(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】ダイカスト金型のエアブロー機構、ダイカスト法
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20220905BHJP
B22C 9/10 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
B22D17/22 K
B22C9/10 R
B22D17/22 F
(21)【出願番号】P 2021024046
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 和宏
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-112245(JP,A)
【文献】特開2006-26698(JP,A)
【文献】実公平3-53787(JP,Y2)
【文献】特開2017-164777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00-17/32
B22C 9/00-9/30
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイカスト金型に形成されるトンネル穴と、
前記トンネル穴に設置されるトンネルブッシュと、
前記トンネルブッシュに形成されたピン摺動穴の内部に摺動可能に保持され、ピン先端部を前記ダイカスト金型に形成されたキャビティ内に突出移動および退避移動させるスライドピンと、
前記ダイカスト金型に対して前記トンネル穴に接続するように形成されるエア穴と、
を備え、
前記トンネルブッシュが前記トンネル穴と前記ピン摺動穴とを導通させるブッシュ穴を備えることで、前記エア穴から供給されるエアが前記トンネル穴、前記ブッシュ穴を経由して前記ピン摺動穴の内部に供給され、前記スライドピンの表面に付着した異物や前記ピン摺動穴の内部に侵入した異物を除去するためのエアブローとして用いられるダイカスト金型のエアブロー機構であって、
前記エア穴と前記ブッシュ穴の形成位置が対向配置されず、ずれた位置であることを特徴とするダイカスト金型のエアブロー機構。
【請求項2】
請求項1に記載のダイカスト金型のエアブロー機構において、
前記ブッシュ穴が複数形成されていることを特徴とするダイカスト金型のエアブロー機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイカスト金型のエアブロー機構において、
前記トンネルブッシュは、前記ブッシュ穴と連通するエア誘導溝を備えることを特徴とするダイカスト金型のエアブロー機構。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のダイカスト金型のエアブロー機構において、
前記ブッシュ穴は、前記スライドピンが前記ピン摺動穴の内部に退避移動したときの前記ピン先端部の近傍位置に形成されていることを特徴とするダイカスト金型のエアブロー機構。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のダイカスト金型のエアブロー機構を備えるダイカスト装置によりダイカストを行うことを特徴とするダイカスト法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト金型のエアブロー機構と、このエアブロー機構を備えるダイカスト装置によりダイカストを行うダイカスト法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイカスト法の分野において、ダイカスト金型に形成されたキャビティに対して突出移動および退避移動させることが可能なスライドピン(例えば、トンネル中子ピン等)を備えたダイカスト装置が公知である。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、スライドピンが退避移動した後退限部において、スライドピンの先端にエア等を吹き付けるためのエアブロー機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上掲した特許文献1に代表されるように、従来のダイカスト装置には、スライドピンに付着した離型剤や冷却水等の異物を除去するためのエアブロー機構が存在していた。しかしながら、従来技術には、異物の確実な除去を行うという点において、改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、従来技術に比べてスライドピンに付着した離型剤や冷却水等の異物を確実に除去することができるダイカスト金型のエアブロー機構を実現することを目的として成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明に係るダイカスト金型のエアブロー機構(30)は、ダイカスト金型(2)に形成されるトンネル穴(31)と、前記トンネル穴(31)に設置されるトンネルブッシュ(32)と、前記トンネルブッシュ(32)に形成されたピン摺動穴(32a)の内部に摺動可能に保持され、ピン先端部を前記ダイカスト金型(2)に形成されたキャビティ(5)内に突出移動および退避移動させるスライドピン(33)と、前記ダイカスト金型(2)に対して前記トンネル穴(31)に接続するように形成されるエア穴(34)と、を備え、前記トンネルブッシュ(32)が前記トンネル穴(31)と前記ピン摺動穴(32a)とを導通させるブッシュ穴(32b)を備えることで、前記エア穴(34)から供給されるエアが前記トンネル穴(31)、前記ブッシュ穴(32b)を経由して前記ピン摺動穴(32a)の内部に供給され、前記スライドピン(33)の表面に付着した異物や前記ピン摺動穴(32a)の内部に侵入した異物を除去するためのエアブローとして用いられるダイカスト金型のエアブロー機構(30)であって、前記エア穴(34)と前記ブッシュ穴(32b)の形成位置が対向配置されず、ずれた位置であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係るダイカスト金型のエアブロー機構(30)では、前記ブッシュ穴(32b)が複数形成されていることが好適である。
【0010】
また、本発明に係るダイカスト金型のエアブロー機構(30)において、前記トンネルブッシュ(32)は、前記ブッシュ穴(32b)と連通するエア誘導溝(32c)を備えることができる。
【0011】
さらに、本発明に係るダイカスト金型のエアブロー機構(30)において、前記ブッシュ穴(32b)は、前記スライドピン(33)が前記ピン摺動穴(32a)の内部に退避移動したときの前記ピン先端部の近傍位置に形成することができる。
【0012】
本発明に係るダイカスト法は、上述したダイカスト金型のエアブロー機構(30)を備えるダイカスト装置(1)によりダイカストを行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来技術に比べてスライドピンに付着した離型剤や冷却水等の異物を確実に除去することができるダイカスト金型のエアブロー機構を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るダイカスト装置の断面図である。
【
図2】本実施形態に係るダイカスト装置に適用されるダイカスト金型のエアブロー機構を示す図である。
【
図3】
図2で示したダイカスト金型のエアブロー機構において、スライドピンがキャビティ内から退避移動して後退限に位置する状態を示した図である。
【
図4】本実施形態に係るダイカスト金型のエアブロー機構を構成する一部品であるトンネルブッシュを示す透視図である。
【
図5】本発明のトンネルブッシュに適用可能な多様な変形形態の一例を示す図である。
【
図6】本発明のトンネルブッシュに適用可能な多様な変形形態の一例を示す図である。
【
図7】本発明のトンネルブッシュに適用可能な多様な変形形態の一例を示す図である。
【
図8】本発明のトンネルブッシュに適用可能な多様な変形形態の一例を示す図である。
【
図9】本発明のトンネルブッシュに適用可能な多様な変形形態の一例を示す図である。
【
図10】本発明のトンネルブッシュに適用可能な多様な変形形態の一例を示す図である。
【
図11】本発明のエア穴に適用可能な多様な変形形態の一例を示す図である。
【
図12】本発明のエア穴に適用可能な多様な変形形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
まず、本発明を適用可能な本実施形態に係るダイカスト装置およびダイカスト法について、
図1に基づき説明する。ここで、
図1は、本実施形態に係るダイカスト装置の断面図である。
【0017】
本実施形態に係るダイカスト装置1は、ダイカスト金型2を備えており、ダイカスト金型2は、固定型3と、この固定型3に当接・離間する可動型4とにより構成されている。固定型3と可動型4の当接面がダイカスト金型2の分割面(PL面)である。固定型3は、固定ホルダー3Aと、固定ホルダー3Aに収容固定されキャビティ5の一部を画成する固定ダイス3Bとを備える。固定ホルダー3Aには、給湯口6aが形成された射出スリーブ6が接続されている。射出スリーブ6には、給湯口6aから供給されたアルミニウム合金等の溶湯Mをキャビティ5に充填するための射出プランジャ7が往復摺動可能に設けられている。固定ダイス3Bと後述する可動ダイス4Bの分割面(ダイカスト金型2の分割面)には、排気ランナー3aが形成され、固定ホルダー3Aの上方には、排気ランナー3aに連通する真空バルブ8が収容配置されている。
【0018】
可動型4は、可動ホルダー4Aと、可動ホルダー4Aに収容固定された可動ダイス4Bとを備える。可動ダイス4Bは、固定ダイス3Bとともにキャビティ5を画成する。可動ホルダー4Aには、分流子9が収容固定されている。可動ダイス4Bの分割面(ダイカスト金型2の分割面)には、分流子9を介して溶湯Mをキャビティ5へ導くランナー4aが形成されている。可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bには、押出ピン貫通孔10,11が、その一端側(
図1における紙面右側)をキャビティ5に開口して形成されている。押出ピン貫通孔10,11には、それぞれ押出ピン12,13が配置されている。押出ピン12,13の後端は、押出板14に固定され、この押出板14が図示せぬ駆動機構又は可動型4の開閉動作に協働する機構により駆動され、押出ピン10,11の先端(
図1における紙面右側の先端部)がキャビティ5に対して突出移動および退避移動(後退移動)可能となっている。
【0019】
可動ホルダー4Aの分割面(ダイカスト金型2の分割面)には、型締め時に固定ホルダー3Aと可動ホルダー4Aの間をシールするためのOリング等のシール部材15が設けられている。
【0020】
真空バルブ8は、排気ランナー3aの所定の位置に配置された図示せぬ溶湯感知センサーが溶湯Mを感知するまでは、後述する真空タンク17と排気ランナー3aとを連通する連通位置に保持され、溶湯感知センサーが溶湯Mを感知したときに、この連通を遮断する遮断位置に切換え可能となっている。なお、
図1では、連通位置に保持された真空バルブ8を示している。
【0021】
本実施形態に係るダイカスト装置1では、真空タンク17が電磁弁19を介して真空バルブ8に接続されている。ここで電磁弁19は、真空バルブ8と真空タンク17とを連通させる連通位置と、両者間の連通を遮断する遮断位置とに切換え可能に設けられている。真空タンク17は、真空ポンプ18に接続されており、真空タンク17と真空ポンプ18が、本実施形態に係る真空排気手段を構成する。
【0022】
さらに、図示せぬ離型剤スプレー装置が、型開き時に固定型3と可動型4との間の空間を進退可能にダイカスト金型2の近傍に設けられる。また、ダイカスト品を取り出すための図示せぬロボットと、ダイカスト金型2を外部冷却するための図示せぬ冷却水供給装置とが、ダイカスト金型2の近傍に配置されている。
【0023】
そして、本実施形態に係るダイカスト法では、固定型3と可動型4を開状態にして、図示せぬ冷却水供給装置と離型剤スプレー装置を固定型3と可動型4との間の空間に侵入させ、キャビティ5に離型剤を塗布する。
【0024】
次に、固定型3と可動型4を閉じ、真空バルブ8が連通位置に保持されている状態で、電磁弁19を連通位置に切換えてキャビティ5を減圧する。こうしてキャビティ5の減圧を開始してキャビティ5を所定の真空度にした後に、射出プランジャ7により射出スリーブ6内の溶湯Mを加圧し、溶湯Mを分流子9およびランナー4aを介してキャビティ5に充填する。キャビティ5を充填した溶湯Mが排気ランナー3aに配置された図示せぬ溶湯感知センサーに感知されると、真空バルブ8が遮断位置に切換えられる。
【0025】
その後、型開きがなされ、押出板14が図示せぬ駆動機構又は可動型4の開閉動作に協働する機構により駆動されることにより、押出ピン12,13がダイカスト品をキャビティ5から分離させる。そして、図示せぬロボットがダイカスト品を取り出すことにより、本実施形態に係るダイカスト法の一サイクルが終了する。
【0026】
なお、
図1を用いて説明した本実施形態のダイカスト装置1は、真空ダイカスト装置として構成されるものであった。しかしながら、本発明の適用範囲は、真空ダイカスト装置と、この真空ダイカスト装置を用いて行われる真空ダイカスト法に限定されるものではない。本発明は、キャビティ5内を真空状態にせずにダイカストを行うダイカスト装置およびダイカスト法に対しても適用可能である。
【0027】
以上、本実施形態に係るダイカスト装置1の基本構成と、本実施形態に係るダイカスト法についての説明を行った。次に、本実施形態に係るダイカスト装置1に適用される本発明に係るダイカスト金型のエアブロー機構の基本構成について、
図2ないし
図4を用いて説明を行う。
【0028】
ここで、
図2は、本実施形態に係るダイカスト装置に適用されるダイカスト金型のエアブロー機構を示す図である。なお、
図2では、スライドピンがキャビティ内から突出移動して進出限に位置する状態が示されている。また、
図3は、
図2で示したダイカスト金型のエアブロー機構において、スライドピンがキャビティ内から退避移動して後退限に位置する状態を示した図である。さらに、
図4は、本実施形態に係るダイカスト金型のエアブロー機構を構成する一部品であるトンネルブッシュを示す透視図である。
【0029】
図2および
図3に示すように、本実施形態に係るダイカスト金型のエアブロー機構30は、例えば、ダイカスト金型2を構成する可動型4の可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bに設置される。
【0030】
本実施形態に係るダイカスト金型のエアブロー機構30は、ダイカスト金型2の可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bに形成されるトンネル穴31と、トンネル穴31に設置されるトンネルブッシュ32と、スライドピン33と、ダイカスト金型2の可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bに対してトンネル穴31に接続するように形成されるエア穴34と、を備えている。
【0031】
本実施形態のトンネル穴31は、ダイカスト金型2の可動ホルダー4Aと可動ダイス4Bを貫通して形成された貫通孔として形成されており、ダイカスト金型2の外部からキャビティ5が形成される可動ダイス4Bの分割面までを導通するように形成されている。
【0032】
本実施形態のトンネルブッシュ32は、
図4においてより詳細に示すように、軸方向に貫通して形成されるピン摺動穴32aを有する長軸の略円筒形をした部材である。トンネルブッシュ32の外周面は、トンネル穴31に嵌め込んで固定される形状を有している。一方、軸方向に貫通して形成されたピン摺動穴32aは、後述するスライドピン33を摺動可能に保持する形状で形成されている。
【0033】
また、本実施形態のトンネルブッシュ32は、トンネル穴31に嵌め込んで固定したときに、キャビティ5に近い部位が径寸法の小さい小径部32Aとして形成されており、この小径部32Aの外方に向けて2段階で径寸法が大きくなるように、中径部32Bと大径部32Cを有して構成されている。そして、トンネルブッシュ32をトンネル穴31に嵌め込んだときに、例えば、トンネル穴31と小径部32Aの先端側との嵌め合い寸法は0.01mmの公差となるように形成されており、トンネル穴31と小径部32Aの後端側や中径部32Bとの嵌め合い寸法は約1~2mm程度の隙間を有するように形成されている。したがって、トンネルブッシュ32をトンネル穴31に嵌め込んで固定したときに、トンネルブッシュ32の中径部32Bや小径部32Aの後端側までは、後述するエア穴34から供給されるエアが到達する。一方、トンネルブッシュ32の小径部32Aの先端側では、トンネルブッシュ32とトンネル穴31との隙間が閉鎖されることで、後述するエア穴34から供給されるエアが当該隙間を通過したり、キャビティ5側から離型剤や冷却水等の異物が当該隙間に侵入したりすることを好適に防止することが可能となっている。なお、大径部32Cについては、トンネルブッシュ32をトンネル穴31に嵌め込んだ時にトンネルブッシュ32を押さえるなどして固定するための固定手段を設置するために利用できる。
【0034】
また、本実施形態のトンネルブッシュ32は、小径部32Aの先端側に1個のブッシュ穴32bを備えている。このブッシュ穴32bは、トンネル穴31とピン摺動穴32aとを導通させる役割を担っている。
【0035】
さらに、本実施形態のトンネルブッシュ32は、ブッシュ穴32bと連通するエア誘導溝32cを備えている。このエア誘導溝32cは、後述するエア穴34から供給されるエアがトンネルブッシュ32とトンネル穴31との間の隙間を通過してブッシュ穴32bに向かう際に、エアの流れを誘導して効率よくブッシュ穴32bへと流通させるために形成された溝形状である。
【0036】
本実施形態のスライドピン33は、上述したトンネルブッシュ32に形成されたピン摺動穴32aの内部で摺動可能に保持される部材である。そして、本実施形態のスライドピン33は、ピン摺動穴32aの内部を穴方向に沿って摺動移動することで、ピン先端部をダイカスト金型2に形成されたキャビティ5内に突出移動および退避移動させることが可能となっている。なお、本実施形態では、スライドピン33がトンネル中子ピンとして使用される場合の実施例を想定している。
【0037】
本実施形態のエア穴34は、ダイカスト金型2の可動型4に対してトンネル穴31に接続するように形成されている。エア穴34には、外部から圧縮されたエアが供給されることで、トンネル穴31に向けてエアブロー用のエアを供給することが可能となっている。
【0038】
本実施形態に係るダイカスト金型のエアブロー機構30は、
図2ないし
図4で示す構成を有することから、エア穴34から供給される圧縮されたエアがトンネル穴31、トンネル穴31とトンネルブッシュ32の中径部32Bとの間の隙間、トンネル穴31とトンネルブッシュ32の小径部32Aとの隙間へと移動し、エア誘導溝32cに流れを誘導されながらブッシュ穴32bを経由してピン摺動穴32aの内部に供給されることで、スライドピン33の表面に吹き付けられてエアブローが実施されることとなる。スライドピン33に対するエアブローによって、スライドピン33の表面に付着したり、ピン摺動穴32aの内部に残存したりする、離型剤や冷却水等の異物を除去することができる。
【0039】
なお、本実施形態に係るダイカスト金型のエアブロー機構30では、エア穴34とブッシュ穴32bの形成位置が対向配置されず、ずれた位置に配置されているので、スライドピン33の所望の位置に圧縮されたエアが供給されて、スライドピン33の外表面に対する好適な異物除去が可能となっている。
【0040】
また、本実施形態に係るダイカスト金型のエアブロー機構30では、ブッシュ穴32bの形成位置が、スライドピン33がピン摺動穴32aの内部に退避移動したときのピン先端部の近傍位置に形成されているので、かかる構成によってもスライドピン33の所望の位置に圧縮されたエアが供給されて、スライドピン33の外表面に対する好適な異物除去が可能となっている。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0042】
例えば、上述した本実施形態に係るトンネルブッシュ32は、小径部32Aの先端側に1個のブッシュ穴32bを備えており、また、当該ブッシュ穴32bと連通する1つのエア誘導溝32cを備えていた。そして、本実施形態のエア誘導溝32cは、略円筒形状をしたトンネルブッシュ32先端の小径部32Aに対して略矩形形状の溝として形成されたものであった。しかしながら、本発明の適用範囲は上述した実施形態に限られるものではなく、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮できる範囲において適宜の変更が可能である。そのような変形形態例について、
図5~
図10を用いて説明を行う。ここで、
図5~
図10は、本発明のトンネルブッシュに適用可能な多様な変形形態の一例を示す図である。なお、
図5~
図10では、上述した実施形態と同一又は類似する部位について、同一符号を付すこととした。
【0043】
すなわち、本発明のトンネルブッシュは、
図5、
図7、
図9に示すように、小径部32Aの先端側に複数個(例えば、4個)のブッシュ穴32bを形成することができる。トンネルブッシュ32にブッシュ穴32bが複数形成されることで、スライドピン33の先端部の全周にわたるエアブローの実施が、より効果的に実行されることとなる。なお、
図5、
図7、
図9に示すように、複数個(例えば、4個)のブッシュ穴32bを形成した場合には、各ブッシュ穴32bのそれぞれに対して連通するエア誘導溝32cを形成することが好ましい。
【0044】
また、本発明のエア誘導溝は、
図6および
図7に示すように、略円筒形状をしたトンネルブッシュ32先端の小径部32Aに対して略長円形状の溝として形成されたものでもよいし、
図8および
図9に示すように、トンネルブッシュ32先端の表面に形成された螺旋状の溝として形成されたものでもよい。本発明のエア誘導溝は、略矩形形状の溝であっても、略長円形状の溝であっても、螺旋状の溝であっても、ブッシュ穴32bに対するエアの好適な流通が可能である。
【0045】
さらに、本発明のトンネルブッシュでは、
図10に示すように、中径部32Bの中央付近に複数個(例えば、4個)のブッシュ穴32bを形成することができる。スライドピン33の先端部の近傍に対応した位置となるトンネルブッシュ32の小径部32Aだけでなく、中径部32Bに対してブッシュ穴32bを形成することでも、スライドピン33に対するエアブローは可能である。なお、
図10に示すように、複数個(例えば、4個)のブッシュ穴32bのそれぞれに対して連通するエア誘導溝32cを形成しなくても、エアブロー効果を得ることは可能である。つまり、本発明のエア誘導溝は省略することが可能である。
【0046】
また例えば、上述した本実施形態に係るダイカスト金型のエアブロー機構30では、トンネル穴31に対して非平行な方向から直線的にエア穴34が形成された構成例を示した。しかしながら、本発明の適用範囲は上述した実施形態に限られるものではなく、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮できる範囲において適宜の変更が可能である。そのような変形形態例について、
図11および
図12を用いて説明を行う。ここで、
図11および
図12は、本発明のエア穴に適用可能な多様な変形形態の一例を示す図である。なお、
図11および
図12では、上述した実施形態と同一又は類似する部位について、同一符号を付すこととした。
【0047】
すなわち、本発明のエア穴については、
図11に示すように、直線的な穴経路を複数設け、これら複数の直線的な穴経路を接続してエア穴34を形成するようにしてもよい。また、
図12に示すように、トンネル穴31に対して平行な方向で直線的にエア穴34を形成してもよい。このように、本発明のエア穴は、自由な経路で形成することができるので、ダイカスト金型2の強度を確保しつつ本発明に係るダイカスト金型のエアブロー機構を設置することができる。かかる効果は、既存のダイカスト装置1に対して本発明を適用できる点で好ましい。
【0048】
また例えば、上述した本実施形態に係るダイカスト金型のエアブロー機構30では、スライドピン33がトンネル中子ピンとして使用される場合の実施例を想定していたが、本発明のスライドピンは、あらゆる形式のピン部材に適用可能である。例えば、
図1を用いて説明した押出ピン貫通孔10,11に配置された押出ピン12,13に対して、本発明に係るダイカスト金型のエアブロー機構を適用することが可能である。
【0049】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0050】
1 ダイカスト装置、2 ダイカスト金型、3 固定型、3A 固定ホルダー、3B 固定ダイス、3a 排気ランナー、4 可動型、4A 可動ホルダー、4B 可動ダイス、4a ランナー、5 キャビティ、6 射出スリーブ、6a 給湯口、7 射出プランジャ、8 真空バルブ、9 分流子、10,11 押出ピン貫通孔、12,13 押出ピン、14 押出板、15 シール部材、17 真空タンク、18 真空ポンプ、19 電磁弁、30 ダイカスト金型のエアブロー機構、31 トンネル穴、32 トンネルブッシュ、32A 小径部、32B 中径部、32C 大径部、32a ピン摺動穴、32b ブッシュ穴、32c エア誘導溝、33 スライドピン、34 エア穴、M 溶湯。