(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】レールの製造方法及び対応するレール
(51)【国際特許分類】
C21D 8/00 20060101AFI20220905BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20220905BHJP
C22C 38/38 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
C21D8/00 A
C22C38/00 301Z
C22C38/38
(21)【出願番号】P 2020528938
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 IB2018059349
(87)【国際公開番号】W WO2019102439
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-07-21
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2017/057424
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アランコン・アルバレス,ホセ
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス・ディエス,ダビド
(72)【発明者】
【氏名】アルティメス・エンシナ,ホセ・マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア・カバジェロ,フランシスカ
(72)【発明者】
【氏名】ポウ,バンジャマン
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-152520(JP,A)
【文献】特開2002-363697(JP,A)
【文献】特表平11-502564(JP,A)
【文献】特開2002-235150(JP,A)
【文献】特開2002-363698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 8/00
C22C 38/00-38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドを備えるレールを製造する方法であって、以下の連続するステップ:
半製品を得るように鋼を鋳造するステップであって、前記鋼は、重量パーセントで、
0.20%≦C≦0.60%、
1.0%≦Si≦2.0%、
0.60%≦Mn≦1.60%、
及び0.5≦Cr≦2.2%、
並びに任意選択的に
0.01%≦Mo≦0.3%、
0.01%≦V≦0.30%
の中から選択される1種以上の元素を含む化学組成を有し;
残りは鉄及び製錬に起因する不可避の不純物である、ステップ;
前記半製品を熱間圧延して、前記レールの形状を有し、ヘッドを備え、最終圧延温度T
FRTがAr3より高い熱間圧延半製品にするステップ;
時間の経過に伴う前記熱間圧延半製品の前記ヘッドの温度が上限と下限との間に含まれるように、前記熱間圧延半製品の前記ヘッドを前記最終圧延温度T
FRTから200℃~520℃の間に含まれる冷却停止温度T
CSまで冷却するステップであって、前記上限は、A1(0秒、780℃)、B1(50秒、600℃)、及びC1(110秒、520℃)で規定される時間及び温度の座標を有し、前記下限は、A2(0秒、675℃)、B2(50秒、510℃)、及びC2(110秒、300℃)で規定される時間及び温度の座標を有する、ステップ;
少なくとも12分の保持時間t
holdの間、前記熱間圧延半製品の前記ヘッドを300℃~520℃の間に含まれる温度範囲内に維持するステップ;並びに
前記熱間圧延半製品を室温まで冷却して、前記レールを得るステップ
を含み、
前記レールの前記ヘッドが、少なくとも1300MPaの引張強度、少なくとも1000MPaの降伏強度、少なくとも13%の全伸び、及びEN13674-1:2011の9.1.8項に準拠して評価した、ヘッドの転動面で、少なくとも420HBの硬度を有する、
方法。
【請求項2】
前記レールの前記ヘッドの微細構造が、面積分率で、
49%~67%のベイナイト;
14%~25%の残留オーステナイト;
13%~34%の焼戻しマルテンサイト
からなり、
残留オーステナイトは、
重量%で、0.80%~1.44%の間に含まれる平均炭素含有量を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヘッドの微細構造におけるベイナイトの前記面積分率が、56%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘッドの微細構造における残留オーステナイトの前記面積分率が、18%~23%の間に含まれる、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヘッドの微細構造における焼戻しマルテンサイトの前記面積分率が、14.5%~22.5%の間に含まれる、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記残留オーステナイト中の前記平均炭素含有量が、
重量%で、1.3%より高い、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記冷却停止温度T
CSが、300℃~520℃の間に含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱間圧延半製品の前記ヘッドを冷却するステップが、ウォータージェットを介して実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記熱間圧延半製品の前記ヘッドを冷却するステップの間、時間の経過に伴う前記熱間圧延半製品の温度が前記上限と前記下限との間に含まれるように、熱間圧延半製品全体が冷却される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記半製品を熱間圧延するステップの間、前記半製品が、1080℃より高い熱間圧延開始温度から熱間圧延される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記熱間圧延開始温度が、1180℃より高い、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記鋼の化学組成が、0.30%≦C≦0.60%を含み、含有量は重量パーセントで表される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記鋼の化学組成が、1.25%≦Si≦1.6%を含み、含有量は重量パーセントで表される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記鋼の化学組成が、1.09%≦Mn≦1.5%を含み、含有量は重量パーセントで表される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
重量パーセントで、
0.20%≦C≦0.60%、
1.0%≦Si≦2.0%、
0.60%≦Mn≦1.60%、
及び0.5≦Cr≦2.2%、
並びに任意選択的に
0.01%≦Mo≦0.3%、
0.01%≦V≦0.30%
の中から選択される1種以上の元素を含む化学組成を有し;
残りは鉄及び製錬に起因する不可避の不純物である鋼で作製された鋼製レールであって、
面積分率で、
49%~67%のベイナイト、
14%~25%の残留オーステナイト、
13~34%の焼戻しマルテンサイト
からなり、
残留オーステナイトは、
重量%で、0.80%~1.44%の間に含まれる平均炭素含有量を有する、
微細構造を有するヘッドを備え、
前記レールの前記ヘッドが、少なくとも1300MPaの引張強度、少なくとも1000MPaの降伏強度、少なくとも13%の全伸び、及びEN13674-1:2011の9.1.8項に準拠して評価した、ヘッドの転動面で、少なくとも420HBの硬度を有する、
鋼製レール。
【請求項16】
前記レールの前記ヘッドの微細構造におけるベイナイトの前記面積分率が、56%より高い、請求項15に記載の鋼製レール。
【請求項17】
前記レールの前記ヘッドの微細構造における残留オーステナイトの前記面積分率が、18%~23%の間に含まれる、請求項15又は16に記載の鋼製レール。
【請求項18】
前記レールの前記ヘッドの微細構造における焼戻しマルテンサイトの前記面積分率が、14.5%~22.5%の間に含まれる、請求項15から17のいずれか一項に記載の鋼製レール。
【請求項19】
前記残留オーステナイト中の前記平均炭素含有量が、
重量%で、1.3%より高い、請求項15から18のいずれか一項に記載の鋼製レール。
【請求項20】
前記鋼の化学組成が、0.30%≦C≦0.6%を含み、含有量は重量パーセントで表される、請求項15から19のいずれか一項に記載の鋼製レール。
【請求項21】
前記鋼の化学組成が、1.25%≦Si≦1.6%を含み、含有量は重量パーセントで表される、請求項15から20のいずれか一項に記載の鋼製レール。
【請求項22】
前記鋼の化学組成が、0.9%≦Mn≦1.5%を含み、含有量は重量パーセントで表される、請求項15から21のいずれか一項に記載の鋼製レール。
【請求項23】
前記レールの前記ヘッドが、EN13674-1:2011の9.1.8項に準拠して評価した、ヘッドの転動面で、420HB~470HBの間に含まれる硬度を有する、請求項15から22のいずれか一項に記載の鋼製レール。
【請求項24】
前記レールの前記ヘッドが、EN13674-1:2011の9.1.8項に準拠して評価した、ヘッドの転動面で、少なくとも430HBの硬度を有する、請求項15から23のいずれか一項に記載の鋼製レール。
【請求項25】
前記レールの前記ヘッドが、1300MPa~1452MPaの間に含まれる引張強度を有する、請求項15から24のいずれか一項に記載の鋼製レール。
【請求項26】
前記レールの前記ヘッドが、1000MPa~1150MPaの間に含まれる降伏強度を有する、請求項15から25のいずれか一項に記載の鋼製レール。
【請求項27】
前記レールの前記ヘッドが、13%~18%の間に含まれる全伸びを有する、請求項15から26のいずれか一項に記載の鋼製レール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた機械的特性及び摩耗及び転がり接触疲労抵抗を有する鋼製レールを製造する方法、並びに対応する鋼製レールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道輸送を改善するために列車の速度及び荷重が増加しており、接触応力は2000MPaを超えることもある。これらのより過酷な運転条件では、特に大型産業鉄道の交通において、より高い摩耗及び転がり接触疲労抵抗を有する新たなレールが必要である。
【0003】
摩耗及び転がり接触疲労(RCF)は、線路の故障の遅延をもたらす可能性がある2つの重要な因子である。摩耗のメカニズムは十分に研究され、よく理解されており、摩耗は現在鉄道システムで管理されているが、RCFは、進行性の劣化及び早期のレールのメンテナンス原因となるRCF欠陥の形成を防ぐための効率的な解決策がまだ十分に理解されていない。
【0004】
摩耗及びRCFに対処するための新たなレール鋼の開発に対する従来のアプローチは、鋼の硬度及び強度を増加させることであった。鉄道用の従来のパーライトグレードの場合、この強度増加は過去40年間に、層間の間隔を狭めるか、高価な合金元素を追加するか、又はヘッドの硬化によって達成されてきた。それにもかかわらず、耐摩耗性のこの増加は一般に靭性の減少を伴う。前述の課題は、強化された機械的特性を備えた新たな微細構造を開発するために行われた全ての研究にもかかわらず、パーライト鋼グレードは摩耗及び転がり接触疲労性能の点ですでに限界に達していることを示しており、これは、既存の鉄道グレードでは最も要求の厳しい運転中の状況に対処しきれないことを意味する。
【0005】
例えばより低いベイナイト微細構造を含むベイナイト鋼は、硬度、強度、及び靭性の優れた組み合わせにより、次世代の先進高強度鋼並びに大型レール及び踏切の候補材料と見なされてきた。
【0006】
より低いベイナイト微細構造を含むベイナイト鋼は、良好な耐摩耗性を提供するが、十分なRCF耐性が達成されない。
【0007】
特に、WO1996022396A1は、高強度の摩耗及び転がり接触疲労抵抗性レールを製造する方法を開示している。レールは、0.05%~0.5%のC、1.00%~3.00%のSi及び/又はAl、0.50%~2.50%のMn並びに0.25%~2.50%のCrを含む組成を有する鋼から製造される。レールは、仕上げの熱間圧延温度から鋼を空冷することによって製造される。
【0008】
EP1873262は、0.3%~0.4%のC、0.7%~0.9%のSi、0.6%~0.8%のMn及び2.2%~3.0%のCrを含む鋼から、高強度ガイドレールを製造する方法を開示している。製造方法は、ベイナイト構造の形成後に鋼を空冷することを含む。しかしながら、EP1873262は、特定の冷却速度を教示していない。
【0009】
EP0612852、US2015218759及びUS201514702188は、加速冷却によりベイナイトレールを製造する方法を開示している。ただし、これらのレールは十分な転がり接触疲労抵抗を示さない。
【0010】
したがって、鋼製レールを製造することが依然として望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第96/022396号
【文献】欧州特許出願公開第1873262号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0612852号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/218759号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/14702188号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、優れた転がり接触疲労抵抗及び耐摩耗性を有する高性能レールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特に、レールヘッドが少なくとも1300MPaの引張強度、少なくとも1000MPaの降伏強度、少なくとも13%の全伸び、及び少なくとも420HB、好ましくは少なくとも430HBの硬度と共に、優れた転がり接触疲労抵抗及び耐摩耗性を有する鋼製レールを製造することが望ましい。
【0014】
この目的のために、本発明は、ヘッドを備えるレールを製造する方法に関し、方法は、以下の連続するステップ:
-半製品を得るように鋼を鋳造するステップであって、前記鋼は、重量パーセントで、
0.20%≦C≦0.60%、
1.0%≦Si≦2.0%、
0.60%≦Mn≦1.60%、
及び0.5≦Cr≦2.2%、
並びに任意選択的に
0.01%≦Mo≦0.3%、
0.01%≦V≦0.30%
の中から選択される1種以上の元素を含む化学組成を有し;
残りは鉄及び製錬に起因する不可避の不純物である、ステップ;
-半製品を熱間圧延して、レールの形状を有し、ヘッドを備え、最終圧延温度TFRTがAr3より高い熱間圧延半製品にするステップ;
-時間の経過に伴う熱間圧延半製品のヘッドの温度が上限と下限との間に含まれるように、熱間圧延半製品のヘッドを最終圧延温度TFRTから200℃~520℃の間に含まれる冷却停止温度TCSまで冷却するステップであって、上限は、A1(0秒、780℃)、B1(50秒、600℃)、及びC1(110秒、520℃)で規定される時間及び温度の座標を有し、下限は、A2(0秒、675℃)、B2(50秒、510℃)、及びC2(110秒、300℃)で規定される時間及び温度の座標を有する、ステップ;
-少なくとも12分の保持時間tholdの間、熱間圧延半製品のヘッドを300℃~520℃の間に含まれる温度範囲内に維持するステップ;並びに
-熱間圧延半製品を室温まで冷却して、レールを得るステップ
を含む。
【0015】
レールを製造する方法は、技術的に可能な組み合わせと共に、又はそれに従って、以下の特徴の1つ以上をさらに含んでもよい:
-レールのヘッドの微細構造が、表面分率で、
-49%~67%のベイナイト;
-14~25%の残留オーステナイトであって、0.80%~1.44%の間に含まれる平均炭素含有量を有する残留オーステナイト;
-13%~34%の焼戻しマルテンサイト
からなる;
-ヘッドの微細構造におけるベイナイトの表面分率が、56%以上である;
-ヘッドの微細構造における残留オーステナイトの表面分率が、18%~23%の間に含まれる;
-ヘッドの微細構造における焼戻しマルテンサイトの表面分率が、14.5%~22.5%の間に含まれる;
-残留オーステナイト中の平均炭素含有量が、1.3%より高い;
-冷却停止温度TCSが、300℃~520℃の間に含まれる;
-冷却停止温度TCSが、200℃~300℃の間に含まれ、方法が、熱間圧延半製品のヘッドを冷却停止温度TCSまで冷却するステップの後、及びヘッドを温度範囲内に維持するステップの前に、熱間圧延半製品のヘッドを300℃~520℃の間に含まれる温度に加熱するステップをさらに含む;
-熱間圧延半製品のヘッドを冷却するステップが、ウォータージェットを介して実行される;
-熱間圧延半製品のヘッドを冷却するステップの間、時間の経過に伴う熱間圧延半製品の温度が上限と下限との間に含まれるように、熱間圧延半製品全体が冷却される;
-半製品を熱間圧延するステップの間、半製品が1080℃より高い、好ましくは1180℃より高い熱間圧延開始温度から熱間圧延される;
-鋼の化学組成が、0.30%≦C≦0.60%を含み、含有量は重量パーセントで表される;
-鋼の化学組成が、1.25%≦Si≦1.6%を含み、含有量は重量パーセントで表される;並びに
-鋼の化学組成が、1.09%≦Mn≦1.5%を含み、含有量は重量パーセントで表される。
【0016】
本発明はまた、重量パーセントで、
0.20%≦C≦0.60%、
1.0%≦Si≦2.0%、
0.60%≦Mn≦1.60%、
及び0.5≦Cr≦2.2%、
並びに任意選択的に
0.01%≦Mo≦0.3%、
0.01%≦V≦0.30%
の中から選択される1種以上の元素を含む化学組成を有し;
残りは鉄及び製錬に起因する不可避の不純物である熱間圧延鋼部品に関し、鋼製レールは、表面分率で、
49%~67%のベイナイト、
14%~25%の残留オーステナイトであって、0.80%~1.44%の間に含まれる平均炭素含有量を有する残留オーステナイト、及び
13~34%の焼戻しマルテンサイト
からなる微細構造を有するヘッドを備える。
【0017】
熱間圧延鋼部品は、技術的に可能な組み合わせと共に、又はそれに従って、以下の特徴の1つ以上をさらに含んでもよい:
-レールのヘッドの微細構造におけるベイナイトの表面分率が、56%より高い;
-レールのヘッドの微細構造における残留オーステナイトの表面分率が、18%~23%の間に含まれる;
-レールのヘッドの微細構造における焼戻しマルテンサイトの表面分率が、14.5%~22.5%の間に含まれる;
-残留オーステナイト中の平均炭素含有量が、1.3%より高い;
-鋼の化学組成が、0.30%≦C≦0.6%を含み、含有量は重量パーセントで表される;
-鋼の化学組成が、1.25%≦Si≦1.6%を含み、含有量は重量パーセントで表される;
-鋼の化学組成が、0.9%≦Mn≦1.5%を含み、含有量は重量パーセントで表される、;
-レールのヘッドが、420HB~470HBの間に含まれる、好ましくは450HBより高い硬度を有する;
-レールのヘッドが、1300MPa~1450MPaの間に含まれる引張強度を有する;
-レールのヘッドが、1000MPa~1150MPaの間に含まれる降伏強度を有する;及び
-レールのヘッドが、13%~18%の間に含まれる全伸びを有する。
【0018】
本発明の他の態様及び利点は、例として与えられ、添付の図面を参照してなされる以下の説明を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】時間の経過に伴うヘッドを冷却するステップ中の温度の上限及び下限を示すグラフである。
【
図3】温度の関数としての3つの試料の熱膨張係数の線形熱膨張係数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によるレール10の実施形態が
図1に示されている。
【0021】
レール10は、ヘッド12及びフット14を備え、フット14及びヘッド12は、支持体16を介して互いに接続されている。
【0022】
図1に示すように、支持体16は、ヘッド12の最大幅よりも厳密に小さい最大幅を有し、特に、ヘッド12の最大幅よりも少なくとも50%小さい。
【0023】
同様に、支持体の最大幅は、フットの最大幅よりも厳密に小さく、特にフットの最大幅よりも少なくとも50%小さい。
【0024】
ヘッド12、フット14及び支持体16は一体形成されている。
【0025】
レール10、特にレール10のヘッド12は、重量パーセントで、
0.20%≦C≦0.60%、より具体的には0.30%≦C≦0.60%、
1.0%≦Si≦2.0%、好ましくは1.25%≦Si≦1.6%
0.60%≦Mn≦1.60%、好ましくは1.09%≦Mn≦1.5%、
及び0.5≦Cr≦2.2%、
並びに任意選択的に
0.01%≦Mo≦0.3%、
0.01%≦V≦0.30%
の中から選択される1種以上の元素を含む化学組成を有し;
残りは鉄及び製錬に起因する不可避の不純物である鋼から製造される。
【0026】
この合金では、炭素は、鋼の望ましい微細構造及び特性を制御及び調整する主な効果を有する合金元素である。炭素は、オーステナイトを安定化させ、したがって室温でもその保持をもたらす。さらに、炭素は、優れた延性及び耐衝撃性と組み合わせて優れた機械的耐性及び望ましい硬度を達成するのを可能にする。
【0027】
0.20重量%未満の炭素含有量は、十分に安定していない残留オーステナイトの形成、不十分な硬度及び引張強度、並びに不十分な転がり接触疲労抵抗及び耐摩耗性をもたらす。炭素含有量が0.60%を超えると、中心偏析の出現により鋼の延性及び耐衝撃性が低下する。したがって、炭素含有量は、0.20重量%~0.60重量%の間に含まれる。
【0028】
炭素含有量は、好ましくは、0.30重量%~0.60重量%の間に含まれる。
【0029】
ケイ素含有量は、1.0重量%~2.0重量%の間に含まれる。セメンタイトに溶解しない元素であるSiは、特にベイナイト形成中の炭化物の析出を防止又は少なくとも遅延させ、残留オーステナイトへの炭素の拡散を可能にし、したがって残留オーステナイトの安定化に有利である。Siは、固溶体硬化により鋼の強度をさらに高める。1.0重量%未満のケイ素では、これらの効果は十分に顕著ではない。2.0重量%を超えるケイ素含有量では、耐衝撃性は、大きなサイズの酸化物の形成によって悪影響を受ける可能性がある。さらに、Si含有量が2.0重量%を超えると、鋼の表面品質が低下する可能性がある。
【0030】
好ましくは、Si含有量は、1.25重量%~1.6重量%の間に含まれる。
【0031】
マンガン含有量は、0.60重量%~1.60重量%の間、好ましくは1.09重量%~1.5重量%の間に含まれる。Mnは、微細構造を制御し、オーステナイトを安定させる重要な役割を有する。ガンマ形成元素として、Mnはオーステナイトの変態温度を低下させ、オーステナイトへの炭素溶解度を増加させることで炭素濃縮の可能性を高め、パーライト形成を遅らせるため冷却速度の適用範囲を拡大する。Mnは固溶体硬化により材料の強度をさらに高め、構造を微細化する。0.6重量%未満では、これらの効果は十分に顕著ではない。1.6%を超える含有量では、Mnにより形成されるマルテンサイトの割合が多すぎ、生成物の延性に悪影響を及ぼす。
【0032】
クロム含有量は、0.5~2.2重量%の間に含まれる。Crは、残留オーステナイトの安定化に有効であり、その所定量を確保する。Crはまた、鋼の強化にも役立つ。しかしながら、Crは主にその硬化作用のために添加される。Crは低温変態相の成長を促進し、広範囲の冷却速度で目的の微細構造を得ることができる。0.5%未満の含有量では、これらの効果は十分に顕著ではない。2.2%を超える含有量では、Crにより形成されるマルテンサイトの割合が多すぎ、生成物の延性に悪影響を及ぼす。さらに、2.2%を超える含有量では、Cr添加は不必要に高価になる。
【0033】
存在する場合、モリブデン含有量は、0.01重量%~0.3重量%の間に含まれる。本発明の鋼において、Moは、不純物として一般に少なくとも0.01%の含有量で存在してもよく、又は任意の添加として添加されてもよい。添加される場合、Mo含有量は、好ましくは少なくとも0.10%である。Moを添加すると、鋼の焼入性が向上し、この構造が出現する温度を下げることで下部ベイナイトの形成がさらに促進され、下部ベイナイトは鋼の良好な耐衝撃性をもたらす。しかしながら、0.3重量%を超える含有量では、Moは、この同じ耐衝撃性に悪影響を及ぼし得る。さらに、0.3%を超えると、Mo添加は不必要に高価になる。
【0034】
存在する場合、バナジウム含有量は、0.01%~0.30%の間に含まれる。バナジウムは、強化及び精製元素として任意選択的に添加される。添加される場合、V含有量は、好ましくは少なくとも0.10%である。0.10%未満では、機械的特性に有意な影響は見られない。0.30%を超えると、本発明による製造条件下では、機械的特性に対する効果の飽和が見られる。Vを添加しない場合、Vは、一般に少なくとも0.01%の含有量で不純物として存在する。
【0035】
組成物の残りは、鉄及び不可避の不純物である。この点で、ニッケル、リン、硫黄、窒素、酸素及び水素が、不可避の不純物である残留元素と見なされる。したがって、それらの含有量は、最大0.05%のNi、最大0.025%のP、最大0.020%のS、最大0.009%のN、最大0.003%のO、及び最大0.0003%のHである。
【0036】
レール10、特にレール10のヘッド12は、表面分率で、
-49%~67%のベイナイト、
-14%~25%の残留オーステナイト、及び
-13%~34%の焼戻しマルテンサイト
からなる微細構造を有する。
【0037】
ベイナイトは、粒状ベイナイト及びラス様炭化物を含まないベイナイトを含み得る。本発明の枠組みにおいて、炭化物を含まないベイナイトは、100平方マイクロメートルの表面単位当たり100未満の炭化物を含有するベイナイトを表す。
【0038】
好ましくは、ヘッド12の微細構造におけるベイナイトの表面分率は、56%以上である。
【0039】
残留オーステナイト及び焼戻しマルテンサイトは、一般に、ベイナイトのラス又はプレートの間にあるM/A構成成分として存在する。
【0040】
オーステナイトはまた、ベイナイトのラス又はプレート間のベイナイトにも含まれる。
【0041】
残留オーステナイトは、0.83%~1.44%の間に含まれる、好ましくは1.3%を超える平均炭素含有量を有する。
【0042】
好ましくは、ヘッド12の微細構造中の残留オーステナイトの表面分率は、18%~23%の間に含まれる。
【0043】
焼戻しマルテンサイトは、ベイナイトのラス又はプレート間のベイナイト、及びM/A成分に含まれる。
【0044】
マルテンサイトは焼戻しマルテンサイトであり、好ましくは自己焼戻しマルテンサイトである。一般に、焼戻しマルテンサイトは、低い炭素含有量、すなわち鋼の平均C含有量よりも厳密に低い平均C含有量を有する。
【0045】
好ましくは、ヘッド12の微細構造における焼戻しマルテンサイトの表面分率は、14.5%~22.5%の間に含まれる。
【0046】
レール10のヘッド12は、少なくとも420HB、一般に430HB~470HBの間に含まれる硬度、少なくとも1300MPa、一般に1300MPa~1450MPaの間に含まれる引張強度、少なくとも1000MPa、一般に1000MPa~1150MPaの間に含まれる降伏強度、及び少なくとも13%、一般に13%~18%の間に含まれる全伸びを有する。
【0047】
本発明によるレール10の製造は、任意の適切な方法によって行うことができる。
【0048】
そのようなレールを製造するための好ましい方法は、半製品を得るように鋼を鋳造するステップを含み、前記鋼は上記の化学組成を有する。
【0049】
この方法はさらに、半製品を熱間圧延して、レール10の形状を有し、Ar3より高い最終圧延温度TFRTを有するヘッド12を備える熱間圧延半製品にするステップを含む。
【0050】
好ましくは、半製品を熱間圧延するステップの間、半製品は、1080℃より高い、好ましくは1180℃より高い熱間圧延開始温度から熱間圧延される。
【0051】
例えば、熱間圧延の前に、半製品は、1150℃~1270℃の間に含まれる温度に再加熱され、次いで熱間圧延される。
【0052】
熱間圧延が終了した後、レール10は、好ましくは誘導炉全体に通される。これにより、オーステナイト分解が回避され得る。
【0053】
次いで、レール10を製造する方法は、
図2に示されるように、時間の経過に伴う熱間圧延半製品のヘッド12の温度が上限と下限との間に含まれるように、熱間圧延半製品のヘッド12を最終圧延温度T
FRTから200℃~520℃の間に含まれる冷却停止温度T
CSまで冷却するステップを含み、上限は、A1(0秒、780℃)、B1(50秒、600℃)、及びC1(110秒、520℃)で規定される時間及び温度の座標を有し、下限は、A2(0秒、675℃)、B2(50秒、510℃)、及びC2(110秒、300℃)で規定される時間及び温度の座標を有する。
【0054】
冷却停止温度TCSは、冷却を停止する温度である。
【0055】
第1の実施形態において、冷却停止温度TCSは、300℃~520℃の間に含まれる。
【0056】
この実施形態では、ヘッドは、上で規定された点C1とC2との間に含まれる点に到達する前又は後に冷却停止温度TCSに到達することができる。
【0057】
第2の実施形態において、冷却停止温度TCSは、200℃~300℃の間に含まれる。この実施形態では、冷却中に、点C1とC2との間に含まれる点に達した後、ヘッド12はさらに冷却停止温度TCSまで冷却される。冷却停止温度TCSへの冷却中に、オーステナイトのベイナイト及びマルテンサイトへの部分的な変態が生じる。
【0058】
時間の経過に伴う熱間圧延半製品のヘッド12が、その温度が上限よりも高くなるように冷却される場合、フェライト及びパーライトが形成され、炭化物が冷却時に析出し、その結果所望の構造が得られない。
【0059】
時間の経過に伴う熱間圧延半製品のヘッド12が、その温度が下限よりも低くなるように冷却される場合、高すぎるマルテンサイト分率及び不十分なベイナイト分率が得られる。
【0060】
より具体的には、熱間圧延半製品のヘッド12を冷却するステップの間、時間の経過に伴う熱間圧延半製品の温度が上限と下限との間に含まれるように、熱間圧延半製品全体が冷却される。
【0061】
熱間圧延半製品のヘッド12を冷却するステップは、好ましくは、ウォータージェットを介して行われる。そのようなウォータージェットにより、速い冷却速度、並びに制御された放熱及び回復温度が達成され得る。
【0062】
この冷却ステップの後、方法は、少なくとも12分の保持時間tholdの間、熱間圧延半製品のヘッド12を300℃~520℃の間に含まれる温度範囲内に維持するステップを含み、保持時間tholdは、有利には15分~23分の間に含まれる。
【0063】
好ましくは、熱間圧延半製品全体が、前記保持時間tholdの間、300℃~520℃の間に含まれる温度範囲に維持される。
【0064】
この維持ステップ中、オーステナイトからベイナイトへの変態が完了する。
【0065】
さらに、マルテンサイトからオーステナイトに炭素が分配され、したがってオーステナイトが安定し、マルテンサイトが焼き戻される。
【0066】
300℃~520℃の間に含まれる温度範囲内の保持時間tholdが12分未満である場合、形成されるベイナイトの分率が不十分であるため、その後の室温への冷却中にオーステナイトからマルテンサイトへの非常に重要な変態が生じる。
【0067】
例えば、ヘッド12は、300℃~520℃の間に含まれる保持温度Tholdに保持される。
【0068】
冷却停止温度が300℃~520℃の間に含まれる場合、保持時間tholdの間、ヘッド12を300℃~520℃の間に含まれる温度範囲に維持するステップは、例えば、冷却停止温度TCSへの冷却直後に実行される。さらに、保持温度Tholdは、冷却停止温度TCS以上である。
【0069】
冷却停止温度が200℃~300℃の間に含まれる場合、方法は、ヘッドを冷却停止温度TCSに冷却した後、及びヘッドを温度範囲内に維持するステップの前に、熱間圧延半製品のヘッドを300℃~520℃の間に含まれる温度まで加熱するステップをさらに含む。そのような場合、保持温度Tholdは、冷却停止温度TCSよりも高い。
【0070】
ヘッド12を300℃~520℃の間に含まれる温度範囲内に維持した後、熱間圧延半製品は室温まで冷却され、レール10が得られる。熱間圧延半製品は、好ましくは空冷によって、特に自然空冷によって室温まで冷却される。
【0071】
有利には、冷却後、レール10は、表面分率で、
-49%~67%のベイナイト、
-14%~25%の残留オーステナイト、及び
-13%~34%の焼戻しマルテンサイト
からなる微細構造を有する。
【0072】
ベイナイトは、粒状ベイナイト及び炭化物を含まないベイナイトを含み得る。好ましくは、ヘッド12の微細構造におけるベイナイトの表面分率は、56%以上である。
【0073】
残留オーステナイト及び焼戻しマルテンサイトは、一般に、ベイナイトのラス又はプレートの間にあるM/A構成成分として存在する。
【0074】
オーステナイトはまた、ベイナイトのラス又はプレート間のベイナイトにも含まれる。
【0075】
残留オーステナイトは、0.80%~1.44%の間に含まれる、好ましくは1.3%を超える平均炭素含有量を有する。
【0076】
好ましくは、ヘッド12の微細構造中の残留オーステナイトの表面分率は、18%~23%の間に含まれる。
【0077】
焼戻しマルテンサイトは、ベイナイトのラス又はプレート間のベイナイト、及びM/A成分に含まれる。
【0078】
マルテンサイトは焼戻しマルテンサイトであり、好ましくは自己焼戻しマルテンサイトである。一般に、マルテンサイトは、低い炭素含有量、すなわち鋼の平均C含有量よりも厳密に低い平均C含有量を有する。
【0079】
好ましくは、ヘッド12の微細構造における焼戻しマルテンサイトの表面分率は、14.5%~22.5%の間に含まれる。
【0080】
レール10のヘッド12は、430HB~470HBの間に含まれる硬度、1300MPa~1450MPaの間に含まれる引張強度、1000MPa~1150MPaの間に含まれる降伏強度、及び13%~18%の間に含まれる全伸びを有する。
【0081】
任意選択的に、方法は、例えば、熱間圧延半製品を室温に冷却した後に実行される仕上げステップ、特に機械加工又は表面処理ステップをさらに含んでもよい。表面処理ステップは、特にショットピーニング処理であってもよい。
【実施例】
【0082】
本発明の発明者らは、以下の実験を行った。
【0083】
重量で表された表1に従う組成の鋼が、半製品の形で提供された。
【0084】
【0085】
半製品を、レールの形状を有し、最終圧延温度TFRTがAr3より高い熱間圧延半製品に熱間圧延し、次いで最終圧延温度TFRTから冷却停止温度TCSまで冷却したが、冷却速度は、初期冷却時間t0=0秒の温度T0から、熱間圧延半製品が50秒の冷却後に温度T50に達し、次いで110秒の冷却後に温度T110に達するような速度であった。
【0086】
次いで、保持時間tholdの間、レールのヘッドを、300℃~520℃の間に含まれる温度範囲内で、冷却停止温度TCSに等しい温度Tholdに維持した。
【0087】
最後に、レールを室温まで冷却した。
【0088】
レールの製造条件を以下の表2にまとめる。
【0089】
【0090】
化学組成:
化学分析用の試料を、EN13674-1:2011の9.1.3に記載されている引張試験試料の場所から得て、次いで研磨して火花発光分光分析によって分析し、平均重量パーセント(wt%)を測定した。さらに、1gのピンをいくつか抽出して脱脂し、燃焼微量元素分析を行って、LECO C/S及びLECO N/O分析器でN、O、S及びCのパーセンテージを調べた。水素はIR吸収によっても分析した。鋼の化学組成を以下の表3に示す。
【0091】
【0092】
疲労試験:
レールのヘッドから疲労試験試料を抽出し、ASTM E606-12に従って機械加工した。
【0093】
疲労試験は、油圧ユニバーサル試験機INSTRON 8801を使用して、「ピークツーピーク」振幅が0.00135μmのひずみ制御で室温で行った。使用した波形は正弦波であり、引張りで+0.000675μmの対称ひずみ、圧縮で-0.000675μmのひずみであった。期限は500万サイクルであり、この値で試験を停止した。
【0094】
各試料で3つの複製を試験した。
【0095】
期限は500万サイクルであり、その値で試験を停止した。
【0096】
【0097】
微細構造-光学顕微鏡法:
EN13674-1:2011の9.1.4項に従って、レールのヘッドから金属組織試料を得た。
【0098】
金属組織試料をNital 2%で研削、研磨及びエッチングして、レール試料の微細構造を露出させた。顕微鏡観察は、Leica DMi4000顕微鏡を用いて行った。
【0099】
全レールヘッドの全体的な微細構造の外観は、全ての使用において完全にベイナイトであり、すなわち、ベイナイトのラス又はプレート、並びにベイナイトのラス又はプレート間に分散したマルテンサイト及びオーステナイトからなっている。微細構造の性質を、高解像度走査型電子顕微鏡及びXR回折によってより詳細に分析した。
【0100】
XR回折及び高解像度走査型電子顕微鏡法による微細構造の特性評価:
試料523513Y208に対して詳細な分析を行った。電子顕微鏡分析は、高分解能電界放出銃電子顕微鏡(FEG-SEM)Zeiss Ultra Plusにより行った。回折試験は、X線回折計Bruker D8 AdvanceでCuKα放射線を使用して行った。
【0101】
ASTM E975標準の推奨に従って、オーステナイト含有量及びその炭素含有量をXRDで測定した。
【0102】
ASTM E562標準に準拠したSEM画像での手動ポイントカウント法により、M/A構成成分の含有量を得た。次いで、M/A構成成分の含有量から、XRDで測定された残留オーステナイトの含有量を差し引くことによりマルテンサイト含有量を測定する。100%までの残余はベイナイトからなる。
【0103】
微細構造は、ベイナイト61.3%、炭素含有量1.38%の残留オーステナイト20.20%、及びマルテンサイト18.5%を含む。
【0104】
硬度:
一方で、EN13674-1:2011の9.1.8項(3つの測定値の平均値)に準拠して、レールヘッドの転動面でブリネル硬度を評価した。
【0105】
また一方で、自動デュロメータLeco LV700ATを使用して、レール断面でブリネル硬度を評価した。
【0106】
表5は、転動面(RS)及び断面の様々なポイントでの硬度試験の平均値を示す。
【0107】
【0108】
引張試験:
EN13674-1:2011の9.1.9項に従って、直径10mmの比例円形試験片を使用し、ISO6892-1に従い引張試験を実施した。試験試料(D0=10mm、L0=50mm)を抽出し、Instron 600DXユニバーサル機械試験機を使用して試験した。
【0109】
各試料について、3つの複製を試験した。
【0110】
表6は、降伏強度(YS)、引張強度(TS)及び伸び(A50)の結果を示す。
【0111】
【0112】
線形熱膨張係数(LTEC):
レールの圧延方向でLTECを測定した。試験試料(直径4mm及び長さ10mm)を引張り試料の中心位置から抽出し、熱膨張係数を-70℃から70℃まで2℃/分で高分解能膨張計(BAHR805A/D)により評価した。
【0113】
行われた3回の加熱実験の1つに対する相対的な長さの変化(dL/L
0)及び熱膨張係数(CTE)を
図3に示す。
【0114】
次に、25℃を基準温度として使用する技術的なLTECを表7に示す。
【0115】