IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横河電機株式会社の特許一覧 ▶ 横河ソリューションサービス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】解析装置、解析システムおよび解析方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20220905BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20220905BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20220905BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220905BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220905BHJP
   G01R 31/387 20190101ALN20220905BHJP
【FI】
H01M10/42 P
G01R31/367
G01R31/392
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Q
G01R31/387
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020086223
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021180158
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513213966
【氏名又は名称】横河ソリューションサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】数見 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】松下 武司
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-053564(JP,A)
【文献】特開2018-119839(JP,A)
【文献】国際公開第2014/147973(WO,A1)
【文献】特開2008-060032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36-31/396
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池モジュールに含まれる1つ以上の電池セルの充放電に関する特性を測定した測定データ、および、前記電池モジュールまたは前記電池セルの少なくとも一方を識別する識別データを含む解析用データを、ネットワークを介して取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した前記解析用データに基づいて、少なくとも1つの前記電池セルの充電容量に関する特性を解析するデータ解析部と、
前記データ解析部における解析結果に応じた送信データを、ネットワークを介して送信するデータ送信部と
を備え
前記電池セルは、セル識別データにより識別され、
前記データ解析部は、同一の前記セル識別データに対応する前記測定データの履歴に基づいて、同一の前記セル識別データに対応する前記電池セルに対して、新たな前記セル識別データを割り当て、
前記データ解析部は、前記測定データの履歴から算出される満充電容量の変化が基準値以上である場合に、前記電池セルの前記セル識別データを更新す
解析装置。
【請求項2】
電池モジュールに含まれる1つ以上の電池セルの充放電に関する特性を測定した測定データ、および、前記電池モジュールまたは前記電池セルの少なくとも一方を識別する識別データを含む解析用データを、ネットワークを介して取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した前記解析用データに基づいて、少なくとも1つの前記電池セルの充電容量に関する特性を解析するデータ解析部と、
前記データ解析部における解析結果に応じた送信データを、ネットワークを介して送信するデータ送信部と、
を備え、
前記データ解析部は、前記電池セルの充電時または放電時における電圧-容量特性の微分特性に基づいて、前記電池セルの充電容量に関する特性を解析し、
前記データ解析部は、前記微分特性から算出される前記電池セルの劣化量に基づいて、前記電池セルの劣化速度を算出し、
前記データ解析部は、前記電池セルの前記劣化速度に基づいて、前記電池セルの前記充放電に関するデータを測定すべき測定間隔を算出し、
前記データ送信部は、前記測定間隔に応じた前記送信データを送信する、
析装置。
【請求項3】
電池モジュールに含まれる1つ以上の電池セルの充放電に関する特性を測定した測定データ、および、前記電池モジュールまたは前記電池セルの少なくとも一方を識別する識別データを含む解析用データを、ネットワークを介して取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した前記解析用データに基づいて、少なくとも1つの前記電池セルの充電容量に関する特性を解析するデータ解析部と、
前記データ解析部における解析結果に応じた送信データを、ネットワークを介して送信するデータ送信部と、
を備え、
前記データ解析部は、前記電池セルの充電時または放電時における電圧-容量特性の微分特性に基づいて、前記電池セルの充電容量に関する特性を解析し、
前記データ解析部は、2つ以上の前記電池セルの前記微分特性から算出される、前記2つ以上の前記電池セル間における充電容量の乖離量に基づいて、前記2つ以上の前記電池セル間の前記充電容量の乖離速度を算出する、
解析装置。
【請求項4】
前記データ解析部は、前記2つ以上の前記電池セルの前記乖離速度に基づいて、前記2つ以上の前記電池セルの前記充放電に関するデータを測定すべき測定間隔を算出し、
前記データ送信部は、前記測定間隔に応じた前記送信データを送信する
請求項に記載の解析装置。
【請求項5】
前記データ解析部は、前記測定データに基づいて前記電池モジュール内のそれぞれの前記電池セルの残存容量を算出し、
前記データ解析部は、予め定められた時間間隔で、前記残存容量が最小ではない前記電池セルの少なくとも1つを放電させて前記残存容量が最小の前記電池セルとの前記残存容量の差を縮小させ、
前記データ解析部は、前記乖離速度に基づいて、前記時間間隔を調整する、
請求項3または4に記載の解析装置。
【請求項6】
前記データ解析部は、前記微分特性から算出される前記電池セルの劣化量に基づいて、前記電池セルの劣化速度を算出する
請求項からのいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項7】
前記データ取得部は、前記電圧-容量特性の測定時における前記電池セルの温度を示す温度データを含む前記解析用データを取得し、
前記データ解析部は、前記電池セルの温度に基づいて、前記微分特性による解析を補正する
請求項2から6のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項8】
前記解析装置は、それぞれの前記電池セルの前記微分特性の基準特性を記録した基準特性記録部を更に備え、
前記基準特性は、1つ以上の基準特徴点を有し、
前記データ解析部は、前記電池セルの前記微分特性における測定特徴点と、前記基準特性における前記基準特徴点とに基づいて、前記電池セルを解析する
請求項2から7のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項9】
前記基準特性記録部は、前記電池セルを充電したときの前記基準特性と、前記電池セルを放電させたときの前記基準特性との少なくともいずれか一方を記録し、
前記データ解析部は、前記電池セルの前記測定データが、充電時または放電時のいずれのデータかに基づいて、前記微分特性と比較する前記基準特性を選択する
請求項に記載の解析装置。
【請求項10】
前記データ取得部は、前記電池モジュールを識別するモジュール識別データと、前記電池セルを識別するセル識別データとが対応付けられた前記識別データを取得し、
前記データ解析部は、前記電池モジュール毎に前記電池セルの前記充電容量に関する特性を解析する
請求項1から9のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項11】
前記データ取得部が経時的に取得した前記測定データを、前記識別データと対応付けて記録する解析用データ記録部を更に備える
請求項1から10のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項12】
前記データ解析部は、同一の前記識別データに対応する前記測定データの履歴に基づいて、前記同一の識別データに対応する前記電池セルに対して新たな前記識別データを割り当てる
請求項11に記載の解析装置。
【請求項13】
前記データ解析部は、前記解析結果に基づいて、前記電池セルを制御する制御データを生成し、
前記データ送信部は、前記制御データを含む前記送信データを送信する
請求項1から12のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項14】
前記データ解析部は、前記測定データに基づいて前記電池モジュール内のそれぞれの前記電池セルの残存容量を算出し、
前記データ解析部は、前記残存容量が最小ではない前記電池セルの少なくとも1つを放電させて、前記残存容量が最小の前記電池セルとの前記残存容量の差を縮小させる前記制御データを生成する
請求項13に記載の解析装置。
【請求項15】
前記データ解析部は、前記解析結果に基づいて、前記電池セルを交換すべき時期を示す交換時期データを生成し、
前記データ送信部は、前記交換時期データを含む前記送信データを送信する
請求項1から14のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項16】
前記データ解析部は、前記解析結果に基づいて、前記電池セルが故障したことを示す故障データを生成し、
前記データ送信部は、前記故障データを含む前記送信データを送信する
請求項1から15のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の解析装置と、
前記解析用データを、前記ネットワークを介して前記解析装置に送信する解析用データ送信部と
を備える解析システム。
【請求項18】
電池モジュールに含まれる1つ以上の電池セルの充放電に関する特性を測定した測定データを生成する測定段階と、
前記測定データ、および、前記電池モジュールまたは前記電池セルの少なくとも一方を識別する識別データを含む解析用データを、ネットワークを介して送信する解析用データ送信段階と、
前記解析用データを、前記ネットワークを介して取得するデータ取得段階と、
前記データ取得段階で取得した前記解析用データに基づいて、少なくとも1つの前記電池セルの充電容量に関する特性を解析するデータ解析段階と、
前記データ解析段階における解析結果に応じた送信データを、前記ネットワークを介して送信する結果送信段階と
を備え
前記電池セルは、セル識別データにより識別され、
前記データ解析段階は、同一の前記セル識別データに対応する前記測定データの履歴に基づいて、同一の前記セル識別データに対応する前記電池セルに対して、新たな前記セル識別データを割り当てる段階であり、
前記データ解析段階は、前記測定データの履歴から算出される満充電容量の変化が基準値以上である場合に、前記電池セルの前記セル識別データを更新する段階であ
解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置、解析システムおよび解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池の最大容量(満充電容量とも称する)等の特性を解析するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特許第6123844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電池の特性を高精度に解析しようとすると、高性能な解析システムをそれぞれの電池に搭載しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、電池モジュールの解析装置を提供する。解析装置は、電池モジュールに含まれる1つ以上の電池セルの充放電に関する特性を測定した測定データ、および、電池モジュールまたは電池セルの少なくとも一方を識別する識別データを含む解析用データを、ネットワークを介して取得するデータ取得部を備えてよい。解析装置は、データ取得部が取得した解析用データに基づいて、少なくとも1つの電池セルの充電容量に関する特性を解析するデータ解析部を備えてよい。解析装置は、データ解析部における解析結果に応じた送信データを、ネットワークを介して送信するデータ送信部を備えてよい。
【0005】
データ取得部は、電池モジュールを識別するモジュール識別データと、電池セルを識別するセル識別データとが対応付けられた識別データを取得してよい。データ解析部は、電池モジュール毎に電池セルの充電容量に関する特性を解析してよい。
【0006】
解析装置は、データ取得部が経時的に取得した測定データを、識別データと対応付けて記録する解析用データ記録部を備えてよい。
【0007】
データ解析部は、同一の識別データに対応する測定データの履歴に基づいて、同一の識別データに対応する電池セルに対して新たな識別データを割り当ててよい。
【0008】
データ解析部は、解析結果に基づいて、電池セルを制御する制御データを生成してよい。データ送信部は、制御データを含む送信データを送信してよい。
【0009】
データ解析部は、測定データに基づいて電池モジュール内のそれぞれの電池セルの残存容量を算出してよい。データ解析部は、残存容量が最小ではない電池セルの少なくとも1つを放電させて、残存容量が最小の電池セルとの残存容量の差を縮小させる制御データを生成してよい。
【0010】
データ解析部は、解析結果に基づいて、電池セルを交換すべき時期を示す交換時期データを生成してよい。データ送信部は、交換時期データを含む送信データを送信してよい。
【0011】
データ解析部は、解析結果に基づいて、電池セルが故障したことを示す故障データを生成してよい。データ送信部は、故障データを含む送信データを送信してよい。
【0012】
データ解析部は、電池セルの充電時または放電時における電圧-容量特性の微分特性に基づいて、電池セルの充電容量に関する特性を解析してよい。
【0013】
データ取得部は、電圧-容量特性の測定時における電池セルの温度を示す温度データを含む解析用データを取得してよい。データ解析部は、電池セルの温度に基づいて、微分特性による解析を補正してよい。
【0014】
解析装置は、それぞれの電池セルの微分特性の基準特性を記録した基準特性記録部を備えてよい。基準特性は、1つ以上の基準特徴点を有してよい。データ解析部は、電池セルの微分特性における測定特徴点と、基準特性における基準特徴点とに基づいて、電池セルを解析してよい。
【0015】
基準特性記録部は、電池セルを充電したときの基準特性と、電池セルを放電させたときの基準特性との少なくともいずれか一方を記録してよい。データ解析部は、電池セルの測定データが、充電時または放電時のいずれのデータかに基づいて、微分特性と比較する基準特性を選択してよい。
【0016】
データ解析部は、微分特性から算出される電池セルの劣化量に基づいて、電池セルの劣化速度を算出してよい。
【0017】
データ解析部は、電池セルの劣化速度に基づいて、電池セルの充放電に関するデータを測定すべき測定間隔を算出してよい。データ送信部は、測定間隔に応じた送信データを送信してよい。
【0018】
データ解析部は、2つ以上の電池セルの微分特性から算出される、2つ以上の電池セル間における充電容量の乖離量に基づいて、2つ以上の電池セル間の充電容量の乖離速度を算出してよい。
【0019】
データ解析部は、2つ以上の電池セルの乖離速度に基づいて、2つ以上の電池セルの充放電に関するデータを測定すべき測定間隔を算出してよい。データ送信部は、測定間隔に応じた送信データを送信してよい。
【0020】
本発明の第2の態様においては、第1の態様に係る解析装置と、解析用データを、ネットワークを介して解析装置に送信する解析用データ送信部とを備える解析システムを提供する。
【0021】
本発明の第3の態様においては、電池モジュールの解析方法を提供する。解析方法は、電池モジュールに含まれる1つ以上の電池セルの充放電に関する特性を測定した測定データを生成する測定段階を備えてよい。解析方法は、測定データ、および、電池モジュールまたは電池セルの少なくとも一方を識別する識別データを含む解析用データを、ネットワークを介して送信する解析用データ送信段階を備えてよい。解析方法は、解析用データを、ネットワークを介して取得するデータ取得段階を備えてよい。解析方法は、データ取得段階で取得した解析用データに基づいて、少なくとも1つの電池セルの充電容量に関する特性を解析するデータ解析段階を備えてよい。解析方法は、データ解析段階における解析結果に応じた送信データを、ネットワークを介して送信する結果送信段階を備えてよい。
【0022】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る解析システム10の構成例を示す図である。
図2】解析システム10の詳細な構成例を説明する図である。
図3】解析用データの一例を示す図である。
図4】送信データの一例を示す図である。
図5】電池モジュール202に含まれる電池セル204の残存容量のばらつきを説明する図である。
図6】解析装置100の他の構成例を示す図である。
図7】解析用データに含まれる測定データの一例を説明する図である。
図8】基準特性記録部110が記録する基準特性の一例を示す図である。
図9】基準特性と微分特性から、電池セル204の残存容量を算出する方法を説明する図である。
図10】電池モジュール202に含まれる複数の電池セル204の残存容量のばらつきを低減する処理の説明する図である。
図11】電池セル204の放電時の電圧-容量特性の一例を示す図である。
図12】電池セル204の放電時における基準特性の一例を示す図である。
図13】電池セル204の充放電の概要を説明する図である。
図14】電池モジュール202に含まれる複数の電池セル204の残存容量のばらつきを低減する処理の他の例を説明する図である。
図15】電池モジュール202の概要を説明する図である。
図16】解析装置100の動作例を示すフローチャートである。
図17】電池管理装置206、計測部208および解析用データ送信部200の動作例を示すフローチャートである。
図18】データ解析部104における解析内容の他の例を示す図である。
図19】データ解析部104における解析内容の他の例を示す図である。
図20】電池モジュール202の有効容量の推移例を示す図である。
図21】電池セル204の劣化検出の一例を示す図である。
図22】データ解析部104における解析内容の他の例を示す図である。
図23】データ解析部104における解析内容の他の例を示す図である。
図24】データ解析部104の動作例を示す図である。
図25】電池モジュール202の他の構成例を示す図である。
図26】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る解析システム10の構成例を示す図である。解析システム10は、1つ以上の電池モジュール202の特性を測定した測定データを、ネットワーク12を介して収集し、電池モジュール202の状態を解析する。本例の解析システム10は、解析装置100および1つ以上の解析用データ送信部200を備える。
【0026】
それぞれの電池モジュール202は、1つ以上の電池セル204を有する。電池セル204は、単体で電力を発生できる構成を有する。例えばそれぞれの電池セル204は、負極、正極および両極間に電力を発生させる本体部を有する。電池モジュール202は、直列に接続された複数の電池セル204を有してよい。また、電池モジュール202は、並列に接続された複数の電池セル204を有してもよい。直列または並列に電気的に接続された電池セル204群を、1つの電池モジュール202としてよい。また、共通の筐体に収納された電池セル204群を、1つの電池モジュール202としてもよい。
【0027】
解析用データ送信部200は、電池モジュール202の特性を解析するための解析用データを、ネットワーク12を介して解析装置100に送信する。解析用データ送信部200は、電池モジュール202毎に設けられてよく、複数の電池モジュール202に対して共通に設けられてもよい。解析用データ送信部200は、電池モジュール202の筐体に設けられてよい。他の例では、解析用データ送信部200は、電池モジュール202とは離れて設けられていてもよい。この場合、解析用データ送信部200は、電池モジュール202と通信可能に設けられることが好ましい。
【0028】
解析用データは、電池モジュール202に含まれる1つ以上の電池セル204の充放電に関する特性を測定した測定データを含む。充放電に関する特性とは、電池セル204の充電開始時、充電中、充電終了時、放電開始時、放電中、または、放電終了時の少なくとも1つのタイミングにおける電池セル204の電気的な特性であってよい。電気的な特性は、電池セル204の、両極間電圧、出力電流、残存容量値、または出力抵抗、の少なくとも1つを含んでよい。また、電気的な特性は、電池セル204の、両極間電圧または出力電流の経時変化、の少なくとも1つを含んでよい。また、電気的な特性は、電池セル204の、残存容量値または出力抵抗の劣化等の経時変化、の少なくとも1つを含んでよい。また、上述した両極間電圧は、直列接続された複数の電池セル204を含む電池モジュール202の両極間電圧、または、複数の電池モジュール202を組み合わせたユニットの両極間電圧であってもよい。
【0029】
解析用データは、測定データと対応付けられた識別データを含む。識別データは、電池モジュール202を識別するモジュール識別データ、または、電池セル204を識別するセル識別データの少なくとも一方を含む。モジュール識別データは、複数の電池モジュール202に割り当てられたシリアル番号であってよい。セル識別データは、電池モジュール202に含まれる1つ以上の電池セル204に割り当てられたシリアル番号であってよい。
【0030】
ネットワーク12は、例えばインターネットまたはローカルエリアネットワークであるが、これに限定されない。ネットワーク12は、複数の解析用データ送信部200と解析装置100とを接続する専用のネットワークであってよく、解析用データ送信部200と解析装置100の間の通信以外の通信も行う汎用のネットワークであってもよい。
【0031】
解析装置100は、ネットワーク12を介して、それぞれの電池モジュール202の解析用データを取得する。解析装置100は、解析用データに基づいて、電池モジュール202に含まれる1つ以上の電池セル204の充電容量に関する特性を解析する。本明細書において、特に説明がない場合、電池の容量の単位はアンペア時(Ah)である。解析装置100は、1つのコンピュータで情報を処理する装置であってよく、複数のコンピュータにより情報を分散処理する装置であってもよい。充電容量に関する特性とは、電池セル204の満充電容量、電池セル204の残存容量、電池セル204の内部抵抗の測定値、これらの特性についての劣化等の経時変化量、または、電池モジュール202に含まれる電池セル204間におけるこれらの特性のばらつき量の少なくとも1つを含んでよい。なお本明細書では、満充電容量または残存容量を、充電容量(または容量)と称する場合がある。つまり本明細書における充電容量(または容量)は、満充電容量および残存容量のどちらも含む概念である。
【0032】
解析装置100は、解析結果を外部に送信してよい。解析装置100は、解析用データ送信部200を含む装置に解析結果を送信してよく、解析用データ送信部200とは異なる装置に解析結果を送信してもよい。
【0033】
図2は、解析システム10の詳細な構成例を説明する図である。本例の解析システム10は、図1に示した構成に加えて、電池管理装置206および計測部208を備える。電池管理装置206および計測部208は、それぞれの電池モジュール202に対して設けられてよい。図2では、一つの電池モジュール202に付随して設けられる電池管理装置206、計測部208および解析用データ送信部200を示している。なお、解析用データ送信部200、電池管理装置206、または、計測部208の各々は、電池モジュール202に組み込まれていてよく、単体の電池モジュール202に別途取り付けてもよい。
【0034】
計測部208は、電池モジュール202の電気的な特性を測定した測定データを生成する。計測部208は、電流計または電圧計の少なくとも一方を有してよい。解析用データ送信部200は、計測部208が生成した測定データと、電池モジュール202等の識別データを含む解析用データを、解析装置100に送信する。
【0035】
電池管理装置206は、解析装置100から送信データを受信する。電池管理装置206は、受信した送信データに基づいて、電池モジュール202を制御してよい。また、電池管理装置206は、受信した送信データに応じた情報を、電池モジュール202のユーザに提供してもよい。一例として電池管理装置206は、送信データで示される各電池セル204の残存容量に基づいて、各電池セル204を充放電させてよい。他の例では、送信データに、各電池セル204を制御して充放電させるための制御データが含まれていてもよい。また、電池管理装置206は、各電池セル204の容量に関する情報をユーザに提供してよい。
【0036】
電池管理装置206は、解析用データ送信部200と同一の装置に含まれてよい。この場合、解析装置100は、送信データおよび解析用データを同一の通信経路で送受信してよい。また、電池管理装置206は、解析用データ送信部200とは別個の装置であってもよい。例えば、解析用データ送信部200は、電池モジュール202を使用しているユーザが管理する装置であり、電池管理装置206は、ユーザに電池モジュール202を提供した提供者が管理する装置であってよい。この場合、解析装置100は、送信データおよび解析用データを、異なる通信経路で送受信してよい。他の例では、電池管理装置206および解析用データ送信部200は、両方ともユーザが管理する装置であってよく、両方とも提供者が管理する装置であってもよい。
【0037】
本例の解析装置100は、データ取得部102、データ解析部104およびデータ送信部106を備える。解析装置100は、解析用データ記録部108を更に備えてよい。データ取得部102は、ネットワーク12を介して解析用データを取得する。データ取得部102は、取得した解析用データを、解析用データ記録部108に記録してよい。解析用データ記録部108は、解析用データを、識別データ毎に記録する。
【0038】
データ解析部104は、データ取得部102が取得した解析用データに基づいて、少なくとも1つの電池セル204の充電容量に関する特性を解析する。データ解析部104は、データ取得部102が取得した解析用データを逐次解析してよく、解析用データ記録部108から解析用データを読み出して解析してもよい。
【0039】
データ送信部106は、データ解析部104における解析結果に応じた送信データを、ネットワーク12を介して電池管理装置206に送信する。データ送信部106は、データ解析部104が解析に用いた解析用データに含まれる識別データに基づいて、送信データの送信先を決定してよい。例えばデータ送信部106は、識別データと送信先とを対応付けた対応情報を予め保持していてよい。また、解析用データが、送信データの送信先を指定する情報を含んでいてもよい。この場合、電池管理装置206は、送信先を指定する情報を解析用データ送信部200に通知してよい。
【0040】
本例の解析システム10によれば、電池モジュール202毎に解析装置100を設けないので、電池モジュール202のコストを低減できる。また、解析装置100を高性能化して、高精度な解析を行いやすくなる。
【0041】
図3は、解析用データの一例を示す図である。図3の例では、1つの解析用データに、1つの電池モジュール202に関する解析用データが含まれている。他の例では、1つの解析用データに複数の電池モジュール202に関する解析用データが含まれていてもよい。
【0042】
解析用データは、識別データおよび測定データMeを含む。識別データは、モジュール識別データMoまたはセル識別データCeの少なくとも一方を含む。図3の例の解析用データは、モジュール識別データMoと、セル識別データCeとが対応付けられている。この場合、データ解析部104は、電池モジュール202毎に、電池セル204の充電容量に関する特性を解析してよい。一例として、データ解析部104は、電池モジュール202に含まれる電池セル204の容量ばらつきを解析してよい。
【0043】
測定データMeは、電池セル204毎のデータである。解析用データ記録部108は、データ取得部102が経時的に取得した測定データを、識別データと対応付けて記録してよい。識別データがセル識別データCeを含む場合、測定データMeは、セル識別データCeと対応づけられている。この場合、データ解析部104は、セル識別データCe毎に測定データMeを解析し、個別の電池セル204の充電容量に関する特性を解析する。
【0044】
識別データがセル識別データCeを含まない場合、各測定データMeは、共通のモジュール識別データMoに対応付けられている。この場合、データ解析部104は、それぞれの測定データMeを解析し、電池セル204の充電容量に関する特性を解析する。ただし、解析した特性が、いずれの電池セル204の特性であるかを特定しない場合、例えば、データ解析部104は、電池モジュール202に含まれる電池セル204の容量の最大値、最小値、平均値等の少なくとも1つを解析する。
【0045】
図3の例では、解析用データは、温度データTおよび運転時間データLを更に含んでいる。温度データTは、測定データを測定したときの電池セル204または電池モジュール202の温度を示す。温度データTは、測定データ測定したときの電池モジュール202の周囲温度を示してもよい。温度データTは、電池モジュール202内の電池セル204に対して共通のデータであってよい。
【0046】
運転時間データLは、それぞれの電池セル204の累積運転時間を示してよい。運転時間は、電池セル204の使用を開始してからの経過時間であってよく、電池セル204が充電または放電している時間を累積した時間であってもよい。また、電池セル204の充放電回数を、運転時間として用いてもよい。また、運転時間データLは、電池モジュール202の累積運転時間を示してもよい。運転時間データLは、電池セル204毎のデータであってよく、電池モジュール202内の電池セル204に対して共通のデータであってもよい。
【0047】
図4は、送信データの一例を示す図である。図4の例では、1つの送信データに、1つの電池モジュール202に関するデータが含まれている。他の例では、1つの送信データに、複数の電池モジュール202に関するデータが含まれていてもよい。
【0048】
送信データは、識別データを含んでよい。識別データは、モジュール識別データMoまたはセル識別データCeの少なくとも一方を含む。
【0049】
送信データは、解析結果データAを含んでよい。解析結果データAは、例えば各電池セル204の容量に関するデータである。他の例では、解析結果データAは、電池モジュール202に含まれる1つ以上の電池セル204の容量の最大値、最小値、または、平均値の少なくとも一つを示すデータである。
【0050】
送信データは、制御データCoを含んでよい。制御データCoは、電池モジュール202に含まれる1つ以上の電池セル204の充放電を制御するのに用いるデータである。制御データCoは、それぞれの電池セル204の充電量、放電量、充電タイミング、放電タイミング、充電速度、または、放電速度の少なくとも一つを指定してよい。データ解析部104は、それぞれの電池セル204の容量の解析結果に基づいて、制御データCoを生成してよい。例えばデータ解析部104は、電池モジュール202の1つ以上の電池セル204の間の容量ばらつきを低減する制御データCoを生成する。データ解析部104は、電池モジュール202に含まれる複数の電池セル204の残存容量の最大値と最小値との差が所定の閾値以上となった場合に、制御データCoを生成してよい。これにより、電池セル204の間の容量ばらつきが大きくなりすぎるのを抑制できる。
【0051】
送信データは、交換時期データRを含んでよい。データ解析部104は、それぞれの電池セル204の容量の解析結果に基づいて、それぞれの電池セル204を交換すべき時期を算出してよい。一例としてデータ解析部104は、解析用データ記録部108に記録された測定データの履歴に基づいて、それぞれの電池セル204の劣化速度を算出し、劣化速度に基づいて交換時期を推定してよい。電池セル204の劣化は、例えば満充電容量、両極間電圧、出力電流等の劣化から算出できる。データ解析部104は、電池セル204の特性が所定の基準値を下回る時期を、電池セル204の交換時期として算出してよい。交換時期データRは、電池セル204毎のデータであってよい。他の例では、交換時期データRは、電池モジュール202毎のデータであってもよい。この場合、データ解析部104は、電池モジュール202に含まれる電池セル204の交換時期のうち、最も早くに到来する交換時期を、電池モジュール202の交換時期としてよい。
【0052】
送信データは、故障データFを含んでよい。データ解析部104は、それぞれの電池セル204の容量の解析結果に基づいて、それぞれの電池セル204が故障しているか否かを判定してよい。一例としてデータ解析部104は、それぞれの電池セル204の満充電容量等の特性の経時変化に基づいて、それぞれの電池セル204が故障したか否かを判定する。データ解析部104は、前回算出した特性値と、今回算出した特性値との差分が、所定の基準値を超えた場合に、電池セル204が故障したと判定してよい。故障データFは、電池セル204毎のデータであってよい。他の例では、故障データFは、電池モジュール202毎のデータであってもよい。この場合、データ解析部104は、電池モジュール202に含まれる電池セル204のいずれかが故障した場合に、電池モジュール202が故障したと判定してよい。
【0053】
送信データは、解析結果データ、制御データ、交換時期データ、または、故障データのうちの少なくとも一つを含んでよい。送信データは、これら以外のデータを含んでいてもよい。
【0054】
図5は、電池モジュール202に含まれる電池セル204の残存容量のばらつきを説明する図である。図5では、3つの電池セル204-1、204-2、204-3を用いて説明するが、電池モジュール202に含まれる電池セル204の個数は3つに限定されない。図5では、それぞれの電池セル204を矩形であらわしている。矩形の上端maxは、電池セル204の残存容量の上限値(すなわち満充電容量)を示しており、下端minは、電池セル204の残存容量の下限値を示している。電池セル204は、過充電および過放電を防ぐために、上限maxおよび下限minの間で充放電される。図5においては、各電池セル204の残存容量を、斜線のハッチングで示している。
【0055】
図5の処理前の図で示すように、電池モジュール202に含まれる各電池セル204の残存容量にばらつきが生じる場合がある。例えば、電池セル204の自然放電速度が異なる場合、電池セル204の残存容量にばらつきが生じる。
【0056】
本例の複数の電池セル204は、同時に充電される。このため、残存容量にばらつきが生じると、それぞれの電池セル204には、最も空き容量が少ない電池セル204に応じた量しか充電できず、全ての電池セル204を上限maxまで充電できなくなる。同様に、複数の電池セル204が負荷に対して同時に放電する場合、それぞれの電池セル204は、最も残存容量が少ない電池セル204に応じた量しか放電できず、全ての電池セル204を、下限minまで放電できなくなる。このため、残存容量のばらつき量に応じて、複数の電池セル204における有効容量が減少する。
【0057】
解析装置100は、それぞれの電池セル204の残存容量を解析してよい。電池管理装置206は、それぞれの電池セル204の残存容量のばらつきを低減するように、それぞれの電池セル204を充放電させて、セルバランスを調整してよい。尚、本例では、電池セル204を放電させてセルバランスを調整する。例えば図5では、残存容量が比較的に多い電池セル204を放電させている。他の例では、電池セル204を充電させてセルバランスを調整させてもよい。例えば、残存容量が比較的に少ない電池セル204を充電させてもよい。また、上述した放電および充電を組み合わせてセルバランスを調整してもよい。図5の処理後の図は、セルバランスを調整した後の、電池セル204の有効容量を示している。それぞれの電池セル204の残存容量のばらつきを低減することで、有効容量が増大する。データ解析部104は、セルバランス処理を行うことで、有効容量が増大する量を推定してよい。データ送信部106は、有効容量の推定増大量を示す送信データを、電池管理装置206に送信してよい。
【0058】
図6は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、それぞれの電池セル204の容量を精度よく解析する。データ解析部104における残存容量の解析精度が高いほど、セルバランス調整を精度よく実行でき、有効容量を増大させやすくなる。本例の解析装置100は、図2に示した例に対して、基準特性記録部110を更に備える。他の構成は、図2において説明した例と同様である。
【0059】
基準特性記録部110は、予め定められた基準特性を記録する。データ解析部104は、測定データから算出される特性と、基準特性とに基づいて、電池セル204の容量を解析する。
【0060】
図7は、解析用データに含まれる測定データの一例を説明する図である。本例の計測部208は、それぞれの電池セル204の充電時または放電時における両極間電圧と、推定残存容量との関係を示す電圧-容量特性を測定して、測定データを生成する。計測部208は、電池モジュール202の実動作時に電圧-容量特性を測定してよい。実動作時とは、例えば電池モジュール202が負荷に電力を供給している状態、または、発電装置の余剰電力が電池モジュール202に供給されている状態である。計測部208は、電池モジュール202から出力された電流、および、電池モジュール202に供給された電流の積算量から、各電池セル204の残存容量を算出してよい。電池モジュール202から電流が出力された分、電池セル204の残存容量が減少し、電池モジュール202に電流が充電された分、電池セル204の残存容量は増大する。
【0061】
本例の計測部208は、推定残存容量Qの所定の測定範囲において、電圧-容量特性を測定する。測定範囲は、推定残存容量の下限minおよび上限maxの間の範囲の一部分である。測定範囲は、推定残存容量の下限minおよび上限maxを含まないことが好ましい。これにより計測部208は、電池セル204を過充電または過放電に近い状態にせずに、電圧-容量特性を測定できる。測定範囲の大きさは、下限minおよび上限maxの範囲の大きさの半分以下であってよく、1/4以下であってもよい。測定範囲を小さくすることで、短時間で電圧-容量特性を取得でき、電池モジュール202の実動作中においても、電圧-容量特性を取得することが容易になる。また、測定範囲を小さくすることで、複数の電池セル204の残存容量にばらつきが生じている状態でも、それぞれの電池セル204を過充電または過放電させずに、電圧-容量特性を測定しやすくなる。
【0062】
図8は、基準特性記録部110が記録する基準特性の一例を示す図である。基準特性は、電池セル204の電圧-容量特性を、残存容量で微分した特性に相当する。電池セル204の基準特性は、電池セル204の電極材料に基づいて、また、電池セル204または電池モジュール202のメーカーや型式に基づいて、予め決定できる。基準特性記録部110は、複数種類の電極材料に対応して、複数種類の基準特性を記録してよい。データ解析部104は、解析対象の電池セル204の電極材料に対応する基準特性を用いて、電池セル204を解析することが好ましい。データ取得部102は、電池セル204の電極材料を示す解析用データを取得してよい。また、解析用データ記録部108は、電池モジュール202または電池セル204の少なくとも一方に対応付けて、電池セル204の電極材料を示す情報を記録してよい。
【0063】
例えば電池セル204がリチウム電池の場合、充放電時に正極と負極の間でリチウムイオンが移動する。それぞれの電極活物質にリチウムイオンが挿入(還元とも称される)され、あるいは、リチウムイオンが脱離(酸化とも称される)することで、電極活物質の結晶構造が変化する。この結晶構造の変化は、「相転移」と呼ばれ、電気化学的に規定される電極活物質固有の電位近傍で生じる現象である。相転移現象により、基準特性には、所定の位置にピークが表れている。
【0064】
このように、電極活物質の種類に応じて、電池セル204の電圧-容量特性を決定でき、その微分特性である基準特性も決定できる。当該基準特性は、基準となる1つ以上の電池セルの特性を予め測定することで取得してよい。また、当該基準特性は、シミュレーションにより予め取得してもよい。当該基準特性の取得方法は、特許文献1に記載された方法と同様であってもよい。
【0065】
図9は、基準特性と微分特性から、電池セル204の残存容量を算出する方法を説明する図である。図9においては、図7に示した測定範囲における微分特性を実線で示し、基準特性を破線で示している。本例のデータ解析部104は、微分特性と基準特性との誤差が最小となる位置に、微分特性を平行移動させる。データ解析部104は、最小二乗法により当該位置を決定してよい。微分特性を、残存容量Qの軸方向に移動させた量が、図7において説明した電池セル204における推定残存容量と、実際の残存容量との誤差に相当する。データ解析部104は、当該誤差と、電池セル204の現在の推定残存容量から、電池セル204の実際の残存容量を算出してよい。データ解析部104は、特許文献1に開示された方法と同様の方法で、電池セル204の実際の残存容量を算出してよい。
【0066】
図8に示すように、それぞれの基準特性は、基準特徴点を有してよい。基準特徴点は、基準特性と微分特性とのフィッティングを高精度に行うために、微分特性に含まれているべき点である。基準特徴点は、他の点に比べて、温度等の測定条件に応じた変動が小さい点であってよい。基準特徴点は、基準特性のピーク間におけるスロープ部分に配置されてよい。基準特徴点は、基準特性が極小値となる点であってもよい。基準特徴点は、基準特性のピークの頂点であってもよい。基準特性には、複数の基準特徴点が設定されていてもよい。基準特性記録部110は、それぞれの基準特性に対して、基準特徴点における残存容量の値を記録してよい。
【0067】
計測部208は、いずれかの基準特徴点を含む測定範囲(すなわち、推定残存容量の範囲)で、電池セル204の特性を測定してよい。各基準特徴点の位置は、解析装置100から電池管理装置206に通知してよい。また、解析装置100は、いずれかの基準特徴点を含む測定範囲を、電池管理装置206に通知してもよい。当該測定範囲で測定データを取得することで、測定データの微分特性には、基準特徴点に対応する測定特徴点が含まれる。
【0068】
データ解析部104は、電池セル204の微分特性における測定特徴点と、基準特性における基準特徴点とに基づいて、電池セル204の容量を解析してよい。上述したように、データ解析部104は、測定特徴点の位置と、基準特徴点の位置とが一致するように、微分特性を平行移動させてよい。
【0069】
本例では、電池セル204の残存容量を解析したが、データ解析部104は、電池セル204の満充電容量を解析してもよい。この場合、データ解析部104は、電圧-容量特性を電圧で微分した微分特性を用いてよい。また、基準特性記録部110は、当該微分特性に対応する基準特性を記録してよい。データ解析部104は、当該微分特性との誤差が最小となるように、基準特性の位置または振幅の少なくとも一方を調整してよい。調整した基準特性を、所定の使用電圧の範囲で積分することで、電池セル204の満充電容量を算出できる。データ解析部104は、特許文献1に開示された方法と同様の方法で、電池セル204の満充電容量を算出してよい。データ解析部104は、満充電容量に対する残存容量の比(SOCとも称される)を算出してもよい。
【0070】
なお、解析用データに、電圧-容量特性の測定時における電池セル204の温度を示す温度データが含まれている場合、データ解析部104は、電池セル204の温度に基づいて、微分特性を用いた解析を補正してよい。電池セル204の電圧-容量特性は、電池セル204の温度によって変動しうる。データ解析部104は、電池セル204の温度による特性変動を補正して、電池セル204の特性を解析してよい。具体的には、データ解析部104は、微分特性または基準特性の少なくとも一方を当該温度によって補正してよい。データ解析部104は、当該温度に応じて、微分特性または基準特性を残存容量軸方向にシフトしてよい。データ解析部104は、当該温度に応じて、微分特性または基準特性の振幅を補正してもよい。データ解析部104には、電池セル204の温度に応じて、各特性をどのように補正すべきかを示す補正情報が予め設定されてよい。当該補正情報は、温度変動に応じて電圧-容量特性がどのように変動するかを予め測定することで生成できる。
【0071】
図7から図9において説明した方法により、データ解析部104は、電池セル204の容量を高精度に解析できる。なおデータ解析部104における解析は、図7から図9において説明した内容に限定されない。データ解析部104は、公知の手法を用いて、電池セル204の容量に関する情報を解析してよい。例えばデータ解析部104は、電池セル204の両極間電圧に基づいて、残存容量を算出できる。両極間電圧と残存容量との関係は、予めデータ解析部104に与えられていてよい。データ解析部104は、電池セル204の出力電流および充電電流を積算することで、電池セル204の残存容量を推定してもよい。
【0072】
図10は、電池モジュール202に含まれる複数の電池セル204の残存容量のばらつきを低減する処理の説明する図である。本例では、3つの電池セル204を用いて説明するが、電池セル204の個数は3つに限定されない。上述したように、データ解析部104は、電池セル204を充放電させる送信データを生成してよい。電池セル204の充放電は、送信データに含まれる制御データCoに基づいて電池管理装置206が行ってよく、送信データに含まれる解析結果データAに基づいて電池管理装置206が行ってもよい。
【0073】
初期段階S1001は、電池セル204の残存容量がばらついている状態を示している。なお図10においては、図5と同様に、斜線のハッチングで残存容量を示している。次に第1測定段階S1002において、全ての電池セル204を同じ量だけ放電させてよい。電池セル204が放電している間、計測部208は、各電池セル204の両極間電圧および放電電流等の特性を測定する。次に第2測定段階S1003において、全ての電池セル204を同じ量だけ充電させてよい。電池セル204を充電している間、計測部208は、各電池セル204の両極間電圧および充電電流等の特性を測定する。S1002およびS1003の処理により、計測部208は、各電池セル204の電圧-容量特性を測定できる。計測部208は、放電電流または充電電流を逐次積算することで、各電池セル204の推定残存容量を算出してよい。
【0074】
計測部208は、S1002およびS1003の処理に代えて、電池モジュール202の実動作中に、電圧-容量特性を測定してもよい。つまり計測部208は、電池モジュール202から負荷に電流を供給している間、または、電池モジュール202に発電装置の余剰電力を充電している間に、電池セル204の電圧および電流を測定してもよい。
【0075】
次に、放電段階S1004において、残存容量が最小ではない電池セル204の少なくとも一つを放電させて、残存容量が最小の電池セル204との残存容量の差を縮小させる。S1004においては、残存容量が最小の電池セル204以外の全ての電池セル204を、同じ量だけ放電させてよい。図10の例では、電池セル204-3の残存容量が最小である。S1004においては、電池セル204-1および204-2を放電させている。放電段階S1004においては、電池セル204-3以外の電池セル204-1、204-2のうち、残存容量が最小の電池セル204-2の残存容量が、電池セル204-3の残存容量と等しくなるように、電池セル204-1および204-2を放電させてよい。
【0076】
次に、放電段階S1005において、放電段階S1004と同様の処理を繰り返す。つまり、残存容量が最小ではない電池セル204の少なくとも一つを放電させて、残存容量が最小の電池セル204との残存容量の差を縮小させる。本例においては、電池セル204-3、204-2の残存容量が最小である。このため本例においては、電池セル204-1を放電させている。S1005においても、電池セル204-1の残存容量が、最小の残存容量と等しくなるように、電池セル204-1を放電させてよい。
【0077】
S1004またはS1005において説明した放電段階を繰り返すことで、全ての電池セル204の残存容量を等しくできる。これにより、電池モジュール202の有効容量を増大できる。
【0078】
S1002からS1005においては、いずれの電池セル204の残存容量も、それぞれの電池セル204の上限maxおよび下限minとならないように、電池セル204の充放電を制御することが好ましい。これにより、電池セル204が過放電または過充電となることを抑制して、図10において説明した処理における電池セル204の劣化を抑制できる。特に電池セル204がリチウムイオン電池の場合、残存容量が上限max近傍の状態で放置すると劣化が促進される傾向がある。また、残存容量が下限min近傍の状態で放置すると、自然放電が促進されて過放電となり、劣化が促進される傾向がある。このため、電池セル204がリチウムイオン電池の場合は、図10において説明した処理による劣化抑制の効果が顕著となる場合がある。
【0079】
なお、電池セル204の容量の解析精度が低い場合は、電池セル204の残存容量を一致させるために、それぞれの電池セル204を満充電状態にする場合がある。これに対して図7から図9において説明した方法を用いることで、それぞれの電池セル204の容量を精度よく解析できる。このため、図10において説明したように、電池セル204を満充電状態にせずにセルバランスを調整できる。また、図7から図9において説明した方法では、部分的な測定範囲を測定すればよいので、電池セル204の残存容量が上限maxまたは下限minとならないように制御することも容易となる。さらに、図10において説明した方法によれば、各電池セル204を満充電状態にしないので、短い処理時間で残存容量のバランスをとることができる。このため、電池モジュール202の実動作への影響が小さい。図10における処理を高頻度に実行することで、電池モジュール202の有効容量を高く維持できる。
【0080】
図11は、電池セル204の放電時の電圧-容量特性の一例を示す図である。なお、図7に示した電圧-容量特性は、電池セル204の充電時の電圧-容量特性の一例を示す図である。放電時の電圧-容量特性とは、電池セル204の残存容量を減少させながら測定した電圧-容量特性であり、充電時の電圧-容量特性とは、電池セル204の残存容量を増加させながら測定した電圧-容量特性である。図7および図11に示すように、電池セル204の電圧-容量特性は、充電時と放電時とで異なる場合がある。電池セル204の充電時および放電時において、電圧-容量特性が異なる場合があることは実験的に確認できている。
【0081】
図12は、電池セル204の放電時における基準特性の一例を示す図である。電圧-容量特性と同様に、電圧-容量特性を微分した基準特性も、電池セル204の充電時と放電時で異なる場合がある。基準特性記録部110は、電池セル204を充電したときの基準特性と、電池セル204を放電させたときの基準特性との少なくともいずれか一方を記録してよい。本例では、基準特性記録部110は、充電時の基準特性と、放電時の基準特性の両方を記録している。
【0082】
データ解析部104は、電池セル204の測定データMeが、電池セル204の充電時または放電時のいずれのデータであるかに基づいて、測定データMeから算出した微分特性と比較する基準特性を選択してよい。つまり、測定データMeが充電時の測定データである場合、データ解析部104は充電時の基準特性を選択する。また、測定データMeが放電時の測定データである場合、データ解析部104は放電時の基準特性を選択する。解析用データには、測定データMeが、充電時または放電時のいずれの測定データであるかを示すデータが含まれることが好ましい。
【0083】
図13は、電池セル204の充放電の概要を説明する図である。図13においては、電池セル204がリチウムイオン電池である場合を説明する。電池セル204の負極218は、複数の黒鉛層220を有している。電池セル204が充放電されることで、黒鉛層220の間にリチウムイオン222が挿入され、または、脱離される。黒鉛層220の間にリチウムイオン222が挿入される密度に応じた負極218の状態を、ステージと称する。負極218のステージに応じて、電圧-容量特性が変化する。電池セル204の電圧-容量特性が充電時または放電時で異なる理由の一つは、黒鉛層220に挿入されるときと脱離するときとで、リチウムイオン222の動作が異なるためと推定できる。
【0084】
図14は、セルバランス処理の他の例を説明する図である。本例においても、図10の例と同様に、データ解析部104は、電池セル204を充放電させる送信データを生成してよい。電池セル204の充放電は、送信データに含まれる制御データCoに基づいて電池管理装置206が行ってよく、送信データに含まれる解析結果データAに基づいて電池管理装置206が行ってもよい。
【0085】
初期段階S1501は、電池セル204の残存容量がばらついている状態を示している。次に充電段階S1502において、最も残存容量が多い電池セル204-1が満充電となるまで、それぞれの電池セル204を充電する。
【0086】
次に、放電段階S1503において、満充電となった電池セル204-1を放電させる。S1503においては、電池セル204-1以外の電池セル204において最も残存容量が多い電池セル204-2の残存容量と、電池セル204-1の残存容量とが一致するまで、電池セル204-1を放電する。
【0087】
次に、充電段階S1504において、最も残存容量が多い電池セル204-1、204-2が満充電となるまで、それぞれの電池セル204を充電する。
【0088】
次に、放電段階S1505において、満充電となった電池セル204-1、204-2を放電させる。S1505においては、電池セル204-1、204-2と、残りの電池セル204において最も残存容量が多い電池セル204-3の残存容量が一致するまで、電池セル204-1、204-2を放電する。このように、充電段階と放電段階を繰り返すことで、全ての電池セル204の残存容量を等しくできる。これにより、電池モジュール202の有効容量を増大できる。
【0089】
なお、図14の例においても、データ解析部104は、図7から図9において説明した方法で電池セル204の容量を解析してよく、他の方法を用いてもよい。データ解析部104は、電池セル204の両極間電圧に基づいて、残存容量を算出してよい。データ解析部104は、電池セル204の出力電流および充電電流を積算することで、電池セル204の残存容量を推定してもよい。
【0090】
図15は、電池モジュール202の概要を説明する図である。本例の電池モジュール202は、正端子211、負端子212、および、両端子間に直列に接続された複数の電池セル204を備える。また、電池モジュール202は、それぞれの電池セル204に対して、放電用スイッチ213、放電用抵抗214および電圧計215を有する。放電用スイッチ213は、電池セル204の正極および負極を、放電用抵抗214を介して接続するか否かを切り替える。放電用スイッチ213をオン状態にすることで、対応する電池セル204を放電させることができる。電圧計215は、対応する電池セル204の両極間電圧を測定する。電圧計215は、計測部208の一部として機能する。
【0091】
電池モジュール202は、複数の電池セル204に対して直列に設けられた電流計216を更に有してよい。電流計216は、複数の電池セル204に流れる電流を測定する。電流計216は、計測部208の一部として機能する。
【0092】
本例の電池モジュール202においては、個別の電池セル204を選択して放電させることができる。また、複数の電池セル204を充電する場合、電池管理装置206は、正端子211と負端子212に充電用の電源を接続する。このため、複数の電池セル204が同時に充電される。図10または図14において説明した方法によれば、図15に示す構成の電池モジュール202の残存容量のばらつきを、容易に低減できる。
【0093】
図16は、解析装置100の動作例を示すフローチャートである。本例の解析装置100は、解析用データに基づいて、それぞれの電池セル204の残存容量を補正する補正データを生成して、電池管理装置206に送信する。他の動作は、図1から図15において説明した例と同様である。
【0094】
まず測定開始段階S1101において、データ送信部106は、電池管理装置206に電池セル204の特性測定を開始させる。データ送信部106は、ネットワーク12を介して、測定開始のトリガとなる送信データを送信してよい。データ送信部106は、図7に示した測定範囲を指定する送信データを送信してよい。次に転送要求段階S1102において、データ送信部106は、ネットワーク12を介して、電池管理装置206に解析用データの転送を要求する。
【0095】
次にデータ取得段階S1103において、データ取得部102は、ネットワーク12を介して、解析用データ送信部200から解析用データを取得する。次にデータ解析段階S1104において、データ解析部104は、データ取得段階S1103で取得した解析用データに基づいて、少なくとも1つの電池セル204の充電容量に関する特性を解析する。本例のデータ解析部104は、計測部208が推定した電池セル204の推定残存容量と、解析により算出した残存容量との誤差を算出してよい。次に、結果送信段階S1105において、データ送信部106は、データ解析段階S1104における解析結果に応じた送信データを、ネットワーク12を介して電池管理装置206に送信する。本例の送信データは、推定残存容量を補正するための補正データを含む。
【0096】
図17は、電池管理装置206、計測部208および解析用データ送信部200の動作例を示すフローチャートである。本例の電池管理装置206は、解析装置100における解析結果に基づいて、それぞれの電池セル204の推定残存容量を補正する。これにより、電池管理装置206が管理する推定残存容量の精度を向上できる。他の動作は、図1から図15において説明した例と同様である。
【0097】
本例の解析装置100は、まず測定段階S1201において、計測部208は、電池モジュール202に含まれる1つ以上の電池セル204の充放電に関する特性を測定した測定データを生成する。計測部208は、送信データにより指定された測定範囲を含むように、各電池セル204の特性を測定してよい。電池管理装置206は、図16の測定開始段階S1101において解析装置100から受信したトリガに応じて、計測部208に測定を開始させてよい。測定段階S1201は、図10におけるS1002およびS1003に対応している。
【0098】
計測部208は、電池セル204の特性を測定すべく電池セル204を充放電させた場合に、電池セル204を充放電させたときの電流値を積算する(S1202)。また、計測部208は、所定期間内の各タイミングにおける電流値の積算値を取得する(S1203)。計測部208は、取得した積算値に基づいて、各タイミングにおける残存容量の推定値を算出する(S1204)。これにより、図7に示したように、所定の測定範囲における電池セル204の電圧-容量特性を取得できる。
【0099】
次に、第1判定段階S1205において、電池管理装置206は、解析装置100から解析用データの転送要求を受信したか否かを判定する。転送要求を受信している場合、解析用データ送信部200に、解析用データを送信させる(S1206)。転送要求を受信していない場合、電池管理装置206は、S1206の処理を行わずに、次の処理を行う。
【0100】
次に、第2判定段階S1207において、電池管理装置206は、解析装置100から推定残存容量を補正する補正データを受信したか否かを判定する。補正データを受信している場合、電池管理装置206は、推定残存容量を補正する(S1208)。補正データを受信していない場合、電池管理装置206は,S1201からの処理を繰り返す。
【0101】
図18は、データ解析部104における解析内容の他の例を示す図である。本例のデータ解析部104は、電池セル204の微分特性から、電池セル204の劣化速度を算出する。データ解析部104は、電池セル204の満充電容量の変化から、電池セル204の劣化速度を算出してよい。データ解析部104は、電池セル204の使用履歴から電池セル204の充放電回数を算出し、充放電回数に対する満充電容量の劣化量に基づいて劣化速度を算出してよい。データ解析部104は、使用期間内における電池セル204の充電電流の積算値を所定の基準値で除算した商を、電池セル204の充電回数としてよい。データ解析部104は、使用期間内における電池セル204の放電電流の積算値を所定の基準値で除算した商を、電池セル204の放電回数としてよい。これらの基準値は、電池セル204の定格容量を用いてよい。データ解析部104は、充電回数と放電回数の和を充放電回数としてよい。
【0102】
図18においては、横軸を充放電回数とし、縦軸を満充電容量としたグラフを示している。データ解析部104は、解析用データ記録部108が記録した時系列の測定データに基づいて、それぞれの電池セル204の満充電容量の経時変化を算出してよい。この場合、測定データは、電池セル204の使用開始から、電池セル204の特性を測定するタイミングまでの期間における、充電電流および放電電流の各積算値を含んでよい。
【0103】
データ解析部104は、所定の始点から、現時点までの満充電容量の変化量に基づいて、電池セル204の劣化速度を算出してよい。当該始点は、電池セル204の開始時点から、現時点までの任意のタイミングに設定してよい。本例の劣化速度は、充放電回数の単位回数当たりの、満充電容量の劣化量となる。
【0104】
データ解析部104は、満充電容量の経時変化の実測値から、現時点以降における満充電容量の劣化速度を推定してもよい。データ解析部104は、所定の始点から現時点までの劣化速度を、現時点以降の劣化速度として用いてよい。
【0105】
他の例では、データ解析部104は、現時点の満充電容量の値から、現時点以降における劣化速度を推定してもよい。データ解析部104には、満充電容量の値と、現時点以降における劣化速度との関係が予め与えられてよい。当該関係は、電池セル204の製造者における設計値であってよく、同種の電池セル204の実績から統計的に得られた関係でもよい。
【0106】
データ解析部104は、解析用データの解析結果に基づいて、電池セル204を交換すべき時期を示す交換時期データを生成してもよい。例えばデータ解析部104は、劣化速度の推定値に基づいて、満充電容量が所定の基準値Qrefを下回る時期を推定する。当該時期は、現時点からの経過時間(例えば月、日、時間)であらわされてよく、充放電回数であらわされてもよい。データ解析部104は、電池セル204の使用履歴から、単位時間あたりに何回分の充放電が行われたかを算出してよい。データ解析部104は、算出した時間-充放電回数の関係から、交換時期に対応する経過時間を算出してよい。また、データ解析部104は、現時点の満充電容量が所定の基準値Qrefを下回っている場合、交換時期までの期間が0(すなわち、現時点で交換すべき)であることを示す交換時期データを生成してもよい。
【0107】
図19は、データ解析部104における解析内容の他の例を示す図である。本例のデータ解析部104は、2つ以上の電池セル204の微分特性から算出される、2つ以上の電池セル204間における充電容量の乖離量に基づいて、2つ以上の電池セル204間の充電容量の乖離速度を算出する。当該乖離量を、2つ以上の電池セル204の劣化量として用いてもよい。当該充電容量は、図10の初期段階S1001または図14の初期段階S1501に示されるような、電池セル204の特性測定開始時における残存容量であってよい。当該充電容量は、電池セル204の満充電容量であってもよい。劣化速度の算出と同様に、データ解析部104は、解析用データ記録部108が記録した、電池セル204の使用履歴から、電池セル204の充放電回数を算出し、充放電回数に対する乖離量の変化に基づいて乖離速度を算出してよい。
【0108】
図19においては、横軸を充放電回数とし、縦軸を充電容量の乖離量としたグラフを示している。データ解析部104は、解析用データ記録部108が記録した時系列の測定データに基づいて、充電容量の乖離量の経時変化を算出してよい。データ解析部104は、所定の始点から、現時点までの乖離量の変化に基づいて、電池セル204間の充電容量の乖離速度を算出してよい。
【0109】
データ解析部104は、乖離量の経時変化の実測値から、現時点以降における乖離速度を推定してもよい。データ解析部104は、所定の始点から現時点までの乖離速度を、現時点以降の乖離速度として用いてよい。
【0110】
他の例では、データ解析部104は、現時点の乖離量の値から、現時点以降における乖離速度を推定してもよい。データ解析部104には、乖離量の値と、現時点以降における乖離速度との関係が予め与えられてよい。当該関係は、電池セル204の製造者における設計値であってよく、同種の電池セル204の実績から統計的に得られた関係でもよい。
【0111】
図20は、電池モジュール202の有効容量の推移例を示す図である。電池モジュール202の有効容量の最大値は、それぞれの電池セル204の満充電容量の総和に相当する。ただし、図4において説明したように、それぞれの電池セル204の残存容量にばらつきが生じていると、電池モジュール202の有効容量は、最大値よりも小さくなってしまう。図20においては、有効容量の最大値を破線で示し、実際の有効容量を実線で示している。本例においては、有効容量の最大値は、各電池セル204の経時劣化により、ゆるやかに減少している。
【0112】
自然放電量のばらつき等により、電池セル204間の残存容量のばらつきが増大すると、電池モジュール202の有効容量は徐々に低下する。本例の解析システム10においては、図10において説明した電池セル204間の残存容量のセルバランス処理を、所定の時間間隔I1で実行する。このため、時間間隔I1ごとに、電池モジュール202の有効容量は、最大値近くまで回復する。
【0113】
時間間隔I1を短くすることで、1回のセルバランス処理における有効容量の調整量を小さくできる。このため、セルバランス処理にかかる時間を短縮して、電池モジュール202が実動作できない時間を短縮できる。
【0114】
データ解析部104は、2つ以上の電池セル204の充電容量の乖離速度に基づいて、時間間隔Iを調整してもよい。データ解析部104は、算出した乖離速度と、予め定められた設計値との差分が大きくなった場合に時間間隔Iを短くしてよい。データ解析部104は、電池セル204間の充電容量の乖離の傾向が変化した場合に、時間間隔Iを短くしてもよい。乖離の傾向が変化するとは、例えば、今までとは異なる電池セル204の乖離が大きくなった場合等である。データ解析部104は、乖離速度が速いほど、時間間隔Iを短くしてもよい。これにより、1回のセルバランス処理における調整量の増大を抑制できる。図20の例では、データ解析部104は、時間間隔をI2に調整している。
【0115】
データ解析部104は、当該時間間隔でセルバランス処理を実行できるように、当該時間間隔に応じて、2つ以上の電池セル204の充放電に関するデータを測定すべき測定間隔を算出する。一例として、測定間隔は当該時間間隔と等しい。データ送信部106は、当該測定間隔に応じた送信データを送信する。データ送信部106は、当該測定間隔に応じたタイミングで、計測部208に電池セル204の特性を測定させるためのトリガとなる送信データを送信してよい。他の例では、データ送信部106は、当該測定間隔の長さを示すデータを含む送信データを送信してもよい。この場合、電池管理装置206は、当該測定間隔に応じた周期で、計測部208に電池セル204の特性を測定させる。また、データ解析部104は、測定データの解析結果に応じて電池セル204の充放電を制御するための制御データを生成し、当該時間間隔に応じたタイミングで制御データを送信してよい。
【0116】
データ解析部104は、電池セル204の劣化速度に基づいて、時間間隔Iを調整してもよい。データ解析部104は、算出した劣化速度と、予め定められた設計値との差分が大きくなった場合に時間間隔Iを短くしてよい。データ解析部104は、電池セル204間の充電容量の劣化の傾向が変化した場合に、時間間隔Iを短くしてもよい。劣化の傾向が変化するとは、例えば、今までとは異なる電池セル204の劣化が大きくなった場合等である。
【0117】
電池セル204が劣化するほど、電池セル204の残存容量のばらつきは大きくなりやすい。データ解析部104は、電池セル204の劣化速度が速いほど、時間間隔Iを短くしてもよい。データ解析部104は、電池モジュール202に含まれる電池セル204の劣化速度の平均値を用いてよく、最悪値を用いてもよい。これにより、1回のセルバランス処理における調整量の増大を抑制できる。
【0118】
図21は、電池セル204の劣化検出の一例を示す図である。本例では、電池セル204の満充電容量の経時変化を用いて劣化を説明するが、満充電容量以外の特性の経時変化から劣化を検出してもよい。本例のデータ解析部104は、電池セル204の満充電容量の測定値と、満充電容量の基準値との乖離量Dを、電池セル204の劣化量として検出する。図21においては、満充電容量の測定値を丸印でプロットしている。また、各プロットを近似した曲線を実線で示している。
【0119】
満充電容量の基準値は、満充電容量の基準特性から取得できる。満充電容量の基準特性は、電池セル204の充放電回数に対する満充電容量の変化を示す特性である。満充電容量の基準特性は、電池セル204のメーカーから得られる設計値、または、統計的に取得された統計値であってよい。データ解析部104には、電池セル204の基準特性が予め記録されていてよい。なお、データ解析部104は、電池セル204の温度、満充電状態または最小充電状態における放置時間等に基づいて、基準特性を補正してもよい。データ解析部104は、充放電回数と、乖離量Dとの関係から、電池セル204が基準特性から乖離する乖離速度を算出してもよい。
【0120】
データ解析部104は、乖離量Dまたは乖離速度に基づいて、図20において説明した時間間隔Iを調整してよい。データ解析部104は、乖離量Dまたは乖離速度が所定の参照値以上となった場合に、時間間隔Iを短くしてよい。図21の例では、乖離量Dが参照値以上なったタイミングで、時間間隔I1をI2に調整している。また、データ解析部104は、乖離量Dが参照値以上となった場合に、電池管理装置206にその旨を通知してもよい。
【0121】
また、データ解析部104は、電池セル204の特性と、基準特性との乖離傾向が変わった場合に、時間間隔Iを短くしてもよい。例えばデータ解析部104は、前回までの測定値を近似する近似曲線に対する、今回の測定値の差分が所定値以上となった場合に、乖離傾向が変わったと判定してよい。図21の例では、乖離傾向が変化したタイミングで、時間間隔I2をI3に調整している。また、データ解析部104は、乖離量Dが参照値以上となった場合に、電池管理装置206にその旨を通知してもよい。
【0122】
図22は、データ解析部104における解析内容の他の例を示す図である。本例のデータ解析部104は、解析用データの解析結果に基づいて、電池セル204が故障したことを示す故障データを生成する。図4に示すように、データ送信部106は、故障データを含む送信データを、電池管理装置206に送信してよい。
【0123】
本例のデータ解析部104は、電池セル204の満充電容量Qmaxの経時変化に基づいて故障データを生成する。データ解析部104は、前回の解析用データから算出した満充電容量に対する、今回の解析用データから算出した満充電容量の低下分ΔQが、所定の基準値を超えた場合に、当該電池セル204が故障したと判定してよい。これにより、電極の剥離等、または、急激な特性変化を検出して、電池管理装置206に通知できる。なお、故障判定に用いる特性は、満充電容量に限定されない。
【0124】
図23は、データ解析部104における解析内容の他の例を示す図である。本例のデータ解析部104は、解析用データの解析結果に基づいて、電池セル204が交換されたことを検出する。
【0125】
本例のデータ解析部104は、電池セル204の満充電容量Qmaxの経時変化に基づいて電池セル204の交換の有無を検知する。データ解析部104は、前回の解析用データから算出した満充電容量に対する、今回の解析用データから算出した満充電容量の増加分+Qが、所定の基準値を超えた場合に、当該電池セル204が交換されたと判定してよい。データ解析部104は、微分特性等の満充電容量以外の特性の変化の大きさに基づいて、電池セル204が交換されたと判定してもよい。
【0126】
図24は、データ解析部104の動作例を示す図である。図24は、解析用データ記録部108が記録する時系列の解析用データ1、2を示している。解析用データ1、2は、電池セル204の特性を測定したタイミングが異なる。
【0127】
本例の計測部208は、電池モジュール202における各電池セル204の位置に基づいて、それぞれの電池セル204の測定データに対してセル識別データCeを割り当てる。例えば計測部208は、図15に示した電圧計215毎に、セル識別データCeを割り当てる。このため、電池モジュール202におけるいずれかの電池セル204が交換された場合でも、交換前の電池セル204と、交換後の電池セル204には同一のセル識別データCeが割り当てられる。この場合、解析装置100において、セル識別データCeごとに測定データを管理すると、交換前の電池セル204の測定データと、交換後の電池セル204の測定データとが混同して管理されてしまう。この場合、電池セル204の特性を精度よく解析できない場合がある。
【0128】
本例のデータ解析部104は、同一のセル識別データCeに対応する測定データの履歴に基づいて、同一のセル識別データCeに対応する電池セル204に対して新たなセル識別データCeを割り当てる。例えば、図23において説明したように、データ解析部104は、測定データの履歴から算出される満充電容量の変化が基準値以上である場合に、電池セル204が交換されたと判定して当該電池セル204のセル識別データCeを更新する。図24の例では、セル識別データCe12を、セル識別データCe12bに更新している。これにより、交換前後の電池セル204の測定データの混同を防ぐことができる。
【0129】
図25は、電池モジュール202の他の構成例を示す図である。本例の電池モジュール202は、電池モジュール202を管理するBMS230(Battery Management System)を備える。BMS230は、図2に示した電池管理装置206であってよく、電池管理装置206と通信可能な回路であってもよい。BMS230は、電池セル204の推定残存容量を残存容量計240に通知する。BMS230は、個別の電池セル204の推定残存容量を通知してよく、複数の電池セル204の推定残存容量の総和を通知してもよい。
【0130】
残存容量計240は、電池モジュール202に搭載されていてよく、電池モジュール202の外部に配置されていてもよい。残存容量計240は、通知された推定残存容量に関する情報を表示する。
【0131】
データ解析部104は、BMS230が通知した電池セル204の推定残存容量と、測定データから解析した電池セル204の解析残存容量とを比較してよい。データ送信部106は、当該比較結果を含む送信データを送信してよい。これにより、電池管理装置206に、残存容量計240が表示している推定残存容量が正確か否かを通知できる。比較結果は、推定残存容量と、解析残存容量との差分であってよい。
【0132】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルハードウェア回路またはアナログハードウェア回路の少なくとも一方を含んでよく、集積回路(IC)ディスクリート回路の少なくとも一方を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0133】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0134】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0135】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0136】
図26は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0137】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インターフェイス2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入出力ユニットを含み、それらは入出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入出力ユニットを含み、それらは入出力チップ2240を介して入出力コントローラ2220に接続されている。
【0138】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0139】
通信インターフェイス2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0140】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ2240はまた、様々な入出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ2220に接続してよい。
【0141】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0142】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0143】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0144】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索または置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0145】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0146】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0147】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
[項目1]
電池モジュールに含まれる1つ以上の電池セルの充放電に関する特性を測定した測定データ、および、前記電池モジュールまたは前記電池セルの少なくとも一方を識別する識別データを含む解析用データを、ネットワークを介して取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した前記解析用データに基づいて、少なくとも1つの前記電池セルの充電容量に関する特性を解析するデータ解析部と、
前記データ解析部における解析結果に応じた送信データを、ネットワークを介して送信するデータ送信部と、
を備える解析装置。
[項目2]
前記データ取得部は、前記電池モジュールを識別するモジュール識別データと、前記電池セルを識別するセル識別データとが対応付けられた前記識別データを取得し、
前記データ解析部は、前記電池モジュール毎に前記電池セルの前記充電容量に関する特性を解析する、
項目1に記載の解析装置。
[項目3]
前記データ取得部が経時的に取得した前記測定データを、前記識別データと対応付けて記録する解析用データ記録部を更に備える、項目1または2に記載の解析装置。
[項目4]
前記データ解析部は、同一の前記識別データに対応する前記測定データの履歴に基づいて、前記同一の識別データに対応する前記電池セルに対して新たな前記識別データを割り当てる、項目3に記載の解析装置。
[項目5]
前記データ解析部は、前記解析結果に基づいて、前記電池セルを制御する制御データを生成し、
前記データ送信部は、前記制御データを含む前記送信データを送信する、
項目1から4のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目6]
前記データ解析部は、前記測定データに基づいて前記電池モジュール内のそれぞれの前記電池セルの残存容量を算出し、
前記データ解析部は、前記残存容量が最小ではない前記電池セルの少なくとも1つを放電させて、前記残存容量が最小の前記電池セルとの前記残存容量の差を縮小させる前記制御データを生成する、
項目5に記載の解析装置。
[項目7]
前記データ解析部は、前記解析結果に基づいて、前記電池セルを交換すべき時期を示す交換時期データを生成し、
前記データ送信部は、前記交換時期データを含む前記送信データを送信する、
項目1から6のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目8]
前記データ解析部は、前記解析結果に基づいて、前記電池セルが故障したことを示す故障データを生成し、
前記データ送信部は、前記故障データを含む前記送信データを送信する、
項目1から7のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目9]
前記データ解析部は、前記電池セルの充電時または放電時における電圧-容量特性の微分特性に基づいて、前記電池セルの充電容量に関する特性を解析する、項目1から8のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目10]
前記データ取得部は、前記電圧-容量特性の測定時における前記電池セルの温度を示す温度データを含む前記解析用データを取得し、
前記データ解析部は、前記電池セルの温度に基づいて、前記微分特性による解析を補正する、
項目9に記載の解析装置。
[項目11]
前記解析装置は、それぞれの前記電池セルの前記微分特性の基準特性を記録した基準特性記録部を更に備え、
前記基準特性は、1つ以上の基準特徴点を有し、
前記データ解析部は、前記電池セルの前記微分特性における測定特徴点と、前記基準特性における前記基準特徴点とに基づいて、前記電池セルを解析する、
項目9または10に記載の解析装置。
[項目12]
前記基準特性記録部は、前記電池セルを充電したときの前記基準特性と、前記電池セルを放電させたときの前記基準特性との少なくともいずれか一方を記録し、
前記データ解析部は、前記電池セルの前記測定データが、充電時または放電時のいずれのデータかに基づいて、前記微分特性と比較する前記基準特性を選択する、
項目11に記載の解析装置。
[項目13]
前記データ解析部は、前記微分特性から算出される前記電池セルの劣化量に基づいて、前記電池セルの劣化速度を算出する、項目9から12のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目14]
前記データ解析部は、前記電池セルの前記劣化速度に基づいて、前記電池セルの前記充放電に関するデータを測定すべき測定間隔を算出し、
前記データ送信部は、前記測定間隔に応じた前記送信データを送信する、
項目13に記載の解析装置。
[項目15]
前記データ解析部は、2つ以上の前記電池セルの前記微分特性から算出される、前記2つ以上の前記電池セル間における充電容量の乖離量に基づいて、前記2つ以上の前記電池セル間の前記充電容量の乖離速度を算出する、項目9から14のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目16]
前記データ解析部は、前記2つ以上の前記電池セルの前記乖離速度に基づいて、前記2つ以上の前記電池セルの前記充放電に関するデータを測定すべき測定間隔を算出し、
前記データ送信部は、前記測定間隔に応じた前記送信データを送信する、
項目15に記載の解析装置。
[項目17]
項目1から16のいずれか一項に記載の解析装置と、
前記解析用データを、前記ネットワークを介して前記解析装置に送信する解析用データ送信部と、
を備える解析システム。
[項目18]
電池モジュールに含まれる1つ以上の電池セルの充放電に関する特性を測定した測定データを生成する測定段階と、
前記測定データ、および、前記電池モジュールまたは前記電池セルの少なくとも一方を識別する識別データを含む解析用データを、ネットワークを介して送信する解析用データ送信段階と、
前記解析用データを、前記ネットワークを介して取得するデータ取得段階と、
前記データ取得段階で取得した前記解析用データに基づいて、少なくとも1つの前記電池セルの充電容量に関する特性を解析するデータ解析段階と、
前記データ解析段階における解析結果に応じた送信データを、前記ネットワークを介して送信する結果送信段階と、
を備える解析方法。





【符号の説明】
【0148】
10 解析システム、12 ネットワーク、100 解析装置、102 データ取得部、104 データ解析部、106 データ送信部、108 解析用データ記録部、110 基準特性記録部、200 解析用データ送信部、202 電池モジュール、204 電池セル、206 電池管理装置、208 計測部、211 正端子、212 負端子、213 放電用スイッチ、214 放電用抵抗、215 電圧計、216 電流計、218 負極、220 黒鉛層、222 リチウムイオン、230 BMS、240 残存容量計、2200 コンピュータ、2201 DVD-ROM、2210 ホストコントローラ、2212 CPU、2214 RAM、2216 グラフィックコントローラ、2218 ディスプレイデバイス、2220 入出力コントローラ、2222 通信インターフェイス、2224 ハードディスクドライブ、2226 DVD-ROMドライブ、2230 ROM、2240 入出力チップ、2242 キーボード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26