(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】肥満及び摂食障害の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 38/22 20060101AFI20220905BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20220905BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220905BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220905BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220905BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220905BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
A61K38/22
A61K38/19
A61P3/04
A61P43/00 121
A61P3/10
A61P1/16
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2019527820
(86)(22)【出願日】2017-12-06
(86)【国際出願番号】 AU2017000262
(87)【国際公開番号】W WO2018102854
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-30
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】510029885
【氏名又は名称】セントビンセンツ ホスピタル シドニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】ブレイト サミュエル ノーバート
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-532586(JP,A)
【文献】特表2010-536717(JP,A)
【文献】特表2013-524807(JP,A)
【文献】Obesity,2016年05月25日,Vol. 24, No. 7,pp. 1454-1463 (pp. 1-31)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 45/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体重
を減少させる若しくは体重増加を予防する及び/又は食欲を
低下させる方法に使用するための、
(i)MIC-1及び/又は活性なMIC-1断片を含む第1の薬剤、並びに
(ii)レプチン及び/又は活性なレプチン断片を含む第2の薬剤
を含む組成物であって、任意選択で、薬理学的に許容される担体を含む、前記組成物。
【請求項2】
体重減少を達成するための方法に使用するためのものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
過体重又は肥満の対象において体重減少を達成するための方法に使用するためのものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
対象が、食事性肥満(DIO)を有する対象である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
対象が、2型糖尿病(T2D)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に罹患している、及び/又はインスリン抵抗性を示す、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
2型糖尿病(T2D)及び/又はT2Dの1若しくは2以上の合併症、肥満又は過体重(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)又はグルコース不耐性)を治療又は予防する方法に使用するための、
(i)MIC-1及び/又は活性なMIC-1断片を含む第1の薬剤、並びに
(ii)レプチン及び/又は活性なレプチン断片を含む第2の薬剤
を含む組成物であって、任意選択で、薬理学的に許容される担体を含む、前記組成物。
【請求項7】
対象が、夜間絶食後、30ng/ml未満(成人女性について)又は、20ng/ml未満(成人男性について)の血清中レプチンレベルを有すると判定されている過体重又は肥満の対象である、請求項3~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
第1の薬剤
におけるMIC-1が
、コンジュゲートパートナーとコンジュゲートしてい
る組換えMIC-1又は合成MIC-1
である、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
第1の薬剤
における活性なMIC-1断片が
、コンジュゲートパートナーとコンジュゲートしてい
る活性なMIC-1断片
である、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
第2の薬剤
におけるレプチンが
、コンジュゲートパートナーとコンジュゲートしてい
る組換えレプチン又は合成レプチン
である、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
第2の薬剤
における活性なレプチン断片が
、コンジュゲートパートナーとコンジュゲートしてい
る活性なレプチン断片
である、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
(i)MIC-1及び/又は活性なMIC-1断片を含む第1の薬剤、並びに
(ii)レプチン及び/又は活性なレプチン断片を含む第2の薬剤
を含む、体重
を減少させる若しくは体重増加を予防する及び/又は食欲を
低下させるための医薬組成物。
【請求項13】
体重
を減少させる若しくは体重増加を予防する及び/又は食欲を
低下させるための、第1及び第2の容器を含むキットであって、前記第1の容器が、MIC-1及び/又はその活性なMIC-1断片を含む第1の薬剤を含有し、前記第2の容器が、レプチン及び/又はその活性なレプチン断片を含む第2の薬剤を含有し、前記キットを使用するための指示書と共に包装されていてもよい、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象において体重及び/又は食欲を制御するための方法に関する。特定の一用途では、前記方法は、体重減少を達成することを目的として、過体重又は肥満の対象に、有効量の、MIC-1及び/又はMIC-1アゴニストを含む第1の薬剤、並びにレプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤を投与するステップを含む。
【0002】
優先権書類
本出願は、2016年12月6日出願の「肥満及び摂食障害の治療」と標題されたオーストラリア特許仮出願第2016905018号による優先権を請求し、その内容は、その全体で参照によって本明細書に援用される。
【0003】
参照による援用
次の出願又は刊行物が、本出願で参照され、それらの内容は全体で、参照によって本明細書に援用される:
Amirah E-E A et al., Expert Opin Drug Deliv 12(12):1923-1941 (2015);
国際特許出願PCT/GB1996/001094(WO96/034885)、標題「Biologically active peptide fragments of OB protein」;
国際特許出願PCT/AU1996/000386(WO97/000958)、標題「Novel TGF-b like cytokine」;
国際特許出願PCT/US2009/001231(WO2009/108340)、標題「Leptin agonist and methods of use」;
国際特許出願PCT/US2013/023465(WO2013/113008)、標題「Growth differentiation factor 15 (GDF-15) polypeptides」;
国際特許出願PCT/EP2015/063596(WO2015/197446)、標題「MIC-1 fusion proteins and uses thereof」;
国際特許出願PCT/EP2017/050695(WO2017/121865)、標題「MIC-1 receptor and uses thereof」;
国際特許出願PCT/EP2017/062583(WO2017/202936)、標題「MIC-1 compounds and use thereof」、及び
米国特許第5,225,539号、標題「Recombinant altered antibodies and methods of making altered antibodies」。
【背景技術】
【0004】
体重の制御は、多因子的で、食欲、食物摂取及び排出、エネルギー利用及び消費を含む多くの因子によって影響を受ける複雑なプロセスである。多くの可溶性メディエーターが、このプロセスの様々な態様の調節に関係していることが知られており、それらには、グレリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1,glucagon-like peptide 1)、アミリン、インスリン、コレシストキニン(CCK,cholecystokinin)、プロオピオメラノコルチン(POMC,proopiomelanocortin)、アグーチ関連ペプチド(AgRP,agouti-related peptide)、及び神経ペプチドY(NPY,neuropeptide Y)などの全身性及び/又は神経系由来ホルモン、サイトカイン及び他のメディエーターが含まれる。良好な健康には、正常な体重制御が重要であり、過体重、及び特に肥満は、個体における罹患率及び死亡率を著しく上昇させ得る。他方で、平均未満の体重を有することも問題であり得、十分な食物が入手可能である先進社会では、これは多くの場合に、一部の慢性炎症性障害、慢性腎臓及び心臓不全、肝硬変、慢性閉塞性肺疾患(COPD,chronic obstructive pulmonary disease)、神経性食欲不振などの摂食障害、及びがんを含む疾患による。特にがんの後期では、食欲不振/悪液質が一般的であり(多くの末期がん患者において起こる)、すべてのがん関連死のうちのほぼ1/4の死因である。
【0005】
数年前に、本出願人は、新規のヒトTGF-bスーパーファミリーサイトカインをクローニングし、特徴付けを行い、それをマクロファージ阻害サイトカイン-1(MIC-1,macrophage inhibitory cytokine-1)と命名したが(Bootcov MR et al., Proc Natl Acad Sci USA 94:11514-11519 (1997)、Breit SN and MR Bootcov, International Patent Application No PCT/AU96/00386 (WO 97/00958)、Fairlie WD et al., Gene 254:67-76 (2000)、Moore AG et al., J Clin Endocrinol Metab 85:4781-4788 (2000)、Fairlie WD et al., Biochem 40:65-73 (2001)、Breit SN et al., International Patent Application No PCT/AU01/00456 (WO 01/81928)、Fairlie WD et al., J Leukocyte Biol 65:2-5 (1999))、それ以降、それは、特に、前立腺由来因子(PDF,prostate derived factor)、胎盤骨形成タンパク質(PLAB,placental bone morphogenetic protein)、及び成長/分化因子-15(GDF-15,growth/differentiation factor-15)としても知られるようになった(Fairlie WD et al., J Leukocyte Biol 65:2-5 (1999))。安静状態では、胎盤が、MIC-1を大量に発現する唯一の組織であるが(Fairlie WD et al., J Leukocyte Biol 65:2-5 (1999))、広範囲の様々な他の臓器の上皮細胞も、より少量のMIC-1 mRNAを通常時に発現していて、MIC-1は、すべての個体において0.15~1.15ng/血清mlの広い正常な範囲で循環している(Brown DA et al., Lancet 359:2159-2163 (2002))。これらの血清中レベルは、年齢及び肥満指数(BMI,body mass index)などのいくつかの生理学的変数と共に上昇するが、多くの種々の疾患プロセス、特に、悪性病変、炎症及び損傷と関連するものでも上昇する(Fairlie WD et al., J Leukocyte Biol 65:2-5 (1999)、Koniaris LG. J Gastrointest Surg 2003 7(7):901-905 (2003)、Welsh JB and GM Hampton, Cancer Res 61:5974-5978 (2001)、Buckhaults P et al., Cancer Res 61:6996-7001 (2001)、Welsh JB et al., Proc Natl Acad Sci USA 100:3410-3415 (2003))。これらの一部、特に、乳房、前立腺、膵臓、卵巣及び大腸の悪性病変などの悪性病変では(Welsh JB and GM Hampton, Cancer Res 61:5974-5978 (2001)、Buckhaults P et al., Cancer Res 61:6996-7001 (2001)、Welsh JB et al., Proc Natl Acad Sci USA 100:3410-3415 (2003)、Koopmann J et al., Clin Cancer Res 10(7):2386-2392 (2004))、これらの血清中レベルは劇的に上昇し得る。加えて、大腸ポリープ又は大腸がんを有する数百人の患者に関する研究(Brown DA et al., Clin Cancer Res 9:2642-2650 (2003))で、本出願人は、血清中MIC-1レベルの上昇が、正常から良性に、そして、異形成大腸ポリープを経て、最終的には大腸がんへと進行する、大腸がんの病因を反映して、進行性の段階的様式で起こることを示した。しかしながら、これらのがんなどの疾患では、MIC-1血清中レベルが上昇するが、その全体的な生物学的効果は、動物研究によって、MIC-1過剰発現が疾患を緩和することが示されているので(Tsai VWW et al., Int J Obes (Lond) 40(2):193-7 (2016)、Breit SN et al., Growth Factors 29:187-195 (2011)、Johnen H et al., Cardiovasc Pathol 21:499-505 (2012)、Kempf T et al., Circ Res 98:351-360 (2006))、多くの事例において有利である可能性がある。最も重要なことに、最近の研究によって、MIC-1を過剰発現する遺伝子導入マウスは、通常食(chow)であっても高脂肪食(HFD,high fat diet)であっても、顕著に長い平均余命を有することが実証された(Wang X et al., Aging (Albany NY) 6:690-704 (2014))。これは、血清中MIC-1レベルの上昇と関連する疾患は、該当する病的過程を制御する不完全に有効な試みを示し得ることを示唆している。
【0006】
本出願人は、腫瘍異種移植片を有し、ヒトMIC-1を過剰発現するように操作されたマウスは、食欲不振/悪液質になることを以前に見出している(Johnen H et al., Nat Med 13:1333-1340 (2007)、Breit SN, International Patent Application No PCT/AU2005/000525 (WO 2005/099746))。さらに、マウスにおける腫瘍由来血清中MIC-1レベルは、体重減少の程度と比例することが観察され、より顕著な効果が、約8~10ng/mlを超える血清中レベルを有するマウスで起こった。重要なことに、これらの血清中レベルは、進行がん(すなわち、典型的には転移していて、治癒可能とは考えられないが、寿命を延ばす治療(例えば、疾患指向治療(disease-directed therapy))には応答するがん)などの疾患を有する患者において一般に十分に見られるレベルの範囲内である。さらに、MIC-1を過剰発現する腫瘍を有するマウスは、あまり食べず、かなりの量の脂肪及び筋肉を失い、これは、アンタゴニスト抗MIC-1モノクローナル抗体を投与することによって、腫瘍の進行を変更することなく逆転させ得ることが判明した(Johnen H et al., Nat Med 13:1333-1340 (2007)、Breit SN, International Patent Application No PCT/AU2005/000525 (WO 2005/099746))。加えて、比較研究では、マウスへの組換えMIC-1の投与がこれらの所見を再現し(Johnen H et al., Nat Med 13:1333-1340 (2007))、かつ血清中MIC-1レベルをBMIの減少又は食欲不振/悪液質症候群と相関させるヒトの研究と一致する(Johnen H et al., Nat Med 13:1333-1340 (2007)、Vigano ALL et al., Cancer Res 73 Suppl1, Abstract nr 4650 (2103)、Lu ZH et al., Asian Pac J Cancer Prev 15:6047-6052 (2014)、Kempf T et al., J Am Coll Cardiol 50:1054-1060 (2007))ことが見出された。また、MIC-1過剰発現遺伝子導入マウスでの研究によって、これらのマウスは脂肪が少なく、肥満の発症から保護されていて、かつ肥満を引き起こす食餌にした場合に、耐糖能レベルの改善を示すことが見出された(Johnen H et al., Nat Med 13:1333-1340 (2007)、Macia L et al., PLoS One 7, e34868 (2012)、Chrysovergis K et al., Int J Obes (Lond) 38(12):1555-1564 (2014))。これらの遺伝子導入マウスは、熱産生を増加させ得るとも考えられた(Wang X et al., Aging (Albany NY) 6:690-704 (2014)、Hong JH et al., Diabetes Metab J 38:472-479 (2014))。さらに、MIC-1の生殖細胞系遺伝子欠失であるマウスは肥満で、多く食べ、その寿命を通じて、同系マウスよりも体重が重いことが見出されている。これらの所見は、MIC-1がエネルギーホメオスターシスの生理学的調節において役割を果たしていること、及びこの経路が、病態では崩壊して、食欲不振/悪液質症候群につながることを示唆している。
【0007】
上述のとおり、MIC-1過剰発現腫瘍を有するマウスは、食欲不振/悪液質になり、食物摂取が低下する。これは、視床下部及び脳幹に対する作用によって媒介され、これが、体重減少の観察での主な機序である(Johnen H et al., Nat Med 13:1333-1340 (2007))。このことは、マウスの脳幹最後野(AP,area postrema)及び内側(m,medial)孤束核(NTS,nucleus of solitary tract)の外科的破壊が、組換えMIC-1の食欲不振作用を予防するという所見によって裏付けられる(Tsai VW et al., PLoS One 8, e55174 (2013))。しかしながら、もっと複雑であることが疑われ、とりわけ、上記の研究は、中枢神経系(CNS,central nervous system)以外でのMIC-1の代謝作用又は別のCNS中枢に対する可能な作用を排除しなかった。さらに、本出願人は、MIC-1の代謝作用が食欲制御及び/又はエネルギーホメオスターシスと関係する他の作用物質(例えば、一部のアディポカイン並びにグレリン及びプロオピオメラノコルチンなどのペプチドホルモン)と相互作用し得ると考えている。このことが、MIC-1とアディポカイン、レプチンの効果との間に相互作用があるかどうかの調査につながった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際特許出願PCT/AU96/00386(国際公開第97/00958号パンフレット)
【文献】国際特許出願PCT/AU01/00456(国際公開第01/81928号パンフレット)
【文献】国際特許出願PCT/AU2005/000525(国際公開第2005/099746号パンフレット)
【非特許文献】
【0009】
【文献】Bootcov MR et al., Proc Natl Acad Sci USA 94:11514-11519 (1997)
【文献】Fairlie WD et al., Gene 254:67-76 (2000)
【文献】Moore AG et al., J Clin Endocrinol Metab 85:4781-4788 (2000)
【文献】Fairlie WD et al., Biochem 40:65-73 (2001)
【文献】Fairlie WD et al., J Leukocyte Biol 65:2-5 (1999)
【文献】Brown DA et al., Lancet 359:2159-2163 (2002)
【文献】Koniaris LG. J Gastrointest Surg 2003 7(7):901-905 (2003)
【文献】Welsh JB and GM Hampton, Cancer Res 61:5974-5978 (2001)
【文献】Buckhaults P et al., Cancer Res 61:6996-7001 (2001)
【文献】Welsh JB et al., Proc Natl Acad Sci USA 100:3410-3415 (2003)
【文献】Koopmann J et al., Clin Cancer Res 10(7):2386-2392 (2004)
【文献】Brown DA et al., Clin Cancer Res 9:2642-2650 (2003)
【文献】Tsai VWW et al., Int J Obes (Lond) 40(2):193-7 (2016)
【文献】Breit SN et al., Growth Factors 29:187-195 (2011)
【文献】Johnen H et al., Cardiovasc Pathol 21:499-505 (2012)
【文献】Kempf T et al., Circ Res 98:351-360 (2006)
【文献】Wang X et al., Aging (Albany NY) 6:690-704 (2014)
【文献】Johnen H et al., Nat Med 13:1333-1340 (2007)
【文献】Vigano ALL et al., Cancer Res 73 Suppl1, Abstract nr 4650 (2103)
【文献】Lu ZH et al., Asian Pac J Cancer Prev 15:6047-6052 (2014)
【文献】Kempf T et al., J Am Coll Cardiol 50:1054-1060 (2007)
【文献】Macia L et al., PLoS One 7, e34868 (2012)
【文献】Chrysovergis K et al., Int J Obes (Lond) 38(12):1555-1564 (2014)
【文献】Hong JH et al., Diabetes Metab J 38:472-479 (2014)
【文献】Tsai VW et al., PLoS One 8, e55174 (2013)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様では、本開示は、対象において体重及び/又は食欲を制御する方法であって、前記対象に、有効量の
(i)MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤、並びに
(ii)レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤
を投与するステップを含む方法に関する。
【0011】
好ましくは、第1の薬剤は、MIC-1及び/又はMIC-1アゴニストを含む。
【0012】
対象は、過体重又は肥満の対象であってよく、一実施形態では、対象は、低い血清中レプチンレベルを有する過体重又は肥満の対象であってよい。
【0013】
第2の態様では、本開示は、
(i)MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤、並びに
(ii)レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤
を含む医薬組成物に関する。
【0014】
好ましくは、第1の薬剤は、MIC-1及び/又はMIC-1アゴニストを含む。
【0015】
医薬組成物は、例えば、経口、口腔内(buccal)、経鼻、筋肉内及び静脈内投与に好適であり得る。
【0016】
第3の態様では、本開示は、対象において体重及び/又は食欲を制御する方法であって、
前記対象が低い、正常な、又は高い血清中レプチンレベルを有するかどうかを決定するステップと、
低い又は正常な血清中レプチンレベルを有すると決定された前記対象に、有効量の
(i)MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤、並びに
(ii)レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤
を投与するステップ、又は
高い血清中レプチンレベルを有すると決定された前記対象に、有効量の
(i)MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤を投与するステップ
とを含む方法に関する。
【0017】
第4の態様では、本開示は、第1及び第2の容器(例えば、バイアル)を含み、第1の容器が、MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤を含有し、第2の容器が、レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤を含有し、第1又は第3の態様の方法においてキットを使用するための指示書と共に包装されていてもよいキットに関する。
【0018】
第5の態様では、本開示は、対象において体重及び/又は食欲を増加させる方法であって、前記対象に、有効量の
(i)MIC-1阻害剤、及び
(ii)レプチン阻害剤
を投与するステップを含む方法に関する。
【0019】
対象は、食欲不振又は悪液質に罹患している対象であってよい。
【0020】
第6の態様では、本開示は、
(i)MIC-1阻害剤、及び
(ii)レプチン阻害剤
を含む医薬組成物に関する。
【0021】
第7の態様では、本開示は、第1及び第2の容器(例えば、バイアル)を含むキットであって、第1の容器がMIC-1阻害剤を含有し、第2の容器がレプチン阻害剤を含有し、第5の態様の方法においてキットを使用するための指示書と共に包装されていてもよいキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本明細書において下記の実施例1に記載の研究から得られた結果のグラフが示されている。(A)は、浸透圧ミニポンプを介して、ビヒクル(Veh,vehicle)又はMIC-1からなるグラフに示されているような薬剤を投与されたCHOW給餌マウス(Chow)及び又は食事性肥満(DIO,diet-induced obesity)を有するマウス(図ではHFDと示されている)の体重のパーセンテージ変化(BW変化%)を示している。(B)は、3及び4週間後の、同じマウスによる食物摂取(摂取Kcal/日)を示しており、並びに(C)及び(D)は、それぞれ同じマウスの体脂肪量(g/BW)及び除脂肪量(g/BW)の量を示している。
【
図2】本明細書において下記の実施例2に記載の研究から得られた結果のグラフが示されている。このグラフは、ビヒクル(●)、組換えMIC-1(□)、レプチン(黒三角形)、又はMIC-1+レプチン(黒四角形)のいずれかからなるグラフに示されているような薬剤を6日間にわたって注入(標準浸透圧ミニポンプを使用)された普通食給餌マウスの体重のパーセンテージ変化(BW変化%)を示している。
【
図3】本明細書において下記の実施例3に記載の研究から得られた結果のグラフが示されている。このグラフは、2つの浸透圧ミニポンプで別々に、ビヒクル(veh)及びビヒクル(●)、組換えMIC-1及びビヒクル(黒四角形)、レプチン及びビヒクル(黒三角形)、並びにMIC-1+レプチン(黒逆三角形)からなるグラフに示されているような薬剤の二成分組み合わせを注入された(A)HFDマウス又は(B)普通食給餌マウスのいずれかの体重のパーセンテージ変化(重量変化%)を示している。
【
図4】本明細書において下記の実施例4に記載の研究から得られた結果のグラフが示されている。(A)は、ビヒクル+ビヒクル(●)、ビヒクル+組換えレプチン(黒四角形)、組換えMIC-1+ビヒクル(黒三角形)、又は組換えMIC-1+組換えレプチン(黒逆三角形)を含むグラフに示されているような薬剤を注入されたDIOマウスの体重のパーセンテージ変化(BW変化%)を示しており、かつ(B)は、体重量(g)を示しており、(C)は、g/マウスで3日間累積食物消費として測定された、マウスによる食物摂取のレベルを比較している。
【
図5】実施例4の研究から得られた結果のグラフが示されている。(A)は、2つの浸透圧ミニポンプで、ビヒクル+ビヒクル(●)、ビヒクル+レプチン(黒四角形)、MIC-1+ビヒクル(黒三角形)、又はMIC-1+レプチン(黒逆三角形)からなるグラフに示されているような薬剤を注入された普通CHOW給餌マウスの体重のパーセンテージ変化(BW変化%)を示しており、かつ(B)は、体重量(g)を示している。(C)は、g/マウスで3日間累積食物消費として測定された、マウスによる食物摂取のレベルを比較している。
【
図6】実施例4に記載の研究から得られた結果のグラフが示されており、このグラフは、MIC-1及びレプチン処置の組み合わせが、DIOマウスにおいて、単独でのいずれかの薬剤よりも大きな体脂肪量の減少を誘導したことを示している。(A)DEXAによって定量化された、実験の直前に決定された体脂肪量と実験終了時に決定された体脂肪量との間の体脂肪量のパーセント変化を計算した。(B)鼠径脂肪量、(C)精巣上体脂肪量、(D)腸間膜脂肪量及び(E)腹膜後脂肪量を実験の終結時の解剖で定量化した。
【
図7】実施例4に記載の研究から得られた結果のグラフが示されており、このグラフは、MIC-1及びレプチンが、単独でも組み合わせでも、DIOマウスの除脂肪量に効果は有さなかったことを示している。(A)DEXAによって定量化された、実験の直前に決定された除脂肪量と実験終了時に決定された除脂肪量との間の除脂肪量のパーセント変化を計算した。(B)腓腹筋量及び(C)前脛骨筋肉量を実験の終結時の解剖で定量化した。
【
図8】実施例4に記載の実験の結果が示されている。普通CHOW給餌マウスのMIC-1+レプチン処置の組み合わせが、単独でのこれらのいずれかと比較して、除脂肪量のより大きな減少を誘導した。(A)DEXAによって定量化された、実験の直前に決定された除脂肪量と実験終了時に決定された除脂肪量との間の除脂肪量のパーセント変化を計算した。(B)腓腹筋量及び(C)前脛骨筋肉量を実験の終結時の解剖で定量化した。
【
図9】実施例4に記載の実験の14日目に、DIOマウスで行われた(A)腹腔内糖負荷試験(GTT)及び(B)インスリン感受性試験(ITT)の結果が示されており、MIC-1+レプチンが、単独でのレプチン又はMIC-1いずれかと比較して、GTT及びITTの改善をもたらしたことが示されている。DIOマウスに、2つの浸透圧ミニポンプで、ビヒクル+ビヒクル(●)、ビヒクル+組換えレプチン(黒四角形)、組換えMIC-1+ビヒクル(黒三角形)、又は組換えMIC-1+組換えレプチン(黒逆三角形)からなるグラフに示されているような薬剤を注入した。
【
図10】実施例4に記載の研究から得られた結果のグラフが示されており、このグラフは、MIC-1+レプチン処置の組み合わせが、単独でのいずれかの薬剤と比較して、普通CHOW給餌マウスでより大きな体脂肪量の減少を誘導したことが示されている。DIOマウスに、2つの浸透圧ミニポンプで、ビヒクル+ビヒクル(●)、ビヒクル+組換えレプチン(黒四角形)、組換えMIC-1+ビヒクル(黒三角形)、又は組換えMIC-1+組換えレプチン(黒逆三角形)からなるグラフに示されているような薬剤を注入した。(A)DEXAによって定量化された、実験の直前に決定された体脂肪量と実験終了時に決定された体脂肪量との間の体脂肪量のパーセント変化を計算した。(B)鼠径脂肪量、(C)精巣上体脂肪量、(D)腸間膜脂肪量及び(E)腹膜後脂肪量を実験の終結時の解剖で定量化した。
【
図11】実施例5に記載の実験から得られた結果のグラフを示している。MIC-1+レプチンの組み合わせが、単独でのいずれか薬剤よりも、ob/obマウスにおいて、より大きな体重減少及び食物摂取の減少を誘導することが見出された。10週間にわたって普通食を給餌された雄のob/obマウスを、2つの浸透圧ポンプを用いて、MIC-1(0.5μg/gBW/日)+ビヒクル、レプチン(0.25μg/gBW/日)+ビヒクル、MIC-1+レプチン又はビヒクル+ビヒクルの二成分組み合わせて用いて19日間にわたって処置した。(A)体重を定期的にモニターし、実験の開始直前に決定された体重と比較して、パーセンテージ変化として表しており、及び(B)食物摂取を、g/マウスで3日間累積食物消費に基づき測定した。
【
図12】ob/obマウスにおける体脂肪量減少に対する、ビヒクル、MIC-1及びレプチンの組み合わせからなる処置の結果を示している。マウスを、2つの浸透圧ポンプを用いて、MIC-1(0.5μg/gBW/日)+ビヒクル、レプチン(0.25μg/gBW/日)+ビヒクル、MIC-1+レプチン又はビヒクル+ビヒクルの二成分組み合わせで19日間にわたって処置した。(A)DEXAによって定量化された、実験の直前に決定された体脂肪量と実験終了時に決定された体脂肪量との間の体脂肪量のパーセント変化を計算した。(B)鼠径脂肪量、(C)精巣上体脂肪量、(D)腸間膜脂肪量及び(E)腹膜後脂肪量をこの処置期間の終了時の解剖で定量化した。
【
図13】レプチンアンタゴニスト(SMLA,leptin antagonist)でマウスを処置した結果を示している。レプチンアンタゴニストは、MIC-1誘導体重減少を逆転させた。普通食の食餌を30週間にわたって給餌された雄のマウスに、2つの浸透圧ポンプを用いて、MIC-1(0.5μg/gBW/日)+ビヒクル、SMLA(1.5μg/gBW/日)+ビヒクル、MIC-1+SMLA又はビヒクル+ビヒクルの二成分組み合わせを14日間にわたって注入した。体重を処置レジメンの最初の11日間にわたって毎日モニターし、実験の開始直前に決定された体重と比較して、パーセンテージ変化として表す。
【
図14】筋肉量のモジュレートに対するMIC-1及びレプチンアンタゴニストの効果を調査した研究の結果のグラフが示されている。普通食を30週間にわたって給餌された雄のC57BL/6Jマウスを、2つの浸透圧ポンプを用いて、MIC-1(0.5μg/gBW/日)+ビヒクル、SMLA(1.5μg/gBW/日)+ビヒクル、MIC-1+SMLA又はビヒクル+ビヒクルの二成分組み合わせで14日間にわたって処置した。DEXAによって定量化された、実験の直前に決定された除脂肪量と11日目の除脂肪量との間の除脂肪量のパーセント変化を計算した。
【
図15】レプチンアンタゴニストでの処置が、MIC-1誘導体脂肪量減少の効果を阻害したことを示す結果のグラフが示されている。普通食を30週間にわたって給餌されたマウスを、2つの浸透圧ポンプを用いて、MIC-1(0.5μg/gBW/日)+ビヒクル、SMLA(1.5μg/gBW/日)+ビヒクル、MIC-1+SMLA又はビヒクル+ビヒクルの二成分組み合わせで14日間にわたって処置した。DEXAによって定量化された、実験の直前に決定された体脂肪量と実験の終了時での体脂肪量との間の体脂肪量のパーセント変化を計算した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
肥満マウスモデルを使用しての、MIC-1とアディポカイン、レプチンとの間の可能な相互作用についての調査によって、MIC-1及びレプチンでの処置が、単独でのMIC-1又はレプチンで観察された体重減少よりも有意に大きな体重減少をもたらすことが決定された(本明細書において下記の実施例を参照されたい)。
【0024】
第1の態様では、本開示は、対象において、体重(例えば、体重減少の達成)及び/又は食欲を制御する方法であって、前記対象に、有効量の
(i)MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤、並びに
(ii)レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤
を投与するステップを含む方法に関する。
【0025】
第1の態様の方法を、対象において、食欲制御及び/又は体重制御を達成するために行うことができる。例えば、体重制御では、前記方法を、対象において体重減少を達成するために、又は少なくとも、対象において体重のさらなる増加を予防するために行うことができる。対象は、例えば、過体重又は肥満の対象(例えば、食事性肥満(DIO)を有する対象)などの体重制御及び/又は食欲の低下を必要とする対象であってよい。本開示の目的のために、過体重対象は、25~30の肥満指数(BMI)を有する対象であると考えられ、肥満対象は、30以上のBMIを有する対象であると考えられる(Obesity: preventing and managing the global epidemic. Report of a WHO consultation, World Health Organ Tech Rep Ser 894:i-xii, 1-253 (2000)、Al Maskari MY and AA Alnaqdy., Sultan Qaboos Univ Med J 6(2):27-31 (2006))。
【0026】
好ましくは、第1の態様の方法は、体重を減少させる(すなわち、体重減少を達成する)、又は体重増加を予防する方法である。
【0027】
第1の態様の方法の特定の一実施形態では、対象は、正常よりも低い血清中レプチンレベル(すなわち、正常対象での典型的な範囲よりも低い血清中レプチンレベル)、或いは肥満対象にしては比較的低い血清中レプチンレベル又は対象に存在する脂肪蓄積の程度を考慮すると比較的低い血清中レベルを有する過体重又は肥満の対象である。
【0028】
正常な(すなわち、非肥満)ヒト対象では、正常な血清中レプチンレベルの範囲は広い。例えば、夜間絶食後に、成人女性では約3.5~14.0ng/ml及び成人男性では4.5~25.5ng/mlである(Vayghan HJ et al., IRJABS 4(10):3099-3103 (2013))。正常よりも低い血清中レプチンレベルは、これらの範囲の下限のレベル(例えば、成人女性では約6ng/ml未満及び成人男性では約12ng/ml未満)又はこれらの範囲未満とみなすことができる。
【0029】
多くの肥満ヒト対象では、それらの血清中レプチンレベル(夜間絶食後)は、高く(肥満のヒトは(平均で)、非肥満個体よりも4倍高いレプチンレベルを有することが見出されていることに注意されたい(Considine RV et al., New Engl J Med 334:292-295 (1996)))、BMI(Maffei M et al., Nat Med 1(11):1155-1161(1995))と相関している。例えば、肥満対象での夜間絶食後の平均血清中レプチンレベルは31.3ng/mlであることが報告されている(Considine RV et al., New Engl J Med 334:292-295 (1996))(この研究では、肥満対象は、男性では≧27.3及び女性では≧27.8のBMIを有すると考えられたことに注意されたい)。そのほか、肥満成人女性での平均血清中レプチンレベルは38.2であること、及び肥満成人男性での平均血清中レプチンレベルは27.0であることが報告されている(Al Maskari MY and AA Alnaqdy., Sultan Qaboos Univ Med J 6(2):27-31 (2006))。そのような知識を考慮すると、当業者は、肥満対象にしては比較的低いとみなされるであろう血清中レプチンレベルを容易に決定することができる。しかしながら、第1の態様の方法の一実施形態では、肥満対象にしては比較的低い血清中レプチンレベル(夜間絶食後)は、成人女性では、約30ng/ml未満又は、より好ましくは、25未満又は20ng/ml未満、及び成人男性では、約20ng/ml未満又は、より好ましくは、15ng/ml未満であってよい。
【0030】
集団研究によって、肥満個体のうちの約10%が低い血清中レプチンレベルを有することが示唆されている(Ashima RS., J Clin Invest 118(7):2380-2383 (2008))。正常よりも低い血清中レプチンレベル又は肥満対象にしては比較的低いレベルは、例えば、レプチン調節の機能障害(特に、脂肪組織によるレプチン産生の減少(Ioffe E et al., Proc Natl Acad Sci U S A 95:11852-11857 (1998)))に起因し得、これは、先天性レプチン不全(Bluher S et al., J Invest Med 57(7):784-788 (2009))、子宮内発育遅延(IUGR,intra-uterine growth retardation)(Jacquet D et al., Int J Obesity 25:491-495 (2001))及び他の因子などのある種の疾患及び状態と関連していることも、又は関連していないこともある。正常よりも低い血清中レプチンレベル又は比較的低い血清中レプチンレベル(肥満対象にしては)を有する対象は、標準的なイムノアッセイ(例えば、レプチンELISA)を含む、当業者に知られている任意の好適なアッセイ方法に従って血清中レプチンレベルを測定することによって特定することができる。したがって、特定の一実施形態では、前記方法は、正常よりも低い血清中レプチンレベル又は肥満対象にしては比較的低い血清中レプチンレベルを有する過体重又は肥満の対象において、体重を減少させる(すなわち、体重減少を達成する)、又は体重増加を予防する方法であってよい。本明細書において下記の調査で達成された結果によると、そのような対象への、例えば、MIC-1及び/又はMIC-1アゴニストを含む薬剤、並びにレプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む薬剤の投与は、体重制御のために、単独でのMIC-1及び/又はMIC-1アゴニストの使用よりも有効であろうと考えられる。
【0031】
対象に、MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤を、例えば、レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤と同時に(例えば、組み合わせて)投与することもでき、或いは対象に、MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤と、レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤とを任意の順序で連続して投与することもできる。本明細書で使用する場合、連続して投与する場合、それぞれの薬剤を実質的に時間間隔なしで次々に(すなわち、一方を事実上他方の直後に投与する)するか、或いは1~5分以上(例えば、10分、30分、60分、4時間又は12時間)の間隔後に投与してよいことを理解されたい。第1及び第2の薬剤を連続して投与する場合、それらをそれぞれ、同じでも、又は異なってもよい薬理学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物形態で投与するために製剤化してもよい。医薬組成物は、界面活性剤を含む吸収促進剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス9、ドデシル硫酸ナトリウム、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム及びポリオキシエチレンエーテル)及びキレート化剤(例えば、EDTA、クエン酸及びサリチレート)などの他の物質を含んでもよい。医薬組成物は、例えば、経口、口腔内、経鼻、筋肉内及び静脈内投与に好適であってよい。一部の実施形態では、医薬組成物は、TGF-bスーパーファミリーメンバー(GDF-5及びGDNF)並びに他のタンパク質及びペプチドを投与するための有効な経路として以前に示されている経鼻投与(すなわち、鼻腔内送達)に特に好適である(最近、Amirah E-E A and BL Waszczakによって概説された(Amirah E-E A et al., Expert Opin Drug Deliv 12(12):1923-1941 (2015))。その開示全体が、参照によって本明細書に援用される)。経鼻投与に好適な医薬組成物には、これに限定されないが、リポソーム組成物(Bender TS et al., Neuroscience 303:569-576 (2015))及び脂質マイクロエマルション(Hanson LR et al., Drug Deliv 19(3):149-154 (2012))が含まれる。
【0032】
典型的には、医薬組成物を、対象に、体重及び/又は食欲を制御するために有効な量で投与する。第1の薬剤を含む組成物を、例えば、1日当たりMIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む薬剤約0.01~約100mg/kg体重、又は1日当たり約0.05~25mg/kg体重である、MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む薬剤の量を提供するために投与してよい。第2の薬剤を含む組成物を、例えば、1日当たりレプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む薬剤約0.01~約5000mg/kg体重、1日当たりレプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む薬剤約10~1000mg/kg体重、又は1日当たりレプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む薬剤約100~500mg/kg体重である、レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む薬剤の量を提供するために投与してよい。医薬組成物は、最も有効な結果を達成する必要に応じて、1日1回投与、1日複数回投与、又は制御若しくは持続放出のために意図されていてもよい。
【0033】
好ましくは、MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤並びにレプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤を、単一医薬組成物として投与するために組み合わせて製剤化する。生物学的利用能、特に経口生物学的利用能を改善するために、組合せ組成物はさらに、例えば、薬理学的に許容される担体及び/又は賦形剤を、任意選択で吸収促進剤(界面活性剤及びキレート化剤を含む)及びプロテアーゼ阻害物質(アプロチニン(トリプシン/キモトリプシン阻害物質)、アマスタチン、ベスタチン、ボロロイシン、及びピューロマイシン(アミノペプチダーゼ阻害物質)など)などの他の物質と一緒に含んでもよい。そのような組合せ医薬組成物は、例えば、経口、口腔内、経鼻、筋肉内及び静脈内投与に好適であり得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、経鼻投与(すなわち、鼻腔内送達)に特に好適である。
【0034】
典型的には、対象に、組合せ医薬組成物を、体重及び/又は食欲を制御するために有効な量で投与する。したがって、組合せ組成物を、例えば、1日当たり薬剤約0.01~約100mg/kg体重、又は1日当たり約0.05~25mg/kg体重である、MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む薬剤の量、並びに例えば、1日当たりレプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む薬剤約0.01~約5000mg/kg体重、1日当たり約100~1000mg/kg体重、又は1日当たりレプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む薬剤約100~500mg/kg体重である、レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む薬剤の量を提供するために投与してよい。組合せ医薬組成物は、最も有効な結果を達成する必要に応じて、1日1回投与、1日複数回投与、又は制御若しくは持続放出のために意図されていてもよい。しかしながら、上記にも関わらず、組合せ組成物の投与量、及び任意の特定の対象への投与頻度は、活性剤(例えば、第1及び第2の薬剤)の活性、活性剤の代謝安定性及び作用時間、年齢、体重、性別、投与様式及び時間、並びに活性剤の排泄速度を含む様々な因子で変化し、それに依存し得ることは、当業者に理解されるであろう。
【0035】
前記方法は、好ましくは、天然MIC-1アミノ酸配列(例えば、成熟(プロセシングされた)MIC-1タンパク質の天然アミノ酸配列)又はバリアントMIC-1アミノ酸配列を含むポリペプチドの二量体を含む組換えMIC-1又は合成MIC-1(すなわち、タンパク質合成技法によって生産されたMIC-1)などのMIC-1剤を含む第1の薬剤を含む医薬組成物又は組合せ医薬組成物を投与するステップを含み得る。MIC-1アミノ酸配列の好適なバリアントには、好ましくは、ポリペプチドの機能を実質的に変更することのない(例えば、変化にも関わらず、そのポリペプチドは、GDNFファミリー受容体α様GFRALとして知られているMIC-1受容体に結合し、それを活性化する能力を維持する)(Mullican SE et al., Nat Med 23(10):1150-1157 (2017)、Yang L et al., Nat Med 23(10):1158-1166 (2017)、Emmerson PJ et al., Nat Med 23(10):1215-1219 (2017)))1又は2以上のわずかな配列変化を含んでもよい天然アミノ酸配列の天然に存在する、又は非天然バリアントアミノ酸配列が含まれ得る。天然ヒトMIC-1アミノ酸配列は当初、本出願人によって、国際特許公開WO97/000958(その開示全体が参照によって本明細書に援用され、その際、MIC-1はCL13と称されている)において公開された。第1態様の方法で使用するために好適である、その配列の天然に存在するバリアントの例は、成熟MIC-1アミノ酸配列の6位にHis→Asp置換(すなわち、H6D)を含む。MIC-1アミノ酸配列の他のバリアントは、G、A、V、I、L、M;D、E;N、Q;S、T;K、R、H;F、Y、W、H;及びP、Nα-アルキルアミノ酸などの1又は2以上の保存的アミノ酸置換を含んでよい。他の置換は、D-アミノ酸での1又は2以上のL-アミノ酸の置換を含んでもよい。好ましくは、任意のアミノ酸置換は、遺伝コードによってコードされる20種の標準アミノ酸(すなわち、正準アミノ酸)から選択されるアミノ酸での置換を含む。N3E、P11E、H18E、R21E、A30E、A47E、R53E、A54E、M57E、M57L、R67E、L68E、A75E、A81E、P85E、M86L、L105E及びK107Eなどのアミノ酸置換の一部の好適な例が、国際特許公開WO2017/202936(その開示全体が参照によって本明細書に援用される)に記載されており、それらは、MIC-1の溶解度を改善する、安定性を改善する、及び/又は酸化を防止することができる。しかしながら、例えば、ある種のΝα-アルキルアミノ酸(例えば、N-メチルグリシン(サルコシン)及びN-メチルアラニン)などの非標準アミノ酸、並びに2-アミノ酪酸(Abu,aminobutyric acid)、ナフチルアラニン(Nal,naphthylalanine)、アミノイソ酪酸、3-アミノアジピン酸(Aad,aminoadipic acid)、オルニチン、シトルリン、アミノ-オキシセリン、ホモ-アルギニン、ノルロイシン(Nle,norleucine)、アミノスベリン酸及びβ-2-及びβ-3-ナプチルアラニン、環置換フェニルアラニン(Phe,phenylalanine)誘導体(例えば、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ-フェニルアラニン、4-クロロ-フェニルアラニン、メチル-フェニルアラニン及びホスホノ-フェニルアラニン)、ホスホ-チロシン(pTyr,phospho-tyrosine)、セレノシステイン及びセレノメチオニンなどの他のアミノ酸でのアミノ酸置換も企図される。存在してもよい他の配列変化には、1又は2以上のアミノ酸欠失(例えば、3位でのAsnの欠失(des-N3)など)又は付加(例えば、挿入)が含まれる。例えば、N-又はC-末端配列に対して為されてもよい他の付加は、生物学的利用能の改善、循環半減期の延長、溶解度及び/又は安定性の改善、並びにタンパク質回収又は発現の改善(例えば、融合パートナー)などの様々な追加の機能性又は特性を付与し得る、単一アミノ酸(例えば、Ala)、短いアミノ酸配列(例えば、2~10アミノ酸長)又は長いアミノ酸配列(例えば、11以上のアミノ酸)の付加を含んでもよい。(3~36アミノ酸長又はそれ以上の)追加のアミノ酸配列をN末端(すなわち、N末端伸長)に含むMIC-1剤の多数の例が、WO2017/202936に記載されており、第1の態様の方法で使用するために好適であると考えられる。追加の長いアミノ酸アミノ配列(例えば、11以上のアミノ酸)をN-又はC-末端に含むMIC-1剤は、MIC-1コンジュゲートと考えられ得る。第1の態様の方法で使用するために好適なMIC-1コンジュゲートは、例えば、MIC-1と、タンパク質の回収又は発現を改善するための融合パートナー(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA,Human serum albumin)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST,Glutathione S-transferase)、TGF-βスーパーファミリーの別のメンバーのプロ領域、及びポリヒスチジンタグ(Hisタグ)又はFLAGタグなどの様々な親和性タグ)、並びに二量化することができるFcポリペプチド及び他のポリペプチドを含む群から選択されるコンジュゲートパートナーとのコンジュゲートを含んでもよい。MIC-1コンジュゲートのMIC-1分子は、当業者によく知られているとおり、リンカー配列を介してコンジュゲートパートナーにコンジュゲートしていてもよい。
【0036】
好適なMIC-1コンジュゲートの一部の特定の例が、国際特許公開WO2015/197446(その開示全体が、参照によって本明細書に援用される)に記載されている。これらのコンジュゲートは、リンカー配列を介して、コンジュゲートのC末端にある天然MIC-1又はバリアントMIC-1アミノ酸配列を含むMIC-1にコンジュゲートしている融合パートナーHSA(又はその機能性バリアント)をN末端に含む。ペプチドリンカーは、10~50アミノ酸長であり、アミノ酸配列[X-Ym]nを含む(式中、Xは、Asp又はGluであり、Yは、Alaであり、mは、2~4であり、nは、少なくとも2である)。
【0037】
一部の実施形態では、第1の薬剤は、MIC-1及び1又は2以上のFcポリペプチドのコンジュゲートであるMIC-1コンジュゲートを含む。用語「Fcポリペプチド」は、抗体が細胞受容体への結合及び免疫応答の誘導などのエフェクター機能をそれによって媒介し得る免疫グロブリン若しくは抗体、又はその断片の非抗原結合部分又は「結晶性断片」を指すと、当業者には十分に理解されるであろう。Fcコンジュゲートパートナーは、Fcポリペプチド間の二量化によってMIC-1コンジュゲートの二量体の形成を可能にし得る。MIC-1-Fcポリペプチドコンジュゲートの一部の特定の例は、国際特許公開WO2013/113008に記載されている(その開示全体が、参照によって本明細書に援用される)。
【0038】
方法が、組換えMIC-1を含む第1の薬剤を含む医薬組成物又は組合せ医薬組成物を投与するステップを含む場合、好ましくは、組換えMIC-1は、好ましくは二量体形態の組換えヒトMIC-1(rhMIC-1,recombinant human MIC-1)、又はrhMIC-1のコンジュゲート(例えば、二量体形態のrhMIC-1とFcポリペプチドとのコンジュゲート)である。
【0039】
前記方法は、MIC-1アゴニストを含む第1の薬剤を含む医薬組成物又は組合せ医薬組成物を投与するステップを含んでよい。本明細書で使用する場合、用語「MIC-1アゴニスト」は、MIC-1受容体に結合して、それを活性化させて(Mullican SE et al., Nat Med 23(10):1150-1157 (2017)、Yang L et al., Nat Med 23(10):1158-1166 (2017)、Emmerson PJ et al., Nat Med 23(10):1215-1219 (2017))、少なくとも部分的に、MIC-1の生物学的応答又は活性をもたらす任意の薬剤(例えば、MIC-1の活性を模倣する薬剤)を指すと理解されるべきである。好適なMIC-1アゴニストは、例えば、前出のWO97/000958に記載のものなどの単純なアッセイにおいてグリコサミノグリカン及びコラーゲン産生を刺激し得る(これらのマトリックスタンパク質の産生で観察される増加は、MIC-1アゴニスト活性を示している)。加えて、又は別法で、好適なMIC-1アゴニストを、例えば、バイオアッセイによって(例えば、薬剤をマウスに皮下投与し、かつ体重及び食物摂取をモニターして、それらが減少することを確認することによって)特定することができる。そのようなバイオアッセイの例が、前出のWO2015/197446に記載されている。好適なMIC-1アゴニストを特定する別の手法は、薬剤を、MIC-1受容体及び補助受容体RETを安定発現する細胞株と共にインキュベートするステップと、RET、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)及びセリン/トレオニン特異的プロテインキナーゼAKTのうちのいずれか1又は2以上のリン酸化レベルの上昇を検出するステップとを含む(Yang L et al., Nat Med 23(10):1158-1166 (2017))。好適なMIC-1アゴニストの特定及び/又は評価において有用なさらなるバイオアッセイが、国際特許公開WO2017/121865に記載されている(その開示全体が、参照によって本明細書に援用される)。
【0040】
したがって、用語「MIC-1アゴニスト」は、活性なMIC-1断片、MIC-1の活性ドメインの類似体及びペプチド模倣物、並びにMIC-1活性を模倣する小さな有機分子を含む薬剤を包含する。活性なMIC-1断片は、タンパク質の回収又は発現を改善するための融合パートナー、並びに二量化することができるFcポリペプチド及び他のポリペプチドを含む群から選択されるコンジュゲートパートナーとコンジュゲートしていてもよい。
【0041】
一部の実施形態では、前記方法は、活性なMIC-1断片を含む第1の薬剤を含む医薬組成物又は組合せ医薬組成物を投与するステップを含む。好適な活性なMIC-1断片は好ましくは、TGF-βスーパーファミリーのメンバーの特徴的で高度保存された7システインドメインを維持しているが(約80個のアミノ酸に及び、それぞれのタンパク質の成熟形態の多くを包含する)、成熟MIC-1タンパク質のN末端配列アミノ酸のうちの1又は2以上(例えば、アミノ酸(aa)1~13)を欠失している;すなわち、N末端短縮化されているMIC-1の断片を含む。特定の例には、(Δ1-13)MIC-1(13個のN末端アミノ酸のすべてが欠失している)、(Δ1-10)MIC-1、(Δ1-5)MIC-1、(Δ1-3)MIC-1(上述のWO2017/202936に具体的に記載)及び(Δ1)MIC-1(成熟MIC-1タンパク質のN末端アミノ酸(成熟ヒトMIC-1中のアラニン(Ala))のみが欠失している)が含まれる。活性なMIC-1断片は、上記のとおりの活性なバリアントMIC-1アミノ酸配列を含んでもよいが、好ましくは、天然MIC-1アミノ酸配列を含むMIC-1の活性な断片を含む。第1の態様の方法で使用するために好適な活性なMIC-1断片は、当業者であれば、例えば、標準的な組み換え又はタンパク質合成技法を使用することによって容易に生産することができる。活性なMIC-1断片を含む第1の薬剤はさらに、タンパク質の回収又は発現を改善するための融合パートナー、並びに二量化することができるFcポリペプチド及び他のポリペプチドを含む群から選択されるコンジュゲートパートナーを含んでもよい。
【0042】
前記方法は、MIC-1誘導剤を含む第1の薬剤を含む医薬組成物又は組合せ医薬組成物を投与するステップを含んでよい。本明細書で使用する場合、用語「MIC-1誘導剤」は、対象において内因性MIC-1の発現を直接的、また間接的に誘導する任意の薬剤を指すと理解されるべきである。好適なMIC-1誘導剤を、例えば、マクロファージ(例えば、末梢血由来マクロファージ)、単球様細胞株(例えば、U937)及び/又はヒト新生児線維芽細胞株(例えば、CCD34Lu)を薬剤と共に培養するステップと、MIC-1 mRNA及び/又はMIC-1タンパク質の発現の増加を決定するステップとを含む、前出のWO97/000958に記載のものなどの単純なMIC-1発現アッセイによって特定することができる。
【0043】
したがって、用語「MIC-1誘導剤」は、p53転写因子(多くの場合に、MIC-1過剰発現と関連する疾患において、レベルの上昇がみられる)、p53発現又は活性を増強する因子(例えば、ヌトリン(Vassilev LT et al., Science 303(5659):844-848 (2004)))、MIC-1発現を誘導することが知られている非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS,non-steroidal anti-inflammatory drugs)(例えば、スリンダク硫化物及びEGR-1転写因子の発現を誘導する他のNSAIDS(Baek SJ et al., Molec Pharm 67(2):356-364 (2005)、Baek, SJ et al., Mol Pharmacol 59:901-908 (2001)、Brown, DA et al., Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 21:337-346 (2012)))、及び様々な抗腫瘍原性化合物(例えば、レスベラトロール、ゲニステイン、ジアリルジスルフィド、レチノイド6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフタレンカルボン酸、2-(4-アミノ-3-メチルフェニル)-5-フルオロベンゾチアゾール、及びペルオキシソーム増殖因子-活性化受容体-γリガンド(Baek SJ et al., Molec Pharm 67(2):356-364 (2005)))などの、MIC-1遺伝子の転写又は翻訳を増強する薬剤を包含する。
【0044】
当業者によく知られているとおり、上記のとおりのMIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤(特に、活性なMIC-1断片を含む第1の薬剤)はまた、共有結合で、又は非共有結合で連結され得、生物学的利用能の改善などの様々な追加の機能性又は特性を付与し得る他の化合物、錯化剤及び物質を含んでよい。例えば、第1の薬剤は、ポリエチレングリコールポリマー鎖(例えば、ペグ化)に共有結合で、又は非共有結合で連結しているMIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤、並びに例えば、脂肪酸及びそれらの誘導体(例えば、オレイン酸、リノール酸、カプリル酸、カプリン酸、モノ及びジ-グリセリド、並びにラウロイル-L-カルニチンクロリド及びパルミトイルカルニチンクロリドなどのアシルカルニチン)、陽イオン性ポリマー(例えば、キトサン及びその誘導体)及び陰イオン性ポリマー(例えば、カーボポール及びポリアクリル酸誘導体、並びにN-アセチルシステイン)、並びにヒドロゲルを形成するためのモノマー(例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸及びメタアクリル酸)を含む、様々なよく知られている吸収促進剤(特に、経口生物学的利用能を改善するために)を含んでもよい。
【0045】
上記にも関わらず、第1の態様の方法で使用するために好適なMIC-1及び/又はMIC-1アゴニストを含む第1の薬剤は、加えて、又は別法で、翻訳後プロセシングなどの天然プロセスによって、又は当業者によく知られているものなどの化学的修飾技法によって修飾されているアミノ酸配列を含んでもよい。そのような修飾は、例えば、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及び/又はC末端内を含む、分子中のどこで起こっていてもよい。同じ種類の修飾が、分子中の同じか、又は様々な程度で複数部位に存在してもよいことも分かるであろう。化学的修飾の特定の一例は、C末端アミド化である。したがって、第1の薬剤のMIC-1及び/又はMIC-1アゴニストは、C末端にアミド基を有してもよい。ポリペプチドのC末端をアミド化(例えばα-アミド化)する方法は、当業者によく知られている。C末端アミドは、MIC-1又はMIC-1アゴニストのカルボキシペプチダーゼ分解を回避し得る。
【0046】
前記方法は、天然レプチンアミノ酸配列(例えば、146aa成熟ヒトレプチンタンパク質の天然アミノ酸配列)又はバリアントレプチンアミノ酸配列を含む組換えレプチン又は合成レプチン(すなわち、タンパク質合成技法によって生産されたレプチン)などのレプチン剤を含む第2の薬剤を含む医薬組成物又は組合せ医薬組成物を投与するステップを含み得る。好適なバリアントレプチンアミノ酸配列は、好ましくは、ポリペプチドの機能を実質的に変更することのない(例えば、変化にも関わらず、そのポリペプチドは、レプチン受容体((LEP-R,leptin receptor)、ただしOB-Rとしても知られている)に結合し、それを活性化する能力を維持する)1又は2以上のわずかな配列変化を含んでもよい天然アミノ酸配列の天然に存在する、又は非天然バリアントアミノ酸配列を含んでよい。レプチンの非天然バリアントの一例は、レプチンW100Eバリアント(100位にTrp→Glu置換を含む)である(Zhang F et al., Nature 387:206-209 (1997))。レプチンアミノ酸配列の他のバリアントは、G、A、V、I、L、M;D、E;N、Q;S、T;K、R、H;F、Y、W、H;及びP、Nα-アルキルアミノ酸などの1又は2以上の保存的アミノ酸置換を含んでよい。他の置換は、D-アミノ酸での1又は2以上のL-アミノ酸の置換を含んでもよい。好ましくは、任意のアミノ酸置換は、遺伝コードによってコードされる20種の標準アミノ酸(すなわち、正準アミノ酸)から選択されるアミノ酸での置換を含む。しかしながら、段落番号[0035](原文[0047])で上記のものなどの非標準アミノ酸でのアミノ酸置換も企図される。存在してもよい他の配列変化には、1又は2以上のアミノ酸欠失又は付加(例えば、挿入)が含まれる。例えば、N-又はC-末端配列に対して為されてもよい他の付加は、生物学的利用能の改善、タンパク質回収又は発現の改善(例えば、融合パートナー)などの様々な追加の機能性又は特性を付与し得る、単一アミノ酸(例えば、Ala又はMet;N-メチオニル残基は、第1の態様の方法で使用するために好適であると考えられるヒトレプチン、すなわちN-メチオニルレプチン(メトレプレチン)のよく知られた類似体の1つに含まれることに注意されたい)、短いアミノ酸配列(例えば、2~10アミノ酸長)又は長いアミノ酸配列(例えば、11以上のアミノ酸)の付加を含んでもよい。追加の長いアミノ酸アミノ配列(例えば、11以上のアミノ酸)をN-又はC-末端に含むバリアントレプチン剤は、レプチンコンジュゲートと考えられ得る。第1の態様の方法で使用するために好適なレプチンコンジュゲートは、例えば、レプチンと、タンパク質の回収又は発現を改善するための融合パートナー(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、及びポリヒスチジンタグ(His-tag)又はFLAGタグなどの様々な親和性タグ)を含む群から選択されるコンジュゲートパートナーとのコンジュゲートを含んでもよい。レプチンコンジュゲートのレプチン分子は、当業者によく知られているとおり、リンカー配列を介してコンジュゲートパートナーにコンジュゲートしていてもよい。
【0047】
前記方法が、組換えレプチンを含む第2の薬剤を含む医薬組成物又は組合せ医薬組成物を投与するステップを含む場合、好ましくは、組換えレプチンは、組換えヒトレプチン(rhレプチン)又はrhレプチンのコンジュゲート(例えば、rhレプチンとHSAとのコンジュゲート)である。
【0048】
前記方法は、レプチンアゴニストを含む第2の薬剤を含む医薬組成物又は組合せ医薬組成物を投与するステップを含んでよい。本明細書で使用する場合、用語「レプチンアゴニスト」は、レプチン受容体に結合して、それを活性化させて、少なくとも部分的に、レプチンの生物学的応答又は活性をもたらす任意の薬剤(例えば、レプチンの活性を模倣する薬剤)を指すと理解されるべきである。好適なレプチンアゴニストを容易にアッセイして、例えば、国際特許公開WO2009/108340(その開示全体が、参照によって本明細書に援用される)に記載のような細胞アッセイを使用して、レプチン受容体(LEP-R)に結合し、それを活性化させる能力を決定することができ、その際、LEP-Rを発現する細胞株は、レプチンアゴニスト活性を有する薬剤の結果として、増殖するように刺激される。別法では、又は加えて、好適なレプチンアゴニストは、レプチン欠損動物において、レプチンの代用となるそれらの能力を決定するステップを含むバイオアッセイによって特定することができる。
【0049】
したがって、用語「レプチンアゴニスト」は、12残基グリコシル化レプチンベースのペプチド模倣物質E1/6-アミノ-ヘキサン酸(Aca,amino-hexanoic acid)(Kovalsky I et al., Diabetes Obes Metab 12:393-402 (2010))及びレプチンの第3の受容体結合領域(「IIIサイト」)をベースとする他の分子などの活性なレプチン断片、レプチンの活性なドメインの類似体及びペプチド模倣物質、並びにレプチン活性を模倣する小さな有機分子を含む薬剤を包含する。活性なレプチン断片は、タンパク質の回収又は発現を改善するための融合パートナーを含む群から選択されるコンジュゲートパートナーとコンジュゲートしていてもよい。
【0050】
一部の実施形態では、前記方法は、活性なレプチン断片を含む第2の薬剤を含む医薬組成物又は組合せ医薬組成物を投与するステップを含む。好適なレプチン断片は、レプチン22~56、レプチン57~92(Stamatiadis DN et al., Clin Endocrinol 60(4):434-441 (2004))、レプチン93~122(Patricia G et al., US Patent No 6,777,388)及びレプチン116~130を含み得る(Gonzalez LC et al., Neuroendocrinology 70(3):213-220 (1999))。第1の態様の方法で使用するために好適であり得る活性なレプチン断片のさらなる例が、国際特許公開WO96/34885(その開示全体が、参照によって本明細書に援用される)に記載されており、アミノ酸26~39(すなわち、レプチン26~39)、74~88、93~113又は142~161を含むレプチンの断片が含まれる。活性なレプチン断片は、上記のとおりの活性なバリアントレプチンアミノ酸配列を含んでもよいが、好ましくは、天然レプチンアミノ酸配列を含むレプチンの活性な断片を含む。第1の態様の方法で使用するために好適な活性なレプチン断片は、当業者であれば、例えば、標準的な組換え又はタンパク質合成技法を使用することによって容易に生産することができる。活性なレプチン断片を含む第2の薬剤はさらに、タンパク質の回収又は発現を改善するための融合パートナーを含む群から選択されるコンジュゲートパートナーを含んでもよい。
【0051】
当業者にはよく分かるであろうとおり、上記のとおりのレプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤(特に、活性なレプチン断片を含む第2の薬剤)はまた、共有結合で、又は非共有結合で連結され得、生物学的利用能の改善などの様々な追加の機能性又は特性を付与し得る他の化合物、錯化剤及び物質を含んでよい。例えば、第2の薬剤は、ポリエチレングリコールポリマー鎖(例えば、ペグ化)に共有結合で、又は非共有結合で連結しているレプチン及び/又はレプチンアゴニスト、並びに例えば、脂肪酸及びそれらの誘導体、陽イオン性ポリマー及び陰イオン性ポリマー、並びにヒドロゲルを形成するためのモノマーを含む、様々なよく知られている吸収促進剤(特に、経口生物学的利用能を改善するために)を含んでもよい。加えて、及び上記に関わらず、第1の態様の方法で使用するために好適なレプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤は、加えて、又は別法で、翻訳後プロセシングなどの天然プロセスによって、又は当業者によく知られているものなどの化学的修飾技法によって修飾されているアミノ酸配列を含んでもよい。そのような修飾は、例えば、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及び/又はC末端内を含む、分子中のどこで起こっていてもよい。同じ種類の修飾が、分子中の同じか、又は様々な程度で複数部位に存在してもよいことも分かるであろう。化学的修飾の特定の一例は、カルボキシぺプチダーゼ分解を阻止するためのC末端アミド化(すなわち、C末端アミド基を有するレプチン又はレプチンアゴニストを提供するための)である。
【0052】
特定の一実施形態では、第1の態様の方法は、MIC-1又はMIC-1コンジュゲートを含む第1の薬剤を含む第1の医薬組成物、及びレプチン又はレプチンコンジュゲートを含む第2の薬剤を含む第2の医薬組成物を投与するステップを含む。第1及び第2の医薬組成物を同時に、又は連続して任意の順序でも投与してよい。
【0053】
別の特定の実施形態では、第1の態様の方法は、MIC-1又はMIC-1コンジュゲートを含む第1の薬剤、及びレプチン又はレプチンコンジュゲートを含む第2の薬剤を含む組合せ医薬組成物を投与するステップを含む。
【0054】
上述のとおり、第1の態様の方法は、過体重又は肥満の対象において体重制御を達成するために行われ得る。しかしながら、この方法は、そうではなくて、健康又は美容を理由として体重減少を望んでいるかもしれない対象にも有用であり得る。
【0055】
第1の態様の方法は、2型糖尿病(T2D,Type 2 diabetes)に罹患している過体重又は肥満の対象では特に有用であり得る。よく知られているとおり、T2Dは、肥満の主要な合併症であり、いくつかの疫学的研究が、MIC-1を糖尿病及びインスリン抵抗性に関連付けている。例えば、血清中MIC-1レベルの上昇は、インスリン抵抗性の存在(Hong JH et al., Diabetes Metab J 38:472-479 (2014)、Kempf T et al., Eur J Endocrinol 167:671-678 (2012))、さらには、2型糖尿病の進行(Carstensen M et al., Eur J Endocrinol 162:913-917 (2010)、Dostalova I et al., Eur J Endocrinol 161:397-404 (2009)、Herder C et al., Diabetes Obes Metab 15 Suppl 3, 39-50 (2013))を独立に予言することが見出されている。したがって、MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤を、レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤と共に投与すると、体重減少並びに耐糖能及びホメオスターシスに対するMIC-1(又はMIC-1アゴニスト)の直接的な効果の両方によって、糖尿病及び/又はT2Dの1種若しくは2以上の合併症、肥満又は過体重(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH,non-alcoholic steatohepatitis)又はグルコース不耐性)の有用な療法が得られることが予測される。
【0056】
典型的には、対象は、ヒトである。しかしながら、第1の態様の方法は、例えば、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ及びウマ)、エキゾチック動物(例えば、トラ、ライオン、ゾウなど)及びコンパニオン動物(イヌ及びネコなど)などの非ヒト対象にも適用可能であり得る。
【0057】
本開示の第1の態様はまた、対象において体重(例えば、体重減少の達成)及び/又は食欲を制御するための、
(i)MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤、並びに
(ii)レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤
の使用に関する。
【0058】
第2の態様では、本開示は、
(i)MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤、並びに
(ii)レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤
を含む医薬組成物に関する。
【0059】
医薬組成物は、例えば、経口、口腔内、経鼻、筋肉内及び静脈内投与に好適であり得る。組成物はさらに、例えば、薬理学的に許容される担体及び/又は賦形剤を、任意選択で、生物学的利用能、特に経口生物学的利用能を改善するために吸収促進剤及びプロテアーゼ阻害物質などの他の物質と一緒に含んでもよい。組成物は、最も有効な結果を達成する必要に応じて、1日1回投与、1日複数回投与、又は制御若しくは持続放出のために意図されていてもよい。
【0060】
単独でのMIC-1又はレプチンで観察されたよりも、MIC-1及びレプチンでの処置が、肥満マウスモデルにおいて有意により大きな体重減少をもたらすという本出願人による決定(本明細書において下記の実施例2及び3を参照されたい)は、対象(例えば、過体重又は肥満の対象)が正常よりも高い血清中レプチンレベル(すなわち、多くの肥満対象に典型的であり、したがって、正常な非肥満対象での典型的な範囲よりも高い血清中レプチンレベル)を有する場合、対象において体重及び/又は食欲を制御する方法において、MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤のみを投与すれば十分であり得る(すなわち、レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤を投与する必要はないことがある)ことを示唆している。
【0061】
したがって、第3の態様では、本開示は、対象において体重(例えば、体重減少の達成)及び/又は食欲を制御する方法であって、
前記対象が低い、正常又は高い血清中レプチンレベルを有するかどうかを決定するステップと、
低い又は正常な血清中レプチンレベルを有すると決定された前記対象に、有効量の
(i)MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤、並びに
(ii)レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤
を投与するステップ、又は
高い血清中レプチンレベルを有すると決定された前記対象に、有効量の
(i)MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤を投与するステップとを含む方法に関する。
【0062】
上述のとおり、正常な(すなわち、非肥満)ヒト対象では、正常な血清中レプチンレベルの範囲は広い。例えば、夜間絶食後に、成人女性では約3.5~14.0ng/ml及び成人男性では4.5~25.5ng/mlである。したがって、正常なヒト対象での比較的高い血清中レプチンレベルは、これらの範囲の上限のレベル(例えば、成人女性では約10ng/ml超及び成人男性では約18ng/ml超)とみなすことができる。そのような正常よりも高い血清中レプチンレベルは、例えば、慢性炎症性疾患(炎症性腸疾患、炎症性腎炎、骨盤子宮内膜症、非アルコール性肝炎、慢性肺炎症、ベーチェット病及びグレーブス病など(Iikuni N et al., Curr Immunol Rev 4(2): 70-79 (2008)))及び一部のがん(乳がんなど(Tesitore L et al., Int J Mol Med 5(4):421-426 (2000)))などのある種の疾患及び状態と関連するレプチン調節の機能障害に起因し得る。他方で、肥満ヒト対象では、血清中レプチンレベルは通常、高いと予測され(すなわち、段落番号[0029](原文[0041])に上記のとおり)、したがって、肥満ヒト対象での比較的低い血清中レプチンレベル(夜間絶食後)は、例えば、成人女性では、約30ng/ml未満又は、より好ましくは、25ng/ml未満又は20ng/ml未満、及び成人男性では、約20ng/ml未満又は、より好ましくは、15ng/ml未満であり得る。
【0063】
相対的な血清中レプチンレベルを決定するステップは、標準的なイムノアッセイ(例えば、レプチンELISA)を含む、当業者に知られている任意の好適なアッセイ方法に従って血清中レプチンレベルを測定することを含んでよい。
【0064】
第1及び第2の薬剤を投与するステップは、第1の態様の方法に関して上記したとおりであってよい。
【0065】
本開示の第3の態様はまた、
低い又は正常な血清中レプチンレベルを有すると決定された対象において、体重(例えば、体重減少の達成)及び/又は食欲を制御するための、
(i)MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤、並びに
(ii)レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤
の使用、さらには
高い血清中レプチンレベルを有すると決定された対象において、体重及び/又は食欲を制御するための、
(i)MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤の使用に関する。
【0066】
第4の態様では、本開示は、第1及び第2の容器(例えば、バイアル)を含み、第1の容器が、MIC-1、MIC-1アゴニスト及び/又はMIC-1誘導剤を含む第1の薬剤を含有し、第2の容器が、レプチン及び/又はレプチンアゴニストを含む第2の薬剤を含有し、第1又は第3の態様の方法においてキットを使用するための指示書と共に包装されていてもよいキットに関する。
【0067】
キットの容器内に用意される第1及び第2の薬剤は、第1の態様の方法に関連して上記のとおりであってよい。キットはさらに、上記のとおりMIC-1及び/又はレプチンをアッセイするための材料及び薬剤を含んでもよい。
【0068】
本出願人は、食欲不振又は悪液質を治療するための方法であって、そのような状態に罹患している対象に、アンタゴニスト抗MIC-1モノクローナル抗体などのMIC-1阻害物質を投与することによる方法を以前に記載している(Johnen H et al., Nat Med 13:1333-1340 (2007)、Breit SN, International Patent Application No PCT/AU2005/000525 (WO 2005/099746))。肥満マウスモデルにおいて、MIC-1及びレプチンでの処置が、単独でのMIC-1又はレプチンで観察されるよりも、有意に大きな体重減少をもたらすという、実施例で本明細書において下記の所見も、食欲不振及び悪液質の治療に関連すると考えられる。さらに、普通(非肥満)飼料給餌マウスに投与すると、MIC-1及びレプチンの組合せは、食欲不振/悪液質症候群の病因において特に重要と考えられる除脂肪量のかなり大きな減少をもたらすことが見出された。したがって、MIC-1及びレプチンの両方を阻害する薬剤での食欲不振/悪液質の対象の治療は、MIC-1阻害剤単独で治療することによって達成されるよりも、有意に改善された結果(すなわち、体重増加又は体脂肪量及び除脂肪量の増加、又は少なくとも、体重又は除脂肪量若しくは体脂肪量のなんらかのさらなる減少の縮小の形態で)を達成すると予測される。
【0069】
したがって、第5の態様では、本開示は、対象において体重及び/又は食欲を増加させる方法であって、前記対象に、有効量の
(i)MIC-1阻害剤、及び
(ii)レプチン阻害剤
を投与するステップを含む方法に関する。
【0070】
第5の態様の方法は、対象において、体重及び/若しくは食欲の増加又は、少なくとも、体重及び/若しくは食欲の制御を達成するために行ってよい。例えば、この方法は、対象における体重増加、又は少なくとも、体重の何らかの減少の縮小を達成するために(例えば、食欲不振/悪液質の対象においてさらなる体重減少を予防するために)行ってもよい。対象は、例えば、食欲不振又は悪液質に罹患している対象であってよい。悪液質の対象は、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ)、慢性腎不全及び/若しくは心不全、並びに/又はがん(特に、乳房、前立腺、大腸、直腸、膀胱、肺及び膵臓がんなどの上皮がん)と関連する食欲低下及び/又は体重減少に苦しんでいる対象であってよい。しかしながら、この方法は、MIC-1が過剰発現される任意の他の疾患、状態又は治療(例えば、損傷、炎症、ストレス、並びに放射線療法及び化学療法)と関連する食欲低下及び/又は体重減少を治療するためにも有用であり得る。したがって、第5の態様の方法で治療するために好適な対象は、MIC-1過剰発現又は、少なくとも、血清中MIC-1レベルが一貫して0.15~1.15ng/mlの正常な血清中レベルの上限値を示し得る。そのような対象は、標準的なイムノアッセイ(例えば、MIC-1 ELISA(Moore AG et al., J Clin Endocrinol Metab 85:4781-4788 (2000)))を含む、当業者に知られているMIC-1のための任意の好適なアッセイを使用して、比較的高い血清中MIC-1レベル(例えば、全血又は血清サンプルから)を検出することによって決定することができる。加えて、第5の態様の方法で治療するために好適な対象は、比較的高い血清中レプチンレベルを示し得る。例えば、上述の正常範囲の上限の血清中レプチンレベル(例えば、成人女性では約10ng/ml超、及び成人男性では約18ng/ml未満)。上述のとおり、相対的な血清中レプチンレベルを、標準的なイムノアッセイ(例えば、レプチンELISA)を含む当業者に知られている任意の好適なアッセイ方法に従って血清中レプチンレベルを測定することによって決定することができる。
【0071】
第5の態様の方法の特定の一実施形態では、対象は、進行がんと関連する体重及び/又は食欲の低下に罹患しており、高い総腫瘍量が多くの場合に高い血清中MIC-1レベルをもたらす悪液質の対象である。レプチンはまた一般に、がん組織、特に、膵臓、大腸、肺、乳房、卵巣及び前立腺のがん組織で過剰発現される(検索可能なデータベース、The Human Protein Atlasが、レプチンは、これらの臓器に悪性腫瘍を有する患者のうちのかなりの割合で、mRNA及びタンパク質レベルの両方で過剰発現されることを明らかにしていることに注意されたい)。また、上述のように、一部のがん(例えば、乳がん)は、正常よりも高い血清中レプチンレベルをもたらすことが知られている。しかしながら、レプチンは、悪液質では典型的に急速に減少する脂肪組織で顕著に、又は主に発現されるので(すなわち、レプチンレベルは、少なくとも部分的に、対象の体脂肪量を反映し得ることとなる)、血清中レプチンレベルに対するレプチン発現腫瘍の効果は、脂肪組織からのレプチン発現のレベルの低下によって(すなわち、脂肪組織の減少によって)著しく相殺され得る。したがって、進行がんを有する悪液質の対象は、レプチンの高い血清中レベルを示すことも、又は示さないこともあるが、典型的には、匹敵する脂肪蓄積度を有する他の年齢、身長及び性別適合対象の血清中レプチンレベルよりも高い血清中レプチンレベルを少なくとも示す。
【0072】
MIC-1阻害剤は、対象においてMIC-1(すなわち、内因性MIC-1)の量(特に、血清中MIC-1レベル)を減少させ、及び/又は対象においてMIC-1の活性を低下させ得る。
【0073】
レプチン阻害剤は、対象においてレプチン(すなわち、内因性レプチン)の量(特に、血清中レプチンレベル)を減少させ、及び/又は対象においてレプチンの活性を低下させ得る。
【0074】
MIC-1阻害剤は、例えば、対象に、レプチン阻害剤と同時に(例えば、組み合わせて)投与してもよく、或いはMIC-1阻害剤及びレプチン阻害剤を、対象に、連続していずれかの順序で投与してもよい。したがって、連続して投与する場合、それぞれの薬剤を実質的に時間間隔なしで次々に(すなわち、一方を事実上他方の直後に投与する)するか、或いは1~5分、10分、30分、60分、4時間又は12時間又はそれ以上の間隔後に投与してよい。MIC-1阻害剤及びレプチン阻害剤を連続して投与する場合、それらをそれぞれ、同じでも、又は異なってもよい薬理学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物形態で投与するために製剤化してもよい。医薬組成物は、例えば、経口、口腔内、経鼻、筋肉内及び静脈内投与に好適であってよい。医薬組成物は、吸収促進剤(界面活性剤を含む)及びキレート化剤などの他の物質を含んでもよい。典型的には、医薬組成物を、対象に、体重及び/又は食欲を増加させるために有効な量で投与する。MIC-1阻害剤を含む組成物を、例えば、1日当たり薬剤約0.01~約100mg/kg体重、又は1日当たり約0.05~25mg/kg体重である、薬剤の量を提供するために投与してよい。レプチン阻害剤を含む組成物を、例えば、1日当たり薬剤約0.01~約1000mg/kg体重、又は1日当たり約1~750mg/kg体重である、薬剤の量を提供するために投与してよい。しかしながら、医薬組成物の投与量、及び任意の特定の対象への投与頻度は、活性剤(例えば、MIC-1阻害剤及びレプチン阻害剤)の活性、活性剤の代謝安定性及び作用時間、年齢、体重、性別、投与様式及び時間、並びに活性剤の排泄速度を含む様々な因子で変化し、それに依存し得ることは、当業者に理解されるであろう。医薬組成物は、最も有効な結果を達成する必要に応じて、1日1回投与、1日複数回投与、又は制御若しくは持続放出のために意図されていてもよい。
【0075】
MIC-1阻害剤は、アンタゴニスト抗MIC-1抗体(すなわち、中和MIC-1抗体)又はその断片(例えば、Fab断片、組換えscFv断片(Pluckthun A., Bio/Technology 9:545-551 (1991))及び単一ドメイン(sdAb)抗体から選択されるものを含むMIC-1結合断片)、MIC-1遺伝子を標的とする触媒又は阻害オリゴヌクレオチド分子(例えば、リボザイム、DNAザイム、アンチセンスRNA、又は低分子阻害RNA(siRNA))、MIC-1転写又は翻訳の阻害物質、MIC-1受容体の可溶性細胞質外受容体ドメイン(Mullican SE et al., Nat Med 23(10):1150-1157 (2017)、Yang L et al., Nat Med 23(10):1158-1166 (2017)、Emmerson PJ et al., Nat Med 23(10):1215-1219 (2017))、又は例えば、その受容体へのMIC-1結合、MIC-1受容体リン酸化、若しくはMIC-1受容体シグナル伝達を阻害するペプチド若しくは有機小分子を含んでよい。MIC-1阻害剤として使用するために好適であり得るMIC-1受容体の可溶性細胞質外受容体ドメインの一例は、GRAL-Bと示される選択的マウス(murine)mRNAスプライシング変異型(Li Z et al., J Neurochem 95:361-376 (2005))、又は膜貫通及び細胞質ドメインを欠損しているそのヒトオルソログによって発現されるタンパク質である。好適なMIC-1阻害剤は、意図されている阻害機序に関連する1又は2以上の単純なアッセイによってアッセイすることができる。例えば、アンタゴニスト抗MIC-1抗体は、標準的なイムノアッセイを使用して、MIC-1に結合するそれらの能力、及び/又は段落番号[0039](原文[0051])に上記のアッセイ及びバイオアッセイで観察されるMIC-1活性を阻害(アンタゴナイズ)するそれらの能力について評価することができる。一部の他のMIC-1阻害剤では、上の段落番号[0042](原文[0054])に記載の細胞アッセイにおいて、MIC-1 mRNA又はMIC-1タンパク質の発現の阻害を決定することが、より妥当であり得る。
【0076】
一部の実施形態では、MIC-1阻害剤は、アンタゴニスト抗MIC-1抗体又はその断片を含む。好ましくは、MIC-1阻害剤は、ヒト抗MIC-1抗体(遺伝子導入マウス又はファージディスプレイを使用するよく知られた技法によって生産され得るものなど(Hudson PJ and C Souriau., Nat Med 9(1): 129-134 (2003)、Lonberg N., Curr Opin Immunol 20:450-459 (2008)))又はキメラ若しくはヒト化抗MIC-1抗体(例えば、米国特許第5,225,539号(その開示全体が、参照によって本明細書に援用される)に記載のよく知られている技法によって、選択性決定残基(SDR,specificity determining residue)グラフティングによって(Kashmiri SVS et al. Methods 36(1): 25-34 (2005))、ファージディスプレイを使用する親和性増強によって(Marvin JS and HB Lowman. Phage Display in Biotechnology and Drug Discovery (2015))、又はin vitro体細胞超変異でカップリングさせる重鎖相補性決定領域3グラフティングを使用して(Bowers PM et al., J Biol Chem 288(11):7688-7696 (2013))生産され得るものなど)を含む。
【0077】
レプチン阻害剤は、アンタゴニスト抗レプチン抗体(すなわち、中和レプチン抗体)若しくはその断片(例えば、Fab断片、組換えscFv断片及び単一ドメイン(sdAb,single-domain)抗体から選択されるものを含むレプチン結合断片)、レプチン(ob又はlep)遺伝子を標的とする触媒若しくは阻害オリゴヌクレオチド分子(例えば、リボザイム、DNAザイム、アンチセンスRNA、又は低分子阻害RNA(siRNA,small inhibitory RNA))、ob転写若しくは翻訳の阻害物質(例えば、シリビニン及びクルクミン(Nejati-Koshki K et al., Asian Pac J Cancer Prev 14(11):6595-6599 (2014)))、レプチン受容体の可溶性細胞質外受容体ドメイン(例えば、De Rosa et al.によって記載されたLEP-R:Fc融合タンパク質(De Rosa V et al., J Clin Invest 116:447-455 (2006)))、アンタゴニスト抗レプチン受容体抗体(すなわち、中和抗LEP-R抗体(Iversen PO et al., Blood 100:4123-4128 (2002)))若しくはその断片(例えば、Fab断片、組換えscFv断片及び単一ドメイン(sdAb)抗体から選択されるものを含むレプチン受容体結合断片)、又は例えば、その受容体へのレプチン結合、レプチン受容体リン酸化、若しくはレプチン受容体シグナル伝達を(例えば、レプチン受容体に結合はするが活性化させないことによって)阻害するレプチン変異体、ペプチド若しくは有機小分子を含んでよい。レプチン変異体の好適な一例には、受容体結合に影響を及ぼすことなく生物学的活性を破壊する128位でのArg→Glu置換が含まれる(Zabeau L et al., Biol Chem 395(5):499-514 (2014))。レプチン変異体の別の好適な例は、レプチンのドミナントネガティブ形態である(Matheny M et al., J Endocrinol 222(1):27-41 (2014)、Shpilman M et al., J Biol Chem 286:4429-4442 (2011))。好適なレプチン阻害剤を、意図されている阻害機序に関連する1又は2以上の単純なアッセイによってアッセイすることができる。例えば、アンタゴニスト抗レプチン抗体は、標準的なイムノアッセイを使用して、レプチンに結合するそれらの能力、及び/又は段落番号[0048](原文[0060])に上記のアッセイ及びバイオアッセイで観察されるレプチン活性を阻害(アンタゴナイズ)するそれらの能力について評価することができる。一部の他のレプチン阻害剤では、好適な細胞アッセイにおいて、レプチンmRNA又はレプチンタンパク質の発現の阻害を決定することが、より妥当であり得る。
【0078】
一部の実施形態では、レプチン阻害剤は、アンタゴニスト抗レプチン抗体又はその断片を含む。好ましくは、レプチン阻害剤は、ヒト抗レプチン抗体、又はキメラ若しくはヒト化抗レプチン抗体を含む。そのような抗体は、例えば、上の段落番号[0076](原文[0088])に記載のよく知られている方法のいずれかを使用して生産することができる。
【0079】
本開示の第5の態様はまた、対象において体重及び/又は食欲を増加させるための、
(i)MIC-1阻害剤、及び
(ii)レプチン阻害剤
の使用に関する。
【0080】
第6の態様では、本開示は、
(i)MIC-1阻害剤、及び
(ii)レプチン阻害剤
を含む医薬組成物に関する。
【0081】
第6の態様の医薬組成物は、例えば、経口、口腔内、経鼻、筋肉内及び静脈内投与に好適であり得る。組成物はさらに、例えば、薬理学的に許容される担体及び/又は賦形剤を、任意選択で、生物学的利用能、特に経口生物学的利用能を改善するための吸収促進剤及びプロテアーゼ阻害物質などの他の物質と一緒に含んでもよい。組成物は、最も有効な結果を達成する必要に応じて、1日1回投与、1日複数回投与、又は制御若しくは持続放出のために意図されていてもよい。
【0082】
第7の態様では、本開示は、第1及び第2の容器(例えば、バイアル)を含み、第1の容器が、MIC-1阻害剤を含有し、第2の容器が、レプチン阻害剤を含有し、第5の態様の方法においてキットを使用するための指示書と共に包装されていてもよいキットに関する。
【0083】
第7の態様のキットの容器内で提供されるMIC-1阻害剤及びレプチン阻害剤は、第5の態様の方法に関連して上記したとおりであってよい。キットはさらに、上記のとおりMIC-1及び/又はレプチンをアッセイするための材料及び薬剤を含んでもよい。
【0084】
本開示を、本明細書において下記で、次の非限定的実施例及び添付の図面によって展開する。
[実施例]
【実施例1】
【0085】
肥満マウスにおける体重減少に対するMIC-1の効果
CHOWを給餌されているか、又は12週間の高脂肪食(HFD)から食事性肥満(DIO)を有する10匹の雄の22週齢C57BL6マウスからなる群を使用して、研究を行った。マウスに、浸透圧ミニポンプ(例えば、Alzet(登録商標)モデル2002;Durect Corporation社製、Cupertino、CA、米国)を介して、ビヒクル(CHOWc又はDIOc)又は以前に記載された方法(Johnen H et al., Nat Med 13:1333-1340 (2007))に従って生産された組換えマウスMIC-1(0.5μg/gBW/日;CHOWm又はDIOm)のいずれかを注入した。MIC-1は、食物摂取の減少と付随して、持続的体重減少を誘導し(
図1A及びB)、これは、HFD(14%)マウスでは、CHOW給餌マウス(7%;
図1A)においてよりも、かなり低い定常状態血清中MIC-1レベルを有するにも関わらず(それぞれ6.3+/-0.8ng/ml vs 10.7+/-1.3ng/ml;p<0.01)、比例して約2倍高かったことが見出された。標準的な二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA,dual-energy X-ray adsorptiometry)によって測定されたとおり、研究過程にわたって、DIOmマウスは、体脂肪量及び除脂肪量の両方を失ったCHOWmマウスと比較して、体脂肪量のかなりの量を失ったが、除脂肪量はほとんど失わなかった(
図1C及びD)。さらに、DIOmマウスの鼠径脂肪組織は、マクロファージマーカーF4/80のかなり低い正規化qPCR発現を示し(10.3+/-1.9 vs 73.2+/-10.5;p<0.05)、これは、代謝表現型を改善すると予測される(Li Z et al., J Neurochem 95:361-376 (2005))マクロファージ脂肪浸潤の減少を示している。
【0086】
したがって、この研究で得られたデータは、MIC-1が抗肥満剤としてのその使用に非常に好ましい特徴を有することを示している。特に、この研究によって、MIC-1が、リーンマウスよりも肥満マウスにおいてかなり有効であることが見出され、このことのさらなる裏付けでは、マウスが体重を減少させ、かつそれが、除脂肪量のわずかな減少をもたらすにつれて、肥満マウスにおける体重減少率が漸進的に低くなることも見出された。16週間にわたって普通食又はDIOを誘導するためにHFDを給餌されたマウスを用いて34日間にわたって行われた同様の実験(すなわち、34日間にわたる組換えMIC-1の長期注入)(Li Z et al., J Neurochem 95:361-376 (2005))では、MIC-1が、ビヒクル処置対照マウスと比較して、DIOマウス及び飼料給餌マウスの食物摂取及び体重を減少させたことも観察された。DIOマウスでは、これらの作用には、体脂肪量のより大きな減少も随伴した。さらに、MIC-1処置された飼料給餌マウスが除脂肪量も体脂肪量も減少させたのに対して、MIC-1処置DIOマウスは、体脂肪量のみを減少させた。体重及び脂肪蓄積の減少は大部分、食物摂取の減少によるものであったが、MIC-1処置DIOマウスは、熱産生の増加により得るエネルギー消費の増加も示した。加えて、MIC-1処置DIOマウスは、アディポネクチンのより高い循環レベル並びにレプチン及びインスリン抵抗性と関連する炎症性メディエーターのより低い組織発現及び循環レベルを示し、肥満の脂肪性肝炎における顕著な改善を示した。末梢インスリン及びグルコース不耐性は、ビヒクル処置対照マウスと比較して、MIC-1処置DIO及び普通食給餌マウスの両方で改善された。
【実施例2】
【0087】
MIC-1+レプチンを注入されたマウスにおける体重減少の増大
飼料給餌11週齢C57BL6マウスを使用し、それに、(標準浸透圧ミニポンプを使用して)ビヒクル、組換えマウスMIC-1(0.5μg/体重g/24時間)、レプチン(0.5μg/体重g/24時間)、又はMIC-1+レプチン(MIC-1 0.5μg/体重g+レプチン0.5μg/体重g/24時間)のいずれかを6日間にわたって連続注入して、研究を行った。レプチンは、Creative Biomart社(Shirley、NY、米国)から供給された組換えマウスレプチンであった。
【0088】
結果は、
図2に示されている。6日後に、MIC-1+レプチンで処置されたマウスの体重は、単独のMIC-1又はレプチンで観察されたものよりも有意に少なく、これは、これら2種のアディポカインの間での実質的な相補的相互作用を示している。さらに、実施例1で使用したDIOマウスはレプチン抵抗性であるので、ここで達成された結果は、MIC-1がレプチン抵抗性も緩和し得ることを示している。これは、MIC-1がレプチン欠損ob/obマウス及びレプチン受容体欠損db/dbマウスにおいて食欲不振及び体重減少を引き起こす際に有効であることを示した本出願人による先行研究(Johnen H et al., Nat Med 13:1333-1340 (2007))とも一致する。
【0089】
この研究で得られたデータは、特にレプチンと組み合わせて使用した場合に、MIC-1が抗肥満剤としてのその使用に非常に好ましい特徴を有することも示している。MIC-1及び/又はレプチンの長期使用は、持続的な体重減少をもたらし、食事性肥満(DIO)の代謝結果を修正すると考えられる。
【実施例3】
【0090】
MIC-1+レプチンを注入されたHFDマウスにおける体重減少のかなりの増大
ビヒクル、マウスレプチン(0.5μg/g/日)及び組換えマウスMIC-1(0.5μg/g/日)を二成分組み合わせで、普通食を給餌されている雄のマウス及び高脂肪食で24週間後に肥満に(食事性肥満(DIO)を有するマウス)、かつレプチン抵抗性にした雄のマウスに注入した。結果が、
図3A及び3Bに示されている。マウスに、MIC-1及びレプチンの組み合わせを注入した場合に、体重減少の最大レベルが見出された。HFDマウスで、MIC-1及びレプチンの組み合わせで観察された体重減少の程度が特に顕著であった。
【0091】
この結果によって、HFDマウスが、飼料給餌マウスよりも、MIC-1誘導性体重減少に対して応答性があることが確認される。特に、この研究では、HFDマウスの方がより多くの体重を比例して減少させ、体重を減少させ続けた一方で、飼料給餌マウスの体重減少はほぼ11日までに横ばい状態になったことが観察された。加えて、この結果は、飼料給餌マウスでの体重減少の誘導においてMIC-1と等効力であるレプチンの用量を使用した場合に(
図3Bを参照されたい)、HFDマウスではレプチン誘導性体重減少が全くないか、又はほとんどないことを示した(
図3A)。対照的に、HFDマウスにおいて、レプチンをMIC-1と共に注入した場合、体重減少の程度は、かなり増加し、実験の終了時にも、MIC-1及びレプチンの組み合わせで処置したマウスは、体重を急速に減少させ続けた(
図3A)。
【実施例4】
【0092】
MIC-1+レプチンを注入されたHFDマウスにおける体重減少の増大の特性決定
食事性肥満(DIO)を有するマウス及び普通食給餌マウスにおいて、1群当たり7匹のマウスを用いて、MIC-1とレプチンとの間の相互作用を実証及び特性決定するために、さらなる実験を行った。使用した方法は、実施例1~3に関して記載したものと同様であり、及び/又は以前に記載されたとおりであった(Tsai VW et al., Int J Obes (Lond) doi: 10.1038/ijo.2017.258 (2017))。各マウスに、2つの浸透圧ミニポンプ(Alzet model 2002;Durect Corporation社製)を移植した。一方のポンプはビヒクル又はMIC-1(最小培地で成長させたP.パストリス(P.pastoris)から発現及び分泌され、3ステップ手順で高度に精製され、次いで、凍結乾燥され、使用まで-80℃で貯蔵された、使用時点で、4mM HCL中で再構成され、次いで、PBSビヒクル中で適切な濃度に希釈されたマウスMIC-1の組換え成熟ドメイン)のいずれかを含有し、第2のポンプは、ビヒクル又はレプチン(大腸菌(E.coli)で産生され、147aaからなり、16.1kDaの分子量を有する単一の非グリコシル化ポリペプチド鎖としての組換えマウスレプチン)のいずれかを含有した。ビヒクル又はMIC-1は、ミニポンプを介して、0.5μg/gBW/日で、実験期間にわたって注入した一方で、ビヒクル又はレプチンは、0.2μg/gBW/日で実験期間にわたって注入した。体重(BW)を最初の13日間にわたってモニターし、その間、マウスは大部分、平静であった。全体脂肪量及び除脂肪量を処置中に、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA;Lunar PIXImus2マウスデンシトメータ;GE Healthcare社製、Waukesha、WI、米国)を使用して測定した。マウスの行動を実質的に中断させるDEXA及び食物摂取測定などの調査は、15から19日目の間に行い、その期間は、体重をモニターしなかった。正常な肝臓及びDIOからの肝臓に対する効果を、固定され、切片化され、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された解剖肝臓からの組織を用いて調査した。標準的な糖負荷試験(GTT,glucose tolerance tests)及びインスリン感受性試験(ITT,insulin sensitivity tests)も、処置マウスで行った(14日目)。
【0093】
【0094】
以前に実証されていたように、これらの実験においてMIC-1で処置されたDIOマウスは、体重のかなりの量を減少させたことが見出された。他方で、レプチンのみ(すなわち、レプチン+ビヒクル)で処置されたDIOマウスは、体重の無変化を示し、これは、重度の肥満マウス及びヒトのよく知られているレプチン抵抗性と一致する。しかしながら、MIC-1と組み合わせると、MIC-1+レプチン処置マウスは、MIC-1のみ(すなわち、MIC-1+ビヒクル)で処置されたマウスを上回る体重をさらに減少させ、これは、MIC-1とレプチンとの間の相乗関係を示唆している(
図4)。理論によって制限されることは望まないが、MIC-1及びレプチンの組み合わせで観察された体重減少の増大は、MIC-1によるレプチン抵抗性の逆転により得ると考えられる。食物消費の変化が体重変化に続き、これは、それらの変化が、必ずしもそのためだけによるものではないが、主に食欲の変化によってもたらされていることを示している。同様に、普通食給餌マウスでは、より小さな結果が観察されたが(
図5を参照されたい)、それらはレプチン抵抗性ではなかったので、これも、レプチン+ビヒクルに対してより小さな応答を示した。
【0095】
MIC-1又はMIC-1+レプチンの組合せで処置されたDIOマウスによる体重減少は大部分、体脂肪量であり(
図6を参照されたい)、これらの処置は、DEXAによって定量化された除脂肪量(腓腹筋量及び前脛骨筋肉量)のパーセント変化の分析によって決定されたとおり除脂肪量及び筋肉量には影響を有さなかったことが観察された(
図7)。これは、MIC-1又はMIC-1+レプチンをベースとした肥満の治療が除脂肪量/筋肉量に対して好ましくない影響を有さないであろうことを示している。他方で、普通食給餌マウスでは、MIC-1の注入はまさに、除脂肪量の減少をもたらし、除脂肪量/筋肉量のこの減少は、レプチンと組み合わせて与えると、増加した(
図8)。しかしながら、これは、食欲不振/悪液質症候群の状況では、MIC-1阻害剤(例えば、アンタゴニスト抗MIC-1抗体)又はMIC-1阻害剤及びレプチン阻害剤の併用療法(例えば、アンタゴニスト抗MIC-1抗体とアンタゴニスト抗レプチン抗体)での治療が、食欲不振/悪液質の対象の除脂肪量/筋肉量に有利な改善をもたらし得ることを意味し得る。MIC-1で処置された普通食給餌マウスも体脂肪量を減少させ、MIC-1+レプチンでの処置は、体脂肪量のかなり多い減少をもたらし(
図10を参照されたい)、これは、レプチン阻害剤でのレプチン又はレプチン経路の阻害は、体脂肪量、さらには除脂肪量及び体重の改善によって、食欲不振/悪液質の対象の治療に対するMIC-1の阻害の効果を強化することを示唆している。
【0096】
上記のとおり調製された肝臓切片を使用すると、組織診によって、正常なマウス肝臓と比較して、ビヒクル処置DIOマウス(データ図示せず)では、脂肪性肝炎の存在が明らかに実証された。脂肪肝は、肥満における罹患の主な原因であり、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び時には、硬変及び肝不全につながり得る。観察された脂肪性肝炎が、MIC-1のみ(すなわち、MIC-1+ビヒクル)を注入されたマウスでは処置期間をかけて改善し、MIC-1及びレプチン処置の組み合わせの注入では、本質的に正常に戻ったことが見出され、これは、これらの薬剤が、脂肪性肝炎を治療又は予防し、それによって、併発性の硬変及び肝不全の発症のリスクを低下させる併用療法として、かなりの将来性を提示することを示している。
【0097】
IGT及びITTでは、レプチンとの併用処置が、肥満マウスの耐糖能及びインスリン感受性を改善するMIC-1の以前から認められていた能力を強化することが見出された(
図9を参照されたい)。2型糖尿病(T2D)は、ほとんどの罹患及び死亡率の上昇の原因である重篤な肥満の主な合併症であるので、MIC-1をレプチンと組み合わせて用いることは、T2D及び/又はその症状をより良好に制御し、おそらく治癒させることを可能にし得る。
【実施例5】
【0098】
MIC-1+レプチンを注入されたob/obマウスにおける体重減少のかなりの増大
Ob/Obマウスは、レプチンの変異不活性型を有し、したがって、これらのマウスは、機能的に不活性なレプチン経路を有し、このことが、普通食餌で重篤で急速に進行する肥満及びその結果につながる。しかしながら、そのマウスはなお、インタクトなレプチン受容体及びシグナル伝達経路を有し、したがって、それらの内因性変異レプチンには応答しないにも関わらず、レプチンの投与には応答することができる。ここでは、正常なレプチンの背景レベルの上昇を伴うことなく(DIOマウスで起こるものを参照されたい)、肥満モデルにおいて、MIC-1とレプチンとの間の相互作用をさらに調査するために、このマウスを実験で使用した。この実験で使用した方法は、実施例1~3に関連して記載したとおり、及び/又は以前に記載されたとおり(Tsai VW et al., Int J Obes (Lond) doi: 10.1038/ijo.2017.258 (2017))であった。
【0099】
ob/ob遺伝的レプチン欠損マウスは、生理活性な循環レプチンを有さず、普通食の食餌でも重度に肥満している。これらは、MIC-1のみでの処置後に、多少の体重減少を経験するが、これは、高脂肪食によって肥満しているマウスで見られたものよりも少なかった(
図11を参照されたい)。実験では、レプチンのみで処置されたob/obマウスは有意な体重減少を示したことが観察された。これは、遺伝的欠損によるレプチンに対する過感受性によると考えられる。しかしながら、MIC-1と組み合わせた場合、レプチンで処置されたマウスは、いずれかの薬剤のみで処置されたマウスを上回る有意なさらなる量の体重を減少させることが見出された。食物消費の変化が体重変化に続き、それらの変化が、主に食欲の変化によってもたらされることが確認される。ob/obマウスは、MIC-1のみ(すなわち、MIC-1+ビヒクル)で処置された場合、多少の体脂肪量の減少を経験するが(これは、高脂肪食によって肥満しているマウスで見られたものよりも少ないが(
図12を参照されたい))、レプチンのみで処置された場合、これらのマウスは有意な体脂肪量の減少を示すことも見出された。それにもかかわらず、この体脂肪量の減少は、ob/obマウスをMIC-1及びレプチンの組み合わせで処置した場合よりもいっそう有意に少ない。このことは、これら2つの薬剤の間の相乗的な相互作用を示唆している。
【実施例6】
【0100】
MIC-1の食欲不振/悪液質誘導活性に対する投与レプチンの効果
先行する実施例、特に実施例4で観察された結果は、過剰発現したMIC-1の食欲不振/悪液質誘導活性が、レプチン経路を阻害することによって低下し得ることを示唆した。この研究では、マウスに、レプチンアンタゴニスト(マウススーパーレプチンアンタゴニスト(SMLA,mouse super leptin antagonist);Protein Laboratories Rehevot Ltd社製、Rehevot、イスラエル)を連続注入によって投与した。SMLAは、レプチン受容体について高い親和性を有するが、レプチン受容体を活性化させることはなく、したがって、レプチン作用のドミナントネガティブ競合阻害物質として作用する変異型マウスレプチン分子である(Shpilman M et al., J Biol Chem 286:4429-4442 (2011))。マウスに、2つの浸透圧ミニポンプを皮下移植した。一方のミニポンプは、MIC-1又はビヒクル(0.5μg/gBW/日)を注入し、他方はSMLA又はビヒクル(1.5μg/gBW/日)を注入した。使用方法は、実施例1~3に関連して記載されたとおり、及び/又は以前に記載されたとおり(Tsai VW et al., Int J Obes (Lond) doi: 10.1038/ijo.2017.258 (2017))である。
【0101】
結果は
図13~15に示されている。レプチンアンタゴニストのみで処置されたリーンマウス(lean mice)は、マウス及びヒトにおけるレプチンの満腹誘導作用の逆転によって、体重の増加を示した。食欲不振/悪液質症候群の状況を模倣して、MIC-1で処置されたリーンマウスは、以前に実証されたとおり体重のかなりの量を減少させることが観察された。しかしながら、MIC-1及びレプチンアンタゴニストの組み合わせで処置されたマウスでは、MIC-1のみで処置されたマウスと比較して、より少ない体重減少が見られ、このことは、レプチンアンタゴニストが、体重減少におけるMIC-1の作用の一部を阻害することを示している。体重のこれらの変化が、除脂肪量(
図14)及び体脂肪量(
図15)の変化を反映していることも観察され、それによって、このことは、レプチン又はレプチン経路の阻害が、過剰発現したMIC-1の食欲不振/悪液質誘導活性を低下させることを示している。したがって、MIC-1の阻害に加えて、レプチンを阻害すること(例えば、レプチン阻害剤を用いること)で、有効な治療的処置を、食欲不振又は悪液質に罹患している対象に提供し得ると予想される。
【0102】
本明細書及び次の特許請求の範囲を通じて、文脈が別段に必要としない限り、用語「含む(comprise)」及び「含む(include)」という言葉並びに「含む(comprising)」及び「含む(including)」などのその変化形は、記載の整数又は整数群を包含するが、ただし、任意の他の整数又は整数群を排除することを意味するものではないことを理解されたい。
【0103】
本明細書におけるいずれかの従来技術に対する言及は、そのような従来技術が共通一般知識の一部を形成するという示唆の何らかの形態であることを是認するものではなく、またそのように理解されるべきではない。
【0104】
当業者であれば、本明細書に記載の発明の主題が、記載された特定の用途に対するその使用に限定されないことを認めるだろう。発明の主題は、本明細書において記載又は図示された特定の要素及び/又は特徴に関して、その好ましい実施形態に限定されないだけでなく、次の特許請求の範囲によって記載及び定義される範囲から逸脱することなく、多くの改変、変更及び置き換えが可能である。
【0105】
(参考文献)
1. Bootcov MR et al., Proc Natl Acad Sci USA 94:11514-11519 (1997)
2. Breit SN and MR Bootcov, International Patent Application No PCT/AU96/00386 (WO 97/00958)
3. Fairlie WD et al., Gene 254:67-76 (2000)
4. Moore AG et al., J Clin Endocrinol Metab 85:4781-4788 (2000)
5. Fairlie WD et al., Biochem 40:65-73 (2001)
6. Breit SN et al., International Patent Application No PCT/AU01/00456 (WO 01/81928)
7. Fairlie WD et al., J Leukocyte Biol 65:2-5 (1999)
8. Brown DA et al., Lancet 359:2159-2163 (2002)
9. Koniaris LG. J Gastrointest Surg 2003 7(7):901-905 (2003)
10. Welsh JB and GM Hampton, Cancer Res 61:5974-5978 (2001)
11. Buckhaults P et al., Cancer Res 61:6996-7001 (2001)
12. Welsh JB et al., Proc Natl Acad Sci USA 100:3410-3415 (2003)
13. Brown DA et al., Biotechniques 33(1):118-20, 122, 124 passim (2002)
14. Koopmann J et al., Clin Cancer Res 10(7):2386-2392 (2004)
15. Brown DA et al., Clin Cancer Res 9:2642-2650 (2003)
16. Tsai VWW et al., Int J Obes (Lond) 40(2):193-7 (2016)
17. Breit SN et al., Growth Factors 29:187-195 (2011)
18. Johnen H et al., Cardiovasc Pathol 21:499-505 (2012)
19. Kempf T et al., Circ Res 98:351-360 (2006)
20. Wang X et al., Aging (Albany NY) 6:690-704 (2014)
21. Johnen H et al., Nat Med 13:1333-1340 (2007)
22. Breit SN, International Patent Application No PCT/AU2005/000525 (WO 2005/099746)
23. Vigano ALL et al., Cancer Res 73 Suppl1, Abstract nr 4650 (2103)
24. Lu ZH et al., Asian Pac J Cancer Prev 15:6047-6052 (2014)
25. Kempf T et al., J Am Coll Cardiol 50:1054-1060 (2007)
26. Macia L et al., PLoS One 7, e34868 (2012)
27. Chrysovergis K et al., Int J Obes (Lond) 38(12):1555-1564 (2014)
28. Hong JH et al., Diabetes Metab J 38:472-479 (2014)
29. Tsai VW et al., PLoS One 8, e55174 (2013)
30. Mullican SE et al., Nat Med 23(10):1150-1157 (2017)
31. Vayghan HJ et al., IRJABS 4(10):3099-3103 (2013)
32. Jacquet D et al., Int J Obesity 25:491-495 (2001)
33. Obesity: preventing and managing the global epidemic. Report of a WHO consultation, World Health Organ Tech Rep Ser 894:i-xii, 1-253 (2000)
34. Bluher S et al., J Invest Med 57(7):784-788 (2009)
35. Stamatiadis DN et al., Clin Endocrinol 60(4):434-441 (2004)
36. Gonzalez LC et al., Neuroendocrinology 70(3):213-220 (1999)
37. Iikuni N et al., Curr Immunol Rev 4(2): 70-79 (2008)
38. Tesitore L et al., Int J Mol Med 5(4):421-426 (2000)
39. Kempf T et al., Eur J Endocrinol 167:671-678 (2012)
40. Carstensen M et al., Eur J Endocrinol 162:913-917 (2010)
41. Dostalova I et al., Eur J Endocrinol 161:397-404 (2009)
42. Herder C et al., Diabetes Obes Metab 15 Suppl 3, 39-50 (2013)
43. Patricia G et al., US Patent No 6,777,388
44. Pluckthun A., Bio/Technology 9:545-551 (1991)
45. Hudson PJ and C Souriau., Nat Med 9(1): 129-134 (2003)
46. Lonberg N., Curr Opin Immunol 20:450-459 (2008)
47. Kashmiri SVS et al. Methods 36(1): 25-34 (2005)
48. Marvin JS and HB Lowman. Phage Display in Biotechnology and Drug Discovery (2015)
49. Bowers PM et al., J Biol Chem 288(11):7688-7696 (2013)
50. Nejati-Koshki K et al., Asian Pac J Cancer Prev 14(11):6595-6599 (2014)
51. Zhang F et al., Nature 387:206-209 (1997)
52. Kovalsky I et al., Diabetes Obes Metab 12:393-402 (2010)
53. Zabeau L et al., Biol Chem 395(5):499-514 (2014)
54. Iversen PO et al., Blood 100:4123-4128 (2002)
55. De Rosa V et al., J Clin Invest 116:447-455 (2006)
56. Amirah E-E A et al., Expert Opin Drug Deliv 12(12):1923-1941 (2015)
57. Bender TS et al., Neuroscience 303:569-576 (2015)
58. Hanson LR et al., Drug Deliv 19(3):149-154 (2012)
59. Ashima RS., J Clin Invest 118(7):2380-2383 (2008)
60. Considine RV et al., New Engl J Med 334:292-295 (1996)
61. Al Maskari MY and AA Alnaqdy., Sultan Qaboos Univ Med J 6(2):27-31 (2006)
62. Vassilev LT et al., Science 303(5659):844-848 (2004)
63. Baek SJ et al., Molec Pharm 67(2):356-364 (2005)
64. Baek, SJ et al., Mol Pharmacol 59:901-908 (2001)
65. Brown, DA et al., Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 21:337-346 (2012)
66. Matheny M et al., J Endocrinol 222(1):27-41 (2014)
67. Ioffe E et al., Proc Natl Acad Sci U S A 95:11852-11857 (1998)
68. Maffei M et al., Nat Med 1(11):1155-1161(1995)
69. Yang L et al., Nat Med 23(10):1158-1166 (2017)
70. Emmerson PJ et al., Nat Med 23(10):1215-1219 (2017)
71. Tsai VW et al., Int J Obes (Lond) doi: 10.1038/ijo.2017.258 (2017)
72. Li Z et al., J Neurochem 95:361-376 (2005)
73. Tsai VW et al., Int J Obes (Lond) doi: 10.1038/ijo.2017.258 (2017)
74. Shpilman M et al., J Biol Chem 286:4429-4442 (2011)