(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】スライドファスナー用の止め具
(51)【国際特許分類】
A44B 19/38 20060101AFI20220905BHJP
【FI】
A44B19/38
(21)【出願番号】P 2020556386
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2018041214
(87)【国際公開番号】W WO2020095363
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】董 宥辰
(72)【発明者】
【氏名】児島 佳敬
(72)【発明者】
【氏名】野崎 二郎
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/161784(WO,A1)
【文献】特開2004-248809(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061208(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 19/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドファスナー(1)用の分離可能な止め具であって、
上翼板(51)、下翼板(52)、及び上下方向に延びて前記上翼板(51)と前記下翼板(52)を連結する連結柱(53)を有すると共に前後方向に移動するスライダー(5)の後端位置よりも後方に配置される第1基部(10)を含む第1部材(7)と、
前記前後方向
及び前記上下方向に直交する左右方向に沿って前記スライダー(5)内に挿入される挿入部(40)と、前記挿入部(40)が連結し、前記第1基部(10)に重ね合わされる第2基部(20)を含む第2部材(8)を備え、
前記スライダー(5)の後方から前記スライダー(5)内に挿入される挿入部(31)が前記第1基部(10)に連結し、この第1基部(10)に連結した挿入部(31)は、前記前後方向から見て前記左右方向に関して前記スライダー(5)を斜めに保持するように構成される、止め具。
【請求項2】
前記第1基部(10)に連結した前記挿入部(31)は、
前記前後方向から見て前記左右方向に関して傾斜した上面領域(31m)及び/又は下面領域(31n)を有する、請求項1に記載の止め具。
【請求項3】
前記第1及び第2基部(10,20)が磁着するように構成され、前記第1及び第2基部(10,20)間に生じる磁気吸引力に応じて前記第1及び第2基部(10,20)の間隔が減少する、請求項1又は2に記載の止め具。
【請求項4】
前記第1基部(10)は、第1接触部(14)及び第1補助接触部(61)を含み、
前記第2基部(20)は、第2接触部(24)及び第2補助接触部(62)を含み、
前記第1及び第2接触部(14,24)は、前記第1及び第2基部(10,20)の重ね合わせ時にお互いに接触し、前記第1及び第2基部(10,20)の間隔の減少に応じて前記第1基部(10)及び/又は前記第2基部(20)に回転を生じさせ、
前記第1及び第2補助接触部(61,62)は、前記第1基部(10)及び/又は前記第2基部(20)の回転の過程においてお互いに接触し、前記第1基部(10)及び/又は前記第2基部(20)の回転のための追加の接触点を提供する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の止め具。
【請求項5】
前記第1及び第2補助接触部(61,62)は、前記第1基部(10)及び/又は前記第2基部(20)の回転の過程においてお互いに干渉するように構成される、請求項4に記載の止め具。
【請求項6】
前記第1及び第2補助接触部(61,62)は、前記第1基部(10)及び/又は前記第2基部(20)の回転方向に即した周方向に沿って延びる傾斜面(903,907,914,918)を有する、請求項4又は5に記載の止め具。
【請求項7】
前記第1及び第2補助接触部(61,62)は、前記第1基部(10)及び/又は前記第2基部(20)の回転方向に即した周方向に沿って延びる傾斜面(903,907,914,918)と前記周方向において前記傾斜面(903,907,914,918)に隣接した頂面(902,906,913,917)を有し、前記傾斜面(903,907,914,918)と前記頂面(902,906,913,917)が縁(93,94,91,92)を形成する、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の止め具。
【請求項8】
前記第1基部(10)が第3接触部(34)を更に含み、前記第2基部(20)が第4接触部(44)を更に含み、前記第1及び第2基部(10,20)の重ね合わせ時、前記第3及び第4接触部(34,44)が接触する、請求項4乃至7のいずれか一項に記載の止め具。
【請求項9】
前記第3及び第4接触部(34,44)の一方が摺動面を含み、前記第3及び第4接触部(34,44)の他方が前記摺動面上を摺動する摺動部を含む、請求項8に記載の止め具。
【請求項10】
前記第2基部(20)は、前記第1基部(10)に対して、少なくとも前記第1及び第2接触部(14,24)の接触と前記第3及び第4接触部(34,44)の接触に応じて傾斜した姿勢を取る、請求項8又は9に記載の止め具。
【請求項11】
前記第1及び第2接触部(14,24)が接触し、前記第3及び第4接触部(34,44)が接触した状態下において、左側のファスナーテープ(3)が存在する平面に対する前記挿入部(40)のなす角θの最大値は、20°以下である、請求項10に記載の止め具。
【請求項12】
前記第3及び第4接触部(34,44)の一方が、前記挿入部(40)の挿入端に隣接して設けられた凸状の摺動部を含む、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の止め具。
【請求項13】
前記第1及び第2補助接触部(61,62)は、前記スライダー(5)内に前記挿入部(40)が進入するタイミングに同期してお互いに接触する、請求項
4乃至12のいずれか一項に記載の止め具。
【請求項14】
前記第1接触部(14)及び第1補助接触部(61)は、前記第1基部(10)の第1外周部(13)に設けられ、また、前記第1外周部(13)の周方向において異なる位置に設けられ、
前記第2接触部(24)及び第2補助接触部(62)は、前記第2基部(20)の第2外周部(23)に設けられ、また、前記第2外周部(23)の周方向において異なる位置に設けられる、請求項
4乃至13のいずれか一項に記載の止め具。
【請求項15】
前記第1接触部(14)は、前記第1基部(10)の後端部(10R)に設けられ、
前記第2接触部(24)は、前記第2基部(20)の後端部(20R)に設けられる、請求項
4乃至14のいずれか一項に記載の止め具。
【請求項16】
前記第1及び第2接触部(14,24)の一方が、前記第1基部(10)及び/又は前記第2基部(20)の回転方向に即した周方向に沿って延びる傾斜面(241)を有し、前記第1及び第2接触部(14,24)の他方が、前記傾斜面(241)上を摺動する摺動部(141)を有する、請求項
4乃至15のいずれか一項に記載の止め具。
【請求項17】
前記第1基部(10)は、磁石又は磁性体(11)と、前記磁石又は磁性体(11)を包含する包含部(12)と、前記包含部(12)の外周に設けられた第1外周部(13)を更に含み、
前記第2基部(20)は、前記磁石又は磁性体(11)と磁気的に結合される磁石又は磁性体(21)と、前記第1及び第2基部(10,20)が重ね合わされる時、前記包含部(12)に対向する対向面(22)と、前記対向面(22)の外周に設けられた第2外周部(23)を更に含む、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の止め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スライドファスナー用の止め具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ヒトの指による押圧に基づいて回転が達成されるスライドファスナー用の止め具を開示する。同じ文献の段落0041に記載のように、摺動部が弧状傾斜面上を摺動し、回転軸線AXに関する第1及び第2本体部の少なくとも一方の回転と、回転軸線AXに関する第1及び第2本体部間の軸方向間隔の変化が生じる。
【0003】
特許文献2は、磁気吸引力を利用して止め具のより簡単な操作を可能にするスライドファスナー用の止め具を開示する。同文献の
図10に示すように、凸部と凹部の嵌合によって摺接板のアライメントが確保される。上述の凸部と凹部の嵌合のために磁石に孔が形成される。同文献の
図9は、差込部材の枢動を促進するために追加の磁石を設けることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/061208号
【文献】特許第4152216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、スライダーの上部フランジ部と下部フランジ部の間からスライダー内に挿入される第1棒部を開示するが、この第1棒部の移動軌跡について何ら検討するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る止め具は、スライドファスナー用の分離可能な止め具であって、前後方向に移動するスライダーの後端位置よりも後方に配置される第1基部を含む第1部材と、前記前後方向に直交する左右方向に沿って前記スライダー内に挿入される挿入部と、前記挿入部が連結し、前記第1基部に重ね合わされる第2基部を含む第2部材を備え、前記スライダーの後方から前記スライダー内に挿入される挿入部が前記第1基部に連結し、この第1基部に連結した挿入部は、前記左右方向に関して前記スライダーを斜めに保持するように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、スライダーへの挿入部の円滑な挿入が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一態様に係る閉じたスライドファスナーの後端部の概略的な斜視図である。スライダーがスライドファスナーの後端部から前方に離れており、その図示が省略されている。
【
図2】本開示の一態様に係る閉じたスライドファスナーの後端部の概略的な上面模式図である。
【
図3】本開示の一態様に係る開いたスライドファスナーの後端部の概略的な斜視図である。
【
図4】本開示の一態様に係る開いたスライドファスナーの後端部の概略的な上面模式図である。第1部材の挿入部がスライダー内に挿入された状態が模式的に示される。
【
図5】本開示の一態様に係る開いたスライドファスナー用止め具の第1部材の概略的な斜視図である。
【
図6】本開示の一態様に係る開いたスライドファスナー用止め具の第1部材の概略的な斜視図であり、第1部材の挿入部がスライダー内に挿入されている。
【
図7】本開示の一態様に係る開いたスライドファスナー用止め具の第1部材の概略的な下面模式図である。
【
図8】
図2の一点鎖線VIII-VIIIに沿う概略的な断面模式図である。
【
図9】
図7の一点鎖線IX-IXに沿う概略的な断面模式図である。上下方向に一致する軸線AXに直交する左右方向又は平面P1,P2に関して上面領域及び下面領域が角度θ1,θ2で傾斜している。ファスナーテープが二点破線で示される。
【
図10】本開示の一態様に係るスライドファスナー用止め具の左側面図である。
【
図11】本開示の一態様に係るスライドファスナー用止め具の右側面図である。
【
図12】本開示の一態様に係るスライドファスナー用止め具において左右方向に沿って挿入部がスライダー内に挿入されることを示す概略図である。
【
図13】本開示の一態様に係るスライドファスナー用止め具において第1及び第2基部の間隔の減少に応じて第1基部に対して第2基部が回転することを示す概略図である。図示の便宜上、第1部材が点線で示される。
【
図14】本開示の一態様に係るスライドファスナー用止め具において第1及び第2基部の間隔の減少に応じて第1基部に対して第2基部が回転することを示す概略図である。図示の便宜上、第1部材が点線で示される。
【
図15】本開示の一態様に係るスライドファスナー用止め具において第1及び第2基部の間隔の減少に応じて第1基部に対して第2基部が回転することを示す概略図である。図示の便宜上、第1部材が点線で示される。
【
図16】本開示の一態様に係るスライドファスナー用止め具において第1及び第2基部の間隔の減少に応じて第1基部に対して第2基部が回転することを示す概略図である。図示の便宜上、第1部材が点線で示される。
【
図17】スライダーの下方に挿入部が位置した状態を示す概略図である。
【
図18】本開示の別態様に係る閉じたスライドファスナーの後端部の概略的な上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1乃至
図18を参照しつつ非限定の様々な特徴について説明する。ある実施形態に関して記述されるある特徴は、その実施形態に限らず、本願に図示又は説明されていない他の様々な実施形態に通用するものと理解される。従って、ある実施形態から抽出されるある特徴は、その実施形態から抽出される他の特徴との組み合わせを必ずしも必要としないものと理解される。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている場合がある。
【0010】
図1は、閉じたスライドファスナー1の後端部の概略的な斜視図である。スライダー5がスライドファスナー1の後端部から前方に離れており、その図示が省略されている。
図2は、閉じたスライドファスナー1の後端部の概略的な上面模式図である。
図3は、開いたスライドファスナー1の後端部の概略的な斜視図である。
図4は、開いたスライドファスナー1の後端部の概略的な上面模式図である。第1部材7の挿入部31がスライダー5内に挿入された状態が模式的に示される。
図5は、開いたスライドファスナー用止め具6の第1部材7の概略的な斜視図である。
図6は、開いたスライドファスナー用止め具6の第1部材7の概略的な斜視図であり、第1部材7の挿入部31がスライダー5内に挿入されている。
図7は、開いたスライドファスナー用止め具6の第1部材7の概略的な下面模式図である。
図8は、
図2の一点鎖線VIII-VIIIに沿う概略的な断面模式図である。
図9は、
図7の一点鎖線IX-IXに沿う概略的な断面模式図である。上下方向に一致する軸線AXに直交する左右方向又は平面P1,P2に関して上面領域及び下面領域が角度θ1,θ2で傾斜している。ファスナーテープが二点破線で示される。
図10は、スライドファスナー用止め具6の左側面図である。
図11は、スライドファスナー用止め具6の右側面図である。
図12は、スライドファスナー用止め具6において左右方向に沿って挿入部40がスライダー5内に挿入されることを示す概略図である。
図13乃至
図16は、スライドファスナー用止め具6において第1及び第2基部10,20の間隔の減少に応じて第1基部10に対して第2基部20が回転することを示す概略図である。図示の便宜上、第1部材7が点線で示される。
図17は、スライダー5の下方に挿入部40が位置した状態を示す概略図である。
図18は、閉じたスライドファスナー1の後端部の概略的な上面模式図である。
【0011】
スライドファスナー1は、左右一対のファスナーストリンガー2、ファスナーストリンガー2を開閉するためのスライダー5、及び分離可能な止め具6を有する。ファスナーストリンガー2は、ファスナーテープ3の対向側縁にファスナーエレメント4が取り付けられたものである。ファスナーテープ3は、典型的には、織物、編物、又はこれら両方の組織を含む布である。ファスナーエレメント4は、典型的には、樹脂又は金属エレメントの配列を含み、又はコイル状エレメントを含む。スライダー5は、典型的には、樹脂製又は金属製スライダーである。スライダー5の前進により左右のファスナーエレメント4及びファスナーストリンガー2が結合し、スライドファスナー1が閉じられる。スライダー5の後進により左右のファスナーエレメント4及びファスナーストリンガー2が非結合になり、スライドファスナー1が開けられる。スライドファスナー1が分離可能な止め具6を有するため、左右一対のファスナーストリンガー2は、お互いに完全に分離した状態を取ることができる。なお、本明細書において「典型的」は、例を示すが、これに限られないことを意図する。
【0012】
図4及び
図6から分かるように、スライダー5は、上翼板51、下翼板52、上翼板51と下翼板52を連結する連結柱53、及び上翼板51の側縁から下翼板52に向けて突出した、又は下翼板52の側縁から上翼板51に向けて突出した1以上のフランジ部54を有する。上翼板51及び/又は下翼板52には引手取付柱(不図示)が結合し、引手(不図示)が取り付けられ得る。スライダー5は、連結柱53の両側に前口57を有し、前口57の反対側に一つの後口58を有する。スライダー5が後進する時、結合状態の左右のファスナーエレメント4がスライダー5の後口58からスライダー5内に進入し、スライダー5の連結柱53により分離した非結合状態の左右のファスナーエレメント4がスライダー5の左右の前口57を介してスライダー5外に出る。前後方向においてスライダー5が後端位置に在る時、止め具6が分離可能である。後述の説明からも理解されるように、止め具6の第1部材7から第2部材8を離すことにより簡単に止め具6を分離状態にすることができる。
【0013】
本明細書において、スライダー5の移動方向に照らして「前後方向」が理解される。スライダー5により結合・非結合になる左右一対のファスナーストリンガー2に照らして「左右方向」が理解される。「上下方向」は、前後方向及び左右方向に直交する方向である。本明細書に含まれる特定の記述に照らして、これらの用語が再定義可能である。例えば、上下方向は、スライダー5の連結柱53の延在方向に一致する。
【0014】
止め具6は、分離可能な止め具であって、お互いに別部材の第1部材7と第2部材8を有する。第1部材7と第2部材8は、お互いに結合及び分離可能である。第1部材7が左右一対のファスナーテープ3の一方に固定され、第2部材8が、左右一対のファスナーテープ3の他方に固定される。すなわち、第1部材7が左側ファスナーテープ3に固定され、第2部材8が右側ファスナーテープ3に固定される形態の他、第1部材7が右側ファスナーテープ3に固定され、第2部材8が左側ファスナーテープ3に固定される形態が想定される。第1部材7は、例えば、金型内にファスナーテープ3を配置した状態で溶融プラスチックを射出成形することにより製造される。第2部材8についても同様である。
【0015】
第1部材7は、前後方向に移動するスライダー5の後端位置よりも後方に配置される第1基部10と、前後方向における後端位置にスライダー5を位置決めするための位置決め部30を有する。位置決め部30は、第1基部10から前方に延びる部分である。位置決め部30は、スライダー5の後口58を介してスライダー5内に挿入される挿入部31、スライダー5のフランジ部54が溝前端から導入される溝32、挿入部31との間で溝32を挟む壁33を有する。挿入部31が、スライダー5の後口58を介してスライダー5内に挿入することによってスライダー5を前後方向における後端位置に保持することが促進され、スライダー5内への挿入部40のより円滑な挿入が促進される。
【0016】
挿入部31がスライダー5の後口58を介してスライダー5内に挿入される時、スライダー5の左側のフランジ部54が溝32に挿入される。溝32の左右幅が適切に設定され、位置決め部30上におけるスライダー5の保持が更に促進される。スライダー5が後端位置に在る時、位置決め部30の壁33がスライダー5の左側のフランジ部54に接触し、スライダー5の左方変位を阻止する。なお、位置決め部30が省略される形態も想定される。
【0017】
第2部材8は、前後方向に直交する左右方向に沿ってスライダー5内に挿入される挿入部40と、挿入部40の前端に結合したファスナーエレメント部41と、前後方向に延びる壁42と、挿入部40及び壁42が連結し、第1基部10に重ね合わされる第2基部20を含む。挿入部40は、スライダー5の上翼板51と下翼板52の間に挿入され、幾つかの形態では、上翼板51から下方に突出した上部フランジ部54と下翼板52から上方に突出した下部フランジ部54の間の隙間を介して上翼板51と下翼板52の間に挿入される。このように、挿入部40は、狭い上下幅の隙間を上手く通過することが要求される。なお、第2部材8の挿入部40は、スライダー5内に挿入される部分と第2基部20の間に後述の溝88(
図5参照)に挿入される部分も含む。
【0018】
挿入部40は、典型的には、第2基部20とファスナーエレメント部41の間を直線状に延びる挿入端を有する。挿入部40の挿入端は、典型的には、挿入方向において先細りに形状付けられる。挿入部40は、スライダー5内へのより円滑な挿入のため、上下方向においてファスナーエレメント部41よりも小さい厚みを有する。
【0019】
壁42は、スライダー5のフランジ部54に衝突する部分を含み、上下方向において挿入部40よりも大きい厚みを有し得る。スライダー5の上翼板51及び下翼板52に一対の右側のフランジ部54が設けられる場合、これに対応して、上下一対の壁42が設けられる。ファスナーエレメント部41は、スライダー5の前進によってスライダー5内に進入し、左側ファスナーエレメント4と結合する(
図12参照)。ファスナーエレメント部41は、挿入部40の枢動に際してスライダー5に衝突しないように適切な位置に設けられる。
【0020】
挿入部31は、スライダー5に挿入された第2部材8の挿入部40を少なくとも部分的に受容する受容部35を有する。スライダー5において挿入部31の受容部35に第2基部20の挿入部40が挿入され、第1及び第2部材7,8の上下方向の分離が回避又は抑制される。スライダー5の上翼板51及び下翼板52に一対の左側のフランジ部54が設けられる場合、これに対応して、位置決め部30には、上下一対の溝32、及び上下一対の壁33が設けられる(
図9参照)。挿入部31、溝32、及び壁33は、いずれも第1基部10から離間するように前後方向に沿って延びる。
【0021】
スライダー5が前後方向における後端位置から前進する過程で(
図12参照)、スライダー5の連結柱53と左右のフランジ部54の協働により左側のファスナーエレメント4と第2部材8のファスナーエレメント部41が結合する。第1部材7の挿入部31の受容部35に第2部材8の挿入部40が挿入され、位置決め部30と挿入部40が結合する。第2部材8の挿入部40は、第1基部10と第2基部20の重ね合わせ過程で反時計回りに枢動し、左右方向に沿ってスライダー5内に挿入される。スライダー5の前進に応じて第1部材7の挿入部31の受容部35に挿入部40が完全に挿入される。後述の記述から分かるように、第1基部10と第2基部20の重ね合わせは、第1基部10及び/又は第2基部20の回転を伴う。
【0022】
第1部材7の第1基部10は、第1接触部14、第1補助接触部61、及び(オプションの)第3接触部34を含む。他方、第2基部20は、第1接触部14に接触可能である第2接触部24、第1補助接触部61に接触可能である第2補助接触部62、及び(オプションの)第3接触部34に接触可能である第4接触部44を含む。本実施形態においては、第1及び第2接触部14,24は、第1及び第2基部10,20の重ね合わせ時にお互いに接触し、第1及び第2基部10,20の間隔の減少に応じて第1基部10及び/又は第2基部20に回転を生じさせる。更に、第1及び第2補助接触部61,62は、第1基部10及び/又は第2基部20の回転の過程においてお互いに接触して第1基部10及び/又は第2基部20の回転のための追加の接触点を提供する。
図13に示す回転の初期段階において第1及び第2接触部14,24がお互いに接触し、
図13に続く
図14又は
図15に示す段階において第1及び第2補助接触部61,62がお互いに接触する。このように第1及び/又は第2基部10,20の回転の進展に応じて第1及び第2基部10,20の接触箇所の数が増える。これにより、第1及び/又は第2基部10,20の安定した回転が促進され、及び/又は、スライダー5内へ挿入部40が上手く挿入される可能性が高められる。
【0023】
第1及び第2基部10,20の重ね合わせ時、第3及び第4接触部34,44が接触する。第2基部20は、第1基部10に対して、少なくとも第1及び第2接触部14,24の接触と第3及び第4接触部34,44の接触に応じて傾斜した姿勢を取る。第2基部20に対して結合した挿入部40も第1基部10(又は第1部材7の位置決め部30により保持されたスライダー5)に対して傾斜した姿勢を取る。
図13に示す回転の初期段階において、第2基部20及び/又は挿入部40の傾斜の程度が最大である。
図16に示す回転の後期段階において第2基部20及び/又は挿入部40の傾斜の程度が最小である。挿入部40の傾斜の程度は、第1及び/又は第2基部10,20の回転の進行に応じて小さくなり、これにより、スライダー5内に挿入部40が上手く挿入されることが促進される。なお、第1基部10と第2基部20が重ね合わされる時、第1基部10と第2基部20がお互いに平行に配向される形態も想定される。
【0024】
第1部材7と第2部材8が結合した状態下における第2基部20の姿勢を基準として、上述した第1基部10に対する第2基部20の傾斜姿勢を把握することもできる。追加又は代替として、上述した第1基部10に対する第2基部20の傾斜姿勢は、左側のファスナーテープ3が存在する平面に対して挿入部40が傾斜して延びている状態から把握することができる。第1及び第2接触部14,24が接触し、第3及び第4接触部34,44が接触した状態下において、左側のファスナーテープ3が存在する平面に対する挿入部40のなす角θの最大値は、20°以下、又は15°以下、又は10°以下である。なお、第1部材7と第2部材8が結合した状態下において、左側のファスナーテープ3が存在する平面に対する挿入部40のなす角θは0°である。
【0025】
必ずしもこの限りではないが、第1及び第2基部10,20が磁着するように構成され、第1及び第2基部10,20間に生じる磁気吸引力に応じて第1及び第2基部10,20の間隔が減少する。第1基部10と第2基部20が磁気吸引力に応じて重ね合わされると、第1接触部14と第2接触部24の接触に起因して第1基部10及び/又は第2基部20が回転し、挿入部40が枢動を開始する。第1基部10と第2基部20を磁着可能な程度まで近づけるだけで磁気吸引力により第1基部10と第2基部20が適切にアライメントされ、スライダー5内に挿入部40が挿入される。分離可能な止め具の操作が困難である幼児や要介護者或いは片手又は両手に自由度がないクライマーにとっても開閉作業を可能とする止め具が提供される。言うまでも無く、本止め具は、健常者にとっても便利である。
【0026】
幾つかの場合、第1基部10と第2基部20の両方に永久磁石が導入されるが、必ずしもこの限りではなく、一方の磁石が磁性体により代替される。第1基部10は、磁石又は磁性体11と、磁石又は磁性体11を包含する包含部12と、包含部12の外周に設けられた第1外周部13と、第1外周部13に設けられた第1フック81と、包含部12との間に溝85を形成するように設けられた壁86を含む。上述の第1接触部14、第1補助接触部61、及び第3接触部34は、第1基部10の第1外周部13に設けられ、また、第1外周部13の周方向において異なる位置に設けられる。
【0027】
第2基部20は、第1基部10の磁石又は磁性体11と磁気的に結合される磁石又は磁性体21と、第1基部10と第2基部20が重ね合わされる時、包含部12(特には、その頂面121)に対向する対向面22と、対向面22の外周に設けられた第2外周部23と、第1フック81と係合して第1及び第2基部10,20の分離を阻止する第2フック82を含む。上述の第2接触部24、第2補助接触部62、及び第4接触部44は、第2基部20の第2外周部23に設けられ、また、第2外周部23の周方向において異なる位置に設けられる。なお、第1フック81と第2フック82は、スライダー5内に挿入部40が挿入された後にスライダー5が前進することにより係合する。なお、第1基部10の磁石11を第1磁石と呼び、第2基部20の磁石21を第2磁石と呼んでも良い。
【0028】
第1接触部14と第2接触部24は様々な形状及び大きさを持つことができる。幾つかの形態では、第2接触部24が、第1基部10及び/又は第2基部20の回転方向に即した周方向に沿って延びる傾斜面241を有し(
図3参照)、第1接触部14が、傾斜面241上を摺動する摺動部141を有する(
図5及び
図6参照)。これとは反対に、第1接触部14が傾斜面を有し、第2接触部24が摺動部を有する形態も想定される。第1基部10及び第2基部20が、相補的な傾斜面を有する形態も想定される。包含部12の後方に第1接触部14が配置され、第1接触部14の十分な大きさが確保される。第2接触部24は、第1接触部14の位置及び大きさに対応して第2基部20において適切な位置及び大きさを有するように設計される。
【0029】
第1基部10は、位置決め部30に隣接して位置付けられる前端部10Fと、前後方向において前端部10Fの反対側に位置付けられる後端部10Rを有する。第1基部10の前端部10Fは、包含部12よりも前方に位置する第1外周部13の部分を含む。第1基部10の後端部10Rは、包含部12よりも後方に位置する第1外周部13の部分を含む。同様、第2基部20は、挿入部40に隣接して位置付けられる前端部20Fと、前後方向において前端部20Fの反対側に位置付けられる後端部20Rを有する。第2基部20の前端部20Fは、対向面22よりも前方に位置する第2外周部23の部分を含む。第2基部20の後端部20Rは、対向面22よりも後方に位置する第2外周部23の部分を含む。
【0030】
第3接触部34は、少なくとも部分的に第1基部10の前端部10Fに設けられ、第1接触部14は、少なくとも部分的に第1基部10の後端部10Rに設けられる。第1補助接触部61は、第1基部10において前端部10Fと後端部10Rの中間に設けられる。第4接触部44は、少なくとも部分的に第2基部20の前端部20Fに設けられる。第2接触部24は、少なくとも部分的に第2基部20の後端部20Rに設けられる。第2補助接触部62は、第2基部20において前端部20Fと後端部20Rの中間に設けられる。
【0031】
第1及び第2基部10,20の後端部10R,20Rに第1及び第2接触部14,24(特には、摺動部141と傾斜面241)が設けられる形態では、第1及び/又は第2基部10,20の回転過程において、第1及び第2基部10,20の後端部における第1及び第2基部10,20の上下間隔又はその変化量よりも第1及び第2基部10,20の前端部における第1及び第2基部10,20の上下間隔又はその変化量を小さくすることが促進される。挿入部40の上下変位量が効果的に低減され、スライダー5に挿入部40が上手く挿入される可能性が高められる。
【0032】
第1及び第2基部10,20の後端部10R,20Rに第1及び第2フック81,82が設けられる。第1フック81と包含部12の間で第1接触部14が挟まれる。第1フック81は、包含部12から第1接触部14よりも離れて設けられ、端的には、第1接触部14の後方(第1基部10において最も後方)に位置付けられる。第2フック82は、対向面22から第2接触部24よりも離れて設けられ、端的には、第2接触部24の後方(第2基部20において最も後方)に位置付けられる。
【0033】
第2接触部24の傾斜面241は、異なる角度で傾斜した第1及び第2傾斜領域241a,241bを含み、第1傾斜領域241aよりも大きい角度で傾斜した第2傾斜領域241bが回転の方向に関して第1傾斜領域241aよりも下流側に設けられる(
図3参照)。
図13及び
図14に示す回転の初期段階における挿入部40の枢動速度よりも
図15及び
図16に示す回転の後期段階の挿入部40の枢動速度を大きくすることができ、スライダー5内への挿入部40の挿入可能性を高めることができる。
【0034】
第1接触部14(摺動部141)と第2接触部24(傾斜面241)の接触が、第1基部10及び/又は第2基部20の回転(追加又は代替として、挿入部40の枢動)のための第1接触点を提供する。なお、本願明細書において、「接触点」とは、狭い領域での接触(例えば、点接触)に限らず、広い領域での接触(例えば、面接触)も包含する。第1外周部13は、第1接触部14に加えて、第3接触部34を有する。第2外周部23は、第2接触部24に加えて、第4接触部44を有する。第3接触部34と第4接触部44の接触が、第1基部10及び/又は第2基部20の回転(追加又は代替として、挿入部40の枢動)のための第2接触点を提供する。幾つかの形態では、第3接触部34が摺動面(例えば、平坦面)を含み、第4接触部44がその摺動面上を摺動する摺動部を含む。第3接触部34に含まれる摺動面は、後端位置に在るスライダー5の後方に隣接して設けられ、より詳細には、第1部材7の挿入部31の受容部35の上面35mに(後方に)隣接して設けられる。摺動面は、平坦面又は傾斜面又はこれらの組み合わせであり得る。第4接触部44は、前後方向に延びる挿入部40の挿入端40mに(後方に)隣接して設けられた凸状の摺動部であり得る。
【0035】
第1接触部14と第3接触部34の間に包含部12が配置される。包含部12は、第1及び第3接触部14,34の間で挟まれる。第2接触部24と第4接触部44の間に対向面22が配置される。対向面22は、第2及び第4接触部24,44の間で挟まれる。第1接触部14は、上下方向において、第3接触部34よりも下方に位置付けられる。上下方向において、第2接触部24の最も上方の位置は、第4接触部44の最も上方の位置と同等である。従って、
図13に示すように第1基部10と第2基部20が重ね合わされる時、第1部材7に対して第2部材8が傾斜して配向される。この時、第1部材7の挿入部31の延在方向が前方に一致し、第2部材8の挿入部40の延在方向が前方斜め右上に向かう方向に一致する。第1基部10及び/又は第2基部20の回転(追加又は代替として、挿入部40の枢動)に応じて第2部材8の挿入部40の延在方向が第1部材7の挿入部31の延在方向(つまり、前方)に一致するように変化する。挿入部40の傾斜の程度は、第1及び/又は第2基部10,20の回転の進行に応じて小さくなり、スライダー5内に挿入部40が上手く挿入されることが促進される。第2部材8の挿入部40の延在方向が、前方斜め右下に向かう方向から第1部材7の挿入部31の延在方向(つまり、前方)に一致するように変化する形態も想定される。
【0036】
幾つかの形態では、挿入部31は、左右方向に関してスライダー5を斜めに保持するように構成され(
図9参照)、これによりスライダー5への挿入部40の円滑な挿入が促進される。第1基部10及び/又は第2基部20の回転(追加又は代替として、挿入部40の枢動)に応じて上述のように変位する第2部材8の挿入部40が上手くスライダー内に挿入される可能性が高められる。挿入部31は、左右方向に関して傾斜した上面領域31m及び/又は下面領域31nを有する。上面領域31m及び下面領域31nは、左右方向又は平面P1,P2又はファスナーテープ3の上面又は下面に関して角度θ1,θ2で傾斜している。平面P1,P2は、上下方向に一致する軸線AXに直交する又はファスナーテープ3の上面又は下面に平行な平面である。上下方向において受容部35の開口幅W35を定める上面35mと下面35nは、左右方向又は平面P1,P2に関して平行に配向される。従って、受容部35の上板部及び下板部の厚みが左右方向において変化する。
図9の図示例では、上面領域31m及び下面領域31nは、右側に向かって上方に傾斜した傾斜領域である。上面領域31m及び下面領域31nは、右側に向かって下方に傾斜した傾斜領域である形態も想定される。挿入部40に1以上の凸部が設けられ、これによりスライダー5が斜め保持される形態も想定される。
【0037】
第1基部10及び第2基部20の重ね合わせの初期段階、或いは、第1基部10及び/又は第2基部20の回転の初期段階(例えば、
図13及び
図14に示す状態)において第1及び第2接触部14,24の接触による第1接触点と第3及び第4接触部34,44の接触による第2接触点が得られる。第1基部10と第2基部20の重ね合わせの態様に応じて、第1接触点が第2接触点よりも時間的に先に生じる(逆も然り)。第1接触点と第2接触点が時間軸において同時に生じる必要はない。
【0038】
第1及び第2補助接触部61,62は、摺動部141が傾斜面241を下る途中で互いに接触する。第1及び第2補助接触部61,62の接触が遅くとも
図15及び
図16に示す回転の後期段階において得られるように第1及び第2補助接触部61,62が適切に構成される。例えば、補助接触部は、外周部において適切な位置に配置され、及び/又は適切な形状及び大きさに設計される。第1補助接触部61は、周方向において第1接触部14と第3接触部34の間に設けられる。同様、第2補助接触部62は、周方向において第2接触部24と第4接触部44の間に設けられる。第1及び第2補助接触部61,62は、スライダー5内に挿入部40が進入するタイミングに同期してお互いに接触する。
【0039】
1つ又は2つ以上の第1補助接触部61が第1外周部13に設けられ、1つ又は2つ以上の第2補助接触部62が第2外周部23に設けられる様々な形態が想定される。第1及び第2接触部14,24による接触点と第3及び第4接触部34,44による接触点による第1基部10及び/又は第2基部20の回転を阻害しないように第1及び第2補助接触部61,62が設けられる。従って、2つ以上の第1補助接触部61が第1外周部13に設けられる場合、上下方向における各第1補助接触部61の位置が異なり得る。同様、2つ以上の第2補助接触部62が第2外周部23に設けられる場合、上下方向における各第2補助接触部62の位置が異なり得る。
【0040】
幾つかの形態では、第1及び第2補助接触部61,62は、第1基部10及び/又は第2基部20の回転の過程においてお互いに干渉するように構成される。第1及び第2補助接触部61,62は、第1基部10及び/又は第2基部20の回転方向に即した周方向に沿って延びる傾斜面903,907,914,918を有する。幾つかの形態では、第1及び第2補助接触部61,62は、頂面902,906,913,917と傾斜面903,907,914,918の組み合わせを含む。第1基部10及び/又は第2基部20の回転を大きく阻害しない態様で追加の接触点が得られる。第1及び第2基部10,20の重ね合わせ時、第1基部10の第1補助接触部61(頂面902,906、傾斜面903,907)は、第2基部20側、すなわち、下方を臨む。第1及び第2基部10,20の重ね合わせ時、第2基部20の第2補助接触部62(頂面913,917、傾斜面914,918)は、第1基部10側、すなわち、上方を臨む。
【0041】
頂面902,906,913,917と傾斜面903,907,914,918は、第1基部10及び/又は第2基部20の回転方向に即した周方向において隣接して設けられる。頂面902,906,913,917と傾斜面903,907,914,918により縁93,94,91,92が形成される。第1基部10及び/又は第2基部20の回転過程において第1補助接触部61の縁93,94と第2補助接触部62の縁91,92が干渉する。磁石11,21の間に生じる磁気吸引力に応じた第1基部10及び/又は第2基部20の回転力が勝り、第1基部10及び/又は第2基部20の回転が持続する。第1補助接触部61の縁93,94と第2補助接触部62の縁91,92が接触することにより第1基部10及び/又は第2基部20の回転安定性が高められる。なお、磁気吸引力の追加又は代替として、ヒトの親指と人差し指の間で第1基部10と第2基部20を上下から挟み込むことにより第1基部10及び/又は第2基部20が回転する形態も想定される。
【0042】
第1基部10の第1外周部13に関して更に説明する。傾斜面914,918は、頂面913,917から反時計回りに傾斜する。反時計回りの方向において傾斜面914,918に隣接して平坦面915,919が設けられる。第1及び第2基部10,20が結合する時、平坦面915,919には第2基部20の第2補助接触部62の頂面902,906が接触する(
図10及び11参照)。
【0043】
傾斜面903,907は、頂面902,906から時計回りに傾斜する。時計回りの方向において傾斜面903,907に隣接して平坦面904,908が設けられる。第1及び第2基部10,20が結合する時、平坦面904,908には第1基部10の第1補助接触部61の頂面913,917が接触する(
図10及び11参照)。
【0044】
幾つかの形態では、包含部12の頂面が平坦面である、及び/又は、包含部12が錐台形状(図示例では、円錐台形状)を有する。包含部12の頂面に対して磁石又は磁性体11をより接近して配置することができる。同様、幾つかの形態では、対向面22が平坦面であり、対向面22に対してより近接して磁石又は磁性体21を配置することが促進される。第2接触部24は、第2外周部23に設けられる。
【0045】
磁石11,21は、N極とS極を有する永久磁石である。磁石11,21の形状は、円柱形状に限らず、角柱形状(
図18参照)であっても良い。なお、第1及び第2部材7,8、特に、第1及び第2基部10,20は、十分な透磁率を有する材料、例えば、プラスチック材料(ポリアミド等)から形成される。包含部12の頂面121側に磁石又は磁性体11のS極が配置される場合、第2基部20の対向面22の直下に磁石又は磁性体21のN極が配置される。包含部12の頂面121側に磁石又は磁性体11のN極が配置される場合、第2基部20の対向面22の直下に磁石又は磁性体21のS極が配置される。なお、磁石と磁性体の組み合わせが用いられる場合、磁石の極性の配置に関して注意する必要がない。
【0046】
包含部12は、左右方向において第1外周部13の幅W13の1/2以上又は2/3以上の幅W12を有する。代替又は追加的に、磁石又は磁性体11が、左右方向において第1外周部13の幅W13の1/2以上又は2/3以上の幅W11を有する。大きな磁石又は磁性体11の使用が可能になり、スライドファスナー1が衣服に縫い付けられた状態においても十分な磁気吸引力が得られる。磁石又は磁性体21が、左右方向において第2基部20の幅W20の1/2以上又は2/3以上の幅W21を有する。対向面22は、左右方向において第2基部20の幅の1/2以上又は2/3以上の幅を有する。磁石又は磁性体21は、上下方向に直交する任意の方向に関して対向面22よりも大きい幅を有する。大きな磁石又は磁性体21の使用が可能になり、スライドファスナー1が衣服に縫い付けられた状態においても十分な磁気吸引力が得られる。
【0047】
包含部12が第1外周部13から突出するように設けられる。包含部12に包含される磁石又は磁性体11がより下方に配され、第2基部20の磁石又は磁性体21との磁気的結合の可能性が高められる。包含部12に永久磁石が包含される形態では、永久磁石11により形成される磁場がより下方にまで及ぶことができる。
図8から分かるように、永久磁石11のN極からS極に向かう磁力線は、上下方向に沿って第1外周部13を透過し、包含部12の側面122に沿って延びる線分(
図8の矢印ML1参照)を有する。第1外周部13及び/又は第1接触部14といった障害部分により妨げられない磁場の有効空間が増加し、第1及び第2基部10,20の磁気的結合の可能性が効果的に高められる。第1及び第2基部10,20が磁気的に結合すると、第2基部20が第1基部10に向かって動く。第1基部10に第2基部20が重ね合わされ、第1基部10及び/又は第2基部20が回転し、第2部材8の挿入部40がスライダー5内に挿入される。
【0048】
包含部12の側面122に沿って延びる磁力線の線分のため、第2基部20が第1基部10に関して左右方向に隣接して配置される場合にも第1及び第2基部10,20に十分な磁気的結合が生じる。第2基部20が第1基部10に向けて左右方向に沿って動き、第1基部10に第2基部20が重ね合わされる。
【0049】
包含部12が第1外周部13から突出するように設けられる形態では、包含部12は、相対的に大きい厚みを有する磁石又は磁性体11を包含することもできる。これにより第1及び第2基部10,20の磁気的結合の可能性が効果的に高められる。幾つかの形態では、上下方向における磁石又は磁性体11の厚みは、上下方向における磁石又は磁性体21の厚みよりも大きい。
【0050】
第1及び第2接触部14,24は、第1及び第2基部10,20間に生じる磁気吸引力に応じた第1及び第2基部10,20の間隔の減少に応じて第1基部10及び/又は第2基部20を回転させるように構成される。第1基部10に第2基部20が重ね合わされると、及び第2基部10,20間に生じる磁気吸引力に応じて上下方向における第1及び第2基部10,20の間隔が減少する。この時、第1基部10の第1接触部14と第2基部20の第2接触部24が接触して第1基部10及び/又は第2基部20が回転する。
【0051】
第1接触部14が第1外周部13に設けられる形態は、第1接触部14が包含部12に設けられる形態と比較してより大きな磁石又は磁性体11を用いることが許され、第1及び第2基部10,20の磁気的結合に関して有利である。第2接触部24が第2外周部23に設けられる形態も、第2接触部24が対向面22に設けられる形態と比較して第1及び第2基部10,20の磁気的結合に関して有利である。
【0052】
必ずしもこの限りではないが、包含部12は、磁石又は磁性体11を収容する第1収容空間15を有し、第1収容空間15の開口が第1蓋部材71により閉鎖され、第1蓋部材71が第1外周部13に係止する(
図8参照)。第1蓋部材71は、包含部12ではなく第1外周部13に係止し、これにより第1収容空間15の十分な容積が確保される。図示例では、第1外周部13は、包含部12(又はその側面122)に隣接して設けられた穴に設けられた被係止部73を有する。第1蓋部材71の爪が第1外周部13の被係止部73に係止する。インサート成形により包含部12に磁石又は磁性体11が部分的又は全体的に埋め込まれる形態も想定される。なお、包含部12に1以上の穴を設け、磁石又は磁性体11が部分的に露出される形態も想定される。
【0053】
必ずしもこの限りではないが、第2基部20は、磁石又は磁性体21を収容する第2収容空間25を有し、第2収容空間25の開口が第2蓋部材72により閉鎖され、第2蓋部材72が第2外周部23に係止する(
図8参照)。第2蓋部材72は、対向面22の周囲にある第2外周部23に係止し、これにより第2収容空間25の十分な容積が確保される。図示例では、第2外周部23は、対向面22の外周に設けられた穴に設けられた被係止部74を有する。第2蓋部材72の爪が第2外周部23の被係止部74に係止する。インサート成形により磁石又は磁性体21が部分的又は全体的に第2基部20に埋め込まれる形態も想定される。なお、対向面22に1以上の穴を設け、磁石又は磁性体21が部分的に露出される形態も想定される。
【0054】
第1蓋部材71を用いる場合、第1収容空間15内に磁石又は磁性体11を導入し、続いて、第1収容空間15の開口を第1蓋部材71により閉鎖するという簡単な作業で第1部材7を組み立てることができる。第2部材8についても同様である。
【0055】
壁86は、第1基部10の前端部10Fに設けられる。壁86は、第1及び/又は第2基部10,20の回転方向に即した周方向(第2基部20の回転方向とは逆方向)に下り傾斜する下り傾斜面87を有し、下り傾斜面87の下流端は、スライダー5の後端部よりも左右方向において突出する。第2部材8の挿入部40は、下り傾斜面87を下った後、スライダー5と大きく干渉することなくスライダー5内に挿入される。壁86と包含部12の間の溝85の底面は、第1外周部13の下面に一致する。壁86と第1外周部13の間には溝88が形成される。溝88は、第1部材7の挿入部31の受容部35に空間的に連通する。
図17に示すように挿入部40がスライダー5の下方に配される時、挿入部40が壁86の下り傾斜面87を反時計回りの方向に下り、続いて、時計回りに枢動してフランジ部間の隙間を介してスライダー5に進入することができる。
【0056】
第1及び第2基部10,20それぞれが、左右幅W10,W20よりも大きい前後長さL10,L20を有する。挿入部40が壁86の下方に配される時、第1部材7に対する第2部材8のなす角を小さくすることができる。例えば、挿入部40が壁86の下方からスライダー5及び溝88内に挿入される過程でスライドファスナー1が取り付けられた布が連行されてしまう可能性が低下する。
【0057】
図13乃至
図16は、第1部材7の位置が固定され、第2部材8が第1部材7に関して枢動することを示すが、必ずしもこのような態様に限られないことに留意されたい。すなわち、第2部材8の位置が固定され、第1部材7が第2部材8に関して枢動する形態も想定される。また、第1及び第2部材7,8がお互いに枢動する形態も想定される。なお、第1基部10に対して第2基部20が回転する時、第1基部10の摺動部141の位置が固定され、第2基部20の傾斜面241が周方向、端的には、反時計回り(
図12の矢印参照)に変位する。摺動部141の位置は変わらないが、傾斜面241が反時計回りに変位する。このような場合でも、摺動部141が傾斜面241の上流端から下流端まで傾斜面241上を摺動するものと言える。第2基部20に対して第1基部10が回転する時、第2基部20の傾斜面241の位置が固定され、第1基部10の摺動部141が時計回りに変位する。摺動部141は、傾斜面241の上流端から下流端まで傾斜面241上を摺動する。第1外周部13に摺動部141が設けられる形態では、摺動部141は、包含部12の頂面121と実質的に同一の高さ又はより低い高さに存在する頂面を有し得る。摺動部141が第1及び第2基部10,20の磁着の障害になることが回避又は抑制される。
【0058】
第1基部10及び/又は第2基部20の回転の少なくとも初期段階(例えば、
図13及び
図14に示す状態)において包含部12の頂面121と第2基部20の対向面22が接触しない。包含部12の頂面121と第2基部20の対向面22の接触による回転安定性が得られないが、第1及び第2基部10,20間のより強い磁気的結合が得られやすい。
【0059】
図13乃至
図16を参照して第1部材7と第2部材8が結合する過程について説明する。第1基部10の包含部12に含まれる磁石又は磁性体11と第2基部20の対向面22の直下に配される磁石又は磁性体21が磁気的に結合すると、磁石又は磁性体21が磁石又は磁性体11により吸引され、第1基部10に向けて第2基部20が動く。第1基部10に永久磁石が設けられる形態では、永久磁石11のN極からS極に向かう磁力線は、上下方向に沿って第1外周部13を透過し、包含部12の側面122に沿って延びる線分(
図8の矢印ML1参照)を有する。従って、上下方向において永久磁石11に隣接して磁石又は磁性体21が配置される状態に限らず、左右方向において永久磁石11に隣接して磁石又は磁性体21が配置される状態において両者の磁気的な結合が生じる。説明の便宜状、第1基部10に向けて第2基部20が上方に動くものとする。
【0060】
第1基部10に向けて第2基部20が上方に動くと、第1基部10と第2基部20が重ね合わされる。この時、第1基部10の第1接触部14と第2基部20の第2接触部24が接触し、また、第1基部10の第3接触部34と第2基部20の第4接触部44が接触する。つまり、第1基部10と第2基部20が2箇所で接触する。第2基部20は、第1基部10に対して、少なくとも第1及び第2接触部14,24の接触と第3及び第4接触部34,44の接触に応じて傾斜した姿勢を取る。第2接触部24が傾斜面241であり、第1接触部14が摺動部141であるため、第1及び第2基部10,20間に生じる磁気吸引力に応じて摺動部141が傾斜面241を下り始める。摺動部141の位置が固定されている前提においては傾斜面241が反時計回りの方向に沿って変位し始める。第4接触部44である摺動部が、第3接触部34である摺動面上を摺動し始める。摺動部141が傾斜面241を下るに応じて第1基部10と第2基部20の間隔が減少する。特には、第1基部10の後端部10Rと第2基部20の間隔、或いは、第2基部20の後端部20Rと第1基部10の間隔が減少する。第3接触部34と第4接触部44の接触点において第1基部10と第2基部20の間隔はゼロのままである。
【0061】
第1基部10に対する第2基部20の回転の進展(摺動部141が傾斜面241を下ることの進展)に応じて、第2補助接触部62の頂面902,906が第1補助接触部61の頂面917,913に接触する。これにより第1基部10と第2基部20が4箇所で接触する。第1基部10に対する第2基部20の回転の更なる進展(摺動部141が傾斜面241を下ることの更なる進展)に応じて、第2補助接触部62の頂面902,906と傾斜面903,907の間の縁93,94が、第1補助接触部61の頂面917,913と傾斜面918,914の間の縁91,92と干渉する。磁石11,21の間に生じる磁気吸引力に応じた第1基部10及び/又は第2基部20の回転力が勝り、第1基部10及び/又は第2基部20の回転が持続する。第1基部10に対する第2基部20の回転の更なる進展(摺動部141が傾斜面241を下ることの更なる進展)に応じて、第2補助接触部62の頂面902,906が、第1補助接触部61の傾斜面918,914に隣接した平坦面919,915に接触する。
【0062】
第1基部10に対する第2基部20の回転の進展(摺動部141が傾斜面241を下ることの進展)に応じて、第2補助接触部62が第1補助接触部61を乗り越えるものと理解することもできる。スライダー5が前進すると、挿入部40が挿入部31の受容部35に完全に差し込まれ、また、第1及び第2フック81,82がお互いに係合し、ファスナーエレメント部41が左側のファスナーエレメント4に係合する(
図1参照)。
【0063】
本明細書には次の発明も開示されている。第2基部の傾斜姿勢により挿入部の上下変位量が局所的又は全体的に低減され、スライダー内への挿入部の円滑な挿入が促進される。
[付記1]
スライドファスナー(1)用の分離可能な止め具であって、
前後方向に移動するスライダー(5)の後端位置よりも後方に配置される第1基部(10)を含む第1部材(7)と、
前記前後方向に直交する左右方向に沿って前記スライダー(5)内に挿入される挿入部(40)と、前記挿入部(40)が連結し、前記第1基部(10)に重ね合わされる第2基部(20)を含む第2部材(8)を備え、
前記第1基部(10)は、第1接触部(14)及び第3接触部(34)を含み、
前記第2基部(20)は、第2接触部(24)及び第4接触部(44)を含み、
前記第1及び第2接触部(14,24)は、前記第1及び第2基部(10,20)の重ね合わせ時にお互いに接触し、前記第1及び第2基部(20)の間隔の減少に応じて前記第1基部(10)及び/又は前記第2基部(20)に回転を生じさせ、
前記第3及び第4接触部(34,44)は、前記第1及び第2基部(10,20)の重ね合わせ時にお互いに接触し、
前記第2基部(20)は、前記第1基部(10)に対して、少なくとも前記第1及び第2接触部(14,24)の接触と前記第3及び第4接触部(34,44)の接触に応じて傾斜した姿勢を取る、止め具。
[付記2]
前記回転の進行に応じて前記挿入部(40)の傾斜の程度が小さくなる、付記1に記載の止め具。
[付記3]
前記第3接触部(34)は、前記後端位置に在る前記スライダーの後方に隣接して設けられる、付記1又は2に記載の止め具。
[付記4]
前記第4接触部(44)は、前記挿入部(40)の挿入端に隣接して設けられる、付記1乃至3のいずれか一項に記載の止め具。
[付記5]
前記第1基部(10)は、第1補助接触部(61)を更に含み、
前記第2基部(20)は、第2補助接触部(62)を更に含み、
前記第1及び第2補助接触部(61,62)は、前記第1基部(10)及び/又は前記第2基部(20)の回転の過程においてお互いに接触し、前記第1基部(10)及び/又は前記第2基部(20)の回転のための追加の接触点を提供する、付記1乃至4のいずれか一項に記載の止め具。
【0064】
上述の教示を踏まえ、当業者は、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 スライドファスナー
5 スライダー
6 止め具
7 第1部材
8 第2部材
10 第1基部
11 磁石又は磁性体
12 包含部
13 第1外周部
14 第1接触部
20 第2基部
21 磁石又は磁性体
24 第2接触部