(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】マルチモード共振OPO技術に基づくマルチ縦モード連続波出力を有する光源
(51)【国際特許分類】
G02F 1/39 20060101AFI20220905BHJP
【FI】
G02F1/39
(21)【出願番号】P 2020515686
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 US2018051401
(87)【国際公開番号】W WO2019060255
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-04-23
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514238250
【氏名又は名称】キオプティック フォトニクス ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,フランク
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0195333(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0058248(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0085632(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03096183(EP,A1)
【文献】特表2008-543073(JP,A)
【文献】国際公開第2012/126495(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03096182(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03176887(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第105514779(CN,A)
【文献】米国特許第07248397(US,B1)
【文献】Chen et al.,Singly resonant optical parametric oscillator synchronously pumped by frequency-doubled additive-pulse mode-locked Nd:YLF laser pulses,Journal of the Optical Society of America B,Optica Publishing Group,1995年11月,Vol.12, No. 11,pp.2192-2198,https://doi.org/10.1364/JOSAB.12.002192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
H01S 3/00-3/02
3/04-3/0959
3/098-3/102
3/105-3/131
3/136-3/213
3/23-4/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続波ポンプビームを生成するように構成されたポンプ光源と、
前記
連続波ポンプビームを受け取り、第1出力光ビーム及び第2出力光ビームを生成するように構成された結晶を含む光学キャビティを含む光パラメトリック発振器(OPO)であって、OPO発振閾値レベルを有するOPOと、を備える光源であって、
前記ポンプ光源は、前記OPOが広帯域及び/又はマルチモード発光を生成するように前記OPO発振閾値
レベルの約3倍を超えるパワーの前記ポンプビームを生成するように構成さ
れ、前記光学キャビティはマルチ縦共振モードで前記第1出力光ビームを共振するように構成されている、光源。
【請求項2】
前記ポンプ光源は、前記OPO発振閾値
レベルの約5倍を超えるパワーの前記ポンプビームを生成するように構成される、請求項1に記載の光源。
【請求項3】
共振OPO光波上に配置される縦モードスクランブル機構をさらに備える、請求項1に記載の光源。
【請求項4】
前記縦モードスクランブル機構は機械的スクランブル機構である、請求項
3に記載の光源。
【請求項5】
前記縦モードスクランブル機構は、ディザリングされた光学共振器長、キャビティ内エタロン、回折格子、及び非線形結晶のうちの1つ又は複数から選択され、前記縦モードスクランブル機構は、前記OPOの位相整合条件及び/又は波長依存利得若しくは損失を変調するように構成される、請求項
4に記載の光源。
【請求項6】
前記縦モードスクランブル機構は、キャビティ内電気光学位相変調器、キャビティ内電気光学エタロン、又は非線形結晶のうちの1つ又は複数から選択され、前記縦モードスクランブル機構は、前記OPOの非線形位相整合条件及び/又は波長依存利得若しくは損失を電気光学的に変調するように構成される、請求項
3に記載の光源。
【請求項7】
前記OPOの光学共振器内に第2非線形結晶をさらに含み、前記第2結晶は、
第二次高調波発生(SHG
)、
和周波発生(SFG
)、又はOPOプロセスのために構成される、請求項1に記載の光源。
【請求項8】
前記第2結晶は、300GHzより広い帯域幅を有する広帯域及び/又はマルチモード発光で追加的な波長範囲に前記光源がアクセスすることを可能にするように構成される、請求項
7に記載の光源。
【請求項9】
前記第2非線形結晶を励起するように構成される
第2ポンプ光源をさらに含む、請求項
7に記載の光源。
【請求項10】
光パラメトリック発振器(OPO)を利用して広帯域及び/又はマルチモード発光光源を製造する方法であって、
連続波ポンプビームを生成するように構成されたポンプ光源を提供することと、
前記ポンプ光源からの光を受け取り、第1出力光ビーム及び第2出力光ビームを生成するように構成された結晶を含む光学キャビティを含む光パラメトリック発振器(OPO)を提供することであって、前記OPOはOPO発振閾値レベルを有
し、共振OPO光波に対して縦モードスクランブルを行うことを含む、提供することと、
前記ポンプ光源でポンプビームを生成することであって、前記ポンプビームは前記OPO発振閾値の少なくとも約3倍のパワーを有する、生成することと、を含む方法。
【請求項11】
前記縦モードスクランブルを行うことは機械的に行われる、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記縦モードスクランブルを行うことは、前記OPOの光学共振器長をディザリングすること、OPOキャビティ内エタロンを提供すること、回折格子を提供すること、又は非線形結晶を提供することによって行われ、前記縦モードスクランブルを行うことは、前記OPOの位相整合条件及び/又は波長依存利得若しくは損失を変調する、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記縦モードスクランブルを行うことは、キャビティ内電気光学位相変調器、キャビティ内電気光学エタロン、又は非線形結晶を使用することによって行われ、前記縦モードスクランブルを行うことは、前記OPOの位相整合条件及び/又は波長依存利得若しくは損失を電気光学的に変調する、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記光学共振器内に第2非線形結晶を提供することをさらに含み、前記第2結晶は、
和周波発生、第二次高調波発生、及び光パラメトリック発振からなる群から選択される追加的
なプロセスを実行するように構成される、請求項
10に記載の方法。
【請求項15】
前記第2結晶は、300GHzより広い帯域幅を有する広帯域及び/又はマルチモード発光で追加的な波長範囲に前記光源がアクセスすることを可能にするように構成される、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
第2ポンプ光源を提供することと、前記第2非線形結晶を前記第2ポンプ光源で励起することと、をさらに含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
前記縦モードスクランブルは、前記光学キャビティのミラーを圧電素子に取り付けることを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年9月21日に出願された、“LIGHT SOURCE WITH MULTI-LONGITUDINAL MODE CONTINUOUS WAVE OUTPUT BASED ON MULTI-MODE RESONANT OPO TECHNOLOGY”と題する米国特許出願第62/561,428号及び2017年11月10日に出願された“LIGHT SOURCE WITH MULTI-LONGITUDINAL MODE CONTINUOUS WAVE OUTPUT BASED ON MULTI-MODE RESONANT OPO TECHNOLOGY”と題する米国特許出願第15/809,572号の利益を主張するものであり、両出願の全体を参照により本願に援用する。
【0002】
本発明は一般に、マルチ縦モード共振波を提供する光源に関し、より詳しくは、光パラメトリック発振器(OPO:optical parametric oscillator)を利用して広帯域発光スペクトルを生成する光源に関する。
【背景技術】
【0003】
光パラメトリック発振器(OPO)は、レーザのそれに匹敵する特性を有する放射を発する光源である。OPOは、短い波長のポンプ光子を2つのより長い波長の光子、すなわちシグナル及びアイドラ光子に分割する非線形デバイスである。シグナル及びアイドラ光子の波長は相互に独立しておらず、波長において調整されてよい。
【0004】
図1に示されるように、OPOは、周波数ω
pの入力レーザ波(「ポンプ光」)を、二次非線形光学相互作用を介して、より低い周波数(ω
s、ω
i)の2つの出力波に変換する。出力波の周波数の和は、入力波の周波数と等しい:ω
s+ω
i=ω
p。歴史的経緯から、より高い周波数ω
sの出力波はシグナルと呼ばれ、より低い周波数ω
iの出力波はアイドラと呼ばれる。OPOはすべての入力エネルギーをシグナルとアイドラに変換するわけではないため、残りのポンプ波も出力される。
【0005】
OPOは光共振器を必要とするが、レーザとは異なり、OPOは刺激された発光ではなく非線形結晶内の直接的な周波数変換に基づく。OPOは、入力光源(ポンプ光)に関するパワー閾値を示し、それ未満ではシグナル及びアイドラ帯域内の出力パワーは無視することができる。
【0006】
OPOは、光共振器(キャビティ)と非線形光学結晶を含む。光キャビティは、光波のための共振器を形成するミラー装置である。キャビティ内に拘束された光は複数回反射され、その結果、非線形結晶内にマルチパスができる。光キャビティは、シグナル及びアイドラ波の少なくとも一方を共振させる役割を果たす。非線形光学結晶内で、ポンプ光、シグナル、及びアイドラビームは重なる。
【0007】
従来のレーザは限定された固定波長を生成するが、OPOは、エネルギー及びモーメントの保存(位相整合による)によって特定されるシグナル及びアイドラの波長を広い範囲で変えることができるため、望ましいかもしれない。それゆえ、例えば中赤外、遠赤外、又はテラヘルツスペクトル域内の波長にアクセスすることができ、これらはレーザから得るのは難しいかもしれない。それに加えて、OPOは、例えば位相整合条件を変えることにより、広い波長可変性を可能にする。これによってOPOは、例えばレーザ分光にとって有益なツールとなる。
【0008】
それに加えて、スペクトルフィルタ処理されるプラズマ光源やスーパコンティニウム白色光レーザ等のこれまでの光源も利用することができるが、これらの光源には、光子(エネルギー)効率が低い(典型的に、1nmあたり数mWの出力パワー)という欠点がある。他方で、OPO/非線形光学系(NLO)技術は、それよりはるかに高いエネルギー効率を提供するかもしれず、狭帯域出力パワーはより大きく、50mWを超える。それゆえ、スーパコンティニウム及びプラズマ光源は広いスペクトルを生成し、そこから(より狭い帯域線幅を必要とする多くの用途のために)一部がカットオフされるが、OPOは調整可能な、比較的狭帯域の出力を生成することができる(そのため、フィルタ処理によるパワーの無駄がない)。したがって、業界では上述の欠点の1つ又は複数に対応する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明の実施形態は、OPO技術のほか、また別の潜在的なNLOプロセスに基づく連続波(cw)光源を提供する。特に、典型的なcw OPOデバイスは、単一縦モード共振波を有するが、本発明は、高出力可変波長広帯域光(短コヒーレンス)を提供するように構成される。本発明の実施形態によれば、OPOは、共振波のマルチモード動作を可能にするための閾値よりはるかに高く励起され、おそらくはラマン線も生成する。特に、本発明は、制御可能であり得るモードコンテンツ及び任意選択による縦モードスクランブルを有するマルチ縦モード(4モード以上)共振OPOを提供する。生成される高出力の共振波により、共振波のそれより短い波長でのマルチモードの生成及び/又は幅広化を実現する、さらに効率的なキャビティ内NLOミキシング(例えば、SHG、第二次高調波発生)が可能となる。
【0010】
1つの態様によれば、本発明は、ポンプビームを生成するように構成されたポンプ光源と、ポンプ光源からの光を受け取り、第1出力光ビーム及び第2出力光ビームを生成するように構成された結晶を含む光学キャビティを有するOPOと、を含み、OPOはOPO発振閾値レベルを有する光源を提供する。特に、ポンプ光源は、OPO発振閾値より十分に高いパワーのポンプビームを生成するように構成され、それにより、OPOが広帯域及び/又はマルチモード発光を生成する。
【0011】
この態様による実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含んでいてよい。ポンプ光源は、OPO発振閾値の約3倍を超えるパワーのポンプビームを生成するように構成されてよい。ポンプ光源は、OPO発振閾値の約5倍を超えるパワーのポンプビームを生成するように構成されてよい。光源は、共振OPO光波上に配置される縦モードスクランブル機構をさらに含んでいてよい。縦モードスクランブル機構は、機械的スクランブル機構であってよい。縦モードスクランブル機構は、ディザリングされた光学共振器長、キャビティ内エタロン、回折格子、及び非線形結晶のうちの1つ又は複数から選択されてよく、縦モードスクランブル機構は、OPOの位相整合条件及び/又は波長依存利得若しくは損失を変調するように構成される。縦モードスクランブル機構は、キャビティ内電気光学位相変調器、キャビティ内電気光学エタロン、又は非線形結晶のうちの1つ又は複数から選択されてよく、縦モードスクランブル機構は、OPOの非線形位相整合条件及び/又は波長依存利得若しくは損失を電気光学的に変調するように構成されてよい。光源は、光学共振器内に第2非線形結晶をさらに含んでいてよく、第2結晶は、追加的なSHG、SFG、又はOPOプロセスのために構成される。第2結晶は、300GHzより広い帯域幅を有する広帯域及び/又はマルチモード発光で追加的な波長範囲に光源がアクセスすることを可能にするように構成されてよい。第2ポンプ光源は、第2非線形結晶を励起するように構成されてよい。
【0012】
他の態様によれば、本発明は、光パラメトリック発振器(OPO)を利用して広帯域及び/又はマルチモード発光光源の製造方法を提供し、これは、ポンプビームを生成するように構成されたポンプ光源を提供することと、ポンプ光源からの光を受け取り、第1出力光ビーム及び第2出力光ビームを生成するように構成された結晶を含む光学キャビティを含む光パラメトリック発振器(OPO)を提供することであって、OPOはOPO発振閾値レベルを有する、提供することと、ポンプ光源でポンプビームを生成することであって、ポンプビームはOPO発振閾値の少なくとも約3倍のパワーを有する、生成することと、を含む。
【0013】
この態様による実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含んでいてよい。OPOは広帯域及び/又はマルチモード発光を生成し、方法は、共振OPO光波に対して縦モードスクランブルを行うことをさらに含む。縦モードスクランブルを行うことは、機械的に行われてよい。縦モードスクランブルを行うことは、OPOの光学共振器長をディザリングすること、OPOキャビティ内エタロンを提供すること、回折格子を提供すること、又は非線形結晶を提供することによって行われてよく、縦モードスクランブルを行うことは、OPOの位相整合条件及び/又は波長依存利得若しくは損失を変調する。縦モードスクランブルを行うことは、キャビティ内電気光学位相変調器、キャビティ内電気光学エタロン、又は非線形結晶を使用することによって行われてよく、縦モードスクランブルを行うことは、OPOの位相整合条件及び/又は波長依存利得若しくは損失を電気光学的に変調する。方法は、光学共振器の中に第2非線形結晶を提供することをさらに含んでいてよく、第2結晶は、追加的なSHG、SFG、又はOPOプロセスを実行するように構成される。第2結晶は、300GHzより広い帯域幅を有する広帯域及び/又はマルチモード発光で追加的な波長範囲に光源がアクセスすることを可能にするように構成されてよい。方法は、第2ポンプ光源を提供することと、第2非線形結晶を第2ポンプ光源で励起することと、をさらに含んでいてよい。
【0014】
本願の光源システムは、有利な点として、光を生成し、顕微鏡検査やバイオテックを含む様々な用途に利用することができるであろう。
【0015】
本発明のその他のシステム、方法、及び特徴は、当業者にとって、以下の図面と詳細な説明をよく参照すれば明らかであり、又は明らかとなるであろう。このような追加的なシステム、方法、及び特徴はすべて、本説明の中に含められ、本発明の範囲内であり、付属の特許請求の範囲により保護されるものとする。
【0016】
添付の図面は、本発明をさらに理解することができるようにするために含められており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本発明の実施形態を示しており、説明文と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。図面中の構成要素は必ずしも正確な縮尺によるとはかぎらず、代わりに本発明の原理を明確に示すことに重点が置かれている。図中、同様の構成要素の各々は同様の番号で示されている。明瞭化を目的として、すべての図面においてすべての構成要素に符号が付されていないこともあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、先行技術によるOPOの一般的概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態による高出力ポンプ光源により励起されるOPOの概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態による高出力ポンプ光源により励起されるOPOの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施形態による高出力ポンプ光源により励起されるOPOの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の定義は、本明細書中で開示される実施形態の特徴に適用される用語を理解するのに有益であり、本開示内の要素のみを定義するものである。特許請求の範囲内で使用される用語に対する限定は意図されず、又はそれにより導かれるべきでもない。付属の特許請求の範囲の中で使用される用語は、該当する技術におけるそのそれらの慣例的な意味によってのみ限定されるべきである。
【0019】
通常、2つ以上の縦モードを有する光源は、「マルチ縦モード」と呼ばれる。しかしながら、本開示内で使用されるかぎり、「マルチ縦モード」とは、3つを超える縦モードの数を指す。これに関して、2又は3のモード数は、「数個の単一モード」と呼ばれるかもしれない。
【0020】
本開示内で使用されるかぎり、「広帯域」とは300GHzを超える帯域幅を指し、それが複数の縦モード、単一の幅広線、又は分光分布により形成されるか否かを問わず、また縦モードスクランブルの前後の何れかを問わない。
【0021】
本開示内で使用されるかぎり、「縦モードスクランブル」とは、連続的な、又はホッピングを介した高速モード周波数チューニングの方法を指す。これに関して、「高速」モード周波数チューニングとは、ある用途について適時に分解可能なものより速いことを意味する。高速モード周波数チューニングの1例は、100Hzを超える繰返し率である(しかしながら、これは単なる例にすぎず、本発明における高速モード周波数チューニングへの言及は100Hzより高い値のみに限定されないと理解されたい)。
【0022】
本開示内で使用されるかぎり、OPOは一般に、パルスOPOではなく連続波OPO(cw-OPO)を指す。一般に、「連続波」又は「CW」とは、パルス状の出力ビームを有するqスイッチ、利得スイッチ、又はモードロックレーザではなく、連続的な出力ビームを生成するレーザを指し、これは「フリーランニング」と呼ばれることがある。
【0023】
本開示内で使用されるかぎり、「ミラー」とは、少なくとも1つの反射面を有する光学素子を指す。反射面は、1方向から受け取った光を反射するが、その他の方向から受け取った光は透過させるかもしれない。反射面は、ある波長を反射し、その他の波長を透過させるかもしれない。さらに、反射面はある波長を部分的に透過させ、部分的に反射するかもしれない。
【0024】
ここで、本発明の実施形態を詳しく見るが、その例が添付の図面に示されている。可能なかぎり、図面及び説明文中で、同じ又は同様の部品を指すために同じ参照番号が用いられている。
【0025】
一般に、本発明の実施形態は、特にマルチ縦共振モードOPOを使用することによって、広帯域レーザ放射を生成するための装置と方法を含む。これは、単一又は実質的に単一モードで共振するように特に構成された先行技術によるOPOと対照的である。本実施形態は、OPOを発振閾値よりはるかに高く励起することにより、所望の広帯域レーザ放射を実現する。このような広帯域線幅又はマルチモード光源は一般に、短いコヒーレンス長を有することが知られている。
【0026】
次に、図面の各種の図を参照するが、図中、同様の参照文字は同様の部品を指しており、
図2に本発明による光源の1つの実施形態が示されている。図に示すように、高出力ポンプ光源110はOPO 150を励起し、それが今度は放射スペクトルを生成する。例示的な実施形態によれば、高出力ポンプ光源110は、一般的な高出力レーザ又は増幅ダイオード若しくはレーザの形態であってもよい。本実施形態の光源は、OPO 150の発光スペクトルの全体がスペクトルの面で幅広化され、マルチモードであるように、構成される。これは、OPOに強制的にマルチモードで共振させることによって、及び/又はOPO 150を閾値よりはるかに高く励起して、マルチモードOPO発振を可能にすることでモードを幅広化することにより実現されてよい。このように、高出力ポンプ光源110は、共振OPO光波のマルチ縦モード動作を可能にするのに十分に高いパワーを送達するものであってよい。共振OPO光波を単一縦モードに保つために、従来のOPOは通常、OPO発振閾値の約2.5倍の最大ポンプパワーを使用する。本発明の実施形態によれば、マルチ縦モード共振OPO光波を生成するために、ポンプパワーは好ましくは、OPO発振閾値の約3倍を超える。好ましい実施形態によれば、ポンプパワーはOPO発振閾値の約3.5倍、より好ましくは約4倍、より好ましくは約5倍、さらにより好ましくは5倍超を超える。非限定的な例として、例示的なOPO発振閾値が約2Wであるとすると、2~5ワットを送達する高出力ポンプ光源は、共振波を単一縦モードのままとするかもしれず、それに対して、5ワットを超える高出力ポンプレベルでは、共振波はマルチ縦モード化及び/又は幅広化され始めるかもしれない。
【0027】
図2に示されるように、OPO 150は、OPO-プロセス用に構成されたNLO-結晶154の内部で生成された光波の少なくとも1つについて共振する光学共振器152を含む。モードの数と間隔を増大するために、実施形態では利得曲線の幅広化を考慮してもよい。特に、NLO-結晶154には、十分に広い位相整合帯域幅(例えば、十分に短いNLO-結晶を使用することにより実現される)と任意選択による特殊な形状の利得曲線(例えば、ビーム経路に沿ったマルチグレーティングを備える強誘電体でポーリングされたチャープOPO結晶又は強誘電体でポーリングされた結晶を使用することによる;代替的又は追加的に、ビーム伝搬方向に沿った温度勾配を結晶に適用してもよい)が設けられる。後者の選択肢では、発光スペクトルの詳細な形状の制御さえ可能となるかもしれない。例えば、チャープポーリングを有する結晶では、ポーリング期間はビーム伝搬に沿ってわずかに変化するかもしれず、その結果、OPOのための利得曲線の幅が広がる。ビーム経路に沿ったマルチグレーティングを有する結晶を使用すると、異なるポーリングセクションに関する利得曲線の重畳が生じる。例えば、1つの結晶は、より広い波長チューニングのために幾つかの平行チャープ又はマルチグレーティングエリアを含んでいるかもしれない。幾つかの実施形態において、チャープファンアウトグレーティングが使用されてもよく、これは、ビーム伝搬方向に沿って、及びそれに対して垂直に、ポーリング期間の長さが徐々に変化する。
【0028】
希望に応じて、共振波をスクランブルするための追加的なスクランブル手段158が提供されてもよい。例えば、このようなスクランブルは、共振器長さの高速変化又は波長選択素子(例えば、エタロン、回折格子等)に対する高速ディザリングにより実現されてもよい。OPOの利得曲線をさらに構造化するための1つの手段は例えば、厚いエタロンの使用である。追加的な縦モードスクランブルも考慮されてよい(例えば、キャビティ長又は有効なエタロン厚さ又は回折格子又は有効な強誘電体によるポーリング期間の長さの高速ディザリング)。「キャビティ長」の高速ディザリングは機械的に、例えばキャビティミラーの少なくとも1つを圧電素子に取り付けることによって行われてよく、又はこれは電気光学位相変調器を共振器の内部に挿入することによって行われてもよい。「有効なエタロン厚さ」の高速ディザリングは機械的に、例えば中空エタロンを圧電素子に取り付けることによって、又は中実エタロンを、その角度をディザリングする検流計に取り付けることによって行われてよく、又はこれは中実エタロンが製造されるかもしれない材料の電気光学特性を利用することによって行われてもよい。「回折格子」の高速ディザリングは機械的に、例えばそれを、その角度をディザリングする検流計に取り付けることによって行われてよい。「有効な強誘電体によるポーリング期間の長さ」は、マルチポーリング期間若しくはファンアウトポーリングデザインを有する結晶、又は並進方向に沿った温度勾配を有する分極結晶の高速並進によって機械的にディザリングされてよく、又はこれは非線形結晶の材料の電気光学特性を利用することによって行われてよく、どちらのタイプの方法でも、非線形位相整合条件が変調されるかもしれない。電気光学特性を有する光学材料の場合、屈折率nは、電気光学場を印加することにより素早く変化するかもしれない。すると、OPO 150は光を任意選択によるスペクトルフィルタ160に出力し、これはスペクトルの一部をフィルタ処理するか、スペクトル幅(OPO-出力に関する)を変化させるために使用されてよい。
【0029】
図3は、本発明による光源の他の実施形態を示す。この実施形態は
図2に示されるものと似ているが、追加的な波長範囲にアクセスするためのまた別のキャビティ内非線形周波数生成(例えば、SFG=和周波発生又はSGH=第二次高調波発生)プロセスを提供するための追加的なNLO(非線形光学)結晶156が追加されている。
図2に関して述べたように、高出力ポンプ光源110(例えば、一般的な高出力近赤外(NIR)レーザ又は増幅ダイオード若しくはレーザ)はOPO 250を閾値よりはるかに高く励起して、スペクトル幅が広げられた発光スペクトルを生成する。
【0030】
図2に関して説明した実施形態と同様に、
図3のOPOモジュール250は、NLO-結晶154の中で生成された光波の少なくとも1つについて共振する光学共振器152を含む。第2結晶156は、共振波に関わるSHG-及び/又はSFGプロセスのために構成されてよい。結晶154、156には十分に大きい位相整合帯域幅が設けられてよく、任意選択により、特殊な形状の利得曲線を有していてよい(例えば、チャープ強誘電体ポーリングOPO結晶又はビーム経路に沿ってマルチグレーティングを有する、強誘電体によりポーリングされた結晶を使用することによる)。希望に応じて、共振波をスクランブルするための追加的なスクランブル手段158が提供されてもよい。例えば、このようなスクランブルは、共振器長さの高速変化又は波長選択素子に対する高速ディザリングにより実現されてもよい。OPOの利得曲線をさらに構造化するための1つの手段は例えば、厚いエタロンの使用である。追加的な縦モードスクランブルも考慮されてよい(例えば、キャビティ長又は有効なエタロン厚さ又は回折格子又は有効な強誘電体によるポーリング期間の長さの高速ディザリング)。「キャビティ長」の高速ディザリングは機械的に、例えばキャビティミラーの少なくとも1つを圧電素子に取り付けることによって行われてよく、又はこれは電気光学位相変調器を共振器の内部に挿入することによって行われてもよい。「有効なエタロン厚さ」の高速ディザリングは機械的に、例えば中空エタロンを圧電素子に取り付けることによって、又は中実エタロンを、その角度をディザリングする検流計に取り付けることによって行われてよく、又はこれは中実エタロンが製造されるかもしれない材料の電気光学特性を利用することによって行われてもよい。「回折格子」の高速ディザリングは機械的に、例えばそれを、その角度をディザリングする検流計に取り付けることによって行われてよい。「有効な強誘電体によるポーリング期間の長さ」は、マルチポーリング期間若しくはファンアウトポーリングデザインを有する結晶、又は並進方向に沿った温度勾配を有する分極結晶の高速並進によって機械的にディザリングされてよく、又はこれは非線形結晶が製造されるかもしれない材料の電気光学特性を利用することによって行われてよく、どちらのタイプの方法でも、非線形位相整合条件が変調されるであろう。電気光学特性を有する光学材料の場合、屈折率nは、電気光学場を印加することにより素早く変化するかもしれない。すると、OPO 250は光を任意選択によるスペクトルフィルタ160に出力し、これはスペクトルの一部をフィルタ処理するか、スペクトル幅(OPO-/SFG-/SHG-出力に関する)を変化させるために使用されてよい。
【0031】
図4は、本発明による光源の他の実施形態を示す。
図3とは異なり、1つのSFGプロセスには共振OPO光波と第2光源120が関わるかもしれない。このSFG出力はまた、より短いコヒーレンス長を有するかもしれず、これは、共振OPO光波が幅広化されるからである。
図2及び3に関して述べたように、高出力ポンプ光源110はOPO 250を閾値よりはるかに高く励起して、広帯域発光スペクトルを生成する。
【0032】
図3に関して説明した実施形態と同様に、
図4のOPO モジュール250は、少なくともNLO-結晶154の内部で生成された光波のうちの1つについて共振する光学共振器152を含む。第2結晶156は、共振波に関わるSHG-及び/又はSFGプロセスのために構成されてよい。SFG-プロセスには、共振波と第2光源120が関わるかもしれない。結晶154、156には十分に大きい位相整合帯域幅が設けられてよく、任意選択により、特殊な形状の利得曲線を有していてよい(例えば、チャープOPO結晶又はビーム経路に沿ってマルチグレーティングを有する結晶を使用することによる)。希望に応じて、共振波をスクランブルするための追加的なスクランブル手段158が提供されてもよい。例えば、このようなスクランブルは、共振器長さの高速変化又は波長選択素子に対する高速ディザリングにより実現されてもよい。OPOの利得曲線をさらに構造化するための1つの手段は例えば、厚いエタロンの使用である。追加的な縦モードスクランブルも考慮されてよい(例えば、キャビティ長又は有効なエタロン厚さ又は回折格子又は有効な強誘電体によるポーリング期間の長さの高速ディザリング)。すると、OPO 250は光を任意選択によるスペクトルフィルタ160に出力し、これはスペクトルの一部をフィルタ処理するか、スペクトル幅(OPO-/SFG-/SHG-出力に関する)を変化させるために使用されてよい。
【0033】
このように、本発明は、短いコヒーレンス長の、巨視的パワーの波長可変光を生成することができる光源を提供する。特に、高出力レベルのポンプ光源は、OPOをOPO発振閾値レベルよりはるかに高いパワーで励起するために利用される。その結果、OPOは2つの新たな光波を生成し、これらは一般にシグナル及びアイドラと呼ばれる。OPOキャビティは、これら2つの新たな光波の少なくとも一方について共振する。実施形態によれば、入力ポンプパワーは、共振波がマルチ縦モードとなり、及び/又は広い線幅を許容するのに十分に大きい。OPOには、広い位相整合帯域幅と幅広化された利得曲線を有する(例えば、チャープ強誘電体ポーリングによるか、複数のポーリング結晶チップを使用することにより複数の利得ピークを有する)NLO結晶が設けられる。光源は、任意選択によりその他の素子、例えばさらに利得を整形するための厚いエタロンを含んでいてよい。希望に応じて、縦モードスクランブルによる追加的な幅広化が行われてもよい(例えば、キャビティのディザリング又はエタロンのディザリング又は回折格子のディザリング又は結晶ポーリング期間のディザリングによる)。追加的なキャビティ内NLOプロセス(例えば、共振波のSHG又は共振波のSFG)により、任意選択で、異なる波長を効率的に生成してよい。このようにして、マルチモード(4モード以上)でのcw-OPO共振が提供される。本発明によれば、共振OPO-光波が関わるあらゆる生成が、キャビティ内共振波の高いパワーにより非常に効率的である。例えば、一部のOPOについて、共振OPO光波のパワーレベルは10W、100W、さらには1000Wを超えるかもしれない。有利な点として、本発明の光源は、VIS/IR波長範囲の放射を効率的に生成することができる。このような光源システムは、顕微鏡検査及びバイオテックを含む用途に適した光を生成することができる。
【0034】
上記を考慮し、本発明は、本発明の改良や変形型も、これらが後述の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に含まれるかぎり、カバーするものとする。