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特許7135107負極活物質用複合粒子及びそれを含む全固体電池用負極
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  • 特許-負極活物質用複合粒子及びそれを含む全固体電池用負極 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】負極活物質用複合粒子及びそれを含む全固体電池用負極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20220905BHJP
   C01B 32/21 20170101ALI20220905BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220905BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220905BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220905BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20220905BHJP
【FI】
H01M4/587
C01B32/21
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M10/052
H01M10/0562
H01M10/0565
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020557916
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 KR2019006282
(87)【国際公開番号】W WO2019226020
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0059800
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ビョン-フン・アン
(72)【発明者】
【氏名】キョン-テク・キム
(72)【発明者】
【氏名】キ-テ・キム
(72)【発明者】
【氏名】チャン-ス・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】サン-フン・チェ
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152147(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065030(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
C01B 32/21
H01M 4/36
H01M 10/052
H01M 10/0562
H01M 10/0565
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛粒子を含み、
前記黒鉛粒子は、黒鉛材料の造粒物であり、
前記黒鉛材料は、天然黒鉛及び人造黒鉛のいずれか一つに由来したものであり、
前記黒鉛粒子の黒鉛材料同士の間隙は、固体電解質及び導電材から成る第1混合物で充填され、前記黒鉛粒子の外部表面の全部または少なくとも一部が、前記第1混合物で被覆されており、
前記導電材が、カーボンブラック、導電性繊維、金属粉末、チタン酸カリウム、導電性ウィスカー、導電性金属酸化物、ポリフェニレン誘導体から選択された1種または2種以上の混合物を含む、負極活物質用複合粒子。
【請求項2】
レーザー回折法で測定された前記複合粒子の粒径が、5μm~50μmである、請求項1に記載の負極活物質用複合粒子。
【請求項3】
前記天然黒鉛が、板状、鱗片状、破砕状、楕円状及びウィスカー状の天然黒鉛から選択された1種以上の天然黒鉛である、請求項1または2に記載の負極活物質用複合粒子。
【請求項4】
前記複合粒子100重量%に対する前記固体電解質の含量が、3重量%~50重量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の負極活物質用複合粒子。
【請求項5】
前記固体電解質が、硫化物系固体電解質を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の負極活物質用複合粒子。
【請求項6】
負極活物質用複合粒子を製造する方法であって、
黒鉛材料、導電材及び固体電解質を含む第2混合物を用意する段階と、
前記第2混合物を機械的外力で球状化する造粒化工程を行って、前記黒鉛材料、前記導電材及び前記固体電解質が一体的に形成された複合粒子を収得する段階と、
を含み、
前記複合粒子が請求項1から5のいずれか一項に記載のものである、複合粒子を製造する方法。
【請求項7】
前記第2混合物が、前記黒鉛材料49重量%~95重量%、前記固体電解質3重量%~50重量%、及び前記導電材1重量%~10重量%を含む、請求項6に記載の複合粒子を製造する方法。
【請求項8】
負極、正極及び前記負極と正極との間に介在される固体電解質膜を含み、前記負極が負極活物質として請求項1から5のいずれか一項に記載の複合粒子を含む、全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質用複合粒子及びそれを含む電気化学素子に関する。特に、本発明による電気化学素子は、固体電解質を使用する全固体電池である。
【0002】
本出願は、2018年5月25日出願の韓国特許出願第10-2018-0059800号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
液体電解質を使用するリチウムイオン電池は、分離膜によって負極と正極とが区画される構造であるため、変形や外部の衝撃によって分離膜が破損されれば短絡が生じ得、それによって過熱または爆発などの危険につながるおそれがある。このような問題を解決するため、イオン伝導性の高分子や無機物を用いた固体電解質材料及びこれを用いた全固体電池が開発されている。固体電解質を用いたリチウム二次電池は、電池の安全性が増大し、電解液の漏出を防止できるため、電池の信頼性が向上し且つ薄型電池の製作が容易であるという長所がある。このような固体電解質は、材料の特性によって、高分子電解質材料と無機固体電解質材料とに大別される。固体電解質を使用すると、安全性、高エネルギー密度、高出力、長寿命など電池性能の観点で有利であり、製造工程の単純化、電池の大型化/コンパクト化及び低コスト化などの観点でも有利であることが知られ、近年関心が高まっている。固体電解質のリチウムイオン伝導度は未だ液体電解質のリチウムイオン伝導度よりも低いが、理論的に固体におけるイオン伝導度は液体よりも高いと報告されているため、充放電速度及び高出力の観点でも全固体リチウムイオン電池は注目する必要がある。
【0004】
固体電解質を使用する場合、イオン伝導度を確保するため、活物質と電解質とが密接な接触を維持しなければならない。全固体電池の負極活物質として炭素材料である球状黒鉛を使用する場合、液体電解質を使用すれば黒鉛粒子内部の空隙まで電解質で充填されるが、固体電解質を使用すれば空いた空間として残ってしまい、電解質と活物質粒子とが接触する面積、すなわち電気化学反応が起きるサイトが減少して容量及び出力が低下する問題が発生する。
【0005】
そこで、全固体電池に使用しても容量低下、出力低下の問題が生じない新たな負極材料の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、固体電解質を用いる全固体電池に適用しても、固体電解質と電極活物質との電気化学反応サイトが十分確保されて容量低下及び出力低下の問題が生じない炭素材負極活物質を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、このような炭素材負極活物質を製造する方法を提供することを他の目的とする。
【0008】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解できるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段又は方法、及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、全固体電池用負極活物質用複合粒子に関する。本発明の第1態様は、前記複合粒子に関し、前記複合粒子は、黒鉛材料が造粒化された黒鉛粒子を含み、前記黒鉛材料は天然黒鉛及び人造黒鉛のいずれか一つに由来したものであり、前記黒鉛粒子の黒鉛材料同士の間隙は固体電解質及び導電材を含む混合物で充填され、黒鉛粒子の外部表面の全部または少なくとも一部が前記混合物で被覆されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2態様によれば、第1態様において、前記複合粒子の粒径が5μm~50μmである。
【0011】
本発明の第3態様によれば、第1態様または第2態様において、前記天然黒鉛が板状、鱗片状、破砕状、楕円状及びウィスカー状の天然黒鉛から選択された1種以上の高結晶性天然黒鉛である。
【0012】
本発明の第4態様によれば、第1態様~第3態様のいずれか一つにおいて、前記複合粒子100重量%に対する固体電解質の含量が3重量%~50重量%である。
【0013】
本発明の第5態様によれば、第1態様~第4態様のいずれか一つにおいて、前記固体電解質が硫化物系固体電解質を含む。
【0014】
本発明の第6態様によれば、第1態様~第5態様のいずれか一つにおいて、前記導電材が黒鉛、カーボンブラック、導電性繊維、金属粉末、チタン酸カリウム、導電性ウィスカー、導電性金属酸化物、ポリフェニレン誘導体から選択された1種または2種以上の混合物を含む。
【0015】
また、本発明は、負極活物質用複合粒子を製造する方法に関する。本発明の第7態様は、前記製造方法に関し、前記方法は、黒鉛材料、導電材及び固体電解質を含む混合物を用意し、前記混合物を機械的外力で球状化する造粒化工程を行って黒鉛材料、導電材及び固体電解質が一体的に形成された複合粒子を収得することを特徴とする。
【0016】
本発明の第8態様によれば、第7態様において、前記造粒化工程がカウンタジェットミル(ホソカワミクロン社製、日本)、ACMパルベライザ(ホソカワミクロン社製、日本)及びカレントジェット(日清エンジニアリング社製、日本)から選択された粉砕装置;SARARA(川崎重工業製、日本)、GRANUREX(フロイント産業製、日本)、New-Graマシン(セイシン企業製、日本)及びアグロマスター(ホソカワミクロン社製、日本)から選択された造粒装置;加圧ニーダー(dispersion kneader)及び二本ロールから選択された混錬装置;並びにメカノマイクロス装置、押出機、ボールミル、遊星ミル、メカノフュージョン装置、ノビルタ(Nobilta)、ハイブリダイゼーション及び回転ボールミルから選択された圧縮せん断式加工装置;から選択された一種または二種以上の装置を組み合わせて行われる。
【0017】
本発明の第9態様によれば、第7態様または第8態様において、前記混合物が黒鉛材料49重量%~95重量%、固体電解質3重量%~50重量%、及び導電材1重量%~10重量%を含む。
【0018】
本発明の第10態様によれば、負極、正極及び前記負極と正極との間に介在される固体電解質膜を含み、前記負極が負極活物質として本発明による複合粒子を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様による複合粒子は、鱗片状黒鉛のような炭素材料を球状化などの形状調整処理した炭素粒子の内部が、固体電解質及び導電材を含む伝導性物質で充填されることで、活物質と固体電解質との間の接触面積が増大し、活物質粒子の内部までイオン伝導及び電子伝導の経路が延長及び維持される。したがって、このような複合粒子を用いて電池を製造する場合、固体電解質を使用しても、従来の黒鉛材負極活物質とは異なり、電池の容量や出力が低下する問題が生じない。また、前記複合粒子は、炭素粒子の内部が固体電解質及び導電材で充填されることで、電極製造の際、電極の気孔度を低めるため過酷な条件で加圧しなくても、気孔度の低い高密度電極を製造することができる。
【0020】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。一方、本明細書に添付される図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などはより明確な説明を強調するため誇張されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来負極活物質として使用される球状化黒鉛粒子及びそれを含む電極の断面形状を概略的に示した図である。
図2】本発明の一実施形態による複合粒子及びそれを含む電極の断面形状を概略的に示した図である。
図3】実施例2による複合粒子のSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0023】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0024】
本明細書の全体で使われる用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。
【0025】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」との記載は「A、Bまたはこれら全て」を意味する。
【0026】
本明細書の全体において、各成分の比率は、特に言及しない限り、重量を基準にする。
【0027】
詳細な説明における特定の用語は便宜上使用されるものであって、制限的なものではない。「右」、「左」、「上面」及び「下面」の単語は参照する図面における方向を示す。「内側に」及び「外側に」の単語は、それぞれ指定された装置、システム及びその部材の幾何学的中心に向かう方向及びそれから遠くなる方向を示す。「前方」、「後方」、「上方」、「下方」及びその関連単語及び語句は、参照する図面における位置及び方位を示すものであって、制限的なものではない。このような用語は上記の単語、その派生語及び類似意味の単語を含む。
【0028】
本発明は、電気化学素子の負極活物質として使用できる複合粒子、前記複合粒子を含む負極、及びそれを含む電気化学素子に関する。また、本発明は、前記複合粒子を製造する方法を提供する。本発明において、前記電気化学素子はリチウムイオン二次電池であり、特に、電解質として固体電解質を使用する全固体電池であり得る。
【0029】
複合粒子
本発明は、負極の高密度化が可能であって、高容量特性及びサイクル特性に優れた全固体電池用負極活物質に関する。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記負極活物質は、黒鉛材料、固体電解質及び導電材を含む複合粒子である。本発明による複合粒子は、一次粒子形態の黒鉛材料が造粒化されてなる二次粒子の形態を有し得、ここで造粒された黒鉛材料同士の間隙は固体電解質及び導電材を含む混合物で充填されている。また、前記複合粒子の表面の全部または少なくとも一部が前記混合物で被覆され得る。
【0031】
本発明の具体的な一実施形態において、前記複合粒子は、鱗片状及び/または板状黒鉛のような黒鉛材料が球状化処理などの形状調整処理がされて形成された黒鉛粒子を含み、その内部が固体電解質及び導電材の混合物で充填されている。また、前記黒鉛粒子の表面の全部または少なくとも一部が前記混合物で被覆され得る。本発明の一実施形態において、前記複合粒子は、鱗片状黒鉛及び/または板状黒鉛のような黒鉛材料、固体電解質及び導電材を含む混合物を、機械的外力で形状調整処理及び造粒化する工程を通じて収得することができる。
【0032】
図2は、本発明の複合粒子110の断面及びそれを含む電極100の断面を概略的に示した図である。図2に示されたように、本発明による複合粒子110は、球形に形状調整処理された黒鉛粒子113、固体電解質112及び導電材111が一体的に複合化されている。本発明の一実施形態において、前記複合粒子は、粒径が最長径を基準にして約5μm~50μmであり得る。本発明の一実施形態において、前記粒径は45μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、15μm以下または10μm以下に調節され、若しくは、7μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、35μm以上または45μm以上に調節され得る。例えば、前記粒径は、5μm~25μmまたは10μm~20μmの範囲を有し得る。
【0033】
本発明の一実施形態において、前記複合粒子100重量%のうち前記黒鉛材料は、49重量%~95重量%の範囲で含まれ得る。上記の範囲内で黒鉛材料は、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上または90重量%以上で含まれ得る。また、前記複合粒子100重量%のうち前記固体電解質は、3重量%~50重量%の比率で含まれ、上記の範囲内で40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下または10重量%以下の範囲で含まれ得る。黒鉛材料の含量が50重量%に及ばないと、前記複合粒子を含む電極でリチウムのイオン伝導度は高くなるが、電池エネルギー密度は減少する。一方、複合粒子のうち黒鉛材料の含量が95重量%より多いと、リチウムイオンの伝導度が低下して充放電によって電池容量を具現できず、出力特性が低下する問題がある。また、前記複合粒子100重量%のうち導電材の含量は、1~10%であり得、複合粒子を構成する固体電解質の含量及び体積に応じて上記の範囲内で適切に調節され得る。固体電解質に対する導電材の含量が少ない場合、黒鉛材料粒子間の伝導性が低下する恐れがある。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記黒鉛材料は天然黒鉛及び人造黒鉛から選択された1種以上であり得る。前記天然黒鉛は、板状、鱗片状、破砕状、楕円状及びウィスカー状の天然黒鉛から選択された1種以上の高結晶性天然黒鉛であり得る。また、前記人造黒鉛は、モザイクコークス系人造黒鉛及びニードルコークス系人造黒鉛からなる群より選択された1種以上を含み得る。
【0035】
本発明の具体的な一実施形態において、前記黒鉛材料は、X線回折測定装置による002面の面間隔(d002)が0.337nm未満、例えば0.3340nm~0.3360nmを有する高結晶性黒鉛であり得る。このような黒鉛材料としては、例えば、板状及び鱗片状天然黒鉛が代表的である。結晶性の高い黒鉛であるほど、結晶が規則的に成長して鱗片状の形態を有する。
【0036】
前記板状黒鉛や鱗片状黒鉛は、市販のものを使用するか、または、粗大粒子の天然黒鉛や人造黒鉛など多様な形状の黒鉛を粉砕装置を用いて破砕して板状や鱗片状にすることが望ましい。本発明の一実施形態において、前記板状及び/または鱗片状黒鉛は、平均粒径(D50)が2μm~30μmであり得る。
【0037】
このような粉砕装置としては、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン社製)、カレントジェット(日清エンジニアリング社製)を使用することができる。粉砕などによって収得される板状及び/または鱗片状黒鉛は、表面に鋭角部分があるが、機械的外力を加えて球形に造粒することで表面を平滑化する。
【0038】
前記固体電解質は、イオン伝導性固体電解質材料を含むものであって、高分子固体電解質、無機固体電解質、またはこれらの混合物を含むことができる。前記固体電解質は、望ましくは10-7s/cm以上のイオン伝導度を有する。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記高分子固体電解質は、溶媒化されたリチウム塩に高分子樹脂が添加されて形成された固体高分子電解質であるか、または、有機溶媒とリチウム塩とを含む有機電解液を高分子樹脂に含有させた高分子ゲル電解質であり得る。
【0040】
前記固体高分子電解質は、例えば、ポリエーテル系高分子、ポリカーボネート系高分子、アクリレート系高分子、ポリシロキサン系高分子、ホスファゼン系高分子、ポリエチレン誘導体、アルキレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン及びイオン性解離基を含む重合体からなる群より選択された1種または2種以上の混合物を含むことができるが、これらに限定されることはない。
【0041】
本発明の具体的な一実施形態において、前記固体高分子電解質は、高分子樹脂としてポリエチレンオキシド(PEO)主鎖に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリシロキサン(pdms)及び/またはホスファゼンのような無定形高分子を共単量体で共重合させた枝状共重合体、櫛状高分子樹脂(comb-like polymer)及び架橋高分子樹脂からなる群より選択された1種または2種以上の混合物を含むことができる。
【0042】
また、本発明の具体的な一実施形態において、前記高分子ゲル電解質は、リチウム塩を含む有機電解液及び高分子樹脂を含むものであって、前記有機電解液は高分子樹脂の重量に対して60~400重量部で含むことができる。ゲル電解質に適用される高分子樹脂は、特定の成分に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)系、PMMA系、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)からなる群より選択された1種または2種以上の混合物であり得るが、これらに限定されることはない。
【0043】
本発明の電解質において、上述したリチウム塩は、イオン化可能なリチウム塩であってLiで表すことができる。このようなリチウム塩の陰イオン(X)としては、特に制限されないが、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN、(CFCFSOなどが挙げられる。
【0044】
一方、本発明の具体的な一実施形態において、高分子系固体電解質は高分子ゲル電解質をさらに含むことができる。前記高分子ゲル電解質は、イオン伝導度に優れ(または10-4s/m以上であり)、結着特性を有し、電解質としての機能を提供するだけでなく、電極活物質同士の結着力及び電極層と集電体との間に結着力を提供する電極バインダー樹脂の機能を提供することができる。
【0045】
一方、本発明において、前記無機固体電解質は、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、またはこれら両方を含むものであり得る。
【0046】
本発明の具体的な一実施形態において、前記硫化物系固体電解質は、電解質成分に硫黄原子を含むものであって、具体的な成分に特に限定されず、結晶性固体電解質、非結晶性固体電解質(ガラス系固体電解質)、ガラスセラミック固体電解質のうち一つ以上を含むことができる。前記硫化物系固体電解質の具体的な例としては、硫黄及びリンを含むLPS型硫化物(例えば、LiS-P)、Li4-xGe1-x(xは0.1~2、具体的に、xは3/4、2/3)、Li10±1MP12(M=Ge、Si、Sn、Al、X=S、Se)、Li3.833Sn0.833As0.166、LiSnS、Li3.25Ge0.250.75、LiS-P、B-LiS、xLiS-(100-x)P(xは70~80)、LiS-SiS-LiN、LiS-P-LiI、LiS-SiS-LiI、LiS-B-LiI、Li10SnP12、Li3.25Ge0.250.75のようなThio-LISICON系化合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0047】
本発明の具体的な一実施形態において、前記酸化物系固体電解質は、LLTO系化合物((La,Li)TiO)、LiLaCaTa12、LiLaANb12(AはCa及び/またはSr)、LiNdTeSbO12、LiBO2.50.5、LiSiAlO、LAGP系化合物(Li1+xAlGe2-x(PO、0≦x≦1、0≦y≦1)、LiO-Al-TiO-PのようなLATP系化合物(Li1+xAlTi2-x(PO、0≦x≦1、0≦y≦1)、Li1+xTi2-xAlSi(PO3-y(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiAlZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiTiZr2-x(PO(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiS-PのようなLPS系化合物、Li3.833Sn0.833As0.166、LiSnS、Li3.25Ge0.250.75、B-LiS、xLiS-(100-x)P(xは70~80)、LiS-SiS-LiN、LiS-P-LiI、LiS-SiS-LiI、LiS-B-LiI、LiN、LISICON、LIPON系化合物(Li3+yPO4-x、0≦x≦1、0≦y≦1)、Li3.25Ge0.250.75のようなThio-LISICON系化合物、ペロブスカイト系化合物((La,Li)TiO)、LiTi(POのようなNASICON系化合物、構成成分としてリチウム、ランタン、ジルコニウム及び酸素を含むLLZO系化合物などが挙げられ、これらのうち1種以上を含むことができる。しかし、これらに限定されることはない。
【0048】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;VGCF(Vapor grown carbon fiber)のような炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材から選択された1種または2種以上の混合物を含むことができる。
【0049】
複合粒子の製造方法
本発明は、前記複合粒子を製造する方法を提供する。前記複合粒子は、上述したような黒鉛材料、導電材及び固体電解質を含む混合物を用意し、前記混合物を機械的外力で球状化する造粒化工程を行うことで、黒鉛材料、導電材及び固体電解質が一体的に形成された粒子を収得することができる。
【0050】
前記混合は、遊星ミキサーなど公知の混合装置を用いて行うことができる。例えば、混合装置に、黒鉛材料、導電材及び固体電解質を投入し、約20rpm~100rpmの速度で撹拌して、これらの混合物を収得することができる。前記混合は約1時間~3時間行われ、混合工程時の温度は約30℃~100℃であり得る。しかし、前記撹拌速度、撹拌時間及び撹拌温度などの条件は、上述した範囲に特に限定されるものではなく、投入された材料が均一に混合された混合相を収得できるように適切に制御可能である。
【0051】
前記混合段階で得られた混合物は、圧縮せん断応力のような機械的外力が加えられて球状化される造粒化段階に投入される。本発明の具体的な一実施形態において、前記造粒化段階はメカノフュージョン装置などを用いて行うことができる。本発明の一実施形態において、前記工程は約2,000rpm~5,000rpmの速度で行われ、また、約0.2時間~2時間行われ得る。また、前記造粒化段階は、約30℃~70℃の条件で行われ得る。しかし、前記撹拌速度、撹拌時間及び撹拌温度などの条件は、上述した範囲に特に限定されるものではなく、混合物が適切な粒径を有する複合粒子として収得できるように適切に制御可能である。
【0052】
本発明の一実施形態において、前記造粒化工程では、グラニュレックス(Granurex、フロイント産業製)、New-Graマシン(セイシン企業製)、アグロマスター(ホソカワミクロン社製)などの造粒機、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノマイクロス(奈良機械製作所製)、メカノフュージョン装置(例えば、ホソカワミクロン社製)などの圧縮せん断加工能力を有するせん断応力装置を使用することができる。
【0053】
外にも、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン社製、日本)、ACMパルベライザ(ホソカワミクロン社製、日本)、カレントジェット(日清エンジニアリング社製、日本)から選択された粉砕装置;SARARA(川崎重工業製、日本)、GRANUREX(フロイント産業製、日本)、New-Graマシン(セイシン企業製、日本)、アグロマスター(ホソカワミクロン社製、日本)から選択された造粒装置;及び加圧ニーダー、二本ロールから選択された混錬装置などを用いて黒鉛材料の粒子サイズなどを適切に調節することができる。
【0054】
原料に投入された鱗片状及び/または平板状の黒鉛材料は、このような球状化処理によって粒子が曲がるか又は折れるか、他の粒子が曲がるか又は折れるときその内部に導入されるか、若しくは、他の粒子の表面に付着される。この結果、複合粒子は、球状化処理された黒鉛粒子のように複数の鱗片状及び/または板状黒鉛粒子が重なって造粒化された形状を有するようになり、鱗片状及び/または板状粒子が重なった間隙は導電材及び固体電解質を含む混合物で充填される(図2を参照)。
【0055】
このように本発明による複合粒子は、内部が固体電解質及び導電材で充填されるため、従来の負極活物質粒子に比べてイオン伝導度などの電気化学的性能が著しく改善される。図1は、従来技術による負極活物質粒子11及びそれを含む電極10を示した図である。負極活物質粒子11c内部の間隙が空いた空間として放置されており、導電材11a及び固体電解質11bが活物質粒子の表面のみに分布しているため、活物質粒子の内部まで電気化学反応に参加する比率が低く、これによって投入された活物質の量に比べてイオン伝導度や出力特性などの電気化学的性能を十分発揮できないという問題がある。
【0056】
以下、本発明の複合粒子を使用したリチウムイオン二次電池の負極、前記負極を含む全固体電池について説明する。
【0057】
負極
本発明は、電気化学素子用負極に関し、前記電気化学素子は、固体電解質を使用する全固体電池であることが望ましい。
【0058】
本発明の一実施形態において、前記負極は、集電体及び前記集電体の少なくとも一面に形成された負極活物質層を含み、前記負極活物質層は負極活物質、固体電解質及び導電材を含み、前記負極活物質は本発明による複合粒子を含む。
【0059】
従来の球状化黒鉛粒子は、全固体電池用負極への使用が特に困難であった。例えば、鱗片状黒鉛材料を機械的外力によって造粒する方法で得られた球状化黒鉛粒子は、黒鉛鱗片同士の間に空いた空間である間隙が存在する。液体電解質を使用する電池にこのような球状化黒鉛粒子を適用する場合は、粒子の内部まで電解液が浸透して間隙を満たし、電極活物質と電解液との接触面積が低下する問題が発生しなかった。しかし、固体電解質を使用する全固体電池に球状化黒鉛粒子を適用する場合は、球状化黒鉛粒子内の間隙が電解質で満たされず空いた空間のまま残ってしまい、電解質と粒子との接触が粒子の表面に限定されて電気化学反応サイトが減少し、容量が低下する問題があった。このような間隙を除去して活物質層を高密度化して体積当り放電容量を高めるためには、高圧力で圧延しなければならないが、この場合、粒子が平たくなって一方向に配向されるため、イオンの拡散性が低下する問題があった。
【0060】
これに対し、本発明による複合粒子は、粒子の内部が固体電解質と導電材との混合物で充填されて粒子内の気孔度が非常に低い。
【0061】
また、本発明の具体的な一実施形態において、前記負極活物質層は、バインダー材料をさらに含むことができる。前記バインダー材料の投入によって、負極活物質層と集電体及び/または固体電解質膜との結着力を高めることができ、これと共にまたは独立的に、負極活物質に含まれた構成成分間の結着力改善にも役立つ。
【0062】
前記負極を製造する方法は、特に限定されず、例えば、以下のような順序によって製造できる。まず、複合粒子、固体電解質及び導電材を含む電極合剤を用意し、前記合剤を集電体の表面にコーティングして電極活物質層を形成する。このとき、コーティングされた電極活物質層を適切な圧力で加圧することで、電極内の気孔度を所望の程度に制御することができる。
【0063】
また、本発明の具体的な一実施形態において、前記電極は気孔度が0~10vol%程度に低いことが望ましい。前記気孔度は、窒素などの吸着気体を用いてBEL JAPAN社製のBELSORP(BET装備)を用いて測定するか、又は、水銀圧入法(Mercury intrusion porosimetry)のような方法で測定可能である。または、本発明の一実施形態において、収得された電極(電極活物質層)の密度(見掛け密度)、電極(電極活物質層)に含まれた材料の組成比及び各成分の密度から電極活物質層の真密度を計算し、見掛け密度(apparent density)と真密度(net density)との差から電極活物質層の気孔度を計算可能である。
【0064】
一方、前記負極の製造時に使用される固体電解質及び導電材は、前記複合粒子の製造に使用されるものであれば制限なく使用できる。
【0065】
全固体電池
本発明は、全固体電池に関し、前記全固体電池は正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在された固体電解質膜を含み、前記負極は、本発明によるものであって、上述した構成的特徴を有する。
【0066】
前記正極は、集電体及び前記集電体の少なくとも一面に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は正極活物質、固体電解質及び導電材を含む。また、本発明の具体的な一実施形態において、前記正極活物質層はバインダー材料をさらに含むことができる。前記バインダー材料の投入によって、正極活物質層と集電体及び/または固体電解質膜との結着力を高めることができ、これと共にまたは独立的に、正極活物質に含まれた構成成分間の結着力改善にも役立つ。
【0067】
前記正極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものであれば制限なく使用できる。例えば、前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物、または、一つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-x(xは0~0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa、x=0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-x(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、x=0.01~0.1)またはLiMnMO(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;LiNiMn2-xで表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0068】
前記導電材及び固体電解質は、複合粒子に使用可能なものであれば制限なく使用できる。
【0069】
本発明において、前記固体電解質膜は、イオン伝導特性を有する高分子材料及び/または無機材料を使用するものであり、例えば、液体電解質を使用しない全固体電池にイオン伝導性電解質として適用することができる。固体電解質膜に含まれるイオン伝導性高分子材料及び無機材料は、本発明の複合粒子の製造に使用可能なものであれば制限なく使用でき、これら材料についての具体的な説明は上述した複合粒子についての説明のうち固体電解質部分を参照できる。
【0070】
本発明の一実施形態において、前記負極及び/または正極は、物理化学的特性の補完や改善を目的として、多様な添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤は、特に限定されないが、酸化安定添加剤、還元安定添加剤、難燃剤、熱安定剤、無滴剤(antifogging agent)などのような添加剤を1種以上含むことができる。
【0071】
一方、前記負極及び/または正極に使用されるバインダー材料は、活物質と導電材などとの結合、及び集電体に対する結合を補助する成分であれば特に制限されず、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。前記バインダー樹脂は、通常、電極層100重量%に対して1~30重量%、または1~10重量%の範囲で含むことができる。
【0072】
また、本発明の一実施形態において、前記負極集電体及び/または正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず高い導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用でき、これらのうち正極及び負極の極性に合わせて適切に選択して使用することができる。本発明の一実施形態において、前記集電体は約6μm~500μmの厚さであり得る。
【0073】
また、本発明は、前記二次電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。
【0074】
このとき、前記デバイスの具体的な例としては、電気モーターから動力を受けて作動するパワーツール;電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid EV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in HEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート;電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0075】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明するが、下記の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらのみに限定されることはない。
【0076】
1)製造例1:複合粒子の製造
実施例1
板状天然黒鉛(BTR社製UP10、平均粒径(D50)=9μm)とLiLaZr12とカーボンブラックとを84:15:1の重量比で500ml容量の遊星ミキサー(プライミクス社製、2P-03)に投入し、50rpmの速度で常温で60分間撹拌して混合物を製造した。遊星ミキサーの温度は40℃に維持した。得られた混合物をメカノフュージョン装置(ホソカワミクロン社製NOB-130-VC)に投入し、3,000rpmで30分間圧縮せん断応力を加えて複合粒子を製造した。このとき、メカノフュージョン装置の温度は40℃に維持した。得られた複合粒子の粒径は約15μmであった。粒径及び粒度分布は、複合粒子をキシレンに1,000倍に希釈し、マルバーン社製のマスターサイザー3000を用いて測定した。
【0077】
実施例2~実施例4
板状天然黒鉛(BTR社製UP10、平均粒径(D50)=9μm)とLiS-Pとカーボンブラックとを表1の比率で500ml容量の遊星ミキサー(プライミクス社製、2P-03)に投入し、50rpmの速度で常温で60分間撹拌して混合物を製造した。遊星ミキサーの温度は40℃に維持した。得られた混合物をメカノフュージョン装置(ホソカワミクロン社製NOB-130-VC)に投入し、3,000rpmで30分間圧縮せん断応力を加えて複合粒子を製造した。このとき、メカノフュージョン装置の温度は40℃に維持した。得られた複合粒子の粒径は約15μmであった。粒径及び粒度分布は、複合粒子をキシレンに1,000倍に希釈し、マルバーン社製のマスターサイザー3000を用いて測定した。図3は、実施例2の複合粒子のSEMイメージである。図面から、板状粒子が球状に造粒されながら、粒子間の間隙が固体電解質と導電材との混合物で埋められ、複合粒子の表面は前記混合物で被覆されていることが確認できる。それぞれの材料の混合比率(重量%)は、下記表1のようである。
【0078】
実施例5
板状天然黒鉛(BTR社製UP10、平均粒径(D50)=9μm)とLiS-Pとカーボンブラックとを84:15:1の重量比で500ml容量の遊星ミキサー(プライミクス社製、2P-03)に投入し、50rpmの速度で常温で60分間撹拌して混合物を製造した。遊星ミキサーの温度は40℃に維持した。得られた混合物をメカノフュージョン装置(ホソカワミクロン社製NOB-130-VC)に投入し、4,000rpmで15分間圧縮せん断応力を加えて複合粒子を製造した。このとき、メカノフュージョン装置の温度は40℃に維持した。得られた複合粒子の粒径は約11μmであった。粒径及び粒度分布は、複合粒子をキシレンに1,000倍に希釈し、マルバーン社製のマスターサイザー3000を用いて測定した。
【0079】
実施例6
メカノフュージョン装置を用いて2,000rpmで60分間圧縮せん断応力を加え、粒径約19μmの複合粒子を収得したことを除き、実施例5と同じ方法で複合粒子を製造した。
【0080】
実施例7
板状天然黒鉛(BTR社製UP5、平均粒径(D50)=5μm)とLiS-Pとカーボンブラックとを84:15:1の重量比で500ml容量の遊星ミキサー(プライミクス社製、2P-03)に投入し、50rpmの速度で常温で60分間撹拌して混合物を製造した。遊星ミキサーの温度は40℃に維持した。得られた混合物をメカノフュージョン装置(ホソカワミクロン社製NOB-130-VC)に投入し、3,000rpmで30分間圧縮せん断応力を加えて複合粒子を製造した。このとき、メカノフュージョン装置の温度は40℃に維持した。得られた複合粒子の粒径は約13.8μmであった。粒径及び粒度分布は、複合粒子をキシレンに1,000倍に希釈し、マルバーン社製のマスターサイザー3000を用いて測定した。
【0081】
比較例1
導電材及び固体電解質を投入せず、板状黒鉛のみを使用したことを除き、実施例1と同じ方法で活物質粒子を製造した。
【0082】
【表1】
【0083】
2)製造例2:負極の製造
各実施例及び比較例で得られた複合粒子を負極活物質として使用して負極を製造した。負極の組成は、下記表2のようにして用意した。比較例1-1及び比較例1-2は、前記比較例1の複合粒子を使用したものであり、表2に示されたように固体電解質材料を変えて製造したものである。各実施例及び比較例で得られた負極活物質は、約355mAh/gの電気容量を示した。活物質、固体電解質、導電材及びバインダーを表2のように混合して電極合剤を製造し、前記電極合剤を銅薄板(厚さ20μm)にコーティングし、常温で圧延して負極を製造した。得られた負極における負極活物質のローディング量は電極面積を基準にして9.2mg/cmであり、その電気容量は電極面積を基準にして3.27mAh/cmであり、気孔度は22%であった。前記気孔度は、電極材料の組成比及び各成分の密度から電極活物質層の真密度を計算した後、見掛け密度と真密度との差から電極活物質層の気孔度を計算した。
【0084】
3)全固体電池の製造
対極としてリチウム金属を使用し、前記製造例2で製造した各電極を用いて電池(コイン型ハーフセル)を製造した。使用する電極の間には固体電解質膜(70μm、2.8×10-3S/cm、Li10SnP12)を介在させた。
【0085】
【表2】
【0086】
4)電池性能の評価
各実施例及び比較例で製造した電池に対し、初期容量とサイクル特性を確認した。最初3サイクルは、0.05CのCC(定電流(Constant Current))モードで0.05Vまで充電した後、0.05Cの電流密度までCV(定電圧(Constant Voltage))モードで充電し、0.05CのCCモードで1.5Vまで放電した。4サイクルからは0.3CのCCモードで0.05Vまで充電した後、0.05Cの電流密度までCVモードで充電し、0.3CのCCモードで1.5Vまで放電した。これを30サイクルまで繰り返し、容量維持率を比べた。本実験で容量維持率は、下記数式1に基づいて計算した。
【0087】
[数式1]
容量維持率(%)=[30thサイクル放電容量/2ndサイクル放電容量]×100
【0088】
下記表3は、各実施例及び比較例で製造した電池の初期容量及び30サイクルの容量維持率を示したものである。表3から、実施例による電池は初期容量及び容量維持率の面で比較例の電池に比べて優れた性能を見せることが確認できる。
【0089】
【表3】
【0090】
以上のように、複合粒子の内部に電解質の比率が高いほど、複合粒子内部へのイオン移動性が改善されて、低率容量特性に優れ、容量維持率に優れることが確認できる。
【0091】
一方、実施例1のように、酸化物系固体電解質を使用して複合粒子を製造した場合、そうでない場合(比較例)に比べて性能改善効果が確認されたが、実施例4などの硫化物系固体電解質を使用する場合に比べると材料の軟性が低くて、性能改善効果が高くなかった。
【0092】
一方、実施例4、実施例5及び実施例6を見れば、複合粒子の粒径が小さい場合は複合体間の電解質成分が足りなく、複合粒子の粒径が大きい場合は粒子内部に含まれる電解質成分が足りなくて、実施例4に比べて多少性能が低いことを確認した。
【0093】
また、小粒子板状黒鉛を適用した実施例7の場合は、複合粒子を収得できるが、黒鉛粒子の表面積増加によって固体電解質のイオン伝導性が低下し、電池性能が多少低下した。
図1
図2
図3