(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220905BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/165 101
B41J2/165 207
B41J2/165 203
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2020030989
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 維士
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅規
(72)【発明者】
【氏名】太田 宗孝
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-090715(JP,A)
【文献】特開平11-198413(JP,A)
【文献】特開2007-083706(JP,A)
【文献】特開2000-238295(JP,A)
【文献】米国特許第06273547(US,B1)
【文献】特開2007-245609(JP,A)
【文献】特開2004-098397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録領域にある記録媒体にインクジェット方式で記録を行うインクジェット記録装置であって、
インクを吐出するための吐出口が設けられた吐出口面を備え、前記記録領域と前記記録を行わない非記録領域とを含む範囲で移動可能な記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを支持して前記記録ヘッドと共に移動するキャリッジユニットと、
前記非記録領域において前記吐出口をキャッピング状態とすることが可能なキャップと、
前記記録ヘッドの移動方向において、前記記録領域と前記キャップとの間に配置され、前記記録ヘッドが前記非記録領域から前記記録領域へ移動する場合、前記記録ヘッドの前記吐出口を払拭するワイプを実行可能なブレードと、
前記キャリッジユニットの移動によって前記ブレードを上下に移動させることが可能なブレード移動手段であって、前記ブレードの上端の高さが前記吐出口面より高い位置となる第1の位置と、前記ブレードの上端の高さが前記吐出口面より低い位置となる第2の位置と、に前記ブレードを移動可能なブレード移動手段と、
前記記録ヘッドが前記記録領域から前記非記録領域へ移動する場合、前記記録ヘッドの移動方向において、前記吐出口面と前記ブレードが重なる位置にある状態において、前記ブレードを第2の位置とし、前記キャッピング状態にない前記キャップに向けて前記吐出口からインクを吐出する予備吐出を行っている状態において、前記ブレードを第1の位置となるように、前記ブレード移動手段
に前記ブレードを移動させるよう前記キャリッジユニットを制御する制御手段と、
を有することを特徴とする、インクジェット記録装置。
【請求項2】
記録領域にある記録媒体にインクジェット方式で記録を行うインクジェット記録装置であって、
インクを吐出するための吐出口が設けられた吐出口面を備え、前記記録領域と前記記録を行わない非記録領域とを含む範囲で移動可能な記録ヘッドと、
前記非記録領域において前記吐出口をキャッピング状態とすることが可能なキャップと、
前記記録ヘッドの移動方向において、前記記録領域と前記キャップとの間に配置され、前記記録ヘッドが前記非記録領域から前記記録領域へ移動する場合、前記記録ヘッドの前記吐出口を払拭するワイプを実行可能なブレードと、
前記ブレードを上下に移動させることが可能なブレード移動ユニットであって、前記ブレードの上端の高さが前記吐出口面と同じ位置となる第1の位置と、前記ブレードの上端の高さが前記吐出口面より低い位置となる第2の位置と、に前記ブレードを移動可能なブレード移動ユニットと、
前記記録ヘッドが前記記録領域から前記非記録領域へ移動する場合、前記記録ヘッドの移動方向において、前記吐出口面と前記ブレードが重なる位置にある状態において、前記ブレードを第2の位置とし、前記キャッピング状態にない前記キャップに向けて前記吐出口からインクを吐出する予備吐出を行っている状態において、前記ブレードを第1の位置となるように、前記ブレード移動ユニットを制御する制御ユニットと、
を有することを特徴とする、インクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1の位置は、前記ワイプを行うときの前記ブレードの位置であることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第2の位置は、前記ブレードの上端の高さが前記キャップの上面よりも低い位置であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記キャップの内部に負圧を付与して吸引する吸引ポンプを更に有し、
前記制御手段は、前記キャッピング状態で前記キャップの内部に負圧を付与して前記吐出口から前記インクを吸引するノズル吸引を行うことが可能であり、
前記制御手段は、前記ノズル吸引を行った後、前記予備吐出を行う前に、前記ブレードを前記第1の位置とすることを特徴とする、請求項
1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記キャップ内の前記インクの量を判定するための判定手段を更に有し、
前記予備吐出によって前記キャップ内の前記インクの量が所定量を超えると判定される場合に、前記ブレードを前記第1の位置に位置させた状態で前記予備吐出を行うことを特徴とする、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記予備吐出の発数に基づいて前記判定を行うことを特徴とする、請求項
6に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、記録ヘッドのインク吐出口から記録媒体にインクジェット方式でインクを吐出させることで記録を行うインクジェット記録装置が広く使用されている。このようなインクジェット記録装置では、吐出口が設けられた吐出口面に異物が付着してしまうことや、吐出口内のインクが乾燥し、増粘して目が詰まる等の現象が起こると、該当する箇所の吐出口から正常な吐出が出来なくなるため、画像不良が生じることがある。
【0003】
そこで従来、インクジェット記録装置にはこれらの異物や増粘インクを除去するためのクリーニング手段が知られている。このクリーニング手段は装置によって様々な形態/方法がある。代表例として、記録媒体に正常なインクを吐出させるために予めキャップに吐出を行って上記異物や増粘インクを排出させる吐出としての予備吐出(以下、予備吐ともいう)という手段がある。
【0004】
予備吐出を行うために、吐出口内の異物や増粘インクを吐出させ、それを受けるためのキャップ、さらにキャップ内には主に多孔質のインク吸収体が備えられる。このインク吸収体が吐出口内のインクを排出するために行う予備吐出の受け皿の役割を担う。その他、キャップに溜まったインクを吸引するため、圧力を発生できる吸引ポンプ、キャップとポンプを接続するためのチューブ状の流路部を用いる形態が存在する。
【0005】
なお上記予備吐出動作は、吐出口面に付着する異物や増粘インクの状態によって予備吐出によるインク排出量を可変させている。付着する異物や増粘インクが強固な場合、一般的に強力なクリーニングを用いて除去すること多い。
【0006】
しかしながら、上記クリーニングにおいてキャップに吐出させたインク排出量に応じてインク吸収体内に元々存在したエアーがインク吸収体表面に押し出され、インクの泡が発生することがある。また、インク吸収体の内部にインクと空気が混在した状態で予備吐出が行われることによっても、吸収体内のインクがエアーとともにインク吸収体の表面に押し出され、インクの泡が発生することがある。そして、予備吐出時に泡が破裂し、キャップ周辺に飛散することがある。
【0007】
そこでクリーニング時のインク飛散現象に対し、例えば特許文献1では、上記予備吐出を行うための領域とその他の領域とを遮蔽するために専用の遮蔽手段を装置に設けることでインクの飛散を防いでいる。またその他に記録装置内にファンを設けることで、クリーニング動作中に発生したインクミストを吸引し、装置内に設置された回収容器に廃液として蓄えるなどの手段が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし特許文献1の場合、インク飛散を防ぐために専用の遮蔽手段や吸引ファンを装置内に設けるため、ユニットの大型化やコスト増加が課題となる。
【0010】
本発明は、専用の遮蔽手段を設けることなく、予備吐出動作中に起きる記録領域へのインク飛散を抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題を解決するための手段の一例は、
記録領域にある記録媒体にインクジェット方式で記録を行うインクジェット記録装置であって、
インクを吐出するための吐出口が設けられた吐出口面を備え、前記記録領域と前記記録を行わない非記録領域とを含む範囲で移動可能な記録ヘッドと、
前記非記録領域において前記吐出口をキャッピング状態とすることが可能なキャップと、
前記記録ヘッドの移動方向において、前記記録領域と前記キャップとの間に配置され、前記記録ヘッドが前記非記録領域から前記記録領域へ移動する場合、前記記録ヘッドの前記吐出口を払拭するワイプを実行可能なブレードと、
前記ブレードを上下に移動させることが可能なブレード移動手段であって、前記ブレードの上端の高さが前記吐出口面と同じかより高い位置となる第1の位置と、前記ブレードの上端の高さが前記吐出口面より低い位置となる第2の位置と、に前記ブレードを移動可能なブレード移動手段と、
前記記録ヘッドが前記記録領域から前記非記録領域へ移動する場合、前記記録ヘッドの移動方向において、前記吐出口面と前記ブレードが重なる位置にある状態において、前記ブレードを第2の位置とし、前記キャッピング状態にない前記キャップに向けて前記吐出口からインクを吐出する予備吐出を行っている状態において、前記ブレードを第1の位置となるように、前記ブレード移動手段を制御する制御手段と、
を有するインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、専用の遮蔽手段を設けることなく、予備吐出動作中に起きる記録領域へのインク飛散を抑制することが可能なインクジェット記録装置およびその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明によるインクジェット記録装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】インクジェット記録装置の電気系統を示すブロック図である。
【
図5】ブレードがワイプ位置にある状態を示すクリーニングユニットの斜視図である。
【
図6】ブレードが退避位置にある状態を示すクリーニングユニットの斜視図である。
【
図7】ブレードが退避位置に位置する状態を示す側面図である。
【
図8】ブレードが退避位置に位置する状態を示す側面図である。
【
図9】ブレードを退避位置からワイプ位置に移動させる間の状態を示す側面図である。
【
図10】ブレードがワイプ位置に位置する状態を示す側面図である。
【
図11】インク飛散が発生する状態を説明する説明図である。
【
図12】インク飛散の発生を抑制する状態を説明する説明図である。
【
図13】印字中に画像不良が発生した場合にユーザー手動で実施するクリーニングを目的とした制御を説明するフローチャートである。
【
図14】ブレードの上昇可否判定をおこなうための制御を説明するフローチャートである。
【
図15】本発明のクリーニング動作以外で予備吐出を実施するクリーニング動作を説明する参考例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
図1は本発明によるインクジェット記録装置の一実施形態を示す斜視図である。
【0016】
インクジェット記録装置100(外装部品は不図示)は、キャリッジユニット1、キャリッジ駆動部2、記録媒体セット機構3、記録面基準部材4、クリーニングユニット5、を備える。これらの部分は、インクジェット記録装置100のベース部材に直接的または間接的に支持されている。以下では、
図1に記載のインクジェット記録装置100の各ユニットについて説明する。
【0017】
キャリッジユニット、キャリッジ駆動部
キャリッジユニット1は、記録媒体にインクジェット方式で記録を行うための記録ヘッド11を支持可能である。記録ヘッド11は、吐出部とインクタンクとを含むカートリッジとして一体構成されている。記録ヘッド11には、インクをインクジェット方式で吐出する複数の記録素子を配列した記録素子列が設けられている。
【0018】
本実施形態における記録素子は、インクタンクから供給されたインクを吐出する吐出口11a(
図7等を参照)と、吐出口11a内に設けられた吐出エネルギー発生素子(不図示)とにより構成されている。吐出エネルギー発生素子としては、電気熱変換素子(ヒータ)または電気機械変換素子(ピエゾ)などが用いられる。記録素子列は、キャリッジユニット1の移動方向である主走査方向(矢印A方向)と交差する副走査方向(B方向)に沿って配列されている。
【0019】
キャリッジ駆動部2は、駆動源であるキャリッジ駆動モータ12、キャリッジ駆動モータ12からの駆動をキャリッジユニット1に伝達するための駆動ベルト13、ガイド部14を備えている。キャリッジユニット1に備えられた係合部(不図示)と駆動ベルト13が係合していることで、キャリッジユニット1と駆動ベルト13は主走査方向(A方向)に一体的に移動可能である。
【0020】
本実施形態では、キャリッジ駆動モータ12としてDCモータを使用しているが、ステッピングモータなど、駆動源を駆動ベルト13に伝達できる手段であればよい。インクジェット記録装置100のベース部材にガイド部14が固定されている。ガイド部14は、キャリッジユニット1が主走査方向に沿って正確に移動するように案内すると共に、キャリッジユニット1上の記録ヘッド11の副走査方向(矢印B方向)における位置を規制する部分である。
【0021】
キャリッジユニット1は、ガイド部14に摺動可能に係合しており、キャリッジユニット1の姿勢を保持する。キャリッジユニット1の動作領域上には、リニアエンコーダ15が設けられている。リニアエンコーダ15は、キャリッジユニット1側に設けられたリニアエンコーダ読取手段(不図示)でキャリッジユニット1の主走査方向の動作位置を検出することにより、記録ヘッド11の吐出タイミングを制御する。このような位置検出手段は、リニアエンコーダ15の代用として、ロータリーエンコーダやステッピングモータ、透過型センサなど位置検出機能を持った技術でも代用可能である。
【0022】
図2は、
図1におけるキャリッジユニットの側面図である。
【0023】
記録ヘッド11は、吐出機構とインクタンクとを含む記録カートリッジとして一体構成されている。記録ヘッド11は、インクを吐出するための吐出口11aを備え、記録領域Rと、記録を行わない非記録領域Sとを含む範囲で移動可能である。
【0024】
なお、本実施形態において「記録領域」は、記録ヘッドが記録媒体に記録を行う領域をいい、典型的には前記記録の際に記録ヘッドが移動可能な領域をいう。より詳細には、記録ヘッドの移動方向において、記録ヘッドが記録媒体に記録を行う場合に、吐出口が位置する領域をいう。「非記録領域」は、記録ヘッドの移動方向において、記録ヘッドが記録を行わない場合に、吐出口が位置する領域をいい、典型的には吐出口のキャッピングやワイプ、予備吐出などのために記録ヘッドが位置する領域をいう。
【0025】
記録ヘッド11は、記録ヘッドホルダ202に保持されており、記録ヘッドホルダ202とともに記録系キャリッジ203として構成されている。記録系キャリッジ203は、駆動系キャリッジ204に保持されている。駆動系キャリッジ204と記録系キャリッジ203は、記録系キャリッジ付勢部材207によって係合されている。
【0026】
記録ヘッドホルダ202には、記録カートリッジに備えられた導通部と接点をとる不図示の記録カートリッジ制御基板を備えており、導通部により制御部と通信を取ることで記録カートリッジの取り付け状況などを制御部に伝えている。駆動系キャリッジ204を主走査方向に往復動作させる際、動作経路を案内するために、インクジェット記録装置100にはリニアエンコーダ15が設けられている。リニアエンコーダ15は、駆動系キャリッジ204の所定の部位で係合されることで記録系キャリッジ203の姿勢を保持している。
【0027】
記録媒体セット機構、記録面基準部材
記録媒体セット機構3は、記録媒体載置部16および透過型センサである記録媒体検出手段(不図示)を備えている。記録媒体が挿入されたことを記録媒体検出手段が検知すると、記録媒体載置部16が上昇して記録面基準部材4に近づく方向に移動し、記録媒体を記録面基準部材4に押し当てて保持するように構成されている。
【0028】
このように記録媒体が記録面基準部材4に対して押圧・保持されることで、中身の入った封筒など様々な厚みの記録媒体においても記録ヘッド11と記録媒体との距離を一定距離に保つことが可能である。記録面基準部材4には、記録ヘッド11の吐出部から吐出されたインクが記録媒体へ着弾するのを妨げないように切欠き部17が設けられている。
【0029】
なお、本実施形態では、記録媒体の供給作業は、ユーザーによる手作業であるが、自動供給装置を用いた自動供給でもよい。また本実施形態では、記録媒体検出手段(不図示)として透過センサを用いたが、接触式など記録媒体が規定の位置に位置していることを検知できる手段であればどの様な手段でも構わない。
【0030】
電気系統
つぎに
図3を参照して、インクジェット記録装置100の電気的な系統を説明する。
【0031】
図3は、
図1のインクジェット記録装置の電気系統を示すブロック図である。ホストPC311から送信された記録データやコマンドはインターフェイスコントローラ301を介してCPU302に受信される。
【0032】
CPU302は、インクジェット記録装置100の記録データの受信、記録動作、クリーニングユニット5の動作など全般の制御をつかさどる演算処理装置である。CPU302では、受信したコマンドを解析した後に、記録データのイメージデータをイメージメモリ303にビットマップ展開して描画する。
【0033】
記録前の動作処理としては、記録媒体が記録媒体載置部16にセットされたことを不図示のセンサで検知する。センサの検知によりモータ駆動回路304、出力ポート305を介してリフターアップダウンモータ306を駆動し、記録媒体載置部16をリフトアップさせて記録媒体をプラテン部材で挟み込み固定する。続いて、キャリッジ駆動モータ12を駆動し、キャリッジユニット1を主走査方向に移動させ、CPU302はイメージメモリ303から記録データを読み出し、データを記録ヘッド11に記録ヘッド制御回路307を経由して(介して)転送する。
【0034】
CPU302の動作は、プログラムROM308に記載された処理プログラムに基づいて実施される。プログラムROM308には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM309を使用する。記録ヘッド11のクリーニング動作時に、CPU302はモータ駆動回路304、出力ポート305を介してポンプモータ310を駆動しインクの吸引動作を行う。なお、後述のようにCPU302は、制御手段として、ブレード26を、ワイプを実行可能なワイプ位置Tと、ワイプを実行しない退避位置Uとの間で移動するよう制御する。また、CPU302は、制御手段として、吐出口11aからキャップ21へインクを吐出させる予備吐出を行うよう制御する。
【0035】
クリーニングユニット
本実施形態のインクジェット記録装置100は、吐出口11aからインク滴を吐出する吐出性能を維持、回復するためのクリーニング動作を実行するためのクリーニングユニット5を備えている(
図1)。
図4、5、6は、
図1のクリーニングユニットの斜視図である。クリーニングユニット5は、キャップ21、ブレード26、吸引ポンプ34(
図11、12参照)を備えている。
【0036】
後述するようにクリーニングユニットは、予備吐出、ワイプ、ノズル吸引、空吸引を実行することが可能である。CPU302は、予備吐出、ワイプ、ノズル吸引、空吸引を組み合わせた一連のシーケンスであるクリーニング動作を、クリーニングユニット5を用いて実行する。
【0037】
キャップ21は、記録ヘッド11の吐出部の吐出口11aを保湿・保護するためのものである。キャップ21は、キャップホルダ22に設けられた爪(図示せず)がキャップベース23と係合することによりキャップホルダ22に保持されている。キャップ21は、キャップベース23に対して揺動可能かつ図示しないバネによって矢印C方向(鉛直上向き(記録ヘッド11のある方向))に付勢されている。
【0038】
キャップベース23には4つのアーム23b(
図7~10を参照)が設けられている。それぞれのアーム23bは、クリーニングユニットベース24に設けられた溝24aに沿って移動可能に懸架されており、バネ25により矢印D方向に付勢されている。キャップ21は、非記録領域Sにおいて、キャップ21の上面が記録ヘッド11に当接し、吐出口11aを覆うことで、キャッピング状態とすることが可能である。
【0039】
記録ヘッド11の吐出口11a内のインクを排出する為に行われる予備吐出(詳細は後述)を行う際は、キャップ21上に吐出を行う。吸引ポンプ34は、キャップ21の内部に負圧を付与することができる。吸引ポンプ34は、キャッピング状態でキャップ21の内部に負圧を付与することで、吐出口11aからインクを吸引するノズル吸引を行うことが可能である。
【0040】
また吸引ポンプ34は、キャップ21が吐出口11aをキャッピングしていない状態で、キャップ21の内部に負圧を付与することで、キャップ21の内部に溜まったインクを吸引するキャップ空吸引を行うことが可能である。キャップ21内に溜まったインクは、吸引ポンプ34により吸引され廃液タンク35(
図11、12参照)内に排出される。
【0041】
キャップベース23には、キャップ21を上昇させるための第1レバー23aが一体に成形されている。キャップ21は、キャリッジユニット1が第1レバー23aをA(-)方向(第2方向)へ押圧することで上昇して、吐出口11aをキャッピングするように構成されている。
【0042】
ブレードベース27は、第2レバー27aとブレードベース軸部27b(
図7を参照)とを有する。第2レバー27aとブレードベース軸部27bはブレードベース27と一体に成形されている。第2レバー27aは、ブレードベース軸部27bを回動支点としてブレード26を回動する。ブレードベース27はブレードベース軸部27bを回動支点としてクリーニングユニットベース24に対し回動可能に軸支されている。
【0043】
ブレードベース27にはブレード(ワイパーともいう)26が支持されている。ブレード26は、吐出口11aが形成された吐出口面11b(
図7等を参照)を払拭して清掃するためのものである。ブレード26は、キャリッジユニット1が第1レバー23aを押圧した後に、キャリッジユニット1が第2レバー27aをA(-)方向(第2方向)へさらに押圧することで回動して、ワイプが可能な位置まで上昇するように構成されている。ブレード26は、非記録領域Sにおいて吐出
口11
aに対するワイプを実行可能である。
【0044】
クリーニングユニット5はクリーニングユニットベース24を有する。クリーニングユニットベース24は、A(-)方向(第2方向)の後端付近に設けられた溝内で、ブレードベース軸部27bをA方向(主走査方向)に対して直角に支持している。クリーニングユニットベース24は、全体としてA方向に延在して部分的に上下方向の段差を有する溝24aを有する。溝24a内でアーム23bがA方向に対して直角に支持されている。
【0045】
ブレードベース27にストッパ軸部27cが設けられていて、ストッパ軸部27cにブレードベースストッパ28が回動可能に軸支されている。ブレードベースストッパ28は、ブレード26をワイプが可能な位置で保持する。引張りバネ29がブレードベースストッパ28とクリーニングユニットベース24との間に懸架されている。ブレードベースストッパ28が、引張りバネ29の引張り力に抗してブレード26とともに上昇する。またブレードベースストッパ28は、引張りバネ29の引張り力に従ってブレード26とともに下降するように構成されている。
【0046】
クリーニングユニットベース24は、その一部の上面に、ブレードベースストッパ28を退避位置で載置する載置面24bを有する。ブレードベースストッパ28は、その半径方向の一部に、下向きに突出する面を備えた載置部28bを有する。載置部28bは載置面24bと係合するように構成されている。
【0047】
図7、8に示すように、ブレード26がワイプを行わない退避位置Uに位置するときは、ブレードベースストッパ28がクリーニングユニットベース24に引張りバネ29によって付勢される。こうして載置部28bが載置面24b上に載置されることで保持される。
【0048】
ブレードベースストッパ28は、A(+)方向(第1方向)およびA(-)方向(第2方向)に対して傾斜した傾斜面を備える係合部28aを有する。キャリッジユニット1は、係合部28aと係合するキャリッジ係合部1cを有する。ストッパ軸部27cの軸心は、ブレードベース軸部27bの軸心に対して直角に配置されている。キャリッジ係合部1cが係合部28aをA(+)方向に押圧することでブレードベースストッパ28がストッパ軸部27cの周りで回動して、ブレードベース27の保持が解除されるように構成されている。
【0049】
クリーニングユニットベース24は、その一部の上面に、ブレードベースストッパ28をワイプ位置で保持する上向きの水平な保持面24cを有する。ブレードベースストッパ28は、その放射方向の一端に、下向きに突出した面を有する保持部28cを有する。保持部28cは保持面24cと係合するように構成されている。
【0050】
図10に示すように、ワイプを行うワイプ位置Tにブレード26を保持する場合は、ブレードベース27が回動してブレード26が上昇し(
図9)、キャリッジユニット1がA(+)方向(第1方向)へ移動することで下降する(
図10)。ここでブレードベースストッパ28がクリーニングユニットベース24に向けて引張りバネ29によって付勢されつつ、保持部28cが保持面24c上に保持される。
【0051】
なお、本実施例おけるブレード26を移動させる機構は図示された例に限定されず、例えばソレノイドを用いた機構や他の機構でもよい。
【0052】
なお、本実施形態において「ワイプ位置」とはワイプを実行可能なブレード26の位置のことを示すが、典型的には、記録ヘッドの吐出口11aがブレード26に向けて移動したときにワイプを実行可能な、ブレード26の位置をいう。このとき、
図12に示すように、ブレード26の上端は吐出口面11
bよりも高い位置となる。ブレード26の上端が吐出口面11
bよりも高い位置にある状態で、記録ヘッド11をブレード26に向けて移動させることで、吐出
口11aをブレード26で払拭するワイプを実行することができる。
【0053】
また本実施形態において「退避位置」とはワイプを実行しないブレードの位置のことを示すが、典型的には、記録ヘッドの吐出口がブレードに向けて移動してもブレードと吐出口11aとが接触せず、ブレード26を用いたワイプが実行されない位置をいう。また、ブレード26を退避位置Uに移動させた状態のときには、記録ヘッド11の移動によって、ブレード26と吐出口11aとが接触しないようにする必要がある。そのため、退避位置Uにおけるブレード26の上端の高さは、キャップ21の上面の高さより低い位置とする。
【0054】
キャッピングおよびワイプ動作
次に
図7~
図10を用いてキャッピングおよびワイプ動作を説明する。記録ヘッド11のクリーニングを行う際は、まず記録ヘッド11を搭載したキャリッジユニット1がクリーニングユニット5に向かってA(-)方向(第2方向)へ移動する。その後キャリッジユニット1の第1突き当て部(不図示)が、キャップベース23に設けられた第1レバー23aと係合する(
図7)。
【0055】
この時点で、吐出口11aの吐出口面11bに対して水平(
図1矢印A/B)方向にキャップ21の位置が決められる。画像印字前などに予備吐出を行う際は、この状態でインク滴をキャップ21内に吐出する。吐出口11aをキャップする場合は、キャリッジユニット1がさらにA(-)方向に移動する。こうして第1レバー23aを押し込み、キャリッジユニット1の移動に追従する形でキャップ21をキャップベース23と共に移動させる。
【0056】
この際、キャップベース23のアーム23bは、クリーニングユニットベースの溝24aに沿って移動する為、キャリッジユニット1の移動方向に加えて矢印C方向にも移動する。そして、キャップ21は、吐出口11aに向けて付勢される。
【0057】
キャップ21は、キャップホルダ22とともに、キャップベース23に対して矢印C方向(記録ヘッド11の方向)へ、バネ(図示せず)によって付勢されている。そのため、キャップ21は、吐出口11aに接触後、キャップ21及びキャップホルダ22がキャップベース23に沈み込む形で、記録ヘッド11の吐出口面11bにならい、吐出口11aを密閉する(
図8の状態)。
【0058】
吐出口11aからインクを吸い出すノズル吸引を行う際は、この状態でチューブ30と接続された吸引ポンプ34(
図11、12)を駆動しキャップ21内を減圧することで強制的に吐出口11a内に負圧を付与してインクをノズル吸引する。ノズル吸引されたインクは、チューブ30を伝って移送され、吸引ポンプ34を通過し、廃液タンク35へ排出される。なお本実施形態において「ノズル吸引」は、キャッピング状態で吐出口からインクを吸引することをいう。
【0059】
ワイプを行う際は、キャリッジユニット1が
図8の状態から更にA(-)方向(第2方向)側へ移動する。そして、キャリッジユニット1の第2突き当て部1bがブレードベース27に設けられた第2レバー27aを押圧する。第2レバー27aは、押圧されるとブレードベース27のブレードベース軸部27bを中心に回動し、ブレード26が上昇する(
図9の状態)。
【0060】
ブレード26が上昇すると、ストッパ軸部27cに軸支されたブレードベースストッパ28が引張りバネ29に抗して矢印C方向に回動する。その後キャリッジユニット1が第2レバー27aから離れるA(+)方向(第1方向)に移動すると、ブレードベース27が引張りバネ29の戻り力により矢印C方向と反対方向に回動する。その後ブレードベースストッパ28の保持部28cがクリーニングユニットベース24の保持面24c上に係合して保持される。
【0061】
クリーニングユニット5がこの状態でキャリッジユニット1がA(+)方向へ移動すると、ブレード26と記録ヘッド11の吐出口面11bが接触する。その状態でキャリッジユニット1がクリーニングユニット5から遠ざかるA(+)方向に移動することで、ブレード26が吐出口面11bを拭きとるワイプが行われる(
図10の状態)。
【0062】
図10に示すワイプ位置Tから
図8に示す退避位置Uに戻る際は、キャリッジユニット1がA(+)方向(第1方向)へ移動する。その後キャリッジユニット1のキャリッジ係合部1cがブレードベースストッパ28の係合部28aと接触し、ブレードベースストッパ28をストッパ軸部27cに関して回動させる。ブレードベースストッパ28が回動するとクリーニングユニットベース24との係合が解かれ、引張りバネ29によりブレードベース27が回動し、ブレード26が元の退避位置Uに下がる。
【0063】
予備吐出
続いて
図11を用いて、インク飛散が発生するクリーニング動作について説明する。
【0064】
図11のように、キャップ21内に備えられた吸収体33は、クリーニング動作によって吐出口11aから排出されたインクを受容する。このとき、前述したように吐出口11aの状態によって、インク排出量が多くなることがある。その場合、排出したインクによって吸収体33内のインク液面が上昇し、吸収体33内に存在するエアーが吸収体33の表面上に押し出され、泡が発生することがある。
【0065】
特に画像不良が発生した場合には、吐出口11aに対して強力なクリーニングを実施する必要がある。強力なクリーニングの中で実施する予備吐出は、そうでないときに実施する予備吐出に比べてインクの排出量が多くなる。予備吐出の発数が多くなると、吸収体33に吸収されるインクの量が多くなり、吸収体から押し出されるエアーの体積も大きくなる。そのため、吸収体33の表面に泡が発生しやすくなる。
【0066】
例えばインクジェット記録装置100のように、非記録領域にあるクリーニングユニット5と記録領域とが接近して配置される構成の場合、キャップ21の周囲にインク滴が飛散すると、記録を行うための記録媒体や記録面基準部材4にインク滴が付着し、汚してしまう恐れがある。
【0067】
そこで本実施形態では、インクジェット記録装置100の構成において、記録ヘッド11のクリーニングを目的とし、吐出口11aからキャップ21へインクを予備吐出する場合、ブレード26をワイプ位置Tに位置させた状態で予備吐出を行う。これにより、吸収体33の表面に発生した泡が破裂しても、飛散したインクはブレード26によって受け止められ、記録領域に付着することが無い。そして、ブレード26が受け止めたインクは、ブレード26の下方に設けられるインク受け(不図示)に流出し、堆積される。こうして上記動作によって予備吐出中のインク飛散を抑制することが可能となる。
【0068】
この場合、ブレード26はワイプ位置Tにおいて非記録領域Sから記録領域Rへのインクの飛散を遮蔽することが可能な遮蔽部材として機能する。なお、本実施形態において「予備吐出」は、キャッピングしていない状態で吐出口からキャップへインクを吐出させることをいう。また本実施形態において「予備吐出発数」は、予備吐出の工程においてインクを吐出させる吐出回数または動作回数の総数をいう。
【0069】
図12に示すように、キャップ21を含むクリーニングユニット5は、非記録領域
Sに配置されている。そして、ブレード26は、記録ヘッド11の移動方向において、記録領域Rとキャップ21の間に位置している。そのため、キャッピング状態にある記録ヘッド11に対してワイプを行う場合に、キャップ21による記録ヘッド11のキャッピング状態を解除して、ブレード26がワイプ位置Tにある状態で記録ヘッド11を記録領域Rへ向けて移動させることにより、スムーズにワイプの動作を実行することが可能である。
【0070】
また、ワイプを行うためには、吐出口面11bがブレード26を超えてA(-)方向に移動するように、記録ヘッド11を移動させる必要がある。これは、ブレード26を吐出口面11bに当接させた状態で、吐出口面11bがブレード26を通過するように、キャリッジユニット1を移動させることで、ワイプを行うためである。
【0071】
そのため、
図12のブレード26の位置に対して、キャップ21挟んで逆側となる位置にブレード26を設けた場合、キャリッジユニット1を移動させる範囲がA(-)の方向に拡大し、装置の大型化を招いてしまう。これに対して、
図12に示すように、ブレード26を記録領域Rとキャップ21の間に設けることにより、装置の大型化を避けることができる。
【0072】
ブレード26をワイプ位置Tに位置付けることで、クリーニングを行うクリーニングユニット5が設けられている非記録領域Sと、隣接する記録領域Rと、を遮断し、非記録領域Sにあるキャップ21から記録領域Rへのインクの飛散を抑制することができる。特に
図12に示すようにキャップ21に隣接するブレード26を図中上方向(
図4のC軸に沿った方向)に上昇させることで、予備吐出時に発生するインクの飛散をブレード26の上部で受け止めることが可能である。
【0073】
飛散したインクは、ブレード26のほかに、吐出口面11bで受け止めることができる。吐出口面11bには吐出口11aが設けられているが、吐出口面11bの面積に比して吐出口11aの面積は非常に小さい。そのため、飛散したインクが吐出口面11bに付着しても、吐出性能に影響を及ぼす可能性は低いので、吐出口面11bで飛散するインクを受け止めてもよい。
図11、
図12に示すように、記録ヘッドの移動方向において、吐出口面11bの幅は、キャップ21の内面の幅よりも大きいので、キャップ21内の泡が上方に向かって飛散しても、吐出口面11bで受け止めやすい。
【0074】
記録領域Rへのインクの飛散を抑制するためには、ブレード26を図中上方向(
図4のC軸に沿った方向)に上昇させる位置を、ブレード26の上端が吐出口面11bと同じかより高い位置となるようにすればよい。そうすることで、上下方向において、ブレード26の上端と吐出口面11bの間に隙間が生じなくなる。
【0075】
上下方向において、ブレード26と吐出口面11bとの間に隙間が生じていない状態で予備吐出を行うことで、予備吐出時にインクの飛散が生じてもブレード26と吐出口面11bとで受け止めることができる。即ち、記録領域Rへのインクの飛散を抑制することができる。
【0076】
なお、本実施形態においては、ワイプ位置Tにおけるブレード26の上端は吐出口面11bよりも高い位置にある。また、退避位置Uにおけるブレード26の上端は吐出口面11bよりも低い位置にある。
【0077】
ブレード26の幅すなわち副走査方向Bの長さは、好ましくはキャップ21内の吸収体33の上面の副走査方向Bの長さと同じか更に好ましくはそれよりも長い。こうして、クリーニングを行う領域とインクが飛散する恐れがある領域を確実に遮断することが可能である。
【0078】
実施例
以下では
図13、
図14を用いて本実施例の特徴である記録ヘッドの予備吐出動作中にインク飛散を抑制するための制御動作について説明する。
【0079】
<実施例1>
図13はインクジェット記録装置100において、印字中に画像不良が発生した場合にユーザー手動で実施する記録ヘッド11のクリーニングを目的とした制御を説明するフローチャートである。もしくは一定期間以上記録ヘッド11から吐出されなかった際に自動で実施される、記録ヘッド11のクリーニングを目的とした制御を説明するフローチャートである。本実施例においては、ブレード26を退避位置Uからワイプ位置Tに移動させることをブレードアップと称し、ブレード26をワイプ位置Tから退避位置Uに移動させることをブレードダウンと称する。
【0080】
本実施例のシーケンスは、キャップ21が記録ヘッド11の吐出口11aをキャッピングした状態、かつ、ブレード26がワイプ位置T(
図12参照)に位置している状態からスタートする。
【0081】
S1では、CPU302は、記録ヘッド11に対してキャッピング状態にあるキャップ21をキャッピングしていない状態にして、ポンプ34を駆動し、キャップ空吸引を行う。このとき、ブレード26は、ワイプ位置Tに位置している。
【0082】
S2では、CPU302は、記録ヘッド11に対してキャッピングしていない状態にあるキャップ21を、キャッピング状態にしてポンプ34を駆動し、ノズル吸引を行う。このノズル吸引の目的は、吐出口11aの内部や表面に存在する異物および増粘インクを除去することにある。このとき、ブレード26は、ワイプ位置Tに位置している。
【0083】
S3では、CPU302は、ブレード26に対して、記録ヘッド11を相対的に移動させて、前述のワイプ動作を実施する(
図10)。このとき、ブレード26は、ワイプ位置Tに位置している。
【0084】
その後S4では、CPU302は、キャリッジユニット1をA(+)方向に移動してブレード26をダウンさせる(ブレードダウン)。即ち、ブレード26をワイプ位置Tから退避位置Uへ移動させる。
【0085】
S5ではS1と同様に、CPU302は、吸引ポンプ34を駆動してキャップ空吸引を行うことで、キャップ21内の吸収体33に残ったインクを排出し、キャップ21内を空にする。このとき、ブレード26は、退避位置Uに位置している。
【0086】
S6では、CPU302は、吐出口面11bの残留物を清掃する為、前述の
図9のように、ブレード26を退避位置Uからワイプ位置Tに上昇させる。(ブレードアップ)
【0087】
S7では、CPU302は、前述のワイプ動作を実施する。その後、S8では、CPU302は、ブレード26をワイプ位置Tから退避位置Uに移動させる(ブレードダウン)。そして、S9では、CPU302は、ブレード26を退避位置Uからワイプ位置Tに移動させる(ブレードアップ)。そして、S10では、CPU302は、再度ワイプ動作を実施する。
【0088】
ここで、S10におけるワイプ動作の前に、ブレードダウン(S8)とブレードアップ(S9)の動作を行うのは、ワイプを行うときのキャリッジユニット1の移動方向を一定にするためである。即ち、S8でブレード26を退避位置Uに位置させた状態で、キャリッジユニット1をA(-)方向に移動させる。その後、S9においてブレード26をワイプ位置Tに位置させ状態で、S10においてキャリッジユニット1をA(+)の方向に移動させる。このように制御することで、キャリッジユニット1をA(+)の方向に移動させるときにワイプを実行する。
【0089】
本実施例の構成においては、キャリッジユニット1をA(-)の方向に動かすときにワイプを実行すると、キャリッジユニット1が通過したときに吐出口面11bと当接して撓んだブレード26が復元することによって、ブレード26上のインクが記録領域Rの方向へ飛散する恐れがある。
【0090】
キャリッジユニット1をA(-)の方向に動かすときにワイプを実行した場合、吐出口面11bと当接したブレード26には、A(-)側に倒れるように撓みが発生し、吐出口面11bから拭き取ったインクがブレード26に付着する。
【0091】
吐出口面11bがブレード26の上を通過し、ブレード26と吐出口面11bとの当接が解除されると、ブレード26の撓みが復元し、ブレード26の上端は、その反動でA(+)側に移動する。ブレード26の上端には、ワイプを行ったときに吐出口面11bから拭き取ったインクが付着している。そのため、ブレード26の上端に付着したインクは、ワイプの後のブレード26の反動により、A(+)側、即ち記録領域Rに向けて飛散することとなる。
【0092】
記録領域Rへのインクの付着を避けるため、キャリッジユニットをA(-)の方向、即ち記録領域Rから非記録領域Sの方向へ移動するときには、ブレード26を退避位置Uに位置させて、ワイプを行わないようにする。
【0093】
一方、キャリッジユニット1をA(+)の方向に動かすときにワイプを実行する場合は、ワイプを行った後にブレード26の反動で飛散するインクは、非記録領域Sへ向けて飛散するので、記録領域Rに付着する恐れが無い。
【0094】
以上のように、ワイプを実行するときのキャリッジユニット1の移動方向をA(+)とすることで、インクが記録領域Rに向けて飛散することが無い。
【0095】
次に、CPU302は、吐出口11a内のインクが形成する気液界面であるメニスカスの状態を整えることを目的に予備吐出を実施する。この際、ノズル吸引実施後の最初に実施される予備吐出発数は、そうでないとき(例えば記録開始前に行う予備吐出のとき)に実施する予備吐出発数に比べて多くなる。そのためキャップ21内は多くのインクで満たされ、吸収体33から押し出されるエアーの体積も大きくなる。そのため、吸収体33表面上に泡が発生する可能性が高くなる。つまり、ノズル吸引後の最初の予備吐出の実施によりインクの泡が発生し、インク飛散が発生する可能性が高くなる。
【0096】
そこでS12では、CPU302は、ノズル吸引後の最初の予備吐出の前に、前述の
図9のように、ブレードアップを行う。即ち、CPU302は、退避位置Uに位置しているブレード26をワイプ位置Tへ上昇させる。
【0097】
その後、S13では、CPU302は、予備吐出を実施する。このとき、ブレード26は、ワイプ位置Tに位置している。
【0098】
S14では、CPU302は、吸引ポンプ34を駆動してキャップ21に予備吐出されたインクを吸引し(キャップ空吸引)、キャップ21内を空にする。その後、S15では、CPU302は、ブレード26を用いてワイプ動作を行う。このとき、ブレード26は、ワイプ位置Tに位置している。
【0099】
更にS16では、CPU302は、キャリッジユニット1をA(+)方向に移動させて、ブレード26をワイプ位置Tから退避位置Uへ移動させる(ブレードダウン)。
【0100】
更にS17では、CPU302は、予備吐出を実施し、吐出口11aのメニスカスを整備する。このとき、ブレード26は、退避位置Uに位置している。
【0101】
S18では、CPU302は、記録ヘッド11を
図9のように移動させて、キャップ21で吐出口11aをキャッピング状態とするとともに、ブレード26を退避位置Uからワイプ位置Tに上昇させ(ブレードアップ)、クリーニング動作は終了する。
【0102】
実施例1のフローにおいては、CPU302はブレード26がワイプ位置Tに位置している状態で、予備吐出を行う。ブレード26をワイプ位置Tとしておくことで、インク飛散が発生しても記録領域Rにインクが付着することを抑制することができる。
【0103】
なお、ノズル吸引の後の予備吐出(S13)では、ノズル吸引によって吐出口11aに混入した気泡などを排出する必要があるため、多数の予備吐出を行う。一方、それ以外の予備吐出(S17)は、吐出口11a内のインクが形成するメニスカスを整えるために行うものであり、予備吐出の発数は少なくてよい。予備吐出の発数が少ないと、キャップ21内で吸収体33から押し出される空気の量も少ないため、泡の発生とインクの飛び散りが発生する可能性は低い。そして、泡が発生した場合であっても少量であり、インクが記録領域Rに飛散する可能性は非常に低いため、予備吐出(S17)を行うときのブレード26を退避位置Uとしている。
【0104】
ただし、記録領域Rへのインク飛散の可能性を更に低減するためには、発数の少ない予備吐出であっても、予備吐出を行うときのブレード26の位置をワイプ位置Tとするとよい。
【0105】
なお、上記クリーニング動作の際、少なくとも吐出口11aをノズル吸引した後の最初の予備吐出が実施されるまでの間に、CPU302はブレード26をワイプ位置Tへ上昇させる。さらに予備吐出を実施した後のインクの吸引(キャップ空吸引)動作が終わるまでCPU302はブレード26をワイプ位置Tに位置させ続けてもよい。この場合、クリーニング動作中に発生するインク飛散を抑制することが可能になる。
【0106】
また、上記で説明したクリーニング(弱クリーニングともいう)よりも強力なクリーニング(強クリーニングともいう)を行う場合、予備吐出発数を増加して良く(例えば予備吐出発数6000発)、更に上記で説明したクリーニングに対してノズル吸引とキャップ空吸引のステップを追加してもよい。
【0107】
このように、実施例1においては、記録領域Rへのインク飛散を抑制できる。記録ヘッド11の予備吐出動作中に発生するインクの飛散を抑制できる。インク飛散を抑制するために専用の遮蔽手段や吸引ファンを装置内に設ける必要がなく、ユニットを小型化できコスト低減が可能である。また、クリーニングユニット5と記録領域Rの間の距離を短くすることが可能となり、装置の小型化を図ることができる。
【0108】
また、実施例1において、ノズル吸引を行った後予備吐出を行う前に、ブレード26を退避位置Uからワイプ位置Tへ移動させる場合、予備吐出を行う際に予めブレード26がワイプ位置Tに移動しているため、予備吐出の工程を迅速に行うことができる。そしてクリーニング動作の工程を迅速に行うことができる。ブレード26をワイプ位置Tで保持するのにソレノイド等の電力を用いる場合は、予備吐出が必要なときにのみ電力を用いてブレードをワイプ位置Tに移動させれば良いため、省電力とすることができ、またソレノイド部品の寿命を延命できる。
【0109】
さらに、実施例1において、一連のクリーニング動作中の、予備吐出を行っていないときやワイプ動作を行っていないときには、ブレード26を退避位置Uに位置させておくことが好ましい。クリーニング動作中には、ブレード26の上端などにインクが付着することがあるが、ブレード26を退避位置Uに位置させておくことで、ブレード26に付着しているインクが、クリーニング動作に伴って移動するキャリッジユニット1に再付着するのを避けることができる。
【0110】
さらに、実施例1において、予備吐出を行うときのブレード26の位置をワイプ位置Tとしたが、ブレード26の位置はこれに限定されない。予備吐出を行うときのブレード26の上端の高さが吐出口面11bと同じかより高くなる位置であれば、予備吐出を行うときにキャップ21から記録領域Rへインクが飛散するのを抑制することが可能となる。
【0111】
<実施例2>
実施例2は、キャップ21内における予備吐出発数をあらかじめカウントし、カウント値に応じてブレード26の上昇可否判定をおこなう制御方法である。
【0112】
なお実施例2の基本的な構成は実施例1に記載の内容と同様であるため、
図14を用いて特徴的であるカウント値(予備吐出発数)に応じたブレードの上昇可否判定方法のみ説明する。
【0113】
図14はブレードの上昇可否判定をおこなうための制御を説明するフローチャートである。
【0114】
まずS21では吐出口11aからキャップ21内に予備吐出を実施する際、CPU302は予備吐出によるインク量がキャップ21内で受容できるインク量に対して、所定の割合を超えるか判定を行う。例えば、キャップ21内で受容できるインクの量が、予備吐出の発数に換算して1000000dotに相当する量であるとした場合、予備吐出するインク量がその40%にあたる400000発を超えるか判定を行う。
【0115】
この場合、CPU302が予備吐出カウント値(予備吐出発数)が規定値の40%を超えるか判定を行うことで、前記インク量を判定する。
【0116】
予備吐出カウント値は、予備吐出実施直後の最初のキャップ空吸引で0にクリアすることができる。
【0117】
[カウント値が40%を超えない場合]
キャップ21内で受容できるインク量の所定量に対して40%を超えない場合、すなわちインクの吐出回数を計数して予備吐出発数が400000発を超えない場合には、ブレード26の上昇は行わず、CPU302は上昇判定を終了する。
【0118】
[カウント値が40%を超える場合]
キャップ21内で受容できるインク量の所定量に対して40%を超える場合、すなわちインクの吐出回数を計数して予備吐出発数が400000発を超える場合には、S22でCPU302はブレード26の位置判定を行う。ブレード26が退避位置Uにいる場合、S23でCPU302はブレード26を
図6、10の状態に上昇させる。上記判定によって直後に実施される予備吐出の際には、ブレード26は上昇してワイプ位置Tにあるため、予備吐出時のインク飛散を抑制することが可能となる。
【0119】
またS22でブレード26がすでにワイプ位置Tに上昇している場合にも、直後に実施する予備吐出時のインク飛散を抑制することが可能である。
【0120】
このように、実施例2において、判定手段により判定されたインクの量が所定量を超える場合にブレード26を上昇させて予備吐出を行うため、予備吐出に伴うブレードの昇降動作を所望のタイミングで適宜に行うことができ、部品寿命の延命やクリーニング動作の簡略化を達成できる。
【0121】
また、実施例2において、判定手段が、予備吐出におけるインクの吐出回数を計数する計数手段として構成されており、吐出回数をインクの量とみなして判定を行っている。この場合、インクの量を検知するための特別なセンサなどを設ける必要がなく、低コストで判定を行うことができる。また記録ヘッドの吐出方法やキャップの構成に応じて判定方法を柔軟に変更できる。
【0122】
なお、ブレード上昇可否判定が実施されるタイミングについては、インクジェット記録装置100のクリーニング動作において予備吐出を実施する直前とするのが好ましい。
【0123】
実施例1、2どちらの方式でも同様にインク飛散を抑制する効果が得られるが実施例2の方式においてはブレード26の昇降動作を必要に応じて可変させている。そのため、例えばソレノイド部品等の寿命の延命やクリーニング動作の簡略化に関してより良い構成と考えられる。
【0124】
<参考例>
次に
図15を用いてクリーニング動作以外で予備吐出を実施する例を参考例として説明する。
【0125】
図15はクリーニング動作以外で印字中に実施するクリーニングの制御を説明するフローチャートである。印字前にS31でCPU302が吐出口11aから予備吐出を行うことで、待機中に増粘したインクを印字前に排出する動作を実施している。この際、
図14を用いて前述したブレード26の上昇可否判定を実施する。
【0126】
その後S32では印字を実施するが、直前の予備吐出発数に応じてS31でブレード26の上昇可否判定を実施しているため、インク飛散の影響を受けずに印字動作を実行することが可能となる。
【0127】
なお、本実施例では、キャップ内に受容可能なインク量の40%を閾値または所定量としたが、キャップ内のインクの体積や、予備吐出発数に換算した数値を閾値または規定値として、判定を行ってもよい。また本実施例は、予備吐出発数の計数に代えてキャップ内のインクの体積を検知するセンサを別途設ける構成も含む。
【符号の説明】
【0128】
11:記録ヘッド
11a:吐出口
21:キャップ
26:ブレード
100:インクジェット記録装置
302:CPU
R:記録領域
S:被記録領域
T:ワイプ位置
U:退避位置