正逆回転させたりできるようにする。
【0054】
具体的には、前記回転制御装置9を用いて、通常時は、消化率に影響を与えない範囲で、槽内底部2bにスラリー等の堆積物の堆積が発生する程度の第1の所望の撹拌回転数で、第1の所望の時間だけ、前記回転翼5を回転させる。そして、該第1の所望の時間経過後に、第2の所望の時間だけ前記第1の撹拌回転数より増速した第2の撹拌回転数で前記回転翼5を回転させ、槽内底部2bに貯まった堆積物を上昇させるようにすると共に、槽内の均一化を図る。
【0055】
そして、必要に応じて、更に、前記第2の所望の時間経過後に、前記第1の所望の時間だけ、前記通常時における第1の撹拌回転数で前記撹拌翼5を回転させ、そして、該第1の所望の時間経過後に、前記第2の所望の時間だけ、前記第2の所望の撹拌回転数で前記回転翼5を回転させ、槽内底部2bに貯まった堆積物を上昇させると共に、槽内の均一化を図り、必要に応じて、これを繰り返す。
【0056】
そして、前記通常時の第1の所望の時間における運転時間を長くし、かかる運転時間が長い低速運転と、前記第2の所望の時間における運転時間を短くし、かかる運転時間が短い増速運転とすることにより、平均的な動力を従来以下とすることができるようになる。
【0057】
なお、設備運用方法によっては、槽内の被処理液を間欠的に引き抜く運用を実施する設備の場合には、槽内の被処理液を引き抜く前に増速運転を実施し、他の期間は、低速で運転するようにしてもよい。
【0058】
また、前記回転制御装置9により、定期的に前記撹拌翼5を逆転回転させるようにしてもよい。
【0059】
かかる制御により、逆向きの流れを生じさせ、槽内の配管や回転翼等に絡み付いた、し渣と呼ばれる、投入汚泥中の繊維成分を除去できるようになる。
【実施例2】
【0060】
本発明の第2の実施例においては、
図8及び
図9に示すように、実施例1における回転翼5の各翼板6の基部を、前記回転軸5aのボス部5bに設けた枢支点10を介して上下方向に(半径方向に伸びる軸回りに)傾動自在に連結すると共に、前記各翼板6の材質を、被処理液の比重よりも小さい比重のものとする。
【0061】
また、前記翼板6が所望の傾斜角度よりも傾動しないようにする傾動阻止部11を設ける。
【0062】
本発明の第2の実施例においては、前記回転翼5を被処理液内に挿入していない場合には、該回転翼5は、
図6に示すように、重力で各翼体6が下方に垂下し、折り畳み状態となる。
【0063】
そして、該折り畳まれた前記回転翼5を、前記撹拌槽2内の被処理液内に挿入すれば、
図5に示すように、前記各翼体6は、浮力により、前記翼体6が上方に傾動する。
【0064】
そして、前記回転翼5を回転させる際の前記各翼体6の所望の傾斜角度まで傾動した時、例えば、前記翼体が水平に開いた時に、前記翼体6の上端が前記傾動阻止部11に当接して、その傾動が阻止され、前記各翼体6の回転使用時における所望の傾斜角度で、前記各翼体6を開いた状態とすることができる。
【0065】
なお、前記翼体6が、浮上する際、反対方向に傾動(回動)してしまうのを防ぐために、必要に応じて、前記翼板6の回転方向を規制する規制手段(図示せず)を設けても良い。
【0066】
以上の状態で、前記回転翼5を回転させることにより、前記撹拌槽2内を撹拌できるようになる。
【0067】
本発明の第2の実施例によれば、回転使用時における回転翼5の翼径が、前記撹拌槽2の開口部3の開口径よりも大きい場合であっても、回転翼5を折り畳むことにより、該回転翼5を槽内に挿入することができるようになる。
【0068】
また、比重差を用いた浮力を利用して、前記回転翼5を使用できる状態に拡張するので、複雑な機構を要しない。
【0069】
なお、前記翼板6の比重を被処理液の比重よりも小さくする代わりに、前記回転翼5を回転させることにより、その遠心力により、該翼板6が所望の傾斜角度で開くようにしてもよい。
【0070】
また、前記回転翼5の回転による遠心力で前記翼板6を開きやすくするために、該各翼板6に重り(図示せず)を設けるようにしてもよい。
【0071】
なお、かかる実施例2においては、従来のフラットパドル翼に適用することもできる。
【符号の説明】
【0072】
1 撹拌装置
2 撹拌槽
2a 天井部
2b 底部
3 開口部
4 蓋部
5 回転翼
5a 回転軸
5b ボス部
6 翼板
6a 上側辺
6b 外側辺
6c 内側辺
6d 下側辺
7 モータ
8 静翼
9 回転制御装置
10 枢支点
11 傾動阻止部