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特許7135004ターゲットの通過を検出するセンサを備える測定装置を有する、内燃エンジン用のエンジン
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  • 特許-ターゲットの通過を検出するセンサを備える測定装置を有する、内燃エンジン用のエンジン 図1a
  • 特許-ターゲットの通過を検出するセンサを備える測定装置を有する、内燃エンジン用のエンジン 図1b
  • 特許-ターゲットの通過を検出するセンサを備える測定装置を有する、内燃エンジン用のエンジン 図2
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  • 特許-ターゲットの通過を検出するセンサを備える測定装置を有する、内燃エンジン用のエンジン 図3b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】ターゲットの通過を検出するセンサを備える測定装置を有する、内燃エンジン用のエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02D 35/00 20060101AFI20220905BHJP
   F02B 75/04 20060101ALI20220905BHJP
   F02F 3/00 20060101ALI20220905BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20220905BHJP
   G01D 5/14 20060101ALI20220905BHJP
   F16J 10/02 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
F02D35/00 362Z
F02B75/04
F02F3/00 F
F02F7/00 N
G01D5/14 H
F16J10/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019565327
(86)(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 FR2018051235
(87)【国際公開番号】W WO2018220319
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】17/54683
(32)【優先日】2017-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512297549
【氏名又は名称】エムシーイー-5 ディベロップメント
【氏名又は名称原語表記】MCE-5 DEVELOPMENT
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ベルトー, レネ―ピエール
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-525208(JP,A)
【文献】実開昭63-164535(JP,U)
【文献】特表2017-523409(JP,A)
【文献】特開2000-329546(JP,A)
【文献】特開2015-031278(JP,A)
【文献】特開2012-207642(JP,A)
【文献】特開2014-190297(JP,A)
【文献】特表2002-541472(JP,A)
【文献】実開昭60-153067(JP,U)
【文献】特開平09-297270(JP,A)
【文献】特開平11-030799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0055103(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0145969(US,A1)
【文献】特開2014-040819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 35/00
F02B 75/04
F02F 3/00
F02F 7/00
G01D 5/14
F16J 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンであって、前記内燃エンジンは、
脚部を有するコネクティングロッド、および前記コネクティングロッドの前記脚部に関連付けられたピストン(1)であって、前記ピストンは2つのスカート部分(2、2b)と、前記2つのスカート部分(2a、2b)を互いに接続する2つの補強側壁(6a、6b)とを備える、コネクティングロッドおよびピストンと、
前記側壁(6a、6b)のうちの1つに、または前記コネクティングロッドの前記脚部に配置されたターゲット(8)と、
少なくとも1つのシリンダ(3)を画定しており、前記シリンダの下に少なくとも1つのボア開口部を有するシリンダハウジングと、
前記シリンダハウジングの前記ボア内に配置された測定装置(9)であって、前記ターゲット(8)の通過センサ(10)、コネクタ(11)、および前記通過センサ(10)を前記コネクタ(11)に接続する少なくとも1つのケーブルを備え、第1の部品(9a)が前記コネクタ(11)を支持しており、第2の部品(9b)が前記通過センサ(10)を支持しており、前記第1の部品(9a)と前記第2の部品(9b)とは互いに関節式に連結されている、測定装置(9)と、
を備え、
前記ピストン(1)が低中立位置の近くにあるときに、前記ターゲット(8)が前記通過センサ(10)に対向して配置される、内燃エンジン。
【請求項2】
前記測定装置(9)の前記第1の部品(9a)が前記シリンダハウジングの中に完全に挿入されている、請求項1に記載の内燃エンジン。
【請求項3】
前記ボアが、前記エンジンのクランクシャフト軸線に垂直である、請求項2に記載の内燃エンジン。
【請求項4】
前記通過センサ(10)がホール効果センサを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃エンジン。
【請求項5】
前記エンジンが可変圧縮比を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃エンジン。
【請求項6】
前記壁(6a、6b)には、ピストンピンを保持するための強化ボス(7a、7b)が設けられており、前記ターゲット(8)が、前記強化ボス(7a、7b)のうちの1つに配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の内燃エンジン。
【請求項7】
前記ターゲット(8)が、前記コネクティングロッドの底部の近傍に配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の内燃エンジン。
【請求項8】
前記ターゲット(8)が、磁性体または金属体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の内燃エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンのピストンによって支持されるターゲットの通過を検出するセンサを備える測定装置に関する。このタイプの装置は、可変圧縮比を有するエンジンの分野で使用できる。
【背景技術】
【0002】
はじめに、内燃エンジンは一般に、シリンダ内でピストンをガイドするためのスカートを有する燃焼ピストンを含み、コネクティングロッドが、その脚部側においてピストンピンに関連付けられ、その頭部側においてクランクシャフトベアリングに関連付けられていることを思い起こされたい。これら2つのベアリングは通常、平行軸線を有する。ロッドの機能は、クランクシャフトが回転する際に、ピストンの並進運動を「上死点」から「下死点」に伝達することである。
【0003】
エンジンの圧縮率をその負荷に適合させると、エンジンの燃料効率の大幅な向上が可能になることが一般に認められている。例えば、無負荷における約12の値から全負荷における約8の値の間で圧縮比を変化させることが望ましい場合がある。
【0004】
しばしば圧縮率と呼ばれる、内燃エンジンの圧縮比は、ピストンが下死点にあるときの燃焼室の容積とピストンが上死点にあるときの燃焼室の容積との比に対応することにも留意すべきである。
【0005】
内燃エンジンの圧縮比および/または排気量を調節するためのいくつかのソリューションが現況技術において知られている。
【0006】
この調節を可能にするために実装されたソリューションが何であれ、エンジンを効果的に制御するために、例えばコンピュータ内部で、圧縮比を可能な限り直接測定することが多くの場合必要である。この情報は、例えば、エンジン燃焼室内の点火プラグをオンにしなければならない精密な時間または角度オフセットを決定するために使用できる。
【0007】
したがって、非接触位置センサを使用するソリューションが知られており、センサはシリンダハウジングに固定して配置され、ピストンまたはコネクティングロッドに固定して配置されたターゲットの近接度を識別する。センサはホール効果センサとすることができ、その場合、ターゲットは磁気素子または金属塊を含む。センサによって発せられた信号を分析することができ、その最大値が、ターゲットがセンサに最も接近して配置された時間を示す。数値モデルまたは事前に確立されたテーブルを使用して、例えば、センサによって提供される情報をクランクシャフトの角度位置と組み合わせることにより、圧縮比を決定できる。
【0008】
様々な可動部品(クランクシャフト、ピストン、コネクティングロッドなど)が動いている、シリンダハウジングによって画定されるスペースは、特に限定されている。この容積内に配置される追加要素(ターゲット、センサなど)は、高い信頼性を伴って、それらの機能を確保しながら、エンジンの動作を妨げないように精密に配置および構成される必要がある。特に、シリンダの幾何学的配置を変更する追加要素の一体化、および/またはこれらのシリンダに取り付けられ得るライナを損傷する可能性のあるいかなる機械加工も避ける必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的を達成するために、その目的の1つは、以下を含む内燃エンジンを提供することである。
・脚部を有するコネクティングロッド、およびコネクティングロッド脚部に関連付けられたピストンであって、ピストンは2つのスカート部分と、2つのスカート部分を一緒に接続する2つの補強側壁とを含む、コネクティングロッドおよびピストン、
・側壁のうちの1つに、またはコネクティングロッド脚部に配置されたターゲット、
・少なくとも1つのシリンダを画定し、シリンダの下に少なくとも1つのボア開口部を有するシリンダハウジング、
・クランクケースのボア内に配置され、ターゲット通過センサ、コネクタ、および通過センサをコネクタに接続する少なくとも1つのケーブルを備える測定装置であって、第1の部品がコネクタを支持し、第2の部品が通過センサを支持し、第1の部品と第2の部品とは互いに関節式に連結されている、測定装置。
【0010】
ピストンが低中立位置に近くにあるときに、ターゲットは通過センサに対向して配置される。
【0011】
本発明の他の有利かつ非限定的な特徴によると、単独でまたは技術的に実行可能な任意の組み合わせで以下を含む。
・測定装置の第1の部品がシリンダハウジングの中に完全に挿入されている。
・ボアはエンジンのクランクシャフトの軸線に垂直である。
・通過センサはホール効果センサである。
・エンジンは可変圧縮比を有する。
・ピストン壁には、ピストンピンを保持するための強化ボスが設けられており、強化ボスのうちの1つにターゲットを配置できる。
・ターゲットがコネクティングロッドの底部の近くに配置されている。
・ターゲットは、磁性体または金属体である。
【0012】
本発明の他の特徴および利点が、添付の図面を参照して、以下の本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a】本発明の一実施形態による内燃エンジンのピストンを表す。
図1b】本発明の一実施形態による内燃エンジンのピストンを表す。
図2】本発明によるピストンを含む内燃エンジンを示す。
図3a】エンジンブロックの中への挿入中の測定装置を表す。
図3b】動作位置にある測定装置を表す。
図4】動作位置にあるロック要素、および制御プルタブを有する測定装置を示す。
図5】戻り要素を有する測定装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1aおよび図1bは、本発明による2つの実施形態による内燃エンジンのピストン1を表す。ピストン1には、シリンダハウジングによって画定されたシリンダ3内でピストン1をガイドするスカート2a、2bが装備されている。極めて通常の方法で、スカート2は、ピストン1のキャップ4に接続され、リングを収容するための溝5を支持している。スカート2は2つの部分2a、2bから構成され、その断面は円形の一部分の形状である。2つのスカート部分2a、2bは、2つの側壁6a、6bを介して互いに接続されている。これらの2つの側壁6a、6bには、ピストンピンを収容するための強化ボス7a、7bが装備されており、このピストンをコネクティングロッド脚部に関連付けている。
【0015】
ターゲット8がピストン1の運動を妨げることを回避するために、ターゲット8は2つの側壁6a、6bのうちの1つに配置されている。ターゲット8は、金属体および/または磁性体を含んでもよく、または一般には、エンジン内に配置された通過センサの近傍における通過が識別され得る任意の材料から作製されてもよい。
【0016】
好ましくは、ターゲット8は、ピストン1の側壁6a、6bのうちの一方の下部、すなわちキャップ4の反対側に配置されている。ターゲット8は、ピストン1の吸気側または排気側のいずれかに配置できる。例えば、図1aに示すように、ターゲット8は強化ボス7a、7bのうちの1つによって支持されることができ、または、図1bに示すように、ターゲット8は側壁6a、6bのうちの1つの補強リブ上で支持されることができる。
【0017】
図示されていない代替形態では、ターゲットを、コネクティングロッド上、好ましくはコネクティングロッド脚部の近傍に配置することができる。
【0018】
図2は、前述したようなピストン1を有する内燃エンジンを示す。ピストンは、シリンダハウジングによって画定されたシリンダ3に配置されている。シリンダハウジングは、シリンダ3の下にボア開口部を有する。このボアは、エンジンブロックの内側に配置されることが意図された一端において、通過センサ10を含む測定装置9を収容するように寸法決めされている。通過センサは、例えば、ターゲット8の通過を検出するように構成されたホール効果センサであり得る。ボア内の正しい動作位置にある場合、ピストンが低死点位置またはその近くにあるときに、測定装置9はターゲット8に対向して配置される。
【0019】
図2に示す構成では、ボアはシリンダ3の中に直接開口していないが、測定装置9が関節式に連結されていなかった場合にはこうすることが必要であったであろう。実際、このような構成は、特にシリンダ3が、鋳造時に一体化されたまたは挿入されたライナを有する場合に、シリンダ3の内面を損傷しエンジン性能に影響を及ぼす可能性がある。
【0020】
加えて、この構成により、エンジンの動作を妨げることなく、非常に直接的な、したがって正確なピストン1の位置の測定値を取得することができ、これは、ターゲット8がコネクティングロッドによって支持されて取得する場合には、より困難であったであろう。
【0021】
好適には、その機械加工を容易にするために、シリンダハウジング内に形成されたボアは、クランクシャフトの主軸13に垂直である。
【0022】
上述のように、測定装置9は、ターゲット8用の通過センサ10を含む。測定装置はまた、センサ10をコネクタ11に接続する少なくとも1本の接続ケーブルを含む。ケーブルとコネクタは、通過検出測定値をコンピュータに通信するために使用される。
【0023】
ピストンが低死点位置にあるときに、ターゲット8が通過センサ10の前に配置されることを可能にするために、測定装置9は、互いに関節式に連結された2つの部品9a、9bで構成される。図3aおよび図3bは、それぞれ、エンジンブロックの中への挿入中の、およびその動作位置にある測定装置9を表す。
【0024】
第1の部品9aは、その自由端でコネクタ11を支持している。測定装置9がクランクケースのボア内に配置された場合に、第2の部品9bが、エンジンブロックによって画定された空間の内部に完全に配置されるように、第1の部品9aは十分な長さを有する。第2の部品9bは、その自由端で通過センサ10を支持している。ケーブルがセンサ10とコネクタ9との間を通ることができるように、部品9a、9bは両方とも中空であり得る。
【0025】
測定装置9は、第1の部品9aと第2の部品9bとが互いに整列している挿入位置に選択的に構成可能である。図3aに示すこの構成により、測定装置9がクランクケースのボアの中に挿入され、その動作位置に配置されることが可能になる。
【0026】
測定装置9はまた、第1の部品9aと第2の部品9bとが互いに整列していない動作位置に選択的に構成可能である。したがって、動作構成では、第1の部品9aと第2の部品9bは、例えば、図2および図3bに示すように、それらの間に90°の角度を有してもよい。この角度に関わらず、第1の部品9aと第2の部品9bとの間の関節式連結により、ピストン1がその低死点または低死点の近く(またはこの位置の近く)にあるときに、センサ10がターゲット8に対向して配置される動作位置に測定装置9を配置することが可能になる。
【0027】
エンジンオイルがエンジンブロックから漏れるのを防ぐために、クランクケースのボアと協働するシール部品12を、測定装置に取り付けることができる。
【0028】
好適には、測定装置9は、測定装置9を動作位置にしっかりと保持することを可能にするロック要素を含むことができる。ロック要素はクリップまたはストラットであり得る。ロック要素は、測定装置9をシリンダハウジング内に配置するときに手動で挿入できる。
【0029】
好ましくは、図4に示すように、測定装置には、測定装置9に沿って走るまたは測定装置9に一体化されたワイヤ要素またはプルタブ13を装備することができ、ロック要素をモータの外側から制御することが可能になる。これにより、ロック要素に直接アクセスする必要がもはやないため、測定装置9を取り付けること、および/または取り外すことが容易になる。
【0030】
図5に示す本発明の別の実施形態では、測定装置9のロック要素は、第1の部品9aと第2の部品9bとの間の接合部に配置された戻り要素14を含んでもよく、または戻り要素14で構成されてもよい。この戻り要素14は、外力が何らない場合、測定装置9を自然に動作位置に配置する傾向がある。この戻り要素14は、例えば、捻りばねであってもよい。
【0031】
図5に示すこの実施形態では、測定装置9が挿入されることを可能にするために、測定装置9の第1の部品の少なくとも一部がクランクケースのボアの中に挿入されるまで、測定装置9はその挿入位置に「力を加えて」配置される。測定装置9をエンジンブロックの中に挿入し続けることにより、第2の部品9bがエンジンブロックの中に完全に挿入されたときに、戻り要素14は測定装置9をその動作位置に構成する。
【0032】
選択された適用方法に関係なく、測定装置9を、例えばメンテナンスまたは保守目的で、エンジンブロックの内側からロック要素に手動でアクセスする必要なしに、「強制的に」ボアから引き抜くことができる。この引き抜きが接合部に力を加えることにより、測定装置の第1の部品9aおよび第2の部品9bが自然に挿入構成に配置される。
【0033】
もちろん、本発明は記載された実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を越えない範囲で代替実施形態を提供することができる。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4
図5