(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/27 20060101AFI20220905BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20220905BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
B29C45/27
B29C45/02
H01L21/56 T
(21)【出願番号】P 2019150975
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 信行
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-114335(JP,A)
【文献】特開2010-165890(JP,A)
【文献】特開2000-012578(JP,A)
【文献】特開2005-310831(JP,A)
【文献】特開2014-204082(JP,A)
【文献】特表2002-506287(JP,A)
【文献】特開平11-058478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形対象物を保持し、樹脂材料が供給される矩形状のキャビティを有する成形型本体を備え、
前記成形型本体は、前記樹脂材料が充填されるポットと、当該ポットから前記キャビティに向けて前記樹脂材料を流動させる複数の
ランナを有するカルブロックと、
平面視において前記キャビティの一辺に沿って設けられ、複数の前記
ランナから供給される前記樹脂材料を前記キャビティに供給する手前で合流させる合流ブロックと、を含んでおり、
前記合流ブロックと前記キャビティの前記一辺とは、
前記平面視において、遮断壁により前記一辺の両端を遮断して前記一辺の中央部でのみ連通しており、
前記合流ブロックの前記一辺の両端側にある前記樹脂材料を、前記一辺の中央側に向かって流動させ、前記中央部から前記キャビティに供給する流路集中機構を備えた成形型。
【請求項2】
成形対象物を保持し、樹脂材料が供給される矩形状のキャビティを有する成形型本体を備え、
前記成形型本体は、前記樹脂材料が充填されるポットと、当該ポットから前記キャビティに向けて前記樹脂材料を流動させる複数の樹脂流路を有するカルブロックと、前記キャビティの一辺に沿って設けられ、複数の前記樹脂流路から供給される前記樹脂材料を前記キャビティに供給する手前で合流させる合流ブロックと、を含んでおり、
前記合流ブロックと前記キャビティの前記一辺とは、前記一辺の中央部でのみ連通しており、
前記合流ブロックの前記一辺の両端側にある前記樹脂材料を、前記一辺の中央側に向かって流動させ、前記中央部から前記キャビティに供給する流路集中機構を備え、
前記流路集中機構は、前記一辺に沿う中央溝と、前記樹脂流路の側に後退した状態で前記中央溝の両端から前記一辺に沿って延出する延出溝と、が一体形成された前記合流ブロックで構成されてい
る成形型。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成形型と、
前記成形型を型締めする型締め機構と、を備えた樹脂成形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形型に前記成形対象物及び前記樹脂材料を供給する供給工程と、
前記樹脂材料を加熱した状態で前記成形型を型締めする型締工程と、
前記カルブロックから前記合流ブロックを介して前記キャビティに前記樹脂材料を流動させることにより、前記成形対象物の樹脂成形を行う成形工程と、を含み、
前記成形工程では、前記流路集中機構により、前記合流ブロックの前記一辺の両端側にある前記樹脂材料を、前記一辺の中央側に向かって流動させ、前記中央部から前記キャビティに供給する樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレームやチップが搭載された基板等は、一般的に樹脂封止することにより電子部品として用いられる。従来、基板等を樹脂封止するための樹脂成形装置として、MAP(molded array packaging)等の半導体パッケージを製造するトランスファ成形用の金型を備えたものが知られている(例えば、特許文献1~2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の金型は、上型と下型とで構成されるモールド金型を備えており、上型にはキャビティが形成されており、下型には基板を載置する凹部が形成されている。また、下型にレジンタブレットが供給されるポットを設け、上型にポットからキャビティに向けて溶融樹脂を流動させるランナ及びゲートを含むカルブロックを設けている。特許文献1に記載の金型においては、このカルブロックに形成された複数のゲートの樹脂供給位置にチップが配置されるように構成されており、溶融樹脂の流動を分散させている。
【0004】
特許文献2に記載の金型は、上型と下型とで構成される成形用金型を備えており、上型にはキャビティが形成されており、下型にはボールバンプが露出した絶縁フレームを載置するキャビティが形成されている。また、下型に樹脂が充填されるポットを設け、上型にポットからキャビティに向けて溶融樹脂を流動させるカルブロック(上型キャビティブロック)と、カルブロックからの溶融樹脂を一時的に蓄えるゲートとを設けている。このゲートは、キャビティの長辺部分とほぼ等しい長さで長辺部分に沿う隙間として形成されており、ゲートの長辺部分の全体にから同時にキャビティに溶融樹脂を供給するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-204082号公報
【文献】特開2000-12578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の金型のように、チップに溶融樹脂を衝突させて溶融樹脂を分流させたとしても、チップが配置されていない基板の側方領域では、チップが配置されているチップ存在領域に比べて溶融樹脂の流動速度が大きく、この速度差に起因して、側方領域からチップ存在領域に溶融樹脂が回り込んで空気(溶融樹脂から発生するガスを含む)を取り囲むため、ボイドが発生し易い。特許文献2に記載の金型も同様に、キャビティの長辺部分全域から溶融樹脂を供給したとしても、基板の側方領域からチップ存在領域に溶融樹脂が回り込んで空気(溶融樹脂から発生するガスを含む)を取り囲むため、ボイドが発生し易い。その結果、樹脂成形品の成形精度が低下するおそれがあった。
【0007】
そこで、成形精度を向上させる成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る成形型の特徴構成は、成形対象物を保持し、樹脂材料が供給される矩形状のキャビティを有する成形型本体を備え、前記成形型本体は、前記樹脂材料が充填されるポットと、当該ポットから前記キャビティに向けて前記樹脂材料を流動させる複数のランナを有するカルブロックと、平面視において前記キャビティの一辺に沿って設けられ、複数の前記ランナから供給される前記樹脂材料を前記キャビティに供給する手前で合流させる合流ブロックと、を含んでおり、前記合流ブロックと前記キャビティの前記一辺とは、前記平面視において、遮断壁により前記一辺の両端を遮断して前記一辺の中央部でのみ連通しており、前記合流ブロックの前記一辺の両端側にある前記樹脂材料を、前記一辺の中央側に向かって流動させ、前記中央部から前記キャビティに供給する流路集中機構を備えた点にある。
【0009】
本発明に係る樹脂成形装置の特徴構成は、前記成形型と、前記成形型を型締めする型締め機構と、を備えた点にある。
【0010】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の特徴構成は、前記成形型に前記成形対象物及び前記樹脂材料を供給する供給工程と、前記樹脂材料を加熱した状態で前記成形型を型締めする型締工程と、前記カルブロックから前記合流ブロックを介して前記キャビティに前記樹脂材料を流動させることにより、前記成形対象物の樹脂成形を行う成形工程と、を含み、前記成形工程では、前記流路集中機構により、前記合流ブロックの前記一辺の両端側にある前記樹脂材料を、前記一辺の中央側に向かって流動させ、前記中央部から前記キャビティに供給する点にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形精度を向上させる成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図6】
図3の上下方向でのVI-VI線断面図である。
【
図9】別実施形態における上型の下型と対向する側の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0014】
[装置構成]
リードフレームやチップが搭載された基板等の成形対象物は樹脂封止することにより電子部品として用いられる。成形対象物を樹脂封止する技術の一つとして、BGA(ball grid array)やQFN(quad flat non-lead)等の基板を樹脂封止して半導体パッケージを製造するトランスファ方式がある。このトランスファ方式は、チップが搭載された基板等を成形型のキャビティに収容し、成形型のポットに粉粒体状樹脂を固めた樹脂タブレットを供給して加熱、溶融した後、該成形型を型締めした状態で樹脂タブレットが溶融した溶融樹脂をキャビティに供給して硬化させ、型開きして樹脂成形品を製造する方式である。
【0015】
従来のトランスファ方式は、樹脂成形品にボイド(気泡)が発生すると成形不良の原因となることから、成形型にエアベントを設けている。しかしながら、例えば、複数のチップを搭載して配線した基板を一括して樹脂封止するMAP(molded array packaging)等の半導体パッケージを製造する場合、ボイドを防止するために基板やチップの種類に応じてエアベント等の位置を最適なものに設計する必要がある。また、最適なエアベントを設けたとしても、チップが配置されていない基板の側方領域では、チップが配置されているチップ存在領域に比べて溶融樹脂の流動速度が相対的に大きくなり、この速度差に起因して、側方領域からチップ存在領域に溶融樹脂が回り込んで空気(溶融樹脂から発生するガスを含む)を取り囲むため、ボイドが発生し易い。その結果、樹脂成形品の成形不良が発生するといった問題があった。
【0016】
そこで、本実施形態では、成形精度を向上させる成形型C、樹脂成形装置D及び樹脂成形品の製造方法を提供する。以下において、半導体チップが搭載された基板Sを成形対象物の一例として説明し、重力方向を下、重力方向とは反対方向を上として説明することがある。
【0017】
図1には、樹脂成形装置Dの模式図が示されている。本実施形態における樹脂成形装置Dは、成形モジュール3と供給モジュール4と制御部6と搬送機構とを備えている。成形モジュール3は、半導体チップが搭載された基板Sを粉粒体状樹脂又は液状樹脂で樹脂封止するための成形型Cを含んでいる。制御部6は、樹脂成形装置Dの動作を制御するソフトウェアとして、HDDやメモリ等のハードウェアに記憶されたプログラムで構成されており、コンピュータのCPUにより実行される。つまり、制御部6は、成形モジュール3、供給モジュール4及び搬送機構の動作を制御する。
【0018】
なお、粉粒体状樹脂は、粉粒体状の樹脂だけでなく、粉粒体状の樹脂を押し固めた固形樹脂で形成される樹脂タブレットを含んでおり、いずれも加熱により溶融して液状となる溶融樹脂となる。この粉粒体状樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも良い。熱硬化性樹脂は、加熱すると粘度が低下し、さらに加熱すると重合して硬化し、硬化樹脂となる。本実施形態における粉粒体状樹脂は、取扱いの容易性から固形樹脂で形成される樹脂タブレットが好ましい。
【0019】
成形モジュール3は、樹脂封止前基板Sa(成形対象物の一例)を樹脂封止して樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品の一例)を成形する。この成形モジュール3は、複数(本実施形態では3つ)設けられており、夫々の成形モジュール3を独立して装着又は取り外しできる。成形モジュール3の詳細は後述する。
【0020】
供給モジュール4は、基板供給機構43と基板整列機構44と樹脂供給機構45と基板収容部46とを含み、搬送機構に含まれるローダ41とアンローダ42の待機位置になる。基板供給機構43は、ストックしている樹脂封止前基板Saを基板整列機構44に受け渡す。樹脂封止前基板Saには、複数個の半導体チップが縦方向及び横方向に整列して実装されている。基板整列機構44は、基板供給機構43から受け渡された樹脂封止前基板Saを搬送に適した状態にする。樹脂供給機構45は、樹脂タブレットT(樹脂材料の一例)をストックしており、樹脂タブレットTを搬送に適した状態に配置する。
【0021】
搬送機構は、樹脂封止前の半導体チップが実装された樹脂封止前基板Saや樹脂タブレットTを搬送するローダ41と、樹脂封止後の樹脂封止済基板Sbを搬送するアンローダ42とを含んでいる。ローダ41は、基板整列機構44から複数(本実施形態では2個)の樹脂封止前基板Saを受け取り、また、樹脂供給機構45から複数(本実施形態では9個)の樹脂タブレットTを受け取って、レール上を供給モジュール4から各成形モジュール3まで移動し、各成形モジュール3に樹脂封止前基板Saと樹脂タブレットTを受け渡すことが可能である。アンローダ42は、樹脂封止済基板Sbを成形モジュール3から取り出して、レール上を各成形モジュール3から基板収容部46まで移動し、基板収容部46に樹脂封止済基板Sbを収容することができる。樹脂封止済基板Sbでは、半導体チップが、溶融樹脂が固化した硬化樹脂により封止されている。
【0022】
以下、成形モジュール3について詳述する。
【0023】
図2に示すように、成形モジュール3は、平面視矩形状の下部固定盤31の四隅にタイバー32が立設されており、タイバー32の上端付近には平面視矩形状の上部固定盤33が設けられている。下部固定盤31と上部固定盤33の間には平面視矩形状の可動プラテン34が設けられている。可動プラテン34は、四隅にタイバー32が貫通する孔が設けられており、タイバー32に沿って上下に移動可能である。下部固定盤31の上には、可動プラテン34を上下に移動させる装置である型締め機構35が設けられている。型締め機構35は、可動プラテン34を上方に移動させることにより成形型Cの型締めを行ない、可動プラテン34を下方に移動させることにより成形型Cの型開きを行なうことができる。型締め機構35の駆動源は、特に限定されないが、例えば、サーボモータ等の電動モータを用いることができる。
【0024】
成形型Cは、上型UMと下型LMとを有する成形型本体Mを含んでいる。上型UM及び下型LMは、互いに対向して配置される金型等で構成されている。上型UMには、溶融樹脂が供給される平面視矩形状のキャビティMCが形成されている。下型LMには、樹脂封止前基板Saを、半導体チップ等が実装されている面を上にして載置する基板セット部が形成されている。また、上型UM、下型LMには、夫々、上側ヒータ37、下側ヒータ36が内蔵されている。
【0025】
図3~
図6を用いて成形型本体Mを詳述する。
図3及び
図4には、上型UMの下型LMと対向する側の平面図及び斜視図が示されている。
図5及び
図6は、
図3の紙面に垂直な方向(上下方向)でのV-V線断面図及びVI-VI線断面図である。
【0026】
上型UMは、キャビティMCが形成されている上型キャビティブロック1と、下型LMのポット21(後述)から注入された溶融樹脂を受けるカル部22、及び、カル部22からキャビティMCに向けて溶融樹脂を流動させる複数のランナ22d(樹脂流路の一例)を有するカルブロック2と、複数のランナ22dから供給される溶融樹脂をキャビティMCに供給する手前で、キャビティMC(又は樹脂封止前基板Sa)の一辺に沿って合流させる合流ブロック7と、を含んでいる。
【0027】
上型キャビティブロック1とカルブロック2と合流ブロック7とは上型ホルダベースUHBに固定されている(
図5参照)。上型キャビティブロック1とカルブロック2と合流ブロック7とを全て別部材として構成しても良いし、上型キャビティブロック1又はカルブロック2と合流ブロック7とを一体部材として構成しても良い。
【0028】
図3に示すように、上型キャビティブロック1はカルブロック2を挟んで2個配置されており、上型キャビティブロック1とカルブロック2との間には合流ブロック7が配置されている。本実施形態では、1個の上型キャビティブロック1に、平面視矩形状の凹部であるキャビティMCが2個形成されている。合流ブロック7には、1個のキャビティMCに対して1個の流路集中機構R(後述)が形成されている。また、本実施形態におけるカルブロック2には、平面視円形凹状のカル部22が9個形成されており、1つのカル部22から各合流ブロック7の側に向けて二股に分岐してランナ22dが形成されている(
図8も参照)。複数のランナ22dは、キャビティMCの一辺に沿って並列しており、本実施形態では、1個のキャビティMCに対して9本のランナ22dが延びている。
【0029】
図4及び
図5に示すように、ランナ22dは、カル部22側がカル部22と同じ深さで形成されていて、合流ブロック7側に近づくにつれて深さが漸次浅くなるように形成されている。このように、カル部22からランナ22dの先端側に向かって流路が狭くなるため、ポット21(後述)から注入された溶融樹脂は、流量が絞られた状態で複数のランナ22d(からの溶融樹脂)が合流する合流ブロック7へと供給される。なお、キャビティMCの数、カル部22の数、ランナ22dの本数等は、成形対象物(樹脂封止前基板Sa)に応じて適宜変更可能で、本実施形態の数や本数に限定されない。例えば、キャビティMCが1個の場合は、合流ブロック7に形成される流路集中機構R(後述)は1個となる。この時、カル部22の数は、キャビティMCの大きさに応じて適宜設定され、ランナ22dの本数も適宜設定される。
【0030】
図3に示すように、合流ブロック7は、カルブロック2と上型キャビティブロック1との間において、上型キャビティブロック1の一辺に沿う平面視長尺状のブロックで形成されている。本実施形態では、カルブロック2を挟んで2個の上型キャビティブロック1が配置されていることから、合流ブロック7も2個配置されている。1個の合流ブロック7には、ランナ22dの先端の深さと略同じ深さの平面視矩形状の凹部が、キャビティMCの数だけ(すなわち2個)形成されており、この凹部は、ランナ22dの側で複数個(本実施形態では9個)のランナ22dと連通しており、キャビティMCの側で中央側のみキャビティMCと連通している。具体的には、
図4~
図5に示すように、合流ブロック7の凹部は、1個のキャビティMCと9個のランナ22dとの間に、キャビティMCに連通する中央溝71と、キャビティMC側からランナ22d側(カルブロック側)に後退した状態で中央溝71の両端から該一辺に沿って延出する延出溝72と、がキャビティMCの一辺に沿って一体形成された溝となっている。本実施形態では、この合流ブロック7の凹部は、カルブロック2側から上型キャビティブロック1側にかけて漸次浅くなるように形成されており、キャビティMCの一辺の全長の方が、キャビティMCに沿う中央溝71と延出溝72との長さの和(つまり凹部の長辺の長さ)よりも少し長い。中央溝71は、上型キャビティブロック1側でキャビティMCと連通しており、カルブロック2側でランナ22dと連通している。延出溝72は、カルブロック2側でキャビティMCの両端に位置するランナ22dにのみ連通しており、上型キャビティブロック1側でキャビティMCとは連通していない。中央溝71において、キャビティMCと連通する部分が、樹脂材料(溶融樹脂)がキャビティMCに流入する入口であるゲート23(中央部の一例)となる。つまり、合流ブロック7とキャビティMCの一辺とは中央部となるゲート23でのみ連通している。
【0031】
この合流ブロック7(特に延出溝72)は、合流ブロック7の両端側にある樹脂材料(溶融樹脂)を、中央側に向かって流動させてゲート23からキャビティMCに供給する流路集中機構Rを構成している。換言すると、流路集中機構Rにおいて、延出溝72のうちキャビティMCとの境界には、延出溝72からキャビティMCへの溶融樹脂の流動を遮断する遮断壁73が設けられている。これにより、合流ブロック7の両端側からキャビティMCへは樹脂材料が直接供給されない。このように、合流ブロック7は、中央部となるゲート23でのみキャビティMCと連通していることから、1個のキャビティMCに配置される樹脂封止前基板Saの両端側において、溶融樹脂がランナ22dからキャビティMCに直接供給されないように遮断することとなる(
図7も参照)。
【0032】
図5~
図6に示すように、下型LMは、基板セット部を有する下型キャビティブロック8とポットブロック9とを含んでおり、これら下型キャビティブロック8及びポットブロック9は下型ホルダベースLHBに固定されている。ポットブロック9には、樹脂タブレットTが充填される円筒状のポット21が焼き嵌め等で固定されている。ポット21は、カル部22に対応する個数(本実施形態では9個)設けられている。ポット21の円筒状空間の下方には、サーボモータ等の電動モータ(不図示)により駆動されるプランジャ25が上下移動可能に内挿されており、このプランジャ25により、その上のポット21の円筒状空間に収容された樹脂タブレットTが上型UMのキャビティMCに向けて注入される。
【0033】
[樹脂成形品の製造方法]
図1~
図8を用いて樹脂成形品の製造方法について説明する。
【0034】
図1に示すように、予め、ローダ41を、樹脂タブレットTの収容空間を断熱した状態で加熱しておく。また、予めヒータ36,37に通電して、成形型本体Mを加熱しておく。そして、基板供給機構43から取り出した複数(本実施形態では2個)の樹脂封止前基板Saをローダ41に載置する。また、樹脂供給機構45により整列された9個の樹脂タブレットTを、ローダ41の樹脂タブレットTの収容空間に収容する。そして、ローダ41は、樹脂封止前基板Saを成形モジュール3まで搬送し、樹脂封止前基板Saを、半導体チップが実装された側を上方に向けて下型LMの基板セット部に載置すると共に、樹脂タブレットTをポット21内に収容する(供給工程、
図5~
図6参照)。
【0035】
次いで、型締め機構35により可動プラテン34を上方に移動させて下型LMを上型UMの方向に相対的に移動させることにより、成形型Cの型締めを行う(型締工程、
図2参照)。このとき、不図示のエアベントによりキャビティMCから空気を強制的に吸引して排出する。次いで、下型LMに内蔵された下側ヒータ36により、ポット21に収容された樹脂タブレットTを加熱して溶融させると共に、下型LMに固定された樹脂封止前基板Saを加熱する(成形工程、
図5~
図6参照)。
【0036】
次いで、樹脂タブレットTが溶融して溶融樹脂となったとき、プランジャ25を上方に移動させることにより、溶融樹脂を、ポット21からカル部22、ランナ22dを介して合流ブロック7に流通させる(成形工程、
図3~
図4参照)。溶融樹脂は、合流ブロック7で一旦貯留されてから、ゲート23を介してキャビティMCに供給される。ヒータ36,37により加熱されることにより、キャビティMC内の溶融樹脂が硬化し、樹脂封止前基板Saは樹脂封止されて樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品)が形成される(成形工程、
図7~
図8参照)。この成形工程において、溶融樹脂は、樹脂封止前基板Saの両端側では合流ブロック7の延出溝72から中央溝71に向かって流動し、樹脂封止前基板Saの中央側では中央溝71のゲート23を介してキャビティMC内に供給される。つまり、樹脂封止前基板Saの両端側では、溶融樹脂が、両端側から中央側に向かって流動した後に、キャビティMCに供給される。その結果、
図7に示すように、キャビティMCにおける溶融樹脂の流動始端において、まずキャビティMCの内方側に溶融樹脂が流動し、次第にキャビティMCの外方側に溶融樹脂が流動することとなる。これにより、
図7の破線矢印で示すように、流動始端に近い側ではキャビティMCの内方側の溶融樹脂の先頭部分がキャビティ外方の溶融樹脂の先頭部分よりも流動終端に近づいている。しかし、樹脂封止前基板SaにおけるキャビティMCの外方側の樹脂封止前基板Saには半導体チップが実装されていないので、半導体チップが実装されているキャビティMCの内方側の溶融樹脂の流動速度よりもキャビティMCの外方側の溶融樹脂の流動速度の方が速い。したがって、
図7の実線矢印で示すように、キャビティMCにおける溶融樹脂の流動終端に近づくにつれて、キャビティMCの外方側の溶融樹脂の先頭部分がキャビティMCの内方側の溶融樹脂の先頭部分に追いつき、流動終端では溶融樹脂の先頭部分がキャビティMCの一辺に略平行になる。これにより、流動終端において外方側から内方側に溶融樹脂が回り込んで、空気を取り囲むことが防止される。その結果、樹脂封止済基板Sbにボイドが発生せず、成形精度を向上させることができる。
【0037】
次いで、適切な硬化時間を経たのち、可動プラテン34を下方に移動させることにより成形型Cの型開きを行ない、樹脂封止済基板SbをキャビティMCから離型させる。この樹脂封止済基板Sbをアンローダ42により基板収容部46に収容する(収容工程、
図1も参照)。収容工程の前に、ゲートブレイク機構(不図示)により、カル部22及びランナ22dの部分に形成された不要樹脂(
図8に示すカルK)を除去しても良い。その後、樹脂封止済基板Sbは、不図示の切断機構においてチッピングされ(個片化され)、複数の電子部品が製造される。
【0038】
[別実施形態]
以下、上述した実施形態と同様の部材については、理解を容易にするため、同一の用語、符号を用いて説明する。
【0039】
<1>
図9に示すように、カルブロック2は、キャビティMCの両端側に位置する第一のカル部22Aと、キャビティMCの中央側にある第二のカル部22Bと、を有しており、第一のカル部22Aは、第二のカル部22Bに比べてランナ22dの数が少なくても良い。このように、キャビティMCの一辺の両端側に位置するランナ22dを少なくすれば、キャビティMCにおける溶融樹脂の流動始端において、キャビティMCの内方側に溶融樹脂が優先的に流動し易くなる。
【0040】
また、第一のカル部22A及び第二のカル部22BがキャビティMCの一辺に沿って並列しており、2つの第二のカル部22Bの間にある第一のカル部22Aは、ランナ22dを有しておらず、第二のカル部22Bと連通する連通路5が形成されても良い。このように、複数のキャビティMCの境界となる位置の第一のカル部22Aにランナ22dを設けなければ、キャビティMCにおける溶融樹脂の流動始端において、キャビティMCの内方側に溶融樹脂が優先的に流動し易くなる。つまり、本実施形態では、流路集中機構Rが第一のカル部22Aで構成されている。しかも、第一のカル部22Aに第二のカル部22Bと連通する連通路5を形成すれば、第一のカル部22Aに対向するポット21に充填された溶融樹脂も使用することができるため、無駄がない。
【0041】
<2>上述した実施形態では、複数のポット21を設けたが、複数のポット21を1つのポット21で構成しても良いし、幾つかのポット21を1つにまとめても良い。また、ランナ22dの数は、少なくとも、両端に2個及び中央に1個あれば良いし、特に限定されない。さらに、1個の上型キャビティブロック1に形成されているキャビティMCの数も特に限定されず、基板のサイズや基板に実装されている半導体チップの配置、樹脂の種類などに応じて適宜設計することができ、例えば、1個でも2個や6個でも良い。
【0042】
<3>合流ブロック7は上述した実施形態における形状に限定されず、キャビティMCの一辺の両端側において、合流ブロック7からキャビティMCへの溶融樹脂の流動を一部遮断して構成されていれば特に限定されない。例えば、直方体状のブロックの内部に遮断ブロックを内蔵しても良い。また、カル部22から合流ブロック7の側へ分岐した3個以上のランナ22dを有する場合、2個のランナ22dと連通する合流ブロック7の延出溝72を設けるなど、キャビティMCにおける溶融樹脂の流動をシミュレーションすることにより最適な延出溝72を設ければ良い。また、合流ブロック7は、中央溝71とその両端に位置する延出溝72からなる溝(流路集中機構R)毎に1つのブロックとして形成してもよい。
【0043】
<4>流路集中機構Rとしての遮断壁73を、キャビティMC側に設けても良い。この場合、樹脂封止前基板Saの周囲にはチップが搭載されない空間があるため、該空間を有効活用することが可能となる。
【0044】
<5>下型LMにもキャビティMCを設けて、成形対象物の両面を樹脂封止しても良い。また、キャビティMCの内面に離型フィルムを吸着させて、この離形フィルム上に樹脂材料を供給しても良い。
【0045】
<6>下型キャビティブロック8、ポットブロック9、上型キャビティブロック1、カルブロック2及び合流ブロック7は、上型UM又は下型LMの何れに設けても良い。
【0046】
<7>
上述した実施形態では、フェイスアップのトランスファ方式で説明したが、フェイスダウンのトランスファ方式として、基板S等の成形対象物を上型UMに固定し、キャビティMCを下型LMに設けても良い。
【0047】
[上記実施形態の概要]
以下、上述の実施形態において説明した成形型C、樹脂成形装置D及び樹脂成形品の製造方法の概要について説明する。
【0048】
(1)成形型Cの特徴構成は、樹脂封止前基板Sa(成形対象物)を保持し、樹脂タブレットT(樹脂材料)が供給される矩形状のキャビティMCを有する成形型本体Mを備え、成形型本体Mは、樹脂タブレットT(樹脂材料)が充填されるポット21と、ポット21からキャビティMCに向けて溶融樹脂(樹脂材料)を流動させる複数のランナ22d(樹脂流路)を有するカルブロック2と、キャビティMCの一辺に沿って設けられ、複数のランナ22d(樹脂流路)から供給される溶融樹脂(樹脂材料)をキャビティMCに供給する手前で合流させる合流ブロック7を含んでおり、合流ブロック7とキャビティMCの一辺とは、一辺のゲート23(中央部)でのみ連通しており、合流ブロック7の一辺の両端側にある樹脂材料を、一辺の中央側に向かって流動させ、ゲート23(中央部)からキャビティMCに供給する流路集中機構Rを備えている点にある。
【0049】
本構成のようにキャビティMCの一辺に沿う合流ブロック7を設ければ、複数のランナ22dの夫々からキャビティMCに溶融樹脂を供給する場合に比べて、キャビティMCに樹脂を均等に供給することができる。このとき、溶融樹脂の流動抵抗となるチップ等が樹脂封止前基板Saに搭載されている場合、チップが存在しないキャビティMCの外方側における溶融樹脂の流動速度が、チップが存在するキャビティMCの内方側における溶融樹脂の流動速度に比べて大きくなる。その結果、キャビティMCにおける溶融樹脂の流動終端において、外方側から内方側に溶融樹脂が回り込んで空気(溶融樹脂から発生するガスを含む)を取り囲み、該流動終端側の中央部分でボイドが発生し易くなる。この空気の回り込みは、チップがバンプによって基板に搭載されているBGA基板の場合、特に顕著に生じる。
【0050】
そこで、本構成では、合流ブロック7により、キャビティMCの一辺の両端側において、樹脂材料を、一辺の中央側に向かって流動させ、ゲート23からキャビティMCに供給する流路集中機構Rを設けている。このため、キャビティMCにおける溶融樹脂の流動始端において、まずキャビティMCの内方側に溶融樹脂が流動し、次第にキャビティMCの外方側に溶融樹脂が流動することとなる。キャビティMCにおける溶融樹脂の流動終端において、キャビティMCの外方側とキャビティMCの内方側とにおける溶融樹脂の先頭部分が近付き、外方側から内方側に溶融樹脂が回り込んで空気を取り囲むことが防止される。よって、樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品)にボイドが発生し難く、成形精度を向上させることができる。
【0051】
(2)流路集中機構Rは、キャビティMCの一辺に沿う中央溝71と、ランナ22d(樹脂流路)の側に後退した状態で中央溝71の両端から該一辺に沿って延出する延出溝72と、が一体形成された合流ブロック7で構成されていても良い。
【0052】
本構成のように、流路集中機構Rとしての合流ブロック7を、中央溝71と、中央溝71の両端からランナ22dの側に後退した状態で延出する延出溝72とで構成すれば、カルブロック2を変更せずに、合流ブロック7の変更のみで、キャビティMCの一辺の両端側に位置するランナ22dとキャビティMCとの間の遮断(合流ブロック7とキャビティMCとのゲート23(中央部)のみの連通)を実現できる。
【0053】
(3)樹脂成形装置Dの特徴構成は、上記(1)~(2)の何れかに記載の成形型Cと、成形型Cを型締めする型締め機構35と、を備えた点にある。
【0054】
本構成では、上述した成形型Cを用いて型締めするため、成形精度を向上させることができる。
【0055】
(4)樹脂成形品の製造方法の特徴は、上記(3)の樹脂成形装置Dを用いた樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品)の製造方法であって、成形型Cに樹脂封止前基板Sa(成形対象物)及び樹脂タブレットT(樹脂材料)を供給する供給工程と、樹脂タブレットT(樹脂材料)を加熱した状態で成形型Cを型締めする型締工程と、カルブロック2から合流ブロック7を介してキャビティMCに溶融樹脂(樹脂材料)を流動させることにより、樹脂封止前基板Sa(成形対象物)の樹脂成形を行う成形工程と、を含み、成形工程では、流路集中機構Rにより、合流ブロック7の両端側にある樹脂材料を、一辺の中央側に向かって流動させ、ゲート23(中央部)からキャビティMCに供給する点にある。
【0056】
本方法では、成形工程において、合流ブロック7の両端側からキャビティMCへ供給された溶融樹脂は、樹脂封止前基板Saの両端側から中央側に向かって流動した後に両端側に流動する。これにより、キャビティMCにおける溶融樹脂の流動終端において、キャビティMCの外方側とキャビティMCの内方側とにおける溶融樹脂の先頭部分が近付き、外方側から内方側に溶融樹脂が回り込んで空気を取り囲むことが防止される。よって、樹脂封止済基板Sbにボイドが発生し難く、成形精度を向上させることができる。
【0057】
なお、上述した実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に利用可能である。特に、BGAやQFN(DFN)のMAP製造において有効である。
【符号の説明】
【0059】
2 :カルブロック
7 :合流ブロック
21 :ポット
22 :カル部
22d :ランナ(樹脂流路)
23 :ゲート(中央部)
35 :型締め機構
71 :中央溝
72 :延出溝
C :成形型
D :樹脂成形装置
M :成形型本体
MC :キャビティ
R :流路集中機構
Sa :樹脂封止前基板(成形対象物)
Sb :樹脂封止済基板(樹脂成形品)
T :樹脂タブレット(樹脂材料)