(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】電気部品の温度を測定するためのシステム、およびこのようなシステムを備えるスイッチングアーム
(51)【国際特許分類】
G01K 1/18 20060101AFI20220905BHJP
【FI】
G01K1/18
(21)【出願番号】P 2020568286
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2019063278
(87)【国際公開番号】W WO2019233771
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-08
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508075579
【氏名又は名称】ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル、ファルギエール
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、ボーデッソン
(72)【発明者】
【氏名】リュドビック、ボダン
(72)【発明者】
【氏名】マチュー、ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】ローラン、カーブ
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-278339(JP,A)
【文献】特開2003-309239(JP,A)
【文献】特表2017-529825(JP,A)
【文献】特開平11-297461(JP,A)
【文献】特開2015-126089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0097527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品(114)の温度を測定するためのシステムであって、
-導電体(122)であって、
・主要部(206)と、
・電気分岐を形成するように前記主要部(206)から突出する補助部(214)と、
を有する導電体と、
-前記導電体(122)の前記主要部(206)に電気的に接続された前記電気部品(114)と、
-前記導電体(122)から電位を受け取るように前記導電体(122)の前記補助部(214)に電気的に接続された電子回路(202)と、
-前記電気部品(114)の温度を表す温度測定値を供給するように設計された温度測定装置(218)と、
を備える、電気部品(114)の温度を測定するためのシステムにおいて、
前記システムが、
-前記導電体(122)の前記補助部(214)と前記温度測定装置(218)との間の熱的接続(216)であって、前記熱的接続(216)が、前記導電体(122)の前記主要部(206)から離されている熱的接続(216)
をさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記導電体(122)の前記主要部(206)および前記電気部品(114)は、主電流が流れるように意図されており、前記導電体(122)の前記補助部(214)は、前記主電流の最大10%の値を有する補助電流が流れるように意図されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記補助部(214)が、前記主要部(206)の導電断面の4分の1未満の導電断面を有する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記導電体(122)の前記主要部(206)および前記補助部(214)が
、同一の導電性部分から形成されており、前記主要部(206)および前記補助部(214)を形成するように切断され折り曲げられている、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記電子回路(202)が、前記電気部品(114)を制御するための電子制御回路であり、前記電子制御回路(202)が、前記温度測定値を受け取るように前記温度測定装置(218)に接続されており、前記電子制御回路(202)が、前記導電体(122)の前記電位および/または前記温度測定値に基づいて前記電気部品(114)を制御するように設計されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記電子回路(202)および前記温度測定装置(218)の少なくとも一部を保持するプリント回路基板(204)をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記導電体(122)の前記補助部(214)が、前記プリント回路基板(204)に達しており
、前記熱的接続(216)が、前記プリント回路基板(204)上に延在する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記熱的接続(216)が、前記プリント回路基板(204)の第1のトラックを備え、前記電子回路(202)が、前記第1のトラックまたは前記第1のトラック(216)とは異なる前記プリント回路基板(204)の第2のトラック(220)のいずれかを介して前記導電体(122)の前記補助部(214)に電気的に接続されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記電気部品(114)及び少なくとも部分的に前記
導電体の前記主要部(206)を覆う
電気絶縁体(212)の層をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記温度測定装置(218)が、サーミスタ、ダイオード、白金プローブのうちの少なくとも1つを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記電気部品(114)が、前記導電体(122)の前記主要部(206)に押し付けられている、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記電気部品(114)が、制御可能な
スイッチである、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御可能なスイッチ(114)が、2つの主端子(116、118)および制御端子(120)を有し、前記導電体(122)が、前記2つの主端子(116、118)のうちの一方に電気的に接続されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
-センタータップで互いに接続された制御可能なハイサイドスイッチ(112)および制御可能なローサイドスイッチ(114)と、
-前記制御可能なハイサイドスイッチ(112)および前記制御可能なローサイドスイッチ(114)のうちの一方の温度を測定するための、請求項12または13に記載の第1のシステムと、
を備えるスイッチングアーム。
【請求項15】
前記制御可能なハイサイドスイッチ(112)および前記制御可能なローサイドスイッチ(114)のうちのもう一方の温度を測定するための、請求項12または13に記載の第2のシステムをさらに備える、請求項14に記載のスイッチングアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品の温度を測定するためのシステム、およびこのようなシステムを備えるスイッチングアームに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2007003824号で公開されているPCT国際出願は、電気部品の温度を測定するためのシステムであって、
-導電体であって、
・主要部と、
・電気分岐を形成するように主要部から突出する補助部と、
を有する導電体と、
-導電体の主要部に電気的に接続された電気部品と、
-導電体から電位を受け取るように導電体の補助部に電気的に接続された電子回路と、
-電気部品の温度を表す温度測定値を供給するように設計された温度測定装置と
を備える、システムを説明している。
【0003】
この既知のシステムでは、電気部品は、電子回路によって制御されるスイッチングアームの制御可能なスイッチであり、温度測定装置は、導電体の主要部に押し付けられている。したがって、スイッチの温度は、温度測定装置までの温度勾配を生成し、スイッチを保持する導電体の主要部に延びる。
【0004】
しかしながら、導電体の主要部および電子部品は、特に電気絶縁体がエポキシ樹脂である場合、温度測定装置を劣化させる危険性がある電気絶縁体の層で覆われている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、上記の問題を少なくとも部分的に克服することである。
【0006】
この目的のために、提案されているものは、
-導電体であって、
・主要部と、
・電気分岐を形成するように主要部から突出する補助部と、
を有する導電体と、
-導電体の主要部に電気的に接続された電気部品と、
-導電体から電位を受け取るように導電体の補助部に電気的に接続された電子回路と、
-電気部品の温度を表す温度測定値を供給するように設計された温度測定装置と
を備える、電気部品の温度を測定するためのシステムであって、
システムが、
-導電体の補助部と温度測定装置との間の熱的接続であって、熱的接続が、導電体の主要部から離されている熱的接続
をさらに備えることを特徴とするシステムである。
【0007】
本発明により、電子回路が導電体の電位を回復するために通常使用される、導電体の補助部が、電気部品の温度を表す温度測定値を取得するためにさらに使用される。したがって、温度測定装置を、電気部品及び電気部品が押し付けられている導電体の主要部から離して、したがってそれらを覆う電気絶縁体の層の外部に、配置することが可能である。
【0008】
本発明による測定システムはまた、個別にまたは技術的に実現可能な任意の組み合わせで考えられる、以下の特徴のうちの1つ以上を備え得る。
【0009】
したがって、選択的に、導電体の補助部は、熱的接続と直接熱接触する。
【0010】
選択的に、導電体の主要部および電気部品は、主電流が流れるように意図され、導電体の補助部は、主電流の最大10%の値を有する補助電流が流れるように意図される。
【0011】
選択的に、補助部は、主要部の導電断面の4分の1未満の導電断面を有する。
【0012】
選択的に、導電体の主要部および補助部は、例えば銅製の、同一の導電性部分から形成され、主要部および補助部を形成するように切断され折り曲げられる。
【0013】
選択的に、電子回路は、電気部品を制御するための電子制御回路であり、電子制御回路は、温度測定値を受け取るように温度測定装置に接続され、電子制御回路は、導電体の電位および/または温度測定値に基づいて電気部品を制御するように設計される。
【0014】
選択的に、本システムは、電子回路および温度測定装置の少なくとも一部を保持するプリント回路基板をさらに備える。
【0015】
選択的に、導電体の補助部は、プリント回路基板に到達し、例えば、プリント回路基板に形成された開口を通り、熱的接続は、プリント回路基板上に延在する。
【0016】
選択的に、熱的接続は、プリント回路基板上に延在し、導電体の補助部は、熱的接続と電気的に接触する。
【0017】
選択的に、導電体の補助部は、プリント回路基板に形成された開口を通る。
【0018】
選択的に、熱的接続は、プリント回路基板の第1のトラックを備え、電子回路は、第1のトラックまたは第1のトラックとは異なるプリント回路基板の第2のトラックのいずれかを介して導電体の補助部に電気的に接続される。
【0019】
選択的に、本システムは、電気部品と、少なくとも部分的に熱導体の主要部とを覆う、例えばエポキシ樹脂である電気絶縁体の層をさらに備える。
【0020】
選択的に、温度測定装置は、サーミスタ、ダイオード、白金プローブのうちの少なくとも1つを備える。
【0021】
選択的に、電気部品は、導電体の主要部に押し付けられている。
【0022】
選択的に、電気部品は、制御可能なスイッチ、例えばトランジスタである。
【0023】
選択的に、制御可能なスイッチは、2つの主端子および制御端子を有し、導電体は、2つの主端子のうちの一方に電気的に接続される。
【0024】
さらに提案されているものは、
-センタータップで互いに接続された制御可能なハイサイドスイッチおよび制御可能なローサイドスイッチと、
-制御可能なハイサイドスイッチおよび制御可能なローサイドスイッチのうちの一方の温度を測定するための、本発明による第1のシステムと
を備えるスイッチングアームである。
【0025】
選択的に、スイッチングアームは、制御可能なハイサイドスイッチおよび制御可能なローサイドスイッチのうちのもう一方の温度を測定するための、本発明による第2のシステムを備える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明を実施する電気システムの回路図である。
【
図2】
図1の電気システムの電圧変換器の一部の非常に簡略化された断面図である。
【
図3】
図2の電圧変換器の電力モジュールの一部の三次元図である。
【
図4】電圧変換器のプリント回路基板の非常に簡略化された上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施する電気システム100が、
図1を参照して説明される。
【0028】
電気システム100は、例えば、自動車に組み込まれるように意図されている。
【0029】
電気システム100は、第1に、例えば10Vから100Vの間の、例えば48Vあるいは12VのDC電圧Uを供給するように設計された電源102を備えている。電源102は、例えば電池を備えている。
【0030】
電気システム100は、それぞれの相電圧を有するように意図された複数の相(図示せず)を含む電気機械130をさらに備えている。
【0031】
電気システム100は、DC電圧Uと相電圧との間の変換を実行するために、電源102と電気機械130との間に接続された電圧変換器104をさらに備えている。
【0032】
電圧変換器104は、第1に、DC電圧Uを受け取るために電源102に接続されるように意図された正のバスバー106および負のバスバー108を備えており、正のバスバー106は高い電位を受け取り、負のバスバー106は低い電位を受け取る。
【0033】
電圧変換器104は、それぞれの相電圧を提供するために電気機械130の1つ以上の相にそれぞれ接続されるように意図された1つ以上の相バスバー122を備える少なくとも1つの電力モジュール110をさらに備えている。
【0034】
説明されている例では、電圧変換器104は、3つの電力モジュール110を備えており、3つの電力モジュール110のそれぞれが、電気機械130の2つの相に接続された2つの相バスバー122を備えている。
【0035】
より正確には、説明されている例では、電気機械130は、2つの三相系を備えており、2つの三相系のそれぞれが、3つの相を含み、互いに120°電気的に位相オフセットされるように意図されている。好ましくは、電力モジュール110の第1の相バスバー122は、それぞれ、第1の三相系の3つの相に接続され、一方、電力モジュール110の第2の相バスバー122は、それぞれ、第2の三相系の3つの相に接続されている。
【0036】
各電力モジュール110は、各相バスバー122に関して、正のバスバー106と相バスバー122との間に接続されたハイサイドスイッチ112と、相バスバー122と負のバスバー108との間に接続されたローサイドスイッチ114とを備えている。したがって、スイッチ112、114は、相バスバー122がセンタータップを形成するスイッチングアームを形成するように配置されている。
【0037】
各スイッチ112、114は、第1の主端子116および第2の主端子118と、制御端子120と、を備えており、制御端子120は、それに加えられる制御信号に応じてその2つの主端子116、118間でスイッチ112、114を選択的に開閉するように意図されている。スイッチ112、114は、好ましくはトランジスタであり、例えば、制御端子120を形成するゲートと主端子116、118をそれぞれ形成するドレインおよびソースとを有する金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:metal-oxide semiconductor field-effect transistor)である。
【0038】
説明されている例では、スイッチ112、114はそれぞれ、例えば略矩形でありかつ上面および下面を有する、プレートの形態を有している。第1の主端子116は下面上に延在し、一方、第2の主端子118は上面上に延在している。スイッチ112、114は、それらの主端子116、118間で1Aを上回る電流が流れるように意図されている。
【0039】
正のバスバー106、負のバスバー108、および相バスバー122は、スイッチ112、114を通って流れるように意図された少なくとも1Aの電流に耐えるように設計された剛性のある導電体であることが理解されよう。それらは、好ましくは、少なくとも1mmの厚さを有している。
【0040】
さらに、説明されている例では、正のバスバー106は、第1に、電力モジュール110を接続する正の共通バスバー106Aと、各電力モジュール110内の、正の共通バスバー106Aに接続された正のローカルバスバー106Bと、を備えている。同様に、負のバスバー108は、電力モジュール110を接続する負の共通バスバー108Aと、各電力モジュール110内の、各ローサイドスイッチ114用の負のローカルバスバー108Bであって、負の共通バスバー108Aに接続された負のローカルバスバー108Bと、を備えている。
図1では、接続は菱形で示されている。
【0041】
さらに、説明されている例では、正の共通バスバー106Aおよび負の共通バスバー108Aはそれぞれ、単一の導電性部分で形成されている。
【0042】
さらに、説明されている例では、電気機械130は、オルタネータおよび電気モータの機能を同時に有している。より正確には、自動車は、電気機械130がベルト(図示せず)を介して接続された出力シャフトを有する熱燃焼エンジン(図示せず)をさらに備えている。熱燃焼エンジンは、その出力シャフトを介して自動車の車輪を駆動するように意図されている。したがって、オルタネータモードでの動作中、電気機械は、出力シャフトの回転から電源102の方向に電気エネルギーを供給する。そのとき、電圧変換器104は、整流器として機能する。電気モータモードでの動作中、電気機械は、(熱燃焼エンジンに加えて、あるいは熱燃焼エンジンの代わりに)出力シャフトを駆動する。そのとき、電圧変換器104は、インバータとして機能する。
【0043】
電気機械130は、例えば、自動車のトランスミッションあるいはクラッチに、あるいはオルタネータの代わりに配置されている。
【0044】
説明の残りの部分では、電圧変換器104の要素の構造およびレイアウトが、「H」が上を表し、「B」が下を表す垂直方向H-Bを参照してより詳細に説明される。
【0045】
図2を参照すると、電圧変換器104は、スイッチ112、114を制御するための電子制御回路202と、制御回路202の少なくとも一部を保持するプリント回路基板204(すなわちPCB)と、を備えている。説明されている例では、プリント回路基板204は、アルミニウムハウジング(図示せず)内で水平に延在する。電子制御回路202は、例えば、プリント回路基板204によって保持されるマイクロコントローラを備えている。さらに、電子制御回路202によって発行されるコマンドは、少なくとも1つのドライバを介してスイッチ112、114に送信される。
【0046】
相バスバー122は、第1に、1アンペアを上回る電流を伝導する水平プレートの形態の主要部206を備える。ローカルバスバー106B、108Bもまた、1アンペアを上回る電流を伝導する水平プレートの形態である。これらの水平プレート106B、108B、206は、同一平面上にあり、電力モジュール110の垂直方向の嵩を制限するために互いに隣接して延在している。
【0047】
ハイサイドスイッチ112の下面は、ハイサイドスイッチ112を機械的に取り付けるために、正のローカルバスバー106Bの上面に押し付けられ、これにはんだ付けされている。この取り付けはさらに、その第1の主端子を正のローカルバスバー106Bに電気的に接続することを可能にしている。さらに、例えばアルミニウム製の、1つまたは好ましくは複数の導電性ストリップ208が、ハイサイドスイッチ112の上面と相バスバー122の主要部206とを電気的に接続するために、ハイサイドスイッチ112の上面から相バスバー122の主要部206に延在している。代替手段として、ストリップは、導電性ワイヤあるいは導電性テープあるいはワイヤボンディングに置き換えられ得る。
【0048】
同様に、ローサイドスイッチ114の下面は、ローサイドスイッチ114を機械的に取り付けるために、相バスバー122の主要部206の上面に押し付けられ、これにはんだ付けされている。この取り付けはさらに、その第1の主端子を相バスバー122に電気的に接続することを可能にしている。さらに、例えばアルミニウム製の、1つまたは好ましくは複数の導電性ストリップ210が、ローサイドスイッチ114の上面と負のローカルバスバー108Bとを電気的に接続するために、ローサイドスイッチ114の上面から負のローカルバスバー108Bに延在している。したがって、相バスバー122の主要部206およびローサイドスイッチは、1Aを上回る値を有し得る主電流が流れるように意図されている。
【0049】
ハイサイドスイッチ112は、正のローカルバスバー106Bに電気的に接続されるようにするために正のローカルバスバー106Bに押し付けられている。
【0050】
ローサイドスイッチ114は、ローサイドスイッチ114と相バスバー122の主要部206との間に電気的および熱的接続を確立するように、相バスバー122の主要部206に押し付けられている。
【0051】
電力モジュール110は、スイッチ112、114および導電性ストリップ208、210を覆う電気絶縁体212の層をさらに備えている。電気絶縁体212の層はさらに、バスバー106B、108B、および相バスバー122の主要部206を少なくとも部分的に覆っている。電気絶縁体212の層は、例えば、エポキシ樹脂のオーバーモールドである。電気絶縁体212の層に使用される材料は、例えば、80N/mm2を上回る、好ましくは100N/mm2を上回る曲げ限界を有する。例えば、電気絶縁体212の層に使用される材料は、曲げ限界が140N/mm2である、品目名G720EタイプHを有するエポキシ樹脂、または曲げ限界が105N/mm2である、品目名XE8495を有するエポキシ樹脂であり得る。したがって、電気絶縁体212の層は自立型であり、ハウジングによって形成された窪みに含まれる必要がなく、このため、電力モジュール110の製造が簡素化される。
【0052】
相バスバー122は、電気分岐を形成するように相バスバー122の主要部206から突出する補助部214をさらに備えている。補助部214は、例えば、相バスバー122の主要部206の導電断面の4分の1未満の導電断面を有する。補助部214の少なくとも一部は、プリント回路基板204に形成された開口を通る垂直ピンを形成する。明確にするために、補助部214は、説明の残りの部分では単に「ピン」と呼ばれる。ピン214は、主電流の最大10%の値を有する補助電流が流れるように意図されている。
【0053】
説明されている例では、相バスバー122の主要部206およびピン214は、例えば銅製の、同一の導電性部分で形成されており、主要部206およびピン214を形成するように切断され折り曲げられていることが理解されよう。
【0054】
同様に、ローカルバスバー108Bはそれぞれ、水平な主要部と、補助部と、を有し、補助部の一部が、プリント回路基板204に形成された開口を通る垂直ピンを形成している。
【0055】
プリント回路基板204は、ピン214から延在する第1のトラック216を備えている。
【0056】
さらに、プリント回路基板204は、第1のトラック216上に配置された温度測定装置218を保持している。したがって、第1のトラック216は、ピン214および温度測定装置218の両方と接触する熱的接続を形成している。この熱的接続は、相バスバー122の主要部206から離されている、すなわち、それは主要部206を含まない。したがって、ローサイドスイッチ114の温度は、主要部206、ピン214、および熱的接続216を連続して通る、ローサイドスイッチ114から温度測定装置218にかけての温度勾配を生成する。
【0057】
温度測定装置218は、例えばサーミスタ、例えば温度が上昇すると抵抗が低下し、その逆の場合には逆の結果となるNTC(負温度係数(Negative Temperature Coefficient))サーミスタ、または温度が上昇すると抵抗が上昇し、その逆の場合には逆の結果となるPTC(正温度係数(Positive Temperature Coefficient))サーミスタを備えている。代替手段として、温度測定装置218は、ダイオードを備えてもよく、ダイオードは、その端子間に、温度の関数として変化する電圧降下を有している。ダイオードを使用すると、サーミスタを使用する場合よりも高い温度を測定することが可能になる。さらに高い温度の場合、温度測定装置218は、白金プローブ(「白金抵抗温度計」とも呼ばれる)を備え得る。
【0058】
したがって、温度測定装置218は、第1のトラック216の温度を測定し、この温度の測定値を供給するように設計されている。一方、第1のトラック216は、相バスバーのピン214および主要部206を介してローサイドスイッチ114に熱的に接続されている。したがって、ローサイドスイッチ114と温度測定装置218との間には温度勾配があり、これにより、供給される温度測定値は、定常状態および過渡状態またはパルス状態(pulsed state)の両方におけるローサイドスイッチ114の温度を表す。さらに、温度測定装置218を、相バスバー122の主要部206に対して配置するのではなく、プリント回路基板204上に配置することにより、温度測定値を電子制御回路202に供給するために温度測定値をプリント回路基板204にフィードバックするための追加のピンを使用することを回避することが可能になる。
【0059】
さらに、ピン214の低い熱慣性により、温度測定値が過渡状態またはパルス状態のローサイドスイッチの温度をより表すようになるため、ローサイドスイッチ114の温度を測定するためにピン214を使用することは有益である。
【0060】
さらに、温度測定装置218は、例えば、プリント回路基板204の少なくとも1つの他のトラック(
図2には示されていないが、
図4では参照符号402を有する)を介して、電子制御回路202に接続され、これにより、電子制御回路202は、温度測定値を受け取る。好ましくは、単一のトラック402が、温度測定値を電子制御回路202に送信するために使用され、これは、プリント回路基板204上の配線を容易にし、熱損失および干渉を制限するという利点を有する。代替手段として、温度測定装置218が接触して配置されたトラック216が、温度測定値を送信するために使用され得る。
【0061】
プリント回路基板204は、相バスバー122から電位を受け取るように、ピン214から延在し、電子制御回路202をピン214に電気的に接続する第2のトラック220を備えている。
【0062】
したがって、電子制御回路202は、相バスバー122の電位および温度測定値に基づいて制御可能なスイッチ112、114を制御するように設計されている。
【0063】
図3は、電気絶縁体212がない、
図2の電力モジュール110を示している。
【0064】
上で説明された温度測定システムは、3つの電力モジュール110のうちの2つにおける2つのローサイドスイッチ114に対して繰り返される。したがって、
図4を参照すると、説明されている例では、2つの電力モジュール110の2つのローサイドスイッチ114のそれぞれに、上で説明されたもののような温度測定装置218が設けられている。したがって、プリント回路基板204は、4つの温度測定装置218を保持している。これらのそれぞれは、温度測定値を送信するためにトラック402を介して電子制御回路202に接続されている。
【0065】
本発明は、上で説明された実施形態に限定されない。実際、当業者には、それに修正が加えられ得ることは明らかであろう。
【0066】
例えば、プリント回路基板204の第1のトラック216が、電子制御回路202をピン214に電気的に接続するために使用され得、これにより、第2のトラック220はもはや必要とされなくなる。
【0067】
さらに、負のローカルバスバー108Bのピンの1つが、ピン214の代わりに使用され得る。
【0068】
図示されていない一実施形態では、正のローカルバスバー106Bは、ピン214の代わりに使用され得るピンを備える。
【0069】
さらに、使用されている用語は、上で説明された実施の形態の要素に限定されるものとして理解されるべきではなく、むしろ、当業者が自分の一般知識から推論することができるすべての同等の要素を包含するものとして理解されるべきである。