IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スペクトラル プラットフォームス インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】微生物を検出し特徴づけるための分光法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20220905BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
G01N21/65
G01N21/64 Z
【請求項の数】 43
(21)【出願番号】P 2019551513
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 US2018023182
(87)【国際公開番号】W WO2018175346
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】62/473,876
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/614,216
(32)【優先日】2018-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517348994
【氏名又は名称】スペクトラル プラットフォームス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ベルマ ラビ
(72)【発明者】
【氏名】ユ チャンジュン
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0324933(US,A1)
【文献】特表2014-520575(JP,A)
【文献】特表2013-517490(JP,A)
【文献】特開昭53-069874(JP,A)
【文献】特開2010-233503(JP,A)
【文献】特開2009-254386(JP,A)
【文献】特表2007-532982(JP,A)
【文献】特開平03-272440(JP,A)
【文献】特開2004-163422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - G01N 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)サンプルと、リガンドを組み込んだアルブミンを含む試薬とを、サンプルホルダーにおいて組み合わせる工程;
(b)不変の光強度または経時変化する光強度のいずれかで、サンプルとサンプルホルダーの表面との界面において集束され前記リガンドに吸収される単色光源を用いて、サンプルを照射する工程;
(c)複数の異なる時間に、照射されたサンプルからの散乱光を収集し、該散乱光からラマン信号および蛍光信号を測定する工程;
(d)サンプルに関するラマン信号および蛍光信号の強度の経時的な変化率を計算する工程;
(e)正味信号を取得するために、ラマン信号および蛍光信号の強度の計算された変化率を補正する工程;ならびに
(f)正味信号と1つまたは複数の所定の閾値との比較に基づいて、サンプル中の微生物の存在を判定する工程
を含む、サンプル中の微生物の存在を判定するための方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の所定の閾値が、臨床的感染サンプルの濃度の下限の量で接種物を含む1つまたは複数の対照サンプルに対して請求項1に記載の工程(a)~(e)を実行することにより設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リガンドがリコピンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
単色光源がレーザーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
レーザーが532nmでサンプルを照射する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ラマン信号および蛍光信号の強度の変化率を補正する前記工程が、標準サンプルからのスペクトル出力を特徴づけることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記標準がNIST SRM 2242である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ラマン信号の強度の変化率を補正する前記工程が、前記試薬からの蛍光出力を特徴づけることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
サンプルと混合する前に、前記試薬のアルブミンを還元物質で前処理する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アルブミンを還元物質で前処理する前記工程が、ジスルフィド結合を還元するのに十分である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
還元物質がグルタチオンまたはビリルビンである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記前処理されたアルブミンをジスルフィド架橋物質と接触させる工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ジスルフィド架橋物質が、サンプル中の微生物によって産生される酵素または代謝産物によって開裂されるコアを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
架橋物質が、式(I):
の化合物を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項15】
サンプルホルダーがガラスバイアルである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ガラスバイアルの表面が、該ガラス表面上のアルブミンの吸収を変えるコーティングを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
コーティングが双性イオンコーティングである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記試薬が抗微生物組成物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
抗微生物濃度に対して正味信号をプロットする工程をさらに含み、
プロットの最小値が、抗微生物組成物の最小殺菌濃度を推定するために使用され、かつ/または
プロットにおけるブレークポイントが、抗微生物組成物の最小発育阻止濃度を推定するために使用される、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
正味信号を計算することが、
標準参照サンプルからの蛍光散乱の強度の変化率を判定すること、および
共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、該標準参照サンプルからの蛍光散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算すること
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項21】
正味信号を計算することが、
標準参照サンプルからの合計出力の変化率を判定すること、および
共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、該標準参照サンプルからの共鳴ラマン散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算すること
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記計算された正味信号を所定の閾値と比較し、該比較に基づいて、活発に代謝している微生物をサンプルが含んでいると判定する工程
をさらに含む、請求項20または21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
(a)単色光源と、
(b)光学調整コンポーネントと、
(c)光検出器と、
(d)プロセッサと、
を含むシステムであって、
該プロセッサは該プロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、該メモリは命令を格納しており、
該命令は、該プロセッサによって実行された場合に、
不変の光強度または経時変化する光強度のいずれかで、サンプルとサンプルホルダーの表面との界面において単色光源を用いて、サンプルホルダー中のサンプルを照射すること;
光検出器を用いてサンプルからの散乱光を複数の異なる時間に測定すること;
共鳴ラマン散乱および蛍光散乱の強度を判定すること;
共鳴ラマン散乱の強度および蛍光散乱の強度の変化率を計算すること;ならびに
正味信号を取得するために、共鳴ラマン散乱の強度および蛍光散乱の強度の計算された変化率を補正すること
を該プロセッサに実施させる、
前記システム。
【請求項24】
光学調整コンポーネントが、調整可能な焦点を生成するように構成されたリニアテーブルに取り付けられたコリメート光学系を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
光学調整コンポーネントが機械式シャッターをさらに含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
複数のサンプルチャンバを含む回転テーブルをさらに含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
回転テーブルが8個のサンプルチャンバを含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
コリメート光学系と、
インコヒーレントに散乱した光を直線状に配列された光検出器上に広げるように構成された光学調整コンポーネントと
を含む、インコヒーレントに散乱された光を特徴づけるためのサブシステム
をさらに含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
プロセッサが、命令を格納したメモリをさらに含み、
該命令は、該プロセッサによって実行された場合に、サンプルチャンバのそれぞれに光を集束させるようにコリメート光学系を動かすことを該プロセッサに実施させる、
請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記サンプルが、リガンドを組み込んだアルブミンをさらに含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項31】
前記メモリが命令をさらに含み、
該命令は、前記プロセッサによって実行された場合に、
試薬バイアルからの蛍光散乱(または他の光出力)の強度の変化率を判定すること、
共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、標準サンプルからの蛍光散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算すること
を該プロセッサに実施させる、
請求項23に記載のシステム。
【請求項32】
前記メモリが命令をさらに含み、
該命令は、前記プロセッサによって実行された場合に、
標準参照サンプルからの合計出力の変化率を判定すること、
共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、標準参照サンプルからの共鳴ラマン散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算すること
を該プロセッサに実施させる、
請求項23に記載のシステム。
【請求項33】
前記メモリが命令をさらに含み、
該命令は、前記プロセッサによって実行された場合に、
前記正味信号を所定の閾値と比較し、該比較に基づいて、活発に代謝している微生物をサンプルが含んでいると判定すること
を該プロセッサに実施させる、
請求項31または32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記サンプルが還元物質をさらに含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項35】
前記サンプルがジスルフィド架橋物質をさらに含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
ジスルフィド架橋物質が、前記サンプル中の微生物によって産生される酵素または代謝産物によって開裂されるコアをさらに含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記架橋物質が式(I):
の化合物を含む、
請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
サンプルホルダーがガラスバイアルである、請求項23に記載のシステム。
【請求項39】
サンプルホルダーが、アルブミンの吸収を変えるコーティングをさらに含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項40】
コーティングが双性イオンコーティングを含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記プロセッサが、正味信号を最小化するために前記サンプルを単色光源に曝露するように構成されている、請求項23に記載のシステム。
【請求項42】
前記サンプルと前記サンプルホルダーの表面との界面において該サンプルを照射するように構成されている、請求項23に記載のシステム。
【請求項43】
正味信号を最大化するように構成されている、請求項42に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年1月5日に出願された米国仮特許出願第62/614,216号、および2017年3月20日に出願された米国仮特許出願第62/473,876号の恩典を主張するものであり、これらの仮特許出願はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
序論
ラマン分光法は、化合物の振動、回転、および他の低周波分子運動を特徴づけるために使用され、一般的に、サンプル中の特定の分子の存在を識別するためのデータを提供するために使用される。ラマン散乱は、光が分子振動と相互作用し、散乱した光子によるエネルギーのシフトを引き起こす単色光(例えば、紫外線、可視光、または近赤外線)の非弾性散乱である。生体分子の立体構造の研究へのこの方法の応用は、スペクトルがかなり複雑であること、希薄溶液から得られるスペクトルの質が悪いこと、必要とされる量が多いことなどの多くの困難のために、ゆっくりとしか発展していない。
【0003】
ラマンスペクトルの励起に使用される照射が発色団の電子吸収帯にある場合に観測される強い増強(10から106倍)により、その発色団が複合生体媒質中に極めて低濃度で含まれる場合でさえ、その発色団の特定の振動モードの分析が可能になる。多くの天然発色団は多くの生物学的活動において重要な役割を果たすため、ラマン分光法は、様々な生物学的プロセスを調べるために使用されることが多い。大量の非吸収種の存在下で、極めて低濃度の生物色素の検出および構造分析が可能である。
【発明の概要】
【0004】
概要
本開示の局面は、共鳴ラマン分光法のための方法およびシステムを含む。特定の態様による方法は以下の工程を含む。第1の照射強度および第2の照射強度で単色光源を用いてサンプルを照射する工程、第1の照射強度および第2の照射強度における共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度を判定する工程、第1の照射強度から第2の照射強度への照射強度の変化に応じた共鳴ラマン散乱および蛍光散乱の強度のうちの1つまたは複数の変化率を計算する工程、ならびにサンプルの分光応答を判定するために、共鳴ラマン散乱の強度の変化率および蛍光散乱の強度の変化率のうちの1つまたは複数を単色光源による照射強度の変化率と比較する工程。一部の態様において、サンプルの分光応答(例えば、共鳴ラマン散乱および/または蛍光散乱)は、サンプルの物理的経時変化を示す。他の態様において、サンプルの分光応答は、サンプルの化学的経時変化を示す。さらに他の態様において、サンプルの分光応答は、サンプル中の活発に代謝している微生物の存在を示す。一部の態様において、単色光源はレーザーである。一部の態様において、サンプルは疎水性化合物とアルブミンタンパク質とを含む。例えば、疎水性化合物はアルブミンタンパク質に組み込まれてもよい。疎水性化合物は、特定の場合において、リコピンなどのカロテノイドである。特定の態様において、サンプルは、疎水性化合物、アルブミンタンパク質、および還元物質を含む。還元物質は、特定の場合において、グルタチオンまたはその誘導体である。他の態様において、サンプルは、疎水性化合物、アルブミンタンパク質、およびフリーラジカルスカベンジャーを含む。フリーラジカルスカベンジャーは、特定の場合において、ビリルビンまたはその誘導体である。
【0005】
一部の場合において、方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の照射強度にわたってサンプルを一定期間照射する工程、ならびに共鳴ラマン散乱の強度の変化率および蛍光散乱の強度の変化率のうちの1つまたは複数を判定する工程。他の場合には、方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率および蛍光散乱の強度の変化率のうちの1つまたは複数を判定する工程;第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率および蛍光散乱の強度の正規化された変化率のうちの1つまたは複数を、単色光源による第1のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第1のサンプルの正味信号を計算する工程;単色光源によって複数の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率および蛍光散乱の強度の変化率のうちの1つまたは複数を判定する工程;ならびに第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率および強度の正規化された変化率のうちの1つまたは複数を、単色光源による第2のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第2のサンプルの正味信号を計算する工程。一部の態様において、方法は、第1のサンプルの正味信号を第2のサンプルの正味信号と比較する工程をさらに含む。比較された計算された正味信号に基づいて、方法は以下のうちの1つまたは複数を含み得る:1)第1のサンプルと第2のサンプルとが異なると判定する工程;2)第1のサンプルが第2のサンプルとは異なるガス組成を含むと判定する工程;および3)活発に代謝している微生物を第1のサンプルまたは第2のサンプルが含んでいると判定する工程。
【0006】
本開示の局面はまた、サンプル中の微生物の存在を判定するための方法を含む。特定の態様による方法は以下の工程を含む。サンプルとリガンドを組み込んだアルブミンを含む試薬とをサンプルホルダーにおいて組み合わせる工程;不変の光強度または経時変化する光強度のいずれかでサンプルとサンプルホルダーの表面との界面において集束され、リガンドに吸収される単色光源でサンプルを照射する工程;複数の異なる時間に、照射されたサンプルからの散乱光を収集し、散乱光からのラマン信号および蛍光信号を測定する工程;サンプルに関するラマン信号および蛍光信号の強度の経時的な変化率を計算する工程;正味信号を取得するために、ラマン信号および蛍光信号の強度の計算された変化率を補正する工程;ならびに正味信号と1つまたは複数の所定の閾値との比較に基づいて、サンプル中の微生物の存在を判定する工程。
【0007】
一部の態様において、1つまたは複数の所定の閾値は、臨床的感染サンプルの濃度の下限の量で接種物を含む1つまたは複数の対照サンプルに対して本方法を実施することにより設定される。
【0008】
一部の場合において、ラマン信号および蛍光信号の強度の変化率を補正する工程は、標準サンプルからのスペクトル出力を特徴づける工程を含む。他の場合において、蛍光信号の強度の変化率を補正する工程は、試薬からの蛍光出力を特徴づける工程を含む。
【0009】
特定の態様において、ラマン信号および蛍光信号の強度の変化率を補正する工程は以下の工程を含む。標準参照サンプルからの合計出力の変化率を判定する工程;および、共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、標準サンプルからの共鳴ラマン散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算する工程。
【0010】
他の態様において、ラマン信号および蛍光信号の強度の変化率を補正する工程は以下の工程を含む。標準参照サンプルからの蛍光散乱の強度の変化率を判定する工程;および、共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、標準サンプルからの蛍光散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算する工程。
【0011】
一部の態様において、方法は、例えばアルブミンを還元物質(例えば、グルタチオン)と接触させることなどにより、リガンドを組み込む前にアルブミンを前処理する工程をさらに含む。還元物質は、特定の場合において、アルブミンのジスルフィド結合を還元するのに十分である。他の態様において、アルブミンはジスルフィド架橋物質で前処理される。一部の場合において、ジスルフィド架橋物質は、サンプル中の微生物によって産生される酵素または代謝産物によって開裂されるコアを含む。特定の場合において、ジスルフィド架橋物質は、式(I):
の化合物である。
【0012】
本開示の局面はまた、共鳴ラマン散乱を用いてサンプル中の微生物(例えば、活発に代謝している微生物)の存在を判定する工程を含む。特定の態様による方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の強度にわたってサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算する工程;サンプルの共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源によるサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、サンプルの正味信号を計算する工程;およびサンプルの正味信号に基づいてサンプル中の微生物の存在を判定する工程。特定の場合において、サンプルの正味信号が所定の閾値を超えた場合に、微生物が存在すると判定される。他の態様において、微生物の存在を判定する工程は以下の工程を含む:単色光源によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算する工程;第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第1のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第1のサンプルの正味信号を計算する工程;単色光源によって複数の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第2のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第2のサンプルの正味信号を計算する工程;および第1のサンプルの正味信号を第2のサンプルの正味信号と比較することにより、第1のサンプルまたは第2のサンプルのうちの1つまたは複数における微生物の存在を判定する工程。一部の場合において、第2のサンプルの正味信号が第1のサンプルの正味信号よりも大きい場合、微生物が第2のサンプルに存在すると判定される。他の場合において、第1のサンプルの正味信号が第2のサンプルの正味信号よりも大きい場合、微生物が第1のサンプルに存在すると判定される。
【0013】
本開示の局面はまた、蛍光分光法によりサンプル中の微生物(例えば、活発に代謝している微生物)の存在を判定する工程を含む。特定の態様による方法は以下の工程を含む。単色光源によりサンプルを一定期間照射し、該一定期間にわたってサンプルからの蛍光を検出する工程;サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、微生物の存在に起因する蛍光の変化率を計算する工程;および所定の閾値と比較したサンプルの蛍光の計算された変化に基づいて、サンプル中の微生物の存在を判定する工程。
【0014】
サンプル中の微生物(例えば、活発に代謝している微生物)の存在を判定する工程において、方法は、サンプルホルダー内のサンプルを照射する工程を含む。一部の態様において、サンプルホルダーは容器、例えば、キュベット、バイアル、平面基板、またはマイクロ流体デバイスである。サンプル容器は、特定の場合において、ガラスバイアルである。一部の態様において、ガラスバイアルは、双性イオンシランコーティングなどの双性イオンコーティングを備えた壁を有する。これらの態様において、サンプルは、サンプルとサンプルホルダー(例えば、容器の壁)の表面との界面における位置に単色光源を集束させることなどにより、サンプルとサンプルホルダー(例えば、容器の壁)の表面との界面において照射され得る。一部の場合において、単色光は、サンプルホルダー(例えば、容器の壁)の表面の表面から約0.2mmなど、サンプルホルダー(例えば、容器の壁)の表面の表面から0.01mm~2mmの位置に集束される。単色光は、例えば、コリメート光学系(例えば、コリメートレンズを含む)で集束されてもよい。
【0015】
本開示の局面はまた、信号雑音比を計算するための方法を含む。一部の態様において、方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;第1の平均変化率を求めるために、第1のサンプルによる共鳴ラマン散乱の強度の平均変化率を計算する工程;第1の平均変化率の標準偏差を計算する工程;単色光源によって一定範囲の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;第2の平均変化率を求めるために、第2のサンプルによる共鳴ラマン散乱の強度の平均変化率を計算する工程;第2の平均変化率の標準偏差を計算する工程;信号の平均変化率を求めるために、第1の平均変化率から第2の平均変化率を減ずる工程;信号の標準偏差を求めるために、第1の標準偏差と第2の標準偏差とを加える工程;および共鳴ラマン応答の信号雑音比を判定するために、信号の平均変化率を信号の標準偏差で除する工程。
【0016】
本開示の局面は、光学測定機器の変動(例えば、単色光源の熱ドリフト、光学コンポーネントの位置の変化など)ならびにサンプルの変動(例えば、対象外の化合物からの蛍光)を判定および補正するための方法をさらに含む。一部の態様において、方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の強度にわたって参照組成物を一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率および蛍光散乱の強度の変化率のうちの1つまたは複数を判定する工程であって、参照組成物が、単色光源による照射強度の変化に応じて共鳴ラマン散乱または蛍光散乱の強度に変化を示さない参照化合物を含む、照射および判定工程;ならびに参照組成物に関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率および蛍光散乱の強度の変化率のうちの1つまたは複数を、単色光源による参照組成物の照射強度の変化率と比較することにより、参照組成物の正味信号を計算する工程。特定の場合において、方法は以下の工程をさらに含む。単色光源によって一定範囲の強度にわたってサンプルを一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率のうちの1つまたは複数を判定する工程;補正係数を生成するために、サンプルの共鳴ラマン散乱の強度の判定された変化率を、単色光源によるサンプルの照射強度の変化率を用いて補正することにより、正味信号を取得する工程;およびサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の判定された変化率から補正係数を減ずる工程。
【0017】
本開示の局面は、共鳴ラマン散乱を用いて、抗微生物剤に対する微生物の抗微生物剤感受性を判定するための方法をさらに含む。一部の態様において、方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の強度にわたって、微生物および抗微生物剤をそれぞれ含む複数のサンプルを一定期間照射し、各照射されたサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程であって、各サンプルが同じ濃度の微生物および異なる濃度の抗微生物剤を含む、照射および判定工程;各サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による各サンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、各サンプルの正味信号を計算する工程;ならびに複数のサンプルの正味信号に基づいて、抗微生物剤に対する微生物の感受性を判定する工程。一部の場合において、方法は、各サンプルの抗微生物剤の濃度の対数の関数として各サンプルの正味信号をプロットする工程をさらに含む。特定の場合において、方法はまた、プロットされた正味信号において低下を最初に示す濃度を判定することにより、抗微生物剤の最小発育阻止濃度を判定する工程を含み得る。他の場合において、方法はまた、プロットされた正味信号において上昇を最初に示す濃度を判定することにより、抗微生物剤の最大殺菌濃度を判定する工程を含み得る。他の態様において、方法は、各サンプルの正味信号に基づいて各サンプル中の微生物の代謝活性を判定する工程をさらに含む。一部の場合において、方法は、代謝活性の低下を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程を含む。他の場合において、方法は、代謝活性の上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程を含む。
【0018】
本開示の局面は、蛍光分光法により抗微生物剤に対する微生物の抗微生物剤感受性を判定するための方法をさらに含む。一部の態様において、方法は以下の工程を含む。微生物および抗微生物剤をそれぞれ有する複数のサンプルに単色光源を一定期間照射し、該一定期間照射されたサンプルのそれぞれからの蛍光を検出する工程であって、各サンプルが同じ濃度の微生物および異なる濃度の抗微生物剤を有する、照射および検出工程;各サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、各サンプルにおける蛍光の変化率を計算する工程;ならびに複数のサンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて、抗微生物剤に対する微生物の感受性を判定する工程。一部の態様において、方法は、単色光源の複数の強度にわたってサンプルのそれぞれを照射する工程を含む。
【0019】
これらの態様における各サンプルは、同じ濃度の微生物、例えば、10コロニー形成単位(CFU)以上(14CFU以上など)の濃度の微生物を含んでもよい。特定の態様において、微生物のサンプルは、所定の濃度の微生物(例えば、100CFU)を有する組成物を調製し、各サンプルが同じ濃度の微生物を有するように所定の体積の微生物組成物を各サンプルにアリコートすることにより調製される。態様において、複数のサンプル中の抗微生物剤の濃度の範囲は、抗微生物剤の最小発育阻止濃度未満の濃度から抗微生物剤の最小殺菌濃度より高い濃度にまで及ぶ。抗微生物剤は、単色光源で照射する前に、10分以上または20分以上などの所定の期間、サンプル中の微生物とともにインキュベートされ得る。
【0020】
本開示の局面は、共鳴ラマン散乱を用いて未知の微生物の表現型を特徴づけるための方法をさらに含む。一部の態様において、方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の強度にわたって、微生物、架橋物質、およびアルブミンタンパク質を含むサンプルに単色光源を一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源によるサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、サンプルの正味信号を計算する工程;ならびにサンプルの正味信号に基づいてアルブミンタンパク質の架橋開裂を判定する工程であって、架橋開裂の程度が微生物の表現型を示す、判定工程。
【0021】
本開示の局面は、蛍光分光法により未知の微生物の表現型を特徴づけるための方法をさらに含む。一部の態様において、方法は以下の工程を含む。微生物、架橋物質、およびアルブミンタンパク質を含むサンプルに単色光源を一定期間照射し、該一定期間にわたってサンプルからの蛍光を検出する工程;サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、蛍光の変化率を計算する工程;ならびにサンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて架橋開裂を判定する工程であって、架橋開裂の程度が微生物の表現型を示す、判定工程。一部の態様において、方法は、単色光源の複数の強度にわたってサンプルを照射する工程を含む。
【0022】
複数の態様において、架橋物質はジスルフィドクロスリンカーであり得る。一部の場合において、架橋物質はグルタミン酸誘導体である。特定の態様において、架橋物質は式(I):
の化合物である。
【0023】
架橋物質は、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が1:10~10:1、例えば、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が約1:2である量でサンプル中に存在し得る。複数の態様において、サンプルの正味信号の経時的な上昇は、微生物がアルブミンタンパク質における1つまたは複数の架橋を開裂する代謝産物を産生することを示す。これに基づいて、微生物の表現型を特徴づけることができる。
【0024】
単色光源と共鳴ラマン散乱または蛍光を検出するための検出器とを有する、対象の方法を実施するためのシステムも提供される。一部の態様において、単色光源はレーザーである。例えば、レーザーは、532nmの光を出力する2倍波Nd:YAGレーザーなどのNd:YAGレーザーであってもよい。一部の場合において、検出器が電荷結合素子(CCD)である。一部の態様において、システムはサンプル容器をさらに含む。サンプル容器は、例えば、ガラスバイアルであってもよい。一部の態様において、ガラスバイアルは、双性イオンシランコーティングなどの双性イオンコーティングを備えた壁を有する。これらの態様において、対象のシステムは、サンプルと容器の壁との界面における位置に単色光源を集束させることなどにより、サンプルと容器の壁との界面においてサンプルを照射するように構成される。一部の場合において、単色光は、容器の壁の表面から約0.2mmなど、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置に集束される。これらのシステムはまた、コリメートレンズなど、サンプルと容器の壁との界面において単色光源を集束させるための光学調整コンポーネントを含み得る。
[本発明1001]
(a)サンプルと、リガンドを組み込んだアルブミンを含む試薬とを、サンプルホルダーにおいて組み合わせる工程;
(b)不変の光強度または経時変化する光強度のいずれかで、サンプルとサンプルホルダーの表面との界面において集束され前記リガンドに吸収される単色光源を用いて、サンプルを照射する工程;
(c)複数の異なる時間に、照射されたサンプルからの散乱光を収集し、該散乱光からラマン信号および蛍光信号を測定する工程;
(d)サンプルに関するラマン信号および蛍光信号の強度の経時的な変化率を計算する工程;
(e)正味信号を取得するために、ラマン信号および蛍光信号の強度の計算された変化率を補正する工程;ならびに
(f)正味信号と1つまたは複数の所定の閾値との比較に基づいて、サンプル中の微生物の存在を判定する工程
を含む、サンプル中の微生物の存在を判定するための方法。
[本発明1002]
前記1つまたは複数の所定の閾値が、臨床的感染サンプルの濃度の下限の量で接種物を含む1つまたは複数の対照サンプルに対して本発明1001の工程(a)~(e)を実行することにより設定される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
リガンドがリコピンである、本発明1001の方法。
[本発明1004]
単色光源がレーザーである、本発明1001の方法。
[本発明1005]
レーザーが532nmでサンプルを照射する、本発明1004の方法。
[本発明1006]
ラマン信号および蛍光信号の強度の変化率を補正する前記工程が、標準サンプルからのスペクトル出力を特徴づけることを含む、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記標準がNIST SRM 2242である、本発明1006の方法。
[本発明1008]
ラマン信号の強度の変化率を補正する前記工程が、前記試薬からの蛍光出力を特徴づけることを含む、本発明1001の方法。
[本発明1009]
サンプルと混合する前に、前記試薬のアルブミンを還元物質で前処理する工程をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1010]
アルブミンを還元物質で前処理する前記工程が、ジスルフィド結合を還元するのに十分である、本発明1009の方法。
[本発明1011]
還元物質がグルタチオンまたはビリルビンである、本発明1009の方法。
[本発明1012]
前記前処理されたアルブミンをジスルフィド架橋物質と接触させる工程をさらに含む、本発明1010の方法。
[本発明1013]
ジスルフィド架橋物質が、サンプル中の微生物によって産生される酵素または代謝産物によって開裂されるコアを含む、本発明1012の方法。
[本発明1014]
架橋物質が、式(I):
の化合物を含む、
本発明1010の方法。
[本発明1015]
サンプルホルダーがガラスバイアルである、本発明1001の方法。
[本発明1016]
ガラスバイアルの表面が、該ガラス表面上のアルブミンの吸収を変えるコーティングを含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
コーティングが双性イオンコーティングである、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記試薬が抗微生物組成物をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1019]
抗微生物濃度に対して正味信号をプロットする工程を含み、
プロットの最小値が、抗微生物組成物の最小殺菌濃度を推定するために使用され、かつ/または
プロットにおけるブレークポイントが、抗微生物組成物の最小発育阻止濃度を推定するために使用される、
本発明1018の方法。
[本発明1020]
正味信号を計算することが、
標準参照サンプルからの蛍光散乱の強度の変化率を判定すること、および
共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、該標準サンプルからの蛍光散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算すること
を含む、
本発明1001の方法。
[本発明1021]
正味信号を計算することが、
標準参照サンプルからの合計出力の変化率を判定すること、および
共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、該標準サンプルからの共鳴ラマン散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算すること
を含む、
本発明1001の方法。
[本発明1022]
前記計算された正味信号を所定の閾値と比較し、該比較に基づいて、活発に代謝している微生物をサンプルが含んでいると判定する工程
をさらに含む、本発明1020または1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
(a)単色光源と、
(b)光学調整コンポーネントと、
(c)光検出器と、
(d)プロセッサと、
を含むシステムであって、
該プロセッサは該プロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、該メモリは命令を格納しており、
該命令は、該プロセッサによって実行された場合に、
不変の光強度または経時変化する光強度のいずれかで、サンプルとサンプルホルダーの表面との界面において単色光源を用いて、サンプルホルダー中のサンプルを照射すること;
光検出器を用いてサンプルからの散乱光を複数の異なる時間に測定すること;
共鳴ラマン散乱および蛍光散乱の強度を判定すること;
共鳴ラマン散乱の強度および蛍光散乱の強度の変化率を計算すること;ならびに
正味信号を取得するために、共鳴ラマン散乱の強度および蛍光散乱の強度の計算された変化率を補正すること
を該プロセッサに実施させる、
前記システム。
[本発明1024]
光学調整コンポーネントが、調整可能な焦点を生成するように構成されたリニアテーブルに取り付けられたコリメート光学系を含む、本発明1023のシステム。
[本発明1025]
光学調整コンポーネントが機械式シャッターをさらに含む、本発明1023のシステム。
[本発明1026]
複数のサンプルチャンバを含む回転テーブルをさらに含む、本発明1023のシステム。
[本発明1027]
回転テーブルが8個のサンプルチャンバを含む、本発明1026のシステム。
[本発明1028]
コリメート光学系と、
インコヒーレントに散乱した光を直線状に配列された光検出器上に広げるように構成された光学調整コンポーネントと
を含む、インコヒーレントに散乱された光を特徴づけるためのサブシステム
をさらに含む、本発明1027のシステム。
[本発明1029]
プロセッサが、命令を格納したメモリをさらに含み、
該命令は、該プロセッサによって実行された場合に、サンプルチャンバのそれぞれに光を集束させるようにコリメート光学系を動かすことを該プロセッサに実施させる、
本発明1028のシステム。
[本発明1030]
前記サンプルが、リガンドを組み込んだアルブミンをさらに含む、本発明1023のシステム。
[本発明1031]
前記メモリが命令をさらに含み、
該命令は、前記プロセッサによって実行された場合に、
試薬バイアルからの蛍光散乱(または他の光出力)の強度の変化率を判定すること、
共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、標準サンプルからの蛍光散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算すること
を該プロセッサに実施させる、
本発明1023のシステム。
[本発明1032]
前記メモリが命令をさらに含み、
該命令は、前記プロセッサによって実行された場合に、
標準参照サンプルからの合計出力の変化率を判定すること、
共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、標準サンプルからの共鳴ラマン散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算すること
を該プロセッサに実施させる、
本発明1023のシステム。
[本発明1033]
前記メモリが命令をさらに含み、
該命令は、前記プロセッサによって実行された場合に、
前記正味信号を所定の閾値と比較し、該比較に基づいて、活発に代謝している微生物をサンプルが含んでいると判定すること
を該プロセッサに実施させる、
本発明1031または1032のいずれかのシステム。
[本発明1034]
前記サンプルが還元物質をさらに含む、本発明1023のシステム。
[本発明1035]
前記サンプルがジスルフィド架橋物質をさらに含む、本発明1034のシステム。
[本発明1036]
ジスルフィド架橋物質が、前記サンプル中の微生物によって産生される酵素または代謝産物によって開裂されるコアをさらに含む、本発明1035のシステム。
[本発明1037]
前記架橋物質が式(I):
の化合物を含む、
本発明1035のシステム。
[本発明1038]
サンプルホルダーがガラスバイアルである、本発明1023のシステム。
[本発明1039]
サンプルホルダーが、アルブミンの吸収を変えるコーティングをさらに含む、本発明1023のシステム。
[本発明1040]
コーティングが双性イオンコーティングを含む、本発明1039のシステム。
[本発明1041]
前記プロセッサが、正味信号を最小化するために前記サンプルを単色光源に曝露するように構成されている、本発明1023のシステム。
[本発明1042]
前記サンプルと前記サンプルホルダーの表面との界面において該サンプルを照射するように構成されている、本発明1023のシステム。
[本発明1043]
正味信号を最大化するように構成されている、本発明1042のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むと、最もよく理解されるだろう。図面には以下の図が含まれる。
【0026】
図1】特定の態様による、レーザー強度の正規化された変化率に対してプロットされたリコピンからの共鳴ラマン強度の正規化された変化率を示すグラフである。
図2】特定の態様による、液体中に存在する溶解ガス(および過飽和ガス)の量による非線形係数の変動を示すグラフである。
図3】4つの非感染対照サンプルおよび3つの10CFU黄色ブドウ球菌(S. aureus)感染サンプルからの平均共鳴ラマン散乱ピーク高さを示すグラフである。
図4】1μMのビリルビンをそれぞれ含む、4つの非感染対照サンプルおよび3つの10CFU黄色ブドウ球菌感染サンプルからの平均共鳴ラマン散乱ピーク高さを示すグラフである。
図5】特定の態様による、対照サンプルおよび10CFU黄色ブドウ球菌サンプルの信号雑音比を示すグラフである。
図6】特定の態様による、添加されたビリルビンの関数としてプロットされた、t=600秒で推定された共鳴ラマン散乱の信号のプロットを示すグラフである。
図7】特定の態様による、実験時間の関数としてプロットされた、異なる量のビリルビンを有する組成物の信号雑音比の変動を示すグラフである。
図8】特定の態様による、アッセイ中に存在するビリルビンの量で信号雑音比が最適化されるタイムスケールにおける変動を示すグラフである。
図9A図9A~9Bは、ビリルビン含有量の関数として4つの非感染サンプルおよび3つの感染サンプルの測定値の変動を示すグラフである。図9Aは、測定された生データ値を示している。
図9B図9A~9Bは、ビリルビン含有量の関数として4つの非感染サンプルおよび3つの感染サンプルの測定値の変動を示すグラフである。図9Bは、レーザー出力において観測されたドリフトに対して補正されたデータ値を示している。
図10】特定の態様による、光検出器シャッター時間の正規化された変化率と比較した、参照組成物の共鳴ラマン散乱の正規化された変化率を使用した機器安定性の判定を示すグラフである。
図11】特定の態様によるサンプルチャンバの層を示す図である。
図12】特定の態様による、レーザー出力に対する熱の影響を最小化するための流れ図である。
図13】特定の態様による、システムの熱不安定性をチェックするための流れ図である。
図14】特定の態様による、システムの熱不安定性をチェックするためのYCAL試験のグラフである。
図15】特定の態様による、システム動作中の熱変動を最小化するための制御工程の流れ図である。
図16】特定の態様による、異なる濃度の還元物質を有するサンプルからの信号の大きさの関係を示すグラフである。
図17】特定の態様による、所定の測定時間での信号の大きさとインキュベーション時間との関係を示すグラフである。
図18】特定の態様による、ラマンピーク高さの変化率とレーザー曝露時間との間の関係を示すグラフである。
図19】特定の態様による、NISTプロファイルの信頼区間と、サンプル-容器界面および光照射の焦点からの距離との間の関係を示すグラフである。
図20】特定の態様による、ラマン強度プロファイルとサンプル容器からのコリメートレンズ位置との間の関係を示すグラフである。
図21】特定の態様による、非感染対照サンプルの勾配と、サンプル-容器界面の縁部からの単色光源の焦点位置との間の関係を示すグラフである。
図22A図22Aは、特定の態様による、双性イオン被覆ガラスバイアル中のサンプルについて得られたラマンスペクトルの信号雑音比を示すグラフである。
図22B図22Bは、特定の態様による、未被覆ガラスバイアル中のサンプルについて得られたラマンスペクトルの信号雑音比を示すグラフである。
図23】特定の態様による、信号雑音比とサンプル-容器界面からの焦点の距離との間の関係を示すグラフである。
図24】特定の態様による、ラマンピークおよびバックグラウンド蛍光からの寄与を有するスペクトルに5次多項式をフィッティングするLieberの方法を示すグラフである。
図25A図25Aは、特定の態様による、信号雑音比と勾配との関係を示すグラフである。
図25B図25Bは、特定の態様による、信号雑音比と勾配の信頼区間との関係を示すグラフである。
図26A図26Aは、特定の態様による、4つの非感染対照サンプルおよび3つの感染サンプルについて集約されたラマンピークの振幅を示すグラフである。
図26B図26Bは、曲線下面積からの非感染サンプルおよび感染サンプルの推定変化率を示すグラフである。
図26C図26Cは、非感染および感染サンプルの推定信号雑音比を示すグラフである。
図27】特定の態様による、対照および感染サンプルについて集約され、NIST標準で観測された変動について補正された推定勾配を示すグラフである。
図28A図28Aは、特定の態様による、曲線下面積から推定された非感染および感染サンプルの推定変化率を示すグラフである。
図28B図28Bは、特定の態様による、非感染および感染サンプルの変化率のrms標準偏差で信号を除したものとして推定された信号雑音比を示すグラフである。
図28C図28Cは、特定の態様による、細菌が遠心分離され除去されたこのサンプルセットの時間の関数として信号を示すグラフである。
図29A図29Aは、特定の態様による、臨床サンプルにおけるラマンピークの変化率を示すグラフである。
図29B図29Bは、特定の態様による、異なる患者からの血漿が添加された臨床サンプルで完了した一連の試験のラマンピークの振幅を示すグラフである。
図30】特定の態様による、血液培養試験におけるラマンピークの変化率と陽性になるまでの時間との関係を示すグラフである。
図31A図31Aは、特定の態様による、臨床サンプル中の異なる細菌濃度を有するサンプルの信号強度の変化を示すグラフである。
図31B図31Bは、特定の態様による、異なる細菌濃度を有する臨床サンプルの1000秒での信号強度を示すグラフである。
図32A図32Aは、特定の態様による、抗微生物剤(バンコマイシン)濃度の関数としてラマン強度の測定された勾配を示すグラフである。
図32B図32Bは、試験サンプルが濁るまでにかかる時間を示すグラフである。
図33A図33Aは、特定の態様による、2つのジスルフィド結合を含むペプチドクロスリンカー化合物の650nmでの吸光度の結果を示すグラフである。
図33B図33Bは、微生物の濃度の関数として経時的なラマン信号の上昇を示すグラフである。
図34】特定の態様による、添加されたジスルフィドクロスリンカーのモル比の関数としてラマン信号の上昇を示すグラフである。
図35A図35Aは、特定の態様による、3つの非感染対照サンプルについて集約された蛍光測定値を示すグラフである。
図35B図35Bは、特定の態様による、非感染および感染サンプルの変化率のrms標準偏差で信号を除したものとして推定された蛍光検出に関する信号雑音比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
選抜された定義
本明細書において使用する場合、「ラマン散乱」ならびに他の同様の用語および/または語句は、サンプルに一定の波長で入射した光が他の波長で散乱される任意の方法を指す。散乱は、当初のより低い振動レベル(基底状態)からより高い振動レベルへの構造体の励起による入射光子の吸収、およびそれに続く異なる基底状態レベルへ下がる緩和に起因するインコヒーレントな過程によるものであり得る。
【0028】
本明細書において使用する場合、「ラマンバンド」ならびに同様の用語および/または語句は、分子内の特定の化学結合に由来するラマン散乱に対応するスペクトルプロファイル(例えば、強度対周波数)を指す。各化学結合は個別の周波数でラマンバンドとして現れること、また場合によりこれらのラマンバンドが重なって、ラマンバンドどうしを区別するのが難しくなる場合があることが理解されよう。さらに、ある化学結合のラマン断面積は、対応するラマンピークの強度を規定する定数であることが理解されよう。さらには、この断面積は、波長とともに、および/または共鳴とともに変化し得ることが理解されよう。このような共鳴変化は、共鳴ラマン増強中に生じる。
【0029】
本明細書において使用する場合、サンプルの「ラマンスペクトル」ならびに同様の用語および/または語句は、すべてのラマンバンドの和を指し、ラマンスペクトルにおける個々のラマンバンドの相対的高さは、対応する化学結合の相対的存在量にそれらのラマン断面積を乗じたものに比例することが理解されよう。
【0030】
本明細書において使用する場合、「吸収」ならびに同様の用語およびまたは語句は、入射光が関心対象のサンプルによって吸収される任意の方法を指す。入射光子は、外殻電子の励起(例えば、UVまたは可視放射の吸収に対応する)、またはより高い振動/回転エネルギー状態への分子の励起を含む、任意の数のメカニズムによって構造体と相互作用し得る。
【0031】
本明細書において使用する場合、「共鳴ラマン散乱」ならびに同様の語句および/または用語は、初期の基底状態から、かなりの振動状態に対応するかなりの励起状態への分子の励起を伴う、特殊なタイプのラマン散乱であると理解される過程を指す。よって、本考察の目的上、共鳴「ラマン増強」(または「共鳴ラマン」)ならびに他の同様の用語および/または語句は、特定のバンドのラマン断面積が強い光学吸収によって増強される任意の方法を指す。
【0032】
本明細書において使用する場合、「共鳴ラマンの非線形性(RRNL)」は、共鳴ラマンピークの強度の変化率(Y軸にプロット)と入射レーザービームの強度の変化率(X軸にプロット)との間のトレースの勾配を指す。
【0033】
本明細書において使用する場合、「正味信号」は、機器に関連する変動(例えば、単色光源のドリフト、コリメート光学系などの光学コンポーネントのドリフト)および/またはサンプルバイアルにおける変動(例えば、対象外の化合物からの蛍光)の補正後のラマン散乱または蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度の変化率を指す。一部の態様において、「正味信号」は、RRNL=1である場合に正味信号=0であり、正味信号が0未満である場合にRRNL<1であるという点で、上記で定義した共鳴ラマンの非線形性(RRNL)に関連している。
【0034】
本明細書において使用する場合、「バイアル」ならびに他の同様の用語および/または語句は、例えば試験サンプルをアッセイの他の任意の成分とともに収容する試験容器を指す。バイアルは、詳しく後述するように、ガラスおよびプラスチックなど、任意の適切に透明な材料から構築され得ることが理解されよう。
【0035】
詳細な説明
本開示の局面は、共鳴ラマン分光法のための方法およびシステムを含む。特定の態様による方法は以下の工程を含む。第1の照射強度および第2の照射強度で単色光源を用いてサンプルを照射する工程、第1の照射強度および第2の照射強度における共鳴ラマン散乱および蛍光散乱の強度のうちの1つまたは複数の強度を判定する工程、第1の照射強度から第2の照射強度への照射強度の変化に応じた共鳴ラマン散乱の強度および蛍光散乱の強度のうちの1つまたは複数の変化率を計算する工程、ならびにサンプルの分光応答を判定するために、共鳴ラマン散乱の強度の変化率および蛍光散乱の強度の変化率のうちの1つまたは複数を単色光源による照射強度の変化率と比較する工程。方法は以下の工程も含む。サンプル中の微生物の有無を判定する工程、ならびに測定機器(例えば、単色光源)に関連する変動およびサンプルに関連する変動(例えば、対象外の化合物からの蛍光)を補正する工程。また、抗微生物剤に対する微生物の抗微生物剤感受性を判定するための方法、およびサンプル中の未知の微生物の表現型を特徴づけるための方法も提供される。対象の方法を実施するためのシステムも提供される。
【0036】
本発明をより詳細に記載する前に、本発明が記載される特定の態様に限定されるわけではなく、それはそのようなものは変化し得るためであることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書において用いられる用語は、特定の態様を記載することのみを目的とするものであり、限定することは意図されていないことも理解されたい。
【0037】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間にある各介在値およびその記載された範囲における他の任意の記述された値または介在値は、文脈上はっきりと別様に述べられていない限り下限の単位の10分の1まで本発明に包含されると理解されたい。これらのより小さな範囲の上限および下限は、より小さな範囲内に独立して含まれてよく、また記述された範囲において具体的に除外される任意の限度次第で本発明に包含される。記述される範囲が限度の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限度のいずれかまたは両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0038】
別様に定義されていない限り、本明細書において用いられるすべての技術的および科学的な用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実践または試験において、本明細書において記載されるものと同様または均等の任意の方法および材料を使用することもできるが、代表的な例示的な方法および材料がここで記載される。
【0039】
本明細書で引用しているすべての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が参照により組み入れられるために具体的かつ個々に示されているかのように参照により本明細書に組み入れられ、刊行物が関連するものとして引用されている方法および/または材料を開示および記載するために参照により本明細書に組み入れられる。いかなる刊行物の引用も出願日前の刊行物の開示を目的とするものであり、本発明がこのような刊行物に先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供された刊行物の日付は、実際の刊行日と異なる場合があり、実際の刊行日は独立して確認する必要があり得る。
【0040】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形(a, an, the)は、文脈上はっきりと別様に述べられていない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲はあらゆる任意の要素を除外するように起案されている場合があることにもさらに留意されたい。そのため、この記載は、特許請求の範囲の要素の記述に関連した「もっぱら(solely)」や「のみ(only)」などの排他的な用語の使用、または「否定的な」限定の使用のための先の記載としての役割を果たすことが意図されている。
【0041】
当業者には本開示を読めば明らかなことであるが、本明細書で記載および例示されている個々の態様のそれぞれは、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく他のいくつかの態様のいずれかの特徴と容易に分離または組み合わせされ得る別々の構成要素および特徴を有する。記述された方法はいずれも、記述された事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
【0042】
共鳴ラマン分光法
上で概要を述べたように、本開示の局面は、共鳴ラマン分光法のための方法を含む。特定の態様による方法は以下の工程を含む。第1の照射強度および第2の照射強度で単色光源を用いてサンプルを照射する工程、第1の照射強度および第2の照射強度における共鳴ラマン散乱および蛍光散乱の強度のうちの1つまたは複数の強度を判定する工程、第1の照射強度から第2の照射強度への照射強度の変化に応じた共鳴ラマン散乱の強度および蛍光散乱の強度のうちの1つまたは複数の変化率を計算する工程、ならびにサンプルの分光応答を判定するために、共鳴ラマン散乱の強度の変化率および蛍光散乱の強度の変化率のうちの1つまたは複数を単色光源による照射強度の変化率と比較する工程。
【0043】
特定の態様による方法の実施において、サンプルは単色光源で照射される。本明細書において「単色」という用語は、狭い帯域幅の光照射を出力する光源を指すその従来の意味で使用される。複数の態様において、単色光源は、例えば、25nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下の範囲など、および2nm以下を含む狭い波長範囲を有する光を出力する。特定の態様において、単色光源は、単一波長の光(例えば、532nmの光)を出力する。レーザーまたは単一波長発光ダイオードなど、任意の好都合な単色光源を使用することができる。特定の態様において、光源は、照射帯域幅を単一波長に狭める光学調整コンポーネントと光通信する広帯域光源である。例えば、対象の方法による共鳴ラマン分光法のためのサンプルの単色光照射は、1つまたは複数の光学バンドパスフィルター、回折格子、モノクロメーター、またはそれらの任意の組み合わせに結合された広帯域光源を使用して、例えば、広帯域ハロゲンランプ、重水素アークランプ、キセノンアークランプ、安定化ファイバー結合型広帯域光源、連続スペクトルの広帯域LED、スーパールミネッセント発光ダイオード、半導体発光ダイオード、広域スペクトルLED白色光源、またはマルチLED型白色光源などを使用して実現することができる。
【0044】
特定の態様において、サンプルはレーザーで照射される。一部の場合において、レーザーは連続波レーザーである。他の場合において、レーザーはパルスレーザーである。特定の場合において、レーザーは、紫外線ダイオードレーザー、可視光ダイオードレーザー、および近赤外線ダイオードレーザーなどのダイオードレーザーである。一部の場合において、単色光源は、例えば、405nm~875nm、450nm~800nm、500nm~650nmなど、および525nm~625nmを含む375nm~1000nmの波長の光を出力するダイオードレーザーである。他の場合において、レーザーは固体レーザーなどのパルスレーザーである。特定の場合において、単色光源は、例えば、405nm~875nm、450nm~800nm、500nm~650nmなど、および525nm~625nmを含む375nm~1000nmの波長の光を出力する固体レーザーである。他の適切なレーザーは、他のレーザータイプの中でも、ヘリウムネオン(HeNe)レーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、キセノンイオンレーザー、窒素レーザー、二酸化炭素レーザー、一酸化炭素レーザー、エキシマレーザー、フッ化水素レーザー、フッ化重水素レーザー、酸素ヨウ素レーザー、気相ヨウ素レーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウム水銀レーザー、ヘリウム銀レーザー、ストロンチウム蒸気レーザー、ネオン銅レーザー、銅蒸気レーザー、金蒸気レーザー、マンガン蒸気レーザー、ルビーレーザー、Nd:YAGレーザー、NdCrYAGレーザー、Er:YAGレーザー、Nd:YLFレーザー、Nd:YVO4レーザー、Nd:YCa4O(BO33レーザー、Nd:ガラスレーザー、チタンサファイアレーザー、ツリウムYAGレーザー、イッテルビウムYAGレーザー、Yb2O3レーザー、イッテルビウム添加ガラスレーザー、ホルミウムYAGレーザー、クロムZnSeレーザー、セリウム添加フッ化リチウム・ストロンチウム・アルミニウムレーザー、プロメチウム147添加リン酸塩ガラスレーザー、クロム添付クリソベリルレーザー、エルビウム添加およびエルビウムイッテルビウム共添加ガラスレーザー、三価ウラン添加フッ化カルシウムレーザー、サマリウム添加フッ化カルシウムレーザー、GaNレーザー、InGaNレーザー、AlGaInPレーザー、AlGaAsレーザー、InGaAsPレーザーを含み得るがこれらに限定されない。特定の態様において、単色光源は、532nmの光を出力する2倍波ネオジウム添加イットリウム・アルミニウム・ガーネットである。
【0045】
一部の態様において、サンプルは連続的に照射される。他の態様において、サンプルは、単色光源によって、例えば、0.001ミリ秒以上、0.005ミリ秒以上、0.01ミリ秒以上、0.05ミリ秒以上、0.1ミリ秒以上、0.5ミリ秒以上、1ミリ秒以上、5ミリ秒以上、10ミリ秒以上、100ミリ秒以上、1000ミリ秒以上、5秒以上、15秒以上、30秒以上、60秒以上、100秒以上、200秒以上、300秒以上、400秒以上、500秒以上、1000秒以上など、および1500秒以上を含む離散間隔で、または他の何らかの間隔で照射される。各間隔の間の時間は異なってもよく、例えば、0.005ミリ秒以上、0.01ミリ秒以上、0.05ミリ秒以上、0.1ミリ秒以上、0.5ミリ秒以上、1ミリ秒以上、5ミリ秒以上、10ミリ秒以上、100ミリ秒以上など、および1000ミリ秒以上を含む0.001ミリ秒以上であってもよい。
【0046】
特定の態様において、単色光源は、サンプルが周期的な閃光で照らされるストロボ光源である。例えば、ストロボ光の周波数は、例えば、0.05kHz以上、0.1kHz以上、0.5kHz以上、1kHz以上、2.5kHz以上、5kHz以上、10kHz以上、25kHz以上、50kHz以上など、および100kHz以上を含む0.01kHz以上であってもよい。
【0047】
サンプルは、十分な共鳴ラマン散乱および/または蛍光散乱を取得するために、例えば、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、10回以上、25回以上など、および50回以上を含む1回以上サンプルを照射するなど、任意の数の間隔で照射されてもよい。
【0048】
光源や光学部品(レンズ、ミラー、コリメーターなど)の種類に応じて、サンプルは、例えば、サンプルから2.5mm以上、5mm以上、10mm以上、15mm以上、25mm以上、50mm以上、100mm以上、500mm以上、1000mm以上、2500mm以上、5000mm以上など、および10000mm以上を含むサンプルから1mm以上の距離などの任意の適切な距離から単色光源により照射され得る。同様に、サンプルは、例えば、5°~90°、15°~85°、20°~80°、25°~75°など、および30°~60°を含む任意の適切な角度から単色光源により照射され得る。
【0049】
上で概要を述べたように、方法は、1つまたは複数の波数において共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度を判定する工程を含む。共鳴ラマン散乱は、発色団に応じて、例えば、250cm-1~1900cm-1、300cm-1~1800cm-1、350cm-1~1700cm-1など、および400nm~1600cm-1を含む200cm-1~2000cm-1の範囲の任意の適切な波数で検出され得る。特定の態様において、発色団はリコピンであり、共鳴ラマン散乱は、1512cm-1、1515cm-1、1525cm-1、および1535cm-1のうちの1つまたは複数において検出および測定される。他の態様において、方法はまた、例えば、1750cm-1~3750cm-1、2000cm-1~3500cm-1など、および3000cm-1を含む1500cm-1~4000cm-1の範囲にある1つまたは複数の波数で蛍光を検出する工程を含む。
【0050】
対象の方法(以下でより詳細に説明する)による、サンプルからの光(例えば、共鳴ラマン散乱、蛍光)を検出するための持続時間は、例えば、30秒~1750秒、45秒~1500秒、60秒~1250秒、120秒~1000秒、200秒~800秒など、および400秒~600秒を含む10秒~2000秒の範囲であり得る。
【0051】
サンプルからの光(例えば、共鳴ラマン散乱、蛍光)は、他の光検出器の中でも、アクティブピクセルセンサー(APS)、4分割フォトダイオード、ウェッジ型検出器、イメージセンサー、電荷結合素子(CCD)、増強電荷結合素子(ICCD)、発光ダイオード、フォトンカウンター、ボロメーター、焦電検出器、フォトレジスター、太陽電池、フォトダイオード、光電子増倍管、フォトトランジスター、量子ドット光伝導体またはフォトダイオードなど、およびそれらの組み合わせの光センサーまたは光検出器を含むがこれらに限定されない任意の好都合な検出プロトコルによって検出され得る。特定の態様において、サンプルからの光(例えば、共鳴ラマン散乱、蛍光)は、1つまたは複数のCCDで検出される。
【0052】
本明細書に記載の分光法(例えば、非線形共鳴ラマン分光法、蛍光分光法)は、対象の方法の際の温度変化が、例えば、4.5℃以下、4℃以下、3.5℃以下、3℃以下、2.5℃以下、2℃以下、1.5℃以下、1℃以下、0.5℃以下、0.1℃以下、0.05℃以下、0.01℃以下、0.005℃以下、0.001℃以下、0.0001℃以下、0.00001℃以下など、および0.000001℃以下を含む5℃以下などの一定温度を維持しながら行われ得る。温度は、他の種類の温度制御プロトコルの中でも、ヒートシンク、ファン、排気ポンプ、通気口、冷凍、冷却剤、熱交換、ペルチェ素子または抵抗加熱素子、およびこれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の好都合なプロトコルによって制御され得る。
【0053】
一部の態様において、サンプルは、1つまたは複数の光学調整コンポーネントを通して照射される。「光学調整」とは、単色光源からの光をサンプルへ当てる前に変化させる、または調整することを意味する。例えば、光学調整は、光ビームのプロファイルを変えること、光ビームの焦点を変えること、ビーム伝播の方向を変えること、または光ビームをコリメートすることであり得る。一部の場合において、光学調整は光をコリメートすることを含む。「コリメート」という用語は、光の伝播の共線性を光学的に調整すること、または伝播の共通軸からの光による広がりを抑制することを指す従来の意味で使用される。一部の場合において、コリメートは、光ビームの空間断面積を狭くすることを含む。他の場合において、光学調整は、例えば、5°以上、10°以上、15°以上、20°以上、25°以上、30°以上、45°以上、60°以上、75°以上など、および90°以上光の伝播方向を変えることも含む光ビームの伝播を1°以上変えることなど、光ビームの方向を変えることを含む。さらに他の場合において、光学調整は、例えば、10%以上、25%以上、50%以上など、および75%以上の寸法の縮小を含む寸法を5%以上縮小することなど、光の寸法(例えば、ビームスポット)を縮小するための縮小プロトコルである。
【0054】
光学調整コンポーネントは、光ビームに所望の変化を与える任意の好都合な装置または構造であり得、レンズ、ミラー、ビームスプリッター、コリメート光学系(例えば、レンズ)、ピンホール、スリット、回折格子、光屈折器、およびそれらの任意の組み合わせを含み得るがこれらに限定されない。以下でより詳細に説明するように、対象のシステムは、例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上など、および5つ以上の光学調整コンポーネントを含む1つまたは複数の光学調整コンポーネントを必要に応じて含み得る。
【0055】
特定の態様において、光検出システムは、サンプルホルダーに隣接して配置されたコリメーターを含む。コリメーターは、1つまたは複数のミラーもしくは湾曲レンズまたはこれらの組み合わせなど、任意の好都合なコリメートプロトコルとすることができる。例えば、コリメーターは、特定の場合において、単一のコリメートレンズである。他の場合において、コリメーターはコリメートミラーである。さらに他の場合において、コリメーターは2つのレンズを含む。さらに他の場合において、コリメーターはミラーおよびレンズを含む。コリメーターが1つまたは複数のレンズを含む場合、各コリメートレンズの焦点距離は、例えば、6mm~475mm、7mm~450mm、8mm~425mm、9mm~400mm、10mm~375mm、12.5mm~350mmなど、および15mm~300mmの範囲である焦点距離を含む5mm~500mmの範囲で変わり得る。特定の態様において、焦点距離は、例えば、405mm~475mm、410mm~450mmなど、および410mm~425mm、例えば410mmまたは420mmを含む400mm~500mmの範囲である。
【0056】
複数の態様において、サンプルは、サンプルホルダー、例えばサンプル容器内で照射される。サンプルホルダーは、サンプルを照射し、共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数を検出するための任意の適切な形状の基板または容器であり得る。一部の態様において、サンプルホルダーは平面基板(例えば、顕微鏡スライド)である。他の態様において、サンプルホルダーは、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを有するマイクロ流体デバイスである。さらに他の態様において、サンプルホルダーは、ある断面形状を有する容器であり、関心対象の断面形状は、直線断面形状、例えば、正方形、長方形、台形、三角形、六角形など、曲線断面形状、例えば、円、楕円など、および不規則形状、例えば、平面状の上部に結合された放物線状の下部などを含むがこれらに限定されない。サンプルホルダーのサイズは、照射されるサンプルの体積によって異なり得、関心対象のホルダーの長さは、例えば、10mm~90mm、15mm~85mm、20mm~80mm、25mm~75mm、30mm~70mmなど、および35mm~65mmを含む5mm~100mmの範囲であり、関心対象のホルダーの幅(または容器が円筒形の場合の断面)は、例えば、10mm~90mm、15mm~85mm、20mm~80mm、25mm~75mm、30mm~70mmなど、および35mm~65mmを含む5mm~100mmである。複数の態様において、サンプルホルダーは、例えば0.5cm3~9cm3、1cm3~8cm3、1.5cm3~7cm3、2cm3~6cm3、2.5cm3~5cm3など、および3cm3~4cm3を含む0.1cm3~10cm3の体積を有し得る。
【0057】
サンプルホルダーは、光学ガラス、ホウケイ酸ガラス、Pyrexガラス、紫外線石英、赤外線石英、サファイアを含むがこれらに限定されない、所望の波長範囲を透過させる任意の透明材料から形成され得る。特定の態様において、サンプル容器は、(例えば、以下の実験セクションで説明するような)双性イオンシランコーティングなどの双性イオンコーティングを備えた壁を有するガラスである。サンプル容器は、例えば、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミドなどのプラスチック、またはポリエステルを含むこれらの熱可塑性物質のコポリマー、例えば他のポリマープラスチック材料の中でもPETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)などから形成され得、関心対象のポリエステルは、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ボトルグレードPET(モノエチレングリコール、テレフタル酸、およびイソフタル酸、シクロヘキセンジメタノールなどの他のコモノマーに基づいて作られたコポリマー)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、およびポリ(ヘキサメチレンテレフタレート)などのポリ(アルキレンテレフタレート);ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)などのポリ(アルキレンアジペート);ポリ(エチレンスベレート)などのポリ(アルキレンスベレート);ポリ(エチレンセバケート)などのポリ(アルキレンセバケート);ポリ(ε-カプロラクトン)およびポリ(β-プロピオラクトン);ポリ(エチレンイソフタレート)などのポリ(アルキレンイソフタレート);ポリ(エチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレート)などのポリ(アルキレン2,6-ナフタレンジカルボキシレート);ポリ(エチレンスルホニル-4,4'-ジベンゾエート)などのポリ(アルキレンスルホニル-4,4'-ジベンゾエート);ポリ(p-フェニレンエチレンジカルボキシレート)などのポリ(p-フェニレンアルキレンジカルボキシレート);ポリ(トランス-1,4-シクロヘキサンジイルエチレンジカルボキシレート)などのポリ(トランス-1,4-シクロヘキサンジイルアルキレンジカルボキシレート);ポリ(1,4-シクロヘキサン-ジメチレンエチレンジカルボキシレート)などのポリ(1,4-シクロヘキサン-ジメチレンアルキレンジカルボキシレート);ポリ([2.2.2]-ビシクロオクタン-1,4-ジメチレンエチレンジカルボキシレート)などのポリ([2.2.2]-ビシクロオクタン-1,4-ジメチレンアルキレンジカルボキシレート);(S)-ポリラクチド、(R,S)-ポリラクチド、ポリ(テトラメチルグリコリド)、およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)などの乳酸ポリマーおよびコポリマー;ビスフェノールA、3,3'-ジメチルビスフェノールA、3,3',5,5'-テトラクロロビスフェノールA、3,3',5,5'-テトラメチルビスフェノールAのポリカーボネート;ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)などのポリアミド;ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、例えばMylar(商標)ポリエチレンテレフタレートなどを含み得るが限定されない。
【0058】
複数の態様において、サンプルホルダーは、例えば、150nm~1400nm、200nm~1300nm、250nm~1200nm、300nm~1100nm、350nm~1000nm、400nm~900nmなど、および500nm~800nm、例えば532nmを含む100nm~1500nmの範囲の光を通すことができる。
【0059】
上で概要を述べたように、方法は、第1の照射強度および第2の照射強度で単色光源を用いてサンプルを照射し、第1の照射強度および第2の照射強度で共鳴ラマン散乱の強度を判定する工程を含む。共鳴ラマン散乱を検出するために、対象の方法において関心対象のサンプルは、単色光源による照射に応じて共鳴ラマン散乱を示す化合物を含む。一部の態様において、化合物は、単色光源の入射照射周波数が化合物の電子遷移にエネルギーが近い発色団である。例えば、方法は、特定の場合において、例えば、90cm-1以下、80cm-1以下、70cm-1以下、60cm-1以下、50cm-1以下、40cm-1以下、30cm-1以下、25cm-1以下、20cm-1以下、15cm-1以下、10cm-1以下、5cm-1以下、4cm-1以下、3cm-1以下、2cm-1以下、1cm-1以下、0.5cm-1以下、0.1cm-1以下、0.05cm-1以下、0.01cm-1以下など、およびサンプル中の発色団の電子遷移から0.001cm-1以下の周波数を有する単色光源で照射する工程を含む、サンプル中の発色団の電子遷移から100cm-1以下の周波数を有する単色光源でサンプルを照射する工程を含む。
【0060】
照射の波長と単色光源の種類(例えば、レーザー)とに応じて、対象の方法のサンプル中の発色団が異なり得る。一部の態様において、発色団は、レーザー照射に応じて共鳴ラマン散乱を示す疎水性化合物である。一部の場合において、発色団はカロテンまたはカロテノイドである。例えば、関心対象のカロテノイドは、カロテン(例えば、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテン、ε-カロテン、リコピンなど)およびキサントフィル(例えば、ルテイン、ゼアキサンチン、ネオキサンチン、ビオラキサンチン、フラボキサンチン、α-およびβ-クリプトキサンチンなど)を含むがこれらに限定されない。特定の態様において、発色団はリコピンである。
【0061】
一部の態様において、発色団は、サンプル中の発色団の溶解度を高めるなどのために、サンプル中の別の成分に結合するものである。特定の場合において、発色団は疎水性であり、アルブミンタンパク質と非共有結合している。関心対象のアルブミンタンパク質は、ヒト血清アルブミン(HSA;遺伝子ID:213);ウシ血清アルブミン(BSA;遺伝子ID:280717);マウスアルブミン(遺伝子ID:11657);ラットアルブミン(遺伝子ID:24186);ヤギアルブミン(遺伝子ID:100860821);ロバアルブミン(遺伝子ID:106835108);ウマアルブミン(遺伝子ID:100034206);ラクダアルブミン(遺伝子ID:105080389または105091295)など、またはヒト血清アルブミン(HSA;遺伝子ID:213);ウシ血清アルブミン(BSA;遺伝子ID:280717);マウスアルブミン(遺伝子ID:11657);ラットアルブミン(遺伝子ID:24186);ヤギアルブミン(遺伝子ID:100860821);ロバアルブミン(遺伝子ID:106835108);ウマアルブミン(遺伝子ID:100034206);ラクダアルブミン(遺伝子ID:105080389または105091295)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質を含むがこれに限定されない。
【0062】
特定の態様において、本開示のサンプルは、2016年5月6日に出願された米国特許出願公開第2016/0324933号に記載されているものなど、アルブミンタンパク質と非共有結合している疎水性化合物(例えば、発色団)を含み、同米国特許出願公開の開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0063】
対象の方法のサンプルはまた、フリーラジカルスカベンジャーを含み得る。本明細書において「フリーラジカルスカベンジャー」という用語は、組成物中のフリーラジカルと反応する、複合体を形成する、または組成物中のフリーラジカルを除去する化合物を指すその従来の意味で使用される。対象の方法のフリーラジカルスカベンジャーは、抗酸化物質、酸素スカベンジャー、ガスイオンスカベンジャー、ヒドロキシルラジカルスカベンジャーなどであり得る。特定の態様において、フリーラジカルスカベンジャーはビリルビンまたはその誘導体、例えばpH7.2で水溶性ではない非抱合型ビリルビンである。
【0064】
一部の態様において、ビリルビンまたはその誘導体は、上記のアルブミンタンパク質などのタンパク質と非共有結合する。「非共有結合」という用語は、本明細書では、ビリルビンまたはその誘導体とタンパク質との相互作用を指す従来の意味で使用され、他のタイプの非共有結合の中でも、双極子-双極子結合、ファンデルワールス相互作用、イオン結合、イオン-双極子結合、水素結合を含み得る。一部の場合において、ビリルビンまたはその誘導体は、アルブミンタンパク質内に少なくとも部分的に位置する。特定の場合において、ビリルビンまたはその誘導体は、アルブミンタンパク質の結合部位に結合する。
【0065】
フリーラジカルスカベンジャーは、例えば、0.005μM~4.9μM、0.01μM~4.8μM、0.05μM~4.7μM、0.1μM~4.6μM、0.5μM~4.5μM、0.75μM~4μMなど、および0.75μM~1.5μM、例えば0.75μM~1.25μMを含む0.001μM~5μMの範囲で変化する量でサンプル中に存在し得る。特定の場合において、フリーラジカルスカベンジャーはビリルビンまたはその誘導体であり、例えば、0.005μM~4.9μM、0.01μM~4.8μM、0.05μM~4.7μM、0.1μM~4.6μM、0.5μM~4.5μM、0.75μM~4μMなど、および0.75μM~1.5μM、例えば0.75μM~1.25μMを含む0.001μM~5μMの量でサンプル中に存在する。
【0066】
一部の態様において、サンプルは還元物質を含む。本明細書において「還元物質」という用語は、酸化還元化学反応において別の化学種に対して電子を失う(「または供与する」)化合物を指すその従来の意味で使用される。特定の態様において、還元物質はグルタチオンまたはその誘導体である。
【0067】
還元物質は、0.001mg/mL~10mg/mLの範囲で変化する量でサンプル中に存在し得、0.005mg/mL~9mg/mL、0.01mg/mL~8mg/mL、0.05mg/mL~7mg/mL、0.1mg/mL~6mg/mLなど、例えば0.1mg/mL~1mg/mLである。特定の場合において、還元物質は、グルタチオンまたはその誘導体であり、0.001mg/mL~10mg/mLの量でサンプル中に存在し得、0.005mg/mL~9mg/mL、0.01mg/mL~8mg/mL、0.05mg/mL~7mg/mL、0.1mg/mL~6mg/mLなど、例えば0.1mg/mL~1mg/mLである。
【0068】
一部の態様において、サンプルは架橋物質を含む。一部の場合において、架橋物質は、ジスルフィドクロスリンカー(例えば、ジスルフィド結合をタンパク質上のシステイン基と交換するジスルフィド連結を有する化合物)であり得る。一部の場合において、架橋物質は、1つまたは複数のジスルフィド連結を有するグルタミン酸誘導体などのグルタミン酸誘導体であるコアを有する。特定の態様において、架橋物質は式(I):
の化合物であり、式中、
R1およびR2は、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールから独立に選択され、
X1およびX2は、N、O、またはSから独立に選択され、
R3は、水素、アルキル、置換アルキル、アミノ、ハロゲン、シアノ、アルコール、またはアルコキシである。
【0069】
一部の態様において、R1およびR2はヘテロアリールであり、X1およびX2はNであり、R3はアミノである。
【0070】
特定の態様において、架橋物質は式(DS-1)
の化合物である。
【0071】
架橋物質は、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が、例えば1:9~9:1、1:8~8:1、1:7~7:1、1:6~6:1、1:5~5:1、1:4~4:1、1:3~3:1など、および1:2~2:1を含む、1:10~10:1である量でサンプル中に存在し得る。特定の態様において、対象の方法のサンプルにおいて架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比は約1:2である。特定の態様によれば、方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の強度にわたってサンプルを一定期間照射する工程、ならびに共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度の変化率を判定する工程。これらの態様において、サンプルは、例えば、10秒~1500秒、30秒~1400秒、45秒~1300秒、60秒~1200秒、120秒~1000秒、200秒~800秒など、および400秒~600秒を含む任意の所望の期間照射され得る。一部の態様において、共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率が計算される。他の態様において、単色光源(例えば、レーザー)による照射強度の正規化された変化率も計算される。
【0072】
特定の態様において、方法は、サンプルとサンプルホルダー(例えば、サンプル容器の壁)の表面との界面においてサンプルを(例えば、上記のようにコリメーターを用いて単色光源を集束させることにより)照射する工程を含む。「界面」は、サンプルホルダーの表面(例えば、容器の壁)がサンプルと接触する空間を意味する。複数の態様において、対象の方法において単色光源によって照射される界面は、容器の壁の表面(すなわち、サンプルが容器と接触する場所)から約0.01mm~2mmに渡り得、例えば、0.02mm~1.9mm、0.03mm~1.8mm、0.04mm~1.7mm、0.05mm~1.6mm、0.06mm~1.5mm、0.07mm~1.4mm、0.08mm~1.3mm、0.09mm~1.2mm、0.1mm~1mm、例えば、サンプルホルダー(例えば、容器の壁)の表面から0.2mmなどである。これらの態様において、サンプルホルダー(例えば、ガラスバイアル)は、実質的に静止状態に維持され(例えば、振動、撹拌などがない)、単色光源によって照射される界面液層の速度は、ほぼゼロまたはゼロである。例えば、単色光源によって照射される界面サンプル層の液体速度は、例えば、10-3cm3/秒以下、10-4cm3/秒以下、10-5cm3/秒、10-6cm3/秒、10-7cm3/秒以下、10-8cm3/秒以下、10-9cm3/秒以下など、および10-10cm3/秒以下を含む10-2cm3/秒以下であり得る。特定の態様において、対象の方法において単色光源によって照射される界面層におけるサンプルの速度は0cm3/秒である。
【0073】
方法はまた、第1の照射強度から第2の照射強度への照射強度の変化に応じた共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度の変化率を計算すること、ならびに共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度の変化率を単色光源による照射強度の変化率と比較することにより、サンプルの分光応答を判定する工程を含む。一部の態様において、サンプルの分光応答は、サンプルの物理的経時変化を示す。他の態様において、サンプルの分光応答は、サンプルの化学的経時変化を示す。さらに他の態様において、サンプルの分光応答は、サンプル中の活発に代謝している微生物の存在を示す。
【0074】
複数の態様において、方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の強度にわたってサンプルを一定期間照射する工程、共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度の変化率を判定する工程、ならびに正味信号を判定するために、共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度の変化率を、単色光源による正規化された照射強度の変化率と比較する工程。正味信号を計算する工程において、方法は以下の工程をさらに含み得る。共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度の正規化された変化率と、照射強度の正規化された変化率とを計算する工程、ならびに正味の信号を判定するために、共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度の正規化された変化率を、照射強度の正規化された変化率と比較する工程。
【0075】
本開示の態様において、本明細書における「正規化された」という用語は、異なるスケールで測定された値を名目上共通のスケールに調整することを指すその従来の意味で使用される。例えば、正規化された値は、異なるデータセットに関して対応する正規化された値を比較できるようにし、総体的な影響の効果を失わせる。特定の態様において、正規化された変化率を判定することは、勾配(例えば、データセットの線形フィッティングの勾配)を時間=0で観測された絶対値で除することを含む。
【0076】
正規化された照射強度の範囲は、発色団および単色光源に応じて変わり得る。一部の態様において、単色光源はレーザーであり、レーザーの正規化された強度は、例えば、15%以上、25%以上、50%以上、75%以上、90%以上など、および99%以上を含む10%以上変化する。これらの態様において、レーザー強度の正規化された変化率は、例えば、-9×10-5毎秒から9×10-5毎秒、-8×10-5毎秒~8×10-5毎秒、-7×10-5毎秒~7×10-5毎秒、-6×10-5毎秒~6×10-5毎秒、-5×10-5毎秒~5×10-5毎秒、-4×10-5毎秒~4×10-5毎秒、-3×10-5毎秒~3×10-5毎秒、-2×10-5毎秒~2×10-5毎秒など、および-1×10-5毎秒~1×10-5毎秒を含む-10×10-5毎秒~10×10-5毎秒の範囲であり得る。共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率はまた、例えば、-9×10-5毎秒から9×10-5毎秒、-8×10-5毎秒~8×10-5毎秒、-7×10-5毎秒~7×10-5毎秒、-6×10-5毎秒~6×10-5毎秒、-5×10-5毎秒~5×10-5毎秒、-4×10-5毎秒~4×10-5毎秒、-3×10-5毎秒~3×10-5毎秒、-2×10-5毎秒~2×10-5毎秒など、および-1×10-5毎秒~1×10-5毎秒を含む-10×10-5毎秒~10×10-5毎秒の範囲で変わり得る。
【0077】
特定の態様による方法は、正味信号を用いてサンプル組成物を特徴づける工程を含む。例えば、サンプル組成物の変化を検出するため、または2つの組成物が等価な構成を有しているか異なる構成を有しているかを判定するために正味信号が使用され得る。特定の態様において、正味信号は、サンプル中に存在するガスの量を特徴づけるために使用される。他の態様において、正味信号は、活発に代謝している微生物がサンプル中に存在するか否かを判定するために使用され得る。
【0078】
一態様において、方法は以下の工程を含む。単色光源(例えば、レーザー)によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度における第1の変化率を判定する工程;ならびに単色光源によって複数の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関するラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度における変化率を判定する工程。第1のサンプルの正味信号は、共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度の正規化された変化率を、単色光源による第1のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することによって計算される。第2のサンプルの正味信号は、共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数の強度の正規化された変化率を、単色光源による第2のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することによって判定される。
【0079】
一部の態様において、第1のサンプルの正味信号と第2のサンプルの正味信号とは同じである。他の態様において、第1のサンプルの正味信号と第2のサンプルの正味信号とは異なる。一部の場合において、この差は、第1のサンプルと第2のサンプルとに存在するガス(例えば、二酸化炭素、酸素、メタン、窒素など)の量が異なることを示す。他の場合において、この差は、第1のサンプルと第2のサンプルとに存在するガスの種類が異なることを示す。さらに他の場合において、第1の正味信号と第2の正味信号との差は、可溶化ガス(すなわち、サンプル溶液に溶解したガス)の量が異なることを示す。
【0080】
共鳴ラマン散乱によりサンプル中の微生物の存在を判定する方法
本開示の局面はまた、共鳴ラマン散乱によりサンプル中の微生物(例えば、活発に代謝している微生物)の存在を判定する工程を含む。特定の態様による方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の強度にわたってサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算する工程;サンプルの共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源によるサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、サンプルの正味信号を計算する工程;およびサンプルの正味信号に基づいてサンプル中の微生物の存在を判定する工程。
【0081】
特定の態様による方法は以下の工程を含む。サンプルとリガンドを組み込んだアルブミンを含む試薬とをサンプルホルダーにおいて組み合わせる工程;不変の光強度または経時変化する光強度のいずれかでサンプルとサンプルホルダーの表面との界面において集束され、リガンドに吸収される単色光源でサンプルを照射する工程;複数の異なる時間に、照射されたサンプルからの散乱光を収集し、散乱光からのラマン信号および蛍光信号を測定する工程;サンプルに関するラマン信号および蛍光信号の強度の経時的な変化率を計算する工程;正味信号を取得するために、ラマン信号および蛍光信号の強度の計算された変化率を補正する工程;ならびに正味信号と1つまたは複数の所定の閾値との比較に基づいて、サンプル中の微生物の存在を判定する工程。
【0082】
一部の場合において、ラマン信号および蛍光信号の強度の変化率を補正する工程は、標準サンプルからのスペクトル出力を特徴づける工程を含む。他の場合において、ラマン信号の強度の変化率を補正する工程は、試薬からの蛍光出力を特徴づける工程を含む。
【0083】
特定の態様において、ラマン信号および蛍光信号の強度の変化率を補正する工程は以下の工程を含む。標準参照サンプルからの合計出力の変化率を判定する工程;および、共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、標準サンプルからの共鳴ラマン散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算する工程。
【0084】
他の態様において、ラマン信号および蛍光信号の強度の変化率を補正する工程は以下の工程を含む。標準参照サンプルからの蛍光散乱の強度の変化率を判定する工程;および、共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、標準サンプルからの蛍光散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算する工程。
【0085】
特定の態様において、サンプルの正味信号が所定の閾値を超えた場合に、微生物が存在すると判定される。サンプル中の発色団(例えば、アルブミンと非共有結合したリコピン)および微生物に応じて、閾値は、例えば、-0.5~-1.0×10-5/秒、-1~-2×10-5/秒など、-0.5~-4×10-5/秒の範囲で変わり得、正味信号が1である場合の所定の閾値を含む。一部の態様において、1つまたは複数の所定の閾値は、臨床的感染サンプルの濃度の下限の量で接種物を含む1つまたは複数の対照サンプルに対して上記の方法を実施することにより設定される。一部の態様において、サンプルの正味信号が、例えば、5%以上、10%以上、15%以上、25%以上、50%以上、75%以上など、および90%以上を含む、閾値の数値の1%以上閾値を超えた場合、微生物がサンプル中に存在すると判定される。特定の場合において、サンプルの正味信号が、例えば、3倍以上、5倍以上など、および10倍以上を含む、閾値を2倍以上超えた場合、微生物がサンプルに存在すると判断される。
【0086】
他の態様において、微生物の存在を判定することは、2つの異なるサンプルの正味信号を比較することを含む。一部の態様において、サンプルのうちの1つは、微生物を含まない参照サンプルである。これらの態様において、方法は以下の工程を含み得る。単色光源によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算する工程;第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第1のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第1のサンプルの正味信号を計算する工程;単色光源によって複数の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第2のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第2のサンプルの正味信号を計算する工程;ならびに第1のサンプルの正味信号を第2のサンプルの正味信号と比較することにより、第1のサンプルまたは第2のサンプルのうちの1つまたは複数における微生物の存在を判定する工程。
【0087】
一部の場合において、第2のサンプルの正味信号が第1のサンプルの正味信号よりも大きい場合、微生物が第2のサンプルに存在すると判定される。他の場合において、第1のサンプルの正味信号が第2のサンプルの正味信号よりも大きい場合、微生物が第1のサンプルに存在すると判定される。第1のサンプルが参照サンプルである場合、第2のサンプルの正味信号が参照サンプルの正味信号よりも大きい場合、微生物が第2のサンプルに存在すると判定される。
【0088】
蛍光によるサンプル中の微生物の存在を判定する方法
本開示の局面はまた、蛍光によりサンプル中の微生物(例えば、活発に代謝している微生物)の存在を判定する工程を含む。特定の態様による方法は以下の工程を含む。単色光源によりサンプルを一定期間照射し、該一定期間にわたってサンプルからの蛍光を検出する工程;サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、微生物の存在に起因する蛍光の変化率を計算する工程;および所定の閾値と比較したサンプルの蛍光の計算された変化に基づいて、サンプル中の微生物の存在を判定する工程。
【0089】
一部の態様において、サンプルは単色光源により複数の強度にわたって照射される。サンプルおよび対照によって生成される蛍光は、3000cm-1など、2500cm-1~3500cm-1で検出される。複数の態様において、対照およびサンプルは、アルブミンタンパク質と非共有結合する疎水性化合物を含む試薬組成物を含む。対照サンプルは、一部の場合において、試薬組成物を含み、微生物を含まない組成物である。例えば、対照は、微生物の存在しないサンプルと同じ成分を有する組成物である。一部の態様において、対照は、試薬組成物の成分のみを含む。他の態様において、対照は、試薬組成物の成分と微生物を含まない血漿とを含む。
【0090】
信号雑音比を計算する方法
本開示の局面はまた、非線形共鳴ラマン分光法における信号雑音比を計算するための方法を含む。一部の態様において、信号雑音比は、以下の工程により計算される。単色光源によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;第1の平均変化率を求めるために、第1のサンプルによる共鳴ラマン散乱の強度の平均変化率を計算する工程;第1の平均変化率の標準偏差を計算する工程;単色光源によって一定範囲の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;第2の平均変化率を求めるために、第2のサンプルによる共鳴ラマン散乱の強度の平均変化率を計算する工程;第2の平均変化率の標準偏差を計算する工程;信号の平均変化率を求めるために、第1の平均変化率から第2の平均変化率を減ずる工程;信号の標準偏差を求めるために、第1の標準偏差と第2の標準偏差とを加える工程;および共鳴ラマン応答の信号雑音比を判定するために、信号の平均変化率を信号の標準偏差で除する工程。
【0091】
一部の態様において、第1のサンプルはアルブミンタンパク質と非共有結合した疎水性化合物を含み、第2のサンプルはアルブミンタンパク質と非共有結合した疎水性化合物および微生物を含む。例えば、第1のサンプルはアルブミンタンパク質と非共有結合したリコピンを含むことができ、第2のサンプルはアルブミンタンパク質と非共有結合したリコピンおよび微生物を含むことができる。
【0092】
特定の態様において、方法は以下の工程を含む。第1のサンプルおよび第2のサンプルを、ビリルビンまたはその誘導体などのフリーラジカルスカベンジャーと接触させることにより、信号雑音比を高める工程。特定の態様において、フリーラジカルスカベンジャー(例えば、ビリルビンまたはその誘導体)は、例えば、10%以上、15%以上、25%以上、50%以上、75%以上、90%以上、95%以上、1.5倍以上、2倍上、3倍以上、5倍以上など、および10倍以上を含む、5%以上、信号雑音比を高める。
【0093】
フリーラジカルスカベンジャーは、これらの態様において、例えば、0.005μM~4.9μM、0.01μM~4.8μM、0.05μM~4.7μM、0.1μM~4.6μM、0.5μM~4.5μM、0.75μM~4μMなど、および0.75μM~1.5μM、例えば0.75μM~1.25μMを含む、0.001μM~5μMの範囲で変化する量で存在し得る。特定の場合において、ビリルビンまたはその誘導体を、例えば、0.005μM~4.9μM、0.01μM~4.8μM、0.05μM~4.7μM、0.1μM~4.6μM、0.5μM~4.5μM、0.75μM~4μMなど、および0.75μM~1.5μM、例えば0.75μM~1.25μMを含む0.001μM~5μMの量で第1のサンプルおよび第2のサンプルと接触させる。
【0094】
フリーラジカルスカベンジャー(例えば、ビリルビンまたはその誘導体)の量に応じて、第1および第2のサンプルを照射する期間は、例えば、10秒~2000秒、30秒~1750秒、45秒~1500秒、60秒~1250秒、120秒~1000秒、200秒~800秒など、および400秒~600秒で変わる。一部の態様において、フリーラジカルスカベンジャー(例えば、ビリルビンまたはその誘導体)は、0.75μM~約1.25μMの範囲の量で第1のサンプルおよび第2のサンプル中に存在し、第1のサンプルおよび第2のサンプルは600秒~900秒の期間照射される。一例では、フリーラジカルスカベンジャー(例えば、ビリルビンまたはその誘導体)は、約1μMの量で第1のサンプルおよび第2のサンプル中に存在し、第1のサンプルおよび第2のサンプルは600秒~900秒の期間照射される。別の例において、フリーラジカルスカベンジャー(例えば、ビリルビンまたはその誘導体)は、約1.5μMの量で第1のサンプルおよび第2のサンプル中に存在し、第1のサンプルおよび第2のサンプルは900秒~1200秒の期間照射される。
【0095】
熱ドリフトについて補正するための方法
本開示の局面はまた、非線形共鳴ラマン分光法において単色光源の熱ドリフトについて補正するための方法を含む。一部の態様において、単色光源はレーザーであり、対象の方法は、非線形共鳴ラマン分光法におけるレーザーの熱ドリフトについて補正する。
【0096】
特定の態様において、方法は、単色光源が熱ドリフトを示すか否かを最初に判定する工程を含む。これらの態様において、方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の強度にわたって参照組成物を一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程であって、参照組成物が、単色光源による照射強度の変化に応じて共鳴ラマン散乱の強度に変化を示さない参照化合物を含む、照射および判定工程;ならびに単色光源が熱ドリフトを呈しているかを判定するために、参照組成物に関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を、単色光源による参照組成物の照射強度の変化率と比較することにより、参照組成物の正味信号を判定する工程。
【0097】
これらの態様において、参照組成物は、NIST較正標準SRM 2242などの、照射強度の変化に応じて共鳴ラマン散乱の強度の変化を示さない参照化合物を含む。
【0098】
方法はまた、単色光源の熱ドリフトについて補正する工程を含む。レーザードリフトについて補正するために、方法は以下の工程を含み得る。単色光源によって複数の強度にわたってサンプルを一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;補正係数を生成するために、参照組成物からの出力の変化率を判定する工程;および単色光源の熱ドリフトについて補正するために、サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の判定された変化率から補正係数を減ずる工程。
【0099】
共鳴ラマン散乱を用いて抗微生物剤に対する微生物の感受性を特徴づけるための方法
本開示の局面はまた、共鳴ラマン散乱を用いて、抗微生物剤に対する微生物の感受性を判定するための方法を含む。一部の態様において、方法は、抗微生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)(すなわち、微生物の増殖を阻止する抗微生物剤の最低濃度)を判定する工程を含む。他の態様において、方法は、抗微生物剤の最小殺菌濃度(MBC)(すなわち、微生物を殺すのに必要な抗微生物剤の最低濃度)を判定する工程を含む。
【0100】
複数の態様において、方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の強度にわたって、微生物および抗微生物剤をそれぞれ含む複数のサンプルを一定期間照射し、各照射されたサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程であって、各サンプルが同じ濃度の微生物および異なる濃度の抗微生物剤を含む、照射および判定工程;各サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による各サンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、各サンプルの正味信号を判定する工程;ならびに複数のサンプルの正味信号に基づいて、抗微生物剤に対する微生物の感受性を判定する工程。
【0101】
一部の態様において、方法は、各サンプルについて正味信号を比較する工程をさらに含む。例えば、各サンプルについて正味信号を比較する工程は、各サンプルの抗微生物剤の濃度の対数の関数として各サンプルの正味信号をプロットする工程を含み得る。これらの態様において、方法は以下の工程をさらに含み得る。正味信号の低下を示す抗微生物剤の濃度および正味信号の上昇を示す抗微生物剤の濃度のうちの1つまたは複数を判定する工程。一部の態様において、プロット上の正味信号の低下を最初に示す抗微生物剤の濃度は、微生物に対する抗微生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)であると判定される。他の態様において、プロット上の正味信号の上昇を示す抗微生物剤の濃度は、微生物に対する抗微生物剤の最小殺菌濃度(MBC)であると判定される。一部の態様において、方法は、各サンプルの正味信号に基づいて各サンプル中の微生物の代謝活性を判定する工程を含む。例えば、方法は以下の工程を含み得る。代謝活性の低下を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程、または代謝活性の上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程。これらの態様において、抗微生物剤の最小発育阻止濃度は、微生物の代謝活性の低下を示す抗微生物剤の濃度であると判定され得る。抗微生物剤の最小殺菌濃度は、微生物の代謝活性の上昇を示す抗微生物剤の濃度であると判定され得る。
【0102】
微生物の種類に応じて、関心対象の抗微生物剤は、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫薬、および抗微生物性駆除薬を含み得るがこれらに限定されない。適切な抗生物質は、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、ペフロキサシン、フレロキサシン、エンロフロキサシン、マルボフロキサシン、サラフロキサシン、オルビフロキサシン、ダノフロキサシンなどのフルオロキノロン系、ストレプトマイシン、ネチルマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、トブラマイシン、アミカシン、シソマイシン、リボスタマイシン、ジベカシン、フラマイセチン、ゲンタマイシンなどのアミノグリコシド系、ペニシリン、アンピシリン、アモキシシリン、ナフシリン、オキサシリン、およびチカルシリンなどのペニシリン系およびアミノペニシリン系、セフトリアキソン、セファレキシン、セファドロキシルなどのセファロスポリンおよびセフチオフルなどのセファロスポリン系、ペニシリンまたはアミノペニシリンと組み合わせて使用され得るクラブラン酸などのβ-ラクタム系、クラリスロマイシンおよびエリスロマイシンなどのマクロライド系、ならびにダクチノマイシン、クリンダマイシン、ナリジクス酸、クロラムフェニコール、リファンピン、クロファジミン、スペクチノマイシン、ポリミキシンB、コリスチン、ミノサイクリン、バンコマイシン、ハイグロマイシンBまたはC、フシジン酸、トリメトプリム、およびセフォタキシムなどの他の抗生物質を含むがこれらに限定されない。各サンプルバイアル中の抗微生物剤の濃度は、例えば、0.005μg/mL~900μg/mL、0.01μg/mL~800μg/mL、0.05μg/mL~700μg/mL、0.1μg/mL~500μg/mL、0.5μg/mL~250μg/mLなど、および1μg/mL~100μg/mLを含む0.001μg/mL~1000μg/mLの範囲で抗微生物剤の種類に応じて変わり得る。一部の態様において、サンプルにわたる抗微生物剤の量の範囲は、抗微生物剤の最小発育阻止濃度未満の濃度から抗微生物剤の最小殺菌濃度より高い濃度にまで及ぶ。例えば、抗微生物剤の量は、試験中のサンプルバイアルにおける量を増加することを含み得る。例えば、サンプルバイアルは、例えば、0.125μg/mL、0.25μg/mL、0.5μg/mL、1μg/mL、2μg/mL、4μg/mL、および8μg/mLの濃度など0.125μg/mL~8μg/mLの範囲の濃度の抗微生物剤を含み得る。
【0103】
本開示による抗微生物剤に対する微生物の感受性を特徴づけるための方法において、各サンプル中の微生物の量は同じであってもよく、10コロニー形成単位(CFU)以上であり得、例えば、11CFU以上、12CFU以上、13CFU以上、14CFU以上、15CFU以上、20CFU以上、25CFU以上など、および50CFU以上を含む。特定の態様において、方法は以下の工程を含み得る。所定量の微生物(例えば、100CFU)を有する微生物含有組成物を調製する工程、および等量の微生物含有組成物をサンプルのそれぞれにアリコートする工程。
【0104】
微生物および抗微生物剤は、特定の態様において、サンプルに単色光源を照射する前に、例えば、0.5分以上、1分以上、2分以上、5分以上、10分以上、15分以上、20分以上、30分以上、45分以上など、および60分以上を含む所定の期間インキュベートされる。例えば、抗微生物剤および微生物は、単色光源によって照射される前に、例えば、1分~55分、2分~50分、3分~45分、4分~40分、5分~35分など、および10分~30分、例えば20分を含む0.5分~60分の所定期間サンプル中でインキュベートされ得る。
【0105】
蛍光分光法により抗微生物剤に対する微生物の感受性を特徴づけるための方法
本開示の局面はまた、蛍光分光法により抗微生物剤に対する微生物の感受性を判定するための方法を含む。一部の態様において、方法は、抗微生物剤の最小発育阻止濃度(MIC)(すなわち、微生物の増殖を阻止する抗微生物剤の最低濃度)を判定する工程を含む。他の態様において、方法は、抗微生物剤の最小殺菌濃度(MBC)(すなわち、微生物を殺すのに必要な抗微生物剤の最低濃度)を判定する工程を含む。
【0106】
複数の態様において、方法は以下の工程を含む。単色光源によって、微生物および抗微生物剤をそれぞれのサンプルが有する複数のサンプルを一定期間照射し、該一定期間照射されたサンプルのそれぞれからの蛍光を検出する工程であって、各サンプルが同じ濃度の微生物および異なる濃度の抗微生物剤を有する、照射および検出工程;各サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、各サンプルにおける蛍光の変化率を計算する工程;ならびに複数のサンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて、抗微生物剤に対する微生物の感受性を判定する工程。一部の態様において、各サンプルは単色光源により複数の強度にわたって照射される。
【0107】
一部の態様において、方法は、各サンプルについて蛍光の計算された変化率を比較する工程をさらに含む。一部の場合において、比較する工程が、各サンプルの抗微生物剤の濃度の対数の関数として各サンプルの蛍光の計算された変化率をプロットする工程を含む。他の態様において、方法は、蛍光の変化率の低下または上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程をさらに含む。さらに他の態様において、方法は、各サンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて、各サンプル中の微生物の代謝活性を判定する工程をさらに含む。例えば、他の場合において、方法は、代謝活性の上昇または低下を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程を含む。
【0108】
サンプルおよび対照によって生成される蛍光は、3000cm-1など、2500cm-1~3500cm-1で検出される。複数の態様において、対照およびサンプルは、アルブミンタンパク質と非共有結合する疎水性化合物を含む試薬組成物を含む。対照サンプルは、一部の場合において、試薬組成物を含み、微生物を含まない組成物である。例えば、対照は、微生物の存在しないサンプルと同じ成分を有する組成物である。一部の態様において、対照は、試薬組成物の成分のみを含む。他の態様において、対照は、試薬組成物の成分と微生物を含まない血漿とを含む。
【0109】
共鳴ラマン散乱を用いて未知の微生物の表現型を判定するための方法
本開示の局面はまた、共鳴ラマン散乱を用いて未知の微生物の表現型を判定するための方法を含む。一部の態様において、方法は、未知の微生物が反応性代謝産物(例えば、フリーラジカル含有代謝産物)を産生するか否かを判定する工程を含む。特定の態様において、代謝産物は、架橋と反応するか架橋を開裂することができる反応種である。
【0110】
複数の態様において、方法は以下の工程を含む。単色光源によって複数の強度にわたって、微生物、架橋物質、およびアルブミンタンパク質を含むサンプルを単色光源で一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を決定する工程;サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源によるサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、サンプルの正味信号を計算する工程;ならびにサンプルの正味信号に基づいて架橋開裂を判定する工程であって、架橋開裂の程度が微生物の表現型を示す、判定工程。特定の態様において、サンプルの正味信号の経時的な増加は、微生物がアルブミンタンパク質における1つまたは複数の架橋を開裂する代謝産物を産生することを示す。
【0111】
例えば、関心対象の微生物が特定の態様においてペプチダーゼ酵素(例えば、グルタミン酸ペプチド結合を開裂するペプチダーゼ)を産生する場合、試験される微生物の種類に応じて、任意の適切な反応性架橋物質が使用され得る。一部の態様において、架橋物質は、ジスルフィドクロスリンカー(例えば、ジスルフィド結合をタンパク質と交換するジスルフィド連結を有する化合物)である。特定の場合において、架橋物質はまた、1つまたは複数のジスルフィド連結を有するグルタミン酸誘導体などのグルタミン酸誘導体でもある。特定の態様において、架橋物質は式(I):
の化合物であり、式中、
R1およびR2は、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールから独立に選択され、
X1およびX2は、N、O、またはSから独立に選択され、
R3は、水素、アルキル、置換アルキル、アミノ、ハロゲン、シアノ、アルコール、またはアルコキシである。
【0112】
一部の態様において、R1およびR2はヘテロアリールであり、X1およびX2はNであり、R3はアミノである。
【0113】
特定の態様において、架橋物質は式(DS-1)
の化合物である。
【0114】
架橋物質は、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が、例えば1:9~9:1、1:8~8:1、1:7~7:1、1:6~6:1、1:5~5:1、1:4~4:1、1:3~3:1など、および1:2~2:1を含む、1:10~10:1である量でサンプル中に存在し得る。特定の態様において、対象の方法のサンプルにおいて架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比は約1:2である。
【0115】
蛍光分光法により未知の微生物の表現型を判定するための方法
本開示の局面はまた、蛍光分光法を用いて未知の微生物の表現型を判定するための方法を含む。一部の態様において、方法は、未知の微生物が反応性代謝産物(例えば、フリーラジカル含有代謝産物)を産生するか否かを判定する工程を含む。特定の態様において、代謝産物は、架橋と反応するか架橋を開裂することができる反応種である。
【0116】
複数の態様において、方法は以下の工程を含む。微生物、架橋物質、およびアルブミンタンパク質を含むサンプルを一定期間単色光源で照射し、該一定期間にわたってサンプルからの蛍光を検出する工程;サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、蛍光の変化率を計算する工程;ならびにサンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて架橋開裂を判定する工程であって、架橋開裂の程度が微生物の表現型を示す、判定工程。一部の態様において、サンプルは単色光源により複数の強度にわたって照射される。
【0117】
サンプルおよび対照によって生成される蛍光は、3000cm-1など、2500cm-1~3500cm-1で検出される。複数の態様において、対照およびサンプルは、アルブミンタンパク質と非共有結合する疎水性化合物を含む試薬組成物を含む。対照サンプルは、一部の場合において、試薬組成物を含み、微生物を含まない組成物である。例えば、対照は、微生物の存在しないサンプルと同じ成分を有する組成物である。一部の態様において、対照は、試薬組成物の成分のみを含む。他の態様において、対照は、試薬組成物の成分と微生物を含まない血漿とを含む。
【0118】
非線形共鳴ラマン分光法のためのシステム
本開示の局面はまた、非線形共鳴ラマン分光法のためのシステムを含む。特定の態様によるシステムは、単色光源と、共鳴ラマン散乱を検出するための検出器と、プロセッサとを含み、プロセッサはプロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、メモリは命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、第1の照射強度および第2の照射強度で単色光源を用いてサンプルを照射すること;第1の照射強度および第2の照射強度における共鳴ラマン散乱の強度を判定すること;第1の照射強度から第2の照射強度への照射強度の変化に応じた共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算すること;ならびにサンプルの共鳴ラマン応答を判定するために、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を単色光源による照射強度の変化率と比較することをプロセッサに実施させる。関心対象のシステムはまた、(a)単色光源と、(b)光学調整コンポーネントと、(c)光検出器と、(d)プロセッサと、を含むシステムであって、プロセッサはプロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、メモリは命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、単色光源を第1の照射強度および第2の照射強度でサンプルホルダー中のサンプルに所定期間照射すること;光検出器を用いてサンプルからの散乱光を測定すること;第1の照射強度および第2の照射強度における共鳴ラマン散乱および蛍光散乱の強度を判定すること;共鳴ラマン散乱の強度および蛍光散乱の強度の変化率を計算すること;ならびに正味信号を取得するために、共鳴ラマン散乱の強度および蛍光散乱の強度の変化率を補正することをプロセッサに実施させる。
【0119】
上で概要を述べたように、システムは1つまたは複数の単色光源を含む。複数の態様において、関心対象の単色光源は、例えば、25nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下の範囲など、および2nm以下を含む、狭い波長範囲を有する光を出力する。特定の態様において、単色光源は、単一波長の光を出力する。一部の場合において、単色光源は単一波長レーザーである。他の場合において、単色光源は単一波長LEDである。
【0120】
特定の態様において、光源は、照射帯域幅を単一波長に狭める光学調整コンポーネントと光通信する広帯域光源である。例えば、対象の方法による共鳴ラマン分光法のためのサンプルの単色光照射は、1つまたは複数の光学バンドパスフィルター、回折格子、モノクロメーター、またはそれらの任意の組み合わせに結合された広帯域光源を使用して、例えば、広帯域ハロゲンランプ、重水素アークランプ、キセノンアークランプ、安定化ファイバー結合型広帯域光源、連続スペクトルの広帯域LED、スーパールミネッセント発光ダイオード、半導体発光ダイオード、広域スペクトルLED白色光源、またはマルチLED型白色光源などを使用して実現することができる。
【0121】
特定の態様において、システムはレーザーを含む。一部の場合において、レーザーは連続波レーザーである。他の場合において、レーザーはパルスレーザーである。特定の場合において、レーザーは、紫外線ダイオードレーザー、可視光ダイオードレーザー、および近赤外線ダイオードレーザーなどのダイオードレーザーである。一部の場合において、単色光源は、例えば、405nm~875nm、450nm~800nm、500nm~650nmなど、および525nm~625nmを含む375nm~1000nmの波長の光を出力するダイオードレーザーである。他の場合において、レーザーは固体レーザーなどのパルスレーザーである。特定の場合において、単色光源は、例えば、405nm~875nm、450nm~800nm、500nm~650nmなど、および525nm~625nmを含む、375nm~1000nmの波長の光を出力する固体レーザーである。他の適切なレーザーは、他のレーザータイプの中でも、ヘリウムネオン(HeNe)レーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、キセノンイオンレーザー、窒素レーザー、二酸化炭素レーザー、一酸化炭素レーザー、エキシマレーザー、フッ化水素レーザー、フッ化重水素レーザー、酸素ヨウ素レーザー、気相ヨウ素レーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウム水銀レーザー、ヘリウム銀レーザー、ストロンチウム蒸気レーザー、ネオン銅レーザー、銅蒸気レーザー、金蒸気レーザー、マンガン蒸気レーザー、ルビーレーザー、Nd:YAGレーザー、NdCrYAGレーザー、Er:YAGレーザー、Nd:YLFレーザー、Nd:YVO4レーザー、Nd:YCa4O(BO33レーザー、Nd:ガラスレーザー、チタンサファイアレーザー、ツリウムYAGレーザー、イッテルビウムYAGレーザー、Yb2O3レーザー、イッテルビウム添加ガラスレーザー、ホルミウムYAGレーザー、クロムZnSeレーザー、セリウム添加フッ化リチウム・ストロンチウム・アルミニウムレーザー、プロメチウム147添加リン酸塩ガラスレーザー、クロム添付クリソベリルレーザー、エルビウム添加およびエルビウムイッテルビウム共添加ガラスレーザー、三価ウラン添加フッ化カルシウムレーザー、サマリウム添加フッ化カルシウムレーザー、GaNレーザー、InGaNレーザー、AlGaInPレーザー、AlGaAsレーザー、InGaAsPレーザーを含み得るがこれらに限定されない。特定の態様において、単色光源は、532nmの光を出力する2倍波ネオジウム添加イットリウム・アルミニウム・ガーネットである。
【0122】
一部の態様において、システムは、レーザーに光学的に連結された光学調整コンポーネントを含む。「光学調整」は、レーザー光がサンプルに伝わる前に所望通りに変えられることを意味する。例えば、システムは、1つまたは複数のレンズ、コリメーター、ピンホール、ミラー、ビームチョッパー、スリット、回折格子、フィルター、光屈折器、およびそれらの任意の組み合わせを含み得る。特定の態様において、光学調整コンポーネントは波長分離器である。本明細書において「波長分離器」という用語は、多色光をその成分波長に分離するための光学プロトコルを指すその従来の意味で使用される。特定の態様によれば、波長分離は、多色光の特定の波長または波長範囲を選択的に通す、または遮断することを含み得る。対象のコネクタの一部であり得る、または対象のコネクタと組み合わせられ得る関心対象の波長分離プロトコルは、他の波長分離プロトコルの中でも、色ガラス、バンドパスフィルター、干渉フィルター、ダイクロイックミラー、回折格子、モノクロメーター、およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0123】
一部の場合において、サンプルを照射するための単色光源はコリメーターに連結される。「コリメート」という用語は、光の伝播の共線性を光学的に調整すること、または伝播の共通軸からの光による広がりを抑制することを指す従来の意味で使用される。一部の場合において、コリメーターは、単色光源からの光ビームの空間断面積を狭めるように構成される。他の場合において、光学調整コンポーネントは、例えば、5°以上、10°以上、15°以上、20°以上、25°以上、30°以上、45°以上、60°以上、75°以上など、および90°以上光の伝播方向を変えることも含む単色光源からの光ビームの伝播を1°以上変えることなど、単色光源からの光ビームの方向を変えるように構成される。さらに他の場合において、光学調整は、例えば、10%以上、25%以上、50%以上など、および75%以上の寸法の縮小を含む寸法を5%以上縮小することなど、光の寸法(例えば、ビームスポット)を縮小するための縮小プロトコルである。
【0124】
特定の態様において、システムは、サンプルとサンプル容器の壁との界面においてサンプルを(例えば、上記のようにコリメーターを用いて単色光源を集束させることにより)照射するように構成される。「界面」は、容器の壁の表面が容器中のサンプルと接触する空間を意味する。複数の態様において、対象のシステムは、単色光源が、容器の壁の表面(すなわち、サンプルが容器と接触する場所)から約0.01mm~2mm、例えば、0.02mm~1.9mm、0.03mm~1.8mm、0.04mm~1.7mm、0.05mm~1.6mm、0.06mm~1.5mm、0.07mm~1.4mm、0.08mm~1.3mm、0.09mm~1.2mm、0.1mm~1mm、例えば容器の壁の表面から0.2mmなどの点における界面を照射するように構成され得る。これらの態様において、対象のシステムは、単色光源によって照射される界面液層の速度がほぼゼロまたはゼロであるように、サンプル容器(例えば、以下で説明するようなガラスバイアル)を、実質的に静止状態に維持する(例えば、振動、撹拌などがない)ように構成される。例えば、単色光源によって照射される界面サンプル層の液体速度は、例えば、10-3cm3/秒以下、10-4cm3/秒以下、10-5cm3/秒、10-6cm3/秒、10-7cm3/秒以下、10-8cm3/秒以下、10-9cm3/秒以下など、および10-10cm3/秒以下を含む、10-2cm3/秒以下であり得る。特定の態様において、対象のシステムは、対象の方法において単色光源によって照射された場合に界面層におけるサンプルの速度が0cm3/秒であるように構成される。
【0125】
上記のように、方法は、単色光でサンプルを照射し、共鳴ラマン散乱および蛍光の強度を判定する工程を含む。対象の方法を実施するためのシステムは、蛍光および共鳴ラマン散乱を検出するための1つまたは複数の検出器を含む。他の光検出器の中でも、アクティブピクセルセンサー(APS)、4分割フォトダイオード、ウェッジ型検出器、イメージセンサー、電荷結合素子(CCD)、増強電荷結合素子(ICCD)、発光ダイオード、フォトンカウンター、ボロメーター、焦電検出器、フォトレジスター、太陽電池、フォトダイオード、光電子増倍管、フォトトランジスター、量子ドット光伝導体またはフォトダイオードなど、およびそれらの組み合わせの光センサーまたは光検出器を含むがこれらに限定されない任意の好都合な光検出プロトコルが使用され得る。特定の態様において、システムは1つまたは複数のCCDを含む。
【0126】
対象のシステムが2つ以上の光検出器を含む場合、各光検出器は同じであっても異なるタイプの光検出器の組み合わせであってもよい。例えば、対象のシステムが2つの光検出器を含む場合、一部の態様において、第1の光検出器はCCD型デバイスであり、第2の光検出器はCMOS型デバイスである。他の態様において、第1および第2の光検出器の両方がCCD型デバイスである。さらに他の態様において、第1および第2の光検出器の両方がCMOS型デバイスである。さらに他の態様において、第1の光検出器はCCD型光検出器またはCMOS型デバイスであり、第2の光検出器は光電子増倍管である。さらに他の態様において、第1の光検出器および第2の光検出器は光電子増倍管である。
【0127】
検出器は、1つまたは複数の光学調整コンポーネントに光学的に連結され得る。例えば、システムは、1つまたは複数のレンズ、コリメーター、ピンホール、ミラー、ビームチョッパー、スリット、回折格子、フィルター、光屈折器、およびそれらの任意の組み合わせを含み得る。一部の態様において、検出器は、色ガラス、バンドパスフィルター、干渉フィルター、ダイクロイックミラー、回折格子、モノクロメーター、およびこれらの組み合わせなどの波長分離器に連結される。特定の態様において、サンプルからの共鳴ラマン散乱は、光ファイバー(例えば、光ファイバーリレーバンドル)で収集され、共鳴ラマン散乱は、光ファイバーを通して検出器表面に伝えられる。散乱光を検出器の活性表面に伝えるために、任意の光ファイバー光中継システムが使用され得る。
【0128】
特定の態様において、光検出システムは、サンプル容器に隣接して配置されたコリメーターを含む。コリメーターは、1つまたは複数のミラーもしくは湾曲レンズまたはこれらの組み合わせなど、任意の好都合なコリメート装置とすることができる。例えば、コリメーターは、特定の場合において、単一のコリメートレンズである。他の場合において、コリメーターはコリメートミラーである。さらに他の場合において、コリメーターは2つのレンズを含む。さらに他の場合において、コリメーターはミラーおよびレンズを含む。コリメーターが1つまたは複数のレンズを含む場合、各コリメートレンズの焦点距離は、例えば、6mm~475mm、7mm~450mm、8mm~425mm、9mm~400mm、10mm~375mm、12.5mm~350mmなど、および15mm~300mmの範囲である焦点距離を含む5mm~500mmの範囲で変わり得る。特定の態様において、焦点距離は、例えば、405mm~475mm、410mm~450mmなど、および410mm~425mm、例えば410mmまたは420mmを含む400mm~500mmの範囲である。
【0129】
複数の態様において、分光法(例えば、非線形共鳴ラマン分光法、蛍光分光法など)は、実質的に一定な温度で実施される。従って、対象のシステムは、システムの温度変化が、例えば、4.5℃以下、4℃以下、3.5℃以下、3℃以下、2.5℃以下、2℃以下、1.5℃以下、1℃以下、0.5℃以下、0.1℃以下、0.05℃以下、0.01℃以下、0.005℃以下、0.001℃以下、0.0001℃以下、0.00001℃以下など、および0.000001℃以下を含む、5℃以下などの実質的に一定な温度を維持するように構成される。複数の態様において、システムの温度は、システム温度を測定し、必要に応じて周囲条件を制御して所望のシステム温度を維持する温度制御サブシステムによって制御され得る。温度サブシステムは、他の種類の温度制御プロトコルの中でも、ヒートシンク、ファン、排気ポンプ、通気口、冷凍、冷却剤、熱交換、ペルチェ素子または抵抗加熱素子を含み得るがこれらに限定されない任意の好都合な温度制御プロトコルを含み得る。以下でより詳細に説明するように、一部の態様において、システムは、レーザーのスペクトルドリフトを所定の時間に測定し、温度の変化に応じてレーザーの熱ドリフトを計算するアルゴリズムを含む命令を含むメモリを有するプロセッサを含む。これらの態様によるシステムはまた、レーザーの測定された熱ドリフトに対する共鳴ラマン分光法の補正係数を計算するためのアルゴリズムも含む。
【0130】
関心対象のシステムはまた、単色光源でサンプルを照射するためのサンプルホルダーを含み得る。サンプルホルダーは、サンプルを照射し、共鳴ラマン散乱および蛍光散乱のうちの1つまたは複数を検出するための任意の適切な形状の基板または容器であり得る。一部の態様において、サンプルホルダーは平面基板(例えば、顕微鏡スライド)である。他の態様において、サンプルホルダーは、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを有するマイクロ流体デバイスである。さらに他の態様において、サンプルホルダーは、ある断面形状を有する容器であり、関心対象の断面形状は、直線断面形状、例えば、正方形、長方形、台形、三角形、六角形など、曲線断面形状、例えば、円、楕円など、および不規則形状、例えば、平面状の上部に結合された放物線状の下部などを含むがこれらに限定されない。サンプルホルダーのサイズは、照射されるサンプルの体積によって異なり得、関心対象のホルダーの長さは、例えば、10mm~90mm、15mm~85mm、20mm~80mm、25mm~75mm、30mm~70mmなど、および35mm~65mmを含む5mm~100mmの範囲であり、関心対象のホルダーの幅(または容器が円筒形の場合の断面)は、例えば、10mm~90mm、15mm~85mm、20mm~80mm、25mm~75mm、30mm~70mmなど、および35mm~65mmを含む5mm~100mmである。複数の態様において、サンプルホルダーは、例えば0.5cm3~9cm3、1cm3~8cm3、1.5cm3~7cm3、2cm3~6cm3、2.5cm3~5cm3など、および3cm3~4cm3を含む0.1cm3~10cm3の体積を有し得る。
【0131】
サンプルホルダーは、光学ガラス、ホウケイ酸ガラス、Pyrexガラス、紫外線石英、赤外線石英、サファイアを含むがこれらに限定されない、所望の波長範囲を透過させる任意の透明材料から形成され得る。特定の態様において、サンプル容器は、(例えば、以下の実験セクションで説明するような)双性イオンシランコーティングなどの双性イオンコーティングを備えた壁を有するガラスである。サンプル容器は、例えば、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミドなどのプラスチック、またはポリエステルを含むこれらの熱可塑性物質のコポリマー、例えば他のポリマープラスチック材料の中でもPETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)などから形成され得、関心対象のポリエステルは、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ボトルグレードPET(モノエチレングリコール、テレフタル酸、およびイソフタル酸、シクロヘキセンジメタノールなどの他のコモノマーに基づいて作られたコポリマー)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、およびポリ(ヘキサメチレンテレフタレート)などのポリ(アルキレンテレフタレート);ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)などのポリ(アルキレンアジペート);ポリ(エチレンスベレート)などのポリ(アルキレンスベレート);ポリ(エチレンセバケート)などのポリ(アルキレンセバケート);ポリ(ε-カプロラクトン)およびポリ(β-プロピオラクトン);ポリ(エチレンイソフタレート)などのポリ(アルキレンイソフタレート);ポリ(エチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレート)などのポリ(アルキレン2,6-ナフタレンジカルボキシレート);ポリ(エチレンスルホニル-4,4'-ジベンゾエート)などのポリ(アルキレンスルホニル-4,4'-ジベンゾエート);ポリ(p-フェニレンエチレンジカルボキシレート)などのポリ(p-フェニレンアルキレンジカルボキシレート);ポリ(トランス-1,4-シクロヘキサンジイルエチレンジカルボキシレート)などのポリ(トランス-1,4-シクロヘキサンジイルアルキレンジカルボキシレート);ポリ(1,4-シクロヘキサン-ジメチレンエチレンジカルボキシレート)などのポリ(1,4-シクロヘキサン-ジメチレンアルキレンジカルボキシレート);ポリ([2.2.2]-ビシクロオクタン-1,4-ジメチレンエチレンジカルボキシレート)などのポリ([2.2.2]-ビシクロオクタン-1,4-ジメチレンアルキレンジカルボキシレート);(S)-ポリラクチド、(R,S)-ポリラクチド、ポリ(テトラメチルグリコリド)、およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)などの乳酸ポリマーおよびコポリマー;ビスフェノールA、3,3'-ジメチルビスフェノールA、3,3',5,5'-テトラクロロビスフェノールA、3,3',5,5'-テトラメチルビスフェノールAのポリカーボネート;ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)などのポリアミド;ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、例えばMylar(商標)ポリエチレンテレフタレートなどを含み得るが限定されない。
【0132】
複数の態様において、サンプルホルダーは、例えば、150nm~1400nm、200nm~1300nm、250nm~1200nm、300nm~1100nm、350nm~1000nm、400nm~900nmなど、および500nm~800nm、例えば532nmを含む100nm~1500nmの範囲の光を通すことができる。上で概要を述べたように、システムは、上記の方法を実施するために保存された命令を含むメモリを有する1つまたは複数のプロセッサを含む。一部の態様において、メモリは命令を格納して含み、命令は、プロセッサによって実行された場合に、第1の照射強度および第2の照射強度で単色光源を用いてサンプルを照射すること;第1の照射強度および第2の照射強度における共鳴ラマン散乱の強度を判定すること;第1の照射強度から第2の照射強度への照射強度の変化に応じた共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算すること;ならびにサンプルの共鳴ラマン応答に対する変化を判定するために、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を単色光源による照射強度の変化率と比較することをプロセッサに実施させる。
【0133】
他の態様において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、単色光源によって複数の強度にわたってサンプルを一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定することをプロセッサに実施させる命令を含む。特定の場合において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、単色光源によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定すること;第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第1のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第1のサンプルの正味信号を計算すること;単色光源によって複数の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定すること;および第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第2のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第2のサンプルの正味信号を計算することをプロセッサに実施させる命令を含む。特定の態様において、メモリはまた、プロセッサによって実行された場合に、比較された正味信号に基づいて、第1のサンプルが第2のサンプルとは異なるガス組成を含むと判定することをプロセッサに実施させる命令を含む。他の態様において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、比較された正味信号に基づいて、活発に代謝している微生物を第1のサンプルまたは第2のサンプルが含んでいると判定することをプロセッサに実施させる命令を含む。
【0134】
複数の局面はまた、サンプル中の微生物の有無を判定するためのシステムを含む。特定の態様によるシステムは、プロセッサに動作可能に連結されたメモリを含むプロセッサを含み、メモリは、命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、単色光源によって複数の強度にわたってサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算すること;サンプルの共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源によるサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、サンプルの正味信号を計算すること;およびサンプルの正味信号に基づいてサンプル中の微生物の有無を判定することをプロセッサに実施させる。一部の場合において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、サンプルの正味信号が所定の閾値を超えた場合に微生物が存在すると判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む。閾値は、例えば、-0.5~-1×10-5/秒、-1~-2×10-5/秒など、-0.5~-4×10-5/秒の範囲で変わり得、正味信号が-1×10-5/秒である場合の所定の閾値を含む。一部の態様において、1つまたは複数の所定の閾値は、臨床的感染サンプルの濃度の下限の量で接種物を含む1つまたは複数の対照サンプルに対して上記の方法を実施することにより設定される。一部の態様において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、サンプルの正味信号が、例えば、5%以上、10%以上、15%以上、25%以上、50%以上、75%以上など、ならびに例えば、2倍以上、3倍以上、5倍以上など、および10倍以上を含む、90%以上を含む閾値の数値の1%以上閾値を超えた場合、微生物がサンプル中に存在すると判定することをプロセッサに実施させる命令を含む。
【0135】
特定の態様において、システムは、プロセッサに動作可能に連結されたメモリを含むプロセッサを含み、メモリは、命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、2つの異なるサンプルの正味信号を比較することによって微生物の存在を判定することをプロセッサに実施させる。一部の態様において、サンプルのうちの1つは、微生物を含まない参照サンプルである。これらの態様において、メモリは命令を含み、命令は、プロセッサによって実行された場合に、単色光源によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算すること;第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第1のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第1のサンプルの正味信号を計算すること;単色光源によって複数の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定すること;第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第2のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第2のサンプルの正味信号を計算すること;ならびに第1のサンプルの正味信号を第2のサンプルの正味信号と比較することにより、第1のサンプルまたは第2のサンプルのうちの1つまたは複数における微生物の有無を判定することをプロセッサに実施させる。一部の場合において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、第2のサンプルの正味信号が第1のサンプルの正味信号よりも大きい場合、微生物が第2のサンプルに存在すると判定することを、プロセッサに実施させる命令を含む。他の場合において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、第1のサンプルの正味信号が第2のサンプルの正味信号よりも大きい場合、微生物が第1のサンプルに存在すると判定することを、プロセッサに実施させる命令を含む。第1のサンプルが参照サンプルである場合、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、第2のサンプルの正味信号が参照サンプルの正味信号よりも大きい場合、微生物が第2のサンプルに存在すると判定することを、プロセッサに実施させる命令を含む。
【0136】
複数の局面はまた、非線形共鳴ラマン分光法における信号雑音比を計算するためのシステムを含む。特定の態様によるシステムは、プロセッサに動作可能に連結されたメモリを含むプロセッサを含み、メモリは、命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、単色光源によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定すること;第1の平均変化率を求めるために、第1のサンプルによる共鳴ラマン散乱の強度の平均変化率を計算すること;第1の平均変化率の標準偏差を計算すること;単色光源によって一定範囲の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定すること;第2の平均変化率を求めるために、第2のサンプルによる共鳴ラマン散乱の強度の平均変化率を計算すること;第2の平均変化率の標準偏差を計算すること;信号の平均変化率を求めるために、第1の平均変化率から第2の平均変化率を減ずること;信号の標準偏差を求めるために、第1の標準偏差と第2の標準偏差とを加えること;および共鳴ラマン応答の信号雑音比を判定するために、信号の平均変化率を信号の標準偏差で除することをプロセッサに実施させる。
【0137】
本開示の局面はまた、非線形共鳴ラマン分光法において単色光源の熱ドリフトについて補正するためのサブシステムを含む。対象のシステムがレーザーを含む場合、関心対象のサブシステムはレーザーの熱ドリフトについて補正するように構成される。特定の態様によるシステムは、プロセッサに動作可能に連結されたメモリを含むプロセッサを含み、メモリは、命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、単色光源によって複数の強度にわたって参照組成物を一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定することであって、参照組成物が、単色光源による照射強度の変化に応じて共鳴ラマン散乱の強度に変化を示さない参照化合物を含む、照射および判定すること;ならびに単色光源が熱ドリフトを呈しているかを判定するために、参照組成物に関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を、単色光源による参照組成物の照射強度の変化率と比較することにより、参照組成物の正味信号を計算することをプロセッサに実施させる。
【0138】
単色光源(例えば、レーザー)が熱ドリフトを示すことをシステムが判定する場合、システムは、非線形共鳴ラマン分光法における熱ドリフトについて補正するように構成され得る。これらの態様において、対象のシステムは、命令を有するメモリを含むことができ、命令は、プロセッサによって実行された場合に、単色光源によって一定範囲の強度にわたってサンプルを一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定すること;補正係数を生成するために、参照組成物の正味信号を、単色光源によるサンプルの照射強度の変化率に乗ずること;および単色光源の熱ドリフトについて補正するために、サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の判定された変化率から補正係数を減ずることをプロセッサに実施させる。
【0139】
複数の局面はまた、共鳴ラマン散乱を用いて抗微生物剤に対する微生物の抗微生物剤感受性を特徴づけるためのシステムを含む。特定の態様によるシステムは、プロセッサに動作可能に連結されたメモリを含むプロセッサを含み、メモリは、命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、単色光源によって複数の強度にわたって、微生物および抗微生物剤をそれぞれ含む複数のサンプルを一定期間照射し、各照射されたサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定することであって、各サンプルが同じ濃度の微生物および異なる濃度の抗微生物剤を含む、照射および判定すること;各サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による各サンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、各サンプルの正味信号を計算すること;ならびに複数のサンプルの計算された正味信号に基づいて、抗微生物剤に対する微生物の感受性を判定することをプロセッサに実施させる。一部の態様において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、各サンプルについて正味信号を比較することをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納して含む。一部の場合において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、各サンプルの抗微生物剤の濃度の対数の関数として各サンプルの正味信号をプロットすることをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納してさらに含む。一部の場合において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、正味信号の低下を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納して含む。例えば、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、正味信号の上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納して含み得る。
【0140】
他の態様において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、各サンプルの正味信号に基づいて、各サンプル中の微生物の代謝活性を判定することをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納して含む。例えば、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、代謝活性の低下を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる、または代謝活性の上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納して含み得る。
【0141】
複数の局面はまた、蛍光分光法を用いて抗微生物剤に対する微生物の抗微生物剤感受性を特徴づけるためのシステムを含む。特定の態様によるシステムは、プロセッサに動作可能に連結されたメモリを含むプロセッサを含み、メモリは、命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、単色光源によって、微生物および抗微生物剤をそれぞれ含む微生物を含む複数のサンプルを一定期間照射し、該一定期間照射されたサンプルのそれぞれからの蛍光を検出することであって、各サンプルが同じ濃度の微生物および異なる濃度の抗微生物剤を含む、照射および検出すること;各サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、各サンプルにおける蛍光の変化率を計算すること;ならびに複数のサンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて、抗微生物剤に対する微生物の感受性を判定することをプロセッサに実施させる。一部の態様において、システムは、単色光源によって複数の強度にわたって各サンプルを照射するように構成される。一部の態様において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、各サンプルについて蛍光の計算された変化率を比較することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む。これらの場合において、比較することは、各サンプルの抗微生物剤の濃度の対数の関数として各サンプルの蛍光の計算された変化率をプロットすることを含み得る。他の態様において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、蛍光の変化率の低下または上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む。さらに他の態様において、メモリは、プロセッサによって実行された場合に、代謝活性の低下または上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む。
【0142】
複数の局面はまた、共鳴ラマン散乱を用いてサンプル中の未知の微生物の表現型を判定するためのシステムを含む。特定の態様によるシステムは、プロセッサに動作可能に連結されたメモリを含むプロセッサを含み、メモリは、命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、単色光源によって複数の強度にわたって、微生物、架橋物質、およびアルブミンタンパク質を含むサンプルを単色光源で一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を決定すること;サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源によるサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、サンプルの正味信号を計算すること;ならびにサンプルの計算された正味信号に基づいて架橋開裂を判定することであって、架橋開裂の程度が微生物の表現型を示す、判定することをプロセッサに実施させる。
【0143】
複数の局面は、蛍光分光法を用いてサンプル中の未知の微生物の表現型を判定するためのシステムを含む。特定の態様によるシステムは、プロセッサに動作可能に連結されたメモリを含むプロセッサを含み、メモリは、命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、微生物、架橋物質、およびアルブミンタンパク質を含むサンプルを一定期間単色光源で照射し、該一定期間にわたってサンプルからの蛍光を検出すること;サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、蛍光の変化率を計算すること;ならびにサンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて架橋開裂を判定することであって、架橋開裂の程度が微生物の表現型を示す、判定することをプロセッサに実施させる。一部の態様において、システムは、単色光源によって複数の強度にわたってサンプルを照射するように構成される。
【0144】
一部の態様において、架橋物質は、ジスルフィドクロスリンカー(例えば、ジスルフィド結合をタンパク質と交換するジスルフィド連結を有する化合物)である。特定の場合において、架橋物質はまた、1つまたは複数のジスルフィド連結を有するグルタミン酸誘導体などのグルタミン酸誘導体である。特定の態様において、架橋物質は式(I):
の化合物であり、式中、
R1およびR2は、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールから独立に選択され、
X1およびX2は、N、O、またはSから独立に選択され、
R3は、水素、アルキル、置換アルキル、アミノ、ハロゲン、シアノ、アルコール、またはアルコキシである。
【0145】
一部の態様において、R1およびR2はヘテロアリールであり、X1およびX2はNであり、R3はアミノである。
【0146】
特定の態様において、架橋物質は式(DS-1)
の化合物である。
【0147】
架橋物質は、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が、例えば1:9~9:1、1:8~8:1、1:7~7:1、1:6~6:1、1:5~5:1、1:4~4:1、1:3~3:1など、および1:2~2:1を含む、1:10~10:1である量でサンプル中に存在し得る。特定の態様において、対象の方法のサンプルにおいて架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比は約1:2である。上述のように、対象のシステムは、本明細書に記載の方法を実施するための命令を有する、プロセッサに動作可能に結合されたメモリを含むプロセッサを含む。システムは、上記の命令を格納するための非一時的なコンピューター可読記憶媒体を含み得る。本明細書で説明する方法を実施するためのシステムの完全な自動化または部分的な自動化のために、コンピューター可読記憶媒体を1つまたは複数のコンピューターで使用することができる。特定の態様において、本明細書で説明される方法による命令は、「プログラミング」の形でコンピューター可読媒体にコード化することができ、本明細書で使用される「コンピューター可読媒体」という用語は、実行および処理のために命令およびデータをコンピューターに提供することに関与する任意の非一時的記憶媒体を指す。適切な非一時的記憶媒体の例は、このようなデバイスがコンピューターの内部にあるか外部にあるかを問わず、フロッピーディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROM、DVD-ROM、Blue-rayディスク、ソリッドステートディスク、およびネットワークアタッチトストレージ(NAS)を含む。情報を含むファイルは、コンピューター可読媒体に「格納」できる。「格納」とは、コンピューターが後日アクセスして取得できるように情報を記録することである。
【0148】
本明細書で説明されるコンピューター実施方法は、任意の数のコンピュータープログラミング言語のうちの1つまたは複数で記述され得るプログラミングを使用して実行され得る。このような言語は、例えば、Java(Sun Microsystems,Inc.,Santa Clara,CA)、Visual Basic(Microsoft Corp.,Redmond,WA)、C++(AT&T Corp.,Bedminster,NJ)、および多くの任意の他の言語を含む。
【0149】
コンピューター可読記憶媒体は、ディスプレイおよびオペレータ入力デバイスを有する1つまたは複数のコンピューターシステムで使用され得る。オペレータ入力デバイスは、例えば、キーボード、マウスなどであり得る。処理モジュールは、対象の方法の工程を実行するための命令が格納されたメモリにアクセスできるプロセッサを含む。処理モジュールは、オペレーティングシステム、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)コントローラー、システムメモリ、メモリストレージデバイス、入出力コントローラー、キャッシュメモリ、データバックアップユニット、他多くのデバイスを含み得る。プロセッサは、市販のプロセッサであってもよいし、入手可能である、またはこれから入手可能になる他のプロセッサの1つでもよい。プロセッサはオペレーティングシステムを実行し、オペレーティングシステムはファームウェアおよびハードウェアと周知の方法でインターフェースし、プロセッサがJava、Perl、C++、他の高水準言語または低水準言語、および当技術分野で知られているそれらの組み合わせなどの様々なプログラミング言語で記述され得る様々なコンピュータープログラムの機能を調整および実行できるようにする。オペレーティングシステムは、通常、プロセッサと連携して、コンピューターの他のコンポーネントの機能を調整および実行する。オペレーティングシステムはまた、すべて既知の技術に従って、スケジューリング、入出力制御、ファイルおよびデータ管理、メモリ管理、ならびに通信制御および関連サービスを提供する。
【0150】
技術的特徴
対象の方法の特定の技術的特徴を以下に示す。
【0151】
共鳴ラマンピークの変化率
共鳴ラマン分光法では、観測されたラマンバンドの強度は式1:
で表すことができ、
式中、Ioおよびνoはレーザーの強度および周波数であり、IRは周波数νmnで観測されるラマンバンドの強度である。また、分極率は、レーザー周波数の差および基底状態と励起状態との間のエネルギー差によって定義され得る。
【0152】
これらの基本的な項を使用すると、ラマンバンドの強度の変化率は、レーザーの強度の変化率および分極率の項の変化率に対応することがわかる。
【0153】
分極率の項
に変化がない場合、ラマンバンドの正規化された変化率は、レーザー強度の正規化された変化率に等しくなる。分極率の項がレーザー強度とともに変化する場合(例えば、励起状態がレーザー強度の変化により変化している場合)、または分極率の項が単独で変化する場合(例えば、励起状態が進行中の化学/物理反応により変化する場合)、2つの項は等しくならない。このシナリオでは、分極率の項に影響を与え得る変化を特徴づけるためにラマンピーク強度の変化率が使用され得る。
【0154】
態様を含め、本明細書に記載の発明の主題の局面は、単独で、または1つまたは複数の他の局面または態様と組み合わせて有益であり得る。当業者には本開示を読めば明らかなことであるが、個々に番号付けされた局面のそれぞれは、上述または以下の個々に番号付けられた局面のいずれかと使用または組み合わされ得る。これは、局面のすべてのこのような組み合わせのサポートを提供することが意図されており、以下に明示的に提示されている局面の組み合わせに限定されない。
【0155】
1.サンプルの共鳴ラマン応答を判定する方法であって、以下の工程を含む方法:
第1の照射強度および第2の照射強度で単色光源を用いてサンプルを照射する工程;
第1の照射強度および第2の照射強度における共鳴ラマン散乱の強度を判定する工程;
第1の照射強度から第2の照射強度への照射強度の変化に応じた共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算する工程;ならびに
サンプルの共鳴ラマン応答に対する変化を判定するために、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を単色光源による照射強度の変化率と比較する工程。
【0156】
2.サンプルの共鳴ラマン応答がサンプルの物理的経時変化を示す、1に記載の方法。
【0157】
3.サンプルの共鳴ラマン応答がサンプルの化学的経時変化を示す、1に記載の方法。
【0158】
4.サンプルの共鳴ラマン応答が、サンプル中の活発に代謝している微生物の存在を示す、1に記載の方法。
【0159】
5.単色光源がレーザーである、1~4のいずれかに記載の方法。
【0160】
6.サンプルが疎水性化合物とアルブミンタンパク質とを含む、1~5のいずれかに記載の方法。
【0161】
7.疎水性化合物がカロテノイドである、6に記載の方法。
【0162】
8.疎水性化合物がリコピンである、7に記載の方法。
【0163】
9.疎水性化合物がアルブミンタンパク質と非共有結合する、6~8のいずれかに記載の方法。
【0164】
10.サンプルがフリーラジカルスカベンジャーを含む、1~9のいずれかに記載の方法。
【0165】
11.フリーラジカルスカベンジャーがアルブミンタンパク質と非共有結合する、10に記載の方法。
【0166】
12.フリーラジカルスカベンジャーがビリルビンまたはその誘導体を含む、10~11のいずれかに記載の方法。
【0167】
13.ビリルビンまたはその誘導体が0.5μM~2μMの濃度でサンプル中に存在する、12に記載の方法。
【0168】
14.ビリルビンまたはその誘導体が0.25μM~1.75μMの濃度でサンプル中に存在する、12に記載の方法。
【0169】
15.サンプルが還元物質を含む、1~9のいずれかに記載の方法。
【0170】
16.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、15に記載の方法。
【0171】
17.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、15~16のいずれかに記載の方法。
【0172】
18.単色光源によって複数の照射強度にわたってサンプルを一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程を含む、1~17のいずれかに記載の方法。
【0173】
19.以下の工程を含む、1~17のいずれかに記載の方法:
単色光源によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;
第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第1のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第1のサンプルの正味信号を計算する工程;
単色光源によって複数の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;および
第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第2のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第2のサンプルの正味信号を計算する工程。
【0174】
20.第1のサンプルの計算された正味信号を第2のサンプルの計算された正味信号と比較する工程をさらに含む、18に記載の方法。
【0175】
21.比較された計算された正味信号に基づいて、第1のサンプルと第2のサンプルとが異なると判定する工程をさらに含む、20に記載の方法。
【0176】
22.比較された計算された正味信号に基づいて、第1のサンプルが第2のサンプルとは異なるガス組成を含むと判定する工程をさらに含む、20に記載の方法。
【0177】
23.比較された計算された正味信号に基づいて、活発に代謝している微生物を第1のサンプルまたは第2のサンプルが含んでいると判定する工程をさらに含む、20に記載の方法。
【0178】
24.サンプルがサンプル容器内で照射される、1~23のいずれかに記載の方法。
【0179】
25.サンプル容器がガラスバイアルである、24に記載の方法。
【0180】
26.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、25に記載の方法。
【0181】
27.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、26に記載の方法。
【0182】
28.サンプルがサンプルと容器の壁との界面において照射される、25~27のいずれかに記載の方法。
【0183】
29.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、28に記載の方法。
【0184】
30.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、29に記載の方法。
【0185】
31.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、30に記載の方法。
【0186】
32.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、29~31のいずれかに記載の方法。
【0187】
33.サンプルが架橋物質をさらに含む、1~32のいずれかに記載の方法。
【0188】
34.架橋物質がジスルフィドクロスリンカーである、33に記載の方法。
【0189】
35.架橋物質がグルタミン酸誘導体である、33~34のいずれかに記載の方法。
【0190】
36.架橋物質が式(I):
の化合物を含む、35に記載の方法。
【0191】
37.架橋物質が、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が1:10~10:1であるような量でサンプル中に存在する、33~36のいずれかに記載の方法。
【0192】
38.架橋物質が、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が約1:2であるような量でサンプル中に存在する、37に記載の方法。
【0193】
サンプル中の微生物を検出するための方法
1.サンプル中の微生物の存在を判定するための方法であって、以下の工程を含む方法:
単色光源によって複数の強度にわたってサンプルを一定期間照射し、サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算する工程;
サンプルの共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源によるサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、サンプルの正味信号を計算する工程;および
サンプルの計算された正味信号に基づいてサンプル中の微生物の存在を判定する工程。
【0194】
2.サンプルの計算された正味信号が所定の閾値を超えた場合に微生物が存在すると判定される、1に記載の方法。
【0195】
3.所定の閾値が、1の正味信号である、2に記載の方法。
【0196】
4.単色光源がレーザーである、1~3のいずれかに記載の方法。
【0197】
5.サンプルが、アルブミンタンパク質と非共有結合する疎水性化合物を含む、1~4のいずれかに記載の方法。
【0198】
6.フリーラジカルスカベンジャーをさらに含む、1~5のいずれかに記載の方法。
【0199】
7.フリーラジカルスカベンジャーがビリルビンまたはその誘導体を含む、6に記載の方法。
【0200】
8.ビリルビンまたはその誘導体が0.5μM~2μMの濃度で存在する、7に記載の方法。
【0201】
9.ビリルビンが0.25μM~1.75μMの濃度で存在する、7に記載の方法。
【0202】
10.サンプルが還元物質を含む、1~9のいずれかに記載の方法。
【0203】
11.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、10に記載の方法。
【0204】
12.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、10~11のいずれかに記載の方法。
【0205】
13.サンプルがサンプル容器内で照射される、1~12のいずれかに記載の方法。
【0206】
14.サンプル容器がガラスバイアルである、13に記載の方法。
【0207】
15.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、14に記載の方法。
【0208】
16.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、15に記載の方法。
【0209】
17.サンプルがサンプルと容器の壁との界面において照射される、14~16のいずれかに記載の方法。
【0210】
18.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、17に記載の方法。
【0211】
19.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、18に記載の方法。
【0212】
20.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、19に記載の方法。
【0213】
21.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、18~20のいずれかに記載の方法。
【0214】
22.サンプル中の微生物の存在を判定するための方法であって、以下の工程を含む方法:
単色光源によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算する工程;
第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第1のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第1のサンプルの正味信号を計算する工程;
単色光源によって複数の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;
第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第2のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第2のサンプルの正味信号を計算する工程;ならびに
第1のサンプルの正味信号を第2のサンプルの正味信号と比較することにより、第1のサンプルまたは第2のサンプルのうちの1つまたは複数における微生物の存在を判定する工程。
【0215】
23.第2のサンプルの計算された正味信号が第1のサンプルの計算された正味信号よりも大きい場合、微生物が第2のサンプルに存在すると判定される、22のいずれかに記載の方法。
【0216】
24.第1のサンプルの計算された正味信号が第2のサンプルの計算された正味信号よりも大きい場合、微生物が第1のサンプルに存在すると判定される、22のいずれかに記載の方法。
【0217】
25.単色光源がレーザーである、22~24のいずれかに記載の方法。
【0218】
26.サンプルが、アルブミンタンパク質と非共有結合する疎水性化合物を含む、22~25のいずれかに記載の方法。
【0219】
27.フリーラジカルスカベンジャーをさらに含む、26に記載の方法。
【0220】
28.フリーラジカルスカベンジャーがビリルビンまたはその誘導体を含む、27に記載の方法。
【0221】
29.ビリルビンまたはその誘導体が0.5μM~2μMの濃度で存在する、28に記載の方法。
【0222】
30.ビリルビンが0.25μM~1.75μMの濃度で存在する、28に記載の方法。
【0223】
31.サンプルが還元物質を含む、22~30のいずれかに記載の方法。
【0224】
32.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、31に記載の方法。
【0225】
33.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、31~32のいずれかに記載の方法。
【0226】
34.サンプルがサンプル容器内で照射される、22~33のいずれかに記載の方法。
【0227】
35.サンプル容器がガラスバイアルである、34に記載の方法。
【0228】
36.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、35に記載の方法。
【0229】
37.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、36に記載の方法。
【0230】
38.サンプルがサンプルと容器の壁との界面において照射される、34~37のいずれかに記載の方法。
【0231】
39.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、請求項38に記載の方法。
【0232】
40.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、39に記載の方法。
【0233】
41.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、39に記載の方法。
【0234】
42.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、39~41のいずれかに記載の方法。
【0235】
サンプル中の微生物の存在を判定するための方法
1.サンプル中の微生物の存在を判定するための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)サンプルとリガンドを組み込んだアルブミンを含む試薬とをサンプルホルダーにおいて組み合わせる工程;
(b)不変の光強度または経時変化する光強度のいずれかでサンプルとサンプルホルダーの表面との界面において集束され、リガンドに吸収される単色光源でサンプルを照射する工程;
(c)複数の異なる時間に、照射されたサンプルからの散乱光を収集し、該散乱光からのラマン信号および蛍光信号を測定する工程;
(d)サンプルに関するラマン信号および蛍光信号の強度の経時的な変化率を計算する工程;
(e)正味信号を取得するために、ラマン信号および蛍光信号の強度の計算された変化率を補正する工程;ならびに
(f)正味信号と1つまたは複数の所定の閾値との比較に基づいて、サンプル中の微生物の存在を判定する工程。
【0236】
2.1fの1つまたは複数の所定の閾値が、臨床的感染サンプルの濃度の下限の量で接種物を含む1つまたは複数の対照サンプルに対して請求項1に記載の方法を実施することにより設定される、1に記載の方法。
【0237】
3.リガンドがリコピンである、1に記載の方法。
【0238】
4.単色光源がレーザーである、1に記載の方法。
【0239】
5.レーザーが532nmでサンプルを照射する、4に記載の方法。
【0240】
6.ラマン信号および蛍光信号の強度の変化率を補正する工程が、標準サンプルからのスペクトル出力を特徴づける工程を含む、1に記載の方法。
【0241】
7.標準がNIST SRM 2242である、6に記載の方法。
【0242】
8.ラマン信号の強度の変化率を補正する工程が、試薬からの蛍光出力を特徴づける工程を含む、請求項1に記載の方法。
【0243】
9.リガンドを組み込む前に、試薬のアルブミンを還元物質で前処理する工程をさらに含む、1に記載の方法。
【0244】
10.アルブミンを還元物質で前処理する工程が、ジスルフィド結合を還元するのに十分である、9に記載の方法。
【0245】
11.還元物質がグルタチオンまたはビリルビンである、9に記載の方法。
【0246】
12.前処理されたアルブミンをジスルフィド架橋物質と接触させる工程をさらに含む、10に記載の方法。
【0247】
13.ジスルフィド架橋物質が、サンプル中の微生物によって産生される酵素または代謝産物によって開裂されるコアを含む、12に記載の方法。
【0248】
14.架橋物質が式(I):
の化合物を含む、10に記載の方法。
【0249】
15.サンプルホルダーがガラスバイアルである、1に記載の方法。
【0250】
16.ガラスバイアルの表面が、ガラス表面上のアルブミンの吸収を変えるコーティングを含む、15に記載の方法。
【0251】
17.コーティングが双性イオンコーティングである、16に記載の方法。
【0252】
18.試薬が抗微生物組成物を含む、1に記載の方法。
【0253】
19.以下の工程をさらに含む、18に記載の方法:
抗微生物濃度に対して正味信号をプロットする工程であって、
プロットの最小値が、抗微生物組成物の最小殺菌濃度を推定するために使用される、プロット工程;および
プロットにおけるブレークポイントが、抗微生物組成物の最小発育阻止濃度を推定するために使用されるプロット工程。
【0254】
非線形ラマン分光法の際のレーザー出力のドリフトについて補正するための方法
1.以下の工程を含む方法:
単色光源によって複数の強度にわたって参照組成物を一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程であって、参照組成物が、単色光源による照射強度の変化に応じて共鳴ラマン散乱の強度に変化を示さない参照化合物を含む、照射および判定工程;ならびに
単色光源が熱ドリフトを呈しているかを判定するために、参照組成物に関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を、単色光源による参照組成物の照射強度の変化率と比較することにより、参照組成物の正味信号を計算する工程。
【0255】
2.以下の工程をさらに含む、1に記載の方法:
単色光源によって一定範囲の強度にわたってサンプルを一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;
補正係数を生成するために、参照組成物の正味信号を、単色光源によるサンプルの照射強度の変化率に乗ずる工程;および
単色光源の熱ドリフトについて補正するために、サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の判定された変化率から補正係数を減ずる工程。
【0256】
3.単色光源がレーザーである、1~2のいずれかに記載の方法。
【0257】
4.レーザーが、532nmで照射する固体レーザーである、3に記載の方法。
【0258】
5.サンプルが、アルブミンタンパク質と非共有結合する疎水性化合物を含む、1~4のいずれかに記載の方法。
【0259】
6.フリーラジカルスカベンジャーをさらに含む、5に記載の方法。
【0260】
7.フリーラジカルスカベンジャーがビリルビンまたはその誘導体を含む、6に記載の方法。
【0261】
8.ビリルビンまたはその誘導体が0.5μM~2μMの濃度で存在する、7に記載の方法。
【0262】
9.ビリルビンが0.25μM~1.75μMの濃度で存在する、7に記載の方法。
【0263】
10.前記一定期間が200秒~1500秒である、1~9のいずれかに記載の方法。
【0264】
11.前記一定期間が600秒である、10に記載の方法。
【0265】
12.サンプルが還元物質を含む、1~11のいずれかに記載の方法。
【0266】
13.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、12に記載の方法。
【0267】
14.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、12~13のいずれかに記載の方法。
【0268】
抗微生物剤感受性を特徴づけるための方法
1.抗微生物剤に対する微生物の抗微生物剤感受性を判定する方法であって、以下の工程を含む方法:
単色光源によって複数の強度にわたって、微生物および抗微生物剤をそれぞれ含む複数のサンプルに単色光源を一定期間照射し、各照射されたサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程であって、各サンプルが同じ濃度の微生物および異なる濃度の抗微生物剤を含む、照射および判定工程;
各サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による各サンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、各サンプルの正味信号を計算する工程;ならびに
複数のサンプルの計算された正味信号に基づいて、抗微生物剤に対する微生物の感受性を判定する工程。
【0269】
2.各サンプルについて計算された正味信号を比較する工程をさらに含む、1に記載の方法。
【0270】
3.比較する工程が、各サンプルの抗微生物剤の濃度の対数の関数として各サンプルの計算された正味信号をプロットする工程を含む、2に記載の方法。
【0271】
4.正味信号の低下を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程をさらに含む、2~3のいずれかに記載の方法。
【0272】
5.正味信号の上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程をさらに含む、4に記載の方法。
【0273】
6.各サンプルの計算された正味信号に基づいて、各サンプル中の微生物の代謝活性を判定する工程をさらに含む、1に記載の方法。
【0274】
7.代謝活性の低下を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程をさらに含む、6に記載の方法。
【0275】
8.代謝活性の上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程をさらに含む、6に記載の方法。
【0276】
9.各サンプルが、10コロニー形成単位(CFU)以上の濃度の微生物を含む、1~8のいずれかに記載の方法。
【0277】
10.各サンプルが、14CFU以上の濃度の微生物を含む、9に記載の方法。
【0278】
11.100コロニー形成単位(CFU)以上の濃度の微生物を有する微生物組成物から各サンプルをアリコートする工程を含む、9に記載の方法。
【0279】
12.複数のサンプル中の抗微生物剤の濃度の範囲が、抗微生物剤の最小発育阻止濃度未満の濃度から抗微生物剤の最小殺菌濃度より高い濃度にまで及ぶ、1~11のいずれかに記載の方法。
【0280】
13.サンプルを照射する前に、抗微生物剤を微生物と所定の期間インキュベートする工程をさらに含む、1~12のいずれかに記載の方法。
【0281】
14.抗微生物剤が微生物と10分以上インキュベートされる、13に記載の方法。
【0282】
15.抗微生物剤が微生物と20分以上インキュベートされる、13に記載の方法。
【0283】
16.サンプルが還元物質を含む、1~15のいずれかに記載の方法。
【0284】
17.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、16に記載の方法。
【0285】
18.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、16~17のいずれかに記載の方法。
【0286】
19.サンプルがサンプル容器内で照射される、1~18のいずれかに記載の方法。
【0287】
20.サンプル容器がガラスバイアルである、19に記載の方法。
【0288】
21.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、20に記載の方法。
【0289】
22.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、21に記載の方法。
【0290】
23.サンプルがサンプルと容器の壁との界面において照射される、請求項19~22のいずれかに記載の方法。
【0291】
24.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、23に記載の方法。
【0292】
25.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、24に記載の方法。
【0293】
26.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、24に記載の方法。
【0294】
27.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、24~27のいずれかに記載の方法。
【0295】
未知の微生物の表現型を決定するための方法
1.微生物の表現型を特徴づける方法であって、以下の工程を含む方法:
単色光源によって複数の強度にわたって、微生物、架橋物質、およびアルブミンタンパク質を含むサンプルに単色光源を一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定する工程;
サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源によるサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、サンプルの正味信号を計算する工程;ならびに
サンプルの計算された正味信号に基づいて架橋開裂を判定する工程であって、架橋開裂の程度が微生物の表現型を示す、判定工程。
【0296】
2.架橋物質がジスルフィドクロスリンカーである、1に記載の方法。
【0297】
3.架橋物質がグルタミン酸誘導体である、1~2のいずれかに記載の方法。
【0298】
4.架橋物質が式(I):
の化合物を含む、3に記載の方法。
【0299】
5.架橋物質が、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が1:10~10:1であるような量でサンプル中に存在する、1~4のいずれかに記載の方法。
【0300】
6.架橋物質が、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が約1:2であるような量でサンプル中に存在する、5に記載の方法。
【0301】
7.サンプルの計算された正味信号の経時的な増加が、微生物がアルブミンタンパク質における1つまたは複数の架橋を開裂する代謝産物を産生することを示す、1~6のいずれかに記載の方法。
【0302】
8.単色光源がレーザーである、1~7のいずれかに記載の方法。
【0303】
9.レーザーが、532nmで照射する固体レーザーである、8に記載の方法。
【0304】
10.サンプルが疎水性化合物とアルブミンタンパク質とを含む、1~9のいずれかに記載の方法。
【0305】
11.疎水性化合物がカロテノイドである、10に記載の方法。
【0306】
12.疎水性化合物がリコピンである、11に記載の方法。
【0307】
13.疎水性化合物がアルブミンタンパク質と非共有結合する、10~12のいずれかに記載の方法。
【0308】
14.サンプルが還元物質を含む、1~13のいずれかに記載の方法。
【0309】
15.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、14に記載の方法。
【0310】
16.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、14~15のいずれかに記載の方法。
【0311】
17.サンプルがサンプル容器内で照射される、1~16のいずれかに記載の方法。
【0312】
18.サンプル容器がガラスバイアルである、17に記載の方法。
【0313】
19.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、18に記載の方法。
【0314】
20.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、19に記載の方法。
【0315】
21.サンプルがサンプルと容器の壁との界面において照射される、17~20のいずれかに記載の方法。
【0316】
22.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、21に記載の方法。
【0317】
23.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、22に記載の方法。
【0318】
24.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、22に記載の方法。
【0319】
25.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、22~24のいずれかに記載の方法。
【0320】
蛍光を使用してサンプル中の微生物を検出するための方法
1.サンプル中の微生物の存在を判定するための方法であって、以下の工程を含む方法:
単色光源をサンプルに一定期間照射し、該一定期間にわたってサンプルからの蛍光を検出する工程;
サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、微生物の存在に起因する蛍光の変化率を計算する工程;および
所定の閾値と比較したサンプルの蛍光の計算された変化に基づいて、サンプル中の微生物の存在を判定する工程。
【0321】
2.単色光源を用いて複数の強度にわたってサンプルを照射する工程を含む、1に記載の方法。
【0322】
3.サンプルおよび対照によって生成される蛍光が2500cm-1~3500cm-1で検出される、1~2のいずれかに記載の方法。
【0323】
4.サンプルおよび対照によって生成される蛍光が3000cm-1で検出される、3に記載の方法。
【0324】
5.対照が、微生物を含まない組成物である、1~4のいずれかに記載の方法。
【0325】
6.微生物が病原性微生物である、1~5のいずれかに記載の方法。
【0326】
7.単色光源がレーザーである、1~6のいずれかに記載の方法。
【0327】
8.サンプルが、アルブミンタンパク質と非共有結合する疎水性化合物を含む、1~7のいずれかに記載の方法。
【0328】
9.フリーラジカルスカベンジャーをさらに含む、1~8のいずれかに記載の方法。
【0329】
10.フリーラジカルスカベンジャーがビリルビンまたはその誘導体を含む、9に記載の方法。
【0330】
11.ビリルビンまたはその誘導体が0.5μM~2μMの濃度で存在する、10に記載の方法。
【0331】
12.ビリルビンが0.25μM~1.75μMの濃度で存在する、11に記載の方法。
【0332】
13.サンプルが還元物質を含む、1~12のいずれかに記載の方法。
【0333】
14.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、13に記載の方法。
【0334】
15.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、13~14のいずれかに記載の方法。
【0335】
16.サンプルがサンプル容器内で照射される、1~15のいずれかに記載の方法。
【0336】
17.サンプル容器がガラスバイアルである、16に記載の方法。
【0337】
18.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、17に記載の方法。
【0338】
19.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、18に記載の方法。
【0339】
20.サンプルがサンプルと容器の壁との界面において照射される、17~19のいずれかに記載の方法。
【0340】
21.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、20に記載の方法。
【0341】
22.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、20に記載の方法。
【0342】
23.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、22に記載の方法。
【0343】
24.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、21~23のいずれかに記載の方法。
【0344】
25.対照が、微生物の存在しないサンプルと同じ成分を有する組成物である、1~24のいずれかに記載の方法。
【0345】
抗微生物剤感受性を特徴づけるための方法
1.抗微生物剤に対する微生物の抗微生物剤感受性を判定する方法であって、以下の工程を含む方法:
微生物および抗微生物剤をそれぞれ含む複数のサンプルに単色光源を一定期間照射し、該一定期間照射されたサンプルのそれぞれからの蛍光を検出する工程であって、各サンプルが同じ濃度の微生物および異なる濃度の抗微生物剤を含む、照射および検出工程;
各サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、各サンプルにおける蛍光の変化率を計算する工程;ならびに
複数のサンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて、抗微生物剤に対する微生物の感受性を判定する工程。
【0346】
2.各サンプルについて蛍光の計算された変化率を比較する工程をさらに含む、1に記載の方法。
【0347】
3.比較する工程が、各サンプルの抗微生物剤の濃度の対数の関数として各サンプルの蛍光の計算された変化率をプロットする工程を含む、2に記載の方法。
【0348】
4.蛍光の変化率の低下を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程をさらに含む、2~3のいずれかに記載の方法。
【0349】
5.蛍光の変化率の上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程をさらに含む、4に記載の方法。
【0350】
6.各サンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて、各サンプル中の微生物の代謝活性を判定する工程をさらに含む、1に記載の方法。
【0351】
7.代謝活性の低下を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程をさらに含む、6に記載の方法。
【0352】
8.代謝活性の上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定する工程をさらに含む、6に記載の方法。
【0353】
9.各サンプルが、10コロニー形成単位(CFU)以上の濃度の微生物を含む、1~8のいずれかに記載の方法。
【0354】
10.各サンプルが、14CFU以上の濃度の微生物を含む、9に記載の方法。
【0355】
11.100コロニー形成単位(CFU)以上の濃度の微生物を有する微生物組成物から各サンプルをアリコートする工程を含む、9に記載の方法。
【0356】
12.複数のサンプル中の抗微生物剤の濃度の範囲が、抗微生物剤の最小発育阻止濃度未満の濃度から抗微生物剤の最小殺菌濃度より高い濃度にまで及ぶ、1~11のいずれかに記載の方法。
【0357】
13.サンプルを照射する前に、抗微生物剤を微生物と所定の期間インキュベートする工程をさらに含む、1~12のいずれかに記載の方法。
【0358】
14.抗微生物剤が微生物と10分以上インキュベートされる、13に記載の方法。
【0359】
15.抗微生物剤が微生物と20分以上インキュベートされる、13に記載の方法。
【0360】
16.サンプルが還元物質を含む、1~15のいずれかに記載の方法。
【0361】
17.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、16に記載の方法。
【0362】
18.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、16~17のいずれかに記載の方法。
【0363】
19.サンプルがサンプル容器内で照射される、1~18のいずれかに記載の方法。
【0364】
20.サンプル容器がガラスバイアルである、19に記載の方法。
【0365】
21.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、20に記載の方法。
【0366】
22.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、21に記載の方法。
【0367】
23.サンプルがサンプルと容器の壁との界面において照射される、19~22のいずれかに記載の方法。
【0368】
24.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、23に記載の方法。
【0369】
25.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、24に記載の方法。
【0370】
26.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、24に記載の方法。
【0371】
27.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、24~27のいずれかに記載の方法。
【0372】
28.サンプルおよび対照によって生成される蛍光が2500cm-1~3500cm-1で検出される、1~27のいずれかに記載の方法。
【0373】
29.サンプルおよび対照によって生成される蛍光が3000cm-1で検出される、28に記載の方法。
【0374】
30.対照が、微生物を含まない組成物である、1~29のいずれかに記載の方法。
【0375】
31.対照が、微生物の存在しないサンプルと同じ成分を有する組成物である、1~30のいずれかに記載の方法。
【0376】
32.単色光源を用いて複数の強度にわたって各サンプルを照射する工程を含む、1~31のいずれかに記載の方法。
【0377】
未知の微生物の表現型を決定するための方法
1.微生物の表現型を特徴づける方法であって、以下の工程を含む方法:
微生物、架橋物質、およびアルブミンタンパク質を含むサンプルに単色光源を一定期間照射し、該一定期間にわたってサンプルからの蛍光を検出する工程;
サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、蛍光の変化率を計算する工程;ならびに
サンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて架橋開裂を判定する工程であって、架橋開裂の程度が微生物の表現型を示す、判定工程。
【0378】
2.架橋物質がジスルフィドクロスリンカーである、1に記載の方法。
【0379】
3.架橋物質がグルタミン酸誘導体である、1~2のいずれかに記載の方法。
【0380】
4.架橋物質が式(I):
の化合物を含む、3に記載の方法。
【0381】
5.架橋物質が、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が1:10~10:1であるような量でサンプル中に存在する、1~4のいずれかに記載の方法。
【0382】
6.架橋物質が、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が約1:2であるような量でサンプル中に存在する、5に記載の方法。
【0383】
7.サンプルの蛍光の計算された変化率の上昇が、微生物がアルブミンタンパク質における1つまたは複数の架橋を開裂する代謝産物を産生することを示す、1~6のいずれかに記載の方法。
【0384】
8.単色光源がレーザーである、1~7のいずれかに記載の方法。
【0385】
9.レーザーが、532nmで照射する固体レーザーである、8に記載の方法。
【0386】
10.サンプルが疎水性化合物とアルブミンタンパク質とを含む、1~9のいずれかに記載の方法。
【0387】
11.疎水性化合物がカロテノイドである、10に記載の方法。
【0388】
12.疎水性化合物がリコピンである、11に記載の方法。
【0389】
13.疎水性化合物がアルブミンタンパク質と非共有結合する、10~12のいずれかに記載の方法。
【0390】
14.サンプルが還元物質を含む、1~13のいずれかに記載の方法。
【0391】
15.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、14に記載の方法。
【0392】
16.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、14~15のいずれかに記載の方法。
【0393】
17.サンプルがサンプル容器内で照射される、1~16のいずれかに記載の方法。
【0394】
18.サンプル容器がガラスバイアルである、17に記載の方法。
【0395】
19.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、18に記載の方法。
【0396】
20.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、19に記載の方法。
【0397】
21.サンプルがサンプルと容器の壁との界面において照射される、17~20のいずれかに記載の方法。
【0398】
22.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、21に記載の方法。
【0399】
23.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、請求項22に記載の方法。
【0400】
24.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、22に記載の方法。
【0401】
25.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、22~24のいずれかに記載の方法。
【0402】
26.サンプルおよび対照によって生成される蛍光が2500cm-1~3500cm-1で検出される、1~25のいずれかに記載の方法。
【0403】
27.サンプルおよび対照によって生成される蛍光が3000cm-1で検出される、26に記載の方法。
【0404】
28.対照が、微生物を含まない組成物である、1~27のいずれかに記載の方法。
【0405】
29.対照が、微生物の存在しないサンプルと同じ成分を有する組成物である、1~28のいずれかに記載の方法。
【0406】
30.単色光源を用いて複数の強度にわたって各サンプルを照射する工程を含む、1~29のいずれかに記載の方法。
【0407】
共鳴ラマン分光法のためのシステム
1.単色光源と、
検出器と、
プロセッサと、
を含むシステムであって、プロセッサはプロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、メモリは命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、
第1の照射強度および第2の照射強度で単色光源を用いてサンプルを照射すること;
第1の照射強度および第2の照射強度における共鳴ラマン散乱の強度を判定すること;
第1の照射強度から第2の照射強度への照射強度の変化に応じた共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算すること;ならびに
サンプルの共鳴ラマン応答に対する変化を判定するために、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を単色光源による照射強度の変化率と比較すること
をプロセッサに実施させる、システム。
【0408】
2.単色光源がレーザーである、1に記載のシステム。
【0409】
3.レーザーがNd:YAGレーザーである、2に記載のシステム。
【0410】
4.レーザーが2倍波Nd:YAGレーザーである、3に記載のシステム。
【0411】
5.検出器が電荷結合素子(CCD)検出器である、1~4のいずれかに記載のシステム。
【0412】
6.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、単色光源によって複数の強度にわたってサンプルを一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、1~5のいずれかに記載のシステム。
【0413】
7.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、
単色光源によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定すること;
第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第1のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第1のサンプルの正味信号を計算すること;
単色光源によって複数の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定すること;および
第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第2のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第2のサンプルの正味信号を計算すること
をプロセッサに実施させる命令をさらに含む、1~6のいずれかに記載のシステム。
【0414】
8.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、比較された計算された正味信号に基づいて、第1のサンプルが第2のサンプルとは異なるガス組成を含むと判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、7に記載のシステム。
【0415】
9.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、比較された計算された正味信号に基づいて、活発に代謝している微生物を第1のサンプルまたは第2のサンプルが含んでいると判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、8に記載のシステム。
【0416】
サンプル中の微生物を検出するためのシステム
1.単色光源と、
検出器と、
プロセッサと、
を含むシステムであって、プロセッサはプロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、メモリは命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、
単色光源によって1つまたは複数の強度にわたってサンプルを一定期間照射し、サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算すること;
サンプルの共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源によるサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、サンプルの正味信号を計算すること;および
サンプルの計算された正味信号に基づいてサンプル中の微生物の有無を判定すること
をプロセッサに実施させる、システム。
【0417】
2.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、サンプルの計算された正味信号が所定の閾値を超えた場合に微生物が存在すると判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、1に記載のシステム。
【0418】
2.所定の閾値が、1の正味信号である、2に記載のシステム。
【0419】
3.単色光源がレーザーである、1~2のいずれかに記載のシステム。
【0420】
4.レーザーが、532nmで照射する固体レーザーである、3に記載のシステム。
【0421】
5.サンプルが、アルブミンタンパク質と非共有結合する疎水性化合物を含む、1~4のいずれかに記載のシステム。
【0422】
6.サンプルが還元物質を含む、1~5のいずれかに記載のシステム。
【0423】
7.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、6に記載のシステム。
【0424】
8.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、6~7のいずれかに記載のシステム。
【0425】
9.フリーラジカルスカベンジャーをさらに含む、1~8のいずれかに記載のシステム。
【0426】
10.フリーラジカルスカベンジャーがビリルビンまたはその誘導体を含む、9に記載のシステム。
【0427】
11.ビリルビンまたはその誘導体が0.5μM~2μMの濃度で存在する、10に記載のシステム。
【0428】
12.ビリルビンが0.25μM~1.75μMの濃度で存在する、11に記載のシステム。
【0429】
13.検出器が電荷結合素子(CCD)検出器である、1~12のいずれかに記載のシステム。
【0430】
14.サンプル容器をさらに含む、1~13のいずれかに記載のシステム。
【0431】
15.サンプル容器がガラスバイアルである、14に記載のシステム。
【0432】
16.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、15に記載のシステム。
【0433】
17.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、16に記載のシステム。
【0434】
18.サンプルと容器の壁との界面においてサンプルを照射するように構成されている、14~17のいずれかに記載のシステム。
【0435】
19.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、18に記載のシステム。
【0436】
20.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、19に記載のシステム。
【0437】
21.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、20に記載のシステム。
【0438】
22.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、19~21のいずれかに記載のシステム。
【0439】
23.単色光源と、
検出器と、
プロセッサと、
を含むシステムであって、プロセッサはプロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、メモリは命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、
単色光源によって複数の強度にわたって第1のサンプルを一定期間照射し、第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を計算すること;
第1のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第1のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第1のサンプルの正味信号を計算すること;
単色光源によって複数の強度にわたって第2のサンプルを該一定期間照射し、第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定すること;
第2のサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による第2のサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、第2のサンプルの正味信号を計算すること;および
第1のサンプルの正味信号を第2のサンプルの正味信号と比較することにより、第1のサンプルまたは第2のサンプルのうちの1つまたは複数における微生物の有無を判定すること
をプロセッサに実施させる、システム。
【0440】
24.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、第2のサンプルの計算された正味信号が第1のサンプルの計算された正味信号よりも大きい場合、微生物が第2のサンプルに存在すると判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、23に記載のシステム。
【0441】
25.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、第1のサンプルの計算された正味信号が第2のサンプルの計算された正味信号よりも大きい場合、微生物が第1のサンプルに存在すると判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、24に記載のシステム。
【0442】
26.単色光源がレーザーである、23~25のいずれかに記載のシステム。
【0443】
27.レーザーが、532nmで照射する固体レーザーである、26に記載のシステム。
【0444】
28.サンプルが、アルブミンタンパク質と非共有結合する疎水性化合物を含む、23~27のいずれかに記載のシステム。
【0445】
29.サンプルが還元物質を含む、23~28のいずれかに記載のシステム。
【0446】
30.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、29に記載のシステム。
【0447】
31.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、29~30のいずれかに記載のシステム。
【0448】
32.フリーラジカルスカベンジャーをさらに含む、23~31のいずれかに記載のシステム。
【0449】
33.フリーラジカルスカベンジャーがビリルビンまたはその誘導体を含む、32に記載のシステム。
【0450】
34.ビリルビンまたはその誘導体が0.5μM~2μMの濃度で存在する、33に記載のシステム。
【0451】
35.ビリルビンが0.25μM~1.75μMの濃度で存在する、33に記載のシステム。
【0452】
36.検出器が電荷結合素子(CCD)検出器である、70~79のいずれかに記載のシステム。
【0453】
37.サンプル容器をさらに含む、23~36のいずれかに記載のシステム。
【0454】
38.サンプル容器がガラスバイアルである、37に記載のシステム。
【0455】
39.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、38に記載のシステム。
【0456】
40.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、39に記載のシステム。
【0457】
41.サンプルと容器の壁との界面においてサンプルを照射するように構成されている、37~40のいずれかに記載のシステム。
【0458】
42.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、41に記載のシステム。
【0459】
43.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、42に記載のシステム。
【0460】
44.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、42に記載のシステム。
【0461】
45.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、42~44のいずれかに記載のシステム。
【0462】
46.(a)単色光源と、
(b)光学調整コンポーネントと、
(c)光検出器と、
(d)命令を格納しておりかつプロセッサに動作可能に結合されているメモリを含む、プロセッサと、
を含むシステムであって、命令は、プロセッサによって実行された場合に、
単色光源を第1の照射強度および第2の照射強度でサンプルホルダー中のサンプルに所定期間照射すること;
光検出器を用いてサンプルからの散乱光を測定すること;
第1の照射強度および第2の照射強度における共鳴ラマン散乱および蛍光散乱の強度を判定すること;
共鳴ラマン散乱の強度および蛍光散乱の強度の変化率を計算すること;ならびに
正味信号を取得するために、共鳴ラマン散乱の強度および蛍光散乱の強度の変化率を補正すること
をプロセッサに実施させる、システム。
【0463】
47.光学調整コンポーネントが、調整可能な焦点を生成するように構成されたリニアテーブルに取り付けられたコリメート光学系を含む、46に記載のシステム。
【0464】
48.光学調整コンポーネントが機械式シャッターを含む、46に記載のシステム。
【0465】
49.複数のサンプルチャンバを含む回転テーブルをさらに含む、46に記載のシステム。
【0466】
50.回転テーブルが8つのサンプルチャンバを含む、49に記載のシステム。
【0467】
51.コリメート光学系と、
インコヒーレントに散乱した光を直線状に配列された光検出器上に広げるように構成された光学調整コンポーネントと
を含む、インコヒーレントに散乱された光を特徴づけるためのサブシステムをさらに含む、50に記載のシステム。
【0468】
52.プロセッサが、命令を格納したメモリをさらに含み、命令は、プロセッサによって実行された場合に、サンプルチャンバのそれぞれに光を集束させるようにコリメート光学系を動かすことをプロセッサに実施させる、51に記載のシステム。
【0469】
53.サンプルが、リガンドを組み込んだアルブミンを含む、46に記載のシステム。
【0470】
54.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、
標準参照サンプルからの蛍光散乱の強度の変化率を判定すること;
共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、標準サンプルからの蛍光散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算すること
をプロセッサに実施させる命令をさらに含む、1に記載のシステム。
【0471】
55.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、
標準参照サンプルからの合計出力の変化率を判定すること;
共鳴ラマン散乱の強度の変化率から、標準サンプルからの共鳴ラマン散乱の強度の変化率を減じたものとして、正味信号を計算すること
をプロセッサに実施させる命令をさらに含む、53または54に記載のシステム。
【0472】
56.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、正味信号を所定の閾値と比較し、この比較に基づいて、活発に代謝している微生物を第1のサンプルが含んでいると判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、53または54に記載のシステム。
【0473】
57.サンプルが還元物質を含む、46に記載のシステム。
【0474】
58.サンプルがジスルフィド架橋物質を含む、57に記載のシステム。
【0475】
59.ジスルフィド架橋物質が、サンプル中の微生物によって産生される酵素または代謝産物によって開裂されるコアを含む、58に記載のシステム。
【0476】
60.架橋物質が式(I):
の化合物を含む、59に記載の方法。
【0477】
61.サンプルホルダーがガラスバイアルである、46に記載のシステム。
【0478】
62.サンプルホルダーが、アルブミンの吸収を変えるコーティングを含む、46に記載のシステム。
【0479】
63.コーティングが双性イオンコーティングを含む、請求項62に記載のシステム。
【0480】
64.プロセッサが、正味信号を最小化するために、サンプルを単色光源に曝露するように構成されている、46に記載のシステム。
【0481】
65.サンプルとサンプルホルダーの表面との界面においてサンプルを照射するように構成されている、46に記載のシステム。
【0482】
66.正味信号を最大化するように構成されている、65に記載のシステム。
【0483】
非線形ラマン分光法の際のレーザー出力のドリフトについて補正するためのシステム
1.単色光源と、
検出器と、
プロセッサと、
を含むシステムであって、プロセッサはプロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、メモリは命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、
単色光源によって複数の強度にわたって参照組成物を一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定することであって、参照組成物が、単色光源による照射強度の変化に応じて共鳴ラマン散乱の強度に変化を示さない参照化合物を含む、照射および判定すること;ならびに
単色光源が熱ドリフトを示しているかを判定するために、参照組成物に関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を、単色光源による参照組成物の照射強度の変化率と比較することにより、参照組成物の正味信号を計算すること
をプロセッサに実施させる、システム。
【0484】
2.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、
単色光源によって一定範囲の強度にわたってサンプルを一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定すること;
補正係数を生成するために、参照組成物の正味信号を、単色光源によるサンプルの照射強度の変化率に乗ずること;および
単色光源の熱ドリフトについて補正するために、サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の判定された変化率から補正係数を減ずること
をプロセッサに実施させる命令をさらに含む、1に記載のシステム。
【0485】
3.単色光源がレーザーである、1~2のいずれかに記載のシステム。
【0486】
4.レーザーが、532nmで照射する固体レーザーである、3に記載のシステム。
【0487】
5.サンプルが、アルブミンタンパク質と非共有結合する疎水性化合物を含む、1~4のいずれかに記載のシステム。
【0488】
6.サンプルが還元物質を含む、1~5のいずれかに記載のシステム。
【0489】
7.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、6に記載のシステム。
【0490】
8.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、6~7のいずれかに記載のシステム。
【0491】
9.フリーラジカルスカベンジャーをさらに含む、1~8のいずれかに記載のシステム。
【0492】
10.フリーラジカルスカベンジャーがビリルビンまたはその誘導体を含む、9に記載のシステム。
【0493】
11.ビリルビンまたはその誘導体が0.5μM~2μMの濃度で存在する、10に記載のシステム。
【0494】
12.ビリルビンが0.25μM~1.75μMの濃度で存在する、10に記載のシステム。
【0495】
13.前記一定期間が200秒~1500秒である、1~12のいずれかに記載のシステム。
【0496】
14.前記一定期間が600秒である、13に記載のシステム。
【0497】
15.検出器が電荷結合素子(CCD)検出器である、1~14のいずれかに記載のシステム。
【0498】
抗微生物剤感受性を特徴づけるためのシステム
1.単色光源と、
検出器と、
プロセッサと、
を含むシステムであって、プロセッサはプロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、メモリは命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、
単色光源によって複数の強度にわたって、微生物および抗微生物剤をそれぞれ含む複数のサンプルを一定期間照射し、各照射されたサンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定することであって、各サンプルが同じ濃度の微生物および異なる濃度の抗微生物剤を含む、照射および判定すること;
各サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源による各サンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、各サンプルの正味信号を計算すること;ならびに
複数のサンプルの計算された正味信号に基づいて、抗微生物剤に対する微生物の感受性を判定すること
をプロセッサに実施させる、システム。
【0499】
2.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、各サンプルについて計算された正味信号を比較することをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納して含む、1に記載のシステム。
【0500】
3.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、各サンプルの抗微生物剤の濃度の対数の関数として各サンプルの計算された正味信号をプロットすることをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納して含む、2に記載のシステム。
【0501】
4.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、正味信号の低下を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納して含む、2~3のいずれかに記載のシステム。
【0502】
5.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、正味信号の上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納して含む、4に記載のシステム。
【0503】
6.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、各サンプルの計算された正味信号に基づいて、各サンプル中の微生物の代謝活性を判定することをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納して含む、1に記載のシステム。
【0504】
7.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、代謝活性の低下を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納して含む、6に記載のシステム。
【0505】
8.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、代謝活性の上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をメモリに格納して含む、6に記載のシステム。
【0506】
9.各サンプルが、10コロニー形成単位(CFU)以上の濃度の微生物を含む、1~8のいずれかに記載のシステム。
【0507】
10.各サンプルが、14CFU以上の濃度の微生物を含む、9に記載のシステム。
【0508】
11.複数のサンプル中の抗微生物剤の濃度の範囲が、抗微生物剤の最小発育阻止濃度未満の濃度から抗微生物剤の最小殺菌濃度より高い濃度にまで及ぶ、1~10のいずれかに記載のシステム。
【0509】
12.サンプルが還元物質を含む、1~11のいずれかに記載のシステム。
【0510】
13.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、12に記載のシステム。
【0511】
14.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、12~13のいずれかに記載のシステム。
【0512】
15.サンプル容器をさらに含む、1~14のいずれかに記載のシステム。
【0513】
16.サンプル容器がガラスバイアルである、15に記載のシステム。
【0514】
17.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、16に記載のシステム。
【0515】
18.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、17に記載のシステム。
【0516】
19.サンプルと容器の壁との界面においてサンプルを照射するように構成されている、15~18のいずれかに記載のシステム。
【0517】
20.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、19に記載のシステム。
【0518】
21.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、20に記載のシステム。
【0519】
22.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、20に記載のシステム。
【0520】
23.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、20~22のいずれかに記載のシステム。
【0521】
24.検出器が電荷結合素子(CCD)検出器である、1~23のいずれかに記載のシステム。
【0522】
未知の微生物の表現型を決定するためのシステム
1.単色光源と、
検出器と、
プロセッサと、
を含むシステムであって、プロセッサはプロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、メモリは命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、
単色光源によって複数の強度にわたって、微生物、架橋物質、およびアルブミンタンパク質を含むサンプルに単色光源を一定期間照射し、共鳴ラマン散乱の強度の変化率を判定すること;
サンプルに関する共鳴ラマン散乱の強度の正規化された変化率を、単色光源によるサンプルの照射強度の正規化された変化率と比較することにより、サンプルの正味信号を計算すること;ならびに
サンプルの計算された正味信号に基づいて架橋開裂を判定することであって、架橋開裂の程度が微生物の表現型を示す、判定すること
をプロセッサに実施させる、システム。
【0523】
2.架橋物質がジスルフィドクロスリンカーである、1に記載のシステム。
【0524】
3.架橋物質がグルタミン酸誘導体である、1~2のいずれかに記載のシステム。
【0525】
4.架橋物質が式(I):
の化合物を含む、3に記載のシステム。
【0526】
5.架橋物質が、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が1:10~10:1であるような量でサンプル中に存在する、1~4のいずれかに記載のシステム。
【0527】
6.架橋物質が、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が約1:2であるような量でサンプル中に存在する、5に記載のシステム。
【0528】
7.サンプルの計算された正味信号の経時的な上昇が、微生物がアルブミンタンパク質における1つまたは複数の架橋を開裂する代謝産物を産生することを示す、1~6のいずれかに記載のシステム。
【0529】
8.単色光源がレーザーである、1~7のいずれかに記載のシステム。
【0530】
9.レーザーが、532nmで照射する固体レーザーである、8に記載のシステム。
【0531】
10.サンプルが疎水性化合物とアルブミンタンパク質とを含む、1~9のいずれかに記載のシステム。
【0532】
11.疎水性化合物がカロテノイドである、10に記載のシステム。
【0533】
12.疎水性化合物がリコピンである、11に記載のシステム。
【0534】
13.疎水性化合物がアルブミンタンパク質と非共有結合する、10~12のいずれかに記載のシステム。
【0535】
14.サンプルが還元物質を含む、1~13のいずれかに記載のシステム。
【0536】
15.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、14に記載のシステム。
【0537】
16.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、14~15のいずれかに記載のシステム。
【0538】
17.サンプル容器をさらに含む、1~16のいずれかに記載のシステム。
【0539】
18.サンプル容器がガラスバイアルである、17に記載のシステム。
【0540】
19.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、18に記載のシステム。
【0541】
20.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、19に記載のシステム。
【0542】
21.サンプルと容器の壁との界面においてサンプルを照射するように構成されている、17~20のいずれかに記載のシステム。
【0543】
22.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、21に記載のシステム。
【0544】
23.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、22に記載のシステム。
【0545】
24.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、22に記載のシステム。
【0546】
25.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、22~24のいずれかに記載のシステム。
【0547】
26.検出器が電荷結合素子(CCD)検出器である、1~25のいずれかに記載のシステム。
【0548】
蛍光を介してサンプル中の微生物を検出するためのシステム
1.単色光源と、
検出器と、
プロセッサと、
を含むシステムであって、プロセッサはプロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、メモリは命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、
単色光源によりサンプルを一定期間照射し、該一定期間にわたってサンプルからの蛍光を検出すること;
サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照からの蛍光の正規化された変化率と比較することにより、微生物の存在に起因する蛍光の変化率を計算すること;および
サンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて、サンプル中の微生物の有無を判定すること
をプロセッサに実施させる、システム。
【0549】
2.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、蛍光の計算された変化率が所定の閾値を超えた場合に微生物が存在すると判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、1に記載のシステム。
【0550】
3.単色光源がレーザーである、1~2のいずれかに記載のシステム。
【0551】
4.レーザーが、532nmで照射する固体レーザーである、3に記載のシステム。
【0552】
5.サンプルが、アルブミンタンパク質と非共有結合する疎水性化合物を含む、1~4のいずれかに記載のシステム。
【0553】
6.サンプルが還元物質を含む、1~5のいずれかに記載のシステム。
【0554】
7.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、6に記載のシステム。
【0555】
8.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、6~7のいずれかに記載のシステム。
【0556】
9.検出器が電荷結合素子(CCD)検出器である、1~8のいずれかに記載のシステム。
【0557】
10.サンプル容器をさらに含む、1~9のいずれかに記載のシステム。
【0558】
11.サンプル容器がガラスバイアルである、10に記載のシステム。
【0559】
12.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、11に記載のシステム。
【0560】
13.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、12に記載のシステム。
【0561】
14.サンプルと容器の壁との界面においてサンプルを照射するように構成されている、11~13のいずれかに記載のシステム。
【0562】
15.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、14に記載のシステム。
【0563】
16.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、15に記載のシステム。
【0564】
17.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、16に記載のシステム。
【0565】
18.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、15~17のいずれかに記載のシステム。
【0566】
19.サンプルおよび対照によって生成される蛍光が2500cm-1~3500cm-1で検出される、1~18のいずれかに記載のシステム。
【0567】
20.サンプルおよび対照によって生成される蛍光が3000cm-1で検出される、19に記載のシステム。
【0568】
21.対照が、微生物を含まない組成物である、1~20のいずれかに記載のシステム。
【0569】
22.微生物が病原性微生物である、1~21のいずれかに記載のシステム。
【0570】
23.対照が、微生物の存在しないサンプルと同じ成分を有する組成物である、1~22のいずれかに記載のシステム。
【0571】
24.単色光源を用いて複数の強度にわたってサンプルを照射するように構成されている、1~23のいずれかに記載のシステム。
【0572】
抗微生物剤感受性を特徴づけるためのシステム
1.単色光源と、
検出器と、
プロセッサと、
を含むシステムであって、プロセッサはプロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、メモリは命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、
微生物および抗微生物剤をそれぞれ含む、微生物を含む複数のサンプルに単色光源を一定期間照射し、該一定期間照射されたサンプルのそれぞれからの蛍光を検出することであって、各サンプルが同じ濃度の微生物および異なる濃度の抗微生物剤を含む、照射および検出すること;
各サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、各サンプルにおける蛍光の変化率を計算すること;ならびに
複数のサンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて、抗微生物剤に対する微生物の感受性を判定すること
をプロセッサに実施させる、システム。
【0573】
2.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、各サンプルについて蛍光の計算された変化率を比較することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、1に記載のシステム。
【0574】
3.比較する工程が、各サンプルの抗微生物剤の濃度の対数の関数として各サンプルの蛍光の計算された変化率をプロットする工程を含む、2に記載のシステム。
【0575】
4.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、蛍光の変化率の低下を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、1に記載のシステム。
【0576】
5.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、蛍光の変化率の上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、1に記載のシステム。
【0577】
6.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、各サンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて各サンプル中の微生物の代謝活性を判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、1に記載のシステム。
【0578】
7.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、代謝活性の低下を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、1に記載のシステム。
【0579】
8.メモリが、プロセッサによって実行された場合に、代謝活性の上昇を示す抗微生物剤の濃度を判定することをプロセッサに実施させる命令をさらに含む、1に記載のシステム。
【0580】
9.各サンプルが、10コロニー形成単位(CFU)以上の濃度の微生物を含む、1~8のいずれかに記載のシステム。
【0581】
10.各サンプルが、14CFU以上の濃度の微生物を含む、9に記載のシステム。
【0582】
11.各サンプルが、100コロニー形成単位(CFU)以上の濃度の微生物を有する微生物組成物からアリコートされる、9に記載のシステム。
【0583】
12.複数のサンプル中の抗微生物剤の濃度の範囲が、抗微生物剤の最小発育阻止濃度未満の濃度から抗微生物剤の最小殺菌濃度より高い濃度にまで及ぶ、1~11のいずれかに記載のシステム。
【0584】
13.サンプルを照射する前に、抗微生物剤が微生物と所定の期間インキュベートされる、1~12のいずれかに記載のシステム。
【0585】
14.抗微生物剤が微生物と10分以上インキュベートされる、13に記載のシステム。
【0586】
15.抗微生物剤が微生物と20分以上インキュベートされる、13に記載のシステム。
【0587】
16.サンプルが還元物質を含む、1~15のいずれかに記載のシステム。
【0588】
17.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、16に記載のシステム。
【0589】
18.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、16~17のいずれかに記載のシステム。
【0590】
19.サンプルがサンプル容器内で照射される、1~18のいずれかに記載のシステム。
【0591】
20.サンプル容器がガラスバイアルである、19に記載のシステム。
【0592】
21.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、20に記載のシステム。
【0593】
22.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、21に記載のシステム。
【0594】
23.サンプルと容器の壁との界面においてサンプルを照射するように構成されている、19~22のいずれかに記載のシステム。
【0595】
24.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、23に記載のシステム。
【0596】
25.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、24に記載のシステム。
【0597】
26.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、24に記載のシステム。
【0598】
27.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、24~27のいずれかに記載のシステム。
【0599】
28.サンプルおよび対照によって生成される蛍光を2500cm-1~3500cm-1で検出するように構成されている、1~27のいずれかに記載のシステム。
【0600】
29.サンプルおよび対照によって生成される蛍光を3000cm-1で検出するように構成されている、28に記載のシステム。
【0601】
30.対照が、微生物を含まない組成物である、請求項1~29のいずれかに記載のシステム。
【0602】
31.対照が、微生物の存在しないサンプルと同じ成分を有する組成物である、1~30のいずれかに記載のシステム。
【0603】
32.複数の強度にわたって各サンプルに単色光源を照射するように構成されている、1~31のいずれかに記載のシステム。
【0604】
未知の微生物の表現型を決定するためのシステム
1.単色光源と、
検出器と、
プロセッサと、
を含むシステムであって、プロセッサはプロセッサに動作可能に連結されたメモリを含み、メモリは命令を格納しており、命令は、プロセッサによって実行された場合に、
微生物、架橋物質、およびアルブミンタンパク質を含むサンプルに単色光源を一定期間照射し、該一定期間にわたってサンプルからの蛍光を検出すること;
サンプルによって生成された検出された蛍光の強度の正規化された変化率を、対照によって生成された蛍光の正規化された変化率と比較することにより、蛍光の変化率を計算すること;ならびに
サンプルの蛍光の計算された変化率に基づいて架橋開裂を判定することであって、架橋開裂の程度が微生物の表現型を示す、判定すること
をプロセッサに実施させる、システム。
【0605】
2.架橋物質がジスルフィドクロスリンカーである、1に記載のシステム。
【0606】
3.架橋物質がグルタミン酸誘導体である、1~2のいずれかに記載のシステム。
【0607】
4.架橋物質が式(I)
の化合物を含む、3に記載のシステム。
【0608】
5.架橋物質が、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が1:10~10:1であるような量でサンプル中に存在する、1~4のいずれかに記載のシステム。
【0609】
6.架橋物質が、架橋物質:アルブミンタンパク質のモル比が約1:2であるような量でサンプル中に存在する、5に記載のシステム。
【0610】
7.サンプルの蛍光の計算された変化率の上昇が、微生物がアルブミンタンパク質における1つまたは複数の架橋を開裂する代謝産物を産生するとプロセッサに示させる、1~6のいずれかに記載のシステム。
【0611】
8.単色光源がレーザーである、1~7のいずれかに記載のシステム。
【0612】
9.レーザーが、532nmで照射する固体レーザーである、8に記載のシステム。
【0613】
10.サンプルが疎水性化合物とアルブミンタンパク質とを含む、1~9のいずれかに記載のシステム。
【0614】
11.疎水性化合物がカロテノイドである、10に記載のシステム。
【0615】
12.疎水性化合物がリコピンである、11に記載のシステム。
【0616】
13.疎水性化合物がアルブミンタンパク質と非共有結合する、10~12のいずれかに記載のシステム。
【0617】
14.サンプルが還元物質を含む、1~13のいずれかに記載のシステム。
【0618】
15.還元物質がグルタチオンまたはその誘導体である、14に記載のシステム。
【0619】
16.還元物質がサンプル中に0.1mg/mL~1mg/mLの濃度で存在する、14~15のいずれかに記載のシステム。
【0620】
17.サンプル容器内のサンプルを照射するように構成されている、1~16のいずれかに記載のシステム。
【0621】
18.サンプル容器がガラスバイアルである、17に記載のシステム。
【0622】
19.ガラスバイアルが、双性イオンコーティングを有する壁を含む、18に記載のシステム。
【0623】
20.ガラスバイアルが、双性イオンシランコーティングを有する壁を含む、19に記載のシステム。
【0624】
21.サンプルと容器の壁との界面においてサンプルを照射するように構成されている、17~20のいずれかに記載のシステム。
【0625】
22.単色光源が、サンプルと容器の壁との界面の位置に集束される、21に記載のシステム。
【0626】
23.単色光源が、容器の壁の表面から0.01mm~2mmの位置においてサンプルに集束される、22に記載のシステム。
【0627】
24.単色光源が、容器の壁の表面から約0.2mmの位置においてサンプルに集束される、22に記載のシステム。
【0628】
25.単色光源がコリメートレンズを用いて集束される、22~24のいずれかに記載のシステム。
【0629】
26.サンプルおよび対照によって生成される蛍光を2500cm-1~3500cm-1で検出するように構成されている、1~25のいずれかに記載のシステム。
【0630】
27.サンプルおよび対照によって生成される蛍光を3000cm-1で検出するように構成されている、26に記載のシステム。
【0631】
28.対照が、微生物を含まない組成物である、1~27のいずれかに記載のシステム。
【0632】
29.対照が、微生物の存在しないサンプルと同じ成分を有する組成物である、1~28のいずれかに記載のシステム。
【0633】
30.複数の強度にわたってサンプルに単色光源を照射するように構成されている、1~29のいずれかに記載のシステム。
【実施例
【0634】
実験
上で提示された開示から理解され得るように、本開示は多種多様な用途を有する。以下の実施例は、当業者に本発明の作製および使用法の完全な開示および説明を提供するために提示され、本発明の範囲を限定することも意図されていないし、以下の実験がすべてまたは唯一の実施された実験であると表すことも意図されていない。当業者であれば、本質的に同様の結果をもたらすために変更または修正され得る様々な重要でないパラメーターを容易に認識するはずである。使用された数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確実とするように努めているが、一部の実験誤差および偏差は考慮されるべきである。
【0635】
方法
対象の方法の一実施例は、調査対象の分子の励起状態の変化により影響を受ける吸収バンドギャップに波長が近いレーザーを中心として構築されたラマン分光計を含む。アルブミンに組み込まれたリコピンを含むシステムに関して、波長532nmのレーザーが使用され、それは、この波長がリコピン吸収三重線の裾にあり、励起状態の変化の影響を受けるためである。このシステムはまた、経時的にレーザー強度を少量変調するコンポーネントを含む。
【0636】
808nmの光ポンプを用いて共振器を1064nmで励起し、外部共振器において532nmにQスイッチすることにより532nmのレーザー光が生成される。最終的なQスイッチ共振器の出力は、共振器の向きに非常に敏感であり、共振器の向きは温度に非常に敏感である。そして温度は、共振器内からの熱の蓄積(および放散)によって変化する。よって、励起レーザーに印加される電流の変化は、外部共振器からの532nmレーザー光出力の変化として常に現れるとは限らない。
【0637】
外部共振器の温度のわずかな変化がレーザーからの出力に影響し得ることがわかったため、これに影響を与えるメカニズムを使用してレーザー出力を変調できる。1つの態様において、CCDシャッター時間(すなわち、CCDでデータを取得するために使用される時間)を変えることが、レーザー出力に影響することがわかった。この例では、CCDからデータが出される頻度がCCD内の熱の蓄積に影響し、さらにこれがCCDに熱的に近接している外部レーザー共振器の温度に影響する。
【0638】
対象のシステムは、レーザー強度が変調されるときの共鳴ラマン強度の時間依存変化を測定するように構成された。正規化された共鳴ラマン強度の変化率は、正規化されたレーザー強度の変化率と比較される。測定誤差を最小化するために、この比較は、レーザー強度の正規化された変化率で行われ得る。レーザー強度の変調に使用される制御パラメーターと結果として得られるレーザー変調との間の系統的な違いを排除するために、レーザー出力により強度が変化しない特性ラマンスペクトルを与える参照組成物を使用することによって、レーザー出力を特徴づけた。一例では、532nmの光で広いラマンスペクトルを与えるNIST SRM 2242を使用した。本開示による非線形共鳴ラマン分光法の一実施例を図1に示す。
【0639】
図1のトレースの勾配は、計算された正味信号である。勾配が1に等しくない場合、このことは、
における第2項(分極率の項)がゼロに等しくないことを示す。これは、レーザー自体によって引き起こされる変化、またはサンプルの物理的または化学的変化によって引き起こされる変化のいずれかを示すことができる。
【0640】
実施例1:
図2は、組成物の小さな変化を特徴づけるための非線形共鳴ラマン分光法の一実施例を示している。サンプルは、(その開示の全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2016/0324933号に記載されているように)アルブミンタンパク質と非共有結合しているリコピンを含み、これに微生物の代謝をサポートするために栄養緩衝剤およびpHを7.2に維持する緩衝剤が添加された。
【0641】
これらの例では、非線形共鳴ラマン分光法はリコピンの共鳴ラマンスペクトルを測定し、ラマンピークの大きさは組成物の小さな変化に敏感な関数である。リコピンはアルブミンに組み込まれるため、共鳴ラマン応答の非線形性(つまり、計算された非線形共鳴ラマン係数)は、アルブミンによって提供される環境を特徴づけ、またアルブミンが水に不溶性の分子を可溶化するように設計されているために、共鳴ラマンの非線形性は溶液中に存在する不溶性分子の量に対応する。
【0642】
この実施例では、サンプルに存在するガスの量が、共鳴ラマン応答の非線形性によって特徴づけられる。一般的なガス(酸素、窒素、および二酸化炭素など)は水にいくらか溶解でき、溶解度は温度の上昇とともに低下する。よって、試験サンプルの1つまたは複数の部分を十分に長い時間高温(55℃など)に加熱すると、溶存ガスが過飽和になり、時間依存プロセスによって核生成する。次いで、この液体を37℃に冷却すると、液体は溶存ガスに関して不飽和になる。この不飽和液体が、名目上4℃で保管された(従って4℃でガスで飽和し、37℃で過飽和となる)アルブミン/リコピン試薬と混合されると、混合物は溶存ガスに関して不飽和となり得る。このシナリオでは、アルブミンに分配された溶解ガスの一部が溶液に移行し、アルブミンに取り込まれるガスの量が減少する。よって、不飽和液体の量(および不飽和の程度)を変えることにより、リコピン周辺の環境が変わり、共鳴ラマンの非線形性の変化によって特徴づけられる。
【0643】
図2は、アルブミン/リコピン試薬をいずれも含む、様々な液剤に関する共鳴ラマン非線形係数の非線形性を示している。第1の実施例は、5℃で数週間保管され、37℃で試験された(従って、37℃でガスで過飽和となっている)試薬の比較を示している。試薬自体の非線形係数は3.3である。細菌(濃度10CFU/mL)を溶液に添加すると、非線形係数は3.7に上昇する。
【0644】
実施例2:
ビリルビンは、血清中に存在する強力な抗酸化物質であり、532nmで非常に弱い光吸収を示す。この例では、ビリルビンを使用して、非線形共鳴ラマン分光法における信号を制御し、試験サンプルを特徴づける際の信号雑音比を改善する。
【0645】
記載されているサンプルにおいて、ビリルビンが添加され、アルブミンタンパク質と非共有結合する。図3および図4は、平均共鳴ラマンピーク強度に対するビリルビンの影響を示している。図3は、4つの非感染対照サンプルおよび3つの10CFU黄色ブドウ球菌感染サンプルからの平均ラマンピーク高さを示している。すべての場合において、試薬は、アルブミンに取り込まれ、4mLの緩衝媒体に希釈されたリコピンを含み、細菌の代謝を可能にするために0.5倍の栄養ブロスを含む。図4は、1μMのビリルビンを添加した4つの非感染対照サンプルと3つの10CFU黄色ブドウ球菌感染サンプルとからの平均ラマンピーク高さを示している。図3と比較すると、感染サンプルにおける低下はより長いタイムスケール(200秒に対して450秒)に移動しており、非感染対照サンプルはそれ以上低下を示さない。
【0646】
図5は、上記のサンプルの信号雑音比の判定を示している。この実施例では、「信号」は、t=0からX軸に示される時間までの直線あてはめを使用して計算された、非感染対照サンプルと10CFU黄色ブドウ球菌サンプルの共鳴ラマンピークの強度の平均変化率の差であり、「雑音」は、対照サンプルおよび10CFUサンプルの平均変化率の標準偏差の和である。信号雑音比は、時間(X軸上)およびビリルビンの添加量(μM単位で、凡例に表示)の関数としてプロットされている。より多くのビリルビンが添加されると、信号の構築がより遅くなり、負の値に戻る可能性も低くなる。
【0647】
図6は、ビリルビン添加量の関数としてプロットされた、時間=600秒で推定された上記のサンプルからの信号を示している(μM単位で、凡例に表示)。このタイムスケールでは、1μMのビリルビンが最適量のビリルビンであると判定される。ビリルビンレベルが高いと、信号は蓄積するのに十分な時間がなく、ビリルビンレベルが低いと、信号は既に最大値まで蓄積しており、減衰して低レベルになる。
【0648】
実施例3:
特定の理論または作用メカニズムに縛られることなく、対象の方法におけるビリルビンは、(a)レーザー光によって生成されたフリーラジカルを除去することにより、非線形共鳴ラマン分光法における信号を増強する。これにより、信号に干渉し得るアーティファクトが減少し、対象サンプルの標準偏差が減少する。よって、非感染サンプルのリコピンピークの平均変化率の標準偏差は、ビリルビンがアッセイに添加されて、(b)サンプル中に存在する微生物の代謝活性によって生成されるフリーラジカルを除去するにつれて減少する。これは、特にサンプルへの変化がビリルビンの非存在下できれいに観察するには速すぎる場合、微生物によって引き起こされる変化を遅くすることができる。
【0649】
図7は、データ収集時間の関数として、アルブミンタンパク質と非共有結合したリコピンおよび異なる量のビリルビンを含むサンプルの信号雑音比のプロットを示している。信号雑音比は、図に示されている線に沿った様々なポイントに沿って最大化され、線に沿った異なるポイントで最大値に達する。実験時間に対する信号雑音比SNRの変動(「信号」は、非感染対照サンプルと10CFU黄色ブドウ球菌感染サンプルとの間のリコピンピークの平均変化率の差であり、「ノイズ」は、2つの平均値の標準偏差の和である)。すべての場合において、勾配はt=0からX軸に示される時間まで計算されるため、SNRの上昇は標準偏差の低下を反映する(これは推定された勾配の信頼区間の低下に起因する)。信号雑音比は、時間(X軸)と、アッセイに存在する様々な量のビリルビンに対して(凡例ではμMで)プロットされる。感染サンプルの時間依存ラマンプロファイルが低下を示し、この低下のタイムスケールを超えて行われる実験では、信号の大きさが減少するため、信号が低下し始めると信号雑音比が減少する。
【0650】
図8は、添加されたビリルビン濃度に対して信号雑音比が最大になる時点をプロットしている。ビリルビン濃度が上昇すると、最適な時点が上昇し、診断試験の信頼性が高まる。ビリルビンの吸収スペクトルは、532nmにおける吸収のためにわずかに青色にシフトする。これは、ラマン信号に大きな影響を与えないが、ラマン増強または減弱効果を介して二次効果をもたらす可能性があることを意味する。共鳴ラマンピークの強度は、散乱断面積の2乗に比例する。散乱断面積は、遷移双極子モーメントの2乗に関係し、従って通常は吸収スペクトルに従う。ただし、近くに別の電子状態がある場合、ラマン強度は断面積の和の2乗に比例する。断面積が反対の符号の場合、破壊的な干渉が生じ、共振の減弱がもたらされ得る。ビリルビンおよびリコピンの両方がアルブミンに存在する場合、励起状態間で破壊的/建設的な干渉が発生している可能性があり、この干渉は、フリーラジカルを除去することによりビリルビンが分解するにつれて変化する。他のフリーラジカルスカベンジャー(グルタチオンおよびアスコルビン酸などの親水性のものや、アルブミンに組み込まれたブチル化ヒドロキシトルエンなどの疎水性のものを含む)は、診断信号に対して同様の効果を持たないことがわかっている。
【0651】
実施例4:
レーザー出力の制御されていない変動(またはレーザー出力のドリフト)は、観測された変化率にバイアスをかける可能性がある。これについて補正するために、参照標準(正規化されたスペクトルがレーザー出力により変化しないことが期待される標準)を機器に組み込み、試験対象のサンプルと同時にモニターした。この方法を使用して、レーザー出力の実際のドリフトを特徴づけることができ、これに、以前に較正された非線形係数を乗じて、観測された勾配のバイアス誤差を差し引くことができる。この補正の一実施例を図9aおよび図9bに示す。図9aおよび図9bは、ビリルビン含有量の関数としての、4つの非感染サンプルおよび3つの感染サンプルの測定値の変動を示している。図9aは測定時の値を示し、図9bはレーザー出力の観測されたドリフトについて補正した後の値を示している。
【0652】
実施例のサンプルシステムは8つのサンプルチャンバを含み、1つのチャンバがNISTラマン較正標準SRM 2242などの較正標準用に確保されている。機器は、試験サンプルからのラマンスペクトルを監視するために使用されるものと同じ光学コンポーネント(分光計、ファイバーなど)およびアルゴリズムを使用して、この較正標準からのスペクトルをモニターする。標準サンプルの測定スペクトルから、時間の関数としてラマン強度の変化率を計算する。次いで、これに、以前に試薬液体について推定されたRRNL係数を乗ずる。これがオフセット係数である。ラマンピークの変化率から、オフセット係数が差し引かれる。
【0653】
レーザー出力性能が望ましい仕様に近いことを確実にするための追加の制御工程も実装される。532nmレーザーの場合、熱の放散および蓄積のわずかな変化に起因してレーザー出力がドリフトし得る。これらの変更は性能に影響し得る。これらの制限は、レーザー性能のドリフトを制限し、レーザーが指定範囲外にドリフトしているときにフラグを立てることができる制御スキームで緩和され得る。
【0654】
図10は、NIST標準からのラマンスペクトルの正規化された変化率を、(外部レーザー共振器内の熱蓄積によってレーザー出力に影響する)CCDシャッター時間の正規化された変化率の関数として示している。この制御を使用してレーザー出力を変更できるが、熱蓄積の問題に関して機器が動作しているかどうかを確認するためにも使用できる。NIST標準からのラマンスペクトルの観測された変化率が図10に示されている90%信頼帯域外にある場合、熱管理の問題が十分に緩和されていないことを意味する。
【0655】
実施例5:
実施例のシステムを図11に示す。図11に示すレイアウトは、それぞれ35℃~37℃に維持された8つのチャンバを示している。チャンバ1は、NIST標準SRM 2242などの参照組成物を含む。システムは、各チャンバのスペクトルを収集し、次いで円形ステージを次のチャンバへと回転させる。15~25秒で8つのチャンバすべてについて1サイクルのラマンスペクトルを収集し、次いで、約600秒にわたってデータを取得するまで次のサイクルのプロセスを繰り返す。あるいは、15秒よりも速いサンプリングレートが必要な場合、システムは必要な全期間にわたって1つのチャンバでデータを収集し、次いで次のチャンバに移動することができる。
【0656】
図12は、レーザー共振器の熱変動を最小化するように設計された様々なサブシステムを示している。これらは、(a)外気を吹き込み、機器内で循環させてから排気するためのファンの使用、(b)サンプルチャンバ外の機器チャンバの変化に過度に影響を与えることなしに、サンプルチャンバを35~37℃に維持する抵抗発熱体およびペルチェ発熱体の組み合わせの使用(ペルチェ素子は機器チャンバからサンプルチャンバに熱を移動させ、抵抗素子はサンプルチャンバおよび機器チャンバの両方に熱を加える)、ならびに(c)操作前にレーザーを作動させてからの適切な長さ(約1時間)の遅延の使用を含む。
【0657】
熱の影響をさらに最小化するために、機器の安定性をチェックするための追加の制御が実装される。図13は、機器の安定性をチェックする1つのセットアップアルゴリズムを示している。NIST標準SRM 2242を使用して、分光計のCCDを1時間にわたって較正した。簡単に言えば、この較正は、NIST標準SRM 2242のスペクトルを収集し、測定された出力をこの標準で予期される出力で除することを含む。この較正を1時間にわたって実行した。測定されたCCD出力と予期される出力との比がYCALである。これに続いて、CCDからのすべての出力をYCALで除して、機器の変動に依存しない出力を提供する。同じNIST SRM 2242サンプルで10分間にわたって測定を繰り返すことによりYCALをチェックした。NIST SRM 2242の測定スペクトル(YCALでの較正後)と予期されるスペクトルとの間の比がリップルを示している場合、機器が1時間と10分とのタイムスケールでドリフトしたことを意味する。これを図14に示す。一部の場合において、レーザーを作動させてから約1~2時間後に機器が安定する。
【0658】
機器の操作中の熱管理の問題をさらに最小化するために、一例では、図15に示す制御方法およびアルゴリズムの利用を含む。光は、通常は閉じている機械式シャッターを介してサンプルチャンバに入れられる。このシャッターが開くと、光学トレーン内の熱管理が変わる。変化が安定するまで、短い時間(例えば、約300ミリ秒)が経過する。1秒間に1つのスペクトルを取得する代わりに、それぞれ120ミリ秒にわたって8つの個別のスペクトルが取得される(合計データ収集時間は約1秒)。これらの8つのスペクトル内の変動がチェックされ、個々の期間が適切に調整されている場合、8つのスペクトルはそれらの間の小さな系統的な変化を示す。
【0659】
実施例6:
対象の方法の特定の態様による非線形共鳴ラマン分光法の実験の詳細を以下に提供する。
【0660】
サンプル調製
米国特許出願公開第2016/0324933号に記載されているように非線形共鳴ラマン分光法のサンプルを調製した。簡単に言えば、サンプル中のアルブミンと非共有結合するリコピンをトマトから抽出した。トマトペーストをヘキサンと混合し、ヘキサンに溶解するペーストの部分を傾瀉し、乾燥して粉末にした。次いで、組成物を酢酸エチルで還流し、アセトンに溶解した。アセトン溶液をアルブミンの水溶液と混合し、アセトンをロータリーエバポレーターで徐々に除去した。プロセスはすべてのアセトンが除去されることを確実にするためにモニターされ、それによりトマトからの有機抽出物がアルブミンに移されることを確実にした。追加の仕様は以下を含む。(1)緩衝溶液を約60℃の温度で24時間以上(50℃より高い温度で24時間以上も適切である)インキュベートすることにより、試薬に過飽和ガスがないことを確実にすること。高温ではガスの溶解度が低下するため、高温での長時間のインキュベーションにより、溶解したガスは、核形成された気泡形成のプロセスを介してシステムから出ることが確実になる。緩衝剤は37℃に冷却され、試薬の最終処理に使用される。37℃では、緩衝剤は溶存ガスに関して不飽和である。この手順により、最終試薬に過剰なガスがないことが確実となる。(2)活性グルタチオンGSHを試薬に(還元物質として)添加し、使用前に18時間以上最大5日間までインキュベートする。サンプルの試験では、インキュベーションおよび添加された活性グルタチオンの経時的な信号の大きさの上昇が見られる。図16は、4.5mL試験サンプルに10CFUの黄色ブドウ球菌を添加したサンプルからの信号の大きさ(ラマントレースの正規化された低下率として定義)を示している。信号は、グルタチオンレベルの上昇とともに上昇する。これらの試験では、GSHの添加から2時間以内に試験が行われた。図17は、1700秒の測定時間における信号(平均対照サンプルと10CFU/mL血漿/黄色ブドウ球菌サンプルの変化率の差)を示している。X軸の「インキュベーション時間」は、GSHが試薬バイアルに添加された時間(凡例の濃度)、および試験のために感染血漿を添加する前の時間を指す。
【0661】
双性イオン被覆ガラスバイアルの調製
ガラスバイアルは、特別な双性イオン層でコーティングされている。窒素ガス下でマグネチック撹拌子を用いて30.03グラム(0.246モル)の1,3-プロパンスルトンに、200mLのアセトンを加えた。3分間勢いよく撹拌した後、シリンジを用いて50.0グラム(0.241ミリモル)の3-(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシランを添加した。得られた混合物をN2ガス下で一晩勢いよく撹拌した。さらにアセトン100mLを加えた後、混合物を十分に振盪し、有機溶媒をロータリーエバポレーターにより除去し、白色生成物を高真空ポンプで迅速にさらに乾燥させた(目的の生成物は吸湿性が高い)。白色粉末生成物を別のプラスチックボトルに素早く移し、重量を測って、78.5グラム(98.9%)の双性イオンシラン試薬を得た。
【0662】
250個の透明ガラスバイアル(Pacific Vial社カタログ番号VC151965、直径=18.75mm、3ドラム)および対応するキャップを脱イオン水で1回すすぎ、30分間オートクレーブした。室温に冷却した後、ガラスバイアルを80℃のオーブンで乾燥させ、オートクレーブしたガラスバイアルを6クォートのアルミニウム圧力鍋に移した。これに、5Lのオートクレーブした脱イオン水、および5gの双性イオンシラン試薬(上述)を添加した。圧力鍋に蓋をして手で振盪して、各バイアルが確実にシラン溶液に浸漬されるようにした。蓋を開け、各バイアルが溶液で覆われていることを確認するために目視で検査を行った。圧力鍋に蓋をし、45分間振盪した。次いで、さらに5gの双性イオンシラン試薬を添加し、手で振盪/検査/45分の振盪という工程を繰り返した。この手順をさらに2回繰り返し、それにより双性イオンシラン試薬の総量が20gmになるようにした。次いで、圧力鍋を80℃のオーブンに2時間(最大4時間)入れた。次いで、圧力鍋を室温に冷却し、開け、水溶液を傾瀉したて出した。ガラスバイアルをオートクレーブした脱イオン水で2回、エタノール/オートクレーブした脱イオン水(3:1 v/v)で1回洗浄し、80℃のオーブンで乾燥させた。室温に冷却した後、ガラスバイアルをプラスチックバッグに移し、保管のために密封した。
【0663】
レーザー出力
特定の理論や作用メカニズムに拘束されることなく、レーザー出力および曝露時間は、下記のいくつかのメカニズムのいずれかを介して、対象の方法による共鳴ラマン分光法に影響を与え得る。
【0664】
極めて長いレーザー曝露時間では、対照サンプルのラマンピーク高さは低下し始め得るが、ピクセルの和はほとんど変化しないままである。レーザーのエネルギーにより、ラマンピーク全体を構成する寄与がシフトし、このシフトにより、観測されるピーク高さが低下する。
【0665】
極めて短いレーザー曝露時間では、CCDの読み取り雑音が、モニターしようとしている小さな効果を圧倒し得る。ラマン効果は非線形であるため、レーザー出力の大きな変化(例えば、レーザー出力の変動)により、観測されるラマン振幅の変化がレーザー出力の変化に支配され得る(ひいては、細菌の存在の影響を判別することを不可能になり得る)。
【0666】
一部の態様において、対象の方法を実施するための適切なレーザー曝露条件は、約10,000~40,000の最大CCDカウントをもたらす条件を含む。一例では、CCDの最大飽和は65536カウント(16ビットに対応)であるため、この動作モードでは、CCDは飽和をはるかに下回るが、読み取り雑音が問題となる領域よりもはるかに高い領域でも動作する。特定の場合において、動作モードにより、合計レーザー曝露が約1秒になる(各0.25秒の4つのCCD曝露に分割され、各0.25秒の曝露により約30,000の最大CCDカウントが得られる)。より長いレーザー曝露では、観測されるピーク高さは時間とともに低下し、より短いレーザー曝露では、時間とともに上昇する。この影響を緩和する1つの方法は、曲線下面積(図18に示すように、比較的不変のままである)を使用することであるが、1秒のレーザー曝露で作業すると、この問題をさらに軽減できる。特に、図18は、ラマンピーク高さの変化率と、ラマンピークを表すすべてのピクセルの和(凡例のSOP)として計算されたラマンピーク高さの「曲線下面積」と、を示している。レーザーの曝露時間が曝露の各サイクルで1秒を超えると、ラマンピーク高さが大幅に低下する。対照的に、曲線下面積は比較的不変のままである。
【0667】
検出および信号測定システム
測定システムは、分光器(低暗電流動作が可能な低温冷却CCD検出器を装備)および共鳴ラマン分光法を実行できるレーザー光源(532nmの入射波長および100mWの出力)、最大8つのサンプル間で切り替え可能な回転テーブルを含むサンプルチャンバ、機器の較正に使用されるNIST SRM 2242標準、ならびに制御および分析に適したソフトウェアを有するコンピューターを含む。
【0668】
1つの例示的な方法は以下の工程を含む:(1)サンプルに単色光源(例えば、532nm)を照射する工程、(2)535~600nmの散乱光強度プロファイルを測定する工程(および波長を波数に変換する工程)、(3)NIST標準SRM 2242から導出された較正定数でCCD出力を較正する工程、(4)適切なソフトウェアアルゴリズムを使用して蛍光バックグラウンドからラマン寄与を分離する工程、(5)工程1~4を繰り返し、所望の信号雑音比が得られるまでの時間の関数としてラマンピークの変化率を特徴づける工程、(6)変化率においてシステムのバイアスに関するあらゆる必要な補正を実行する工程、(7)所定の閾値に基づいてサンプルを診断するために補正された変化率を使用する工程。
【0669】
検出および信号測定システム:コリメートレンズのアライメント
一部の態様において、対象のシステムは、単色光源からの光をサンプルに集束させ、サンプルバイアルからの光散乱を収集するコリメートレンズを含む。このレンズをガラスバイアルに近づけすぎると、散乱光の一部がレンズの収集領域外で失われる可能性がある。さらに、この損失の大きさは、レーザービーム位置の小さな変化により(またはモードホッピングにより)変化する可能性がある。よって、レンズの位置が理想に満たない場合、この影響に起因して、測定されたラマン強度に大きな変化が生じる可能性がある。図19に示すように、コリメートレンズの位置を体系的に変更することにより、焦点がガラスバイアル内の液体層の約0.4mm内部になる位置が適切な位置であると判定される。図19は、NISTプロファイルの信頼区間の変化を、ガラス-液体層の縁部とコリメートレンズの焦点との間の距離の関数として示している。
【0670】
コリメートレンズの位置を特徴づけるために、レンズの位置を変化させ、散乱光を測定した。ガラスの壁から開始して、焦点が液体層内に移動すると、ラマン強度はまず上昇し(焦点が液体をより多く覆うため)、その後低下する(散乱光が液体内の吸収により減衰するため)。図20は、サンプルチャンバ2~8についてコリメートレンズの位置の関数としてのラマン強度プロファイルの変化を示している(サンプルチャンバ1はNIST標準用に確保されている)。強度は位置5.65mmで最大になり、これは、ガラス-液体界面の縁部に対応する。界面の性質は、ガラスバイアルの表面層に依存する。図21は、焦点位置の小さな変化に対して測定のロバスト性をより高めるために双性イオン層(上述)使用法を示している。図21は、ガラス液体層の縁部からの焦点位置の関数として、非感染対照サンプルの勾配を示している。未被覆サンプルの場合、焦点の位置によって勾配が大きく変化する。双性イオン層で被覆されたガラスバイアルの場合、勾配は焦点の位置とは独立しているように見え、界面層が液体のより深くまで伸びていることを示す。
【0671】
(1)未被覆ガラスバイアルの場合、短時間で大きな信号が現れる。しかし、図22Aおよび図22Bに示すように、この信号は急速にゼロまで低下し、さらに長い時間では反転することさえあり得る。(2)双性イオン被覆サンプルの場合、信号雑音比は時間とともに上昇し続ける。よって、未被覆ガラスバイアルの場合、妥当な信号を得ることができるが、焦点の位置および信号記録の時間に依存し得る。被覆ガラスバイアルの場合、測定値のロバスト性が大幅に高まっていることがわかる。図22Aは、双性イオン被覆ガラスバイアルの信号雑音比を示しており、図22Bは、ガラス表面から0.4mmの焦点で測定した未被覆ガラスバイアルの信号雑音比を示している。双性イオン被覆バイアルの場合、SNRは時間とともに着実に上昇する。未被覆バイアルの場合、約900秒で重要な信号があるが、この信号は急速にゼロまで低下し、さらに長い時間では反転さえする。
【0672】
検出および信号測定システム:サンプル容器の界面におけるフロー
単色光源によって照射されるサンプルの量が、そのサンプルバイアルについて取得されるすべてのスペクトルに対して変わる場合、測定され得るレーザー誘起非線形ラマン共鳴信号はない。同じ量のサンプルを確実に測定するために、以下の工程が行われる:(a)光学システムが測定ごとに同じ量を調べることができるように、完全にまたはほぼ完全に静止状態にガラスバイアルおよびその中のサンプルを維持する;(b)光学システムがガラス表面に近い体積を調べることを確実にする。ガラス-液体界面に界面層があり、そこでは液体層の相対速度はゼロに近い。この体積を調べる場合、このサンプリングされる体積は、複数の測定にわたってほぼ不変のままである。ただし、結果は、界面層の性質とコリメートレンズの正確な位置決めとの両方に極めて敏感になる。コリメートレンズの焦点が十分に深くない場合、レーザーモードホッピングに起因してエラーが発生する可能性がある。焦点が深すぎる場合、サンプリングされた体積は動きに起因して変化する可能性があり、これにより信号の大きさが低下する(または場合によっては完全に反転する)。これらの考慮事項に基づいて、特定の態様におけるコリメートレンズの適切な位置は、ガラス-液体層の縁部から約0.2mmである。図23は、4つの対照サンプルおよび3つの10CFU/mL黄色ブドウ球菌含有血漿入りサンプルにおいてラマンピークの測定された変化率の差として推定され、rms標準偏差で除した信号雑音比の変動を示している。コリメートレンズが液体層の奥深くに移動すると、信号は小さくなり、事実上消える。さらに、信号はまた短命であり、900秒で測定できるが、2500秒では極めて小さくなる。この挙動は、未被覆ガラスバイアルに典型的なものである。界面層の性質は、ガラス表面にコーティングを施すことで操作できる。上記のように、ガラス表面に双性イオン層を施すと、界面層がサンプル体積塊のより深くまで広がる。
【0673】
操作の機器シーケンスの例
制御ソフトウェアは、機械式シャッターを「開く」ように分光器に命令する(つまり、試験サンプルをレーザー光に曝露する)。(シャッターが動くための)0.05秒の遅延後、CCDは1.6秒間のデータ収集を開始するように命令される。次いで、CCDデータは読み取り電子回路に移され、ラップトップコンピューターによって取得される。
【0674】
NIST較正標準(チャンバ1内)が1.6秒間光路に曝露されるように、機器はサンプルステージに回転するように命令する。次いで、次のチャンバに移動するよう回転ステージに命令し、そのチャンバ内のサンプルを曝露させる。このプロセスは、機器が7つのチャンバすべて(装填されていれば)およびNIST較正標準について1つのスペクトルを取得するまで繰り返される。この8つの測定値のセットはサイクルと呼ばれ、通常26秒かかる。
【0675】
機器は33分にわたって試験を実行する(試験サイクルは75回にわたり、各サイクルには26秒かかる)。最初の5サイクルは「暗サイクル」であり、機械式シャッターは開かれない。これらの5つの暗サイクルは、機器(レーザー/CCDなど)が安定する機会を与える。これらの5サイクルの後、サイクル中に命令されたときに機械式シャッターが開く。
【0676】
取得した各スペクトルに対して、ソフトウェアはデータを分析するための一式の数学的アルゴリズムを開始する。(1)まず、CCD出力から「暗電流」を差し引き、結果として得られたスペクトルのX軸を、事前定義された線形変換係数を使用してピクセル数から周波数に変換する。(2)次に、生のCCD出力に較正係数を乗ずることにより、機器間のばらつきに名目上依存しないスペクトルを提供する。(3)3番目に、Lieberの方法に基づくアルゴリズムを実施して、バックグラウンド蛍光を推定する。(4)次いで、1156、1516、4000cm-1のスペクトルプロファイルのピークを検出する(実施例のバイオマーカーに関連する主要なピーク。血漿サンプルでは最後のピークは無視される)。(5)最後に、これらのピークの高さおよび曲線下面積がテーブルに格納され、後続の分析工程で使用される。
【0677】
ソフトウェアは、これらのデータポイントによって規定される線の勾配の計算を開始する。これは、National Instrument社のLabViewパッケージに標準的に付属する最小二乗線形フィッティングアルゴリズムを使用して、データを(ピーク高さおよび曲線下面積対時間、1516および1156cm-1ピークの両方ならびに4000cm-1ピークに対して個別に独立して)フィッティングすることにより行われる。このアルゴリズムはまた、勾配およびy切片の値の95%信頼区間(95%CI)を計算する。この勾配から、3000cm-1での蛍光バックグラウンドの勾配が差し引かれ、この正規化工程は、大きな粒子凝集塊によって引き起こされる界面層への歪みによって導入されたデータへのシステムバイアスを除去する。
【0678】
アルゴリズムは、勾配を(勾配の95%CIとともに)前の試験で設定された決定閾値と比較する。閾値は、非感染サンプルを診断するために勾配>-0.5×10-5/秒に設定され(観測された勾配がこの値より大きいサンプルは感染していないと診断される)、感染サンプルを診断するために600秒の期間で勾配<-1.5×10-5/秒と設定され(観測された勾配がこの値よりも小さいサンプルは感染していると診断される)、感染サンプルの場合、信号は時間とは逆に減衰することが観測される。これらの2つの値の間の勾配があるサンプルは、「二分(dichotomous)」と診断される。診断のために、平均勾配は1156、1516、および4000(もしあれば)cm-1ラマンピークから計算される。
【0679】
ラマン信号の寄与と蛍光信号の寄与とを分離するためのソフトウェアアルゴリズムの例
試験の性能を最大化するためのアルゴリズムが実装される。Lieberの方法が、バックグラウンド蛍光を差し引くために使用される。この方法が図24に示されており、図24は、ラマンピークおよびバックグラウンド蛍光からの寄与を含むスペクトルに5次多項式をフィッティングするためのLieberの方法を示している。生の測定スペクトルは、5次多項式曲線にあてはめられる。フィッティングされた多項式よりも高い入力スペクトルのデータポイントは、フィッティングされた多項式に置き換えられ、修正されたスペクトルは新しい多項式にフィッティングされる。対象の方法の特定の態様において、Lieberの方法は以下によって最適化される:(a)Lieberの方法が第1のスペクトルに実施される。バックグラウンド蛍光には、波数1050cm-1と1650cm-1との間の5次多項式(一部の場合において4次多項式が使用される);(b)後続のスペクトルには、バックグラウンド蛍光のフィット(すなわち、上記の5次多項式)がその振幅を変えて使用される。フィットを制約する手法により、結果に増幅された数学的アーティファクトが含まれないことが確実となる。
【0680】
レーザー出力の変動および機器の誤差
複数の態様において、時間の関数としてのラマンピークの変化率が測定される。これらの測定は、レーザー出力の変化、および機器のアライメントにおける様々な不安定性の影響を受け得る。レーザー出力の均一なドリフトはNIST標準を介して補正され得るが、高次の不安定性はNIST標準では補正できない。ただし、(潜在的に、レーザーモードホッピング、および試験中のアライメントレンズのいずれかの位置のドリフトを含む)不安定性を特徴づけることは、疑わしい測定にフラグを立てるのに役立つ。
【0681】
これを行うために、NIST標準からの出力の特性が明らかにされ、勾配および勾配信頼区間が実験の最後に測定される。図25に示すように、人為的に添加されたサンプルで作業する場合、信号雑音比は勾配と勾配のCIとの両方で変化することがわかった。具体的には、図25は、コリメートレンズが理想的な位置にあり、すべての測定で被覆ガラスバイアルが使用されている状態で、測定終了時の信号雑音比の変化を示している。各SNR値は、4つの非感染対照サンプルおよび3つの10CFU/mL黄色ブドウ球菌感染血漿入りサンプルの1つの測定セットを表す。測定が繰り返され、SNRはNIST標準の推定勾配(上)と勾配自体(下)の信頼区間の関数としてプロットされる。
【0682】
よって、NISTプロファイルが「クリーン」であり(すなわち、SNRが1より大きいと予期される)、NIST勾配のCIは0.25未満であり、勾配自体は-1~0.1×10-5/秒である測定値は、さらなる分析が考慮される。
【0683】
実施例7:サンプル中の微生物の存在の特徴づけ
病原性微生物の有無の判定を図26に示す。本実施例は、次のように作製された人為的に添加されたサンプルでの試験の使用を示している:(a)最初に、緩衝剤中の黄色ブドウ球菌の原液を1000CFU/mLの濃度で調製する。この原液0.05mL(または予期される50CFU)を、血液バンクから購入した血漿5mLに添加し、2時間インキュベートする。(b)この感染血漿0.6mLを、容量3.9mLの標準試薬製剤に添加する。この血漿から3つの「感染」サンプルが作製される。(c)試薬製剤に0.6mLの非感染血漿(2時間のインキュベーションも行われている)を添加することにより、4つの非感染対照サンプルが作製される。7つの試験バイアルすべてを同時に試験し、結果を図26A図26Cに示す。これらの既知のサンプルを使用することにより、測定を特徴づけるために単純な統計的測定(信号雑音比など)を使用できる。
【0684】
試験の実行中、個々の試験バイアルについて、ラマンピークの高さおよびその変化率が継続的にモニターされる。図26A図26Cは、これらの測定値を対照および感染サンプルを集約したものとして示している。感染サンプルでは、ラマンピークは時間とともにゆっくりと低下する。図26Aは、4つの非感染対照サンプルおよび3つの感染サンプルについて集約されたラマンピークの振幅を示している。曲線下面積の変化率を図26Bに示す。信号は、非感染の対照と感染サンプルとの変化率の差として定義される。非感染対照サンプルは、NIST標準で観測される変化率と一致する変化率を示しており、これは、測定終了時に(0.59±0.16)×10-5/秒と推定される。図26Cは、非感染および感染サンプルの変化率のrms標準偏差で信号を除したものとして推定された信号雑音比を示している。
【0685】
最終診断では、この値は推定勾配から差し引かれ、これにより、図27に示すように、集約された対照の勾配(および個々のバイアルの値)がゼロの線のわずか下まで低下する。具体的には、図27は、対照および感染の値について集約され、NIST標準で観測された変動について補正した推定勾配を示している。NISTプロファイルのドリフトについて補正し、SNR>>1になるように十分に長い期間データを収集した後、サンプルを分析して病原性微生物が存在するか否かを判定できる。細菌細胞を血漿に添加し、感染血漿を標準試薬に添加する。細菌細胞を血漿に加え、2時間インキュベートし、高速(12krpm、5分間)で遠心分離して血漿から細菌細胞を除去する場合(ブロス培地での培養により除去を確認)に同様の結果が観測され、この感染/遠心分離された血漿を試薬バイアルに添加する。
【0686】
実施例8:病原体のない感染サンプル
臨床シナリオでは、サンプリング量の影響を考慮する必要がある。ほとんどの血流感染症患者の血中病原体濃度は約1~10CFU/mLである。さらに、採血中に採取される血液の量は一般に約10mL程度に制限される(多くの場合、それよりも少なくなる)。よって、数人の感染患者については、ポアソンのサンプリング統計に起因して、採血において存在するのが0CFUとなることが予想される。対象の方法は細菌自体だけでなく、細菌によって生成されたフリーラジカルを検出できるため、本明細書に記載の方法は依然としてそれらのサンプルを「感染」として識別することができる。
【0687】
これを実証するために、プロトコルが以下のようである2番目の実験について以下に説明する:(a)最初に、緩衝剤中の黄色ブドウ球菌の原液を1000CFU/mLの濃度で調製する。この原液0.05mL(または予期される50CFU)を、血液バンクから購入した血漿5mLに添加し、2時間インキュベートする。(b)血漿から細菌を除去するために、この血漿を12000rpmで5分間遠心分離する。プレートカウント法を使用して、遠心分離前後の血漿中の病原体濃度を特徴づける。(c)この感染血漿0.6mLを3.9mLの標準試薬製剤に添加する。この血漿から3つの「感染」サンプルが作製される。(d)試薬製剤に0.6mLの非感染血漿(2時間のインキュベーションも行われている)を添加することにより、4つの非感染対照サンプルが作製される。7つの試験バイアルすべてを同時に試験し、結果を図28A図28Cに示す。図28Aは、曲線下面積から推定された非感染および感染サンプルの推定変化率を示すグラフである。信号は、非感染の対照と感染サンプルとの変化率の差として定義される。図28Bは、非感染および感染サンプルの変化率のrms標準偏差で信号を除したものとして推定された信号雑音比を示している。図28Cは、細菌が遠心分離され除去されたこのサンプルセットの時間の関数としての信号を示すグラフである。比較のために示されているのは、細菌を除去するための遠心分離工程がないサンプルセットである。トレースから明らかなように、細菌が遠心分離された場合、信号は弱くなり、また時間とは逆に減少する。対照的に、細菌が試験サンプルに存在する場合、信号は時間の平方根とともに減衰する。
【0688】
実施例9:臨床サンプルの特徴づけ
臨床サンプル(すなわち、ヒト患者からの血漿を含むサンプル)については、いくつかの追加要因がさらに考慮され、例えば、血漿は、界面での流れをゆがめる、および/または体系的なバイアスをデータに与える他の変化を引き起こす様々なタンパク質や脂質の凝集塊を含み得る。これらのバイアスを正規化するために、(例えば、3000cm-1における)蛍光出力の勾配が考慮される。正規化に使用されるアルゴリズムは次のとおりである:
(a)最初に、上記の方法を使用してラマンピークの勾配を計算する。
(b)次に、3000cm-1での蛍光出力の勾配を計算する。この勾配が特定の事前定義された閾値よりも小さい場合、雑音が多すぎるとして測定を却下する。この場合、この閾値は-4.5×10-5/秒に設定される。
(c)蛍光出力の勾配が閾値より小さい場合、ラマンピークの勾配からこの値を差し引く。これが「信号」である。
(d)最初に極めて小さい振幅を有し得るサンプルを考慮する、これは、血漿中の多数の赤血球の存在、多数のアルブミン分子の凝集を含む様々な理由による可能性がある。アルゴリズムは、患者に害を及ぼす可能性のある偽陰性の可能性を防ぐために、これらのサンプルに感染のフラグを立てる。
(e)最終的な勾配(蛍光の勾配を差し引き後)が-1×10-5/秒未満である場合、またはラマンピークの振幅が0.22未満(NISTプロファイル=1の場合)の場合に、サンプルは感染していると診断される。最終的な勾配(1000秒で測定)が-0.8×10-5/秒より大きく、かつラマンピークの振幅が0.22より大きい場合、サンプルは非感染と診断される。勾配の閾値は、細菌が存在しないスケーリング挙動で示唆される閾値よりも著しく大きい(約-0.25×10-5/秒)が、細菌が存在するスケーリング挙動よりもわずかに小さい(-1×10-5/秒)。
【0689】
1つの例示的な実施例を図29Aおよび図29Bに示す。対象の迅速試験方法の結果は、血液培養の結果と比較される。この試験は、血流感染症の疑いのある患者(および血液培養検査の発注もされた患者)に対して行われたCBC(全血球計算)検査の残りから得られた廃棄血漿サンプルに対して行われる。CBC検査が行われた後、CBC検査バキュテナーが回収され、血漿層から0.6mLがアリコートされる(これらの血漿サンプルの一部には、残存赤血球に起因するかなりの量の赤変があった)。0.3mLのグルタチオン(GSH)を含み、37℃で18時間インキュベートした試薬に0.6mLの血漿層を添加する。試験バイアルを試験機器に入れ、すぐに試験した。図29Aはラマンピークの変化率を示しており、図29Bは、異なる患者からの血漿を添加してなされた一連の試験のラマンピークの振幅を示している。上記のアルゴリズムでは、振幅(図29B)または勾配(図29A)が「感染」帯域にある場合、サンプルは感染していると診断される。全体的な検出メトリックは次のとおりである:
(a)本明細書に記載の対象の方法により「陰性」と診断され、かつ血液培養陰性でもある40個のサンプル。「40個の陰性」
(b)本明細書に記載の対象の方法により陰性と診断された血液培養陽性と診断された0個のサンプル。「0の偽陰性」
(c)血液培養陽性であり、かつ本明細書に記載の対象の方法によっても陽性と診断された6つのサンプル。「6つの真陽性」
(d)血液培養陰性であり、かつ本明細書に記載の対象の方法により陽性と診断された7つのサンプル。「7つの偽陽性」
(e)血液培養陰性であったが、本明細書に記載の対象の方法は(勾配が中間範囲にあったため、または蛍光勾配が設定された閾値の外で変化したために)診断を行うことができなかった13個のサンプル。4つのサンプルは血液培養陽性であったが、対象の方法によって診断は判定されなかった。
【0690】
これらの設定では、感染サンプルの場合、図30に示すように、ラマンピークの変化率は、血液培養試験で陽性になるまでの時間と相関している。
【0691】
異なるサンプルタイプの経時的な信号の大きさの比較を図31Aおよび図31Bに示す。具体的には、図31Aは、異なるサンプルタイプの信号の時間変化をまとめた複数の試験実行の信号の大きさ(非感染対照サンプルのラマンピークの変化率から感染サンプルのラマンピークの変化率を減じたもの)を示している。すべての場合において、信号の大きさは時間とは逆に減衰する。試験サンプルに10CFU/mLの黄色ブドウ球菌が存在する場合の複数の実行が示されている。図31Bは、異なるサンプルタイプの1000秒での信号強度を示している。細菌が遠心分離されると、信号は小さくなるように見える。信号は臨床サンプルで著しく高いようである。
【0692】
さらに、臨床サンプルにおける信号強度は、2時間のインキュベーションを伴う場合でさえも、試験サンプル中に10CFU/mLの黄色ブドウ球菌が存在するサンプルの信号強度よりも著しく大きいようである。臨床サンプルの病原体濃度は1~10 CFU/mLであると予期され、また0.6mLの血漿しかサンプリングされないため、臨床サンプルの多くには活性細菌が存在しないと考えられる。これらの臨床サンプルの信号の大きさが大きいことを考えると、本明細書に記載の方法が細菌によって生成されたフリーラジカルに応答していることは明らかである。
【0693】
実施例10:抗微生物剤の最小発育阻止濃度の測定
最小発育阻止濃度を測定するため、または候補抗微生物剤に対する未知の病原体の抗微生物剤感受性を特徴づけるために:
(a)未知の病原体を富栄養培地で約3時間インキュベートする。この期間は、原因病原体の濃度を約100倍よりも大きく上昇させるのに十分であるべきである。よって、元のサンプルの1CFU(またはそれ以上)は100CFUよりも大きくなる。
(b)病原体を約7つの等しい部分にアリコートし、各部分に少なくとも14CFUがあると予期され、これは、予期されるCFUの数(この場合は14)の平方根のポアソンのサンプリングエラーよりも十分に大きい。
(c)各部分に、0.125μg/mLの極めて低濃度から始めて、0.25、0.5、1、2、4、および8μg/mLと2倍ずつ増加する可変濃度の候補抗微生物剤を添加する(この範囲は、2倍ずつ7段階で所望のMICに及ぶように設計されている)。この混合物をさらに20分間インキュベートし、これにより、10CFUが候補抗微生物剤と相互作用するのに十分な時間が得られる。
(d)7つの混合物を試験バイアルに添加し、試験する。混合サンプル中に存在するフリーラジカルの数は、抗微生物剤の濃度の関数であるため、最終濃度を抗微生物剤濃度に対してプロットして、MICの推定値を導出できる。これを図32Aおよび図32Bに示す。
【0694】
図32Aは、抗微生物剤(バンコマイシン)濃度の関数として測定された勾配を示している。図32Bは、試験されたサンプルが濁るのにかかる時間を示している。2μg/mLを超えると、サンプルは極めて長いインキュベーション期間(96時間より長い)の間透明のままである。よって、最小殺菌濃度MBCは約2μg/mLである。0.25mg/mLを超えると、濁るまでの時間がわずかに長くなる。よって、MICは約0.25mg/mLである。図32Aおよび図32Bに示すように、MICは信号がわずかに低下する濃度に対応する。さらに、MBC(最小殺菌濃度)は、信号が再び上昇する濃度に対応する。
【0695】
実施例11:未知の微生物の表現型を判定するための方法
サンプル中の未知の微生物の表現型は、追加の架橋物質を使用することにより判定され得る。以下では、グルタミン酸基の隣に開裂可能なペプチド結合を含む架橋物質を添加することにより、サンプル中のペプチダーゼが識別される。ジスルフィドクロスリンカーを用いたグルタミン酸誘導体の合成をスキーム1に示す。
【0696】
スキーム1
【0697】
化合物1:マグネチック撹拌子を含む250mLの丸底フラスコに、3.0グラム(26.4ミリモル)のシステアミン塩酸塩(Sigma-Aldrich、カタログ番号:M6600)および60mLのメタノールを加えた。混合物をマグネチックスターラーで撹拌して溶液を形成した。この溶液に、6.2グラム(28.2ミリモル)の2,2'-ジチオジピリジン(Sigma-Aldrich、カタログ番号:43791)を少しずつ加えた。得られた黄色の溶液を一晩撹拌し、Rotavaporを使用して濃縮して乾燥粉末にした。黄色の生成物を高真空ポンプで4~5時間さらに乾燥させて、9.03グラムの黄色の粉末生成物を得た(収率約98.2%)。この生成物混合物は、未反応の出発物質である2,2'-ジチオジピリジン、所望の生成物である化合物1、および副生成物2-チオピリジンを含んでいた。さらに精製することなく、生成物混合物を次段階の反応に使用した。化合物2:マグネチック撹拌子を含む250mL丸底フラスコに、0.5gm(2.0ミリモル)のBOC-L-グルタミン酸(Sigma-Aldrich、カタログ番号:16345)、0.86グラム(4.5ミリモル)のEDAC(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩、Sigma-Aldrich、カタログ番号:E7760)、0.52グラム(4.5ミリモル)のNHS(N-ヒドロキシスクシンイミド、Sigma-Aldrich、カタログ番号:56480)、および40mLのジクロロメタンを加えた。混合物をマグネチックスターラーで2時間撹拌し、透明な溶液が形成された。この溶液に、4mLのTEA(トリメチルアミン、EMD、カタログ番号:1200-5)および100mgのDMAP(4-(ジメチルアミノ)ピリジン、Aldrich、カタログ番号10,770-0)を加え、次いで1.4グラムの化合物1混合物を加えた。反応混合物を一晩撹拌し、30mLの5%NaHCO3水溶液で3回洗浄し、底部溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させた。Rotovaporにより溶媒を除去した後、カラム精製のために生成物残渣を5mLのCH2Cl2に溶解した。30グラムのシリカゲルをCH2Cl2とともにロードし、粗生成物溶液をカラムにロードし、カラムをCH2Cl2、1%CH3OH/CH2Cl2および2%CH3OH/CH2Cl2、3%CH3OH/CH2Cl2で溶離した。画分は、5%CH3OH/CH2Cl2(Rf=0.28)で展開する順相TLCプレートで識別された。所望の画分をプールし、濃縮して、0.28グラム(0.48ミリモル)の半流動化合物3を収率22.2%で得た。CDCl31H NMRスペクトルは、化合物3の提案された構造と一致する。化合物4:マグネチック撹拌子を含む100mLの丸底フラスコに、0.28グラム(0.48ミリモル)の化合物3、15mLのメタノール、および3mLの濃塩酸溶液を加えた。得られた混合物を15分間撹拌し、Rotavaporにより少量に濃縮した(大部分は水)。生成物残渣を高真空でさらに乾燥乾固させた。約3mLのエタノールを加えた後、生成物混合物をさらに高真空下に置いて、0.29グラム(0.479ミリモル)の粉末生成物である化合物4を収率99.8%で得た。さらに精製することなく、生成物を水に溶解でき、0.1mMのNaOH溶液を使用してpHを5.3に調整しており、これは、活性化ジスルフィドとのタンパク質のシステイン残基によるジスルフィド交換によってアルブミンなどのタンパク質を架橋するために使用される。
【0698】
クロスリンカーは、図33Aに示すようにバックグラウンドのUV-Vis吸収を増加させるが、UV-Vis吸収は、クロスリンカーの含有量が多いと時間とともに減少する(アルブミンネットワークがGSHによって再組み換えされる)。図33Aは、アルブミン上の還元ジスルフィド結合と交換する2つのジスルフィド結合を含み、それによりアルブミン分子のネットワークを形成するペプチドクロスリンカーの650nmでの吸光度の結果を示している。(レイリー散乱による)アルブミンからのバックグラウンド吸光度は、クロスリンカーの含有量とともに増加する(対応して、クロスリンカーを含む本試薬試験バイアルは、病原性微生物で観測されるものと同様の信号を示す)。特定の細菌は、グルタミン酸ペプチド結合(例えば、黄色ブドウ球菌)を開裂できるペプチダーゼを産生し、ラマン信号の経時的な上昇をもたらす(図33B)。この上昇率は、病原体の濃度に対応する。これは、図34に示すように、ラマン試験の結果にも対応している。クロスリンカーの含有量が低い場合、アルブミンネットワークの形成と一致して、ラマンピークは時間とともに低下する。クロスリンカーの含有量が多い場合、ラマンピークが上昇する。特定の態様において、架橋アルブミンネットワークは、細菌代謝産物(本事例ではペプチダーゼ)によって単量体アルブミンに還元される。例えば、ペプチダーゼを試験するために、クロスリンカー:アルブミンの比を1:2に設定した。
【0699】
アルブミンと混合すると、クロスリンカーのジスルフィド結合はアルブミンのシステイン基と交換され、アルブミン二量体を形成する。また、これにより、レイリー散乱に起因するバックグラウンド吸光度が増加する(図33A)。極めて大量のクロスリンカーを含む試薬システムの場合、架橋アルブミンは経時的にジスルフィド結合を再組み換えし、レイリー散乱をゆっくりと減少させるようである。よって、これらの実験では、クロスリンカー:アルブミンの比を1:2に設定した。この系では、フリーラジカルによって引き起こされるアルブミン架橋に似て、ラマンピークは時間とともに振幅が低下する。ペプチドジスルフィドクロスリンカーを含む試薬系がペプチダーゼを産生する細菌に曝されると、クロスリンカーの開裂により界面層が破壊され、ラマンピーク振幅が上昇する。これは、4mL試薬で10CFUを超える検出限界のある接種物依存性を示唆している。(図33B
【0700】
実施例12:蛍光を介した検出および特徴づけ
病原性微生物の有無の判定を図35Aおよび図35Bに示す。本実施例は、次のように作製された人為的に添加されたサンプルでの試験の使用を示している:(a)最初に、緩衝剤中の黄色ブドウ球菌の原液を1000CFU/mLの濃度で調製する。この原液0.05mL(または予期される50CFU)を、血液バンクから購入した血漿5mLに添加し、2時間インキュベートする。(b)次いで、血漿から細菌を除去するために、この血漿を遠心分離する。0.6mLのこの感染血漿を3.9mLの体積の標準試薬製剤に添加する。この血漿から3つの「感染」サンプルが作製される。(c)試薬製剤に0.6mLの非感染血漿(2時間のインキュベーションの後遠心分離も行われている)を添加することにより、3つの非感染対照サンプルが作製される。(d)添加なしで試薬バイアルを取ることにより1つの試薬対照サンプルバイアルが作製される。7つの試験バイアルすべてを同時に試験し、結果を図35A図35Bに示す。これらの既知のサンプルを使用することにより、測定を特徴づけるために単純な統計的測定(信号雑音比など)を使用できる。
【0701】
試験の実行中、適切な周波数の蛍光値が継続的にモニターされ、個々の試験バイアルについて変化率が計算される。図35Aは、これらの測定値を対照および感染サンプルならびに単一試薬対照サンプルを集約したものとして示している。図35Aは、3つの非感染対照サンプル、3つの感染サンプル、および試薬サンプルについて集約された蛍光値を示している。非感染対照サンプルの蛍光値は、蛍光消光のプロセスに起因して低下する。感染サンプルの低下率は、これよりもいくらか大きい。信号は、非感染の対照と感染サンプルとの蛍光変化率の差として定義される。非感染対照サンプルは、試薬対照サンプルで観測される変化率と一致する変化率を示しており、これは、この実施例においては測定終了時に(-2.2±0.1)×10-5/秒と推定される。図35Bは、非感染および感染サンプルの変化率のrms標準偏差で信号を除したものとして推定された信号雑音比を示している。
【0702】
最終診断では、試薬バイアルの蛍光の変化率が、試験バイアル内の蛍光の変化率から差し引かれる。試薬対象標準のドリフトについて補正し、SNR>>1になるように十分に長い期間データを収集した後、サンプルを分析して病原性微生物が存在するか否かを判定できる。
【0703】
上記の発明は、理解を明確にするために例示および実施例によりある程度詳細に説明されてきたが、本開示の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、それらに対して特定の変更および修正が可能であることは当業者には容易に明らかである。
【0704】
従って、上記は本発明の原理を例示しているにすぎない。当業者は、本明細書において明示的に説明または図示されていないが、本発明の原理を具体化し、その趣旨および範囲内に含まれる様々な構成を考案できることを理解されたい。さらに、本明細書に記載されるすべての実施例および条件付き文言は、主に、そのような具体的に記載される実施例および条件に限定されることなく本発明の原理を読み手が理解するのを助けることを意図している。さらに、本発明の原理、局面、および態様ならびにその具体的な実施例を記述する本明細書のすべての記述は、その構造的および機能的均等物を包含することが意図されている。加えて、そのような均等物には、現在知られている均等物と将来開発される均等物との両方、つまり、構造に関係なく同じ機能を実行するあらゆる開発された要素が含まれることが意図されている。従って、本発明の範囲は、本明細書に示され説明された例示的な態様に限定されることが意図されるものではない。むしろ、本発明の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図23
図24
図25A
図25B
図26A
図26B
図26C
図27
図28A
図28B
図28C
図29A
図29B
図30
図31A
図31B
図32A
図32B
図33A
図33B
図34
図35A
図35B