(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】電流積分器における増幅器の負荷電流キャンセル方法、及び、増幅器の負荷電流がキャンセルされた電流積分器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/32 20060101AFI20220905BHJP
H03M 3/02 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
H03F1/32
H03M3/02
(21)【出願番号】P 2020551840
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2019060327
(87)【国際公開番号】W WO2019206881
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-26
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520364750
【氏名又は名称】アムス インターナショナル エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル、フリドリン
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0222054(US,A1)
【文献】国際公開第2015/107091(WO,A1)
【文献】特開2008-295060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-H03F3/45
H03M1/00-H03M1/88
H03M3/00-H03M9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流積分器における増幅器の負荷電流キャンセル方法であって、
電流積分用の積分キャパシタ(C
int)を備えた演算トランスコンダクタンス増幅器に入力電流(I
in)を印加するステップと、
前記演算トランスコンダクタンス増幅器の出力電流(I
out)を検出抵抗器(R
sense)に導通させることで、前記検出抵抗器(R
sense)上での電圧降下を生成するステップと、
前記検出抵抗器(R
sense)上での前記電圧降下に応じてキャンセル電流(I
out,cancel)を生成するステップと、
前記出力電流(I
out)が前記検出抵抗器(R
sense)を通過する前後
の位置において前記キャンセル電流(I
out,cancel)を前記出力電流(I
out)に注入することで、前記入力電流(I
in)に対する前記出力電流(I
out)の依存を排除するステップと、を含
み、
前記出力電流(I
out
)が前記検出抵抗器(R
sense
)を通過する後の位置において前記キャンセル電流(I
out,cancel
)が前記出力電流(I
out
)に注入される場合に、即ち、前記キャンセル電流(I
out,cancel
)が前記検出抵抗器(R
sense
)の直後に位置するノードに注入される場合において、フィードバックループが形成され、前記フィードバックループが前記検出抵抗器(R
sense
)上での前記電圧降下をゼロに動作させ、
または、
前記出力電流(I
out
)が前記検出抵抗器(R
sense
)を通過する前の位置において前記キャンセル電流(I
out,cancel
)が前記出力電流(I
out
)に注入される場合に、即ち、前記キャンセル電流(I
out,cancel
)が前記検出抵抗器(R
sense
)の直前に位置するノードに注入される場合において、前記検出抵抗器(R
sense
)上での前記電圧降下がキャパシタ上でサンプリングされて、前記サンプリングされた電圧降下が前記キャンセル電流(I
out,cancel
)に変換される、
方法。
【請求項2】
前記検出抵抗器(R
sense)上での前記電圧降下を積分し、当該積分された電圧降下を前記キャンセル電流(I
out,cancel)に変換するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出力電流(I
out)が前記検出抵抗器(R
sense)を通過した後
の位置に
おいて前記キャンセル電流(I
out,cancel)が前記出力電流(I
out)に注入される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
スイッチトキャパシタ積分器を設けるステップと、
前記スイッチトキャパシタ積分器により前記電圧降下を積分するステップと、
をさらに含む、
請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプリングされた電圧降下は、追加の演算トランスコンダクタンス増幅器により前記キャンセル電流(I
out,cancel)に変換される、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記出力電流(I
out)が前記検出抵抗器(R
sense)を通過する前
の位置に
おいて前記キャンセル電流(I
out,cancel)が前記出力電流(I
out)に注入される、請求項
1又は
5に記載の方法。
【請求項7】
電流積分用の積分キャパシタ(C
int)を備えた演算トランスコンダクタンス増幅器と、
前記演算トランスコンダクタンス増幅器の出力に接続された検出抵抗器(R
sense)と、
前記検出抵抗器(R
sense)上での電圧降下をキャンセル電流(I
out,cancel)に変換するように構成された変換回路と、
前記変換回路の出力と、前記検出抵抗器(R
sense)の直前又は直後
の位置に配置されたノードとの接続部と、を備え
、
前記ノードが前記検出抵抗器(R
sense
)の直後に位置する場合に、フィードバックループが形成され、前記フィードバックループが前記検出抵抗器(R
sense
)上での前記電圧降下をゼロに動作させ、
または、
前記ノードが前記検出抵抗器(R
sense
)の直前に位置する場合に、前記変換回路は、前記検出抵抗器(R
sense
)上での前記電圧降下をキャパシタ上でサンプリングするように構成される、
電流積分器。
【請求項8】
前記変換回路は、前記検出抵抗器(R
sense)上での前記電圧降下を積分するように構成された追加の積分器をさらに備えた、請求項
7に記載の電流積分器。
【請求項9】
前記追加の積分器の出力を前記キャンセル電流(I
out,cancel)に変換するように構成された前記変換回路の追加の演算トランスコンダクタンス増幅器をさらに備えた、請求項
8に記載の電流積分器。
【請求項10】
前記検出抵抗器(R
sense)は、前記演算トランスコンダクタンス増幅器と出力ノードとの間に配置され、
前記追加の演算トランスコンダクタンス増幅器の出力が前記出力ノードに接続されている、請求項
9に記載の電流積分器。
【請求項11】
前記追加の積分器は、スイッチトキャパシタ積分器である、
請求項
8から
10のうちいずれか一項に記載の電流積分器。
【請求項12】
前記サンプリングされた電圧降下を前記キャンセル電流(I
out,cancel)に変換するように構成された前記変換回路の追加の演算トランスコンダクタンス増幅器をさらに備えた、請求項
7に記載の電流積分器。
【請求項13】
前記追加の演算コンダクタンス増幅器の出力は、前記演算トランスコンダクタンス増幅器と前記検出抵抗器(R
sense)との間のノードに接続されている、請求項
12に記載の電流積分器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチトキャパシタデジタル-アナログ変換器を備えた電流積分器の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示されている回路図は、デジタル-アナログ変換器(DAC)で用いられる典型的な積分ステージの基本的な回路トポロジーを示す。仮想接地電位v
nを入力電流I
inに印加することにより電流が積分キャパシタC
int上で積分される。仮想接地電位v
nは、出力電流I
outとトランスコンダクタンスg
mとの商であり、すなわち、v
n=I
out/g
mとなる。
【0003】
積分キャパシタCint上で電流が増大すると出力電圧Voutが増大するため、回路は、ほぼ常にフィードバックで、例えば、デルタ-シグマ変換器で使用される。フィードバックは、電流源により、又は、スイッチトキャパシタデジタル-アナログ変換器(SC DAC)により生成され得る。スイッチトキャパシタデジタル-アナログ変換器は、電流を仮想接地電位のノードに注入して電荷を積分キャパシタから減算し、これにより、出力電圧Voutを許容範囲内に維持する。
【0004】
スイッチトキャパシタデジタル-アナログ変換器において、Q=C(VDAC-vn)のサイズの電荷パッケージが注入される。式中、Cは積分キャパシタCintの容量であり、VDACはデジタル-アナログ変換器の供給電圧である。従って、仮想接地電位vnはDACの電荷に直接的に影響を与える。
【0005】
負荷キャパシタCLの容量を線形とみなし得るため、出力電流Ioutもまた入力電流Iinに線形的に関連し、これにより、仮想接地電位vnを入力信号に依存させる。この信号依存性により、高精度アプリケーションにおいては許容不可能な非線形性が発生する。
【0006】
この問題への対処として、仮想接地電位vnを低減するためにトランスコンダクタンスgmを増大できるが、これは電力消費を高くする。或いは、デジタル較正も利用できるが、この方法は、各デバイスのための較正定数の推定を必要とするため、非常に高い線形性要件に準拠するような十分な精度で達成することは困難であろう。
【0007】
より実際的な解決方法は、演算トランスコンダクタンス増幅器(OTA)の出力負荷電流の最小化である。このような技術が、電圧入力デルタ-シグマ変換器のために提示されており、フィードバック中の仮想接地スパイクを、DAC信号及び推定された入力信号電荷を出力に注入することにより最小化する。
図7に示されている回路のように、実効入力電流が、フィードフォワードトランスコンダクタg
mffを用いて推定される。しかし、フィードフォワードトランスコンダクタンスg
mffは、プロセス、温度及び入力信号の変動に関して抵抗器Rに正確に適合しないであろう。また、仮想接地電位v
nの偏差の排除が、高線形性アプリケーションに関しては十分に正確になされないであろう。
【0008】
公知の解決方法は、電圧入力積分ステージにおけるDACパルス開始時の仮想接地電位v
nの動的偏差Δv
n,dynの低減に焦点を当てている(
図8)。しかし、高度に線形のSC DACに関して重要なのは、DACパルス終了時の仮想接地電位v
nの静的偏差Δv
n,statである。なぜなら、これが電荷転送の精度を決定するからである。仮想接地電位v
nは、DACパルス終了時の接地電位と等しくなければならない。
【0009】
さらに、公知の解決方法は、演算トランスコンダクタンス増幅器の主要な出力電流が積分キャパシタCintに流入することを想定している。負荷キャパシタCLの容量が積分キャパシタCintの容量の倍数である場合、これに従い、演算トランスコンダクタンス増幅器の負荷電流が、より高くなる。特に、様々なタイプの負荷キャパシタCL及び積分キャパシタCintを使用する場合、プロセス誤差及び温度変動により、負荷電流の最小化が非効率的になるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、プロセス及び温度依存較正を不要にするために電流積分器の非線形性を低減するための実用的な方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載の方法、及び、請求項8に記載の電流積分器を用いて達成される。変型例及び実施形態は従属項から得られる。
【0012】
上述の定義は、特に明記されていない限り、以下の説明にも適用される。
【0013】
電流積分器における増幅器の負荷電流キャンセル方法は、電流積分用の積分キャパシタが設けられた演算トランスコンダクタンス増幅器に入力電流を印加するステップと、前記演算トランスコンダクタンス増幅器の出力電流を検出抵抗器に導通させることで、前記検出抵抗器上での電圧降下を生成するステップと、前記検出抵抗器上での前記電圧降下に応じてキャンセル電流を生成するステップと、前記出力電流が前記検出抵抗器を通過する前後に前記キャンセル電流を前記出力電流に注入することで、前記入力電流に対する前記出力電流の依存を排除するステップと、を含む。
【0014】
前記方法の変型例において、前記検出抵抗器上での前記電圧降下が積分され、当該積分された電圧降下が前記キャンセル電流に変換される。前記電圧降下を積分するためにスイッチトキャパシタ積分器が設けられ得る。具体的には、前記キャンセル電流は、前記出力電流が前記検出抵抗器を通過した後に前記出力電流に注入される。
【0015】
前記方法のさらなる変型例において、前記検出抵抗器上での前記電圧降下がキャパシタ上でサンプリングされて、当該サンプリングされた電圧降下が前記キャンセル電流に変換される。この変換は、特に、追加の演算トランスコンダクタンス増幅器を用いて行われ得る。具体的には、前記キャンセル電流は、前記出力電流が前記検出抵抗器を通過する前に前記出力電流に注入される。
【0016】
前記電流積分器は、
電流積分用の積分キャパシタが設けられた演算トランスコンダクタンス増幅器と、
当該演算トランスコンダクタンス増幅器の出力に接続された検出抵抗器と、
当該出抵抗器上での前記電圧降下をキャンセル電流に変換するように構成された変換回路と、
前記変換回路の出力と、前記検出抵抗器の直前又は直後に配置されたノードとの接続部と、
を備えている。
【0017】
前記電流積分器の一実施形態において、前記変換回路は、前記検出抵抗器上での前記電圧降下を積分するように構成された追加の積分器を含む。当該追加の積分器は、特には、スイッチトキャパシタ積分器であり得る。
【0018】
前記電流積分器のさらなる実施形態は、前記変換回路の追加の演算トランスコンダクタンス増幅器を含む。当該追加の演算トランスコンダクタンス増幅器は、前記追加の積分器の出力を前記キャンセル電流に変換するように構成されている。
【0019】
前記電流積分器のさらなる実施形態において、前記検出抵抗器は前記演算トランスコンダクタンス増幅器と出力ノードとの間に配置されており、前記追加の演算トランスコンダクタンス増幅器の出力が前記出力ノードに接続されている。
【0020】
前記電流積分器のさらなる実施形態において、前記変換回路は、前記検出抵抗器上での前記電圧降下をキャパシタ上でサンプリングするように構成されている。詳細には、さらなる演算コンダクタンス増幅器が、前記サンプリングされた電圧降下を前記キャンセル電流に変換するために使用され得る。前記さらなる演算コンダクタンス増幅器の出力が、特には、前記演算トランスコンダクタンス増幅器と前記検出抵抗器との間のノードに接続され得る。
【0021】
以下に、前記方法及び前記電流積分器の例を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】負荷電流キャンセル方法を示す概略図である。
【
図2】さらなる負荷電流キャンセル方法を示す概略図である。
【
図3】さらなる負荷電流キャンセル方法を実行するための回路図である。
【
図4】負荷電流キャンセル回路を用いた、電流ドメイン増分2ステップアナログ-デジタル変換器の回路図である。
【
図6】デルタ-シグマ変換器において用いられる基本的な積分ステージの回路図である。
【
図8】供給電圧V
DACと、接地電位gndからの仮想接地電位v
nの偏差とを時間tの関数として示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、負荷電流キャンセル方法を示す概略図である。演算トランスコンダクタンス増幅器(オペレーショナルトランスコンダクタンスアンプ)がトランスコンダクタンスg
mを有する。積分キャパシタC
intが電流積分のために設けられている。検出抵抗器(センシングレジスタ)R
senseが、出力電流I
outを検出するために設けられており、これにより、出力電流I
outの線形推定値が得られる。検出抵抗器R
senseは、演算トランスコンダクタンス増幅器の性能を低下させないために、演算トランスコンダクタンス増幅器の有用な出力スイングの一部の電圧降下のためのサイズにされている。検出抵抗器R
sense上での電圧降下はバッファ及び積分され、これは、具体的には、例えばスイッチトキャパシタ積分器により行われる。
【0024】
積分器出力は電流に変換されて、トランスコンダクタンスgm2を有する追加の演算トランスコンダクタンス増幅器を介して出力に注入される。そして、演算トランスコンダクタンス増幅器の出力電流は低減し、これが、検出抵抗器Rsense上での電圧降下を低減させる。こうしてフィードバックループが形成され、これが、検出抵抗器Rsense上での電圧降下(すなわち、演算トランスコンダクタンス増幅器の負荷電流)をゼロにする。このフィードバックループは、演算トランスコンダクタンス増幅器のフィードバックループにネストされており、安定性を保証するために低ループゲインを要求する。
【0025】
図2は、フィードバックを使用しない、さらなる負荷電流キャンセル方法を示す図を示している。検出抵抗器R
sense上での電圧降下が、例えば、具体的にキャパシタ上でバッファ及びサンプリングされる。この目的のために、2つの別々のキャパシタが設けられ得て、これらは、第1クロック信号clk
1と第2クロック信号clk
2とにより交互に切り替えられる。これらの信号は、
図2に示されているように、DACクロック信号clk
DACに同期されている。サンプリングされた電圧はキャンセル電流I
out,cancelに変換され、この電流が負荷電流を、演算トランスコンダクタンス増幅器の出力にてキャンセルする。
【0026】
図2に示した回路においては、安定性及びセトリング要件を提示するためのフィードバックループが存在しない。なぜなら、演算トランスコンダクタンス増幅器が、常に、その出力電流I
outを、要求される負荷電流I
loadにマッチするように、注入されたキャンセル電流I
out,cancelと組み合わせて調整するからである。すなわち、
I
out=I
out,cancel+I
load。
【0027】
従って、検出抵抗器Rsense上での電圧降下は一定であり、キャンセル電流Iout,cancelとは無関係である。キャンセル電流Iout,cancelは、以前のクロックサイクルから測定された出力電流Ioutに基づいて注入される。従って、このキャンセルスキームは、入力信号の時定数がDACクロック信号clkDACの周期よりも大きい限りにおいて有効である。これは、典型的には、オーバーサンプリングデルタ-シグマ変換器の場合である。この仮定は、特に低周波線形性が関与している場合に有効である。
【0028】
さらなる負荷電流キャンセル方法の詳細な回路実装の例が
図3に示されている。検出抵抗器R
senseでの電圧は、系統的な電荷注入エラーを排除するために差動的にサンプリングされ得る。スイッチ遷移中の両方のキャパシタの接続が、非オーバーラップサンプルクロックにより回避され得る。また、第1クロック信号clk
1及び第2クロック信号clk
2によるスイッチングが、DACセトリングが終了した後に行われる。サンプリングされた電圧を検出抵抗器R
senseにてキャンセル電流I
out,cancel=I
out・Q
Rに変換するために線形トランスコンダクタが使用される。Q
Rは、検出抵抗器R
senseの電気抵抗と抵抗Rの電気抵抗との商である。
【0029】
達成されたキャンセルは、商QRのみに依存するため、本質的に、プロセス公差及び温度変化に対して鈍感である。また、検出抵抗器Rsenseの電気抵抗と抵抗器Rの電気抵抗の正確なマッチングによる正確なキャンセルが比較的容易に得られる。線形トランスコンダクタは、局所フィードバックを使用して線形性を達成し、これにより、主積分器自体と同一のセトリング制約を受ける。
【0030】
しかし、ローカルフィードバックループに大きい負荷容量が存在しないため、セトリング要件は、主積分器よりもはるかに低い消費電力で達成され得る。さらに、バッファ及びトランスコンダクタからのノイズは積分器の出力に注入されるため、OTA開ループゲインにより大幅に抑制される。従って、負荷電流キャンセルスキームの電力及びノイズペナルティは低い。
【0031】
図4は、電流ドメイン増分2ステップアナログ-デジタル変換器の回路図である。この回路において、第1アナログ-デジタル変換器の残差が第2ステージのアナログ-デジタル変換器により変換される。第1ステージは、電流制御発振器(CCO)として実装されている。積分器の出力が基準電圧V
refと比較され、コンパレータの出力がクロック信号clkに同期されている。同期されたコンパレータ出力が、DACフィードバックパルスをトリガーする。DACフィードバックは、仮想接地ノードに放電されるプリチャージキャパシタ(SC DAC)により実現される。1つの完全な積分期間T
int中のフィードバックパルスの総数n
countが、コース(course)アナログ-デジタル変換値を提供する。
【0032】
第1ステージは、独立型として機能し得てもよく、或いは、分解能を高めるために、CCOの出力残差vresidueのデジタル化により微細な変換結果と組み合わせてもよい。2ステージの概念は、大きいサンプリングキャパシタ(プロセス、電圧及び温度変動(PVT)に関して積分キャパシタCintに相関しない可能性がある)を必要とするため、上述の出力キャンセル技術の適用は、PVTが本質的にロバストであるため、特に有用である。
【0033】
図5は、
図4の回路のタイミング図である。
図5は、clk信号clk、サンプル信号パルス、リセット信号パルス、パルス電圧V
pulse、及び、積分された出力電圧V
out_intを時間tの関数として示している。
【0034】
バッファ及び線形トランスコンダクタでのオフセットが、OTAの入力にて増大されたオフセットになる。これは線性には影響を与えないが、一定のDACオフセットエラーを生じる。これは欠点ではない。なせなら、演算トランスコンダクタンス増幅器自体がオフセットを示すからである。従って、DACオフセットはいずれにせよ、高精度要件のアプリケーションにおいては較正されなくてはならない。
【0035】
上述の方法を用いることで、出力電流が正確に測定され、且つ、正確なキャンセル電流に変換される。こうして、従来の較正支援方法とは対照的に、線形性が保証される。この方法は、DACパルスの終わりに仮想接地電位vnの静的偏差Δvn,statを考慮するという利点を有する。上述の方法は、電圧及び電流の両方のドメイントポロジーに関して静的エラーを正確に排除する。
【符号の説明】
【0036】
Cint 積分キャパシタ
CL 負荷容量
clk クロック信号
ClkDAC DACクロック信号
Clk1 第1クロック信号
Clk2 第2クロック信号
gm トランスコンダクタンス
gm2 追加のトランスコンダクタンス
gmff フィードフォワードトランスコンダクタンス
gnd 接地電位
Iin 入力電流
Iload 負荷電流
Iout 出力電流
Iout,cancel キャンセル電流
ncount フィードバックパルスの総数
R 抵抗器
Rsense 検出抵抗器
VDAC 供給電圧
vn 仮想接地電位
Δvn,dyn 仮想接地電位の動的偏差
Δvn,stat 仮想接地電位の静的偏差
Vout_int 積分された出力電圧
Vpulse パルス電圧
Vref 基準電圧