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  • 特許-グリコール酸ポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】グリコール酸ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/60 20060101AFI20220905BHJP
   B29C 55/02 20060101ALI20220905BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220905BHJP
   C08G 63/80 20060101ALI20220905BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
C08G63/60
B29C55/02
B32B27/36
C08G63/80
C08L67/04
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019534217
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2017083638
(87)【国際公開番号】W WO2018115008
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】201621043785
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】メータ, イシャン
(72)【発明者】
【氏名】パッドマナバン, グルラジャン
(72)【発明者】
【氏名】バラド, カヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデルヴェーケン, イヴ
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-027424(JP,A)
【文献】特表2008-506020(JP,A)
【文献】特表2018-514623(JP,A)
【文献】国際公開第2005/014694(WO,A1)
【文献】特開2004-161997(JP,A)
【文献】特開平10-324738(JP,A)
【文献】特開平10-138371(JP,A)
【文献】特開2007-160574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコール酸ポリマー[ポリマー(PGA)]であって、
(i)グリコール酸(GA)と、
(ii)任意選択的に、1つのみのヒドロキシル基と、GAと異なる1つのみのカルボン酸基とを有する少なくとも1つのヒドロキシル酸[ヒドロキシ酸(A)]であって、ヒドロキシ酸(A)のモル量は、GAとヒドロキシ酸(A)とのモルの和に対して最大で5モル%である、少なくとも1つのヒドロキシル酸[ヒドロキシ酸(A)]と、
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を含み、かつカルボン酸基を含まない少なくとも1つのポリオール[ポリオール(H)]と、
(iv)2つの芳香族カルボン酸基を含み、かつヒドロキシル基を含まない少なくとも1つの芳香族二塩基酸[二塩基酸(AR)]と、
(iv)任意選択的に、1つのカルボン酸基を有し、かつヒドロキシル基を含まない少なくとも1つのカルボン酸[一塩基酸(C)]と
からなるモノマー混合物の重縮合反応から得られ、
- ポリオール(H)の量は、そのヒドロキシル基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのカルボキシル基の総数に対して0.050~0.750%に含まれるようなものであり、
- 二塩基酸(AR)の量は、そのカルボン酸基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのヒドロキシル基の総数に対して0.050~0.750%に含まれるようなものであり、
- 一塩基酸(C)の量は、存在する場合、そのカルボン酸基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのヒドロキシル基の総数に対して0.0001~0.010%に含まれるようなものである、グリコール酸ポリマー[ポリマー(PGA)]。
【請求項2】
ヒドロキシ酸(A)は、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸および6-ヒドロキシカプロン酸からなる群から選択され、好ましくは、ヒドロキシ酸(A)は、乳酸(LA)(ラセミ混合物においてまたは単一異性体としてのいずれかでのL-異性体またはD-異性体)であり、および/またはヒドロキシ酸(A)は、GAとヒドロキシ酸(A)とのモルの和に対して最大で5モル%、一般的には最大で4モル%、好ましくは最大で3モル%のヒドロキシ酸(A)の量で存在する、請求項1に記載のポリマー(PGA)。
【請求項3】
ポリオール(H)は、
- 具体的にはグリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2,3-ジ(2’-ヒドロキシエチル)-シクロヘキサン-1-オール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、3-(2’-ヒドロキシエトキシ)プロパン-1,2-ジオール、3-(2’-ヒドロキシプロポキシ)-プロパン-1,2-ジオール、2-(2’-ヒドロキシエトキシ)-ヘキサン-1,2-ジオール、6-(2’ヒドロキシプロポキシ)-ヘキサン-1,2-ジオール、1,1,1-トリス-[(2’-ヒドロキシエトキシ)-メチルエタン、1,1,1-トリス-[(2’-ヒドロキシプロポキシ)-メチル-プロパン、1,1,1-トリス-(4’-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス-(ヒドロキシフェニル)-プロパン、1,1,5-トリス-(ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、トリメチロールプロパンエトキシレート、トリメチロールプロパンプロポキシレート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンからなる群から選択されるトリオール、
- 具体的にはジグリセロール、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、1,1,4-トリス-(ジヒドロキシフェニル)-ブタンからなる群から選択されるテトラオール、
- 5つのヒドロキシル基を含むポリオール、具体的にはトリグリセロール、
- 6つのヒドロキシル基を含むポリオール、特にジペンタエリスリトール、および
- 8つのヒドロキシル基を含むポリオール、具体的にはトリペンタエリスリトール
からなる群から選択され、および/またはポリオール(H)は、そのヒドロキシル基の数がグリコール酸のヒドロキシル基の数に対して少なくとも0.050%、好ましくは少なくとも0.100%、より好ましくは少なくとも0.200%および/または最大で0.750%、好ましくは最大で0.650%、より好ましくは最大で0.600%であるような量で使用される、請求項1または2に記載のポリマー(PGA)。
【請求項4】
二塩基酸(AR)は、イソフタル酸(IA)およびテレフタル酸(Ta)を含むフタル酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼン、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸を含むナフタレンジカルボン酸からなる群から選択され、および/または二塩基酸(AR)は、そのカルボキシル基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのヒドロキシル基の総数に対して少なくとも0.050%、好ましくは少なくとも0.100%、より好ましくは少なくとも0.200%および/または最大で0.750%、好ましくは最大で0.650%、より好ましくは最大で0.600%であるような量で使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー(PGA)。
【請求項5】
一塩基酸(C)は、式:RHm-COOH(式C-1)(式中、RHmは、1つ以上の炭素原子を有する一価の脂肪族基である)の脂肪族酸であり、かつ好ましくはカプリル酸[CH(CHCOOH]、カプリン酸[CH(CHCOOH]、ウンデカン酸[HC-(CH-COOH]、ドデカン酸またはラウリン酸[HC-(CH10-COOH]、トリデカン酸[HC-(CH11-COOH]、テトラデカン酸またはミリスチン酸[HC-(CH12-COOH]、ペンタデカン酸[HC-(CH13-COOH]、ヘキサデカン酸またはパルミチン酸[HC-(CH14-COOH]、オクタデカン酸またはステアリン酸[HC-(CH16-COOH]、アラキジン酸[HC-(CH18-COOH]およびベヘン酸[HC-(CH20-COOH]からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー(PGA)。
【請求項6】
一塩基酸(C)は、式:R Hm -COOH(式C-1)(式中、R Hm は、3つ以上の炭素原子を有する一価の脂肪族基である)の脂肪族酸である、請求項5に記載のポリマー(PGA)。
【請求項7】
10/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定された場合、400~800パスカル×秒の範囲の溶融粘度を有し、および/または最大で800パスカル×秒、好ましくは最大で750パスカル×秒、より好ましくは少なくとも700パスカル×秒の溶融粘度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(PGA)。
【請求項8】
粘弾性挙動を有し、それにより、1.5超、好ましくは1.8超、より好ましくは2.0超の、500~700パスカル×秒の溶融粘度η10/秒のドメインにおけるtanδ10/秒を有し、ここで、
tanδ10/秒は、10/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定される、損失弾性率(G”)の貯蔵弾性率(G’)に対する比率であり、およびη10/秒は、10/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定される溶融粘度である、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(PGA)。
【請求項9】
ポリマー(PGA)は、比:
η1/秒/η100/秒
(ここで、
- η1/秒は、1/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定される溶融粘度であり、および
- η100/秒は、100/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定される溶融粘度である)
が4.2未満、好ましくは4.0未満であるようなずり減粘を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(PGA)。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(PGA)を製造する方法であって、請求項1に記載のグリコール酸(GA)と、任意選択的にヒドロキシ酸(A)と、ポリオール(H)と、二塩基酸(AR)と、任意選択的に一塩基酸(C)とを重縮合することを含む方法。
【請求項11】
プレポリマーを形成するための溶融状態での重合の第1の工程と、プレポリマーの分子量を増大させるための固相重合(SSP)の第2の工程とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(PGA)と、少なくとも1つの追加の原料とを含む組成物(C)であって、前記原料は、酸化防止剤、熱安定剤、緩衝剤、UVおよび光安定剤、顔料、潤滑剤、加工助剤から選択され得るか、またはポリマー(PGA)と異なる1つまたは複数の追加のグリコール酸ポリマーであり得る、組成物(C)。
【請求項13】
多層延伸製品を生産する方法であって、
(i)請求項1~のいずれか一項に記載のポリマー(PGA)または請求項12に記載の組成物(C)の少なくとも1つの層と、ポリマー(PGA)と異なる熱可塑性物質の少なくとも1つの層とを含む多層樹脂ラミネートを溶融状態からの加工によって形成することと、
(ii)多層延伸製品を生産するために多層樹脂ラミネートを延伸することと
を含む方法。
【請求項14】
熱可塑性物質は、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル酸またはメタクリル酸エステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンスルフィドなどのスルフィド樹脂ならびにポリカルボネート樹脂からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記樹脂ラミネートを形成する工程は、共押出成形および共射出成形から選択される技法によって実施される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
多層樹脂ラミネートは、工程(i)後で工程(ii)を受ける前に冷却および固化される、請求項1315のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月22日出願のインド仮特許出願公開第201621043785号に対する優先権を主張するものであり、この出願の内容全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、新規のグリコール酸ポリマー、それを製造する方法およびそれを用いる多層容器を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
今日、主にポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルから製造され、低いガス透過性をもたらすバリア層を含む多層プラスチック容器は、茶、フルーツジュース、炭酸飲料、ソーダなどの飲料用に広く使用されている。さらに最近では、いわゆる「小型」プラスチック容器(例えば、150~600mlの範囲の容積)に対する要求が高まっていることが認められる。このように容器サイズを削減すると、単位容積当たりの露出表面積が増大することが避けられなくなる。したがって、バリア層のサイズまたは性質の修正によりもたらされるバリア性を改善することにより、非透過性による損失が補われない場合、プラスチック容器のサイズが小さくなるほど、含有物の品質保持期限が短くなることになる。バリア層の厚さが増大することにより、解決策が提供されることがある一方、経費の検討では、一般的には反対方向に、すなわちバリア層の厚さを削減する方向に向かうことがある。さらに、近年では、酸素および光により影響を受けることが公知であり、CO不透過性が不可欠であると知られている飲料であるビールなどのさらに「要求の厳しい」飲料の包装体のためにプラスチック容器が提案されている。したがって、プラスチック容器のガスバリア性をさらに改善する一般的な要求が市場に存在する。さらに、加えて、包装体分野では、成分材料の再利用性および/または成分材料の生物分解性を確実にする解決策に対する継続的な追及が存在する。
【0004】
上述の要求の全てに取り組むために、最内層および最外層のそれぞれを形成する樹脂としてPETなどの熱可塑性ポリエステル樹脂を組み合わせ、バイオ起源および生物分解性のポリグリコール酸(コ)ポリマー(PGA)バリア層を用いる多層容器が検討されている。
【0005】
一般的に言えば、主にポリエステル樹脂から作製され、PGA樹脂の内層を含む多層容器を製造するのに使用される技法は、これらの2つの樹脂を、同時に溶融状態からダイを介して射出成形または押出成形して金型キャビティを充填し、少なくとも3つの層を有するプリフォーム(パリソン)構造体を成形し、さらに多層容器を得るために得られたプリフォームに二軸延伸ブロー成形を施すことを含む。
【0006】
それにもかかわらず、2つのポリエステル樹脂層間に均質な方法でバリア層としてPGAの薄層を配列する好適なプリフォームを提供する上述の射出成形工程にとって、2つの樹脂の粘度における適合および2つの樹脂の弾性回復における適合の両方が重要である。
【0007】
事実、本出願人は、多層組立体を製造するための上に詳述した技法が、一方では、ポリエステル樹脂の粘度に相当する約10/秒でのせん断速度(1~10重量%の量で内層に共押出される樹脂が露出されることになるせん断に有意に対応する)で測定される場合、共射出成形または共押出されたPGA材料が動的粘度を有することが必要となり、かつ他方では、同一の共射出または同一の共押出されたPGA材料が、同じせん断速度で適合するtanδ(ここで、tanδは、同じせん断速度での粘性係数と弾性率との比である)を有することが必要となることを確認している。
【0008】
本出願人は、ポリエステル樹脂とPGA樹脂とのこれらの粘性および弾性流動挙動の適合要件が満たされないと、バリア層に許容できない欠陥を生じる流動不安定現象をもたらし、そのため、かなり薄いバリア層を対象にする場合には特に、透過性能が適切でない容器をもたらす結果となることを確認している。
【0009】
技術は、環式グリコリドの重縮合による繰り返し単位-[CH-C(O)-O]-から本質的になる鎖状PGAを提供する一方、追加の変性/分岐モノマーの存在下でのグリコール酸の直接重縮合からのPGAコポリマーの製造は、有利な流動挙動を有する高分子量のPGAを提供する経済的で効率的な代替案として提案されている。
【0010】
この分野では、米国特許第5914381号明細書(三井化学株式会社)1999年6月22日は、3つ以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸および/もしくはその無水物または3つ以上のヒドロキシル基を有する脂肪族多価アルコールの多官能性中心化合物と、脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位とを含む星型ポリマーを、2つ以上のヒドロキシル基を有する脂肪族多価アルコールまたは2つ以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸もしくはその無水物で連結して得られる構造を有する分解性ポリマーに関する。脂肪族ヒドロキシカルボン酸は、乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸および6-ヒドロキシカプロン酸であり得、乳酸が好ましい。2つ以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸のうち、直鎖状化合物および環式化合物が挙げられ、これらの環式化合物の例としては、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフラン-2R、3T、4T、5C-テトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、4-カルボキシ-1,1-シクロヘキサン二酢酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-トリメチル-1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、(1アルファ、3アルファ、5ベータ)-1,3,5-トリメチル-1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸および他の脂環式ポリカルボン酸;2,3,4,5-フランテトラカルボン酸、2-メチル-3,4,6-ピリジントリカルボン酸および他の複素環式ポリカルボン酸;トリメリト酸、ピロメリト酸が挙げられる。
【0011】
さらに、米国特許第7153587号明細書(三井化学株式会社)2006年12月26日は、(a-1)5つ以下の炭素原子を有するオキシカルボン酸単位45~99モル%、(a-2)芳香族ジカルボン酸単位0.5~27.5モル%、および(a-3)4つ以下の炭素原子を有する短鎖の脂肪族ジオール単位0.5~27.5モル%を含み、かつ(a-1)~(a-3)の合計量で95モル%以上を含有するポリエステル樹脂を提供しており、オキシカルボン酸は、グリコール酸が好ましく、芳香族カルボン酸は、ソフタル酸、フタル酸または2,6-ナフタレンジカルボン酸であり得、および単鎖脂肪族ジオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールのいずれかであり、前記ポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸に由来する単位および/または3つ以上の官能基を有するモノマーに由来する単位、例えば3つ以上のカルボキシル基を有する多官能性酸、3つ以上のヒドロキシル基を有する多官能性アルコールおよびヒドロキシル基とカルボキシル基との合計が3を超えるヒドロキシ酸を追加的に含み得る。それにもかかわらず、この特許文献で提供されるPGAは、モノマー(a-2)および(a-3)の配列により誘導される単位、すなわち「標準」ポリエステル型がかなりの量(1モル%を超える)存在するため、本質的にグリコール酸単位からなるPGAに対してバリア性に欠ける傾向がある。
【0012】
したがって、米国特許出願公開第2012/027973号明細書(SOLVAY S.A.)2012年2月2日は、ヒドロキシ酸の重縮合によってポリマーを製造する方法であって、前記ポリマーは、ヒドロキシ酸に対応する少なくとも80重量%の単位を含む、方法を開示しており、それによると、三次元ポリマー網状構造の形成を生じさせることができる少なくとも1つの多官能性反応剤は、ヒドロキシ酸と混合され、およびそれによると、混合物は、網状構造の形成を生じさせるのに全て好適である温度および圧力条件においてかつ継続時間にわたってさらされる。前記多官能性反応剤のうち、エポキシシラン、ポリエポキシドおよび少なくとも1つのポリオールと少なくとも1つのポリ酸との混合物が挙げられる。そのうち、ポリオールおよびポリ酸の少なくとも1つ(好ましくは両方)は、3つの官能基を含む。
【0013】
さらに、国際公開第2016/173640号パンフレット(SOLVAY S.A.)2016年11月3日は、(i)1つのみのヒドロキシル基と、1つのみのカルボン酸基とを有する少なくとも1つのヒドロキシル酸[ヒドロキシ酸(A)]と、(ii)少なくとも3つのヒドロキシル基を含み、かつカルボン酸基を含まない少なくとも1つのポリオール[ポリオール(H)]と、(iii)少なくとも3つのカルボン酸基を含み、かつヒドロキシル基を含まない少なくとも1つのポリ酸[ポリ酸(O)]と、(iv)1つまたは2つのカルボン酸基を有し、かつヒドロキシル基を含まない少なくとも1つのカルボン酸[酸(C)]とを含むモノマー混合物の重縮合反応から得られる分岐のポリ(ヒドロキシル酸)ポリマーであって、前記酸(C)の量は、そのカルボン酸基の数がヒドロキシ酸(A)のヒドロキシル基の数に対して0.0001~0.010パーセントに含まれるようなものである、分岐のポリ(ヒドロキシル酸)ポリマーに関する。
【0014】
それにもかかわらず、3官能性の分岐化剤の組み合わせを使用する上述の先行技術により提供される分岐のPGAは、粘弾性挙動を特徴としており、このPGAは、多層容器を作製する一般的な技法により加工されるため、その粘弾性挙動により、標準のPET樹脂と組み合わせたこのPGAの使用が適切でなくなることを本出願人は確認している。具体的には、そのような分岐のPGAポリマーは、改善された熱安定性、tanδ(10/秒のせん断速度および260℃で測定)と、溶融粘度(10/秒のせん断速度および260℃で同等に測定)との400~800Paxsecの粘度増加に対して1.5よりも大きいtanδ値を有する特有な関係、すなわち典型的な粘性/弾性の折衷により、溶融状態でかなりの弾性となるため、共押出/共射出成形において溶融流が不安定となり、非常に高いずり減粘(100/秒および1/秒での粘度間の比)を有し、それは、特にPGAポリマーが内層として意図される場合、溶融加工機の異なる区間で遭遇するせん断変動に相反することがあることによって特徴付けられることを本出願人は確認している。
【0015】
ここで、本出願人は、改良された分岐のグリコール酸コポリマーであって、上述の流動要件に適合できるため、薄いバリア層を有する多層容器を得るために標準ポリエステル樹脂と組み合わせて問題なく使用され得る、改良された分岐のグリコール酸コポリマーを見いだしている。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、本明細書において、グリコール酸ポリマー[ポリマー(PGA)]に関し、前記ポリマーPGAは、
(i)グリコール酸(GA)と、
(ii)任意選択的に、1つのみのヒドロキシル基と、GAと異なる1つのみのカルボン酸基とを有する少なくとも1つのヒドロキシル酸[ヒドロキシ酸(A)]であって、ヒドロキシ酸(A)のモル量は、GAとヒドロキシ酸(A)とのモルの和に対して最大で5モル%である、少なくとも1つのヒドロキシル酸[ヒドロキシ酸(A)]と、
(iii)少なくとも3つのヒドロキシル基を含み、かつカルボン酸基を含まない少なくとも1つのポリオール[ポリオール(H)]と、
(iv)2つの芳香族カルボン酸基を含み、かつヒドロキシル基を含まない少なくとも1つの芳香族二塩基酸[二塩基酸(AR)]と、
(iv)任意選択的に、1つのカルボン酸基を有し、かつヒドロキシル基を含まない少なくとも1つのカルボン酸[一塩基酸(C)]と
からなるモノマー混合物の重縮合反応から得られ、
- ポリオール(H)の量は、そのヒドロキシル基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのカルボキシル基の総数に対して0.050~0.750%に含まれるようなものであり、
- 二塩基酸(AR)の量は、そのカルボン酸基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのヒドロキシル基の総数に対して0.050~0.750%に含まれるようなものであり、
- 前記一塩基酸(C)の量は、存在する場合、そのカルボン酸基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのヒドロキシル基の総数に対して0.0001~0.010%に含まれるようなものである。
【0017】
本出願人は、驚くべきことに、上に詳述したポリマー(PGA)が、10/秒のせん断速度および260℃)の温度でASTM D4440-08に従って測定された場合、400~800パスカル×秒の範囲の溶融粘度と、前述の溶融粘度の範囲において1.5を超えるtanδ10/秒値で表され、かつ上に詳述したように測定される、共押出/共射出成形における標準熱可塑性物質(具体的にはポリエステル)の挙動を適合するための粘性/弾性の折衷と、比:η1/秒/η100/秒4.0未満の値(ここで、η1/秒は、1/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定される溶融粘度であり、およびη100/秒は、100/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定される溶融粘度である)を有する許容できるずり減粘とを有する熱安定性ポリマーをもたらすのに効率的な方法において、上述のモノマー原料を用いて生成できることを見いだしている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】回帰曲線(tanδ=80.704η1/秒 -0.618)を含めて、(i)トリカルバリル酸(TCA)を用いて生成した先行技術の分岐PGA(記号:*)、(ii)本発明によるイソフタル酸(IA)を含む分岐PGA(記号:◆)、および(iii)ジグリコール酸(DGA)を含む比較の分岐PGA(記号:△)またはコハク酸(SCA)を含む比較の分岐PGA(記号:〇)に対するη1/秒(10/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定される溶融粘度)の関数としてのtanδ(10/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定)の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ポリマー(PGA)
本発明のポリマー(PGA)は、上に明記した量における(i)グリコール酸と、(ii)任意選択的にヒドロキシ酸(A)と、(ii)ポリオール(H)と、(iii)二塩基酸(AR)と、(iv)任意選択的に一塩基酸(C)とからなるモノマー混合物の重縮合反応から得られる。
【0020】
したがって、不純物、欠陥および鎖末端がポリマー(PGA)の性能に影響を殆ど与えることなく限定量で存在することがあるが、ポリマー(PGA)は、上述のモノマーと異なるモノマーに由来する他のいかなる単位も実質的に含まない。
【0021】
ポリマー(PGA)は、既に定義したように、とりわけGA、任意選択的にヒドロキシ酸(A)の重縮合に由来する単位を含む。前記ヒドロキシ酸(A)の選択は、限定されず、重縮合できる全てのヒドロキシル酸、すなわち縮合(水の脱離によるモノマーの鎖付加)により巨大分子を形成できる全てのヒドロキシル酸が使用できる。その例として、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸が挙げられる。一般に、第一級アルコールを有するヒドロキシ酸(A)は、より反応性が高いために好ましい。これらに関して、特に、ヒドロキシ酸(A)は、乳酸(LA)(ラセミ混合物においてまたは単一異性体としてのいずれかでのL-異性体またはD-異性体)である場合に良好な結果を得ることができる。
【0022】
本発明の一変形形態では、GAとヒドロキシ酸(A)との両方は、存在する場合、化石原材料とは対照的にバイオ起源であり、すなわち天然の再生可能な原材料に由来する。バイオ起源のPGAの使用および該当する場合にはヒドロキシ酸(A)の使用は、「環境に優しい」ポリマー、すなわち再生可能な原材料から合成されるポリマーの合成を可能にする。
【0023】
存在する場合、ヒドロキシ酸(A)の量は、GAとヒドロキシ酸(A)とのモルの和に対して最大で5モル%、一般的には最大で4モル%、好ましくは最大で3モル%であり、および/または前記量は、0.1モル%程度の低量であり得る。ヒドロキシ酸(A)の量は、PGAポリマー構造に適切であるバリア性に極めて深刻な悪影響を与えることなく、場合によりいくつかの利点をもたらすように調整されることになることが一般的に理解される。
【0024】
GAとの組み合わせで追加のヒドロキシ酸(A)を全く使用しない場合の実施形態は、本発明の範囲内であり、バリア性を最大にする観点から好ましいことがある。
【0025】
ポリオール(H)の選択は、特に限定されない。ポリオール(H)は、
- 具体的にはグリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2,3-ジ(2’-ヒドロキシエチル)-シクロヘキサン-1-オール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、3-(2’-ヒドロキシエトキシ)プロパン-1,2-ジオール、3-(2’-ヒドロキシプロポキシ)-プロパン-1,2-ジオール、2-(2’-ヒドロキシエトキシ)-ヘキサン-1,2-ジオール、6-(2’ヒドロキシプロポキシ)-ヘキサン-1,2-ジオール、1,1,1-トリス-[(2’-ヒドロキシエトキシ)-メチルエタン、1,1,1-トリス-[(2’-ヒドロキシプロポキシ)-メチル-プロパン、1,1,1-トリス-(4’-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス-(ヒドロキシフェニル)-プロパン、1,1,5-トリス-(ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、トリメチロールプロパンエトキシレート、トリメチロールプロパンプロポキシレート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンからなる群から選択されるトリオール、
- 具体的にはジグリセロール、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、1,1,4-トリス-(ジヒドロキシフェニル)-ブタンからなる群から選択されるテトラオール、
- 5つのヒドロキシル基を含むポリオール、特にトリグリセロール、
- 6つのヒドロキシル基を含むポリオール、具体的にはジペンタエリスリトール、および
- 8つのヒドロキシル基を含むポリオール、特にトリペンタエリスリトール
からなる群から選択され得る。
【0026】
好ましいポリオール(H)は、上に詳述されたようなトリオール(具体的にはトリメチロールプロパン)およびテトラオール(具体的にはペンタエリスリトール)、さらに特にトリオールである。本発明の枠組み内で特に良好な結果を提供することを確認しているポリオール(H)は、トリメチロールプロパンである。
【0027】
ポリオール(H)は、そのヒドロキシル基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのカルボキシル基の総数に対して少なくとも0.050%、好ましくは少なくとも0.100%、より好ましくは少なくとも0.200%および/または最大で0.750%、好ましくは最大で0.650%、より好ましくは最大で0.600%であるような量で使用される。
【0028】
そのヒドロキシル基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのカルボキシル基の総数に対して0.350~0.550%であるようなポリオール(H)の量は、本発明の好ましい実施形態によると特に有用であると判明されている。
【0029】
二塩基酸(AR)は、2つの芳香族カルボン酸基、すなわち芳香族部分の環状構造の一部である芳香族炭素原子に共有結合する2つのカルボン酸基を含む。
【0030】
酸(AR)の非限定的な例は、とりわけイソフタル酸(IA)およびテレフタル酸(TA)を含むフタル酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼン、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸を含むナフタレンジカルボン酸である。
【0031】
フタル酸が一般的に好ましい。
【0032】
特に良好な結果を提供することが示されている二塩基酸(AR)は、イソフタル酸であり、したがってそれが特に好ましい。
【0033】
二塩基酸(AR)は、そのカルボキシル基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのヒドロキシル基の総数に対して少なくとも0.050%、好ましくは少なくとも0.100%、より好ましくは少なくとも0.200%および/または最大で0.750%、好ましくは最大で0.650%、より好ましくは最大で0.600%であるような量で使用される。
【0034】
そのカルボキシル基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのヒドロキシル基の総数に対して0.350~0.550%であるような二塩基酸(AR)の量は、本発明の好ましい実施形態によると特に有用であると判明されている。
【0035】
一塩基酸(C)の選択は、特に限定されず、一塩基酸(C)は、その炭化水素鎖に不飽和二重結合を含み得、一塩基酸(C)は、それにもかかわらず好ましくは脂肪族酸、すなわち以下の式の酸:
Hm-COOH(式C-1)
(式中、RHmは、1つ以上の炭素原子を有する、特に3つ以上の炭素原子を有する一価の脂肪族基である)
である。
【0036】
より良好な結果は、長鎖酸、すなわち炭素原子の総数が少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも6つである一塩基酸(C)で得られることが一般に理解される。一般に、一塩基酸(C)は、4~36、好ましくは6~24の炭素原子を有する。
【0037】
本発明の方法に有利に使用することができる一塩基酸(C)のうち、とりわけカプリル酸[CH(CHCOOH]、カプリン酸[CH(CHCOOH]、ウンデカン酸[HC-(CH-COOH]、ドデカン酸またはラウリン酸[HC-(CH10-COOH]、トリデカン酸[HC-(CH11-COOH]、テトラデカン酸またはミリスチン酸[HC-(CH12-COOH]、ペンタデカン酸[HC-(CH13-COOH]、ヘキサデカン酸またはパルミチン酸[HC-(CH14-COOH]、オクタデカン酸またはステアリン酸[HC-(CH16-COOH]、アラキジン酸[HC-(CH18-COOH]およびベヘン酸[HC-(CH20-COOH]を挙げることができる。
【0038】
特に良好な結果を提供することが示されている一塩基酸(C)は、ステアリン酸であり、したがってそれが特に好ましい。
【0039】
存在する場合、一塩基酸(C)の量は、そのカルボン酸基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのヒドロキシル基の総数に対して0.0001~0.010%に含まれるようなものである。好ましくは、前記量は、前記一塩基酸(C)のカルボン酸基の数が、存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのヒドロキシル基の総数に対して少なくとも0.0005%、好ましくは少なくとも0.001%および/または存在する場合にグリコール酸とヒドロキシ酸(A)とのヒドロキシル基の総数に対して最大で0.010%、好ましくは最大で0.008%、最も好ましくは最大で0.007%、さらにより好ましくは最大で0.006%であるような量である。
【0040】
ポリマー(PGA)は、10/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定された場合、400~800パスカル×秒の範囲の溶融粘度を有する。好ましいポリマー(PGA)は、最大で800パスカル×秒、好ましくは最大で750パスカル×秒、より好ましくは少なくとも700パスカル×秒の溶融粘度を有するポリマーである。
【0041】
特に有利な特性を有すると確認しているポリマー(PGA)は、10/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定された場合、500~700パスカル×秒の範囲の溶融粘度を有するポリマーである。
【0042】
ポリマー(PGA)は、以下の不等式を満たすような粘弾性挙動を有する。
tanδ10/秒≧80.704(η10/秒-0.618+0.200
(式中、
tanδ10/秒は、10/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定される、損失弾性率(G”)の貯蔵弾性率(G’)に対する比率であり、およびη10/秒は、10/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定される溶融粘度である)。
【0043】
したがって、有利には、ポリマー(PGA)は、10/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って求められた場合、1.5超、好ましくは1.8超、より好ましくは2.0超の、500~700パスカル×秒の溶融粘度η10/秒のドメインにおけるtanδ10/秒を有する。
【0044】
ポリマー(PGA)は、比:
η1/秒/η100/秒
(ここで、
- η1/秒は、1/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定される溶融粘度であり、および
- η100/秒は、100/秒のせん断速度および260℃の温度でASTM D4440-08に従って測定される溶融粘度である)
が4.2未満、好ましくは4.0未満であるようなずり減粘を有する。比:
η1/秒/η100/秒
に対する下方境界は、特に限定されず、ポリマー(PGA)は、少なくとも1.0、好ましくは少なくとも2.0のη1/秒/η100/秒比を有することが一般的に理解される。
【0045】
本発明は、上に詳述したポリマー(PGA)を製造する方法にさらに関し、前記方法は、グリコール酸(GA)と、任意選択的にヒドロキシ酸(A)と、ポリオール(H)と、二塩基酸(AR)と、任意選択的に上に詳述した一塩基酸(C)とを重縮合することを含む。
【0046】
本発明の方法では、重縮合触媒は、モノマー混合物に任意選択的に添加され得る。そのような触媒は、通常、モノマー混合物のモノマーの総モルに対して約0.01~2モル%、特に約0.1~1モル%の量で添加される。そのような重縮合触媒は、当業者に周知であり、例えば塩化スズ(II)、オクタン酸第一スズ、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛およびメタンスルホン酸から選択され得、メタンスルホン酸が好ましい。
【0047】
好ましくは、重縮合工程は、モノマーの混合物および形成したグローイングポリマーが溶融相にあるような温度で少なくとも部分的に実施される。一般的に、溶融状態での重縮合工程後、未反応のGAと、ヒドロキシ酸(A)(存在する場合)と、ポリオール(H)と、二塩基酸(AR)と、一塩基酸(C)(存在する場合)とを含むことがあるプレポリマーを提供し、次にプレポリマーが固体状態にあるような温度で重縮合を続行する(この工程を以下では固相重合またはSSPと呼ぶ)。
【0048】
したがって、本発明の方法は、一般的には、プレポリマーを形成するための溶融状態での重合の第1の工程と、プレポリマーの分子量を増大させるための固相重合(SSP)の第2の工程とを含む。
【0049】
第1の工程では、温度は、モノマー混合物および反応の進行とともに、形成されたプレポリマーを融解状態に維持するように選択される。
【0050】
一般に、融解状態での重縮合の第1の工程は、反応混合物を160~240℃の範囲の温度に維持することにより、攪拌しながら達成される。温度は、この第1の工程中に一定に保たれ得、または複数の温度プラトーで変えて維持され得る。本発明によれば、表現「温度プラトー」は、温度が少なくとも5分間にわたり実質的に一定に保たれることを意味する。
【0051】
本発明の方法では、プレポリマーは、場合により上に詳述した残留モノマーを含み、溶融状態での重合の第1の工程から得られるが、ゆるい粒子の形態で微粒のプレポリマー材料を提供するように固化および小型化の工程を受ける。
【0052】
微粒のプレポリマーは、ペレット化および/もしくはパステル化の標準的な技法により、パールもしくはペレットの形態で溶融状態から加工され得、または固化した断片として回収されて粉末を提供するように粉砕機にかけられ得る。
【0053】
ペレット化の技法は、溶融プレポリマーが場合により上に詳述した残留モノマーを含むが、一般的には押出に基づき、一般的には材料のストランドをもたらす複数の孔を含むダイを介して場合によりギアポンプを用いて推し進められた後、適切な切断システム(例えば、回転刃)により所与の長さのシリンダーの形態に切断され、冷却により固化される。
【0054】
パステル化の技法は、上に詳述した残留モノマーを含むことがある溶融プレポリマーを容器、ピットまたは供給パイプシステムから液滴生成装置に供給し、コンベヤーベルト上に溶融プレポリマーの液滴を析出するが、液滴は、例えば、直径1~25mmの範囲のサイズを有するパステルの形態に固化する。
【0055】
上に詳述した残留モノマーを含むことがあるプレポリマーを断片の形態下で固化することにより回収する場合、ミリング工程が必要とされる。そのようなミリング工程は、当業者に公知の任意の手段により、例えば高速グラインダーまたはFRITSCH製のPulverisette(登録商標)などのロータリーミルでのミリングによって実施され得る。
【0056】
SSP工程は、上に詳述した残留モノマーを含むことがあるプレポリマーをその固体状態において、真空下または不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素下)のいずれかで1時間以上またはさらに数日間にわたり、上に詳述した残留モノマーを含むことがある前記プレポリマーのガラス転移温度よりも高いが、その溶融温度よりも低い温度にさらすことにより行われ得る。典型的には、そのようなSSP工程は、140~240℃、特に150~230℃の温度において、例えば約170~220℃でおよび10ミリバール未満の圧力で実施され得る。プレポリマー中の残留モノマーの性質、その特性および目標の最終粘度/分子量、全重縮合工程中の温度および圧力に応じて、SSP工程の継続時間は、2、3時間から1週間、特に6~200時間、例えば約10~150時間であり得る。
【0057】
溶融相での重縮合反応は、反応の水を蒸発させ、形成されつつあるポリマー鎖が水により加水分解されることを回避するように真空下で行われることが好ましい。溶融相での重縮合反応は、大気圧で開始され、数ミリバール、特に10ミリバール未満、例えば2~8ミリバール程度の圧力が達成されるまで減圧を徐々にかけることが非常に特に好ましい。SSP工程は、典型的には、約0.01~10ミリバール、特に0.05~5ミリバールの、例えば約0.1ミリバールの圧力で実施される。
【0058】
本発明の方法では、任意選択的に酸化防止剤を反応媒体に添加し得る。そのような酸化防止剤は、溶融相の重縮合工程とSPC工程との間に添加されることが好ましい。そのような酸化防止剤は、典型的には、モノマー混合物の約0.01~1重量%、特に0.1~0.5重量%の量で添加される。そのような酸化防止剤は、当業者に周知であり、例えばヒンダードフェノールおよびヒンダードホスファイトから選択され得る。CHEMTURAによって名称ULTRANOX 626(登録商標)で販売されるビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ADEKA PALMAROLEによって名称ADK STAB PEP 36(登録商標)で販売されるビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトおよび名称DOVERPHOS(登録商標)で販売されるものが特に好ましい。
【0059】
さらに、本発明は、ポリマー(PGA)と、少なくとも1つの追加の原料とを含む組成物(C)に関する。一般的に、組成物は、主要量のポリマー(PGA)と上述の少量の任意の他の追加の原料とを含む。前記原料は、とりわけ酸化防止剤、熱安定剤、緩衝剤、UVおよび光安定剤、顔料、潤滑剤、加工助剤から選択され得る。組成物(C)は、上に詳述したポリマー(PGA)と異なる1つまたは複数の追加のグリコール酸ポリマーを含むことも可能である。例えば、本発明のポリマー(PGA)は、いかなる多官能性の変性モノマーも使用することなく、グリコール酸の開環重縮合から得られる鎖状PGAポリマーと混合され得、または本発明の芳香族二塩基酸と異なる変性モノマーを用いて製造される、本発明のポリマー(PGA)と異なる別の分岐のグリコール酸系ポリマーと混合され得る。
【0060】
前記原料の量は、一般的には、組成物(C)の総重量に対して0.01~40重量%、好ましくは0.1~35重量%に含まれる。ポリマー(PGA)を含む組成物(C)が、本発明のポリマー(PGA)と異なる任意の追加のグリコール酸ポリマーを含まない実施形態に関して、上述の追加の原料は、一般的には、組成物(C)の総重量に対して0.01~40重量%、好ましくは0.1~35重量%の量で含まれる。
【0061】
本発明は、多層延伸製品を生産する方法にさらに関し、前記方法は、
(i)上に詳述したポリマー(PGA)または上に詳述したポリマー(PGA)を含む組成物(C)の少なくとも1つの層と、ポリマー(PGA)と異なる熱可塑性物質の少なくとも1つの層とを含む多層樹脂ラミネートを溶融状態からの加工によって形成する工程、
(ii)多層延伸製品を生産するために多層樹脂ラミネートを延伸する工程。
【0062】
熱可塑性物質の選択は、熱可塑性物質が、ポリマー(PGA)またはポリマー(PGA)を含む組成物からなる層でラミネートできることを条件として特に限定されない。
【0063】
熱可塑性物質の好ましい例としては、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル酸またはメタクリル酸樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンスルフィドなどのスルフィド樹脂ならびにポリカルボネート樹脂を挙げ得る。これらのうち、ポリエステル樹脂、特にジオール成分およびジカルボン酸成分からなる芳香族ポリエステル樹脂を使用することが好ましく、その少なくとも1つ、特にジカルボン酸成分は、その使用に応じて組み合わせた透明性およびガスバリア性を満たす多層製品を提供するために芳香族成分である。ポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。
【0064】
多層樹脂ラミネートは、いかなる形状または形態でもあり得、それは、とりわけ管状ラミネート、例えばパリソン、平板ラミネートまたは成形容器の形態であり得る。
【0065】
多層樹脂ラミネートの好ましい例は、ねじ込型および閉端型の円柱状物体を含むボトルプリフォームである。
【0066】
前記樹脂ラミネートを形成する工程は、ポリマー(PGA)またはポリマー(PGA)を含む組成物およびその熱可塑性物質を、それらが溶融状態である間に加工することを含むいずれの技法を用いても実施できる。
【0067】
適切な好ましい技法は、共押出成形および共射出成形である。
【0068】
共押出成形技法によると、ポリマー(PGA)の溶融流またはポリマー(PGA)を含む組成物の溶融流および熱可塑性物質の溶融流は、専用スクリュー押出機内で生成され、多層樹脂ラミネートを提供するために多列成形型のスロットダイに供給される。
【0069】
射出成形技法では、ポリマー(PGA)またはポリマー(PGA)を含む組成物および熱可塑性物質の溶融ショットは、マルチショットノズルを介して同じ金型に射出される。
【0070】
工程(ii)では、多層樹脂ラミネートは、一般的には、塑性変形を可能にする温度、一般的には融点を超える温度で延伸される。
【0071】
特定の実施形態によると、多層樹脂ラミネートは、工程(i)後で工程(ii)を受ける前に冷却および固化される。この場合、工程(ii)は、ポリマー(PGA)および熱可塑性物質のガラス転移温度を超える温度まで多層ラミネートを再加熱して、加熱中に多層ラミネートを延伸する工程を含む。延伸は、加圧ガス、典型的には空気を吹き付けることにより実現でき、延伸工程は、金型内で実施して、多層延伸製品を正しく定めた配置に接合し得る。
【0072】
他の実施形態によると、いかなる中間の冷却および再加熱工程なしで多層樹脂ラミネートに工程(ii)を施す。
【0073】
特定の実施形態のこの変形形態によると、例えばパリソンの形態下で押出された多層樹脂ラミネートは、圧縮空気を用いて、ダイから押出される際に直接溶融相に吹き付けることができる。
【0074】
特定の実施形態のこの変形形態によると、例えばフィルムの形態で押出された多層樹脂ラミネートは、延伸でき、例えば縦方向および/または横方向に動作する好適な延伸手段を用いて一軸または二軸延伸できる。
【0075】
これらの実施形態によると、多層延伸製品は、とりわけ多層インフレーションフィルム(溶融相で延伸)、多層キャストフィルムまたは二重バブルプ法により製造される多層収縮フィルムであり得る。
【0076】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願および刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。本発明は、ここで、その目的が例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例に関連してより詳細に説明される。
【0077】
溶融粘度および関連する特性の測定
ASTM D4440-08に従って、260℃の温度において、1~100/秒の範囲の様々なせん断速度で作動する平板型流動計を使用して試料の溶融粘度を測定した。使用した機器は、TA InstrumentsからDHR3として入手可能な25mm直径の平板流動計であった。
【0078】
イソフタル酸を含むポリマー(PGA)の調製
実施例1 - IAを用いるポリマーの調製
ヒーター、冷却器、温度センサおよび機械撹拌機を備えた1L反応釜に750gのグリコール酸(GA;9.862モル、1.0000モル基準と見なされる)、3.441gのイソフタル酸(ISA;0.0207モル、GAの1モル当たり0.0021モル)、1.852gのトリメチロールプロパン(TMP;0.0138モル、GAの1モル当たり0.0014モル)、0.075gのステアリン酸(SA;100ppm、0.000264モル、GAの1モル当たり0.000027モル)、2.25gのメタンスルホン酸(MSA;0.0234モル、GAの1モル当たり0.0024モル)および0.0375gのDOVERPHOS(登録商標)9228ホスフィット添加剤(50ppm)を装入した。一定の窒素流下で反応マスを加熱して、グリコール酸を溶融させ、固体が全て溶融するまで機械攪拌しながら徐々に加熱し続けた。温度が110℃に達した際に窒素流を増やし、150~200トルの減圧を維持した。上に詳述したように減圧での窒素不活性雰囲気下において反応温度を110℃に維持し、水を除去した。150トルの設定値に圧力を維持しながら、温度を230℃まで徐々に上昇させて水の除去を続けた。反応マスをこの温度および圧力で60分間放置した。次に、圧力をさらに50トルまで低下させて反応を続けた。約150時間後に加熱を停止し、大気圧で一定の窒素流下において反応マスを室温まで冷却させた。室温まで冷却すると、硬固化したPGAマスを取り出し、秤量した。粗収量:539g(約93%)。次に、ハンマーを用いてマスを小片に破砕し、高速グラインダーを用いて直径2mm未満の小粒子の粉末にし、2mm篩により分級した。得られたポリマーをさらに篩にかけて、直径0.5mm未満の粒子を取り除いた。そのようにして得た粉末を丸底フラスコに移し、均一混合のためにロータリーエバポレータシステムに取り付け、1.1L/分の一定の窒素流下において、218℃で維持する油浴を用いて固体状態でさらに重合した。周期的に加熱を止めて、ポリマーの量が減った試験片を慎重に取り出し、平板型流動計を用いて様々な時間の固相重合(SSP)での溶融粘度を分析した。所望の溶融粘度を達成した後に加熱を停止し、SSPを止めた。218℃で53時間のSSP後、10/秒のせん断速度で512パスカル×秒の溶融粘度を有するPGAポリマーを314g得た。
【0079】
実施例2 - IAを用いるポリマーの調製
以下を除いて、実施例1で記載した手順と同様にポリマー(PGA)を調製した。1500gのグリコール酸(GA;19.724モル、1.0000モル基準と見なされる)、4.587gのイソフタル酸(ISA;0.0276モル、GAの1モル当たり0.0014モル)、3.705gのトリメチロールプロパン(TMP;0.0276モル、GAの1モル当たり0.0014モル)、0.150gのステアリン酸(SA;100ppm、0.000528モル、GAの1モル当たり0.000027モル)、4.5gのメタンスルホン酸(MSA;0.0468モル、GAの1モル当たり0.0024モル)および0.075gのDOVERPHOS(登録商標)9228ホスファイト添加剤(50ppm P)を用いて、5Lの反応釜で反応を実施した。218℃でSSPを96時間した後、10/秒で400パスカル×秒の溶融粘度を有するPGAポリマーを351g得た。
【0080】
比較例:トリカルバリル酸(TCA)、ジグリコール酸(DGA)またはコハク酸(SCA)を含むポリマー(PGA)の調製
比較例3:TCAを用いるポリマーの調製
ヒーター、冷却器、温度センサおよび機械撹拌機を備えた5L反応釜に1500gのグリコール酸(GA;19.724モル、1.0000モル基準と見なされる)、4.863gのトリカルバリル酸(TCA;0.0276モル、GAの1モル当たり0.0014モル)、3.705gのトリメチロールプロパン(TMP;0.0276モル、GAの1モル当たり0.0014モル)、0.150gのステアリン酸(SA;100ppm、0.000528モル、GAの1モル当たり0.000027モル)、4.5gのメタンスルホン酸(MSA;0.0468モル、GAの1モル当たり0.0024モル)および0.075gのDOVERPHOS(登録商標)9228ホスファイト添加剤(50ppm P)を装入した。一定の窒素流下で反応マスを加熱して、グリコール酸を溶融させ、全固体が溶融するまで機械攪拌しながら徐々に加熱し続けた。温度が110℃に達した際に窒素流を増やし、150~200トルの減圧を維持した。窒素で満たされた減圧のこの不活性雰囲気において反応温度を110℃に維持し、水を除去した。温度を230℃まで徐々に上昇させて、圧力を150トルに一定にして水の除去を続けた。この温度および圧力で反応マスを60分間放置した。次に、圧力をさらに50トルまで低下させて反応を続けた。約150分後に加熱を停止して、鋼板に反応マスを排出した。大気圧で一定の窒素流下においてPGAマスを室温まで冷却させた。室温まで冷却すると、硬固化したPGAマスを秤量し、粗収量:1076g(約93%)を得た。次に、グラインダーを用いてマスを小片に破砕し、直径3mmのノズルを備える小型の二軸押出機(ZSK 26、Coperion製)を用いて、約190℃~約210℃の温度でストランド状に押出して、それを冷却してペレットに細断した。これらのペレットを丸底フラスコに移し、均一混合のためにロータリーエバポレータシステムに取り付け、1.1L/分の一定の窒素流下において218℃で維持する油浴を用いて、固体状態で重合を続行した。周期的に加熱を止めて、ポリマーの量が減った試験片を慎重に取り出し、平板型流動計を用いて様々な時間の固相重合(SSP)での溶融粘度を分析した。所望の溶融粘度を達成した後に加熱を停止し、SSPを止めた。218℃でSSPを50時間した後、10/秒で721パスカル×秒の溶融粘度を有するPGAポリマーを626g得た。
【0081】
比較例4 - DGAを用いるポリマーの調製
ヒーター、冷却器、温度センサおよび機械撹拌機を備えた5Lの反応器に1500gのグリコール酸(GA;19.724モル、1.0000モル基準と見なされる)、5.554gのジグリコール酸(DGA;0.0414モル、GAの1モル当たり0.0021モル)、3.705gのトリメチロールプロパン(TMP;0.0276モル、GAの1モル当たり0.0014モル)、30gの乳酸(LA;0.333モル、GAの1モル当たり0.01688モル)、0.150gのステアリン酸(SA;100ppm、0.000528モル、GAの1モル当たり0.000027モル)、4.5gのメタンスルホン酸(MSA;0.0468モル、GAの1モル当たり0.0024モル)および0.075gのDOVERPHOS(登録商標)9228ホスファイト添加剤(50ppm P)を装入した。一定の窒素流下で反応マスを加熱して、グリコール酸を溶融させ、全固体が溶融するまで機械攪拌しながら徐々に加熱し続けた。温度が110℃に達した際に窒素流を増やし、150~200トルの減圧を維持した。窒素で満たされた減圧のこの不活性雰囲気において反応温度を110℃に維持し、水を除去した。温度を230℃まで徐々に上昇させて、圧力を150トルに一定にして水の除去を続けた。この温度および圧力で反応マスを60分間放置した。次に、圧力をさらに50トルまで低下させて反応を続けた。約150分後に加熱を停止して、鋼板に反応マスを排出した。大気圧で一定の窒素流下においてPGAマスを室温まで冷却させた。室温まで冷却すると、硬固化したPGAマスを秤量し、1100g(約93%)の粗収量を得た。次に、グラインダーを用いてマスを小片に破砕し、直径3mmのノズルを備える小型の二軸押出機(ZSK 26、Coperion製)を用いて、約190℃~約210℃の温度でストランド状に押出して、それを室温で冷却した後にペレットに細断した。200gのこれらのペレットを丸底フラスコに移し、ロータリーエバポレータシステムに取り付け、1.1L/分の一定の窒素流下において217℃で維持する油浴を用いて固体状態で重合した。周期的に加熱を止めて、少量のポリマーを慎重に取り出し、平板型流動計を用いて様々な時間の固相重合(SSP)での溶融粘度を分析した。所望の溶融粘度を達成した後に加熱を停止し、SSPを止めた。
【0082】
218℃でSSPを80時間した後、10/秒のせん断速度で520パスカル×秒の溶融粘度を有するPGAポリマーを186g得た。
【0083】
比較例5 - SCAを用いるポリマーの調製
イソフタル酸の代わりに以下の量のコハク酸(SCA)を用いたことを除いて、実施例1と同じ手順を繰り返した:SCA(2.446g;0.0207モル、GAの1モル当たり0.0021モル)。
【0084】
コハク酸は、反応混合物から留去されたことがわかった。溶融相の反応中に生成した水のHPLCによる定量分析から、反応混合物から浸出するコハク酸の量をおよそ130ppmと概算でき、その結果、それからの分岐のポリマーが少量のコハク酸を含むこととなった。結果として特に固相重合の効力が低減した。
【0085】
218℃で53時間のSSP後、10/秒のせん断速度で392パスカル×秒の溶融粘度を有するPGAポリマーを313g得た。同じ条件下でIAを用いる実施例1は、約100パスカル×秒高いη10/秒を提供することがわかった。
【0086】
【0087】
【0088】
TGA測定により、実施例1および比較例5のポリマー(PGA)の熱安定性を比較した。結果を以下の表に要約する。
【0089】
【0090】
上の再生データから、本発明の分岐のPGAポリマーは、脂肪族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位を有する対応するポリマーを超える改善された熱安定性を有することが明らかである。
図1