(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】電気循環の少なくとも1つの特異な区画の検出のために心筋壁のモデルを生成するための3次元画像のセグメンテーション方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/319 20210101AFI20220905BHJP
A61B 5/343 20210101ALI20220905BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220905BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220905BHJP
【FI】
A61B5/319
A61B5/343
A61B5/00 D
G06T7/00 612
(21)【出願番号】P 2020512920
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2018062258
(87)【国際公開番号】W WO2018206796
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-03-16
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(73)【特許権者】
【識別番号】516324917
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニベルシテール・ドゥ・ボルドー
(73)【特許権者】
【識別番号】519399604
【氏名又は名称】フォンダシオン・ユニベルシテ・ボルドー
(73)【特許権者】
【識別番号】594198569
【氏名又は名称】アンステイテユ・ナシオナル・ドウ・ラ・サンテ・エ・ドウ・ラ・ルシエルシユ・メデイカル
(73)【特許権者】
【識別番号】516308814
【氏名又は名称】アンスティチュ・ナシオナル・ドゥ・ルシェルシュ・アン・アンフォルマティク・エ・アン・オートマティク
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コシェ,ユベール
(72)【発明者】
【氏名】セルメサン,マクシム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ,ピエール
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第9107601(US,B2)
【文献】特開平01-049540(JP,A)
【文献】特開2008-167802(JP,A)
【文献】特開2004-267393(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0028848(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0057548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/318-5/367
A61B 5/00
A61B 5/055
A61B 6/00-6/14
A61B 8/00-8/15
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの特異な電気循環を検出するために、心筋壁のモデルを生成するための、3次元画像から導出された心筋の厚さのセグメンテーション方法であって、
画像記録手段によって、心筋の壁の3次元画像を記録すること(ACQ)であって、前記壁が心臓の少なくとも1つの空洞を区切る、こと、
壁(13)の連続部分を、第1の所定の閾値(S1)より小さい厚さを備える少なくとも1つの第1の
体積(V1)であって、前記第1の閾値(S1)は関
心閾値(Si)より小さい、
体積、および、第1の閾値(S1)より大きく、関
心閾値(Si)より小さい厚さを備える壁(13)の連続部分の第2の
体積(V2)に
、計算機によってセグメント化すること(SEG_1)、
心筋の壁の連続部分が、少なくとも2つの
体積(V1、V2)に従ってモデル化(MOD_VOL)される、心筋の壁のモデル(MOD_P)を
、計算機によって生成することであって、
2つの体積間の、電気循環の少なくとも1つの特異な区画を局所化するために、前記壁モデル(MOD_P)が、前記
体積(V1、V2)の間の少なくとも1つの電気勾配をモデル化することを可能にする、こと
を含
み、
関心閾値(Si)は、関心領域を抽出するための閾値であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
方法が、心筋(13)の壁の連続部分を形成し、壁厚基準に従って区切られる少なくとも1つの関
心領域(R1)の、第1のセグメンテーション(SEG_1)に先立ってのセグメンテーション(SEG_P)であって、関
心領域の厚さが、最大厚さ閾値(S
max)より小さい、セグメンテーションを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
壁の一部のセグメンテーション(SEG_1)が、少なくとも3つのタイプの厚さへの
体積のセグメンテーションを含み、そのうち第1の厚さ(E1)が第1の所定の閾値(S1)より小さく、前記第1の閾値(S1)が関
心閾値(Si)より小さく、第3の厚さ(E3)が第2の所定の閾値(S2)より大きく、前記第2の閾値(S2)が関
心閾値(Si)より小さく第1の閾値(S1)より大きく、第2の厚さ(E2)が第1の閾値(S1)と第2の閾値(S2)の間に含まれ、
体積が、それにより、セグメント化されて、異なる厚さの3次元層を形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
体積のセグメンテーション(SEG_1)が複数の厚さ
【数1】
に従って行われ、第1の厚さ(E1)が第1の所定の閾値(S1)より小さく、前記第1の閾値(S1)が関
心閾値(Si)より小さく、P番目の厚さ(Ep)が、
(P-1)番目の所定の閾値より大きい厚さであって、前記(P-1)番目の閾値は関
心閾値(Si)より小さい、厚さと、
P番目の所定の閾値より小さい厚さであって、前記P番目の閾値は関
心閾値(Si)より小さい、厚さと
を含み、
それにより、セグメント化された
体積が、異なる厚さの3次元層を形成することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各セグメント化された
体積が、ピクセルまたはボクセルの表面を示す表面に対応する寸法、および考慮されるピクセル/ボクセルにおける壁の厚さに対応する厚さを含み、少なくとも2つのピクセル/ボクセルのセットに対応する壁の連続部分が画像の連続部分を形成し、同じ厚さのセグメント化された
体積のセットがそれぞれ、3次元層を形成することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
心筋(13)の壁のモデル(MOD_P)のセグメンテーションまたは生成中に、方法が、少なくとも1つの電気生理学的パラメータの所与の値の、セグメント化された
体積それぞれに対する
関連付けを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
心筋(13)の壁の一部のセグメンテーションが、少なくとも1つの電気生理学的パラメータの値の
関連付けと共同で行われ、
関連付けが、電気生理学的パラメータの値を各厚さ値に関連付ける関数によって行われることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの電気生理学的パラメータの値の
関連付けが、壁(13)の連続部分を考慮することによって、ピクセル/ボクセルごとに行われ、壁モデル(MOD_P)が同じ厚さのセグメント化された
体積のセットを含み、それぞれが少なくとも1つの電気生理学的パラメータの値に関連付けられ、前記セットがそれぞれ3次元層を形成することを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの電気生理学的パラメータが、
範囲:[0m/秒;4m/秒]に含まれる電流伝搬速度、または、
活動電位を特徴付ける少なくとも1つのデータ、または、
モデル化された心筋の壁の少なくとも1つの局所的な電気インピーダンスまたは電気抵抗であることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
方法が、少なくとも1つの特異な電気伝搬回路の存在を判定することを可能にする、心筋壁の生成されたモデル(MOD_P)内の電流の伝搬のシミュレーション(SIMU)のステップを含み、前記特異な電気伝搬回路が、自立した周期回路または2つのループを含む回路であることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
電気シミュレーションが、撮像システム
に結合された計算機による特異な電気伝搬回路の期間の判定を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
特異な電気伝搬回路の期間の判定が、電気循環が減速される回路の一部の検出を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
心筋壁の生成されたモデル内の電流の伝搬のシミュレーション(SIMU)が、モデル化された心筋の活性化の開始に対して空間的におよび/または時間的にシフトされた心筋の区画の少なくとも1つの活性化を判定することを可能にすることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
方法が、少なくとも2つの
体積の間で電気勾配を誘発する少なくとも1つの峡部の判定を含み、前記峡部のジオメトリが、
峡部に隣接する少なくとも2つの区画の厚さと前記峡部を形成する区画の厚さの間の所与の比率、
前記峡部を形成する区画に隣接する2つの区画の間の最小、平均または最大間隙によって特徴付けられる峡部を形成する区画の所与の幅、
隣接する区画のレイアウトによって定義される回廊またはピーク形状によって形成される峡部を形成する区画の所与の長さ、
じょうごまたはじょうごの部分の形状を実質的に有する区画を形成する傾向がある峡部の所与の入口または出口トポロジー、
峡部の入口湾曲および出口湾曲などの峡部の局所的な湾曲
のうちの少なくとも1つのパラメータによって判定されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
峡部を形成する傾向がある区画のジオメトリを特徴付けるパラメータの少なくとも1つが、閾値と比較されて、グループのうちで形状の分類{峡部、峡部がない}を判別することを可能にすることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
関
心閾値(Si)が5mmであり、最大閾値が6mmと12mmの間に含まれることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
基準およびパラメータ化データを含むメモリと、請求項1から16のいずれか一項に記載の発明の方法のステップを行う計算機とを備えた、システム。
【請求項18】
システムが、生成された壁モデル内の電気伝搬のシミュレーションを可視化するための撮像システムをさらに備えることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
システムが、電気イベントの周期性を、検出された特異な電気回路の測定された期間と比較するために、心臓の電気的活動性を測定する手段をさらに備えることを特徴とする、請求項17または18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、心筋モデルの特定の電気的特徴を判定するための画像処理およびシミュレーション方法に関する。より詳細には、本発明の分野は、モデル化された心筋内で特異な電気現象を分離する、および特徴付けるための、心筋の壁面のセグメンテーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、心筋の表面上の電気的活動性を判定することを可能にする診察方法が存在する。この電気的活動性の研究は、3Dで局所化された適切なカテーテルを使用して、侵襲的様式で取得されるマップの分析を、最も一般的に必要とする。心筋内の電気的活動性の分析は、潜在的致死性不整脈の原因となる電気的異常区画の検出に特に重要である。これらの区画はその後、標的化された治療の対象となる。
【0003】
しかし、不整脈の原因となる重要な区画の識別には、長時間および危険なインターベンションを行う必要がある。さらに、標的の定義は依然として極めて不完全であり、不整脈自体が観察されないことも多くある。実際、インターベンション中に再現することは不可能であるか、またはカテーテルでマッピングを行うための時間を外科医に残すことは、患者によってあまり十分に許容されないかのいずれかである。これらのインターベンションの効率はしたがって、限られ、患者は頻繁に再発を呈する。
【0004】
これらのインターベンションの前に、筋肉の構造を分析するために、3次元撮像検査を行うことが可能である。これらの非侵襲性検査は、不整脈において問題となる傷痕の局所化に関する情報を提供することができる。一方、電気回路のタイポロジー(typology)を識別および分類化するために、特定の関心区画、例えば、傷痕を含む区画内の電気循環をモデル化することを可能にする方法は存在しない。
【0005】
心筋内での電気伝搬を理解およびモデル化するために、特定の関心区画内の可能な電気回路およびそのトポロジー(topology)を知る必要がある。
【0006】
総じて、当業者は、例えばカテーテルによる侵襲性方法、および、例えば撮像により、傷痕を局所化することを可能にする非侵襲性方法を自由に有する。しかし、これらの方法は、電気的活動性が特定の特異性を表す部位を信頼性のある様式で識別することを可能にしない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方法は、上記の問題を解決することを可能とする。実際、本発明の方法は、心筋内の特異な、または変則的な電気挙動を分離または可視化することを可能にするモデルを生成するために、心臓壁のセグメンテーションを行うことを可能にする。
【0008】
一態様によると、本発明は、少なくとも1つの特異な電気循環を検出するために、心筋壁のモデルの生成のための、3次元画像から導出された心筋の厚さのセグメンテーション方法に関し:
・心筋の壁の3次元画像を記録することであって、前記壁が心臓の少なくとも1つの空洞を区切る、こと;
・壁の連続部分を、第1の所定の閾値より小さい厚さを備える少なくとも1つの第1の体積であって、前記第1の閾値は関心閾値より小さい、体積、および、第1の閾値より大きく、関心閾値より小さい厚さを備える壁の連続部分の第2の体積にセグメント化すること;
・少なくとも2つの体積によって、心筋壁の連続部分がモデル化される心筋の壁のモデルを生成することであって、電気循環の少なくとも1つの特異な区画を局所化するために、前記壁モデルが、前記体積間で少なくとも1つの電気勾配をモデル化することを可能にする、こと
を含むことを特徴とする。
【0009】
特異な区画を幾何的または電気的に検出/識別することを可能にする、心筋の壁のモデル化が可能となることが利点である。1つの場合では、峡部に関して論じ、他の場合では、特異な電気伝搬回路について述べる。本発明の関心は、心筋の関心区画の伝搬において影響を誘発するかしないかの傾向がある電気機構を理解するために、特異な区画のタイポロジーを識別することである。別の利点は、心臓の電気的活動性をモデル化するための信頼性のあるシミュレータを作成することを可能にすることである。
【0010】
異なるシナリオによると、壁のモデル化、およびより詳細にはセグメンテーションは、様々な利点:アルゴリズムの単純性、複数の3次元層を定義することによって、または代わりにセグメンテーションが電気生理学的パラメータの値の帰属(attribution)を実施するかどうかによるセグメンテーションの技法、を有する異なる実施形態により行われ得る。所望の技術的効果により、セグメンテーションの1つが選択され得る。
【0011】
一実施形態によると、方法は、心筋の壁の連続部分を形成し、壁厚基準により区切られた少なくとも1つの関心領域の第1のセグメンテーションに先立ってのセグメンテーションであって、関心領域の厚さは最大厚さ閾値より小さい、セグメンテーションを含む。
【0012】
一実施形態によると、壁の一部のセグメンテーションは、少なくとも3つのタイプの厚さへの体積のセグメンテーションを含み、このうち第1の厚さが第1の所定の閾値より小さく、前記第1の閾値が関心閾値より小さく、第3の厚さが第2の所定の閾値より大きく、前記第2の閾値が関心閾値より小さく第1の閾値より大きく、第2の厚さは第1の閾値と第2の閾値の間に含まれ、体積が、それにより、セグメント化されて、異なる厚さの3次元層を形成する。
【0013】
一実施形態によると、体積のセグメンテーションは、複数の厚さにより行われ、第1の厚さが第1の所定の閾値より小さく、前記第1の閾値が関心閾値より小さく、P番目の厚さは:
・(P-1)番目の所定の閾値より大きい厚さであって、前記(P-1)番目の閾値が関心閾値(Si)より小さい、厚さと、
・P番目の所定の閾値より小さい厚さであって、前記P番目の閾値が関心閾値(Si)より小さい、厚さと
を含み、
体積は、それにより、セグメント化されて、異なる厚さの3次元層を形成する。
【0014】
一実施形態によると、各セグメント化された体積は、ピクセルまたはボクセルの表面を示す表面に対応する寸法、および考慮されるピクセル/ボクセルでの壁の厚さに対応する厚さを含み、少なくとも2つのピクセル/ボクセルの1セットに対応する壁の連続部分が画像の連続部分を形成し、同じ厚さのセグメント化された体積の1セットがそれぞれ、3次元層を形成する。
【0015】
一実施形態によると、心筋壁のモデルのセグメンテーションまたは生成中に、方法は、少なくとも1つの電気生理学的パラメータの所与の値の、セグメント化された体積それぞれに対する帰属を含む。
【0016】
一実施形態によると、心筋の壁の一部のセグメンテーションは、少なくとも1つの電気生理学的パラメータの値の帰属と共同で行われ、帰属が、電気生理学的パラメータの値を各厚さ値に関連付ける関数により行われる。
【0017】
一実施形態によると、少なくとも1つの電気生理学的パラメータの値の帰属は、壁の連続部分を考慮しながら、ピクセル/ボクセルごとに行なわれる。この場合、壁モデルは同じ厚さのセグメント化された体積のセットを含み、それぞれ少なくとも1つの電気生理学的パラメータの値に関連付けられ、前記セットがそれぞれ3次元層を形成する。
【0018】
一実施形態によると、少なくとも1つの電気生理学的パラメータは:
・範囲:[0m/秒;4m/秒]に含まれる電流伝搬速度、または;
・活動電位を特徴付ける少なくとも1つのデータ、または;
・モデル化された心筋壁の少なくとも1つの局所的な電気インピーダンスまたは電気抵抗
である。
【0019】
一実施形態によると、複数の電気生理学的パラメータが考慮され得る。利点は、生成した壁を信頼性のあるモデルで電気的にモデル化し、実際の動作を表すことを可能にすることである。シミュレーションは、患者への検査から抽出されたデータとシミュレーションの結果を比較することによってモデルを向上させることを可能にする。例として、シミュレータによってモデル化され、判定可能である自立した(self-sustaining)電気伝搬回路の期間を、心臓の電気的活動性を示す撮像システム上で観察される期間と比較することができる。
【0020】
一実施形態によると、方法は、少なくとも1つの特異な電気伝搬回路の存在を判定することを可能にする、心筋壁の生成されたモデル内の電流の伝搬をシミュレーションするステップを含み、前記特異な電気伝搬回路は、自立した周期回路または2つのループである。
【0021】
一実施形態によると、電気シミュレーションは、撮像システムによる特異な電気伝搬回路の期間の判定を含む。有利には、撮像システムは、例えば、ループを形成する部分上の信号の伝搬速度を分析することを可能にする計算機に結合させることができる。
【0022】
一実施形態によると、特異な電気伝搬回路の期間の判定は、電気循環が減速される回路の部分の検出を含む。利点は、伝搬遅延を引き起こす回路の所与の部分を判定することである。利点はしたがって、本発明の方法によって識別される区画の部分で局所化された活動を計画することを可能にすることである。
【0023】
一実施形態によると、心筋壁の生成されたモデル内の電流の伝搬のシミュレーションは、モデル化された心筋の活性化の開始に対して空間的におよび/または時間的にシフトされた心筋の区画の少なくとも1つの活性化を判定することを可能にする。利点は、例えば、本発明の方法によって得られる壁モデルの画像を表示する撮像システムから、関心区画内の電気伝搬を研究することである。この伝搬は、本方法によって識別される特異な区画内の電気伝搬と直ぐに比較され得る。特異な区画内の電気伝搬遅延の分析は、壁モデル内の一般的伝搬におけるこの区画の可能な影響を分離することを可能にする。本発明の方法は、識別された特異な区画の位置を考慮し、したがって、特異な区画の位置のために自然の空間的および時間的シフトを考慮することを可能にする。この考慮は、特異な区画のジオメトリから一意的に得られる電気伝搬遅延の影響を分離することを可能にする。
【0024】
一実施形態によると、方法は、少なくとも2つの体積の間に電気勾配を誘発する少なくとも1つの峡部の判定を含み、前記峡部のジオメトリが:
・峡部に隣接する少なくとも2つの区画の厚さと前記峡部を形成する区画の厚さの間の所与の比率;
・前記峡部を形成する区画に隣接する2つの区画の間の最小、平均または最大間隙によって特徴付けられる、峡部を形成する区画の所与の幅;
・隣接する区画のレイアウトによって定義される回廊またはピーク形状によって形成される、峡部を形成する区画の所与の長さ;
・じょうごまたはじょうごの部分の形状を実質的に有する区画を形成する傾向がある、峡部の所与の入口または出口トポロジー;
・峡部の入口湾曲および出口湾曲などの峡部の局所的な湾曲
のうちの少なくとも1つのパラメータによって判定される。
【0025】
一実施形態によると、これらの特徴の組合せは、特異な幾何区画を判別するために考慮され得る。利点は、例えば、不整脈を誘発する電気的特性の源である可能性がある特異な区画のタイポロジーを判定することである。シミュレーション中、所与の特異な区画の電気的影響の環状構造は、刺激の伝搬におけるこの区画の影響を研究することを可能にする。
【0026】
一実施形態によると、峡部を形成する傾向がある区画のジオメトリを特徴付けるパラメータの少なくとも1つは、閾値と比較されて、グループのうちで形状の分類{峡部、峡部がない}を判別することを可能にする。利点は、前もって自動的に比較された特徴のために、峡部を形成することを、ことによると可能にするものとしてそれぞれ識別された区画のセットを次に分析するように方法を自動化することである。
【0027】
一実施形態によると、関心閾値Siは5mmであり、最大閾値は6mmと12mmの間に含まれる。関心区画をより精密にとりだすことが望まれる例によると、関心閾値は4mmまで減らされ得る。壁の特殊性が予め知られている心筋の特定の区画によると、例えば、傷痕が区画内で知られている、または区画が、例えば心尖などの特定の部位に関する場合、関心閾値は、抽出する区画をより良く標的化するために、これらのデータを考慮することができる。
【0028】
別の態様によると、本発明は、基準およびパラメータ化するデータを含むメモリと、本発明の方法のステップを行う計算機とを備えたシステムに関する。
【0029】
特に、メモリは、処理される画像、セグメンテーションを構成することを可能にするような構成データ、および、必要に応じて、電気生理学的パラメータの値を帰属させるデータを記憶することができる。
【0030】
計算機は、判定された実施形態による壁モデルを生成するために、選択した構成により画像をセグメント化することを目的とした処理動作を行うことを可能にする。さらに、計算機は、形状認識アルゴリズム、または特異な区画を幾何的もしくは電気的に判定することを目的としたアルゴリズムを実施することができる。計算機は、モデルの特異な区画を識別することを目的とした方程式の解を判定することを目的とした計算を行うことができる。
【0031】
一実施形態によると、本発明のシステムは、生成された壁モデル内の電気伝搬のシミュレーションを可視化するための撮像システムをさらに備えている。撮像システムは、例えば、特異な電気伝搬区画を識別するように構成され得る。撮像システムは、自立した電気回路内で電流の遷移期間を判定するために構成され得る。
【0032】
一実施形態によると、本発明のシステムは、電気イベントの周期性を、検出された特異な電気回路の測定された期間と比較するために、心臓の電気的活動性を測定する手段をさらに備えている。想起し得る手段のうち、表面電極が使われ得る。例として、電極のベルトまたはジャケットが使われ得る。別の例では、カテーテルである。
【0033】
本発明の他の特徴および利点は、添付された図面を参照した、以下の詳細な説明を読むと明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】心臓ならびに空洞および壁を形成する領域の図である。
【
図2】本発明の方法による、弁膜平面の定義とともに、スキャナによってキャプチャされる心臓の3次元画像の断面図である。
【
図3】関
心区画およびセグメント化された
体積を定義する、心筋の壁の一部を示す図である。
【
図4A】本発明の方法の主なステップを示す図である。
【
図4B】本発明の方法の主なステップを示す図である。
【
図5】9人の患者のグループに関するコンピュータ支援トモグラフィによるチャネルまたは峡部の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本説明では、導電が特異である区画は:
・導電が減速される区画、すなわち、それが所定の閾値より小さく、所定の閾値が異なる基準の関数であることが可能である、区画、または;
・導電が自立した電気回路を形成する区画、または;
・導電が、少なくとも2つの接続されたループを含む電気回路を形成する区画
を意味する。
【0036】
より一般的には、特異な区画は:
・より大きな考慮される部分に対して、特定の電気伝搬特徴のいずれかを有する区画、または;
・峡部の存在を特徴付ける所与の幾何的特徴を有する区画。幾何的パラメータを特徴付けるときに、このような区画をこれ以下、「峡部」と呼ぶ。峡部の幾何的特殊性は、電気的に特異な区画に対応する導電の特性を誘発する結果を有する電気勾配の存在の特徴である。
【0037】
「催不整脈性区画」は、電気循環が、心臓洞調律(cardiac sinus rhythm)とは異なる調律により維持される区画を意味する。
【0038】
医療的コンテキストでは、心臓不整脈の症状が、心筋の傷痕などの催不整脈性区画によって引き起こされることがある。それで、不整脈によって引き起こされる調律は異常であり、心調律を乱す。
【0039】
心臓不整脈は、催不整脈性区画の存在以外の理由によって引き起こされる可能性があることが特定されている。逆に、催不整脈性区画の検出は、それが心臓不整脈を作り出す傾向があることを自動的には示していない。どの場合でも、本発明の方法は、催不整脈性区画およびそれらのタイポロジーを識別して、後者を分類し、心筋内の電気伝搬をモデル化することを可能にする。
【0040】
画像の記録/取得
図1は、人間の心臓1を示している。
図1に示すように、心臓1内には:VGと記された左心室、VDと記された右心室、ODと記された右心房(auricle)、およびOGと記された左心房がある。
【0041】
説明の残りでは、「空洞」は、心臓内に収容され、心臓壁によって制限された循環血液体積を指定する。4つの空洞:左心室VG、右心室VD、右心房OD、および左心房OGが心臓内に存在する。
【0042】
空洞は、特定の体積を互いに接続する、異なる動脈、静脈および弁2、3の間を通過する血液流を受ける。
【0043】
本発明の方法は、心臓、または心臓の領域の3D画像を記録することを含むステップを含む。画像は、スキャナまたはMRIなどの画像取得デバイスから直接取得されることができる。別の方法では、画像は記録サポートによって得ることができ、画像は本発明の方法の前に既に作成されたものである。
【0044】
図4にENRと記された記録ステップは、方法のこの第1のステップを例示する。それは、ACQと記され、
図4の記録ステップENRと同じステップで示された、画像の取得のステップにより先行され得る。取得ステップは、患者または動物の心臓の画像を作成することを可能にする機器によって行われ得る。
【0045】
取得された画像は、右心室VDまたは左心室VG、または心房OD、OGの1つなどの少なくとも1つの空洞と、前記空洞を囲む壁を含むことが好ましい。この壁は、心筋と呼ばれる筋肉を含み、「心内膜」と呼ばれる内部限界から「心外膜」と呼ばれる外部限界まで延びる。
【0046】
図2は、スキャナにより取得される、心臓の
図1の3D画像の断面図を示している。- 右心室VDの空洞を区切る区画12;
- 右心室VDの壁を区切る区画133;
- 左心室VGの空洞を区切る区画11;
- 左心室VGの壁を区切る区画132:
- 隔壁と呼ばれる、2つの左右心室の間に位置する壁を区切る区画131
の、異なる区画が見える。
【0047】
壁131、132、133は、説明の残りにおいてより全体的に13と記された一意の筋肉壁である。この壁は、異なる空洞を囲んでいる。
【0048】
一実施形態によると、本発明の方法は、例えば、スキャナによって前もって潜在的に取得されている3D画像の記録を含む。この取得ステップは、
図4においてACQと記されているが、任意選択である。
【0049】
例として、画像の取得は、「シーノグラフィ(scenography)」とも呼ばれるコンピュータ断層撮影(tomodensitometry)を伴う可能性があることに留意されたい。これらの技術はまた、CTスキャンまたはCATスキャンとして識別され、器官の組織によるX線の吸収の測定に基づく。画像のデジタル化により、観察された領域の解剖学的構造の3D画像の再構築が可能になる。
【0050】
説明の残りでは、「心筋の壁を示す画像」または「心筋の壁」は、本発明が、心筋のモデルの、したがって、そこから幾何的および/または電気的情報を抽出する少なくとも心筋の画像の生成に関する限り、言葉の流用により区別なく用いられる。
【0051】
事前セグメンテーション:関心領域
生成された3D画像は、ピクセルの体積分布を含む。関心領域はその後、考慮され得る。本発明の方法により、例えば、心筋の名前でよく知られている、心臓の壁13を考慮することが可能になる。一実施形態によると、関心領域21はその後、壁厚基準により抽出することができる。例えば、関心領域は、5mm未満の心筋の厚さに対して定義されている。関心領域21の厚さ閾値Siの定義は、画像の処理により前記関心領域を自動的に抽出することを可能にし、この閾値は「関心閾値」と呼ばれる。関心閾値Siは、心臓の考慮される領域に従って構成され得る。したがって、心尖(Apex)のレベルでは、関心領域は、4mmの関心領域Siの閾値を有することができ、別の領域では、関心領域Siは、5mmに等しくなることがある。この構成では、抽出された関心区画は、それらのそれぞれの関心閾値Siに応じて互いに独立して考慮される。
【0052】
一実施形態によると、心筋13の各点に対して、心筋の厚さを考慮することによって、およびこの厚さを最大閾値Smaxと比較することによって、少なくとも1つの関心領域21を抽出するために画像処理が実施される。このステップはSEG_Pと記され、一意に心筋の部分に基づき、異なる体積SEG_1のセグメンテーションを行うように、心筋の一部の事前セグメンテーションにある。代替では、セグメンテーションSEG_1は、記録された画像から直接行われる。
【0053】
一実施形態によると、最大閾値Smaxは、体重、年齢、または性別基準などにより構成可能である。最大閾値Smaxは、心筋の厚さの最大限を定義することを可能にし、心筋の一部の厚さをセグメント化するために、抽出する関心領域を定義することを可能にする。一実施形態によると、最大閾値Smaxは、所与のコンテキストに対するパラメータのセットを特徴付けるヒストグラムに依存するアルゴリズムによって得ることができる。
【0054】
図3は、本発明の方法から生成されたモデルMOD_Pを示している。モデルMOD_Pは、その壁が本発明の方法によりセグメント化された心筋の3次元画像を含む。
【0055】
一実施形態によると、3次元画像の一部が、本発明の方法によって処理され、それは関心領域21である。一実施形態によると、関心領域21は、5mm未満の心筋の厚さに対して定義される。この解決法は、画像の特異な部分を考慮することを可能にする。利点は、幾何的特異性および/または電気的伝搬特異性が識別および局所化され得るモデルMOD_Pを生成することを可能にしながら、演算時間を減らすことである。
【0056】
別の実施形態によると、関
心領域は、心筋13の壁全てによって定義される。この場合、本発明の方法のセグメンテーションは、心筋の壁全てに適用される。
図4に示した事前セグメンテーションSEG_Pはその場合、行われない。このステップは、任意選択である。
【0057】
図3は、関
心領域21の異なる
体積、
体積22、230、231、232および233を含む画像を示している。より詳細には、
図3は、同じ厚さを含むという事実のために、それにより記されたいくつかの
体積23を示している。さらに、これらは、特に峡部30に隣接する部分を説明するために、それらを区別するように、230、231、232および233と記されている。本発明の方法は、電気的特異性を識別するために、これらの異なる
体積をセグメント化することを:
・部分30より小さい厚さの2つの部分232および233の間に含まれる峡部30などの、峡部を識別することによる幾何的様式によって;
・または、電気生理学的パラメータを各セグメント化された
体積に関連付けることによる電気的様式であって、
体積が、特定の電気的挙動を識別する電気的シミュレーションを行うように、1つのピクセルのレベルまたはピクセルのセットのレベルで定義されることが可能である、様式によって
可能にする。
【0058】
電気生理学的パラメータは、特に本発明の方法の異なる実施形態に対して:膜電位の大きさ、導電速度、活動電位の持続時間、回復曲線(restitution curve)の特徴を含む。
【0059】
モデル化された壁のセグメンテーション
図4Aは、モデルMOD_Pを生成するための、本発明の第1の実施形態を例示する。
【0060】
体積のセグメンテーションのステップは、
図4AにおいてSEG_1と記されている。
【0061】
この第1の実施形態によると、壁の各点は、少なくとも1つの電気生理学的パラメータの値をそれに関連付けるために、ステップごとに考慮される。この第1の実施形態は、したがって、ピクセルまたはボクセルなどの壁の点に対して、電気生理学的パラメータの値の帰属をセグメンテーションステップに統合させることを可能にする。セグメンテーションステップSEG_1は、それで、モデルMOD_Pを生成するための電気的モデル化MOD_ELEC_1のステップと共同で行われる。
【0062】
図4Bは、壁モデルMOD_Pを生成するための、本発明の第2の実施形態を例示する。
【0063】
この第2の実施形態によると、方法は、セグメンテーション動作SEG_1から生成される、MOD_VOLと記された、厚さをモデル化するステップを含む。このステップでは、各体積は、厚さの関数によりセグメント化される。セグメンテーションSEG_1は、事前構成され得る厚さ段階の定義により行われる。段階の離散化、すなわち、それらの数が、特に考慮され得る。
【0064】
代替形態によると、この第2の実施形態は、心筋のモデルMOD_Pを生成するために、
図4BにMOD_ELEC_2と記されたモデル化による、セグメンテーション動作SEG_1の後に行われる関連付け/帰属ステップを含む。この電気的モデル化は、セグメンテーション動作SEG_1から生成された厚さのモデル化MOD_VOLにより行われる。セグメンテーション動作SEG_1が終了すると、電気生理学的パラメータの値は次に、各セグメント化された
体積に帰属させられる。この関連付けは、したがって、セグメンテーションSEG_1に続くことがある。
【0065】
別の代替によると、方法は、厚さモデルMOD_VOLを生成するために、ステップSEG_1でセグメント化された異なる厚さの複数の体積の定義を含む。モデルMOD_VOLは、次に、心筋の壁の関心区画を幾何的に特徴付けるために使用される。壁20または21の特定の区画の幾何的特徴付けのステップは、MOD_GEOと記されている。この特徴付けは、次に任意選択で、電気的活動性モデルで裏付けられ得る。
【0066】
第1の実施形態によると、
図4Aを参照して、
体積全てのセグメンテーションは、各
体積に対する電気生理学的パラメータの帰属と同時に、厚さ基準により行われる。壁モデルMOD_Pは、この帰属動作に対して連続して生成される。
【0067】
所与の厚さの体積と電気生理学的パラメータの所与の値の間の帰属は、値のブロックによって離散的様式で行われてもよく、連続関数により行われてもよい。
【0068】
第1の例により、0と5mmの間に含まれる3つの閾値:S1=1mm;S2=3mm;S=4mm、によってセグメント化される4つの壁の体積V1、V2、V3、V4を考える。この第1の例では、電気生理学的パラメータは、0と4m/秒の間に含まれる電流伝搬速度である。伝搬速度値は、値の範囲によりセグメント化される。第1の範囲G1は、[0と0.5m/秒]の間に含まれ、第2の範囲G2は、[0.5と1.5m/秒]の間に含まれ、第3の範囲G3は、[1.5と2.5m/秒]の間に含まれ、第4の範囲G4は、[2.5と4m/秒]の間に含まれる。
【0069】
この第1の例によると、本発明の方法は、範囲G1、G2、G3、G4それぞれに各体積V1、V2、V3、V4を関連付けることが可能である。
【0070】
第2の例によると、少なくとも1つの電気生理学的パラメータの、体積および値の関連付けは、分布パラメータにより厚さを少なくとも1つの電気生理学的パラメータの値に関連付ける連続関数から行われる。分布パラメータは、使用される連続関数のモデルを調節することを可能にする。
【0071】
この第2の例は、関数は画像の処理中に適用され得る。セグメンテーションステップはその後、電気生理学的パラメータに対する値の帰属のステップと共同で行われる。一実施形態によると、画像処理のための関連付けアルゴリズムは、動作をステップごとに行う。壁の第1の点が考慮され、この点における壁の厚さの計算が行われ、電気生理学的パラメータの値の帰属が、この点におけるこのような厚さ値に関連付けられる。モデルはその後、関連付けアルゴリズムにより作成される。
【0072】
第1の代替実施形態によると、考慮される電気生理学的パラメータは、心筋の壁の電流伝搬速度である。電流伝搬モデルが考慮され、それは心筋の厚さに依存し、その後、壁のセグメンテーションの動作中に統合され得る。第1の例によると、モデルは、電流速度が厚さに関連付けられる離散的モデルであってもよい。別の例によると、第2のモデルは連続モデルであってもよい。この後者の場合では、このモデルの統合は、連続分布関数から行われる。
【0073】
第2の代替実施形態によると、考慮される電気生理学的パラメータは、心筋の一部の活動電位を特徴付けるデータである。活動電位は、特に、活動電位の大きさおよび/または持続時間によって特徴付けることができる。
【0074】
別の代替実施形態によると、考慮される電気生理学的パラメータは、心筋の壁を形成する組織の局所的なインピーダンスまたは抵抗である。
【0075】
第2の実施形態
第2の実施形態によると、
図4Bを参照すると、複数の
体積22、23内への壁20または21のセグメンテーションは、電気生理学的パラメータに特定の帰属を行うことなく行われる。
体積22、23は次に、心筋のあまり導電性のない壁の区画内を循環する電流の伝搬速度とは異なる、例えば、これより大きい伝搬速度により、心筋の壁内に電流を流す傾向がある関
心区画を判定するために、幾何的に特徴付けられる。あまり導電性のない区画は、壊死した区画、または筋肉が十分に導電性でなくなった区画の特徴である。
【0076】
関心区画の幾何的特徴付けは、心筋20の壁に形成された峡部30などの、少なくとも1つの峡部の特定の数の幾何的特徴を判定するステップによって得られる。峡部30は:
・隣接する区画232、233の厚さに関する峡部の厚さ。したがって、峡部の相対的「高さ」を評価するために厚さの差を保持することを伴う。
・前記隣接する区画232、233の間隙によって形成される峡部の幅31。中間、平均、最小または最大幅が、異なる例示的実施形態により考慮され得る。他の例示的実施形態によると、異なる測定が、峡部の幅の進展の特定のトポロジーを考慮して行われ得る。
・隣接する区画232、233の配置によって定義される回廊またはピークによって形成される峡部の長さ32。
・電荷の集中の挙動、したがって、電流の流れ、したがって峡部の入口または出口での電気伝搬速度を評価することを可能にする、2つの隣接する区画232および233によって形成されるじょうごなどの、峡部30の入口および出口トポロジーが考慮され得る
によって定義される。
【0077】
心筋の表面上を循環する電流の伝搬速度を変更する集中区画または発生区画を形成する傾向がある峡部の入口および出口のトポロジーに関し、異なる検出技術が使用され得る。これらの区画は、例えば、峡部の端部の一方またはもう一方に隣接する2つの区画の収束または発散によって特徴付けられ得る。隣接区画の収束または発散は、例えば、接線の測定、または2つの隣接する区画によって定義されるじょうごの形状を特徴付けることを目的とした測定によって得られ得る。
【0078】
一実施形態によると、峡部の入口および/または出口湾曲は、峡部の特異性の関連性を判別するために算出され得る。
【0079】
峡部の特異性は、特に、峡部の存在およびそのタイポロジーのために、この区画内で起こると想定される導電の伝搬に関して、心筋のモデルの区画を特徴付けることを可能にする。峡部は、第1の近似では、2つのセグメント化された体積の間に生成される局所的な電気勾配によって特徴付けられ得る。
【0080】
一実施形態によると、特異な峡部の判別を最適化するように、いくつかの幾何的基準が共にとられ、組み合わせられている。
【0081】
一実施形態によると、上記幾何的パラメータの比較のための閾値を定義する基準値は、峡部を判別する、または峡部のタイプを分類化することを可能にする。一実施形態によると、これらの値は、峡部の電気伝搬の速度、またはその中を通過する電流の流れなどの、峡部に関連する電気パラメータを評価することを可能にする。
【0082】
これらの評価されたパラメータは、峡部のタイプを判別、またはさらに分類化および評価することを可能にする。基準値は、心臓の体積、細胞もしくは患者の年齢、心筋に存在する脂肪のレベル、または代わりに、患者の過去の医療履歴データなどのパラメータに従って重み付けされるまたは適応させることができる。
【0083】
一実施形態によると、これらのパラメータの値は、形状認識アルゴリズム、または形態学的アルゴリズム、または峡部の存在を定義する特異性を識別することを可能にする特定の関数から自動的に算出することができる。
【0084】
特定の所定基準に応じる峡部の識別のステップは、ID_ISTHMと記されている。
【0085】
任意選択では、本発明の方法は、本発明の一実施形態によると、峡部の出口または入口で電荷の集中の区画を形成する傾向がある、ID_ZONEと記されたステップを含む。
【0086】
本発明の関心はしたがって、心筋の特殊性のために、減速した速度で電流が伝搬するのより大きい伝搬速度での電流を流す傾向がある区画をモデル化するために、峡部を形成する区画の厚さ、幅および長さを、特に考慮することである。
【0087】
壁をモデル化するための2つの変数を有する関数の生成による幾何的モデル化
一実施形態によると、心筋の壁のモデルMOD_Pは、2つの変数を有する関数によってモデル化された壁の厚さのモデルの生成、および連続線を形成する最大値を判定することを含む。
【0088】
一実施形態によると、最大値は、導関数の零点の判定、および判定された零点に対するヘッシアン関数の行列式の値の分析から判定される。
【0089】
一実施形態によると、心筋の壁のモデルMOD_Pは、その対応する壁厚が所定の閾値より大きい判定された線の判別を含む。
【0090】
一実施形態によると、本発明の方法は、(1つまたは複数の)峡部の有無を判別することを可能にする固有ベクトルを判定するために、直接3次元モデル内での導関数およびヘッシアン関数の算出を含む。
【0091】
一実施形態によると、方法は:
・峡部の少なくとも1つの発生区画の識別;
・前記発生区画のアブレーション
を含む。
【0092】
一実施形態によると、方法は、生成された壁モデル内の電流の伝搬のシミュレーションを含む。電気シミュレーションは、壁の電気的モデル化で壁のモデルMOD_P内への電流の注入を含む。電流の注入は、例えば、心筋の電気的活性化をモデル化することができる。注入される電流は、例えば、正弦関数タイプであってよい。所与のシミュレーションを誘発することを可能にする電流を生成するための異なるシナリオが構成され得る。
【0093】
壁モデルのシミュレーションは、インシリコ(in silico)で、壁の特異な電気導電区画を電気的にモデル化することを可能にし、したがって、特定の電気導電特徴を有する区画を検出することを可能にし得る、仮想刺激の定義を含む。さらに、これらの区画は任意選択で、例えば、不整脈回路の発生の可能性を表す臨界係数に関連付けられ得る。実際、この仮想刺激は、仮想心室性頻脈をトリガする可能性があり、回路の傷痕内チャネルが使用されて、カテーテルのアブレーションインターベンション中に治療する標的が定義され得る。この戦略は、不整脈が臨床的に誘発できない、またはマッピングされるには耐性が悪すぎる患者には特に適する。
【0094】
例示的実施形態によると、刺激がインシリコで仮想心室性不整脈をトリガするとき、不整脈が誘発可能でなくなるかを確認するために、回路の傷痕内部分の仮想アブレーションが行われ得る。この過程は、誘発可能な頻脈がある限り仮想的に繰り返され得る。
【0095】
したがって、本発明の方法は、実際の手術に備える目的で、仮想外科手術の治療訓練に都合がよい可能性がある。
【0096】
壁モデルの傷痕などの、関心区画内およびその周りの重要な多くの部位の刺激は、心室性不整脈の危険性の予測のために使用され得る。患者における臨床的刺激の限界の1つは、2つから3つの部位だけしか刺激することができないという事実である。インシリコのモデルは、プログラミングされた刺激プロトコルを適用することができる部位の数に関して実質的に限界がない。心室性不整脈が実際にほぼ誘発可能である場合に、テストは陽性であると考えられる。
【0097】
したがって、壁モデルの作成は、本発明の方法により検出される特異な電気伝搬回路を特徴付けるために、多くのテストを行うことを可能にする。
【0098】
本発明の一実施形態によると、関心区画内の特異な電気信号の挙動も検討することができる。特異性インデックスは、カプリングの有無の関数、または代わりに、心筋の残りで検出された特異な電気信号の間のカプリングの程度として定義することができる。デカプリングは、例えば、刺激中に遅延が増加する特異な電気区画の電気的活性化によるものである可能性がある。
【0099】
一実施形態によると、仮想マッピングは、仮想シミュレーション部位全てに対して得られる特異な電気信号のマップを積み重ねる同じモデル上で一緒に行うことができる。実際、刺激部位は重要であり、通常マスキングされる特異な電気信号を明らかにすることができることが知られている。
【0100】
このタイプの仮想刺激は、したがって、危険性がある患者の検出を向上させ、除細動器を移植する決定においてかなりの助けとなる可能性がある。
【0101】
シミュレーションはその後、特異な電気伝搬回路の存在を局所化することを可能にする。第1の例によると、特異な電気回路はループを形成し、これを通して、期間Tに従って電流が通過する。別の例によると、特異な電気回路は「8」、すなわち、別の期間Tに従って電流を通過させる2つのループを形成する。例えば、電気的切断を有する回路を含む他の特異性を識別することができる。
【0102】
本発明の方法は、複数の識別された回路のうち特異な電気伝搬回路を、それらのそれぞれの期間を、探されている所与の期間と比較することによって、判別することを可能にする。実際、所与の心電図において不整脈または特定のイベントをまとめることによって、不整脈または特定の電気的イベントを引き起こす回路を判定することが可能である。心電図は、表面電極、またはカテーテル、または心臓の電気的活動性を測定することを可能にするあらゆる他の機器から得られ得る。
【0103】
基準期間を定義するために、表面の心電図の、または生理学的、または地図的記録が使用され得る。基準期間はその後、壁モデルの特異な電気伝搬回路が測定された期間と自動的に比較される。
【0104】
別の使用によると、壁モデルを構成する、またはその構成を修正するために、記録が使用され得る。例えば、電気イベントが記録上で識別されたとき、および検出された特異な電気伝搬回路がこのイベントに関連付けられたとき、ついで、例えば、電流速度の帰属の値などのモデルが修正され得る。モデルはしたがって、壁モデルの構成において補償パラメータを考慮することにより改良され得る。
【0105】
したがって、判定可能な電気的イベントを含む基準ECGに関連付けられるとき、方法:
・壁のモデルの質を向上させる、
・または、基準ECGの特定の電気的イベントにより近くされ、心臓の電気的活動性を測定するデバイスによって識別されるために、複数の候補回路のうちの特定の特異な回路を識別する
のいずれかを行うように働くことができる。
【0106】
例示的実施形態によると、本発明の方法は、本発明の方法によってモデル化された心筋の電気的活性化の開始、すなわち、波QRSの開始と比較して、心筋の少なくとも1つの領域内が時間的におよび/または空間的にシフトされるときに、後者が少なくとも1つの電気伝搬回路を検出することを可能にする。例示的実施形態によると、測定されたシフトは、心筋の活性化の開始の区画と特異な電気伝搬回路が測定された区画の間の距離を考慮している。実際、電気的な波の伝搬時間は、時間的および/または空間的シフトの判定において、考慮され得る。
【0107】
図3は、峡部30内を通過する電荷40、41を示している。入ってくる電荷は40と記され、出ていく電荷は41と記されている。峡部30の検出ID_ISTHMは、心筋の電気的挙動をモデル化することを可能にする。電気的心臓活動性のシミュレーションは、心筋の表面上の電気的特異性を検出することを可能にする。教育的目的で、心臓の電気的挙動をよりよく理解するため、または代わりに、時間の経過と共に状況の進展を監視するために、心筋の動的モデルが使用され得る。
【0108】
峡部30が不整脈を引き起こす傾向があるとき、電流がもう循環しないように、細胞のアブレーションを行うことが望ましい場所ID_ZONEを判定するために本発明の方法を使用することが可能である。この動作は、例えば、不整脈をトリガする傾向がある自立した電気伝搬回路の形成を防ぐことを可能にする。
【0109】
幾何的考察から、本発明による峡部を識別するための方法の効率を評価するために、比較研究が行われてきた。これを行うために、心室性頻脈(TV)の活性化のマッピングが、アブレーションステップの前に、再発を呈する心室性頻脈(TV)に苦しむ9人の患者で行われた。これらのマッピングは、電気生理学的特徴によって傷痕の間のこれらの峡部を通る伝導をなくすことが目的である、アブレーションの標的である峡部またはチャネルを局所化することを可能にする。電気生理学的峡部は次に、幾何的特徴に基づいて、本発明の方法によって識別される形態学的峡部と比較される。研究の結果が、
図5の表により要約される。
【0110】
患者の特徴:アブレーションの時点で57±15歳の平均年齢の9人の患者。アブレーションの時点の左心室の平均駆出率は、34%±7%である。4人の患者の心筋の下側壁、4人の患者の後側壁、および2人の患者の横側壁において梗塞が識別される。
【0111】
本発明の第2の実施形態による峡部を識別するための方法:CT-Scanスキャナ撮像が、アブレーション処置の1日または3日前にこれらの同じ患者に行われた。これらの画像は次に、本発明の方法により、以下のステップ:
・取得された画像、特に、複数の
体積において5mm未満の厚さに対して定義された心臓の壁の関
心領域をセグメント化すること、
・それぞれ、1mm、2mm、3mm、4mmおよび5mm未満の厚さの等値面でマッピングを構築すること。
・以下の幾何的特徴により形態学的峡部を識別すること、この特徴付けるステップは、
図4BのステップID_ISTHMに対応している:
・壁が5mm未満の厚さを有する関
心区画;
・形態学的峡部(またはチャネル)が、峡部の両側に位置する、隣接する区画の厚さより小さい厚さを有する;
・峡部は幅より長い;
により、処理された。
【0112】
TVマッピングを介した電気生理学的峡部を識別するための方法:Rhythmia(R)(ボストン・サイエンティフィック、マルボロ、マサチューセッツ州、米国)マッピングシステムを使用して、左心室の心腔の解剖学的電気活動性の3次元マッピングが、洞調律で、および、標的アブレーション区画、すなわち不整脈の傷痕がある組織基質の区画を局所化するために刺激されたTVによって取得される。マッピングはしたがって、電気生理学的特徴による導通に原因がある傷痕間の峡部(チャネル)を局所化することを可能にする。
【0113】
比較研究:TVマッピングおよびCTスキャンマッピングが共にマージされ、このマージングは、洞調律で、およびTVによって得られたマッピングの点を、CTスキャンによって得られたマッピングの対応する点の上へ、最近傍法を使用して投影することによって行われた。
【0114】
結果および考察:
41個の形態学的峡部が、本発明の方法により識別される。峡部CTの中間長さ、幅および面積はそれぞれ、30.0(18.5-40.2)mm、10.9(7.3-16.0)mm、および1.55(1.05-2.28)cm2であり、中間厚さは峡部のレベルで2.4(2.1-3.5)mm、境界のレベル(P<0.0001)で1.6(0.9-2.2)mmである。1mm未満の厚さを有する領域に峡部は識別されず、4mmより大きい厚さを有する領域には境界領域は識別されなかった。
【0115】
形態学的峡部と電気生理学的峡部の間の比較研究は、全ての電気生理学的峡部が、マッピングされたVTの重大な峡部に関連付けられたことを、定量的な様式で実証することを可能にした。
【0116】
さらに、識別された41個の形態学的峡部のうち、21個(51.2%)は拡張期電位に対応する重大な電気生理学的峡部に、および13個(37.7%)は平均的拡張期に対応する電気生理学的峡部に対応し得る。
【0117】
この研究は、本発明の方法が、高い感度で峡部を識別するための信頼性のあるツールとして使用することができることを示す。峡部の形態学的情報は、アブレーションのために重大な区画をより良く標的化するための、電気生理学的峡部に対する補足として使用され得る。