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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】脊椎手術用の特定の使い捨てガイド装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/17 20060101AFI20220905BHJP
【FI】
A61B17/17
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020564189
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 IB2019053765
(87)【国際公開番号】W WO2019220268
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】102018000005435
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ファンティグロッシ,アルフォンソ
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】フィシュテル,マインラート
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0123850(US,A1)
【文献】特表2015-515342(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0218163(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02749235(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/055518(WO,A1)
【文献】特表2019-529026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎手術用の使い捨てガイド装置(10)であって、
患者の背椎骨(100)への外科的介入をガイドするための、近位端(14)と遠位端(16)との間に延びる2つのガイドスリーブ(12)と、
複数の支持要素(18)であって、各支持要素(18)が結合構成において前記患者の前記背椎骨(100)の表面(102)の一部に当接するように特別に構成された患者固有の接触領域(20)を規定する、複数の支持要素(18)と、
前記2つのガイドスリーブ(12)を一緒に結合する少なくとも1つの接合要素(22)と、を備え、
各ガイドスリーブ(12)は、近位端(26)と遠位端(28)との間に延びる、手術器具をガイドするためのそれぞれの補助スリーブ(24)を備え、前記それぞれの補助スリーブ(24)は対応する前記ガイドスリーブに重ね合わされており、前記それぞれの補助スリーブ(24)の前記近位端(26)が対応する前記ガイドスリーブ(12)の前記近位端(14)の近くに位置しており
各ガイドスリーブ(12)がそれぞれの主軸Xpに沿って延在し、前記それぞれの補助スリーブ(24)がそれぞれの補助軸Xaに沿って延在し、各主軸Xpが対応するそれぞれの補助軸Xaに対して傾斜しており、各主軸Xpと対応するそれぞれの補助軸Xaとは前記ガイド装置(10)の使用時において前記患者固有の接触領域(20)下方に位置する点において、互いに最小距離に到達する、または互いに交差する、ガイド装置(10)。
【請求項2】
各ガイドスリーブおよび対応するそれぞれの前記補助スリーブ(24)は、それぞれの前記近位端(14、26)から互いに遠ざかるように延びる、請求項1に記載のガイド装置(10)。
【請求項3】
それぞれの補助軸Xaが対応する前記それぞれの主軸Xpと角度αを形成する、請求項に記載のガイド装置(10)。
【請求項4】
角度αが20°から60°の間、好ましくは25°から45°の間に含まれる、請求項に記載のガイド装置(10)。
【請求項5】
前記補助軸Xaが、前記接触領域(20)から5mm以内で前記主軸Xpと交差する、または前記主軸Xpに対して最小距離に到達する、請求項からのいずれか1項に記載のガイド装置(10)。
【請求項6】
各補助軸Xaが、それが入射する前記表面(102)の部分と角度βを形成し、前記角度βが準備ドリルの使用に有利である、請求項からのいずれか1項に記載のガイド装置(10)。
【請求項7】
角度βが60°から120°の間、好ましくは75°から105°の間に含まれる、請求項に記載のガイド装置(10)。
【請求項8】
前記2つのガイドスリーブ(12)は、それらの近位端(14)が前記遠位端(16)よりも互いに離れるように方向付けられている、請求項1からのいずれか1項に記載のガイド装置(10)。
【請求項9】
前記複数の支持要素(18)の少なくとも1つが、前記背椎骨(100)の一部を少なくとも部分的に取り囲むようにフックのように形作られている、請求項1からのいずれか1項に記載のガイド装置(10)。
【請求項10】
ハンドル(48)をさらに備える、請求項1からのいずれか1項に記載のガイド装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎手術の技術分野に関し、より具体的には、脊椎手術用の特定の使い捨てガイド装置に関する。この装置は、外科医が脊椎骨を穿設するのを助けるために使用される。
【背景技術】
【0002】
脊椎手術の分野では、例えばキルシュナーワイヤを挿入するため、カニューレ付きのねじの適用のためのガイドワイヤを挿入するため、または中実のねじを挿入するために、脊椎の穿設がしばしば必要になる。穿設の方向は非常に正確に規定されなければならない。なぜなら、椎弓板(lamina)に由来する穴は、非常に正確な方向に沿って、例えば脊椎骨の椎弓根に沿って、しばしば進まなければならないからである。穿設工程の重要な性質のため、外科医を支援するためにいくつかの解決策が開発されてきた。
【0003】
まず第一に、画像診断(例えば、コンピュータ断層撮影)で一般的に使用される方法を通じて、手術を受けなければならない個々の患者の個々の脊椎骨の特定の解剖学的構造のデジタル再構成を可能にする技術が開発された。
【0004】
個々の脊椎骨のデジタルモデルは、物理モデルを得ることを可能にし、このモデル上で、穿設が術前にすでに細部まで計画される。
【0005】
最後に、外科医によって最適と見なされた穿設方向および脊椎骨モデルから始めて、穿設用の特定の使い捨てガイド装置を構築することが可能である。本明細書および以下で使用される形容詞「特定」は、ガイド装置が、特定の患者の特定の脊椎骨の解剖学的構造に適応するようにカスタマイズまたは成形されていることを意味する。
【0006】
この分野では、ガイド装置は、椎弓根スクリュー挿入中に、外科医を支援するために主に使用され、これにより、スクリューの事前に計画された最適軸に従ってスクリューを挿入することができる。
【0007】
ただし、これらの装置は、他の目的のために、例えば、PSO(椎弓根サブトラクション骨切り術)、椎弓切開術、または脊椎関節突起切除術中の切断ガイドとして、脊椎手術で使用されてもよい。
【0008】
米国特許出願公開第2013/123850号明細書は、細長い湾曲もしくは弓形のコネクタまたはブリッジによって互いに一体的に(モノリシックに)またはモジュール式に(取り外し可能に)接続することができる第1および第2の患者固有の部分を含むことができるユニバーサルガイドを開示している。各患者固有の部分は、当該患者固有の部分を通過する対応する開口部を有する1つまたは複数の「腸骨」ガイド要素を含む。腸骨ガイド要素は、術前に患者固有の向きおよび位置で構成される。腸骨ガイド要素の開口部は、ドリルを安定させてガイドするためのスリーブまたは他のドリルガイドを受け入れることによって直接または間接的にドリルビットを受け入れるように先細りの形状およびサイズにすることができる。
【0009】
一般に、ガイド装置は、安定した且つ明確に規定された構成において患者の脊椎骨と嵌合するように適合された1つまたは複数の接触要素および1つまたは複数のガイドスリーブを備えている。
【0010】
ガイドスリーブは、手術器具の前進方向を規定する。当業者がよく理解できるように、術前段階で規定された最適な方向を忠実に維持するために、装置は完全に脊椎骨にしっかりと置くことができなければならず、且つ現実の手術領域において簡単に取得可能である単一の明確に規定された使用位置を持つことができなければならない。
【0011】
この目標を達成するために、ガイド装置と患者の骨構造との間のしっかりした接触が必要である。
【0012】
ガイドを最適に位置決めするために、外科医は骨の広い領域から周囲の組織を洗い流し、場合によっては靭帯を切断しなければならない。この手術は、多くの場合、時間の観点で困難で且つコストがかかることが判明しており、合併症や患者の入院期間の延長につながり得る。
【0013】
さらに、外科医が取り除くことができない残留組織および骨自体の表面は、穿設に使用される器具およびガイド装置の両方の滑りおよびずれにつながり得る。
【0014】
これが発生した場合、椎弓根スクリューまたは骨切除は不正確にまたは準最適に配置されることになる。
【0015】
上で述べたように、手術器具が脊椎骨の表面に到達してそれを穿孔する向きは、脊椎骨に対して穿設が持たなければならない最適な方向によって規定される。このため、器具は、また、脊椎骨の表面が滑りやすいために、その望ましくない変位に有利に働く強い傾斜で脊椎骨の表面に到達せざるを得ない場合がある。したがって、この場合、外科手術の計画とガイド装置の構築に注意を払ったにもかかわらず、背椎骨の穿設は準最適であるかもしれない。
【発明の概要】
【0016】
前述のことを考慮して、本発明の根底にある技術的問題は、患者の背椎骨の滑りの問題を最小化または防止することができる、脊椎手術用の使い捨てガイド装置を提供することである。
【0017】
前述の技術的問題は、請求項1に記載の脊椎手術用のガイド装置によって解決される。
【0018】
より具体的には、前述の技術的問題は、
患者の背椎骨への外科的介入をガイドするための、近位端と遠位端との間に延びる2つのガイドスリーブと、
複数の支持要素であって、各支持要素が、結合構成において、患者の背椎骨の表面の一部に当接するように特別に構成された患者固有の接触領域を規定する、複数の支持要素と、
2つのガイドスリーブを共に結合する少なくとも1つの接合要素と、を備える装置によって解決される。
【0019】
さらに、各ガイドスリーブは、対応するガイドスリーブに重ね合わされており且つ近位端と遠位端との間に延びる補助スリーブを備え、補助スリーブの近位端は、ガイドスリーブの近位端に近接して位置する。
【0020】
有利なことに、各ガイドスリーブおよび対応する補助スリーブは、それぞれの近位端から始まる発散する展開(diverging development)を有する。
【0021】
好ましくは、各ガイドスリーブはそれぞれの主軸に沿って延在し、それぞれの補助スリーブはそれぞれの補助軸に沿って延在する。
【0022】
有利なことに、各補助軸は対応するそれぞれの主軸と交差する。
【0023】
ガイド装置のいくつかの実施形態によれば、各補助軸は、対応するそれぞれの主軸と角度αを形成する。好ましくは、補助軸および対応する主軸によって形成される角度αは、20°から60°の間、さらにより好ましくは25°から45°の間に含まれる。
【0024】
挿入ダクトは各ガイドスリーブ内に位置しており、供給ダクトは各補助スリーブ内に位置している。
【0025】
いくつかの実施形態では、供給ダクトの近位開口部が、挿入ダクトの壁に、その近位端の近くに規定されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、供給ダクトの近位開口部が、挿入ダクトの近位開口部からわずかに離間している。
【0027】
挿入ダクトと供給ダクトの両方が、手術器具のための対応するそれぞれの挿入軸を規定し、その使用は、好ましくは、術前段階で詳細に計画される。
【0028】
挿入ダクトの直径は、主要な手術器具の挿入を可能にするようなものである。前記直径は、3-18mm、3-12mm、3-9mm、3-6mmから選択され得る。
【0029】
供給ダクトの直径は、準備ドリルの挿入を可能にするようなものである。上記直径は、1.8-4mm、2-3mmから選択され得る。
【0030】
有利なことに、補助軸は、背椎骨の表面に近接して主軸からの最小距離に達する。
【0031】
好ましくは、補助軸は、背椎骨の表面に近接して主軸と交差する。
【0032】
好ましくは、補助軸は、使用時において背椎骨の内部の点であって一般に患者固有の接触領域から5mm以内に位置する点で、主軸から最小距離に到達するか、または主軸と交差する。したがって、補助軸は、使用時において患者固有の接触領域下方において、主軸に対して最小距離に到達する、または主軸と交差する。
【0033】
有利なことに、各ガイドスリーブは、近位端が遠位端に対して互いにより離れるように、方向付けられ得る。
【0034】
好ましくは、各補助軸は、それが入射する背椎骨の表面の部分と角度βを形成し、角度βは、準備ドリルの使用に有利である。
【0035】
角度βは、好ましくは60°から120°の間、さらにより好ましくは75°から105°の間に含まれる。
【0036】
好ましくは、少なくとも1つの接合要素は、2つのガイドスリーブに対して横方向に延在して、それらを互いに堅固に接続する。より好ましくは、接合要素は、各ガイドスリーブの遠位端に近接して位置している。
【0037】
好ましくは、各ガイドスリーブは、背椎骨の棘突起の収容が行われることを可能にするために少なくとも適切な距離だけ互いに離間されている。
【0038】
好ましくは、接合要素は、背椎骨の棘突起を収容するためのシートをその中に規定する逆「U」形状をとる。
【0039】
いくつかの実施形態では、棘突起を収容するためのシートは、頭尾方向に開いている。
【0040】
あるいは、棘突起を収容するためのシートは、接合要素の側面を接続する1つまたは2つの仕切りによって頭尾方向に閉じられ得る。
【0041】
好ましくは、接合要素は、外科医による装置の取り扱いを容易にするのに適したハンドルを備える。
【0042】
好ましくは、各支持要素、特にそれぞれの接触領域は、術前段階中に患者固有の態様で設計される。
【0043】
好ましくは、支持要素の少なくとも1つは、背椎骨の一部を少なくとも部分的に取り囲むように、フックのような形状になっている。
【0044】
好ましくは、各ガイドスリーブは、背椎骨の表面の一部に当接するように構成された、近位端の近くのさらなる独自の接触部分を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明による患者固有の使い捨てガイド装置のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として説明されるいくつかの実施形態の以下に提供される説明からより明らかになるであろう。
図1】本発明の第1の実施形態による使い捨てガイド装置の斜視図である。
図2】本発明の第2の実施形態による使い捨てガイド装置の斜視図であって、それが背椎骨に接近したときの斜視図である。
図3図2の図と同様の図であって、ガイド装置が背椎骨に正しく載っている図を示す。
図4】背椎骨に正しく載っている図2の装置の別の図を示す。
図5図4の線V-Vに沿って作成された断面を示す。
図6】背椎骨に正しく載っている、本発明の第3の実施形態による使い捨てガイド装置の斜視図である。
図7】背椎骨に正しく載っている図6の装置の別の図を示す。
図8図7の線VIII-VIIIに沿って作成された断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
添付の図を参照して、数字10は、本発明による脊椎手術用のガイド装置を示す。
【0047】
特に、図は、特定の背椎骨100に接近した装置10を示しており、そのために当該装置は設計および構築されたものである。
【0048】
脊椎手術のための使い捨てガイド装置10は、
患者の背椎骨100への外科的介入をガイドするための、近位端14と遠位端16との間に延びる2つのガイドスリーブ12と、
複数の支持要素18であって、各支持要素18が、結合構成において、患者の背椎骨100の表面102の一部に当接するように特別に構成された患者固有の接触領域20を規定する、複数の支持要素18と、
2つのガイドスリーブ12を一緒に結合する少なくとも1つの接合要素22と、を備える。
【0049】
本発明による使い捨てガイド装置10において、各ガイドスリーブ12は、近位端26と遠位端28との間に延びる補助スリーブ24を備え、補助スリーブ24の近位端26は、対応するガイドスリーブ12の近位端14に近接して位置している。
【0050】
本明細書および以下では、患者の背椎骨100の表面102について言及がなされ、当該表面は患者の背椎骨100を再現する仮想表面と見なされ得る。それ自体が知られているように、この仮想表面102は、患者の背椎骨100の三次元モデルから得られる。したがって、特定の仮想表面102は、個々のガイド装置10ごとに一意に識別される。さらに、ガイド装置10が結合構成において正しく配置されている場合、その位置は仮想表面102に、結果として患者の実際の背椎骨の表面に対して一意に規定される。背椎骨の表面102の一意性、および結合構成におけるガイド装置10と仮想表面102との間の相互位置の一意性のために、ガイド装置10のいくつかの特徴は、背椎骨の表面102に関して明確に規定され得る。本議論において、「使用時」、「使用中」などの表現は、背椎骨の表面102への結合構成におけるガイド装置10を指す。
【0051】
仮想表面102は背椎骨100を忠実に再現するので、添付の図では、仮想表面102は、背椎骨100自体に載っているように表され、あいまいさやエラーを導入することなく、実際に背椎骨100の現実の表面として識別され得る。
【0052】
有利には、各ガイドスリーブ12および対応する補助スリーブ24は、それぞれの近位端14、26から始まる発散する展開を有する。
【0053】
好ましくは、各ガイドスリーブ12は、対応するそれぞれの主軸Xpに沿って延在し、それぞれの補助スリーブ24は、対応するそれぞれの補助軸Xaに沿って延在する。この場合、有利には、各補助軸Xaは、対応するそれぞれの主軸Xpと交差する。
【0054】
ガイド装置10のいくつかの実施形態によれば、各補助軸Xaは、対応するそれぞれの主軸Xpと角度αを形成する。
【0055】
好ましくは、補助軸Xaおよび対応する主軸Xpによって形成される角度αは、20°から60°の間、さらにより好ましくは25°から45°の間に含まれる。
【0056】
主軸Xpと補助軸が交差する場合、それらは同じ平面にあり、角度αは当業者によって即座に特定可能である。
【0057】
逆に、主軸Xpと補助軸Xaの両方を含む平面がない場合(つまり、これらの軸がねじれの位置にある場合)、例えば、2つの軸間の最小距離を表すセグメントに垂直な平面上の軸の投影によって形成される角度を類推によって考慮することが可能である。
【0058】
本明細書で使用される「遠位」および「近位」という用語は、背椎骨100の表面102に対する要素(例えば、スリーブの端部)の相対位置を指すことに留意されたい。
【0059】
各ガイドスリーブ12は、遠位端16と近位端14との間に実質的に連続して延びる挿入ダクト30を収容する。
【0060】
言い換えれば、挿入ダクト30は、ガイドスリーブ12の遠位端16に形成された遠位開口部32と、ガイドスリーブ12の近位端14に形成された近位開口部34との間に延びる。
【0061】
同様に、各補助スリーブ24は、遠位端28と近位端26との間で実質的に連続して延びる供給ダクト36を収容する。
【0062】
言い換えれば、供給ダクト36は、補助スリーブ24の遠位端28に形成された遠位開口部38と、補助スリーブ24の近位端26に形成された近位開口部40との間に延びる。
【0063】
いくつかの実施形態(例えば、図6-8を参照)によれば、供給ダクト36の近位開口部40は、挿入ダクト30の壁に、その近位端14の近くに規定されている。これらの実施形態では、供給ダクト36は、挿入ダクト30に通じている。
【0064】
他の実施形態では(例えば、図1-5を参照)、供給ダクト36の近位開口部40は、挿入ダクト30の近位開口部34からわずかに離間している。
【0065】
挿入ダクト30および供給ダクト36の両方は、器具のためのそれぞれの挿入軸を規定し、その使用は好ましくは術前段階で詳細に計画される。
【0066】
したがって、各ダクト30、36において、遠位開口部32、38は、器具のアクセス開口部に対応し、一方、近位開口部34、40は、患者の背椎骨100に、その近傍において、面する。
【0067】
ガイド装置10と共に使用することができる器具は、典型的には、キルシュナーワイヤ、カニューレ付きの多軸ねじ、中実の多軸ねじ、ドリル、タッパー、パンチ、プローブ、マーカー、ピンであり得る。これらの器具は、外科的介入の主要な段階を実行するのはこれらであるので、以下「主要な外科器具」と呼ばれる。主要な外科器具42は、図1、2および5に概略的に表されている。
【0068】
したがって、既知の態様では、挿入ダクト30の直径は、それが主要な外科器具42の挿入を可能にするようなものである。適用分野に応じて、挿入ダクトの内径は3-18mm、3-12mm、3-9mm、3-6mmから選択され得る。
【0069】
本発明によれば、供給ダクト36の直径は、それが準備ドリルの挿入を可能にするようなものである。適用分野に応じて、挿入ダクトの内径は1.8-4mm、2-3mmから選択され得る。そのような準備ドリルは、主要な外科器具42の使用を容易にするために骨を表面的に切開するタスクを有する。
【0070】
上記に照らして、当業者は、ガイドスリーブ12の主軸Xpが、挿入ダクト30の、したがって主要な外科器具42の前進方向を規定することを容易に理解することができる。同様に、補助スリーブ24の補助軸Xaは、供給ダクト36の、したがって準備ドリル(図には示されていない)の前進方向を規定する。準備ドリルの前進方向Xaは、有利なことに術前計画中に規定され得、とりわけ、準備ドリルが背椎骨100の表面102に接近する角度βを最適に規定する。角度βに関するいくつかの考慮事項は以下に示される。
【0071】
したがって、有利には、補助軸Xaは、背椎骨100の表面102に近接して主軸Xpからの最小距離に達する。好ましくは、補助軸Xaは、背椎骨100の表面102に近接して主軸Xpと交差する。
【0072】
好ましくは、図5および8に示される断面図に見られるように、補助軸Xaは、背椎骨100の内部の点で、主軸Xpから最小距離に到達するか、またはそれと交差する。いくつかの実施形態によれば、補助軸Xaは、表面102から5mm以内で主軸Xpと交差する、または主軸Xpから最小距離に到達する。
【0073】
本発明の任意選択的な態様によれば、各ガイドスリーブ12は、近位端14が遠位端16に対して互いにより離れるように、方向付けられ得る。言い換えれば、各ガイドスリーブ12の主軸Xpは、それぞれの遠位端16から開始して、互いに離れるように方向付けられている。したがって、本発明によるガイド装置10は、好ましくは、ガイドスリーブ12が近位領域で発散する「発散」構成を有する。
【0074】
有利なことに、これは、装置10の位置決めを単純化し、したがって、外科医による挿入に必要なスペースを削減する。
【0075】
当業者が十分に理解できるように、各補助スリーブ24の向きは、装置10の設計中にかなり自由に選択することができる。
【0076】
特に、背椎骨100の表面102に対する向きは、主要な外科器具42がたどる方向Xpに関係なく規定され得る。
【0077】
各ガイドスリーブ12および対応するそれぞれの補助スリーブ24の向きおよび位置決めは、コンピュータ支援設計ツールによって、骨構造の3次元モデル上で、術前段階中に設計される。このモデルは、例えば、患者の背椎骨100のコンピュータ断層撮影および/または磁気共鳴によって得られた3次元画像から開発される。したがって、各スリーブ12、24は、背椎骨100に対するそれぞれの軸Xp、Xaの方向を一意に規定するように設計されている。
【0078】
好ましくは、装置10は、各補助軸Xaが、使用中、それが入射する背椎骨100の表面102の部分と角度βを形成するように構築されており、角度βは、準備ドリルの使用に有利である。使用中に、各補助軸Xaと、それが入射する背椎骨100の表面102の部分とによって形成される角度βは、好ましくは60°から120°の間、さらにより好ましくは75°から105°の間に含まれる。
【0079】
前述のように、接合要素22は、2つのガイドスリーブ12の間に提供される。
【0080】
好ましくは、少なくとも1つの接合要素22は、2つのガイドスリーブ12に対して横方向に延在して、それらを互いに堅固に接続する。より好ましくは、接合要素22は、各ガイドスリーブ12の遠位端16に近接して位置している。
【0081】
したがって、そのような接合要素22は、好ましくは、2つのガイドスリーブ12の間に延在してそれらを離間させ且つそれらを事前に確立された相互位置にしっかりと保つ非直線の横材である。
【0082】
好ましくは、各ガイドスリーブ12は、背椎骨100の棘突起104の収容が行われることを可能にするのに少なくとも適切な距離だけ互いに離間されている。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、接合要素22は、背椎骨100の棘突起104を収容するためのシート44をその中に規定する逆「U」形状をとる。
【0084】
いくつかの実施形態、例えば図1-4に示されるものによれば、棘突起104を収容するためのシート44は、結合構成(オープンプロファイル)にガイド装置10を配置する前に患者の靭帯を切除しなければならないことを防ぐためにクラニアル-カウダル方向に開いている。
【0085】
あるいは、例えば、図6-7に示される実施形態では、棘突起104を収容するためのシート44は、接合要素22の側面を接続する1つまたは複数のパーティション46によってクラニアル-カウダル方向に閉じることができ、これにより、ガイド装置10に対して優れた安定性を確保するように、それぞれ、棘突起104を取り囲むセミオープンまたはクローズドプロファイルを形成する。
【0086】
本発明のさらなる任意選択的な態様によれば、接合要素22は、好ましくは、外科医による装置10の取り扱いを容易にするのに適したハンドル48を備える。例えば、ハンドル48は、接合要素22から延設し得る(例えば、図2から4を参照されたい)。あるいは、ハンドル48は、同様に接合要素22に対して延在し得、2つのガイドスリーブ12を互いに結合する。
【0087】
装置10の安定性を促進するために、それは、好ましくは、各ガイドスリーブ12の近位端14の近くに配置された複数の支持要素18を備える。各支持要素18は、結合構成において、患者の背椎骨100の表面102の特定の部分に当接するように構成された接触領域20を規定する。接触領域20は患者固有である。
【0088】
好ましくは、この部分は、棘突起104、椎弓板、関節突起、または患者の背椎骨100の横突起の片側である。
【0089】
スリーブについて既に述べたように、各支持要素18、特にそれぞれの接触領域20はまた、骨構造の3次元モデル上で、コンピュータ支援設計ツールによって、術前段階中に設計される。このモデルは、例えば、患者の背椎骨100のコンピュータ断層撮影および/または磁気共鳴によって得られた3次元画像から開発される。
【0090】
したがって、各支持要素18の各接触領域20は、それが患者の骨構造と一意に一致するように設計されている。
【0091】
いくつかの実施形態では、支持要素18の少なくとも1つは、フックのような形状である。言い換えれば、この支持要素18は、背椎骨100の一部を少なくとも部分的に取り囲み且つ異なる方向から背椎骨100上に載るように全体として形作られた接触領域20を備える。例として、図2から図4の実施形態では、2つの支持要素18は両方ともフックのような形状であり、その結果、各支持要素18が、部分的にクラニアル方向に且つ部分的にカウダル方向に、背椎骨100の椎弓または椎弓板上に載るように設計された接触領域20を規定することが分かる。
【0092】
有利なことに、これにより、縮小された、しかし特に堅固な支持領域を得ることができる。
【0093】
特定の実施形態では、各ガイドスリーブ12はまた、ガイドスリーブ12の近位端14の近くに位置しており且つ背椎骨100の表面102の一部に当接するように構成されたさらなる接触部分50を備えている。好ましくは、この接触部分50はまた、患者固有の接触領域20と同様に、患者の個々の背椎骨100の対応する部分の表面に対して相補的に形作られる。
【0094】
本発明は、意図された目的を達成し、重要な利点を達成する。
【0095】
実際、補助スリーブ24の存在は、ガイドスリーブ12の方向よりも好ましい方向Xaに沿って操作することによって、外科医が背椎骨100の表面を切開することを可能にする。
【0096】
準備ドリルが表面切開を行うと、主要な外科器具42の挿入はかなり単純化され、したがって危険なずれを受ける可能性は低い。
【0097】
例示的且つ非限定的な目的のために、本発明の異なる実施形態に関連して特定の特徴が説明されていることは明らかである。
【0098】
明らかに、当業者は、偶発的且つ特定の要件を満たすために、本発明にさらなる修正および変形を加えることができる。例えば、本発明の一実施形態に関連して記載された技術的特徴は、それから推定され、本発明の他の実施形態に適用されてもよい。そのような修正および変形はまた、以下の特許請求の範囲で規定される本発明の保護の範囲内にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【文献】米国特許出願公開第2013/123850号明細書
図1
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