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特許7135121尿素バイオセンサ及び室温における尿素バイオセンサの安定化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】尿素バイオセンサ及び室温における尿素バイオセンサの安定化
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20220905BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20220905BHJP
   G01N 27/333 20060101ALI20220905BHJP
   G01N 33/62 20060101ALI20220905BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
G01N27/416 336G
G01N27/327 353J
G01N27/327 353B
G01N27/333 331A
G01N33/62 A
G01N33/483 F
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020570928
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 US2019035153
(87)【国際公開番号】W WO2020204973
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】62/830,191
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506391864
【氏名又は名称】インストゥルメンテーション ラボラトリー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,シャオシャン
(72)【発明者】
【氏名】パミディ,プラサード
(72)【発明者】
【氏名】イム,ヒョンシク
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-502921(JP,A)
【文献】国際公開第2008/028011(WO,A2)
【文献】特表2005-501254(JP,A)
【文献】特表2011-508221(JP,A)
【文献】Julia M.C.S. Magalhaes ほか1名,Urea potentiometric biosensor based on urease immobilized on chitosan membranes,Talanta,1998年,47,pp.183-191
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニウム選択高分子膜と、
前記アンモニウム選択高分子膜の外表面上のウレアーゼを備える酵素層と、
前記酵素層の表面に配置され、複合膜の一部を形成する高分子拡散膜と、
(i)前記アンモニウム選択高分子膜上に配置された前記酵素層上に配置された前記高分子拡散膜上に配置された多糖、又は(ii)前記アンモニウム選択高分子膜上に配置された前記酵素層上に配置された前記高分子拡散膜上に配置され、かつ前記酵素層に含まれる多糖であり、前記ウレアーゼが前記アンモニウム選択高分子膜上に前記酵素層を形成する前に前記ウレアーゼに加えられる多糖と、
を備え、
前記多糖が、前記高分子拡散膜と前記アンモニウム選択高分子膜の間の前記ウレアーゼの安定な活性を維持するためにあ
前記高分子拡散膜が、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー、ペルフルオロスルホネートアイオノマー NAFION(登録商標)、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、又は酢酸セルロース、又はそれらの少なくともいずれかの混合物、又はそれらの少なくともいずれかのコポリマーを備える高分子化合物を備える、
尿素バイオセンサ。
【請求項2】
銀、白金、又は金を備える金属素子と、
前記金属素子と前記アンモニウム選択高分子膜の間の内部電解質溶液と、
をさらに備える、請求項1に記載の尿素バイオセンサ。
【請求項3】
銀/塩化銀を備える金属素子と、
前記金属素子と前記アンモニウム選択高分子膜の間の内部電解質溶液と、
をさらに備える、請求項1に記載の尿素バイオセンサ。
【請求項4】
前記高分子拡散膜が、ポリマーマトリックスと、前記ポリマーマトリックス中のアンモニウム選択イオノフォアと、を備える、請求項1に記載の尿素バイオセンサ。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックスが、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、若しくはシリコーンゴム、又はポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、若しくはシリコーンゴムの混合物の一若しくは複数を備える、請求項4に記載の尿素バイオセンサ。
【請求項6】
前記ポリマーマトリックスがポリ塩化ビニルを備える、請求項4に記載の尿素バイオセンサ。
【請求項7】
前記アンモニウム選択イオノフォアが、ノナクチン、モナクチン、ジナクチン、トリナクチン、テトラナクチン、ナラシン、ヘキサオキサヘプタシクロトリテトラコンタン、ベンゾクラウンエーテル、若しくは環状デプシペプチド、又はノナクチン、モナクチン、ジナクチン、トリナクチン、テトラナクチン、ナラシン、ヘキサオキサヘプタシクロトリテトラコンタン、ベンゾクラウンエーテル、若しくは環状デプシペプチドの混合物の一若しくは複数を備える、請求項4に記載の尿素バイオセンサ。
【請求項8】
前記アンモニウム選択イオノフォアがノナクチンを備える、請求項4に記載の尿素バイオセンサ。
【請求項9】
前記ウレアーゼが架橋される、請求項1に記載の尿素バイオセンサ。
【請求項10】
前記多糖が、スクロース、トレハロース、ラフィノース、又はラクチトールの一又は複数を備える、請求項1に記載の尿素バイオセンサ。
【請求項11】
前記多糖が10%のスクロースを備える、請求項1に記載の尿素バイオセンサ。
【請求項12】
尿素バイオセンサを製造するための方法であって、
溶液中のウレアーゼを電極のアンモニウムイオン選択膜の外表面にキャストして、酵素層を形成することと、
拡散バリアを前記酵素層の表面上に適用することと、
前記拡散バリアを前記酵素層に適用した後、多糖溶液を当該尿素バイオセンサに適用することと、
当該尿素バイオセンサを乾燥させることと、
を含
前記拡散バリアが、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー、ペルフルオロスルホネートアイオノマー NAFION(登録商標)、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、又は酢酸セルロース、又はそれらの少なくともいずれかの混合物、又はそれらの少なくともいずれかのコポリマーを備える高分子化合物を備える、
方法。
【請求項13】
前記ウレアーゼが架橋される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ウレアーゼが、グルタルアルデヒド、1,4-ジイソシアナトブタン、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、又は1,2,9,10-ジエポキシデカンの一又は複数を備える化学物質によって架橋される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記電極が、銀、白金、又は金を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記電極が、銀/塩化銀電極を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記多糖が、スクロース、トレハロース、ラフィノース、又はラクチトールを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記多糖を適用することが、前記電極を多糖溶液に少なくとも30分間曝露することを
含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記尿素バイオセンサが、周囲温度で5ヶ月間の乾燥貯蔵及び21日間の使用後に、安
定した尿素測定性能を維持するよう構成される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の尿素バイオセンサを収容する使い捨てカートリッジ。
【請求項21】
センサのアレイをさらに備え、前記センサが前記尿素バイオセンサを備える、請求項20に記載の使い捨てカートリッジ。
【請求項22】
前記溶液中のウレアーゼをキャストする前に、多糖溶液が前記溶液中のウレアーゼに添加される、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記多糖溶液が10%のスクロースを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
尿素バイオセンサを製造するための方法であって、
溶液中のウレアーゼをアンモニウム選択高分子膜の外表面にキャストして、酵素層を形成することと、
高分子拡散膜を前記酵素層の表面に適用して、複合膜の一部を形成することと、
(i)前記高分子拡散膜が前記酵素層の前記表面に適用された後に、多糖溶液を当該尿素バイオセンサの少なくとも一部に適用すること、又は(ii)前記高分子拡散膜が前記酵素層の前記表面に適用された後、多糖溶液を当該尿素バイオセンサの少なくとも一部に適用し、かつ、前記溶液中のウレアーゼが前記アンモニウム選択高分子膜の前記外表面上にキャストされる前に、多糖溶液を前記溶液中のウレアーゼに加えることと、
当該尿素バイオセンサを乾燥させることと、
を含み、
前記多糖溶液が、前記高分子拡散膜と前記アンモニウム選択高分子膜の間の前記ウレアーゼの安定な活性を維持
前記高分子拡散膜が、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー、ペルフルオロスルホネートアイオノマー NAFION(登録商標)、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、又は酢酸セルロース、又はそれらの少なくともいずれかの混合物、又はそれらの少なくともいずれかのコポリマーを備える高分子化合物を備える、
方法。
【請求項25】
前記ウレアーゼが、グルタルアルデヒド、1,4-ジイソシアナトブタン、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、又は1,2,9,10-ジエポキシデカンの一又は複数を備える化学物質によって架橋される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
インビトロ診断を実施するための臨床分析計であって、請求項1に記載の尿素バイオセ
ンサを備える、臨床分析計。
【請求項27】
尿素バイオセンサであって、
アンモニウム選択高分子膜と、
前記アンモニウム選択高分子膜の外表面上のウレアーゼを備える酵素層と、
前記酵素層の表面に適用され、複合膜の一部を形成する高分子拡散膜と、
(i)前記高分子拡散膜が前記酵素層の前記表面に適用された後に当該尿素バイオセンサの少なくとも一部に適用される多糖、又は(ii)前記高分子拡散膜が前記酵素層の前記表面に適用された後に当該尿素バイオセンサの少なくとも一部に適用され、かつ、前記ウレアーゼが前記アンモニウム選択高分子膜上に前記酵素層を形成する前に前記ウレアーゼに加えられる多糖と、
を備え、
前記多糖が、前記高分子拡散膜と前記アンモニウム選択高分子膜の間の前記ウレアーゼの安定な活性を維持し、
当該尿素バイオセンサが、周囲温度での5か月の乾燥貯蔵及び21日の使用後に、安定した尿素測定性能を維持するよう構成されており
前記高分子拡散膜が、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー、ペルフルオロスルホネートアイオノマー NAFION(登録商標)、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、又は酢酸セルロース、又はそれらの少なくともいずれかの混合物、又はそれらの少なくともいずれかのコポリマーを備える高分子化合物を備える、
尿素バイオセンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年4月5日に出願され、全ての意図及び目的のために参照によってその全体が本明細書中に援用される米国仮特許出願第62/830,191号に対する優先権及びその利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、室温での酵素安定性並びに長期の貯蔵寿命及び使用寿命を有する尿素バイオセンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0001] 酵素バイオセンサは、血液などの患者体液サンプル中のクレアチニン、クレアチン、グルコース、尿素及び乳酸などの多数の分析物を検出するために使用される。したがって、酵素バイオセンサは、患者の病気のポイントオブケア診断を支援する上で特に重要である。
【0004】
[0002] しかしながら、特にポイントオブケア用途における酵素バイオセンサの欠点の1つは、その連続使用を通して、そして通常15日未満である周囲温度でのその貯蔵寿命にわたって、酵素活性が損失することである。したがって、短い貯蔵寿命は、尿素バイオセンサなどの酵素バイオセンサの実際の適用を制限する重要な因子である。
【0005】
[0003] 特に問題のある貯蔵寿命の酵素バイオセンサは、尿素バイオセンサである。尿素の測定は患者の腎機能障害を決定するのに役立つので、患者のケアにとって重要である。
【0006】
[0004] 尿素センサは、酵素修飾されたアンモニウムイオン選択電極を含むバイオセンサである。血液、血清又は血漿などの患者サンプル中の尿素の測定において必要なステップである尿素の加水分解は、以下のように、尿素センサ中のウレアーゼによって触媒される:
【化1】
【0007】
[0005] ウレアーゼにより触媒される尿素の加水分解の後に生じる生成物は、アンモニウムイオンである。
【0008】
[0006] 酵素ウレアーゼは、架橋試薬、例えば、グルタルアルデヒドによって、又は物理吸収、例えば、ヒドロゲルによる捕捉によってアンモニウムイオン選択電極の表面に固定化されて、電極上に酵素層を形成する。次に、生成物のアンモニウム(NH )は、通常基材上に配置されるセンサアレイ又はカードのセンサのタイプの1つであるアンモニウムセンサによって電位差滴定で検出される。センサ電位はカードの参照電極(Ag/Ag)に対して測定され、ネルンストの式に基づいて尿素濃度の対数に比例する。
【0009】
[0007] 電極上に固定化された酵素層を形成した後、電極の酵素層の上部に浸透性の外側高分子膜が適用されて、患者体液サンプルと接触したときに酵素、この場合はウレアーゼを変性から保護し、患者体液サンプルから酵素層へ入る基質尿素の流れを制限する。
【0010】
[0008] 上記の尿素センサの商業化、大量生産及び実際の適用のために、生体サンプル中の尿素を正確に測定するために主要な課題を克服しなければならない。課題は、15~25℃、好ましくは18~24℃、より好ましくは20~24℃の範囲及び24℃の周囲温度において少なくとも5ヶ月から1年以上の貯蔵にわたる酵素ウレアーゼの長期安定性(貯蔵寿命)を達成することである。
【0011】
[0009] 設計原理から、尿素を測定するための尿素センサの感度(スロープ)は、バイオセンサの電極上に固定化された酵素混合物の残りの活性に直接関連する。酵素などの生物活性成分は非常に繊細であり、周囲温度において長期間安定でないことはよく知られている。タンパク質の変性に起因する、尿素バイオセンサの感度の高速減衰(スロープ損失)及び基質尿素の測定に対する高濃度での精度の低下(直線性の損失)は、その不安定性及び非常に限られた使用寿命又は貯蔵寿命の基礎である。
【0012】
[0010] 全血分析計、例えば、GEM Premier(登録商標)分析計(Instrumentation Laboratory Company, Bedford, MA)は、多用途の1回消耗型カートリッジ、例えば、Instrumentation Laboratory Company(Bedford, MA)に譲渡され、全ての意図及び目的のために参照によってその全体が本明細書中に援用される米国特許第6,960,466号及び米国特許出願公開第2004/0256227A1号に記載されるカートリッジを利用する。カートリッジは、血液分析物の血液測定のために、少なくとも1つの尿素センサを含む全ての重要な構成要素(センサアレイ、参照溶液、洗浄溶液及び較正試薬)を含有し、最低5ヶ月間の周囲温度での貯蔵を必要とする。
【0013】
[0011] 同様の設計を有する最も市販されている尿素センサは、バイオセンサの重要な部品を冷却してその貯蔵寿命を延ばすことによって、尿素センサの短い使用寿命及び貯蔵寿命に対処する。しかしながら、このアプローチは、病院のポイントオブケア場所における現場のオペレータによる機器の操作をさらに複雑にする。例えば、GEM(登録商標)PAKカートリッジ(Instrumentation Laboratory Company, Bedford, MA)の場合、バイオセンサは、カートリッジの不可欠で重要な特徴である。尿素酵素センサはカートリッジの不可欠な部品であり、パックサイズ及び試薬安定性、例えば参照溶液の試薬安定性、並びに較正溶液の気体pO2及びpCO2の安定化のために、カートリッジ全体を冷却して貯蔵することは非実用的である。
【0014】
[0012] 尿素センサにおけるウレアーゼ活性の保存が試みられた他の方法には、化学架橋による固定化から物理吸着(ポリウレタンによるウレアーゼの捕捉)へ、酵素の固定化方法を変えることが含まれる。捕捉方法は、通常、架橋による化学結合ほど強力なウレアーゼの固定化を提供せず、且つ酵素をポリウレタン中に混合することは、尿素センサの応答時間にも影響を与え得る。
【0015】
[0013] 溶液形態、又は遊離形態での乾燥段階のいずれかにおける酵素などの生物活性種の活性は、単糖又は多糖により保存され得ることが文献に報告されている。
【0016】
[0014] 糖は、凍結乾燥(フリーズドライ)中に遊離形態の酵素を保存するために安定剤として使用され得る。しかしながら、1つの酵素を安定化するのに最適である特定の糖は、糖の構造、酵素の親水性/疎水性、並びに水及び安定剤とのその相互作用に基づく。
【0017】
[0015] 水の存在下で、糖中に含有されるポリヒドロキシル基は水と複合体を形成することができ、この複合体は、架橋段階においても酵素構造に浸透することができると仮定される。複合体は、変性をもたらす酵素構造のアンフォールディングを低減することができ、したがって酵素の活性を維持すると考えられる。
【0018】
[0016] しかしながら、尿素センサ中で酵素ウレアーゼを2つのポリマー層間に挟持することは、センサの作製の間、又は周囲温度での保管の間に、酵素と、2つのポリマー層中の成分(イオノフォア、可塑剤、親油性の塩、有機溶媒など)との間のより複雑な相互作用を示し、酵素の不安定性を引き起こす。これらの相互作用は、予想よりも低い性能をもたらす。本明細書に記載される本発明の目的は、尿素センサの貯蔵中のウレアーゼの安定性を高めるために、酵素と他の化学成分との相互作用に起因する尿素センサの不安定性に対処することである。本明細書に記載される本発明は、室温で最低5ヶ月間、安定した尿素センサの貯蔵を向上させると共に、安定した尿素センサの貯蔵に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
発明の概要
[0017] 本発明は、室温において安定した尿素バイオセンサ、製造方法、及び安定した尿素バイオセンサを収容するカートリッジに関する。センサ及びバイオセンサという用語は、全体を通して互換的に使用される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
[0018] 1つの態様では、本発明は尿素バイオセンサの製造方法に関し、バイオセンサは、周囲温度で少なくとも5ヶ月の貯蔵寿命及びさらに3週間の使用寿命にわたって安定性を有する。本方法は、電極を提供することであって、参照によって本明細書中に援用される米国特許出願公開第2004/0256227A1号(欧州特許第1753872B1号)に記載されるように、内部参照電極としてAgCl及び内部層で被覆された銀電極表面上にポリ塩化ビニル(PVC)ベースのアンモニウムイオン選択膜が作製されることと、溶液中のウレアーゼ酵素、すなわち酵素混合物をPVC膜の外表面にキャストして、酵素層を形成することと、拡散バリアを酵素層の表面上に適用することと、多糖溶液を尿素センサに適用することと、センサを乾燥させて、安定した尿素バイオセンサを形成することとを含む。
【0021】
[0019] バイオセンサの内部参照電極は、例えば、銀、白金又は金からなる金属群から選択され、AgCl及び電解質内部層で被覆される。内部電解質層は、MES緩衝液、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、及びヒドロキシエチルセルロース(HEC)から構成される内部溶液をAg/AgCl電極表面にキャストすることによって形成される。
【0022】
[0020] 尿素バイオセンサは、血液、血漿又は血清などの体液サンプル中の尿素を測定することができる。
【0023】
[0021] 種々の実施形態において多糖溶液を尿素バイオセンサに適用するためのステップは、二糖のスクロース、トレハロース、及びラクチトール、三糖のラフィノース、並びに他の多糖などであるが、これらに限定されない1つ又は複数の多糖を適用することを含む。多糖は、センサが酵素混合物によりキャストされる前に酵素混合物に添加され得るか、又は、外側拡散膜をセンサに適用した後に溶液中で適用され得るか、又は上記ステップの組合せとして適用され得る。構築後、尿素バイオセンサは、多糖溶液中に浸漬され、乾燥され、そして多糖溶液中に再浸漬された後、毎回乾燥され得る。任意選択的に、尿素バイオセンサの多糖溶液中への浸漬は複数回繰り返され、毎回その後乾燥され得る。溶液中の多糖の濃度は0%超から約25%の範囲であり、多糖処理の期間は30分以上である。
【0024】
[0022] 拡散バリアの適用は、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー(ペルフルオロスルホネートアイオノマー、NAFION(登録商標))、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、並びにこれらの混合物及びコポリマーからなる群から選択される高分子化合物を電極に適用して、体液サンプルフローチャンバ内に導入される、尿素を測定すべき体液サンプルと接触する外側拡散膜を形成することを含む。酵素層は、外側拡散膜と、アンモニウム選択PVC膜との間に位置する。
【0025】
[0023] 本発明の方法に従う安定した尿素バイオセンサは、周囲温度で少なくとも5ヶ月間の貯蔵及び21日間の使用後に、安定した尿素測定性能を維持する。
【0026】
[0024] 別の態様では、本発明は、アンモニウム選択電極、酵素層としてアンモニウム選択ポリマー膜上に固定化された酵素ウレアーゼ、酵素層の表面上の拡散バリア、及び多糖を含む尿素バイオセンサに関する。尿素バイオセンサの電極、アンモニウム選択ポリマー膜、酵素、架橋剤、多糖、拡散バリア、及び安定性は、上記に記載される。
【0027】
[0025] さらに別の態様では、本発明は、センサアレイ内の少なくとも1つの尿素センサを収容するカートリッジに関し、少なくとも1つの尿素センサは、アンモニウム選択膜と、ウレアーゼを含む酵素層と、体液サンプルフローチャンバに隣接する、酵素層の表面上の拡散バリアと、多糖とを含む。電極、アンモニウム選択ポリマー膜、酵素、架橋剤、多糖、拡散バリアを含む尿素センサ、及び尿素バイオセンサの安定性は、上記に記載される。本発明に従う1つの実施形態では、本発明に従う酵素バイオセンサが包含されるセンサアレイを有するカードに加えて、カートリッジは、センサアレイ内の上記の少なくとも1つの尿素センサを収容し、さらに、参照溶液、流体チャネル、較正試薬、洗浄溶液、及び臨床分析計と作用的に相互作用するための電子部品、並びに他の重要な構成要素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図面の簡単な説明
図1】[0026]本発明に従う尿素バイオセンサの一実施形態の断面の概略図である。
図2A】[0027]22個の尿素センサにおいてクロース処理が尿素測定の直線性に与える効果のグラフ図である;スクロース処理後に3時間の乾燥時間を用いて、カートリッジエイジに対するサンプル中の高尿素濃度(70mg/dL)の測定値。
図2B】[0028]図2Aの22個の尿素センサにおいて3つのスクロース処理因子(センサの作製からセンサの二糖処理までの時間遅延(日);二糖処理の浸漬時間の長さ(時間);二糖処理センサの乾燥時間の長さ(時間))のうちの2つの組合せについて、スクロース処理が尿素測定値(mg/dl)に及ぼす影響のグラフ図である。
図3A】[0029]2週間の短いセンサ貯蔵寿命の後、3週間の使用寿命までの12個の尿素バイオセンサのカートリッジエイジに対する測定高尿素濃度(95mg/dL)のグラフ図である;3週間の使用寿命にわたる高尿素サンプル(95mg/dL)における毎日の尿素濃度測定。
図3B】[0030]周囲温度で5ヶ月間にわたって貯蔵された12個の尿素バイオセンサの、3週間の使用寿命までのカートリッジエイジに対する測定高尿素濃度(95mg/dL)のグラフ図である。3週間の使用寿命にわたる高尿素サンプル(95mg/dL)における毎日の尿素濃度測定。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
[0031] 以下に記載される本発明は、インビトロ診断、特にポイントオブケア用途のために臨床分析計において有用な尿素バイオセンサの酵素安定性を増強し、貯蔵寿命及び使用寿命を延長するためのデバイス及び関連方法に関する。
【0030】
[0032] 本発明によると、多糖、例えば、スクロースなどの二糖は、尿素バイオセンサシステムの安定性及び活性を保存し、貯蔵寿命及び使用寿命を延長するために最適な組成物である。トレハロース(α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシド)、ラフィノース(O-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシルβ-D-フルクトフラノシド)、及びラクチトール(4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-グルシトール)(全ての多糖はSigmaから入手)などの他の多糖も尿素バイオセンサ中のウレアーゼの安定性及び活性を改善し、その貯蔵寿命及び使用寿命を延長する。
【0031】
[0033] 簡単にするために、以下に提示される研究のために多糖の例として10%スクロースを使用した。周囲温度でのウレアーゼ活性の維持においてスクロース安定化により著しい改善が観察された。スクロース処理による酵素安定化の後に尿素センサを室温で貯蔵する場合、少なくとも5ヶ月の安定した貯蔵寿命が達成された。
【0032】
[0034] 以下に記載されるように、本発明者らにより、二糖、例えばスクロースは、尿素バイオセンサの活性の保存及び安定性のために最適な組成物の1つであることが決定された。トレハロース、ラフィノース、及びラクチトールなどの他の多糖も尿素センサに対して同様の効果を有し、安定性を改善する。
【0033】
[0035] 図1に示される典型的な尿素バイオセンサ150は、電極カード6に埋め込まれた金属素子155、及び金属素子155と、電極カード6内のチャネル20を通って流れる分析サンプルとの間に位置する複合膜160を含む。複合膜160は、患者サンプルチャネル20に隣接する外側拡散膜165、酵素層170、アンモニウム選択高分子膜175、及び金属素子155に隣接する内部溶液層180を含む。
【0034】
[0036] 外側拡散層165は分析物の酵素層170への拡散を制御し、尿素バイオセンサ150の他の構成要素をチャネル20内の分析サンプルとの直接接触から保護する。酵素層170は、少なくとも1つの酵素、又はいくつかの酵素の混合物、タンパク質及び安定剤を含むことができ、患者サンプル中の特定の分析物、すなわち尿素と反応する。分析物は、外側拡散膜165を通って酵素層中に拡散すると、酵素層170中の酵素と反応して、化学副産物、尿素の場合にはアンモニウムイオンを生じることができる。分析サンプル中の尿素の濃度に比例する化学副産物の濃度に依存して、複合膜160を横切って電位が発生する。PVCは、アンモニウム選択高分子膜175の成分であり得る。
【0035】
[0037] 本発明の一実施形態では、本発明に従う安定した二糖処理尿素センサを製造するためのステップは、以下のことを含む:
【0036】
[0038] (i)内部参照電極を形成するためにAgCl及び内部溶液層180で被覆された銀表面155の上にポリ塩化ビニル(PVC)ベースのアンモニウムイオン選択センサを作製する。PVCアンモニウムイオン選択膜175の組成物は、全ての意図及び目的のために参照によって本明細書中に援用される米国特許出願第2004/0256227号に記載されている;その後、
【0037】
[0039] (ii)例えば、架橋剤を適用することによって、PVC膜175の外表面上に酵素ウレアーゼを固定化して、酵素層170を形成する。例えば、架橋剤は、適用される場合には、グルタルアルデヒド、ジイソシアナトブタン、ジイソシアノト(diisocyanoto)、1、2、7、8-ジエポキシオクタン、1、2、9、10-ジエポキシデカン、及びこれらの組合せからなる群から選択される。代替的に、PVC膜175の外表面での1つ又は複数の酵素の固定化は、物理吸収、例えばヒドロゲルによる捕捉によって行うことができる;その後、
【0038】
[0040] (iii)酵素の保護及び拡散制御のために、酵素層170に親水性ポリウレタン層、或いは以下の、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー(ペルフルオロスルホネートアイオノマー、NAFION(登録商標))、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、又はこれらの混合物及びコポリマーなどのポリマーの1つ又は複数を適用して、外側拡散膜165を形成する;その後、
【0039】
[0041] (iv)少なくとも30分から24時間、少なくとも30分から240分、少なくとも30分から120分、少なくとも30分から60分、好ましくは少なくとも30分間にわたって、0%超から2%、2%から25%、2%から20%、5%から15%、10%から15%の範囲、好ましくは10%の濃度(w/v)の溶液のスクロース溶液、或いは代替的にトレハロース、ラフィノース、又はラクチトールの溶液などの多糖溶液に尿素センサ150を曝露する;その後、
【0040】
[0042] (v)多糖処理尿素センサ150を空気乾燥させる;そして
【0041】
[0043] (vi)周囲条件下において尿素センサ150を使用するまで、例えば5ヶ月以上貯蔵する。
【0042】
[0044] 安定した尿素バイオセンサ150を製造する代替の実施形態では、ステップは、以下のことを含む:
【0043】
[0045] (i)内部参照電極を形成するためにAgCl及び内部溶液層180で被覆された銀表面155の上にポリ塩化ビニル(PVC)ベースのアンモニウムイオン選択センサを作製する。PVCアンモニウムイオン選択膜175の組成物は、上記に記載される通りである;
【0044】
[0046] (ii)0%超から2%、2%から25%、2%から20%、5%から15%、10%から15%の範囲、好ましくは10%の濃度(w/v)の溶液のスクロース溶液、或いは代替的にトレハロース、ラフィノース、又はラクチトールの溶液などの多糖溶液中のウレアーゼ酵素を調製する;
【0045】
[0047] (iii)ステップ(ii)に記載されるウレアーゼ酵素-多糖溶液を適用する、例えば、架橋剤(例えば、架橋剤は、適用される場合には、グルタルアルデヒド、ジイソシアナトブタン、ジイソシアノト(diisocyanoto)、1、2、7、8-ジエポキシオクタン、1、2、9、10-ジエポキシデカン、及びこれらの組合せからなる群から選択される)を適用することによってPVC膜175の外表面上に多糖溶液中の酵素ウレアーゼを固定化して、酵素層170を形成する;その後、
【0046】
[0048] (iv)酵素の保護及び拡散制御のために、酵素層170に親水性ポリウレタン層165、或いは以下の、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー(ペルフルオロスルホネートアイオノマー、NAFION(登録商標))、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、又はこれらの混合物及びコポリマーなどのポリマーの1つ又は複数を適用する;その後、
【0047】
[0049] (v)周囲条件下において尿素センサ150を使用するまで、例えば5ヶ月以上貯蔵する。
【0048】
[0050] 安定した尿素バイオセンサ150を製造するさらに別の実施形態では、ステップは、以下のことを含む:
【0049】
[0051] (i)内部参照電極を形成するためにAgCl及び内部溶液層180で被覆された銀表面155の上にポリ塩化ビニル(PVC)ベースのアンモニウムイオン選択センサを作製する。PVCアンモニウムイオン選択膜175の組成物は、上記に記載される通りである;
【0050】
[0052] (ii)0%超、2%から25%、2%から20%、5%から15%、10%から15%の範囲、好ましくは10%の濃度(w/v)の溶液のスクロース水溶液、或いは代替的にトレハロース、ラフィノース、又はラクチトールの溶液などの多糖溶液中のウレアーゼ酵素溶液を調製する;
【0051】
[0053] (iii)ステップ(ii)に記載されるウレアーゼ酵素-多糖溶液を適用する、例えば、架橋剤(例えば、架橋剤は、適用される場合には、グルタルアルデヒド、ジイソシアナトブタン、ジイソシアノト(diisocyanoto)、1、2、7、8-ジエポキシオクタン、1、2、9、10-ジエポキシデカン、及びこれらの組合せからなる群から選択される)を適用することによってPVC膜175の外表面上に多糖溶液中の酵素ウレアーゼを固定化して、酵素層170を形成する;その後、
【0052】
[0054] (iv)酵素の保護及び拡散制御のために、酵素層170に親水性ポリウレタン層165、或いは以下の、ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー(ペルフルオロスルホネートアイオノマー、NAFION(登録商標))、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、又はこれらの混合物及びコポリマーなどのポリマーの1つ又は複数を適用する;
【0053】
[0055] (v)少なくとも30分から24時間、少なくとも30分から240分、少なくとも30分から120分、少なくとも30分から60分、好ましくは少なくとも30分間にわたって、0%超から2%、2%から25%、2%から20%、5%から15%、10%から15%の範囲、好ましくは10%の濃度(w/v)の溶液のスクロース溶液、或いは代替的にトレハロース、ラフィノース、又はラクチトールの溶液などの多糖溶液に尿素センサ150を曝露する;その後、
【0054】
[0056] 多糖処理尿素センサ150を空気乾燥させる;任意選択的に、センサを多糖溶液に曝露するステップを1回、2回、3~4回、5~8回、そして9~10回繰り返す;その後、
【0055】
[0057] 周囲条件下において尿素センサ150を使用するまで、例えば5ヶ月以上貯蔵する。
【実施例
【0056】
発明の例証
実施例1
[0058] 以下に記載される実施例1は、スクロース安定化を有する尿素センサを製造するための方法の一実施形態を提供する。
【0057】
[0059] 1.本発明の1つの方法によると、アンモニウム選択ポリマー膜のための溶液はTHF中で調製され、例えば、25~35重量%のPVC、60~70重量%のDOS、1~5重量%のノナクチン、及び0~1重量%のKTpClPBを含有する。
【0058】
[0060] ノナクチンは、アンモニウムに対する特異的な選択性を有するイオノフォアである。他の試薬、例えば、モナクチン、ジナクチン、トリナクチン、テトラナクチン、ナラシン、ベンゾクラウンエーテル、環状デプシペプチド、及び上記のものの混合物もこの目的のために使用することができる。
【0059】
[0061] DOS(セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル))は可塑剤である。o-ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)は、一般的に使用される別の可塑剤である。
【0060】
[0062] KTpClPB(テトラキス[4-クロロフェニル]ホウ酸カリウム)は、親油性の塩である。テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸カリウム(KTTFPB)もこの目的のために使用することができる。
【0061】
[0063] PVC以外に、ポリマー膜は、例えば、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、シリコーンゴム、及び上記のものの混合物を含むこともできる。
【0062】
[0064] THF(テトラヒドロフラン)は溶媒である。シクロヘキサノンもこの目的のために使用することができる。
【0063】
[0065] 2.アンモニウムセンサは平面状であり、例えばPVCであるがこれに限定されない、上記に記載されるように調製されたアンモニウム選択ポリマー膜溶液を、固体基材に埋め込まれた内部参照電極を形成するためにAg/AgCl金属電極及び内部電解質層上にキャストすることによって形成される。内部電解質層は、内部溶液をAg/AgCl電極表面にキャストすることによって形成される。内部溶液は、例えば、水中に65%のMES緩衝液、1%の塩化ナトリウム、1%の塩化アンモニウム、及び33%のHEC(重量百分率)を含有する。
【0064】
[0066] 3.酵素層は、酵素溶液をアンモニウム選択PVC膜の外表面にキャストすることによって形成される。酵素溶液は、酵素ウレアーゼ、酵素安定剤グルタチオン、不活性タンパク質ウシ血清アルブミン、架橋剤グルタルアルデヒド及び溶媒を含む。グルタチオンは、酵素層中のウレアーゼを安定化するために、1つ又は複数の不活性タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミンと一緒に使用される。また架橋は、酵素層を下側のイオン選択高分子層に固定する。酵素層の作製の間、一般に、架橋剤を添加する前に酵素を含有する溶液に酵素安定剤が添加されて、安定剤が酵素と一緒に架橋されることを保証する。pH7.2の0.1Mのリン酸緩衝液中に50mg/mLのウレアーゼ、20mg/mLのグルタチオン、10mg/mLのウシ血清アルブミン、及び0.12%のグルタルアルデヒドを含有する典型的な酵素溶液を調製し、この溶液をアンモニウムイオン選択PVC膜の上部に適用した。
【0065】
[0067] 4.ポリウレタン(PU)は、医療用デバイスの多くの成功したインビボ及びインビトロ用途において、優れた生体適合性を有するポリマーの1つである。この用途に最適化されるように選択される医療グレードの特定の親水性ポリウレタンファミリーは、Lubrizol(Wickliffe, Ohio)からのTecophlic(商標)及びTecoflex(商標)である。これらの市販の高分子樹脂は、ジメチルアセトアミド(DMA)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒又は溶媒混合物中に溶解させることができる脂肪族ポリエーテル系ポリウレタンである。これらのポリウレタンファミリーの中で、異なる用途のために種々の硬度及び水分取込みレベルの組合せにより様々なグレードの材料が可能である。種々の実施形態において患者サンプルと接触する尿素バイオセンサの外側拡散膜は、同一若しくは異なるポリマー及び/又は同一若しくは異なるコポリマーの1つ又は複数の別個の層を含む。THF中に0.12g/mlのポリウレタン(Lubrizol, Wickliffe, Ohio)を含有する典型的な外側拡散膜溶液を調製した。外側拡散膜溶液を酵素層上に適用して、外側拡散膜を形成した。ポリウレタン以外に、以下のポリマー、NAFION(登録商標)(ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマー)、ポリ-(2-ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、及び酢酸セルロースの1つ又は複数も外側拡散膜の候補であり得る。
【0066】
[0068] 5.本発明の一実施形態では、内部層-PVC層-酵素層-ポリウレタン層の複合膜を有する尿素センサは次に、少なくとも30分から24時間、少なくとも30分から240分、少なくとも30分から120分、少なくとも30分から60分、好ましくは少なくとも30分にわたって、0%超から2%、2%から25%、2%から20%、5%から15%、10%から15%の範囲、好ましくは10%の(w/v)濃度の溶液の二糖溶液、例えばスクロース溶液中に浸漬される。スクロース溶液は、生物学的pH7.4において緩衝化される。
【0067】
[0069] 6.センサは室温で0.5時間から3時間乾燥される。任意選択的に、スクロース処理は複数回繰り返され、毎回その後空気乾燥される。次に、センサは使用するまで周囲温度で貯蔵される。
【0068】
実施例2
[0070] 実施例2は、3つの主要因子(それぞれ2つの条件)-(i)センサの作製と、作製したセンサのスクロース溶液への暴露との間の遅延時間(2日又は7日)、(ii)センサがスクロース溶液に曝露される間の浸漬時間(2時間又は16時間)、及びスクロース曝露の完了後の乾燥時間(0.5時間又は3時間)を調査のために用いて行われる多因子実験設計を使用して、周囲温度でスクロース処理が上記の尿素センサの安定化に与える効果を評価するための研究である。尿素センサのサブグループをカートリッジに構築し、使用寿命安定性のためにGEM(登録商標)Premier臨床分析計において尿素濃度を測定した。高濃度の尿素(70mg/dL)を有する水性サンプルをカートリッジ内の尿素センサにおいて毎日試験して、尿素センサ測定の直線性を評価した。
【0069】
[0071] 図2Aを参照すると、乾燥時間を3時間に固定したときに種々の適用実験条件において試験した尿素センサのそれぞれの使用寿命安定性が提供される。図2Bには、実験条件が尿素測定に与える効果が示される。
【0070】
[0072] 図2Aに示される結果は、容易に要約される。より短い遅延時間(2日)及び10%スクロース溶液中でのより長い浸漬時間(16時間)が適用された条件は、センサの使用寿命にわたって最も安定した性能と、最も一貫したセンサ間性能とを提供した。より長い遅延時間(7日)を10%スクロース溶液中でのより短い浸漬時間(2時間)と組み合わせた条件を用いると、最も悪い安定化性能が生じた。遅延時間7日/浸漬時間2時間の最も悪い性能と比べて他の2つの条件はより優れた性能を提供したが、センサ間の非一貫性(7日、16時間)、又は使用寿命にわたる性能低下(2日、2時間)も示した。図2Bは、3つのスクロース処理条件因子の全てについて、尿素測定値、並びに好ましい方向:より短い遅延時間、より長い浸漬時間及びより長い乾燥時間を示す。
【0071】
[0073] これらの結果により、二糖処理された尿素バイオセンサ中のウレアーゼ酵素活性は、ウレアーゼがセンサに固定化された場合でも、連続的に減衰を受けることが確認された。作製されたセンサがより迅速にスクロース処理に曝露されるほど、ウレアーゼ活性はより良好に保存される。これらの研究は、長期の酵素安定性のために、例えば乾燥によって、全ての水分を除去することが重要であることも示した。
【0072】
実施例3
[0074] 実施例3は、3週間の使用寿命安定性及び5ヶ月の貯蔵寿命安定性の研究において、本発明に従って製造された複数の製造バッチから得られる尿素センサの周囲温度における安定性データを提供する。
【0073】
[0075] これらのカートリッジにおいて3週間の使用寿命にわたって、高濃度の尿素(95mg/dL)を有する水性サンプル中の尿素を毎日測定して、センサの尿素測定の直線性を経時的に評価した。
【0074】
[0076] 図3Aは、3つのバッチのスクロース処理センサから選択され、周囲温度で2週間の短い貯蔵寿命での貯蔵の12個の尿素センサにおいて、測定された尿素をグラフに示す。短いセンサ貯蔵寿命において、3週間の使用寿命にわたる、高尿素濃度(95mg/dL)サンプルの毎日の測定は、約95mg/dlの一貫した測定尿素濃度を有する安定した使用寿命性能を示した。
【0075】
[0077] 図3Bは、3つの異なるバッチのスクロース処理尿素センサからの別の12個の尿素センサからの結果をグラフに示す。5ヶ月の周囲貯蔵での貯蔵寿命において、3週間の使用寿命にわたる毎日の高尿素濃度(95mg/dL)サンプルの測定は、約95mg/dlの一貫した測定尿素濃度を有する、同様の安定した使用寿命性能を示した。
【0076】
[0078] これらの研究ではスクロースを多糖の例として使用して、多糖処理を適用することにより、周囲温度貯蔵で5ヶ月の貯蔵寿命において、尿素センサの活性及び安定性が維持された。
【0077】
[0079] 上記の本発明は、複数の尿素センサプラットホームにおいて開発される尿素バイオセンサに適用できる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B