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特許7135042アンテナ装置、測定装置及び測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】アンテナ装置、測定装置及び測定システム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/30 20060101AFI20220905BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20220905BHJP
   H01Q 3/08 20060101ALI20220905BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20220905BHJP
   H04B 17/318 20150101ALI20220905BHJP
【FI】
H01Q21/30
G01R29/08 B
H01Q3/08
H01Q13/08
H04B17/318
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020158346
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052147
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】林 合祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 翔
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-260533(JP,A)
【文献】特開平10-126136(JP,A)
【文献】特開2018-148371(JP,A)
【文献】特開2004-032163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/30
G01R 29/08
H01Q 3/08
H01Q 13/08
H04B 17/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる複数の周波数の電波を受信するアンテナ装置であって、
前記複数の周波数に対応する複数の指向性アンテナが配置されたアンテナ部材と、
前記複数の指向性アンテナそれぞれの主ビームの垂直方向及び水平方向それぞれにおける向きを一体的に変化させるように前記アンテナ部材を回転させる回転機構部と、
を備え、
前記アンテナ部材の共通のアンテナ配置面に沿った一方向に前記複数の指向性アンテナを並べて配置したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1のアンテナ装置において、
前記複数の指向性アンテナの数は3であり、
受信電波の周波数が最小である第1の指向性アンテナと、前記最小の周波数の2倍の周波数と受信電波の周波数との差が相対的に小さい第2の指向性アンテナとの間に、前記最小の周波数の2倍の周波数と受信電波の周波数との差が相対的に大きい第3の指向性アンテナを配置したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2のアンテナ装置において、
前記アンテナ部材は、前記複数の指向性アンテナが表面に配置された長尺の平板状部材であり、
前記回転機構部は、
鉛直方向の回転中心軸を中心に回転可能なベース部材と、
前記平板状部材の短手方向又は長手方向に延在する軸部材と、
前記ベース部材上に設けられ前記軸部材を回転可能に支持する複数の支持部材と、
前記ベース部材を回転させる第1の回転駆動部と、
前記軸部材を回転させる第2の回転駆動部とを有する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
互いに異なる複数の周波数の電波を受信するアンテナ装置であって、
前記複数の周波数に対応する複数の指向性アンテナが配置されたアンテナ部材と、
前記複数の指向性アンテナそれぞれの主ビームの垂直方向及び水平方向それぞれにおける向きを一体的に変化させるように前記アンテナ部材を回転させる回転機構部と、
を備え、
前記アンテナ部材は、前記複数の指向性アンテナが表面に配置された長尺の平板状部材であり、
前記回転機構部は、
鉛直方向の回転中心軸を中心に回転可能なベース部材と、
前記平板状部材の短手方向又は長手方向に延在する軸部材と、
前記ベース部材上に設けられ前記軸部材を回転可能に支持する複数の支持部材と、
前記ベース部材を回転させる第1の回転駆動部と、
前記軸部材を回転させる第2の回転駆動部とを有する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1又は2のアンテナ装置において、
前記アンテナ部材は、前記複数の指向性アンテナが互いに逆向きの1対の外側面に配置された長尺の角柱状部材又は角筒状部材であり、
前記回転機構部は、
鉛直方向の回転中心軸を中心に回転可能なベース部材と、
前記角柱状部材又は角筒状部材の短手方向又は長手方向に延在する軸部材と、
前記ベース部材上に設けられ前記軸部材を回転可能に支持する複数の支持部材と、
前記ベース部材を回転させる第1の回転駆動部と、
前記軸部材を回転させる第2の回転駆動部と、を有する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
互いに異なる複数の周波数の電波を受信するアンテナ装置であって、
前記複数の周波数に対応する複数の指向性アンテナが配置されたアンテナ部材と、
前記複数の指向性アンテナそれぞれの主ビームの垂直方向及び水平方向それぞれにおける向きを一体的に変化させるように前記アンテナ部材を回転させる回転機構部と、
を備え、
前記アンテナ部材は、前記複数の指向性アンテナが互いに逆向きの1対の外側面に配置された長尺の角柱状部材又は角筒状部材であり、
前記回転機構部は、
鉛直方向の回転中心軸を中心に回転可能なベース部材と、
前記角柱状部材又は角筒状部材の短手方向又は長手方向に延在する軸部材と、
前記ベース部材上に設けられ前記軸部材を回転可能に支持する複数の支持部材と、
前記ベース部材を回転させる第1の回転駆動部と、
前記軸部材を回転させる第2の回転駆動部と、を有する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1又は2のアンテナ装置において、
前記アンテナ部材は、前記複数の指向性アンテナが表面に配置された長尺の第1の平板状部材と、1又は複数の指向性アンテナが表面に配置された長尺の第2の平板状部材とを有し、
前記回転機構部は、
鉛直方向の回転中心軸を中心に回転可能なベース部材と、
前記第1の平板状部材及び前記第2の平板状部材の短手方向又は長手方向に延在し、前記第1の平板状部材及び前記第2の平板状部材それぞれの裏面が互いに対向した状態で各平板状部材の裏面に連結された軸部材と、
前記ベース部材上に設けられ前記軸部材の両端部を回転可能に支持する複数の支持部材と、
前記ベース部材を回転させる第1の回転駆動部と、
前記軸部材を回転させる第2の回転駆動部と、を有する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項8】
互いに異なる複数の周波数の電波を受信するアンテナ装置であって、
前記複数の周波数に対応する複数の指向性アンテナが配置されたアンテナ部材と、
前記複数の指向性アンテナそれぞれの主ビームの垂直方向及び水平方向それぞれにおける向きを一体的に変化させるように前記アンテナ部材を回転させる回転機構部と、
を備え、
前記アンテナ部材は、前記複数の指向性アンテナが表面に配置された長尺の第1の平板状部材と、1又は複数の指向性アンテナが表面に配置された長尺の第2の平板状部材とを有し、
前記回転機構部は、
鉛直方向の回転中心軸を中心に回転可能なベース部材と、
前記第1の平板状部材及び前記第2の平板状部材の短手方向又は長手方向に延在し、前記第1の平板状部材及び前記第2の平板状部材それぞれの裏面が互いに対向した状態で各平板状部材の裏面に連結された軸部材と、
前記ベース部材上に設けられ前記軸部材の両端部を回転可能に支持する複数の支持部材と、
前記ベース部材を回転させる第1の回転駆動部と、
前記軸部材を回転させる第2の回転駆動部と、を有する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項9】
請求項1又は2のアンテナ装置において、
前記アンテナ部材は、前記周波数ごとに前記指向性アンテナが表面に設けられ、仮想多角筒の複数の外周面のそれぞれを形成するように裏面を内側にして配置された複数の平板状部材を有し、
前記回転機構部は、
鉛直方向の回転中心軸を中心に回転可能なベース部材と、
前記仮想多角筒の中心軸に沿って延在し、前記複数の平板状部材それぞれの裏面に連結された軸部材と、
前記ベース部材上に設けられ前記軸部材の両端部を回転可能に支持する複数の支持部材と、
前記ベース部材を回転させる第1の回転駆動部と、
前記軸部材を回転させる第2の回転駆動部と、を有する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項10】
互いに異なる複数の周波数の電波を受信するアンテナ装置であって、
前記複数の周波数に対応する複数の指向性アンテナが配置されたアンテナ部材と、
前記複数の指向性アンテナそれぞれの主ビームの垂直方向及び水平方向それぞれにおける向きを一体的に変化させるように前記アンテナ部材を回転させる回転機構部と、
を備え、
前記アンテナ部材は、前記周波数ごとに前記指向性アンテナが表面に設けられ、仮想多角筒の複数の外周面のそれぞれを形成するように裏面を内側にして配置された複数の平板状部材を有し、
前記回転機構部は、
鉛直方向の回転中心軸を中心に回転可能なベース部材と、
前記仮想多角筒の中心軸に沿って延在し、前記複数の平板状部材それぞれの裏面に連結された軸部材と、
前記ベース部材上に設けられ前記軸部材の両端部を回転可能に支持する複数の支持部材と、
前記ベース部材を回転させる第1の回転駆動部と、
前記軸部材を回転させる第2の回転駆動部と、を有する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかのアンテナ装置において、
前記複数の指向性アンテナはそれぞれ、複数のパッチ状のアンテナ素子が配列したパッチアレイアンテナであることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項12】
互いに異なる複数の周波数の電波を受信するアンテナ装置であって、
前記複数の周波数に対応する複数の指向性アンテナが配置されたアンテナ部材と、
前記複数の指向性アンテナそれぞれの主ビームの垂直方向及び水平方向それぞれにおける向きを一体的に変化させるように前記アンテナ部材を回転させる回転機構部と、
を備え、
前記主ビームの向きを一体的に変化させるように回転される前記複数の周波数に対応する複数の指向性アンテナはそれぞれ、前記指向性アンテナの周波数に対応するサイズを有する複数のパッチ状のアンテナ素子が配列したパッチアレイアンテナであることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項13】
請求項12のアンテナ装置において、
前記複数の指向性アンテナの数は3であり、
受信電波の周波数が最小である第1の指向性アンテナと、前記最小の周波数の2倍の周波数と受信電波の周波数との差が相対的に小さい第2の指向性アンテナとの間に、前記最小の周波数の2倍の周波数と受信電波の周波数との差が相対的に大きい第3の指向性アンテナを配置したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかのアンテナ装置と、
前記複数の指向性アンテナで受信された受信信号の電力を測定する電力測定部と、
前記アンテナ部材の回転角度に関する情報を取得する回転角度情報取得部と、
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項15】
互いに異なる複数の周波数の電波を受信するアンテナ装置と、
前記複数の指向性アンテナで受信された受信信号の電力を測定する電力測定部と、
前記アンテナ部材の回転角度に関する情報を取得する回転角度情報取得部と、
を備え、
前記アンテナ装置は、
前記複数の周波数に対応する複数の指向性アンテナが配置されたアンテナ部材と、
前記複数の指向性アンテナそれぞれの主ビームの垂直方向及び水平方向それぞれにおける向きを一体的に変化させるように前記アンテナ部材を回転させる回転機構部と、
を備え
前記複数の指向性アンテナの数は3であり、
受信電波の周波数が最小である第1の指向性アンテナと、前記最小の周波数の2倍の周波数と受信電波の周波数との差が相対的に小さい第2の指向性アンテナとの間に、前記最小の周波数の2倍の周波数と受信電波の周波数との差が相対的に大きい第3の指向性アンテナを配置した、ことを特徴とする測定装置。
【請求項16】
請求項14又は15の測定装置と、
前記測定装置を搭載して移動可能な移動体と、
を備える測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を送受信可能なアンテナ装置、測定装置及び測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、移動通信網の基地局等から送信された電波を、指向性を有する指向性受信アンテナで受信して測定する測定装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定の最大感度方向を有する指向性受信アンテナと、指向性受信アンテナを保持するアンテナ保持部材と、指向性受信アンテナの最大感度方向が回転するようにアンテナ保持部材を回転させる回転機構部とを備える測定装置が開示されている。この測定装置によれば、電波測定の労力及び時間を掛けることなく、より正確な電波測定が可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-148371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、移動通信網の基地局等から送信された電波の伝搬特性を正しく把握するには、対象エリアの複数の測定点で測定する必要がある。そのため、測定装置を車両(「電波測定車」又は「電測車」ともいう。)に搭載して複数の測定点に順次移動し、各測定点に停車した状態で複数方向から到来する電波が指向性受信アンテナで受信されて測定される。このように複数の測定点に順次移動して測定を行うため、各測定点での電波測定の労力及び時間を低減してより効率的に電波測定を行うことが要請される。
【0006】
特に、各測定点での測定対象が複数の周波数の電波の場合は、周波数毎に指向性受信アンテナを用意する必要があり、各測定点で指向性受信アンテナを交換したり周波数を切り替えて測定を繰り返し行ったりするので、電波測定の労力及び時間がかかってしまい、効率的な電波測定が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るアンテナ装置は、互いに異なる複数の周波数の電波を受信するアンテナ装置である。このアンテナ装置は、前記複数の周波数に対応する複数の指向性アンテナが配置されたアンテナ部材と、前記複数の指向性アンテナそれぞれの主ビームの垂直方向及び水平方向それぞれにおける向きを一体的に変化させるように前記アンテナ部材を回転させる回転機構部と、を備える。
【0008】
前記アンテナ装置において、前記アンテナ部材の共通のアンテナ配置面に沿った一方向に前記複数の指向性アンテナを並べて配置してもよい。
【0009】
前記アンテナ装置において、前記複数の指向性アンテナの数は3であり、受信電波の周波数が最小である第1の指向性アンテナと、前記最小の周波数の2倍の周波数と受信電波の周波数との差が相対的に小さい第2の指向性アンテナとの間に、前記最小の周波数の2倍の周波数と受信電波の周波数との差が相対的に大きい第3の指向性アンテナを配置してもよい。
【0010】
前記アンテナ装置において、前記アンテナ部材は、前記複数の指向性アンテナが表面に配置された長尺の平板状部材であり、前記回転機構部は、鉛直方向の回転中心軸を中心に回転可能なベース部材と、前記平板状部材の短手方向又は長手方向に延在する軸部材と、前記ベース部材上に設けられ前記軸部材を回転可能に支持する複数の支持部材と、前記ベース部材を回転させる第1の回転駆動部と、前記軸部材を回転させる第2の回転駆動部とを有してもよい。
【0011】
前記アンテナ装置において、前記アンテナ部材は、前記複数の指向性アンテナが互いに逆向きの1対の外側面に配置された長尺の角柱状部材又は角筒状部材であり、前記回転機構部は、鉛直方向の回転中心軸を中心に回転可能なベース部材と、前記角柱状部材又は角筒状部材の短手方向又は長手方向に延在する軸部材と、前記ベース部材上に設けられ前記軸部材を回転可能に支持する複数の支持部材と、前記ベース部材を回転させる第1の回転駆動部と、前記軸部材を回転させる第2の回転駆動部とを有してもよい。
【0012】
前記アンテナ装置において、前記アンテナ部材は、前記複数の指向性アンテナが表面に配置された長尺の第1の平板状部材と、1又は複数の指向性アンテナが表面に配置された長尺の第2の平板状部材とを有し、前記回転機構部は、鉛直方向の回転中心軸を中心に回転可能なベース部材と、前記第1の平板状部材及び前記第2の平板状部材の短手方向又は長手方向に延在し、前記第1の平板状部材及び前記第2の平板状部材それぞれの裏面が互いに対向した状態で各平板状部材の裏面に連結された軸部材と、前記ベース部材上に設けられ前記軸部材の両端部を回転可能に支持する複数の支持部材と、前記ベース部材を回転させる第1の回転駆動部と、前記軸部材を回転させる第2の回転駆動部とを有してもよい。
【0013】
前記アンテナ装置において、前記アンテナ部材は、前記周波数ごとに前記指向性アンテナが表面に設けられ、仮想多角筒の複数の外周面のそれぞれを形成するように裏面を内側にして配置された複数の平板状部材を有し、前記回転機構部は、鉛直方向の回転中心軸を中心に回転可能なベース部材と、前記仮想多角筒の中心軸に沿って延在し、前記複数の平板状部材それぞれの裏面に連結された軸部材と、前記ベース部材上に設けられ前記軸部材の両端部を回転可能に支持する複数の支持部材と、前記ベース部材を回転させる第1の回転駆動部と、前記軸部材を回転させる第2の回転駆動部とを有してもよい。
【0014】
前記アンテナ装置において、前記複数の指向性アンテナはそれぞれ、複数のパッチ状のアンテナ素子が配列したパッチアレイアンテナであってもよい。
【0015】
本発明の他の態様に係る測定装置は、前記複数の指向性アンテナで受信された受信信号の電力を測定する電力測定部と、前記アンテナ部材の回転角度に関する情報を取得する回転角度情報取得部と、を備える。
【0016】
本発明の更に他の態様に係る測定システムは、前記測定装置と、前記測定装置を搭載して移動可能な移動体と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の周波数に対応した複数の指向性アンテナが配置されたアンテナ装置を回転させて測定することにより、複数の周波数の電波の同時測定できるようになるので、複数の周波数の電波測定の労力及び時間を低減して効率的な電波測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係るアンテナ装置の概略構成の一例を示す斜視図。
図2】実施形態に係るアンテナ装置を構成するアンテナ部材の一例を示す斜視図。
図3】実施形態に係るアンテナ部材の指向性アンテナを構成するアンテナ素子の一例を示す斜視図。
図4】実施形態に係る指向性アンテナの垂直面における受信感度(放射強度、利得)の角度分布を示す指向性特性の一例を示す説明図。
図5】指向性アンテナのビーム幅の定義の説明図。
図6】(a)~(c)はそれぞれ、周波数f1のアンテナ素子と周波数f2のアンテナ素子を互いに隣り合わせて配置したときのアンテナ素子間距離d1の説明図、アンテナ素子間距離d1と周波数f1のアンテナ素子の3dBビーム幅との関係を示すグラフ、及び、アンテナ素子間距離d1と周波数f2のアンテナ素子の3dBビーム幅との関係を示すグラフ。
図7】(a)~(c)はそれぞれ、周波数f1のアンテナ素子と周波数f3のアンテナ素子を互いに隣り合わせて配置したときのアンテナ素子間距離d2の説明図、アンテナ素子間距離d2と周波数f1のアンテナ素子の3dBビーム幅との関係を示すグラフ、及び、アンテナ素子間距離d2と周波数f3のアンテナ素子の3dBビーム幅との関係を示すグラフ。
図8】(a)~(c)はそれぞれ、周波数f3のアンテナ素子と周波数f2のアンテナ素子を互いに隣り合わせて配置したときのアンテナ素子間距離d3の説明図、アンテナ素子間距離d3と周波数f2のアンテナ素子の3dBビーム幅との関係を示すグラフ、及び、アンテナ素子間距離d3と周波数f3のアンテナ素子の3dBビーム幅との関係を示すグラフ。
図9】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るアンテナ装置を構成するアンテナ部材における複数の指向性アンテナのアンテナ素子の配置順の一例を示す斜視図及び側面図。
図10】実施形態の実施例及び比較例1,2のそれぞれにおけるアンテナ部材の各指向性アンテナの3dBビーム幅を計算した示すコンピュータシミュレーションの結果の一例を示す説明図。
図11】実施例1に係るアンテナ部材を示す斜視図。
図12】比較例に係るアンテナ部材を示す斜視図。
図13】実施例2に係るアンテナ部材を示す斜視図。
図14】他の実施形態に係るアンテナ部材の一例を示す斜視図。
図15図14のアンテナ部材を有するアンテナ装置の概略構成の一例を示す斜視図。
図16】更に他の実施形態に係るアンテナ部材の一例を示す斜視図。
図17図16のアンテナ部材を有するアンテナ装置の概略構成の一例を示す斜視図。
図18】(a)及び(b)はそれぞれ、更に他の実施形態に係るアンテナ部材の一例を示す斜視図及び側面図。
図19】実施形態に係るアンテナ装置を備える測定装置の主要部の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るアンテナ装置10の概略構成の一例を示す斜視図である。アンテナ装置10は、アンテナ部材100と、アンテナ部材100を回転させる回転機構部200とを備える。アンテナ部材100には、所定方向に電波に対する受信感度(放射強度)が最大になる主ビームを有する指向性アンテナを備える。アンテナ部材100は、指向性アンテナが表面に配置された長尺の平板状部材101を有する。
【0020】
回転機構部200は、鉛直方向の回転中心軸Vを中心に回転可能なベース部材204と、アンテナ部材100の短手方向に延在する軸部材201と、ベース部材204上に設けられ軸部材201の端部201a,201bを回転可能に支持する複数の支持部材202,203とを有する。更に、回転機構部200は、後述の電装部から制御されるモータなど回転駆動源と、回転駆動源の回転駆動力を軸部材201及びベース部材204に伝達するギヤやベルトなどからなる回転駆動伝達部とを備える。回転駆動源は、軸部材201の回転駆動及びベース部材204の回転駆動の両方に兼用するものであってもよいし、また、軸部材201の回転駆動用の回転駆動源とベース部材204の回転駆動用の回転駆動源を別々に設けてもよい。
【0021】
軸部材201は、例えば、アンテナ部材100の指向性アンテナが配置された表面とは反対側の背面に固定されている。軸部材201は、アンテナ部材100の長手方向に延在するように設けてもよい。
【0022】
また、回転機構部200は、後述のように第1の回転駆動部と第2の回転駆動部とを有する。第1の回転駆動部は、鉛直方向に沿った回転中心軸Vを中心とした回転方向Rhにベース部材204を回転させる回転駆動部である。この回転方向Rhの回転により、アンテナ部材100の水平方向における主ビームの指向性方向(水平面における方位を示す方向)を変化させることができる。第2の回転駆動部は、水平方向に沿った回転中心軸Hを中心とした回転方向Rvに、アンテナ部材100に固定された軸部材201を回転させる回転駆動部である。この回転方向Rvの回転により、アンテナ部材100の垂直方向における主ビームの指向性方向(ある方位に平行な垂直面における上下方向)を変化させることができる。
【0023】
アンテナ装置10は、自動車などの移動体である電波測定車(「電測車」ともいう。)の屋根に取り付けられ、電波測定車と一緒に対象エリアの複数の測定点に順次移動し、各測定点に停車した状態でアンテナ部材100を回転させて複数方向から到来する電波を受信する。このように複数の測定点に順次移動して電波を受信して測定を行うため、各測定点での電波測定の労力及び時間を低減してより効率的に電波測定を行うことが要請される。
【0024】
特に、各測定点での測定対象が複数の周波数の電波の場合は、周波数毎に指向性アンテナを用意する必要があり、各測定点で指向性アンテナを交換したり周波数を切り替えて測定を繰り返し行ったりするので、電波測定の労力及び時間がかかってしまい、効率的な電波測定が難しい。例えば、3つの周波数(f1,f2,f3)の電波について測定するため、それぞれの周波数に対応する3つの指向性アンテナを交換して測定する場合、測定時間は単一周波数の場合の3倍以上になる。
【0025】
そこで、本実施形態では、各測定点でアンテナ部材100を回転させて測定するときに複数の周波数の電波を同時測定できるように、複数の周波数に対応する複数の指向性アンテナが配置されたアンテナ部材100を用い、複数の指向性アンテナそれぞれの主ビームの垂直方向及び水平方向それぞれにおける向きを一体的に変化させるようにアンテナ部材100を回転させている。
【0026】
図2は、実施形態に係るアンテナ装置10を構成するアンテナ部材100の一例を示す斜視図である。本実施形態のアンテナ部材100は、移動通信網の基地局等から送信された互いに異なる3つの周波数f1,f2,f3の電波を同時に受信し、複数の周波数の電波の伝搬特性の測定に用いることできる。
【0027】
図2において、アンテナ部材100の平板状部材101の共通のアンテナ配置面101sに沿った一方向(図中の平板状部材101の短手方向である左右方向)に、互いに異なる3つの周波数f1,f3,f2に対応する3つの指向性アンテナ110、130、120が所定の間隔で並ぶように配置されている。ここで、複数の指向性アンテナ110、130、120が受信する複数の電波の周波数f1,f2,f3はf1<f2<f3の大小関係を有する。例えば、指向性アンテナ110が受信する電波の周波数f1は3GHz帯の周波数であり、指向性アンテナ120が受信する電波の周波数f2は5GHz帯の周波数であり、指向性アンテナ130が受信する電波の周波数f3は8GHz帯の周波数である。
【0028】
指向性アンテナ110、120、130はそれぞれ、平板状部材101の表面の長手方向に、複数のパッチ状のアンテナ素子であるパッチアンテナ(平面アンテナ素子)111、121、131が1列に配列したパッチアレイアンテナ(リニアアレイアンテナ)である。なお、パッチアンテナ(平面アンテナ素子)は二次元的又は三次元的に配列してもよい。
【0029】
図3は、実施形態に係るアンテナ部材100の指向性アンテナ110、120、130を構成するアンテナ素子111、121、131の一例を示す斜視図である。図3の例において、アンテナ素子111、121、131はそれぞれ、所定の厚さ及び外形寸法を有する正方形又はほぼ正方形の平板状の誘電体部材112、122、132と、所定の厚さ及び外形寸法を有する正方形又はほぼ正方形の導電性材料からなるパッチ電極(アンテナ放射面)113、123、133とを有する。各誘電体部材112、122、132及び各パッチ電極113、123、133のそれぞれの外形寸法(各辺の長さLs,Lp及び幅Ws,Wp)は、受信する電波の周波数に応じて設定され、周波数が高いほど短く設定される。また、受信機等の無線装置が接続されるパッチ電極113、123、133における接続点により、受信対象の電波の偏波(直線偏波、円偏波、偏波なし)を設定することができる。
【0030】
図3に示すように、各指向性アンテナ110、120、130のアンテナ素子111、121、131の面に垂直な方向(+z方向)が天頂方向であり、その天頂方向から下方向への角度が天頂角θ(0[度]~180[度])である。また、図中のx-y平面におけるx軸に対する左回転方向における角度が方位角φ(0[度]~360[度])である。
【0031】
図4は、実施形態に係る指向性アンテナ110、120、130の垂直面における受信感度(放射強度、利得)の角度分布を示す指向性特性の一例を示す説明図である。また、図5は、指向性アンテナのビーム幅の定義の説明図である。図4に示すように、本実施形態のアンテナ部材100の各指向性アンテナ(アレイパッチアンテナ)110、120、130はそれぞれ、各指向性アンテナが形成されている平板状部材101の表面に垂直な方向に受信感度(放射強度)が最大になる主ビームBmが位置する指向性特性を有する。各指向性アンテナ110、120、130の主ビームBmのビーム幅BWは、例えば図5に示すようにアンテナで受信する受信感度(又は、アンテナから放射される電波の放射強度、又は、利得)が最大となる方向から3dB低くなる2つの点の間の角度(3dBビーム幅)で定義される。
【0032】
本実施形態のアンテナ装置10を用いた電波の伝搬特性の測定において、その測定及び解析をする上で指向性アンテナ110、120、130の並び方向におけるアンテナ水平面内の主ビームBmのビーム幅BWとして80[度]以上乃至90[度]以上が要求される。このような要求の下で、本実施形態の複数の周波数に対応した複数の指向性アンテナ110、120、130を並べた構成のアンテナ部材100について、以下に示すように本発明者らが計算機シミュレーションを行ったところ、指向性アンテナ110、120、130の並び順によっては、互いにアンテナ水平面内の主ビームBmのビーム幅BWが劣化する場合があることがわかった。
【0033】
図6図7及び図8はそれぞれ、互いに異なる周波数f1,f2,f3のアンテナ素子が隣り合っている場合のアンテナ素子間の距離と主ビームBmのビーム幅BWとの関係を示すコンピュータシミュレーションの結果の一例を示す説明図である。コンピュータシミュレーションは、電磁界シミュレータ(株式会社エーイーティー製の「CST MWSTUDIO」)を用い、表1のパラメータの値を設定して行った。
【0034】
【表1】
【0035】
図6(a)は、周波数f1のアンテナ素子111と周波数f2のアンテナ素子121を互いに隣り合わせて配置したときのアンテナ素子間距離d1の説明図である。図6(b)は、図6(a)の構成におけるアンテナ素子間距離d1と周波数f1のアンテナ素子111の3dBビーム幅との関係を示すグラフである。図6(c)は、図6(a)の構成におけるアンテナ素子間距離d1と周波数f2のアンテナ素子121の3dBビーム幅との関係を示すグラフである。図6(b)及び図6(c)の横軸のアンテナ素子間距離d1の値は、周波数f2の波長λを基準にして表示した値であり、図中の破線は、各アンテナ素子111,121を単体で配置した場合の3dBビーム幅である。
【0036】
図6(b)~図6(c)の結果により、周波数f1のアンテナ素子111の3dBビーム幅は周波数f2のアンテナ素子121からの影響を受けにくいが、周波数f2のアンテナ素子121の3dBビーム幅は周波数f1のアンテナ素子111からの影響を受けやすく最大でビーム幅BWが38.4[度]劣化することがわかる。また、図6(c)の結果により、アンテナ素子間距離d1を1.75[λ@f2]以上にすることで、周波数f2のアンテナ素子121の3dBビーム幅の劣化を抑制して90[度]以上に維持することができることがわかる。
【0037】
図7(a)は、周波数f1のアンテナ素子111と周波数f3のアンテナ素子131を互いに隣り合わせて配置したときのアンテナ素子間距離d2の説明図である。図7(b)は、図7(a)の構成におけるアンテナ素子間距離d2と周波数f1のアンテナ素子111の3dBビーム幅との関係を示すグラフである。図7(c)は、図7(a)の構成におけるアンテナ素子間距離d2と周波数f3のアンテナ素子131の3dBビーム幅との関係を示すグラフである。図7(b)及び図7(c)の横軸のアンテナ素子間距離d2の値は、周波数f3の波長λを基準にして表示した値であり、図中の破線は、各アンテナ素子111,131を単体で配置した場合の3dBビーム幅である。
【0038】
図7(b)~図7(c)の結果により、周波数f1のアンテナ素子111の3dBビーム幅は周波数f3のアンテナ素子131からの影響を受けにくく、また、周波数f3のアンテナ素子131の3dBビーム幅は、周波数f2のアンテナ素子121よりも、周波数f1のアンテナ素子111からの影響を受けにくいことがわかる。
【0039】
図8(a)は、周波数f3のアンテナ素子131と周波数f2のアンテナ素子121を互いに隣り合わせて配置したときのアンテナ素子間距離d3の説明図である。図8(b)は、図8(a)の構成におけるアンテナ素子間距離d3と周波数f2のアンテナ素子121の3dBビーム幅との関係を示すグラフである。図8(c)は、図8(a)の構成におけるアンテナ素子間距離d3と周波数f3のアンテナ素子131の3dBビーム幅との関係を示すグラフである。図8(b)及び図8(c)の横軸のアンテナ素子間距離d3の値は、周波数f3の波長λを基準にして表示した値であり、図中の破線は、各アンテナ素子121,131を単体で配置した場合の3dBビーム幅である。
【0040】
図8(b)の結果により、周波数f2のアンテナ素子121の3dBビーム幅は周波数f3のアンテナ素子131からの影響を受けやすいことがわかる。また、図8(c)の結果により、アンテナ素子間距離d3を1.25[λ@f3]以上にすることで、周波数f3のアンテナ素子131の3dBビーム幅の劣化を抑制して単体で配置した場合と同様なビーム幅に維持することができることがわかる。
【0041】
以上のコンピュータシミュレーションに基づき、本実施形態では、以下に示すように複数の周波数の指向性アンテナ110、120、130を適切な順番で配置することにより、指向性アンテナ間の干渉が高くなることによるビーム幅BWの劣化を軽減している。
【0042】
図9(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るアンテナ装置10を構成するアンテナ部材100における複数の指向性アンテナ110、120、130のアンテナ素子111、121、131の配置順の一例を示す斜視図及び側面図である。図9の例では、複数の指向性アンテナ110、120、130(アンテナ素子111、121、131)を次のように配置している。受信電波の周波数が最小(f1:3.35GHz)である第1の指向性アンテナ110(アンテナ素子111)と、前記最小の周波数の2倍の周波数(6.70GHz)と受信電波の周波数(f2:5.20GHz)との差(1.50GHz)が相対的に小さい第2の指向性アンテナ120(アンテナ素子121)との間に、前記最小の周波数の2倍の周波数(6.70GHz)と受信電波の周波数(f3:8.45GHz)との差(1.75GHz)が相対的に大きい第3の指向性アンテナ130(アンテナ素子131)を配置している。
【0043】
図9の指向性アンテナ110、120、130(アンテナ素子111、121、131)の配置順により、周波数f1の指向性アンテナ110(アンテナ素子111)からの影響を受けやすい周波数f2の指向性アンテナ120(アンテナ素子121)が周波数f1の指向性アンテナ110(アンテナ素子111)から離れているため、アンテナ間の干渉による各指向性アンテナ110、120、130のビーム幅の劣化を軽減することができる。
【0044】
図10は、図9の配置順で配置された周波数f1,f2,f3の指向性アンテナ110、120、130(アンテナ素子111、121、131)を有するアンテナ部材100の実施例(図11参照)について主ビームBmの3dBビーム幅BWを計算したコンピュータシミュレーションの結果の一例を示す説明図である。コンピュータシミュレーションは、電磁界シミュレータ(株式会社エーイーティー製の「CST MWSTUDIO」)を用い、表2のパラメータの値を設定して行った。表2中のアンテナ間距離dx1、dx2及びdx3の値は、周波数f3の波長λを基準にして表示した値である。
【0045】
【表2】
【0046】
また、図10には、本実施形態の実施例1,2のコンピュータシミュレーションの結果とともに、比較例のコンピュータシミュレーションの結果を示す。実施例1は、図2図9及び図11に示すように周波数f1,f3,f2の順で指向性アンテナ110、130、110を配置したアンテナ部材100の例である。実施例2は、図12に示すように周波数f1,f2,f3の順で指向性アンテナ110、120、130を配置したアンテナ部材100の例である。比較例は、図13に示すように周波数f1,f2,f3の指向性アンテナ810、820、830を単体で有する3つの個別のアンテナ部材100(1)~100(3)を構成した例である。
【0047】
図10の結果において、周波数f1,f2,f3の指向性アンテナ110、120、130を単体で有する3つの個別のアンテナ部材100(1)~100(3)の図13の比較例では、各周波数f1,f2,f3とも80[度]以上の3dBビーム幅が得られている。また、周波数f1,f2,f3の順で指向性アンテナ110、120、130を配置した図12の実施例2では、周波数f2,f3の3dBビーム幅が80[度]未満に劣化している。これに対し、周波数f1,f3,f2の順で指向性アンテナ110、130、120(アンテナ素子111、131、111)を配置した図2図9及び図11の実施例1では、3つの周波数f1,f2,f3の3dBビーム幅がすべて80[度]以上に改善している。
【0048】
次に、アンテナ部材及びアンテナ装置の他の実施形態について説明する。
図14は、他の実施形態に係るアンテナ部材140の一例を示す斜視図である。図15は、図14のアンテナ部材140を有するアンテナ装置10の概略構成の一例を示す斜視図である。なお、図14及び図15において、前述の図1及び図2と共通する部分について同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0049】
図14において、アンテナ部材140は、長尺の角柱状部材(又は、角筒状部材)141を有する。角柱状部材141の互いに逆向きの1対の外側面141sa、141sbのうち、一方の外側面141saに、2つの周波数f1,f3の指向性アンテナ110、130が所定の間隔で並ぶように配置され、もう一方の外側面141sbに残りの周波数f2の指向性アンテナ120が配置されている。
【0050】
図15において、回転機構部200は、ベース部材204と、アンテナ部材140の短手方向に延在する軸部材201と、複数の支持部材202,203とを有する。軸部材201は、例えば、アンテナ部材140の指向性アンテナが配置されていない2つの外側面に固定されている。軸部材201は、アンテナ部材140の長手方向に延在するように設けてもよい。また、軸部材201は、アンテナ部材140を貫通した状態で固定されてもよい。
【0051】
図16は、更に他の実施形態に係るアンテナ部材150(1),150(2)の一例を示す斜視図である。図17は、図16のアンテナ部材150(1),150(2)を有するアンテナ装置10の概略構成の一例を示す斜視図である。なお、図16及び図17において、前述の図1及び図2と共通する部分について同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0052】
図16において、本実施形態のアンテナ装置は、1組の2つのアンテナ部材150(1),150(2)を有する。第1のアンテナ部材150(1)の平板状部材151(1)の共通のアンテナ配置面151(1)sに沿った一方向(図中の平板状部材151(1)の短手方向である左右方向)に、互いに異なる2つの周波数f1,f3に対応する2つの指向性アンテナ110、130が所定の間隔で並ぶように配置されている。また、第2のアンテナ部材150(2)の平板状部材151(2)のアンテナ配置面151(2)sに、残りの周波数f2の指向性アンテナ120が配置されている。
【0053】
図17において、ベース部材204と、アンテナ部材150(1),150(2)の短手方向に延在する軸部材201と、ベース部材204上に設けられ軸部材201の端部201a,201bを回転可能に支持する複数の支持部材202,203とを有する。軸部材201は、例えば、アンテナ部材150(1),150(2)の裏面が互いに向かい合った状態で、アンテナ部材150(1),150(2)の裏面に固定されている。軸部材201は、アンテナ部材150(1),150(2)の長手方向に延在するように設けてもよい。
【0054】
図18(a)及び(b)はそれぞれ、更に他の実施形態に係るアンテナ部材160の一例を示す斜視図及び側面図である。なお、本例のアンテナ部材160を回転させる回転機構部は、例えば、前述の図1に例示した回転機構部200と同様に構成することができる。
【0055】
図18(a)及び(b)において、アンテナ部材160は、周波数f1の指向性アンテナが表面に配置された第1の平板状部材161(1)と、周波数f2の指向性アンテナが表面に配置された第2の平板状部材161(2)と、周波数f3の指向性アンテナが表面に配置された第3の平板状部材161(3)とを有する。3つの平板状部材161(1)~161(3)は、断面が多角形の仮想多角筒である三角筒の3つの外周面のそれぞれを形成するように裏面を内側にして配置されている。各平板状部材161(1)~161(3)の裏面はそれぞれ、支持アーム部材162(1)~162(3)を介して、前述の回転機構部200で回転方向Rvに回転駆動される軸部に連結(固定)されている。
【0056】
図19は、実施形態に係るアンテナ装置10を備える測定装置40の主要部の構成の一例を示すブロック図である。測定装置40は、上記構成のアンテナ装置10と、電装部30とを備える。測定システムは、測定装置40と、測定装置40を搭載した状態で移動可能な自動車などの移動体である電波測定車とにより構成される。
【0057】
図19において、測定装置40の電装部30は、駆動制御部301と受信部302と電力測定部(データ処理部)303と記憶部304と外部通信部305と制御部306とを備える。なお、電装部30を構成する駆動制御部301、受信部302、電力測定部(データ処理部)303、記憶部304、外部通信部305及び制御部306の一部分を測定器として構成し、残りの部分をPC(コンピュータ装置)で構成してもよい。例えば、駆動制御部301、受信部302及び電力測定部(データ処理部)303を測定器として構成し、記憶部304、外部通信部305及び制御部306をPC(コンピュータ装置)で構成してもよい。
【0058】
駆動制御部301は、アンテナ装置10の回転機構部200に設けられたモータ等の回転駆動源210に制御信号を送って回転駆動源210を制御する。駆動制御部301は、アンテナ部材100などの回転角度(例えば、軸部材201の回転角度及びベース部材204の回転角度)に関する情報を取得する回転角度情報取得部としても機能する。回転駆動源210に送る制御信号から取得してもよいし、回転駆動対象の軸部材201及びベース部材204に設けられたエンコーダの出力から取得してもよい。
【0059】
受信部302は、アンテナ部材の複数の周波数f1,f2,f3に対応する複数の指向性アンテナに接続され、例えば複数の周波数f1,f2,f3の電波を同時に測定できるように周波数毎に設けられた無線受信機で構成される。
【0060】
電力測定部303は、受信部302で受信した複数の周波数f1,f2,f3の受信信号の電力を測定する。電力測定部303は、複数の周波数f1,f2,f3それぞれについて、受信信号の電力の測定結果と、アンテナ部材の回転角度に関する情報とに基づいて、基地局等から送信された電波の伝搬特性を算出するデータ処理部としても機能する。また、電力測定部(データ処理部)303は、アンテナ部材の回転角度に関する情報に基づいて、前述のアンテナ部材の主ビームBmが向いている天頂角θ及び方位角φを算出することもできる。受信電波の伝搬特性の算出には、送信元の基地局等から取得した送信信号の情報を用いてもよい。
【0061】
記憶部304は、複数の周波数f1,f2,f3の受信信号の電力の測定結果、アンテナ部材の回転角度に関する情報、受信電波の伝搬特性の算出結果、受信信号の電力の測定や伝搬特性の算出に用いる各種情報及びデータ等を記憶する。
【0062】
外部通信部305は、有線又は無線の通信により外部装置や電波測定車内の他の装置との間で通信する。外部通信部305は、例えば、複数の周波数f1,f2,f3の受信信号の電力の測定結果、受信電波の伝搬特性の算出結果などを、外部装置や電波測定車内の他の装置に送信する。
【0063】
制御部306は、所定の制御プログラムを実行することにより、電装部30内の各部を制御する。
【0064】
以上、本実施形態によれば、複数の周波数f1,f2,f3に対応した複数の指向性アンテナ110,120,130が配置されたアンテナ装置10を回転させて測定することにより、複数の周波数f1,f2,f3の電波の同時測定できるようになる。従って、複数の周波数f1,f2,f3の電波を測定する場合の測定に要する時間を短縮することができる。更に、複数の周波数f1,f2,f3の複数のアンテナ部材やアンテナ装置を用意する必要がなく、複数のアンテナ部材やアンテナ装置の持ち運び、取り替えなどの煩雑な作業が不要になるので、電波測定の実施者に係る労力を軽減することができる。
【0065】
更に、本実施形態によれば、周波数が近い指向性アンテナ110、120を適切に配置することにより、各指向性アンテナ110、120、130の主ビームBmのビーム幅(3dBビーム幅)の劣化を軽減することができる。
【0066】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにアンテナ装置、測定装置及び測定システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0067】
ハードウェア実装については、実体(例えば、回転駆動装置、測定装置、各種無線通信装置、Node B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0068】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0069】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0070】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0071】
10 :アンテナ装置
30 :電装部
40 :測定装置
100 :アンテナ部材
101 :平板状部材
101s :アンテナ配置面
110 :指向性アンテナ
111 :アンテナ素子
112 :誘電体部材
113 :パッチ電極
120 :指向性アンテナ
121 :アンテナ素子
122 :誘電体部材
123 :パッチ電極
130 :指向性アンテナ
131 :アンテナ素子
132 :誘電体部材
133 :パッチ電極
140 :アンテナ部材
141 :角柱状部材
141sa :外側面
141sb :外側面
150 :アンテナ部材
151 :アンテナ配置面
151 :平板状部材
160 :アンテナ部材
161 :平板状部材
162 :支持アーム部材
200 :回転機構部
201 :軸部材
201a :端部
201b :端部
202 :支持部材
203 :支持部材
204 :ベース部材
210 :回転駆動源
301 :駆動制御部
302 :受信部
303 :電力測定部
304 :記憶部
305 :外部通信部
306 :制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19