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<図1>
  • 特許-濃縮酸素増圧装置及び濃縮酸素増圧方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】濃縮酸素増圧装置及び濃縮酸素増圧方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20220905BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
A61M16/00 305B
A61M16/10 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020556608
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(86)【国際出願番号】 JP2019031853
(87)【国際公開番号】W WO2020095503
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】P 2018210293
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509334996
【氏名又は名称】テルコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120226
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 知浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 照男
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0283834(US,A1)
【文献】特開平09-183601(JP,A)
【文献】特開2006-198004(JP,A)
【文献】特開2015-004358(JP,A)
【文献】特開平09-079166(JP,A)
【文献】特表2012-511948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0157058(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0079359(US,A1)
【文献】実開平02-088661(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
A61M 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮酸素を人工呼吸器に供給する過程に用いられる濃縮酸素増圧装置であって、
前記濃縮酸素を供給する酸素濃縮部と、
前記酸素濃縮部から前記人工呼吸器に対して供給され得る前記濃縮酸素の圧力が所定の圧力になるように増圧させる増圧部と、
を有し、
前記濃縮酸素を前記人工呼吸器と同時に麻酔器にも供給可能にし、
前記濃縮酸素を前記麻酔器に供給する場合に、前記酸素濃縮部から供給された前記濃縮酸素の一部を大気中にパージする大気開放部を有する、濃縮酸素増圧装置。
【請求項2】
酸素濃縮部で生成される濃縮酸素を人工呼吸器に供給する過程に用いられる濃縮酸素増圧方法であって、
前記酸素濃縮部から前記人工呼吸器に対して供給され得る前記濃縮酸素の圧力が所定の圧力になるように増圧部により増圧させ、
前記濃縮酸素を前記人工呼吸器と同時に麻酔器にも供給可能にし、
前記濃縮酸素を前記麻酔器に供給する場合に、前記酸素濃縮部から供給された前記濃縮酸素の一部を大気開放部により大気中にパージする、濃縮酸素増圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば人又は猫、犬などの動物に使用する人工呼吸器に対して供給する濃縮酸素の圧力を増大させるための濃縮酸素増圧装置及び濃縮酸素増圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、酸素ボンベ及び窒素ボンベ等を用い、圧縮空気を人工呼吸器に対して供給する医療装置が知られている。
【0003】
最近の医療現場においては、人工呼吸器の他に、麻酔器を一体化した医療装置のニーズが増えている。この医療装置によれば、人工呼吸器と麻酔器を同時に使用することができる。
【0004】
上記医療装置では、人工呼吸器の用途で使用する場合には、圧縮空気を人工呼吸器に対して供給することで足りるが、麻酔器の用途で使用する場合には、圧縮空気ではなく、濃縮酸素が必要となる。このため、濃縮酸素を生成ないし供給可能な酸素濃縮器を用いれば、酸素供給源が共通になり合理的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2016/098180
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、酸素供給源として酸素濃縮器を用いた場合、酸素濃縮器の機能によっては、人工呼吸器に供給される濃縮酸素の圧力が不足することになるため、人工呼吸器の正常な動作に必要となる濃縮酸素の圧力を得ることができないという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、麻酔器及び人工呼吸器の両方に対して濃縮酸素を供給しつつ、かつ人工呼吸器の正常な動作を得ることができる濃縮酸素増圧装置及び濃縮酸素増圧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、濃縮酸素を人工呼吸器に供給する過程に用いられる濃縮酸素増圧装置であって、前記濃縮酸素を供給する酸素濃縮部と、前記酸素濃縮部から前記人工呼吸器に対して供給され得る前記濃縮酸素の圧力が所定の圧力になるように増圧させる増圧部と、を有し、前記濃縮酸素を前記人工呼吸器と同時に麻酔器にも供給可能にし、前記濃縮酸素を前記麻酔器に供給する場合に、前記酸素濃縮部から供給された前記濃縮酸素の一部を大気中にパージする大気開放部を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、酸素濃縮部で生成される濃縮酸素を人工呼吸器に供給する過程に用いられる濃縮酸素増圧方法であって、前記酸素濃縮部から前記人工呼吸器に対して供給され得る前記濃縮酸素の圧力が所定の圧力になるように増圧部により増圧させ、前記濃縮酸素を前記人工呼吸器と同時に麻酔器にも供給可能にし、前記濃縮酸素を前記麻酔器に供給する場合に、前記酸素濃縮部から供給された前記濃縮酸素の一部を大気開放部により大気中にパージすることを特徴とする濃縮酸素増圧方法
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、酸素濃縮部から人工呼吸器に対して供給され得る濃縮酸素の圧力が増圧部により所定の圧力になるように増圧される。これにより、人工呼吸器が正常に動作することが可能になる。酸素濃縮部から供給された濃縮酸素の一部を大気中にパージする大気開放部を有するため、濃縮酸素を人工呼吸器と同時に麻酔器に対して供給するときに、濃縮酸素の酸素濃度を適度に低下させることができ、適正な麻酔管理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る濃縮酸素増圧装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る濃縮酸素増圧装置及び濃縮酸素増圧方法について説明する。
【0024】
本発明の濃縮酸素増圧装置及び濃縮酸素増圧方法は、人工呼吸器又は/及び麻酔器に濃縮酸素を供給するための装置又は方法である。人工呼吸器及び麻酔器は、人又は犬、猫等の動物に対して使用されるものである。
【0025】
図1に示すように、濃縮酸素増圧装置10は、主として、酸素濃縮器12と、酸素供給流量計14と、パージ流量計16と、増圧用コンプレッサ(増圧器)18と、残圧開放用二方弁20と、逆止弁22と、濃縮酸素タンク24と、タンク内圧力計26と、圧力センサ28と、リリーフ弁30と、圧力調整器32と、人工呼吸器出力用圧力計34と、人工呼吸器接続部36と、麻酔器接続部38と、を備えている。
【0026】
詳細には、濃縮酸素タンク24の上流側に、酸素濃縮器12と、酸素供給流量計14と、パージ流量計16と、増圧用コンプレッサ(増圧器)18と、残圧開放用二方弁20と、逆止弁22と、が配置されている。また、濃縮酸素タンク24の下流側に、タンク内圧力計26と、圧力センサ28と、リリーフ弁30と、圧力調整器32と、人工呼吸器出力用圧力計34と、人工呼吸器接続部36と、麻酔器接続部38と、が配置されている。
【0027】
なお、濃縮酸素増圧装置10の各構成同士は、配管等の空気流動路11、13で接続されている。このため、酸素濃縮器12から供給された濃縮酸素は、空気流動路11、13を流れて各構成部位に移動する。本実施形態では、説明の便宜上、濃縮酸素タンク24の上流側(酸素濃縮器12側)に位置する全ての空気流動路を上流側空気流動路11と示し、濃縮酸素タンク24の下流側(人工呼吸器40及び麻酔器42側)に位置する全ての空気流動路を下流側空気流動路13と示す。
【0028】
酸素濃縮器12は、濃縮酸素を供給するものである。酸素濃縮器12は、例えば汎用のH-16型を使用する。酸素濃縮器12の吐出流量は、通常10L/minであるが、流量調節弁により25L/minに調整される。また、酸素濃縮器12から供給される濃縮酸素の圧力は、例えば0.13MPa程度である。
【0029】
ここで、酸素濃縮器12の吐出流量は、通常10L/minであるが、流量調節弁により25L/minに調整される。すなわち、例えば、人工呼吸器40だけでなく、麻酔器42と併用して使用する場合には、酸素濃度を25~30%程度まで下げる必要から、余分な酸素を例えば20L/min程度、大気中にパージする必要がある。そこで、それを補うために、酸素濃縮器12の吐出流量は、25L/min程度に調整されるのである。
【0030】
酸素濃縮器12の吐出流量を25L/min程度よりも大きくすれば、酸素濃縮器12に内蔵されているゼオライトの寿命が低下するおそれがあるため、酸素濃縮器12の吐出流量の上限は25L/min程度にすることが好ましい。
【0031】
なお、酸素濃縮器12は、本発明の「酸素濃縮部」の一実施態様である。
【0032】
酸素供給流量計14は、酸素濃縮器12から供給される濃縮酸素の流量を調整するものである。酸素供給流量計14は、例えばフロート式、最大目盛り10~12L/minのものを使用する。増圧用コンプレッサ(増圧器)18の電源を入れる前に酸素濃縮器12を駆動し、酸素濃縮器12から増圧用コンプレッサ(増圧器)18に供給される濃縮酸素の流量が例えば8L/minになるように、酸素供給流量計14が設定されている。
【0033】
ここで、酸素濃縮器12から増圧用コンプレッサ(増圧器)18に供給される濃縮酸素の流量が例えば8L/minよりも大きくなれば、増圧用コンプレッサ(増圧器)18のポンプ(図示省略)がストールするおそれがある。すなわち、増圧用コンプレッサ(増圧器)18のポンプに大きな圧力が作用するため、増圧用コンプレッサ(増圧器)18が正常に機能しなくなるおそれがある。このため、酸素供給流量計14は、例えば濃縮酸素の流量が4~8L/minの範囲(より好ましくは8L/min)となるように設定され、酸素濃縮器12から増圧用コンプレッサ(増圧器)18に供給される濃縮酸素の流量が例えば4~8L/minの範囲(より好ましくは8L/min)になるように制御される。
【0034】
なお、酸素供給流量計14は、本発明の「流量調整部」の一実施態様である。
【0035】
パージ流量計16は、大気中にパージされる濃縮酸素の流量を調整するものである。パージ流量計16は、例えばフロート式、最大目盛り30L/minのものを使用する。パージ流量計16は、人工呼吸器40に対する濃縮酸素の供給に際し、濃縮酸素の圧力を人工呼吸器40の規格値(ISO規格)である0.4MPaに保ちながら濃縮酸素を安定供給する目的で設置されるものであるが、人工呼吸器40と併用される麻酔器42に対しても同時に使用することが可能である。ただし、麻酔器42の用途で使用する場合には、このパージ用流量計16を用いて大気中に放出される濃縮酸素の流量を制御することにより、麻酔中の酸素濃度を調整することができる。
【0036】
パージ流量計16は、本発明の「大気開放部」の一実施態様である。
【0037】
増圧用コンプレッサ(増圧器)18は、酸素濃縮器12から人工呼吸器40に供給される濃縮酸素の圧力を増大させるためのものである。例えば、酸素濃縮器12から供給される濃縮酸素の圧力が0.13MPaである場合、これを人工呼吸器40のISO規格である圧力が例えば0.4MPaであるとすれば、濃縮酸素の圧力が0.4MPa程度になるまで加圧し、この適正圧力の濃縮酸素を人工呼吸器40に供給する。
【0038】
具体的には、増圧用コンプレッサ(増圧器)18は、酸素濃縮器12から供給される濃縮酸素を0.4MPa以上、例えば、0.5~0.6MPaの範囲に加圧し、この加圧された濃縮酸素が濃縮酸素タンク24に貯留される。
【0039】
なお、増圧用コンプレッサ(増圧器)18として、例えば、三津海製作所製:MP-20-2S-TL、電源AC100V、消費電流:2.25A/50Hz、最高圧:0.8MPa、吐出流量:20L/minの製品が使用される。
【0040】
増圧コンプレッサ(増圧器)18は、オイルレスのコンプレッサを使用し、酸素濃縮器12から供給される濃縮酸素を一旦0.5~0.6MPa程度まで増圧する。この0.5~0.6MPaの程度まで増圧された濃縮酸素が濃縮酸素タンク24に貯留される。さらに、0.5~0.6MPaの範囲で増圧された濃縮酸素は、圧力調整器32により人工呼吸器40の規格に合致する0.4MPa程度に調圧された後、人工呼吸器40に供給される。
【0041】
増圧コンプレッサ(増圧器)18は、本発明の「増圧部」の一実施態様である。
【0042】
残圧開放用二方弁20は、電磁弁である。増圧コンプレッサ(増圧器)18の電源がOFF時(駆動停止時)において、残圧開放用二方弁20の開放弁(図示省略)が開き、上流側空気流動路11内の濃縮酸素が大気中に排気される。なお、増圧コンプレッサ(増圧器)18の電源がON時(駆動時)において、残圧開放用二方弁20の開放弁が閉じられる。
【0043】
濃縮酸素増圧装置10の駆動中になんらかの理由で当該駆動が停止すれば、再始動時に、増圧コンプレッサ(増圧器)18の出力側が濃縮酸素タンク24内の高い圧力(例えば、0.5MPa)でロックされた状態になるため、増圧コンプレッサ(増圧器)18が始動できなくなる問題が生じる。これを防止するために、増圧コンプレッサ(増圧器)18の駆動が停止した場合に、増圧コンプレッサ(増圧器)18の出力側に接続された残圧開放用二方弁20の開放弁が開かれ、上流側空気流動路11内の濃縮酸素が大気中に排気され、増圧コンプレッサ(増圧器)18の出力側に負圧が作用しないように工夫している。
【0044】
逆止弁22は、濃縮酸素タンク24に貯留された高圧(例えば、0.5MPa)の濃縮酸素が増圧コンプレッサ(増圧器)18に向かって逆流することを防止するために設けられている。
【0045】
残圧開放用二方弁20の開放弁が開いたときに、逆止弁22が設けられていなければ、上流側空気流動路11及び濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素も同時に大気中に開放され、濃縮酸素増圧装置10の再稼働時に濃縮酸素タンク24内に濃縮酸素を充満させるためのスタンバイ時間を余分に設定しなければならない。このため、濃縮酸素タンク24の入口側近傍に逆止弁22を設けることにより、濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素が、上流側空気流動路11内の濃縮酸素と共に外部に逃げないように工夫している。
【0046】
濃縮酸素タンク24は、増圧コンプレッサ(増圧器)18によって所定の圧力(例えば、0.5~0.6MPa程度)まで増圧された濃縮酸素を貯留するものである。濃縮酸素タンク24は、例えば、アルミニウム製のものであり、2個使用される。
【0047】
濃縮酸素タンク24には、逆止弁22と、タンク内圧力計26と、圧力センサ28と、リリーフ弁30と、圧力調整器32と、が接続されている。
【0048】
なお、濃縮酸素タンク24は、本発明の「貯留部」の一実施態様である。
【0049】
タンク内圧力計26は、濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素の圧力を計測及び表示する。タンク内圧力計26は、例えば、最大目盛り0.6MPaのブルトン管式アナログ圧力計が用いられる。
【0050】
圧力センサ28は、濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素の圧力を検知する。具体的には、圧力センサ28は、濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素の圧力が0.5~0.6MPa程度に達したときを検知する。
【0051】
リリーフ弁30は、残圧開放用二方弁20と同様のものが用いられる。リリーフ弁30は、圧力センサ28からの信号によって開閉動作する。すなわち、濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素の圧力が0.5~0.6MPa程度に達すると、圧力センサ28からの信号により、リリーフ弁30が開かれ、濃縮酸素タンク24内の酸素が大気中に開放される。一方、濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素の圧力が0.5MPa程度まで低下すると、リリーフ弁30が閉じられ、濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素の圧力が再度上昇する。
【0052】
ここで、リリーフ弁30を用いることなく、増圧コンプレッサ(増圧器)18のON/OFFの切替操作することにより濃縮酸素タンク24内の圧力制御が可能になるが、増圧コンプレッサ(増圧器)18のON/OFFの切替音が発生し、周囲の関係者に悪影響を及ぼす問題がある。このため、リリーフ弁30を敢えて設けることにより、増圧コンプレッサ(増圧器)18を連続運転とし、前記切替操作が不要となる構成にしている。
【0053】
圧力調整器32は、濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素の圧力が例えば0.5~0.6MPa程度の高圧力になっているため、人工呼吸器40の駆動に最適となる、例えば0.4MPa程度に減圧させるものである。これにより、例えば0.4MPa程度の圧力の濃縮酸素を人工呼吸器40に対して供給することができる。
【0054】
人工呼吸器出力用圧力計34は、人工呼吸器40及び麻酔器42に供給される濃縮酸素の圧力を計測及び表示する。人工呼吸器出力用圧力計34は、例えば、最大目盛り1.0MPaのブルトン管式アナログ圧力計が用いられる。
【0055】
例えば、人工呼吸器40に供給される濃縮酸素の圧力が0.35MPa以下になれば、警報で報知されるが、人工呼吸器出力用圧力計34を設けることにより、人工呼吸器40や麻酔器42に対して最適な圧力の濃縮酸素が供給されていることを視認することができる。これにより、周囲の関係者に安心感を与えることができる。
【0056】
人工呼吸器接続部36には、人工呼吸器40が接続される。
【0057】
麻酔器接続部38には、麻酔器42が接続される。
【0058】
次に、本発明の一実施形態に係る濃縮酸素増圧装置及び濃縮酸素増圧方法の作用について説明する。
【0059】
[人工呼吸器と麻酔器の同時使用]
人工呼吸器40と麻酔器42の両方を同時に使用する態様について説明する。
【0060】
図1に示すように、酸素濃縮器12で所定の濃度の濃縮酸素が生成され供給される。このとき、酸素濃縮器12から供給される濃縮酸素の流量は、例えば25L/minに設定されている。また、酸素濃縮器12から供給される濃縮酸素の圧力は、例えば0.13MPa程度になる。
【0061】
なお、酸素濃縮器12から供給される濃縮酸素の流量が25L/minに設定されているのは、20L/minに相当する濃縮酸素をパージすることが可能になり、かつ酸素濃縮器12に内蔵されているゼオライトの寿命の低下を抑制することができるからである。
【0062】
濃縮酸素の一部は、酸素供給流量計14に供給される。酸素供給流量計14では、濃縮酸素の流量が所定の流量となるように調整される。具体的には、酸素供給流量計14では、濃縮酸素の流量が例えば8L/min程度に調整される。
【0063】
なお、酸素供給流量計14で濃縮酸素の流量が例えば8L/min程度に調整されるのは、濃縮酸素の流量が8L/min程度よりも大きい値になれば、増圧用コンプレッサ(増圧器)18に作用する圧力が大きくなり過ぎ、ストールが発生して機能が低下するおそれがあるからである。
【0064】
酸素供給流量計14において流量が調整された濃縮酸素は、増圧用コンプレッサ(増圧器)18に供給される。増圧用コンプレッサ(増圧器)18では、濃縮酸素の圧力が増圧される。具体的には、増圧用コンプレッサ(増圧器)18では、濃縮酸素の圧力が例えば0.4MPa以上、より好ましくは0.5~0.6MPaの範囲となるように増圧される。これにより、下流の人工呼吸器40に濃縮酸素を供給したときに、人工呼吸器40が正常に動作するようになる。
【0065】
増圧用コンプレッサ(増圧器)18で、例えば0.4MPa以上、より好ましくは0.5~0.6MPaの範囲に増圧された濃縮酸素は、濃縮酸素タンク24の内部に貯留される。
【0066】
ここで、増圧コンプレッサ(増圧器)18の駆動中には、残圧開放用二方弁20の開放弁が閉じられているが、増圧コンプレッサ(増圧器)18の駆動が停止したときには、残圧開放用二方弁20の開放弁が開き、濃縮酸素が大気中に放出される。これにより、増圧コンプレッサ(増圧器)18の出力側に負圧が作用せず、増圧コンプレッサ(増圧器)18の再駆動時に支障が生じない。
【0067】
なお、残圧開放用二方弁20の開放弁が開けば、濃縮酸素タンク24の内部の濃縮酸素が濃縮酸素タンク24から排出され、濃縮酸素タンク24の内部に濃縮酸素を充満させるために多くの時間が生じることから、かかる濃縮酸素を逃がさないために、逆止弁22が設けられている。これにより、ムダ時間の発生を抑制できる。
【0068】
濃縮酸素タンク24内部の濃縮酸素は、圧力調整器32に供給される。これにより、圧力調整器32により濃縮酸素の圧力が調整される。具体的には、濃縮酸素タンク24内部の濃縮酸素の圧力が0.5~0.6MPaの範囲となっており、人工呼吸器40が要求する正常圧力と比較して高めに調整されているため、圧力調整器32によって濃縮酸素の圧力が約0.4MPa程度に調整されるのである。
【0069】
圧力が0.4MPa程度に調整された濃縮酸素は、人口呼吸器40に供給される。ここで、人口呼吸器40では濃縮酸素の圧力が約0.4MPa程度であれば正常な動作が実行される。この結果、人又は動物に対する、人口呼吸器40を用いた治療効果を高めることができる。
【0070】
また同時に、濃縮酸素は、人口呼吸器40だけでなく、麻酔器42に対しても供給される。この結果、人又は動物に対する、麻酔器42を用いた麻酔効果を高めることができる。
【0071】
ここで、パージ流量計16により濃縮酸素の一部が大気中にパージ(放出)されるため、人工呼吸器40及び麻酔器42に供給される濃縮酸素の酸素濃度が低下する。これにより、特に麻酔器42に供給される濃縮酸素の酸素濃度が高くなり過ぎることが原因となって生じる生体への効果の悪影響を抑制することができる。
【0072】
なお、濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素の圧力が0.5~0.6MPa程度に達すると、圧力センサ28からの信号に基づきリリーフ弁30が開かれて濃縮酸素タンク24内の酸素が大気中に開放され、濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素の圧力が0.5MPa程度まで低下すると、リリーフ弁30が閉じられて濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素の圧力が再度上昇する。これにより、濃縮酸素タンク24内の濃縮酸素の圧力が調整される。
【0073】
以上の作用は、人工呼吸器40と麻酔器42を同時に使用する場合について説明したが、用途に合わせて人工呼吸器40又は麻酔器42のいずれか一方のみを使用する態様も可能であり、この場合も同様の作用が得られる。
【0074】
本実施形態によれば、最近の医療現場において、人工呼吸器の他に、麻酔器を一体化した医療装置のニーズが増えているが、本発明によれば、人工呼吸器40と麻酔器42を同時に使用することができる。
【0075】
特に、酸素濃縮器12という酸素供給源を用いることにより人工呼吸器40と麻酔器42の両方の用途に対応することができるため、合理的である。
【0076】
ここで、酸素供給源として酸素濃縮器12を用いる場合、人工呼吸器40に供給される濃縮酸素の圧力が不足することになれば、人工呼吸器40の正常な動作に必要となる濃縮酸素の圧力を得ることができないという問題が生じ得るが、増圧用コンプレッサ(増圧器)18を設けることにより濃縮酸素の圧力を増圧することができるため、人工呼吸器40の正常な動作に必要となる濃縮酸素の圧力が得られる。これにより、医療行為を円滑に行うことができ、医療行為の質を高くかつ安定させることができる。
【0077】
また、酸素濃縮器12から供給された濃縮酸素の一部を大気中にパージするため、酸素濃度が低下した濃縮酸素を人工呼吸器40と同時に麻酔器42に対して供給することができ、適正な麻酔管理が可能になる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態に記載した構成に限定されるものではない。本発明の範囲には、本発明の技術的思想を利用する全ての態様が含まれる。
【符号の説明】
【0079】
10 濃縮酸素増圧装置
11 上流側空気流動路(空気流動路)
12 酸素濃縮器
13 下流側空気流動路(空気流動路)
14 酸素供給流量計
16 パージ流量計
18 増圧用コンプレッサ(増圧器)
20 残圧開放用二方弁
22 逆止弁
24 濃縮酸素タンク
26 タンク内圧力計
28 圧力センサ
30 リリーフ弁
32 圧力調整器
34 人工呼吸器出力用圧力計
36 人工呼吸器接続部
38 麻酔器接続部
40 人工呼吸器
42 麻酔器
図1