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特許7134961アルミニウムドープ窒化ホウ素の相間層を含む複合材料部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】アルミニウムドープ窒化ホウ素の相間層を含む複合材料部品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/80 20060101AFI20220905BHJP
   C23C 16/38 20060101ALI20220905BHJP
   C04B 41/87 20060101ALI20220905BHJP
   F02C 7/24 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
C04B35/80
C23C16/38
C04B41/87 E
F02C7/24 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019528517
(86)(22)【出願日】2017-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 FR2017053209
(87)【国際公開番号】W WO2018096266
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】1661557
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516299213
【氏名又は名称】サフラン・セラミックス
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビュエ,エミリアン
(72)【発明者】
【氏名】カルミナーティ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ジャック,シルバン・リュシアン
(72)【発明者】
【氏名】ルビヤ,フランシス
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0207838(US,A1)
【文献】特開2007-138298(JP,A)
【文献】特開平10-101446(JP,A)
【文献】特開2006-189029(JP,A)
【文献】特開2003-183979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/05
C04B 35/107
C04B 35/622- 35/84
C04B 41/80 - 41/91
C23C 16/00 - 16/56
F23R 3/00 - 7/00
F02C 1/00 - 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素またはセラミックのヤーン(12)できている繊維強化材と、大部分がセラミックであるマトリックス(16)とを含む複合材料部品(1、2、3)であって、ヤーンを覆っており、且つヤーンとマトリックスとの間に存在する、第1の相間層(14、24)を、この部品はさらに含み、前記第1の相間層が、アルミニウムでドープされた窒化ホウ素の層であり、5%~15%の範囲内にあるアルミニウムの原子含有量を示す、複合材料部品(1、2、3)。
【請求項2】
第1の相間層が、5%~12%の範囲内にあるアルミニウムの原子含有量を示す、請求項1に記載の部品(1、2、3)。
【請求項3】
第1の相間層が、7%~12%の範囲内にあるアルミニウムの原子含有量を示す、請求項2に記載の部品(1、2、3)。
【請求項4】
第1の相間層(14)が、ヤーン(12)と接触している、請求項1~3のいずれか一項に記載の部品(1)。
【請求項5】
部品が、ヤーン(12)と第1の相間層(24)との間に位置する窒化ホウ素の第2の相間層(23)をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の部品(2、3)。
【請求項6】
第1の相間層(24)が、第2の相間層(23)と接触している、請求項5に記載の部品(2)。
【請求項7】
部品(3)が、第1の相間層(24)と接触しているケイ素を含む層(33)を含む、請求項1~3、5のいずれか一項に記載の部品(3)。
【請求項8】
ケイ素を含む層(33)が、ヤーン(12)と第1の相間層(24)との間に存在する、請求項1~3、5のいずれか一項による請求項7に記載の部品(3)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の部品(1、2、3)を製造する方法であって、
方法が、
少なくとも以下のステップ、
ヤーン(12)上に第1の相間層(14、24)を形成するステップと、
1つまたは複数の織物操作を実施することによって、ヤーン(12)から得られるべき部品の繊維強化材を形成する繊維プリフォームを作製するステップと、
第1の相間層(14、24)上の繊維プリフォームの細孔内に、大部分がセラミック製のマトリックス(16)を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
第1の相間層(14、24)が、化学気相浸透または化学蒸着によってヤーンの上に形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1の相間層(14、24)が、三塩化ホウ素BCl、アンモニアNH、およびアルミニウムを含む前駆体ガスを含む反応気相から作製される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アルミニウムを含む前駆体ガスが、トリメチルアルミニウム、アルミニウムトリクロライド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、およびそれらの混合物から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の部品(1、2、3)を使用する方法であって、前記部品を酸化性および湿潤媒体中で800℃以上の温度で使用するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大部分がセラミックであるマトリックスを有する複合材料部品(セラミックマトリックス複合材(CMC)部品)に関し、その部品は、繊維強化材と、大部分はほとんどがセラミックのマトリックス相との間に、挿入されるアルミニウムドープ窒化ホウ素の相間層を含む。
【背景技術】
【0002】
本発明の応用分野は、タービンエンジン、特に航空機用タービンエンジン、例えばタービンの部品、アフターボディの部品、または二次ノズルの部品の高温部分に使用される構造部品の製造に役立つ複合材料の製造である。
【0003】
炭化ケイ素(SiC)繊維でできた繊維強化材、ヤーン上に存在する窒化ホウ素(BN)の相間コーティング、および大部分がセラミックであるマトリックスを含むCMC部品が知られている。
【0004】
そのようなCMC材料部品を製造するステップは、製造されるべき部品の形状に近い形状の繊維プリフォームが、SiCヤーンを3次元的に織ることによって得られる第1のステップを含むことができる。
【0005】
第2のステップの間に、化学気相浸透(CVI)によってSiCヤーン上にBN相間コーティングが形成され得る。このステップの間、プリフォームは、ツーリングまたはシェーパによって所望の形状に保持される。BN相間層は、三塩化ホウ素BCl、アンモニアNH、および二水素Hを含む反応気相からSiCヤーン上にCVIによって形成され得る。例として、特に、ヤーンと相間層との間に比較的強力な結合をもたらすBN相間層を得るために、CVIプロセスは、比較的低い温度、例えば約700℃で実施され、比較的低い圧力、例えば約1.3キロパスカル(kPa)で実施され得る。このような強力な結合は、荷重下で亀裂が入る可能性がより低い、高い弾性変形限界を有するCMC材料を得るために、SiCヤーンの弾性変形する能力を利用することが可能である。BN相間層は、繊維に向かって伝播する亀裂の発生が防止され得ることによってメカニカルヒューズとして機能し、それによって材料の寿命を延ばす。
【0006】
第3の工程では、CMC材料部品を得るために、BN相間層によって被覆されたヤーンを含む繊維プリフォームの残留細孔内に大部分がセラミックのマトリックスが形成される。
【0007】
CMC材料は必然的に亀裂を受けやすく、たとえそれが材料の機械的特性に顕著な影響を与えない場合でも、それでもやはり、周囲大気が材料のコアに接近する可能性がある。亀裂または微小亀裂は、材料が製造されたときから存在する可能性があり、またはそれらが稼働中に出現する可能性がある。不都合なことに、そのような材料は、特に酸化性大気(空気)中、特に航空および宇宙の分野における高温での用途向けである。
【0008】
したがって、長い寿命を保証するために、周囲大気が繊維強化材または相間層上に腐食作用を及ぼすことを防止するバリヤを形成することが望ましく、そうでなければ材料の機械的特性が劣化するからである。窒化ホウ素は、酸化して液体酸化物Bを形成し、これは酸素に対する拡散バリヤとして機能する。それにもかかわらず、水分の存在下では、液体B酸化物は高温で揮発性水酸化物Hの形態で気化する。この気化は、窒化ホウ素層の酸化および腐食による消費につながる。これは、材料の機械的特性の低下につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高温での酸化および腐食に耐えるCMC部品の能力を改善するための解決策を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、第1の態様において、本発明は、炭素またはセラミックヤーンでできた繊維強化材と、大部分がセラミックであるマトリックスとを含む複合材料部品を提供する。ヤーンを覆っており、且つヤーンとマトリックスとの間に存在する、第1の相間層を、この部品はさらに含み、前記第1の相間層が、アルミニウムでドープされた窒化ホウ素の層であり、5%~15%の範囲内にあるアルミニウムの原子含有量を示す。
【0011】
以下では、用語「B(Al)N相間層」または「第1の相間層」は、アルミニウムでドープされた窒化ホウ素でできた上述の第1の相間層を指示するのに使用される。
【0012】
純粋なBNの相間層と比較して、B(Al)N相間層は、高温での湿潤雰囲気中での改善された安定性、ならびに酸化および腐食の現象に対する感度の減少を示す。より正確には、原子百分率で少なくとも5%のB(Al)N相間層中のアルミニウムの存在は、この層が酸化に対する改善された耐性を有することにつながり、液体B酸化物が、高温の湿潤雰囲気中では、aB・bAl(ここで、aおよびbは整数)として定義される化合物の結晶を形成することによって物理化学的に保持されることにもつながる。さらに、B(Al)N相間層中のアルミニウムの原子含有量を15%以下に制限することにより、その層は、良好な亀裂発生防止特性を有することができる。窒化ホウ素をベースとする層中のアルミニウムの原子含有量が15%を超える場合、そのときその層は、もはやその亀裂発生防止機能を果たさず、それを組み込んだ材料の寿命が低下する。したがって、本発明は、酸化性かつ湿潤媒体中で、高温で寿命が改善したCMC部品を提供する。
【0013】
一実施形態では、第1の相間層は、ヤーンと接触していることができる。
【0014】
一変形形態では、部品が、ヤーンと第1の相間層との間に位置する窒化ホウ素の第2の相間層をさらに含む。特に、そのような状況下では、第1の相間層は第2の相間層と接触していることができる。
【0015】
一実施形態では、部品は、第1の相間層と接触しているケイ素を含む層を備えることができる。
【0016】
B(Al)N相間層と接触しているケイ素を含む層の存在は、有利にも、ホウケイ酸ガラスを形成するようにケイ素を添加することによってBガラスをさらに安定化させる働きがあり、それによって高温での酸化および腐食に耐える部品の能力をさらに改善する。
【0017】
特に、ケイ素を含む前記層は、ヤーンと第1の相間層との間に存在することができる。一変形形態、または組合せ形態では、マトリックスは、第1の相間層と接触しているケイ素を含む割合を示すことができる。
【0018】
一実施形態では、第1の相間層は、5%~12%の範囲内にあるアルミニウムの原子含有量を示す。特に、第1の相間層は、7%~12%の範囲内にあるアルミニウムの原子含有量を示すことができる。
【0019】
本発明はまた、上記のような部品を製造する方法を提供し、その方法は、少なくとも以下のステップ、
ヤーン上に第1の相間層を形成するステップと、
1つまたは複数の織物操作を実施することによって、ヤーンから得られるべき部品の繊維強化材を形成する繊維プリフォームを作製するステップと、
第1の相間層上の繊維プリフォームの細孔内に大部分がセラミック製のマトリックスを形成するステップと
を含む。
【0020】
一実施態様では、第1の相間層は、化学気相浸透または化学蒸着によってヤーン上に形成される。特に、第1の相間層が、三塩化ホウ素BCl、アンモニアNH、およびアルミニウムを含む前駆体ガスを含む反応気相から作製され得る。例として、アルミニウムを含む前駆体ガスが、トリメチルアルミニウム、アルミニウムトリクロライド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、およびそれらの混合物から選択され得る。
【0021】
本発明はまた、上述のような部品を使用する方法を提供し、その方法は、前記部品を酸化性および湿潤媒体中で800℃以上の温度で使用するステップを含む。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、限定しない方法で提供される以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の部品の第1の例の部分断面図である。
図2】本発明の部品の第2の例の部分断面図である。
図3図1および図2に示す部品を製造するための一連のステップを示す流れ図である。
図4図1および図2に示す部品を製造するための一連のステップを示す流れ図である。
図5】本発明の部品の第3の例の部分断面図である。
図6図5に示す部品を製造することを可能にする一連のステップを示す流れ図である。
図7】腐食に耐えるBN相間層の能力をB(Al)N相間層の対応する能力と比較する腐食試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の第1の部品の第1の例を示す。
【0025】
部品1は、炭素製またはセラミック製の複数のヤーン12を含む繊維強化材を備える。例として、「Nicalon」、「Hi-Nicalon」、または実際に「Hi-NicalonタイプS」という参照に基づいて、供給業者NGSによって供給される炭化ケイ素ヤーンを使用することが可能である。例として、使用可能な炭素ヤーンは、供給業者東レによってTorayca T300 3Kの名称で供給されている。
【0026】
図示の例では、部品1は、B(Al)N相間層14を有する。この例では、B(Al)N相間層14は、そのアルミニウム含有量が限定された結果として、複合材料中の脆化緩和の機能を果たし、この機能は、マトリックスを通って伝播した後に相間層に達する何らかの亀裂発生を防止することに役立ち、それによって、そのような亀裂によるヤーンの任意の破断を防止し、または遅らせる。B(Al)N相間層14はまた、純粋なBNの相間層と比較して、高温での湿潤雰囲気中での改善された安定性、ならびに酸化および腐食の現象に対する感度の減少を示し、それによって部品1の稼働寿命を長くする。上述のように、B(Al)N相間層中のアルミニウムの存在は、この層が酸化に対する改善された耐性を有することにつながり、液体B酸化物が、高温の湿潤雰囲気中では、aB・bAl(ここで、aおよびbは整数)として定義される化合物の結晶を形成することによって物理化学的に保たれることにもつながる。特に、アルミニウムが存在すると、2つの定義された化合物、すなわち2Al・Bおよび9Al・2Bが形成されることが可能である。ホウ酸アルミニウム2Al・Bは、湿潤による腐食に耐える良好な能力を示し、高い温度、すなわち400℃を超え、1189℃で分解するまでの温度で、Bの能力よりもはるかに良好である。この分解は、液体Bが放出されると第2の定義された化合物9Al・2Bの形成を引き起こし、それがより高い温度での修復に寄与する。ホウ酸アルミニウム9Al・2Bは、1900℃を超えると分解する。
【0027】
図示の例では、部品1は、B(Al)N相間層14によって形成された単一の相間層を示す。部品1では、B(Al)N相間層14がヤーン12と接触して存在する。例として、B(Al)N相間層14の厚さeは、10ナノメートル(nm)~2000nmの範囲内にあることができ、例えば100nm~2000nm、またはさらに100nm~1000nmの範囲内にあることができる。
【0028】
上述のように、B(Al)N相間層14は、原子百分率で5%~15%の範囲でアルミニウムによってドープされた窒化ホウ素の層である。特に、B(Al)N相間層中のアルミニウムの原子含有量は、5%~14%、または実際には5%~13%、または5%~12%、または5%~11%、または5%~10%、または5%~9%の範囲にあることが可能である。B(Al)N相間層中のアルミニウムの原子含有量は、6%~15%、または実際には6%~14%、または6%~13%、または6%~12%、または6%~11%、または6%~10%、または6%~9%の範囲にあることもまた可能である。B(Al)N相間層中のアルミニウムの原子含有量は、7%~15%、または実際には7%~14%、または7%~13%、または7%~12%、または7%~11%、または7%~10%、または7%~9%の範囲にあることもまた可能である。B(Al)N相間層中のアルミニウムの原子含有量は、8%~15%、または実際には8%~14%、または8%~13%、または8%~12%、または8%~11%、または8%~10%、または8%~9%の範囲にあることもまた可能である。不可避な不純物を無視すると、B(Al)N相間層14は、ホウ素、窒素、およびアルミニウムによって構成されることが可能であり、上記に特定されるアルミニウムの原子含有量を有する。特に、B(Al)N相間層14は、いかなる炭素またはケイ素を含まない可能性がある。組成B(Al)N相間層に関する上記の特徴は、図1に示す実施形態だけでなく、本発明の部品の実施形態の全てに適用することができる。
【0029】
さらに、部品1は、大部分がセラミック、特に耐火性炭化物、酸化物、または窒化物であるマトリックス16を提示する。「大部分がセラミックからなるマトリックス」という用語は、マトリックス中のセラミック材料の重量含有量が50%以上であることを意味すると理解されるべきである。マトリックス16は、その中の細孔の中に存在することによって繊維強化材を緻密化する。マトリックス16は、繊維12および相間層14を覆う。マトリックス16は、繊維強化材の接近可能な細孔の容積の大部分(すなわち少なくとも50%)、または実際に少なくとも75%を占めることができる。図示の例では、マトリックス16は、B(Al)N相間層14と接触して存在している。
【0030】
例として、マトリックス16は、炭化ケイ素からなることができる。一変形形態では、マトリックス16は、少なくとも第1のセラミック材料層と、熱分解炭素(PyC)、ホウ素ドープ炭素(原子比率が5%~20%の範囲にあるホウ素を含み、補完物が炭素である、BC)または窒化ホウ素などの亀裂発生防止材料の少なくとも第2の層とを含むことができる。一変形形態では、マトリックス16は、亀裂発生防止材料と交互になっているセラミック層を含む連続マトリックスであることができる。セラミック層は、SiC、または三元Si-B-C系、または実際には、炭化ホウ素BCから作製され得る。
【0031】
図2は、本発明の第2の部品の第2の実施形態を示す。
【0032】
この実施形態では、部品2は、第1の相間層24と第2の相間層23との組合せで構成された多層相間コーティングを含む。図示の実施形態では、部品2は、窒化ホウ素製の第2の相間層23を有する。第2の相間層23は、ヤーン12と接して存在する。例として、第2の相間層23の厚さeは、10ナノメートル(nm)~2000nmの範囲内にあることができ、例えば100nm~2000nm、またはさらに100nm~1000nmの範囲内にあることができる。第2の相間層23は、B(Al)Nの第1の相間層24によって被覆されている。図示の例では、B(Al)N相間層24は、BN相間層23と接触して存在している。例として、第1の相間層24の厚さeは、10ナノメートル(nm)~1000nmの範囲内にあることができ、例えば10nm~100nmの範囲内にあることができる。B(Al)N第1の相間層24の厚さeは、第2の相間層23の厚さe以上であることができる。大部分がセラミック製のマトリックス16は、層23および24を覆っている。マトリックス16は、上記の通りであり得る。
【0033】
一変形形態では、以下でさらに説明するように、少なくとも1つの第3の層が、BNの第2の相間層とB(Al)Nの第1の相間層との間に挿入され得る。図1および図2の部品を製造する際に使用するのに適した2つの製造方法について、図3および図4を参照しながら説明する。
【0034】
図3を参照して、既知の方法で、最初に、セラミックまたは炭素ヤーン上に化学蒸着(CVD)によって第1の窒化ホウ素相間層を作製することが可能である(ステップ10)。そのような状況下で、互いに結合されていない複数のヤーン、すなわち繊維構造体を形成するための織物操作を受けていない複数のヤーン、特に織られていない、編まれていないまたは組まれていないヤーンが、反応チャンバを通過して移動し、気相が反応チャンバ内に導入される。CVDによって窒化ホウ素相間層を形成するために、ヤーンがゼロでない速度でチャンバを通って連続的に移動している間に、気相が反応チャンバ内に導入される。移動するヤーン上にCVDによって連続的に相間層が堆積されることを可能にするシステムが知られている。例として、仏国特許第86/17157号明細書に記載されているものと同様のシステムを挙げることができる。窒化ホウ素を堆積するために使用される気相はそれ自体知られており、例えばBCl/NH系を使用することが可能である。それにもかかわらず、ステップ10は任意のステップであり、実行される場合、図2に示すような構造を有する部品2を形成することにつながり、この図2は窒化ホウ素でできている第1の相間層23を示す。
【0035】
ステップ20は、おそらくはBN第1の相間層23内に既に被覆されているヤーン12上にB(Al)N相間層14または24を堆積させることからなる。図3の例では、上述のように、ヤーンが反応チャンバを通って連続的に移動している間に、B(Al)N相間層がCVDによって形成される。
【0036】
B(Al)N相間層14または24は、反応チャンバ内に気相を導入することによって形成されることができ、その気相は、BCl、NH、およびアルミニウムを含む前駆体ガスを含む。例として、アルミニウムを含む前駆体ガスが、トリメチルアルミニウム、アルミニウムトリクロライド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、およびそれらの混合物から選択される。アルミニウムを含む前駆体ガスは、トリメチルアルミニウムまたはアルミニウムトリクロライドであり得る。導入される気相は、例えば、アルゴン、二窒素、二水素またはヘリウムから選択される希釈ガスもまた含むことができる。
【0037】
B(Al)N相間層の形成中の反応チャンバ内の温度は、例えば800℃以上、さらには1000℃であり得る。例として、この温度は、800℃~1400℃の範囲内、または実際には1000℃~1400℃の範囲内にあるように選択され得る。
【0038】
例として、B(Al)N相間層の形成中の反応チャンバ内の圧力は、0.1kPa~5kPaの範囲内にあり得る。
【0039】
B(Al)N相間層は、ガスが反応チャンバ内に導入される速度に関して以下の動作条件を課すことによって形成され得る:
[BClの導入速度]を[アルミニウムを含む前駆体ガスの導入速度]で割った比が2~5の範囲にある、
[NHの導入速度]を[BClの導入速度]で割った比が1~15の範囲にある、
[NHの導入速度]を[アルミニウムを含む前駆体ガスの導入速度]で割った比が1~50の範囲内にある。
【0040】
希釈ガスが使用される場合、[反応チャンバに導入される希釈ガスの流量]を[BClの流量+NHの流量+反応チャンバ内に導入されるアルミニウムを含む前駆体ガスの流量]で割った比が1~10の範囲内にあることを示す気相を調製することが可能である。
【0041】
例として、以下の動作条件を使用することによってB(Al)N相間層を形成することが可能である:
反応チャンバ内の温度:1200℃、
反応チャンバ内の圧力:0.2kPa、
アルミニウムを含む前駆体ガスとして使用されるトリメチルアルミニウム、
[BClが導入される流量]を[アルミニウムを含む前駆体ガスが導入される流量]で割った比が3に等しい、
[NHが導入される流量]を[BClが導入される流量]で割った比が10に等しい、
[NHが導入される流量]を[アルミニウムを含む前駆体ガスが導入される流量]で割った比が30に等しい、
反応チャンバ内の気相の通過時間が10ミリ秒(ms)未満、例えば約8ミリ秒である。
【0042】
上述の動作条件を使用することにより、9%のアルミニウム原子含有量を有するアルミニウムドープ窒化ホウ素相間層を作製されることが可能になった。図7は、腐食試験の結果を示し、アルミニウムでドープされていない窒化ホウ素からなる相間層が、B(Al)N相間層よりもはるかに早く消耗されることを示している。本発明者らは、毎時約6マイクロメートル(μm/h)のBN層の消耗速度と、約1μm/hである、はるかに遅いB(Al)N層の消耗速度とを測定した。したがって、B(Al)N層は、酸化および腐食に対する改善された耐性を示している。
【0043】
その後、図3の例では、B(Al)N相間層で被覆されたヤーンから繊維プリフォームが作製される(ステップ30)。繊維プリフォームは、B(Al)N相間層に被覆されたヤーンを用いて、少なくとも1回の織物操作から得られる。繊維プリフォームは、得られる部品の繊維強化材を構成することを目的としている。特に、繊維プリフォームは、被覆されたヤーンを多層または3次元に織ることによって得ることができる。
【0044】
用語「3次元」製織または「3D製織」は、少なくともいくつかの縦ヤーンが複数の横ヤーン層にわたって横ヤーンを連結する製織技術を指すものとして理解されるべきである。縦および横の役割は本明細書では交換可能であり、同様に特許請求の範囲によって網羅されていると考慮されるべきである。
【0045】
例として、繊維プリフォームはマルチサテン織を提供することができ、すなわち、従来のサテンタイプの織りと均等であり、各層にベース織りを有する複数の横ヤーンによる3次元織りによって得られる織物であるが、織りの特定の点が横ヤーンの層を連結する織物を提供することができる。一変形形態では、繊維プリフォームはインターロック編みを提供することができる。用語「インターロック編みまたは織物」は、縦ヤーンの各層が、織り平面内で同じ動きを有する同じ縦列内の全てのヤーンと複数の横ヤーンの層とを連結する3D製織として理解されるべきである。繊維プリフォームを形成する際に使用するのに適した様々な多層製織技術が、国際公開第2006/136755号パンフレットに記載されている。
【0046】
2次元織りまたは一方向シートのような繊維組織を形成することから始めて、そのような繊維組織を成形体上にドレーピングすることによって繊維プリフォームを得ることも可能である。例えば、繊維プリフォームを形成するために、ステッチすることによって、またはヤーンを植え付けることによって、織地は任意に互いに結合され得る。
【0047】
一旦繊維プリフォームが得られると、繊維プリフォームの細孔内に大部分がセラミックからできたマトリックスを形成するために、次にそのプリフォームは、CVI設備の反応チャンバ内に配置されるべきである。(ステップ40)。使用される前駆体ガスの性質およびそのような前駆体ガスのための供給源の数を適合させることによって、国際公開第96/30317号パンフレットの図2に記載されているタイプのCVI設備を使用することが可能である。上述のように、炭化ケイ素からマトリックスを作製するか、または連続したマトリックスを作製するために、従来の方法でCVIを実施することが可能である。一変形形態では、マトリックスは、液体技術(マトリックス前駆体樹脂を含浸させ、硬化および熱分解によって樹脂を変態するステップであり、このプロセスは繰り返されることができる)によって、または「溶融浸透」として既知の方法である、溶融状態のケイ素を浸透させることによって作製され得る。
【0048】
図4は、B(Al)Nの第1の相間層を堆積する前に、繊維プリフォームが最初に作製される(ステップ100)状況を示す。上述のように、任意選択のステップ200の間に、BN相間層を堆積することが可能である。この方法は、CVDについて上述したものと同じ動作条件を使用して、CVIによってB(Al)N相間層を堆積するステップを含む(ステップ300)。最後に、大部分がセラミックでできているマトリックスが、上述の方法で繊維プリフォームの残留細孔内に作製される(ステップ400)。
【0049】
図5は、本発明の部品3の第3の実施形態を示す。この構成では、部品3は、第1の相間層24と接触しているケイ素を含む中間層33を含む。上述のように、B(Al)N相間層と接触しているケイ素を含む層の存在は、ホウケイ酸ガラスを形成することによってBガラスをさらに安定化させるのに有利に役立つ。例として、層33はセラミック材料の層であることができる。例として、層33は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、またはSi-B-Cから作製され得る。層33の厚さeは、厚さeおよび/または厚さe以下であり得る。例として、層33の厚さeは100nm以上、例えば100nm~500nmの範囲にあることができる。
【0050】
図6は、図5に示す部品3を作製するための一連の可能なステップを示す流れ図である。最初に繊維プリフォームが作製され(ステップ150)、次にCVIによりヤーン上にBN相間層が形成される(ステップ250)。その後、ケイ素を含む中間層33が、形成されたBN相間層の上に形成される(ステップ350)。この中間層は、化学気相浸透によって形成され得る。一変形形態では、中間層が繊維プリフォームを製造する前にヤーン上に形成される場合、中間層は化学蒸着によって形成され得る。部品の製造は、中間層上にB(Al)N相間層を形成するステップ(ステップ450)によって、次いでプリフォームの残留細孔内に大部分がセラミックのマトリックスを形成するステップ(ステップ550)によって継続される。
【0051】
上記の説明は、第1の相間層24と第2の相間層23との間に存在するケイ素を含む中間層33に関する。一変形形態では、図1に記載されたタイプの第2の相間層23がなく、ヤーン12および第1の相間層14と接触するケイ素を含む中間層を提示する構成を有することが可能である。したがって、ケイ素を含む中間層がない場合でも、ケイ素を含み、第1の相間層と接触しているマトリックス16の一部によって、ケイ素を添加することによってBの追加的な安定化が加えられ得る。
【0052】
一旦部品1、2、または3が製造されると、その部品は酸化性かつ湿潤である雰囲気中で800℃以上の温度で使用され得る。特に、その部品は800℃~1400℃の範囲内にある温度で使用され得る。特に、部品1、2または3は湿潤空気中で使用され得る。
【0053】
このようにして製造された部品1、2または3は、航空宇宙用途の航空用の部品であることができる。その部品は、航空エンジンまたは航空宇宙エンジン内、あるいは工業用タービン内のガスタービンの高温部品であることができる。その部品は、ターボ機械部品であることができる。部品は、案内羽根ノズルの少なくとも一部、推進ノズルの少なくとも一部、または熱防護コーティングの一部、燃焼室の壁、タービンリングセクタ、またはターボ機械ブレードを構成することができる。
【0054】
「~から~の範囲内にある」という用語は、その境界を含むものとして理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7