(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】通信システム及び遠隔制御方法
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20220905BHJP
H04L 67/00 20220101ALI20220905BHJP
【FI】
H04Q9/00 301Z
H04L67/00
(21)【出願番号】P 2020184242
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】指田 孝則
(72)【発明者】
【氏名】飯田 豊
【審査官】木村 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-088738(JP,A)
【文献】特開2019-219873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
H04L 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔制御される対象装置と前記対象装置が接続される通信装置とを有する端末装置と、移動通信網を介して前記端末装置と通信するホスト装置と、前記移動通信網において前記端末装置の前記通信装置と前記ホスト装置との通信と中継するサーバと、を備える通信システムであって、
前記端末装置の前記通信装置は、
汎用インタフェース対応の対象装置が接続される汎用インタフェース部を含む複数種類のインタフェース部と、
IP(Internet Protocol)を用いない非IP通信により移動通信網と通信する網側通信部と、
前記網側通信部の非IP通信により、前記インタフェース部に接続された前記汎用インタフェース対応の対象装置に対する前記汎用インタフェースの所定フォーマットの制御コマンドと当該通信装置のアドレス情報とを含むダウンロードデータを前記ホスト装置から受信したとき、前記複数種類のインタフェース部のうち前記汎用インタフェース部を介して前記対象装置に前記制御コマンドを転送し、前記汎用インタフェース部を介して前記対象装置から前記制御コマンドに対する前記汎用インタフェースの所定フォーマットの応答データと当該通信装置のアドレス情報とを含む前記ホスト装置へのアップロードデータを受信したとき、前記網側通信部の非IP通信により前記移動通信網に前記応答データを転送するように制御する制御部と、備え、
前記サーバは、
前記ホスト装置から、前記汎用インタフェース対応の対象装置に対する前記汎用インタフェースの所定フォーマットの制御コマンドと前記通信装置のアドレス情報とを含むダウンロードデータを受信したとき、非IP通信により、前記アドレス情報で指定された前記通信装置に前記ダウンロードデータを転送し、
前記汎用インタフェース対応の対象装置から前記汎用インタフェースの所定フォーマットの応答データと前記通信装置のアドレス情報とを含むアップロードデータを非IP通信により受信したとき、前記汎用インタフェースの所定フォーマットの前記制御コマンドと前記通信装置のアドレス情報とを含む前記ダウンロードデータを送信してきた前記ホスト装置に前記アップロードデータを転送する、ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1の通信システムにおいて、
前記サーバは、
前記端末装置の前記通信装置との通信が可能な所定のデータ通信タイミングを管理し、
前記所定のデータ通信タイミングではない通信不可タイミングに前記ホスト装置から前記端末装置への前記ダウンロードデータを受信したとき、前記ダウンロードデータを一時的に保持し、前記所定のデータ通信タイミングになったときに、前記端末装置の前記通信装置に前記ダウンロードデータを送信する、ことを特徴とする通信システム。
【請求項3】
請求項1又は2の通信システムにおいて、
前記汎用インタフェースは、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)インタフェースであることを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの通信システムにおいて、
前記非IP通信は、低消費電力広域通信であることを特徴とする通信システム。
【請求項5】
請求項4の通信システムにおいて、
前記低消費電力広域通信は、NIDD(Non-IP Data Deliver)に準拠する通信であることを特徴とする通信システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの通信システムにおいて、
前記対象装置は、前記制御コマンドに基づいて検知対象の物理量を検知して検知結果のデータを当該通信装置に向けて出力するセンサであることを特徴とする通信システム。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかの通信システムにおいて、
前記対象装置は、前記制御コマンドに基づいて表示する表示装置であることを特徴とする通信システム。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかの通信システムにおいて、
前記対象装置は、前記制御コマンドに基づいてデータ処理を行うマイクロコンピュータ装置であることを特徴とする通信システム。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれかの通信システムにおいて、
前記対象装置は、前記制御コマンドに基づいて音声認識結果のデータを当該通信装置に向けて出力する音声認識装置であることを特徴とする通信システム。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれかの通信システムにおいて、
前記対象装置は、前記制御コマンドに基づいてコード画像の読取結果のデータを当該通信装置に向けて出力するコード画像読取装置であることを特徴とする通信システム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかの通信システムにおいて、
前記ホスト装置は、前記移動通信網を介して前記端末装置と通信するコンソール装置である、ことを特徴とする通信システム。
【請求項12】
汎用インタフェース対応の対象装置が接続される汎用インタフェース部を含む複数種類のインタフェース部とIP(Internet Protocol)を用いない非IP通信により移動通信網と通信する網側通信部とを有する通信装置を用いた遠隔制御方法であって、
前記移動通信網におい
て端末装置
が有する前記通信装置
とホスト装置との通信と中継するサーバが、前記インタフェース部に接続された前記汎用インタフェース対応の対象装置に対する前記汎用インタフェースの所定フォーマットの制御コマンドと前記通信装置のアドレス情報とを含むダウンロードデータを
前記ホスト装置から受信したとき、非IP通信により、前記アドレス情報で指定された前記通信装置に前記ダウンロードデータを転送することと、
前記通信装置が、前記網側通信部の非IP通信により、前記インタフェース部に接続された前記汎用インタフェース対応の対象装置に対する前記汎用インタフェースの所定フォーマットの制御コマンドと当該通信装置のアドレス情報とを含むダウンロードデータを前記ホスト装置から受信したとき、前記複数種類のインタフェース部のうち前記汎用インタフェース部を介して前記対象装置に前記制御コマンドを転送することと、
前記通信装置が、前記汎用インタフェース部を介して前記対象装置から前記制御コマンドに対する前記汎用インタフェースの所定フォーマットの応答データと当該通信装置のアドレス情報とを含む前記ホスト装置へのアップロードデータを受信したとき、前記網側通信部の非IP通信により前記移動通信網に前記応答データを転送することと、
前記サーバが、前記汎用インタフェース対応の対象装置から前記汎用インタフェースの所定フォーマットの応答データと前記通信装置のアドレス情報とを含むアップロードデータを非IP通信により受信したとき、前記汎用インタフェースの所定フォーマットの前記制御コマンドと前記通信装置のアドレス情報とを含む前記ダウンロードデータを送信してきた前記ホスト装置に前記アップロードデータを転送することと、
を含むことを特徴とする遠隔制御方法。
【請求項13】
請求項12の遠隔制御方法において、
前記サーバが、前記端末装置の前記通信装置との通信が可能な所定のデータ通信タイミングを管理することと、
前記サーバが、前記所定のデータ通信タイミングではない通信不可タイミングに前記ホスト装置から前記端末装置への前記ダウンロードデータを受信したとき、前記ダウンロードデータを一時的に保持し、前記所定のデータ通信タイミングになったときに、前記端末装置の前記通信装置に前記ダウンロードデータを送信することと、
を含むことを特徴とする遠隔制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信網を介して制御される対象装置を接続可能な通信装置、端末装置、通信システム、遠隔制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、移動通信網を介して制御されるセンサなどの対象装置を接続可能な通信装置が知られている。例えば、特許文献1には、家電機器などの機器が接続されるインタフェース部と、インタフェース部を介して機器と通信するコントローラ部と、コントローラ部を介して機器を制御するプロトコル制御部と、プロトコル制御部の設定が機器に適合しているかを判断する設定検証部とを備え、対象装置ごとに、設定情報や機器制御用プロトコルを含む個別プログラムを実装した通信アダプタが開示されている。この通信アダプタによれば、コントローラ部またはプロトコル制御部の設定が前記機器に適合していないと判断された場合に、コントローラ部または前記プロトコル制御部の設定が機器に適合していないことを示す情報を送信し、接続先の機器に合わせて通信アダプタの設定に容易に行うことができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の通信アダプタなどの従来の通信装置では、その通信装置に接続される対象装置ごとに、設定情報や機器制御用プロトコルを含む個別プログラムを実装する必要がある。また、従来の通信装置では、対象装置を遠隔制御する外部ユーザ装置等から送信される対象装置に対する制御コマンドが通信装置で終端する制御方式が用いられ、外部ユーザ装置等から対象装置を透過的に且つ直接的に遠隔制御することができない。また、インターネットなどのIPネットワークを介して対象装置が外部から不正にアクセスされるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る通信装置は、遠隔制御される対象装置が接続される通信装置である。この通信装置は、汎用インタフェース対応の対象装置が接続される前記汎用インタフェースのインタフェース部と、IP(Internet Protocol)を用いない非IP通信により移動通信網と通信する網側通信部と、前記網側通信部の非IP通信により、前記インタフェース部に接続された前記汎用インタフェース対応の対象装置に対する制御コマンドを受信したとき、前記インタフェース部を介して前記対象装置に前記制御コマンドを転送し、前記インタフェース部を介して前記対象装置から前記制御コマンドに対する応答データを受信したとき、前記網側通信部の非IP通信により前記移動通信網に前記応答データを転送するように制御する制御部と、を備える。
【0006】
本発明の他の態様に係る端末装置は、移動通信網を介して通信可能な端末装置である。この端末装置は、前記通信装置と、前記通信装置に接続された対象装置と、を備える。
【0007】
本発明の更に他の態様に係る通信システムは、前記端末装置と、前記移動通信網を介して前記端末装置と通信するホスト装置と、を備える。前記ホスト装置は、コンソール装置、遠隔制御装置又はサーバ装置であってもよい。
【0008】
本発明の更に他の態様に係る遠隔制御方法は、汎用インタフェース対応の対象装置が接続される前記汎用インタフェースのインタフェース部とIP(Internet Protocol)を用いない非IP通信により移動通信網と通信する網側通信部とを有する通信装置を用いた遠隔制御方法である。この遠隔制御方法は、前記網側通信部の非IP通信により、前記インタフェース部に接続された前記汎用インタフェース対応の対象装置に対する制御コマンドを受信したとき、前記インタフェース部を介して前記対象装置に前記制御コマンドを転送することと、前記インタフェース部を介して前記対象装置から前記制御コマンドに対する応答データを受信したとき、前記網側通信部の非IP通信により前記移動通信網に前記応答データを転送することと、を含む。
【0009】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、汎用インタフェース対応の対象装置が接続される前記汎用インタフェースのインタフェース部とIP(Internet Protocol)を用いない非IP通信により移動通信網と通信する網側通信部とを有する通信装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記網側通信部の非IP通信により、前記インタフェース部に接続された前記汎用インタフェース対応の対象装置に対する制御コマンドを受信したとき、前記インタフェース部を介して前記対象装置に前記制御コマンドを転送するためのプログラムコードと、前記インタフェース部を介して前記対象装置から前記制御コマンドに対する応答データを受信したとき、前記網側通信部の非IP通信により前記移動通信網に前記応答データを転送するためのプログラムコードと、を含む。
【0010】
前記通信装置、前記端末装置、前記通信システム、前記遠隔制御方法及び前記プログラムにおいて、前記対象装置に対する制御コマンドは、前記移動通信網と通信可能なホスト装置から送信され、前記対象装置からの応答データは、前記ホスト装置に送信されてもよい。前記ホスト装置は、コンソール装置、遠隔制御装置又はサーバ装置であってもよい。
【0011】
前記通信装置、前記端末装置、前記通信システム、前記遠隔制御方法及び前記プログラムにおいて、前記汎用インタフェースは、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)インタフェースであってもよい。
【0012】
前記通信装置、前記端末装置、前記通信システム、前記遠隔制御方法及び前記プログラムにおいて、前記対象装置は、前記制御コマンドに基づいて検知対象の物理量を検知して検知結果のデータを当該通信装置に向けて出力するセンサであってもよい。
【0013】
前記通信装置、前記端末装置、前記通信システム、前記遠隔制御方法及び前記プログラムにおいて、前記対象装置は、前記制御コマンドに基づいて表示する表示装置であってもよい。
【0014】
前記通信装置、前記端末装置、前記通信システム、前記遠隔制御方法及び前記プログラムにおいて、前記対象装置は、前記制御コマンドに基づいてデータ処理を行うマイクロコンピュータ装置であってもよい。
【0015】
前記通信装置、前記端末装置、前記通信システム、前記遠隔制御方法及び前記プログラムにおいて、前記対象装置は、前記制御コマンドに基づいて音声認識結果のデータを当該通信装置に向けて出力する音声認識装置であってもよい。
【0016】
前記通信装置、前記端末装置、前記通信システム、前記遠隔制御方法及び前記プログラムにおいて、前記対象装置は、前記制御コマンドに基づいてコード画像の読取結果のデータを当該通信装置に向けて出力するコード画像読取装置であってもよい。
【0017】
前記通信装置、前記端末装置、前記通信システム、前記遠隔制御方法及び前記プログラムにおいて、前記非IP通信は、低消費電力広域通信であってもよい。前記低消費電力広域通信は、NIDD(Non-IP Data Deliver)に準拠する通信であってもよい。
【0018】
本発明によれば、IPネットワークを介した対象装置への不正アクセスを防止することができるとともに、対象装置ごとに異なる個別の制御プログラムを実装することなく、移動通信網を介して対象装置を透過的に且つ直接的に遠隔制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る通信装置(通信ボード)を有する端末装置を含む通信システムの構成の一例を示す説明図。
【
図2】実施形態に係る通信システムにおいて通信装置(通信ボード)に接続された対象装置(センサ)とホスト装置(コンソール)との間で送受信される制御コマンド及び応答データのデータフォーマットの一例を示す説明図。
【
図3】実施形態に係る通信システムにおいてホスト装置(コンソール)と端末装置のUARTインタフェース対応の対象装置(センサ)との間における制御コマンド及び応答データの送受信の様子の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係る通信装置は、汎用インタフェースとしてのUARTインタフェース対応のセンサなどの制御対象装置(以下「対象装置」という。)をつないで移動通信網(モバイルネットワーク)の非IP通信である低消費電力広域通信(NIDDベアラ)を介して遠隔制御を行うことができるようになる通信デバイスである。
【0021】
図1は、本実施形態に係る通信装置(通信ボード11)を有する端末装置10を含む通信システムの構成の一例を示す説明図である。本実施形態の通信システムは、主に、1又は2以上の端末装置10と、ホスト装置としての法人又は個人のコンソール装置としてのエンドユーザコンソール(以下「コンソール」という。)200とから構成される。コンソール200は、例えば一又は複数のコンピュータ装置で構成される。
【0022】
本実施形態の端末装置10は、通信装置(通信デバイス)としての通信ボード11を備えている。端末装置10は、例えば、医療、農業、電力、上下水道、自動車、交通機関などの各種産業で用いられるセンサを備えたIoTデバイスであるが、これに限定されるものではない。端末装置10は、センサを備えていないIoTデバイスであってもよく、あらゆる用途、機能を有するIoT機器に適用できる。また、端末装置10は、移動通信可能な端末装置であってもよい。
【0023】
通信ボード11には、移動局とも呼ばれる移動通信用の通信モジュール12が実装されており、遠隔制御の対象である対象装置としてのセンサ16が接続されている。センサ16は、受信した制御コマンドに基づいて検知対象の温度、雨量、距離、圧力、速度、加速度、指紋パターンなどの物理量を検知して検知結果のデータを通信ボード11に向けて出力する。エンドユーザは、コンソール200を操作することにより、移動通信網1及び通信ボード11を介して、センサ16を透過的に且つ直接的に遠隔制御し、センサ16で検知された温度、雨量、距離、圧力、速度、加速度、指紋パターンなどの物理量の検知結果のデータを取得することができる。
【0024】
なお、本実施形態では対象装置がセンサ16の場合について説明するが、対象装置は、センサ以外の装置であってもよい。例えば、通信ボード11に接続される対象装置は、表示装置、マイクロコンピュータ装置、音声認識装置、コード画像読取装置であってもよい。
【0025】
表示装置は、例えばLED掲示板であり、受信した制御コマンドに基づいて文字や他の画像などを表示する。エンドユーザは、コンソール200を操作することにより、移動通信網1及び通信ボード11を介して、表示装置を透過的に且つ直接的に遠隔制御し、表示画面に表示する文字や他の画像などの表示内容を変更したり、表示を開始したり、表示を停止したりすることができる。
【0026】
マイクロコンピュータ装置は、例えば機器組み込み用のモジュール化したマイコンであり、受信した制御コマンドに基づいて各種のデータ処理や制御等を行う。エンドユーザは、コンソール200を操作することにより、移動通信網1及び通信ボード11を介して、マイクロコンピュータ装置を透過的に且つ直接的に遠隔制御し、マイクロコンピュータ装置による各種のデータ処理や制御等や、マイクロコンピュータ装置に更に接続された下位装置による各種のデータ処理や制御等を行うことができる。
【0027】
音声認識装置は、例えば音声信号を認識して文字情報へ変換する音声認識モジュールであり、受信した制御コマンドに基づいて音声認識結果のデータを通信ボード11に向けて出力する。エンドユーザは、コンソール200を操作することにより、移動通信網1及び通信ボード11を介して、音声認識装置を透過的に且つ直接的に遠隔制御し、音声認識装置によって認識された音声認識結果のデータを取得することができる。
【0028】
コード画像読取装置は、例えば1次元又は2次元のコード画像を読み取るバーコードリーダや2次元コードリーダであり、受信した制御コマンドに基づいてコード画像の読取結果のデータを通信ボード11に向けて出力する。エンドユーザは、コンソール200を操作することにより、移動通信網1及び通信ボード11を介して、コード画像読取装置を透過的に且つ直接的に遠隔制御し、コード画像読取装置によって読み取られたコード画像の読取結果のデータを取得することができる。
【0029】
本実施形態の通信システムは、このセンサ16を備えるIoTデバイスである端末装置10からセンサ16の検知情報を取得するサーバや遠隔制御装置を含んでもよい。これらのサーバや遠隔制御装置は、例えば、端末装置10のセンサ16によって検知される検知情報を収集し、収集した検知情報を利用したサービスを提供するための処理を行うものである。サーバや遠隔制御装置は、移動通信事業者又は当該サービスを提供するサービス事業者によって管理運用されてもよい。
【0030】
端末装置10の通信ボード11からSCS(Service Capability Server)100を介してコンソール200へ送信されるアップロードデータ(「応答データ」又は「センシングデータ」ともいう。)は、基地局20、MME(Mobility Management Entity)40、SCEF(Service Capability Exposure Function)50を介して、SCS100に中継され、コンソール200へと送られる。
【0031】
また、コンソール200からSCS100を介して端末装置10の通信ボード11へ送信されるダウンロードデータ(「制御コマンド」ともいう。)は、SCS100で中継されて、SCEF50、MME40、基地局20を介して端末装置10の通信ボード11へと送られる。
【0032】
アップロードデータ及びダウンロードデータは、例えば
図2に示すように、制御コマンドや応答データ等のユーザデータが格納された可変長のユーザデータコンテナ(/19/0/0,/19/0/1)301に、ヘッダ302、通信モジュールアドレス303、パケット種別304、データ長305、チェックサム306等の情報が付加されたデータ構造300を有する。
【0033】
本実施形態の通信システムは、IPを用いない非IP通信により、例えばUARTインタフェースに対応した所定フォーマットの制御コマンドを含む通信データを、コンソール200から移動通信網1を介して端末装置10に搭載された通信ボード11の通信モジュール12へ送信する。通信モジュール12で受信した制御コマンドは、通信ボード11に接続されたセンサ16に転送され、センサ16の制御に用いられる。
【0034】
コンソール200からSCS100を介して端末装置10の通信ボード11へ送信される制御コマンドを含む通信データは、SCS100で中継されて、SCEF50、MME40、基地局20を介して端末装置10の通信ボード11へと送られる。この通信データは、そのユーザデータコンテナ内における指定のデータコンテナに格納され、所定の通信プロトコルを用いて通信される。本実施形態では、その通信プロトコルとして、LwM2M(Lightweight Machine to Machine)プロトコルを用いる例で説明するが、これに制限されるものではない。
【0035】
コンソール200と移動通信網1のSCS100との間のデータ通信は、例えば、インターネット等のIPネットワークに構築されたWebAPI(Application Programming Interface)等のAPI Managerの仮想ネットワークを介して行われる。
【0036】
本実施形態の通信システムの構成に含まれることができる移動通信網1は、主に、端末装置10と無線通信する1又は2以上の基地局20と、MME40と、SCEF50と、SCS100とを含む。SCS100は、SCEF50と通信を行うためのSCEF用I/F120や、コンソール200等のホスト装置と通信するためのIP用I/F140を備えている。
【0037】
基地局20、MME40、SCEF50、SCS100などの移動通信網1内の設備(ノード)は、例えば、移動通信網の移動通信事業者によって管理運営してもよい。SCS100は、移動通信網内の設備であってもよいし、移動通信網外の設備であってもよい。
図1では、図示の都合上、端末装置10を1台だけ示しているが、端末装置10は2台以上であってもよい。
【0038】
本実施形態の端末装置10に搭載された通信デバイスとしての通信ボード11は、通信モジュール12と、本体側の制御部13と、記憶部14と、複数種類のインタフェース方式に対応した複数のインタフェース部15A~15Dとを備えている。通信ボード11のインタフェース部15A~15Dには、センサ16等の対象装置が接続可能である。
【0039】
通信モジュール12は、移動局とも呼ばれる移動通信用の通信装置であり、移動通信網を介して通信する通信手段として機能し、例えばアンテナ、DUP、ベースバンドユニット、増幅器、記憶装置、制御装置などにより構成され、移動通信網の基地局20との間で無線通信するための処理を実行する。本実施形態の通信モジュール12は、モジュール化されて通信ボード11上に実装されるものであり、通信モジュール12内の記憶装置に記憶されているファームウェアを実行することで、各種処理動作を実行する。
【0040】
通信ボード11は、通信モジュール12により、所定の無線通信方式で基地局20と無線通信を行い、移動通信網側に接続することができ、移動通信網を介して低消費電力広域通信技術であるLPWA(Low Power、Wide Area)通信技術に属する例えばNIDD(Non-IP Data Deliver)通信方式による通信を行うことができる。
【0041】
通信モジュール12は、Cat.MやCat.NBなどのLPWA通信技術に属する他の通信方式を採用してもよい。なお、Cat.Mは、3GPPのLTE Cat.M1、LTE Cat.M2、LTE-M又はeMTCの仕様に準拠した無線通信方式であり、周波数帯域幅が例えば1.4MHzに制限され、約15dBのカバレッジ拡張及び1Mbps(上り)の最大通信速度(スループット)をサポートしている。また、Cat.NBは、3GPPのLTE Cat.NB1、LTE Cat.NB2、又はNB-IoTの仕様に準拠した無線通信方式であり、周波数帯域幅が例えば200kHzの狭帯域に制限され、約23dBのカバレッジ拡張及びNB1の場合は63kbps(上り)の最大通信速度(スループット)をサポートしている。
【0042】
通信モジュール12は、通常の移動局のように、移動通信網を介してIP(Internet Protocol)を用いた通信をする機能が備わっていてもよい。しかしながら、この場合、IP通信用の処理モジュールを実装する必要があり、通信モジュール12の部品コストや製造コストが増大する。通信モジュール12は、市場に出回る大量の端末装置10や通信ボード11に搭載される場合、上述したLPWA通信技術に属するNIDD通信方式の通信に必要十分な機能だけを備え、この通信に必要のないIP通信などの他の機能を排除したものが、コスト面で好ましい。
【0043】
制御部13は、通信ボード11の各種構成部の動作を制御するものである。制御部13は、通信ボード11の種類等によって異なるものの、例えば、MPU(マイクロ・プロセッシング・ユニット)、RAM、ROM等を備え、制御モジュールとして、通信モジュール12とともに通信ボード11上に実装されている。通信モジュール12と制御部13との間の通信には、例えばATコマンドを用いることができる。
【0044】
本実施形態の通信ボード11では、通信モジュール12と制御部13とを別々のモジュールで構成することにより、通信モジュール12と制御部13とを別々に開発、製造することが容易になる。例えば、通信モジュール12を移動通信事業者が開発して製造する一方、制御部13の制御モジュールはサービス事業者が開発して製造するということが可能となる。その結果、移動通信事業者にとっては、複数のサービス事業者の制御モジュールと組み合わせる通信モジュール12を共通化でき、コスト削減を図ることができる。また、サービス事業者にとっては、複数の移動通信事業者の通信モジュールと組み合わせる制御部13を共通化でき、コスト削減を図ることができる。
【0045】
制御部13は、例えばMPU等で構成され、記憶部14に記憶されている制御プログラム(以下「制御アプリ」ともいう。)を実行することにより、例えば、所定のアップロードデータを通信モジュール12から移動通信網1を介してコンソール200へ送信したり、コンソール200から移動通信網1を介して通信モジュール12で受信したダウンロードデータに基づいてセンサ16を制御したり、データ処理を行ったりする。
【0046】
特に、本実施形態において、制御部13は、汎用インタフェースとしてのUARTインタフェースに対応した複数種類のセンサ16などのUARTインタフェース対応の対象装置の制御に共通に用いられる所定制御プログラム(以下「UART制御汎用アプリ」という。)を実行する。これにより、制御部13は、コンソール200から移動通信網1を介して通信モジュール12に受信される制御コマンドを、汎用インタフェースのUARTインタフェース15Bを介してセンサ16に送信するように制御する。また、制御部13は、センサ16から出力された応答データを、UARTインタフェース15Bを介して受信し、通信モジュール12から移動通信網1を介してコンソール200に送信するように制御する。
【0047】
記憶部14は、制御部13によって実行されるプログラムや各種データなどのソフトウェアを記憶している。特に、本実施形態において、記憶部14は、UARTインタフェース対応の複数種類のセンサ16などの対象装置の制御に共通に用いられるUART制御汎用アプリを記憶する。
【0048】
インタフェース部15A~15Dは、端末装置10における通信ボード11上に設けられている。本実施形態の通信ボード11上には、複数種類のインタフェース部として、Uバスインタフェース15Aと、UARTインタフェース15Bと、SPI(Serial Peripheral Interface)インタフェース15Cと、I2Cインタフェース15Dとを備えている。端末装置10に搭載されるセンサ16等の機器(構成部)は、通信ボード11のインタフェース部15A~15Dのうち、対応しているインタフェースに接続される。本実施形態のセンサ16は、UARTインタフェース15Bに対応しているので、UARTインタフェース15Bに接続される。なお、Uバスインタフェース15Aは、各種センサとの間で高速パケット通信が可能な通信インタフェースである。
【0049】
センサ16が検知する情報は、コンソール200で収集され、収集した検知情報を利用したサービスに利用することができる。
【0050】
基地局20は、無線アクセス網(RAN)を構成し、例えば、eNodeB(eNB)やgNodeB等とも呼ばれたり、自局が形成するセルのサイズによりマクロセル基地局やスモールセル基地局などと呼ばれたりする。基地局20は、例えば、無線信号の送受信をする無線部(RRH)と、デジタルベースバンド信号処理を行うベースバンド部(BBU)を備える。RRHは、例えば、BBUから受信したデジタルベースバンド信号をRF信号に変換し、所定の信号レベルに電力増幅して端末装置10に送信する。また、RRHは、端末装置10の通信モジュール12から受信したRF信号をデジタルベースバンド信号に変換し、BBUへ送信する。
【0051】
移動通信網に含まれるコアネットワークは、例えばLTE/LTE-AdvancedにおいてEPC(Evolved Packet Core)とも呼ばれ、所定の通信インタフェースを介して基地局20が接続される。コアネットワークは、MME40、SCEF50等の各種ノードも有している。コアネットワークは、PCRF(Policy and Charging Rules Function)等の他のノードを有していてもよい。
【0052】
MME40は、基地局20を収容して無線通信ネットワーク制御、モビリティ制御、ハンドオーバ制御、ユーザ認証制御等を行うノードである。MME40は、ユーザ登録情報に基づいて、基地局20を介して送信されてきたデータを、後述のNIDDのデータ転送を行うSCEF50に転送したり、SCEF50から送られてきた端末装置10宛のデータや受信要求などの情報を基地局20に転送したりする。また、MME40は、端末装置10の通信ボード11に搭載した通信モジュール12及び基地局20のそれぞれについて通信ログ情報及び通信制御パラメータ等の情報を収集して格納する機能を有する。
【0053】
SCEF50は、3GPPの通信サービスの一部をサードパーティのアプリケーションプロバイダーに提供するためのインタフェースを有するノードである。SCEF50は、後述のNIDDによる端末装置10の通信ボード11との間のデータ送受信の転送処理を行う。SCEF50は、NIDDによる端末装置10の通信ボード11とのデータ送受信に対する課金用の通信利用データ(例えばCDR)を作成してもよい。
【0054】
また、本実施形態において、端末装置10が所定のデータ通信タイミングでデータ通信する定期通信のデータ通信タイミングを知らせる通知などの情報は、例えば、制御チャネルにより端末装置10の通信ボード11からSCEF50に通知される。
【0055】
また、端末装置10の通信モジュール12は、電力消費を低減するために着信待ち受け時に一部回路への電源供給を休止してスリープ状態にしておいてもよい。端末装置10の通信モジュール12は、前記着信待ち受け時に後述する受信要求を受信し、その受信をトリガーとして全体回路への電源供給を行い、所定のアプリケーションを起動して受信対象のデータ(コンソール200からのダウンロードデータなど)を受信し、データ受信が完了したらスリープ状態に戻るように制御してもよい。
【0056】
また、本実施形態において、端末装置10の通信モジュール12との通信状況を示す通信状況情報は、端末装置10や基地局20からMME40を介してSCEF50に転送される。通信状況情報は、例えば、端末装置10及び基地局20の通信ログ情報及び通信制御パラメータ等の情報、端末装置10の通信モジュール12に設定されているデータ通信タイミングの設定情報などである。
【0057】
本実施形態の通信システムを構成する通信システムは、NIDDをサポートしている。NIDDは、3GPPの標準規格(例えば、TS23.401 V15.4.0(2018-06),TS23.682 V15.5.0(2018-06)参照)で定義された機能であり、IPを用いずに通信を行う非IP通信であるため、端末装置10に搭載される通信モジュール12がIPスタックの操作やIPアドレスの取得を行うことなくデータ転送が可能になる機能である。このNIDDを利用することにより、IPを用いるIPネットワークからの攻撃がなくセキュアなデータ転送が可能になるとともに、移動通信網にて伝送するデータ量が少なくて済むためデバイスの消費電力削減や弱電界における通信成功率の向上が期待できる。
【0058】
移動通信網1におけるデータ処理の負荷を軽減するため、移動通信網1におけるデータ処理の一部を行うMEC(Mobile Edge Computing)サーバを、基地局20の内部又は近傍に設けてもよい。MECサーバは、例えば、そのサーバに対応する基地局20のセルに在圏する端末装置10の通信モジュール12へのデータ送信タイミングを管理する機能を有してもよい。
【0059】
また、本実施形態の通信システムは、端末装置10の通信モジュール12がIoT通信モードで通信できるようにカテゴリーM1(eMTC)及びカテゴリーNB1(NB-IoT)のカバレッジ拡張(CE)をサポートしている。
【0060】
IoT通信モードは、基地局20との間でIoT用通信を行う通信モードであり、例えばLTE-Advanced ProのeMTC若しくはNB-IoTの標準規格(非特許文献1参照)に準拠した通信モード、又は、第5世代の移動通信で提案されている大規模マシンタイプ通信(5GのmMTC:massive Machine-Type Communications)の通信モードである。
【0061】
なお、広帯域通信モードは、IoT通信モードで通信可能なIoT通信エリアよりも狭い広帯域通信エリアにおいて基地局20との間で広帯域の通信を行う通信モードであり、例えば移動通信の第3世代(3G)、LTE、LTE-Advanced若しくはLTE-Advanced Proの標準規格に準拠する通信モード、又は、第5世代の移動通信で提案されている新しい無線アクセス技術(5G(New Radio))の通信モードである。
【0062】
本実施形態の端末装置10又は通信ボード11を含む通信システムとしては、広帯域通信モード及びIoT通信モードの両方に対応しているものであってもよいし、IoT通信モードのみに対応しているものであってもよい。
【0063】
また、本実施形態の通信システムでは、コンソール200から端末装置10の通信モジュール12へのデータ送信をプッシュ通信(通信モジュール12がデータの取得要求を送信することなく当該データを受信する通信方式)によって行うことができる。このようなプッシュ通信によれば、コンソール200側が希望する時期に端末装置10の通信モジュール12に所定のダウンロードデータ(制御コマンドなどのデータ)を送信することが可能になる。
【0064】
但し、端末装置10の通信モジュール12は、電力消費を低減するために、所定のデータ通信タイミングではない通信不可タイミングでは、通信不可の状態になっている。そのため、通信不可タイミングで端末装置10の通信モジュール12にダウンロードデータを送信(プッシュ通信)してもデータ不達となってしまう。
【0065】
この点について、本実施形態では、データ通信タイミングがSCEF50等によって管理されているので、通信不可タイミングにコンソール200から端末装置10の通信モジュール12へのデータ送信(プッシュ通信)があった場合、当該ダウンロードデータをSCEF50が一時的に保持する。そして、所定のデータ通信タイミングになったタイミングで、SCEF50が端末装置10の通信モジュール12へ当該ダウンロードデータを送信する。
【0066】
また、所定のデータ通信タイミングであっても、端末装置10の電源が落とされているなど、端末装置10の通信モジュール12が基地局20との間で通信できない状況になっている場合には、データ不達となってしまう。このような場合、本実施形態では、MME40が端末装置10の通信モジュール12と基地局20との通信状況を監視しているので、当該通信モジュール12へのデータ送信があった場合、MME40は当該通信モジュール12とは通信できない状況であることをSCEF50へ通知する。これにより、SCEF50は、当該ダウンロードデータを一時的に保持しておき、当該通信モジュール12との通信が可能な状況になった旨の通知がMME40から受けたら、当該ダウンロードデータを、MME40を介して端末装置10の通信モジュール12へ送信する。
【0067】
SCS100は、本通信システムに属する各端末装置10の通信モジュール12から送信されるアップロードデータを、移動通信網を介して受信し、これを当該アップロードデータに含まれる宛先情報により指定されるコンソール200へ送信する中継装置としての機能を有する。SCS100は、
図1に示すように、制御部110と、SCEF用I/F120と、記憶部130と、IP用I/F140とを備えている。
【0068】
制御部110は、SCS100が担う機能を発揮させるための各種制御、データ処理を実行する。具体的には、制御部110は、例えば、端末装置10の通信モジュール12からNIDD通信方式により送信されてくるアップロードデータをSCEF用I/F120により受信し、受信したアップロードデータをIP用I/F140によりコンソール200へ送信するための送信処理を実行する。また、制御部110は、コンソール200から送信されてくるダウンロードデータをIP用I/F140により受信し、受信したダウンロードデータをSCEF用I/F120によりNIDD通信方式によって端末装置10の通信モジュール12へ送信するための送信処理を実行する。
【0069】
また、制御部110は、コンソール200から送信されてくる制御コマンドを含む通信データであるダウンロードデータをIP用I/F140により受信し、受信したダウンロードデータをSCEF用I/F120によりNIDD通信方式によって端末装置10の通信モジュール12へ送信するための送信処理を実行する。
【0070】
なお、端末装置10から送信されるアップロードデータや端末装置10へ送信されるダウンロードデータは、高いセキュリティ性が望まれる場合が多いので、高いセキュリティ性を備えたNIDD通信方式を用いることは有効である。本実施形態の通信システムがサポートしているNIDD通信方式は、上述のとおり、IPを使わないIPアドレス不要の通信技術であるため、一般的なIP通信方式による悪意ある攻撃を受けるリスクが低く、セキュアな通信が可能である。また、このように、NIDD通信方式を利用することにより、暗号化通信などの他のセキュリティ対策を取らなくても十分なセキュリティ性を確保できることから、他の通信方式においてセキュリティ対策のために必要な分のデータ量を削減できるため、デバイスのデータ通信に必要な消費電力の削減や弱電界における通信成功率の向上が期待できる。
【0071】
SCEF用I/F120は、SCEF50との間で通信を行うためのインタフェースである。SCS100とSCEF50との間は、IPを用いない非IP通信方式で接続される必要はないが、IP通信方式により接続する場合には、プライベートIPを用いたり専用線を用いたりして十分なセキュリティを確保することが望ましい。
【0072】
記憶部130は、制御部110で実行されるファームウェア等のプログラムや、制御部110で実行される各種処理に利用される各種情報、各種データが記憶される。
【0073】
IP用I/F140は、主に、コンソール200との間で通信を行うためのインタフェースである。これらのコンソール200とSCS100との間は、IPを用いて通信するIP通信方式により接続されているが、十分なセキュリティを確保することが望まれる。そのため、例えば、クライアント証明書により通信が許可されているコンソール200のみがSCS100と通信できるように認証を行うとともに、SSL(Secure Sockets Layer)による暗号化通信を行うなどして、十分なセキュリティ性を確保してもよい。
【0074】
また、コンソール200は、移動通信網1を介して、端末装置10に接続されたUARTインタフェース対応のセンサ16等の対象装置を透過的に且つ直接的に遠隔制御する装置であり、端末装置10のセンサ16等の対象装置に制御コマンドを送信して制御し、センサ16等の対象装置からの応答データを受信する制御入出力装置である。
【0075】
センサ16等の対象装置の遠隔制御を行うホスト装置は、コンソール200のほか、サーバ装置や遠隔制御装置であってもよい。ホスト装置は、例えば一又は複数のコンピュータ装置で構成される。ホスト装置は、ネットワークを介して複数のコンピュータ装置が接続されたクラウドシステムで構成してもよい。また、センサ16等の対象装置の遠隔制御は、移動通信網1を介して、コンソール200等の複数のホスト装置のいずれか2以上のホスト装置から行ってもよい。また、コンソール200等のホスト装置は、移動通信事業者が運用してもよいし、又は、サービス提供事業者が運用してもよい。
【0076】
コンソール200等のホスト装置は、例えば、サービスプロバイダが提供するIoTプラットフォーム用のホスト装置である。ホスト装置は、各種センサ等の端末装置10からのアップロードデータを収集して活用するサービス提供用のホスト装置であってもよい。また、ホスト装置は、例えば、自動車などの移動体に搭載された各種センサ等の端末装置10からのアップロードデータを収集して活用するサービス提供用のホスト装置であってもよい。
【0077】
図3は、実施形態に係るコンソール200と端末装置10のUARTインタフェース対応のセンサ16との間における制御コマンド及び応答データの送受信の様子の一例を示す説明図である。
図3は、エンドユーザがコンソール200を操作することにより、移動通信網1及び通信ボード11を介してコンソール200がUARTインタフェース対応のセンサ16を透過的に且つ直接的に遠隔制御し、センサ16の検知結果のデータを取得する例を示している。
【0078】
図3において、センサ16を遠隔制御して検知結果のデータを取得するようにエンドユーザがコンソール200を操作すると、コンソール200は、センサ16の検知結果のデータを取得するための制御コマンドに対応するAPIコマンドであるPULLコマンドを、インターネット等のIPネットワークに構築されたWebAPI等のAPI Managerの仮想ネットワークを介して、移動通信網1のSCS100に送信する。
【0079】
PULLコマンドを含む通信データは、前述の
図2のデータフォーマットを有し、LwM2Mプロトコルに従って定義されるデータコンテナ「Binary App Data Container」(オブジェクト19)のオブジェクトインスタンス0のData領域0(以下「/19/0/0」と表記する。)に設定される。
【0080】
移動通信網1のSCS100は、コンソール200からPULLコマンドを受信すると、そのPULLコマンドに対応するLwM2MプロトコルのWriteコマンドを、NB-IoTに準拠したNIDD通信方式により、当該コマンド中のモジュールアドレスで指定された通信ボード11の通信モジュール12に転送する。Writeコマンドを含む通信データは、前述の
図2のデータフォーマットを有し、データコンテナ(オブジェクト19)のオブジェクトインスタンス0のData領域0(/19/0/0)に設定される。
【0081】
通信ボード11の通信モジュール12は、移動通信網1のSCS100からWriteコマンドを受信すると、そのWriteコマンドをATコマンドとして制御部13に送信する。制御部13は、UART制御汎用アプリが起動され、ATコマンドで受信したWriteコマンドを、UARTインタフェースに対応する取込コマンドとして、UARTインタフェース15B及びRX線を介してセンサ16に送信するように制御する。取込コマンドを含む通信データは、前述の
図2のデータフォーマットを有する。
【0082】
以上の移動通信網1を介した制御コマンド(PULLコマンド、Writeコマンド、取込コマンド)の中継により、コンソール200は、センサ16の検知結果のデータを要求するように透過的に且つ直接的にセンサ16を遠隔制御することができる。
【0083】
センサ16は、通信ボード11から取込コマンドを受信すると、センサ16に保存されている検知結果のデータを応答データとして含むレスポンスを、TX線を介して通信ボード11に送信する。応答データを含むレスポンスは、前述の
図2のデータフォーマットを有する。
【0084】
通信ボード11の制御部13は、センサ16から送信されたレスポンスを、UARTインタフェース15Bを介して受信すると、受信したレスポンスをATコマンドで通信モジュール12に送信する。通信モジュール12は、制御部13からATコマンドで受信した応答データを含むLwM2MプロトコルのNotifyコマンドを、移動通信網1のSCS100に送信する。Notifyコマンドは、前述の
図2のデータフォーマットを有し、データコンテナ(オブジェクト19)のオブジェクトインスタンス0のData領域1(/19/0/1)に設定される。
【0085】
移動通信網1のSCS100は、通信ボード11の通信モジュール12からNotifyコマンドを受信すると、そのNotifyコマンドをGETコマンドとして、インターネット等のIPネットワークに構築されたWebAPI等のAPI Managerの仮想ネットワークを介してコンソール200に転送する。GETコマンドは、前述の
図2のデータフォーマットを有し、データコンテナ(オブジェクト19)のオブジェクトインスタンス0のData領域1(/19/0/1)に設定される。
【0086】
コンソール200は、移動通信網1のSCS100からGETコマンドを受信すると、そのGETコマンドのデータ領域に含まれる応答データを、センサ16の検知結果のデータとして取得することができる。
【0087】
以上の移動通信網1を介した応答データ(レスポンス、Notifyコマンド、GETコマンド)の中継により、コンソール200は、センサ16の検知結果のデータを取得するように透過的に且つ直接的にセンサ16を遠隔制御することができる。
【0088】
以上、本実施形態によれば、IPネットワークを介したセンサ16等の対象装置への不正アクセスを防止することができるとともに、対象装置ごとに異なる個別の制御プログラムを実装することなく、移動通信網1を介して対象装置を透過的に且つ直接的に遠隔制御できる。
【0089】
なお、移動通信網1と端末装置10の通信モジュール12との間の通信には、NIDD通信方式以外のLPWA通信技術の通信方式を利用してもよいが、高いセキュリティ性が望まれる更新用データの通信に用いるので、本実施形態のようにセキュリティ性の高いNIDD通信方式を採用することが好ましい。
【0090】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに通信装置(通信ボード)、端末装置、サーバ装置、通信システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0091】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、eNodeBやgNode等の各種基地局装置、制御部、通信モジュール、記憶部、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0092】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる各部は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置や記憶装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0093】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0094】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0095】
1 :移動通信網
10 :端末装置
11 :通信ボード
12 :通信モジュール
13 :制御部
14 :記憶部
15A~15D:インタフェース部
16 :センサ
20 :基地局
40 :MME
50 :SCEF
100 :SCS
110 :制御部
120 :SCEF用I/F
130 :記憶部
140 :IP用I/F
200 :コンソール