(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】ポロキサマー組成物ならびにその製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
C08G 65/08 20060101AFI20220905BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20220905BHJP
【FI】
C08G65/08
C12N5/071
(21)【出願番号】P 2020551768
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(86)【国際出願番号】 US2018064350
(87)【国際公開番号】W WO2019125783
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-17
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】311016949
【氏名又は名称】シグマ-アルドリッチ・カンパニー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Sigma-Aldrich Co. LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ケント
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラ・シャルマ
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-523282(JP,A)
【文献】特表平06-506258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0002401(US,A1)
【文献】米国特許第05523492(US,A)
【文献】特表2019-511606(JP,A)
【文献】特表2001-505058(JP,A)
【文献】特表平09-506029(JP,A)
【文献】特表2017-516459(JP,A)
【文献】国際公開第2015/148736(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0085125(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/08
C12N 5/071
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的に定義された細胞培養培地におけるインビトロ細胞培養用のポロキサマー組成物であって、該ポロキサマー組成物は、ポロキサマーを含んで成り、該ポロキサマーは、
式I:
(式I中、yは15から26であり、xおよびzの和は81から100までであり、前記ポロキサマーは6,000g/molから8,000g/molの範囲における平均分子量を有する)
を有するポロキサマー組成物。
【請求項2】
yは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
xおよびzの前記和は、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
6,000g/molから7,600g/mo
lの平均分子量を有するポロキサマーを含んで成る
、請求項1~3のいずれかに記載のポロキサマー組成物。
【請求項5】
前記組成物は、6,000g/mol、6,200g/mol、6,400g/mol、6,600g/mol、6,800g/mol、7,000g/mol、7,200g/mol、7,400g/mol、7,600g/mol、7,800g/mol、または8,000g/molの平均分子量を有する、請求項1~
4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
細胞培養における請求項1~5のいずれかの組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年12月21日に出願された米国仮出願第62/608,826号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、細胞培養においてせん断保護剤として使用するためのポロキサマー組成物ならびにその組成物を製造および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポロキサマー、特にポロキサマー188は、多くの産業用用途、化粧品および医薬品で使用されている。それらは細胞培養培地プロセスでも使用されている。ポロキサマー、特にポロキサマー188を、細胞培養培地に加えると、細胞生存率が大幅に向上する。高い細胞生存率は、最適なタンパク質生産に不可欠である。ポロキサマーが細胞生存率を向上させる理由は完全には理解されていない。ポロキサマーはせん断応力を低減し、このようにして細胞を損傷から保護すると考えられています。非イオン性界面活性剤であるポロキサマーは、気泡/媒体界面に集中する可能性が高く、気泡への細胞の付着を防ぐことができ、このようにして気泡が破裂した時の細胞の損傷を防ぐことができる。また、ポロキサマーは、気泡が破裂したときの衝撃を軽減することがある。ポロキサマーは気相から液相への酸素移動速度を向上すると主張する公開文献もあるが、他の公開文献はこれらの発見と矛盾している。ポロキサマーが細胞膜の小さな欠陥を「修復(repair)」する可能性があることも指摘されている。
【0004】
一般に、ポロキサマーは、一般式I:
(一般式I中、xおよびzは好ましくは各々独立に5から150であり、yは好ましくは15から67である)
を有する、ポリエチレングリコール(PEG)/ポリプロピレングリコール(PPG)トリブロックコポリマー、CAS番号9003-11-6である。
【0005】
ポロキサマー188として知られている従来使用されている製品は、7680から9510g/molの平均分子量(薬局方によって定義および決定される)を有する。式Iでは、ポロキサマー188の場合、xおよびzはそれぞれ約80であり、yは約27である。この化合物は、ポロキサマー188、Pluronic(登録商標)F68、Kolliphor(登録商標)P188、Lutrol(登録商標)F68、SYNPERONIC(商標)PE/F68またはPLONON #188Pとして市販されている。それらは、様々な物理形態で市販されている(Pluronics(登録商標)またはLutrole(登録商標)、例えば、Pluronic(登録商標)溶液、ゲル、または、Pluronic(登録商標)F-68のような固体)。あるいは、ポロキサマーは、当該技術分野で公知の方法に従って原料から製造することができる(例えば、米国特許第3,579,465および第3,740,421号を参照)。ポロキサマーの詳細については、Hagers Handbuch der Pharmazeutischen Praxis、第9巻「Stoffe P-Z」、1994年、282~284ページを参照できる。
【0006】
細胞培養培地で使用した場合、ポロキサマー188のような市販のポロキサマーではロット間の大きな変動が観察される。結果としていくつかのロットは、細胞を損傷/死から十分に保護しないため、細胞培養での使用には適していない。この理由は完全には理解されていない。結果としてこれらの「不良」ロットを使用すると、細胞生存率が大幅に低下する。
【発明の概要】
【0007】
本開示の様々な態様の中で、ポロキサマー188と比較して、より低い平均分子量を有するポロキサマー組成物が供される。ポロキサマー組成物を製造する方法およびその使用も供される。
【0008】
したがって、簡単に述べると、本開示は、式I:
(式I中、yは約15から約26であり、xおよびzの和は約81から約100であり、前記組成物は、約6,000g/molから約8,000g/molの範囲における平均分子量を有する)
を有するポロキサマー組成物に関する。
【0009】
本開示の別の態様は、本明細書および添付の図面に実質的に開示されているポロキサマー組成物を製造する方法を対象とする。本開示のさらに別の態様は、本明細書および添付の図面に開示されるポロキサマー組成物の使用を対象とする。本開示の他の態様は、本明細書および添付の図面に実質的に開示されている方法、組成物、使用および発明を対象とする。
【0010】
他の目的および特徴は、一部が明らかであり、一部が以下で指摘される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1は、ポロキサマー188の各ロットにおけるプロピレンオキシド分布のモード(または様式;mode)に対する19ロットのポロキサマー188の細胞培養性能のプロットである。細胞培養性能は、実施例に記載されているように、生物学的試験によって測定され、プロピオンオキシドの分布は、実施例に記載されている分析的逆相UPLC/MS法によって測定された。USP仕様では、ポロキサマー188で平均21.6~33個のプロピレン単位が許容されている(干渉する化学種がない場合)。
【0012】
図2は、ポロキサマー188の単一ロットのUPLC/MSクロマトグラムの3Dプロットである。x軸はポリマーの保持時間であり、y軸は質量分析計で検出された質量電荷比である。各ピークの強度は、赤色の強度で示される。これは逆相クロマトグラフィーであるため、保持時間が右側にあるポリマーはより疎水性が高く、この特定のポリマーでは、PPOの鎖長が長くなることを意味する。
【0013】
図3は、いくつかのポロキサマー188ロットの分子量分布を比較するSECクロマトグラムである。機能との相関は、ピーク分子量(Mp)に基づいている。
【0014】
図4は、ピーク分子量(SEC)とポロキサマー188の生物学的性能の低下との間の関係のプロットである。このグラフでは、より良い性能はさらにマイナスであり、よい低い分子量のポロキサマー188が細胞培養培地でより優れた性能を発揮すると予測している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の一態様は、ポロキサマー組成物に関する。
【0016】
当業者は、ポロキサマーを細胞培養培地の成分としてどのように使用するかを知っている。彼らは、使用するのに適切な量およびフォーマットを知っている。しかし、細胞培養は、たとえ標準的な手順とレシピに従って調製されたとしても、ときに通常よりもうまく機能しない場合がある。これはポロキサマーが原因である可能性があることが分かっている。そのような場合、今までのところ、ポロキサマーの全ロットを廃棄する必要があった。
【0017】
期待通りに機能しない多くのポロキサマーの同定は、例えば、細胞培養で行うことができる。ポロキサマーを含んで成る細胞培養物が細胞生存率および性能を期待通りに示さない場合、本開示に係る低分子量ポロキサマーを供することにより改善しようと試みるかもしれない。
【0018】
期待通りに機能しない任意の細胞培養は、本開示に係るポロキサマーの代わりに従来のポロキサマーの代用を誘発し得る。実際の細胞培養に先立って細胞培養試験を行うことも可能である。細胞培養の性能を調査するための実験セットアップ(または設定)は、次のようになる。
【0019】
適切な実験セットアップは、Haofan Pengら、Biotechnol.Prog.、2014年、第30巻(第6号)、1411~1418ページに記載されている小規模のバッフル振とうフラスコモデルである。
【0020】
当業者は、以下のことを十分に認識している:
【0021】
-異なる濃度(典型的には、0.1~5g/L)のポロキサマーが使用され得る。
【0022】
-任意のタイプのCHO細胞または他の細胞が使用され得る。
【0023】
-選択した細胞株に適した任意のタイプの細胞培養培地が使用され得る。
【0024】
-培養は好ましくはオービタルシェーカーで行い、速度および投入は選択した細胞株および培養条件に合わせて調整する必要がある場合がある。
【0025】
-上記の選択したパラメータに応じて、生存率の低下は2時間~5日の間の適切な時点で測定し得る。
【0026】
本発明に係る細胞生存率の定義は、例えば、ベックマン-コールターViCell XRまたは類似物における例えば、トリパン・ブルー試験によって決定される、溶液中の生細胞(living cell)のパーセンテージである。
【0027】
驚くべきことに、平均分子量の低いポロキサマーが優れた性能を供することを発見したため、使用前にポロキサマーの各ロットを分析すること、および/または仕様に従った低平均分子量のポロキサマーを製造することも可能である。分析は、例えば、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって行うことができる。
ポロキサマー組成物
【0028】
一般に、本開示のポロキサマー組成物は、従来のポロキサマー材料、例えば、ポロキサマー188よりも低い平均分子量を有し、この組成物は、例えば、本明細書に記載された細胞培養において使用した場合、驚くほど優れた結果を提供する。本開示に従う特定のポロキサマー組成物は、式I:
(式I中、yは約15から約26であり、xおよびzの和は約81から約100までであり、前記組成物は約6,000g/molから約8,000g/molの範囲における平均分子量を有する)
を有する。
【0029】
式Iに関連して上記のように、yは約15から約26である。式Iに関連していくつかの実施形態では、例えば、yは、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、または約26である。
【0030】
式Iに関連して他の実施形態では、例えば、yは、約15から約25、約15から約24、約15から約23、約15から約22、約15から約21、約15から約20、約15から約19、約15から約18、約15から約17、または約15から約16である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、yは、約16から約25、約16から約24、約16から約23、約16から約22、約16から約21、約16から約20、約16から約19、約16から約18、または約16から約17である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、yは、約17から約25、約17から約24、約17から約23、約17から約22、約17から約21、約17から約20、約17から約19、または約17から約18である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、yは、約18から約25、約18から約24、約18から約23、約18から約22、約18から約21、約18から約20、または約18から約19である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、yは、約19から約25、約19から約24、約19から約23、約19から約22、約19から約21、または約19から約20である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、yは、約20から約25、約20から約24、約20から約23、約20から約22、または約20から約21である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、yは、約21から約25、約21から約24、約21から約23、または約21から約22である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、yは、約22から約25、約22から約24、または約22から約23である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、yは、約23から約25、または約23から約24である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、yは、約24から約25である。
【0031】
式Iに関連して上記のように、xおよびzの和は、約81から約100である。式Iに関連していくつかの実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、または約100である。
【0032】
式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約81から約99、約81から約98、約81から約97、約81から約96、約81から約95、約81から約94、約81から約93、約81から約92、約81から約91、約81から約90、約81から約89、約81から約88、約81から約87、約81から約86、約81から約85、約81から約84、約81から約83、または約81から約82である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約82から約99、約82から約98、約82から約97、約82から約96、約82から約95、約82から約94、約82から約93、約82から約92、約82から約91、約82から約90、約82から約89、約82から約88、約82から約87、約82から約86、約82から約85、約82から約84、または約82から約83である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約83から約99、約83から約98、約83から約97、約83から約96、約83から約95、約83から約94、約83から約93、約83から約92、約83から約91、約83から約90、約83から約89、約83から約88、約83から約87、約83から約86、約83から約85、または約83から約84である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約84から約99、約84から約98、約84から約97、約84から約96、約84から約95、約84から約94、約84から約93、約84から約92、約84から約91、約84から約90、約84から約89、約84から約88、約84から約87、約84から約86、または約84から約85である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約85から約99、約85から約98、約85から約97、約85から約96、約85から約95、約85から約94、約85から約93、約85から約92、約85から約91、約85から約90、約85から約89、約85から約88、約85から約87、または約85から約86である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約86から約99、約86から約98、約86から約97、約86から約96、約86から約95、約86から約94、約86から約93、約86から約92、約86から約91、約86から約90、約86から約89、約86から約88、または約86から約87である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約87から約99、約87から約98、約87から約97、約87から約96、約87から約95、約87から約94、約87から約93、約87から約92、約87から約91、約87から約90、約87から約89、または約87から約88である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約88から約99、約88から約98、約88から約97、約88から約96、約88から約95、約88から約94、約88から約93、約88から約92、約88から約91、約88から約90、または約88から約89である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約89から約99、約89から約98、約89から約97、約89から約96、約89から約95、約89から約94、約89から約93、約89から約92、約89から約91、または約89から約90である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約90から約99、約90から約98、約90から約97、約90から約96、約90から約95、約90から約94、約90から約93、約90から約92、または約90から約91である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約91から約99、約91から約98、約91から約97、約91から約96、約91から約95、約91から約94、約91から約93、または約91から約92である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約92から約99、約92から約98、約92から約97、約92から約96、約92から約95、約92から約94、または約92から約93である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約93から約99、約93から約98、約93から約97、約93から約96、約93から約95、または約93から約94である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約94から約99、約94から約98、約94から約97、約94から約96、または約94から約95である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約95から約99、約95から約98、約95から約97、または約95から約96である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約96から約99、約96から約98、または約96から約97である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約97から約99、または約97から約98である。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、xおよびzの和は、約98から約99である。
【0033】
式Iに関連して上記のように、組成物は、約6,000から約8,000g/molの範囲における平均分子量を有する。式Iに関連していくつかの実施形態では、例えば、組成物は、約6,000g/mol、約6,200g/mol、約6,400g/mol、約6,600g/mol、約6,800g/mol、約7,000g/mol、約7,200g/mol、約7,400g/mol、約7,600g/mol、約7,800g/mol、または約8,000g/molの平均分子量を有する。
【0034】
式Iに関連して他の実施形態では、例えば、組成物は、約6,000g/molから約7,600g/mol、約6,000g/molから約7,400g/mol、約6,000g/molから約7,200g/mol、約6,000g/molから約7,000g/mol、約6,000g/molから約6,800g/mol、約6,000g/molから約6,600g/mol、約6,000g/molから約6,400g/mol、または約6,000g/molから約6,200g/molの範囲における平均分子量を有する。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、組成物は、約6,200g/molから約7,600g/mol、約6,200g/molから約7,400g/mol、約6,200g/molから約7,200g/mol、約6,200g/molから約7,000g/mol、約6,200g/molから約6,800g/mol、約6,200g/molから約6,600g/mol、または約6,200g/molから約6,400g/molの範囲における平均分子量を有する。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、組成物は、約6,400g/molから約7,600g/mol、約6,400g/molから約7,400g/mol、約6,400g/molから約7,200g/mol、約6,400g/molから約7,400g/mol、約6,400g/molから約6,800g/mol、または約6,400g/molから約6,600g/molの範囲における平均分子量を有する。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、組成物は、約6,600g/molから約7,600g/mol、約6,600g/molから約7,400g/mol、約6,600g/molから約7,200g/mol、約6,600g/molから約7,000g/mol、または約6,600g/molから約6,800g/molの範囲における平均分子量を有する。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、組成物は、約6,800g/molから約7,600g/mol、約6,800g/molから約7,400g/mol、約6,800g/molから約7,200g/mol、または約6,800g/molから約7,000g/molの範囲における平均分子量を有する。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、組成物は、約7,000g/molから約7,600g/mol、約7,000g/molから約7,400g/mol、または約7,000g/molから約7,200g/molの範囲における平均分子量を有する。式Iに関連して他の実施形態では、例えば、組成物は、約7,200g/molから約7,600g/mol、または約7,200g/molから約7,400g/molの範囲における平均分子量を有する。
【0035】
組み合わせて、式Iに関連していくつかの実施形態では、例えば、yは、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、または約26であり、xおよびzの和は、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、または約100であり、約6,000g/mol、約6,200g/mol、約6,400g/mol、約6,600g/mol、約6,800g/mol、約7,000g/mol、約7,200g/mol、約7,400g/mol、または約7,600g/molの平均分子量である。
ポロキサマー組成物の製造方法
【0036】
一般に、ポロキサマーを製造する任意の従来の方法を使用して、本明細書に開示されたポロキサマー組成物(例えば、上記式Iを有する組成物)を製造することができる。典型的には、従来のプロセスを使用して、より短い反応時間および/または温度を使用して上記式Iを有するより低分子量のポロキサマー組成物を製造し得る。
【0037】
追加または代替として、いくつかの実施形態では、国際出願番号PCT/EP2017/000238(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている方法に従ってポロキサマー組成物を精製することが望ましいことがある。
細胞培養におけるポロキサマー組成物の使用
【0038】
本明細書に記載されたポロキサマー組成物は、細胞培養において使用することができる。粒子サイズを調整する必要がある場合は、細胞培養培地(または細胞培養用培地;cell culture medium)に加える前に必要に応じて粉砕することができる。
【0039】
細胞培養は、細胞が培養される任意のセットアップである。
【0040】
細胞培養は、シャーレ、コンタクト・プレート、ボトル、チューブ、ウェル、ヴェッセル、バック、フラスコ、および/またはタンクのような細胞の培養に適した任意の容器で行うことができる。好ましくは、細胞培養はバイオリアクターにおいて行われる。典型的には、容器は使用前に滅菌される。培養は、典型的には、環境からの外来微生物による汚染を制限する適切な温度、浸透圧、通気、攪拌のような適切な条件下で、水性細胞培養培地において細胞をインキュベートすることによって行われる。当業者は、細胞の成長/培養をサポートまたは維持するための適切なインキュベーション条件を心得ている。
【0041】
本発明に係る細胞培養培地(同義的に使用される:培養培地(culture medium))は、細胞のインビトロ増殖を維持および/もしくはサポートし、ならびに/または特定の生理学的状態をサポートする成分の任意の混合物である。本発明に係る細胞培養培地はまた、濃縮前培養(pre-enrichment cultures)ならびに維持培地(maintenance medium)としての使用にも適している。
【0042】
好ましくは、本発明に係る細胞培養培地は化学的に定義された培地である。細胞培養培地は、細胞のインビトロ増殖を維持および/もしくはサポートするために必要なすべての成分を含んで成るか、または個別に加えられるさらなる成分と組み合わせて、もしくは組み合わせずに、選択された成分を加えるために使用することができる(培地補充(media supplement))。好ましくは、細胞培養培地は、細胞のインビトロ増殖を維持および/またはサポートするために必要なすべての成分を含んで成る。
【0043】
細胞のインビトロ増殖を維持および/またはサポートするために必要なすべての成分を含んで成る細胞培養培地は、典型的には、少なくとも1以上の糖(saccharide)成分、1以上のアミノ酸、1以上のビタミンもしくはビタミン前駆体、1以上の塩、1以上の緩衝成分、1以上の補因子(co-factor)ならびに1以上の核酸成分(窒素塩基(nitrogenous bases))もしくはそれらの誘導体を含んで成る。前記細胞培養培地はまた、組換えタンパク質、例えば、rインスリン(rInsulin)、rBSA、rトランスフェリン(rTransferrin)、rサイトカイン(rCytokines)のような化学的に定義された生化学物質を含み得る。
【0044】
細胞培養培地は、水性液体の形態、または使用のために水もしくは水性緩衝液に溶解される乾燥粉末の形態であり得る。
【0045】
当業者は、特定の想定される目的に適した細胞培養培地を選択することができる。
略語および定義
【0046】
以下の定義および方法は、本発明をより明確に定義し、本発明の実施において当業者を導くために供される。特に明記しない限り、用語は、関連分野の当業者による従来の使用法に従って理解されるべきである。
【0047】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。よって、例えば、「a poloxamer」への言及は、複数のポロキサマー等を含む。
【0048】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が関連する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。以下の用語は、本明細書に記載された本発明の目的のために定義される。
【0049】
本明細書で使用される用語「バイオリアクター」は、生物学的に活性な環境をサポートする任意の製造または設計されたデバイスまたはシステムをいう。場合によっては、バイオリアクターは、生物またはそのような生物に由来する生化学的に活性な物質を含む細胞培養プロセスが行われる容器である。そのようなプロセスは、好気性または嫌気せいの何れかであり得る。一般的に使用されるバイオリアクターは、典型的には、円筒形で、サイズはリットルから立方メートルで、多くの場合、ステンレス鋼でできている。本明細書で記載されたいくつかの実施形態では、バイオリアクターは、鋼以外の材料で作られた使い捨て可能な構成要素を含み得、使い捨てである。いくつかの実施形態では、生物学的に活性な環境が維持される使い捨てバッグである。バイオリアクターの総容量は、特定のプロセスに応じて、100mLから最大10,000リットル以上の範囲の任意の容量であると考えられる。
【0050】
薬局方(pharmacopeia)に係る平均分子量は、無水フタル酸-ピリジン溶液を使用する滴定によって決定される。
【0051】
SECにより決定される平均分子量は、以下のように決定される:
重量平均分子量:Mw=ΣiNiMi
2/(ΣiNiMi)
数平均分子量:Mn=ΣiNiMi/(ΣiNi)
ピーク分子量:Mp=最大Niでの分子量
Ni=フラクションiにおけるポリマー種の数
Mi=フラクションiにおけるポリマー種の分子量
SEC条件:
校正標準:PEG(詳細は実施例7を参照)
溶離液:THF
フロー速度:1ml/分
注入量:100μl
カラム:粒径=5μm、材質=スチレン-ジビニルベンゼン
温度:40℃
【0052】
本発明を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲を逸脱することなく、修正および変更が可能であることは明らかである。さらに本開示におけるすべての例は、非限定的な例として供されることを理解されたい。
【実施例】
【0053】
以下の非限定的な実施例は、本発明をさらに説明するために供される。以下の実施例に開示される技術は、発明者が本発明の実施において十分に機能することを見出したアプローチを表し、それ故に、その実施のためのモードの例を構成するとみなすことができることを当業者は理解すべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態に多くの変更を加えることができ、なおかつ本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができることが理解すべきである。
実施例1
【0054】
ポロキサマー188の性能の欠陥を調査するために、哺乳動物細胞を高せん断応力下に置く生物学的細胞培養試験が開発された。ポロキサマー188におけるポリプロピレンオキシド(そのポリマーにおける2つのモノマー単位の1つ)の相対的分布を区別できるポロキサマー188の構造を解明するための分析方法が開発された。調査の過程で、PO含有量と生物学的機能アッセイの性能との間に負の相関が観察された。評価されたすべてのサンプルは、ポロキサマー188のUPS仕様の範囲内であったが、仕様のばらつきは性能に影響を与える(
図1参照)。酸化プロピレンの分布モードと生物学的機能との間の負の相関は、より低いPO含有量での細胞培養に適したポロキサマーの化学構造があることを示唆する可能性がある。10%以上の%差異があるポロキサマー188のロットは、SAFCメディアの顧客のパフォーマンスに影響を与えることが示されている。
実施例2
【0055】
分析手法は、主にPPO鎖長に従ってポリマーを分離する逆相超性能液体クロマトグラフィー(reversed phase Ultra Performance Liquid Chromatography)-質量分析(UPLC/MS)法である。前記手法の代表的なクロマトグラムを
図2に示す。クロマトグラムの各垂直線は、プロピレンオキシドの追加単位を表しており、垂直でない線は、分離への影響が小さいエチレンオキシドを示している。
図2に示すデータを使用して、PPO鎖長分布のピークを特定でき、これを使用して
図1で使用するデータを作成した。
実施例3
【0056】
サイズ排除クロマトグラフィーを使用してポロキサマー188を分析する追加のデータは、ポリマーの分子量および機能に対する相関を特定した。ポロキサマーのサンプルは、ポリマー標準サービス(Polymer Standards Service)(PSS)スチレン-ジビニルベンゼン(SDV)カラムおよびPSS PEG校正標準(Mp:430~44000g/mol)を使用して評価され、分子量が決定される。
図3は、ポロキサマー188のサンプル間の分子量の違いを表すSECクロマトグラムである。主ピークが左にシフトするため、結果としてサイズがより小さいピーク分子量のポロキサマー(Mp)が得られる。ポロキサマー188の分子量の現在の仕様は、平均として報告されている。このデータには、以下に示す全てのピークが含まれ、ポロキサマー188の分子量のピークは含まれない。
実施例4
【0057】
ポロキサマー188のピーク分子量と、ポロキサマー188の性能との間の強い相関が観察された。前記関係は、既知の対照(control)ロットとのパーセント差として計算された性能を比較する5つの異なるサプライヤーのサンプルで観察され、0%は対照と同等であり、負のパーセントは対照から改善されている。前記関係について測定された相関係数は0.82である。
図4のグラフは、ピーク分子量が低いほど性能が向上することを予測している。